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低スイッチング損失、広SOAかつ低特性 オン抵抗の40 V LDMOSトランジスタ 松田順一、小島潤也、築地伸和、神山雅貴、小林春夫 群馬大学 1 電気学会 電子デバイス/半導体電力変換 合同研究会 場所: 鹿児島大学 稲盛会館 開催日:20161121日(火)

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低スイッチング損失、広SOAかつ低特性オン抵抗の40 V LDMOSトランジスタ

松田順一、小島潤也、築地伸和、神山雅貴、小林春夫

群馬大学

1

電気学会 電子デバイス/半導体電力変換 合同研究会

場所:鹿児島大学 稲盛会館

開催日:2016年11月21日(火)

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概要

• はじめに

• 従来型と提案型のLDMOSトランジスタ構造

• シミュレーション結果• IDS-VGS特性、IDS-VDS特性、特性オン抵抗、ブレークダウン特性

• スイッチング特性を含むデバイス性能(FOM)

• 解析• ドレイン電流増大の成分(広SOAの要因)

• ホットキャリア耐性

• まとめ

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はじめに

3

目的 車載向けに(1)低スイッチング損失、(2)広SOA、(3)高信頼性(高ホットキャリア耐性)、かつ(4)低特性オン抵抗を持つ40V LDMOSトランジスタを開発

■従来:デュアルRESURFドリフト構造(フィールド・プレートをゲートに接続)⇒0.35μm CMOSプロセスベース

・高VGSかつ高VDSで発生するドレイン電流増大(Current Expansion:CE)抑制⇒広SOA・ホットキャリア耐性向上・特性オン抵抗低減

・スイッチング損失大

利点

欠点

■提案:デュアルRESURFドリフト構造(フィールド・プレートを接地)⇒0.18μm CMOSプロセスベース

従来の利点を保持し、欠点を改善(ミラー容量の低減)

■シミュレーションにより検討

アドバンスソフト社 3D デバイスシミュレータ Advance/DESSERT(サンプル版)を使用

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従来型と提案型LDMOSトランジスタ断面

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(b) 提案型 LDMOS トランジスタ(a) 従来型 LDMOS トランジスタ

P-Sub.

NDL1P-Body

P-Well

0

PBL1PBL2

n+p+ x

y

Drain

Source

VGS VDSVSS

n+NDL2

FP

Gate

p+-pickup

P-Sub.

NDL1P-Body

P-Well

0NDL3

PBL1PBL2

n+p+ xDrain

Source

VGS VDSVFP

n+

NDL2

IDS

ISUB

IPB ISS

y

GFP

Gate

p+-pickup

VSS

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提案型LDMOSトランジスタ構造

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■p型埋込層(デュアルRESURF構造)

・PBL1⇒ゲート側ドリフト端のRESURF強化(高ホットキャリア耐性)、CE抑制・PBL2⇒ドリフト層全体のRESURFに有効・ドレイン下のPBL2開口⇒ブレークダウン電圧低下防止

■n型ドリフト層(3層構造)

・NBL1(深い領域)⇒ドリフトの基本層・NBL2(浅い領域)⇒CE抑制、特性オン抵抗低下・NBL3(浅い領域:ゲート側ドリフト端領域除く)⇒CE抑制を強化(広SOA)、特性オン抵抗より低下

■フィールド・プレート

・接地⇒ミラー容量低減(スイッチング損失低減)、RESURF補助

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IDSーVGS 特性

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外挿 Vt (at VDS = 0.1 V) = 1.05 V

Vt (at IDS= 0.1 μA and VDS = 0.1 V) =1.026 V

ΔVt (VDS = 0.1V → 40 V) = 0.104 V

IDSーVGS 特性(1セル分)

■しきい値電圧

1セル面積⇒ 3.555 μm × 0.3 μm = 1.0665 μm2

■VDS増加によるしきい値電圧低下(at IDS= 0.1 μA)

ΔVt (VDS = 0.1V → 60 V) = 0.226 V

⇒ VDS = 60 V でもリーク電流を低く抑制

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IDSーVDS特性

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■特性オン抵抗

IDSーVDS特性(1セル分)

■電流増大(CE)のない領域(SOA領域)

VDS ≦ 40V at VGS = 4V(VGS最大定格電圧)

RonA = 40.9 mΩ・mm2 at VGS = 3.3V

⇒40V動作に対し広SOA確保

VDS ≦ 45V at VGS = 3.3V(VGS動作電圧)

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ブレークダウン特性

8

1E-17

1E-15

1E-13

1E-11

1E-09

1E-07

1E-05

0 10 20 30 40 50 60 70

Drai

n Cu

rren

t (A)

Drain Voltage (V)

Drain

VDS=62V, VGS=0

GFPDrift

Gate

■ブレークダウン電圧 62V⇒ 40V動作に対し十分な余裕

■ブレークダウン箇所(高電界領域)はバルク⇒ ESDに対し耐性ありブレークダウン時の電界分布

IDSーVDS特性(VGS=0V)(1セル分)

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特性オン抵抗対ブレークダウン電圧特性

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■提案型LDMOSトランジスタのRonA-BVDS特性

特性オン抵抗RonA対ブレークダウン電圧BVDS 特性

⇒UMC社(ISPSD 2017で発表)と同等レベル

(但し、提案型LDMOSトランジスタのシミュレーションでは配線抵抗とコンタクト抵抗は考慮されていない)

(先端レベル)

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ターンオン特性

■FOM(= RonA・Qg/A) = 48.2 mΩ・nC■単位面積当たりのゲート電荷 Qg/A = 1.22 nC/mm2

10

0

1

2

3

4

5

0

2

4

6

8

10

0 500 1000 1500

Gate

Vol

tage

(V)

Gate

Cur

rent

(μA)

Time (ps)

ゲートの電圧と電流のターンオン特性

ターンオン解析に用いた回路

⇒従来型デュアルRESURF LDMOSトランジスタのFOM(=141 mΩ・nC)のおよそ1/3

提案型 3.3 V

5MΩ

500kΩ40V

ids

igs

vgs

vds

1セルLDMOSトランジスタ

従来型 5.0 V

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ドレイン電流増大の成分(SOAの解析)

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■VDS < 40 V

■VDS ≧ 40 V

⇒ ISS: VDS ≧ 52 Vで飽和傾向有り

⇒ IDS ≒ ISS

ドレイン電流の成分(1セル分) ISS: ソース電流(電子電流)

IPB: p-ボディ電流(正孔電流)

ISUB: 基板電流(正孔電流)

∵ IDS = ISS + IPB + ISUB

ゲート最大定格電圧 VGS = 4 V (CEが顕著)

IDS: ドレイン電流(電子電流+正孔電流)

⇒ ISSの上昇がインパクトイオン化によりIPB + ISUB を増大させ、IDSを急上昇(CE発生)

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ソース電流のモデル化

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VT = 1.05 V

α = 1.63Kp = 5.41×10-5 A/V2 at VDS = 20 V

( )

−−= 2

,, 2 INTDSINTDSTGSpSS VVVVKI α

thF ∆++=

6221

φγα

■線形領域 VDS ≦ 52 V

VDS,INTのVDS依存性

VDS,INT: 真性MOSFETのドレイン電圧

(ドレイン側ゲート端の表面電位)

■飽和動作領域(電子の速度飽和に依存) VDS > 52 V

真性MOSFETソース電流のモデル式

αTGS

PVVV −

=

・飽和電圧 VDS,INT at VDS = 52 Vに設定・移動度一定・DIBL(VDS,INT 増加に伴う VT 低下)考慮・チャネル長変調考慮

(ピンチオフによる飽和ではない)

γ:基板バイアス係数

cf. ピンチオフ電圧 Vp(=VDS,INT) = 1.8 V ⇒ VDS = 54 V

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ソース電流の比較(シミュレーションと解析モデル)

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ソース電流をシミュレーションと解析モデルで比較

■線型動作及び飽和動作の全領域でシミュレーションと解析モデルがよく一致

■VDSの増大に伴うISSの上昇はVDS,INTに起因

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界面に沿ったx方向電界プロファイルのVDS依存性(VGS=4V)

14

0

100

200

300

400

500

0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500 4000

Elec

tric

Fie

ld in

Min

us X

-Dire

ctio

n(k

V/cm

)

Distance (nm)

VDS (V)60

48

40

3220

128

VGS = 4V y = 5nm

GFPDrift

GateDrain

■ドレイン側ドリフト端近傍の電界⇒VDS増大に伴う電界のピーク発生(Kirk効果) (VDS≧40V )⇒インパクトイオン化による正孔電流増大(CE発生)

表面に沿った Ex プロファイルの VDS 依存性

■CE抑制(CEが発生するところのVDSを上げてSOAを拡大)⇒VDS増大に伴うISS(即ちVDS,INT)の上昇を抑制(PBL1効果あり)⇒ドリフト領域のドーピング密度増加(NDL3効果あり)

cf. CE抑制→VTを上げてISSを低減・ゲート駆動能力低下によるオン抵抗増大・VDS,intの抑制には効果なし

■ゲート側ドリフト端近傍の電界⇒VDS増大に伴う電界上昇の抑制(20V≦VDS≦48V)⇒PBL1によるRESURFの強化に起因

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VDS,INTのVDS依存性(VGS=2V)(ホットキャリア耐性推測)

■ VGS=2VにおけるIDSの飽和特性⇒真性MOSFETのピンチオフに起因

・真性MOSFETのドレイン近傍でインパクトイオン化を起こす・ホットキャリアによる特性劣化大の可能性あり

VDS,INTのVDS依存性

■VGS=2Vの場合の真性MOSFETのピンチオフ電圧Vp⇒ Vp (=VDS,INT) =0.6V ⇒VDS=1.9V

■ VGS=2Vの場合の ISS(=IDS)の飽和電圧VDS≒2V

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界面に沿ったx方向電界プロファイルのVDS依存性(VGS=2V)

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表面に沿った Ex プロファイルの VDS 依存性

■ゲート側ドリフト端近傍の電界⇒ピークを持ち上昇する傾向⇒VDS≧20Vで上昇の割合低下(飽和する傾向)⇒高VDSでも高ホットキャリア耐性を得る可能性有り⇒PBL1によるRESURFの強化に起因

■2500≦x≦2700nmの領域の電界⇒ピークを持ち上昇する傾向⇒GFP端及びPBL2端における電界集中に起因

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正孔電流密度分布(VDS=40V, VGS=2V)

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■GFP端周りの正孔電流密度分布⇒界面から離れた基板(ドリフト層)内で高い

(基板内でインパクトイオン化発生)⇒インパクトイオン化による高エネルギー・キャリア

が表面へ影響する可能性は低い

インパクトイオン化による正孔電流密度分布(VDS=40V, VGS=2V)

VDS = 40 V, VGS = 2 V

GFPDrift

GateDrain

Surface

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まとめ

提案型40V LDMOSトランジスタ(0.18μmCMOSプロセスベース)は車載用途に適した特性を持つ

スイッチング損失を含むデバイス性能を表すFOM従来比約1/3(従来型:0.35μmCMOSプロセスベースのデュアルRESURF

LDMOSトランジスタ)

広SOA確保ゲート最大定格電圧(4V)においてVDS≦40Vで電流増大(CE)の発生なし

高ホットキャリア耐性を確保できる可能性あり

特性オン抵抗対ブレークダウン電圧特性は先端レベルにある

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謝辞

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本研究で用いたデバイス・シミュレータをお貸し頂いたアドバンスソフト社に深謝申し上げます。

なお、このシミュレータは、国立研究開発法人科学技術振興機構の助成を受けて(A-STEPプログラム)アドバンスソフト社で開発されたものです。

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ご清聴ありがとうございました