ドビュッシー「前奏曲集」の演奏についての一考...

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ドビュッシーヂ轟奪奏薯塗薬」のを寅奏についてび〉一一考察(その工〉 ドビュッシー「前奏曲集」の演奏についての一考察(その1〉 はじめに ピアノの楽臨を学習するにあたって大切なこと はいくつかあるが,そのiつに作麟家の人となり, また,その時代様式を知りその様式にそった演奏 をすることが大{雰である。 この小誌}は私の一連のピアノ奏法に関する講究 磁の玉つとして, ドビュッシー・の麟奏麟第i集を 中心にその奏法について考i察するものである。 1 クロードニァシル・ドビュッシーC簸醸豊e-Ac簸艶 P伽ssy(i862~醗8/はig糧紀後難から2§盤紀 初鑛にかけて,フランス音楽の発展の中で際立っ て,かつ,もっとも影響力の大きかった作醜家で ある。 P耀グラウトはその著書「薩洋音楽史3の中で, この時代,フランス音楽の歴史の中で,3つの主 要な発展の線をたどることができる「21として,そ のiつに,セザール・フランクCもsarF℃a箕。襲韓8 22~i8§窃と,ヴァンサン・ダンディV銚ce絃δア臨一 δy(鰺駁~臆3麟によるヂ麟際的伝統」を重んじ た線と,2つに,サンサーンスCa搬嚢艶S狂錘レ Sa§簸s (i83§~ig2圭/ とフオーレG&も薮ε蔓 F食殺r毒 韓84き~ig2尋/ による「馨舞確なフランス的{孟統3 を重んじた流れと,更に, 「露象主義」といわれ る3つの流れを指摘している。この第3の流れで ある響象主義の代表者がドビュッシーである。麟 さてその麟象主義とは,グラウトの鱗霧を続諺 よう「〈豊かで変乾に富む報声と音餐を通診て気 分を喚び起こすことにより,搭写的な郎象を翻り 出そうとする{乍懸の一様式。〉したがって,印象主 義は一種の標題音楽であるが,大部分の蟹マン主 義的な標題音楽と次の諸点において異って鋳るポ 第一に,それは,感構を表鐵したり,物語りを語 った零しようとはせず.暗示的な表現や,ときに 仄めかされる奮然の畜や踊りの》ズムや特籔的な 縫律の甑片などの動けを借鞭てひとつの気分,雰 露気at鱗os轟ε艶を喚起しようとする。第2に露 象主義は,ロマン譲雇の一屡直裁な,あるいはカを 込めた方法ではなく,仄めかしと整え欝な表現に 依存する。第3に,露象主義は全{本として, ドイ ツロマン濠の伝統とはまったく異った音楽語法を 形窪る。養律,穂声,色彩.琴ズム,形式療遷を 購いる。並鱗この第3の印象主義{乳〉音楽護吾法の特…徴 をもう少し詳しく達べるならば, 「教会旋法・五 音音踏・全音音躇など捷法性の再発見ないし発明 導入。各種壷行音程および壷行報音。不協舞音一 農次倍音・付綴音・隣接音などを食む穂音が,解 決を醗擾とせぬ音凝集としてとりあげられ,いわ 贈る葬音踏音が,単音贈法による変化音としてで なく,本来穣有のものとして購鱗られる。騰達し て3度報声によらない新しい秘音の発見。さらに 摘簸によらず,総分された律動法や精綴織綴な感 覚を求める,楽器法.管導玄楽法。」等である。覇 さて,ドビュッシーの鐸品を蟹搾隼代顯に分け るならば,次の5つの時期1こ分けることができる。 すなわち,韓)習{乍莫鐸,{21形成1顛.嬢/確立莫鐸,韓響彗 繍.それに藩1総合難である。この纏)の轡繍は 綾の代表的オペラ,ペレアスとメリザン縫》磁e3s et躍翻sa懇eから欝欝隼羨後までで,音楽上の印 象主義といわれるものはこの時顛に完織した。こ の薄奏麟第i集は鐙G9隼㌶簿から翌年欝欝隼2肩 までに完成しており,この時期のピアノ麟の代表 {乍となっている。 ドビュッシーの券港鰯の{乍晶はig盤審避の{重縫的音 楽の影響が多く見られ,麹の題名もそれまで多く 罵騨られ。ていたプレ》ユード, トッカータ, アラ ベスク,ノクターン,ノくラード,メヌエット等を 用いている。しばしばよく演奏される野アラベス ク」や「ベルガマスク総懸」は形絞難,または確 』皇籍1の作品であり. ドビュッシー独特の零露気を そこに見いだすことができるが,形式的にも,ま た,稲声的にも欝量紀の調性音楽が基盤である。 したがって,古典派,ロマン諏音楽を主として学 饗して来ている学生にとっては,ドビュッシーの

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ドビュッシーヂ轟奪奏薯塗薬」のを寅奏についてび〉一一考察(その工〉 ?

ドビュッシー「前奏曲集」の演奏についての一考察(その1〉

斎  藤  一  次

はじめに

 ピアノの楽臨を学習するにあたって大切なこと

はいくつかあるが,そのiつに作麟家の人となり,

また,その時代様式を知りその様式にそった演奏

をすることが大{雰である。

 この小誌}は私の一連のピアノ奏法に関する講究

磁の玉つとして, ドビュッシー・の麟奏麟第i集を

中心にその奏法について考i察するものである。

1

 クロードニァシル・ドビュッシーC簸醸豊e-Ac簸艶

P伽ssy(i862~醗8/はig糧紀後難から2§盤紀

初鑛にかけて,フランス音楽の発展の中で際立っ

て,かつ,もっとも影響力の大きかった作醜家で

ある。

 P耀グラウトはその著書「薩洋音楽史3の中で,

この時代,フランス音楽の歴史の中で,3つの主

要な発展の線をたどることができる「21として,そ

のiつに,セザール・フランクCもsarF℃a箕。襲韓8

22~i8§窃と,ヴァンサン・ダンディV銚ce絃δア臨一

δy(鰺駁~臆3麟によるヂ麟際的伝統」を重んじ

た線と,2つに,サンサーンスCa搬嚢艶S狂錘レ

Sa§簸s (i83§~ig2圭/ とフオーレG&も薮ε蔓 F食殺r毒

韓84き~ig2尋/ による「馨舞確なフランス的{孟統3

を重んじた流れと,更に, 「露象主義」といわれ

る3つの流れを指摘している。この第3の流れで

ある響象主義の代表者がドビュッシーである。麟

 さてその麟象主義とは,グラウトの鱗霧を続諺

よう「〈豊かで変乾に富む報声と音餐を通診て気

分を喚び起こすことにより,搭写的な郎象を翻り

出そうとする{乍懸の一様式。〉したがって,印象主

義は一種の標題音楽であるが,大部分の蟹マン主

義的な標題音楽と次の諸点において異って鋳るポ

第一に,それは,感構を表鐵したり,物語りを語

った零しようとはせず.暗示的な表現や,ときに

仄めかされる奮然の畜や踊りの》ズムや特籔的な

縫律の甑片などの動けを借鞭てひとつの気分,雰

露気at鱗os轟ε艶を喚起しようとする。第2に露

象主義は,ロマン譲雇の一屡直裁な,あるいはカを

込めた方法ではなく,仄めかしと整え欝な表現に

依存する。第3に,露象主義は全{本として, ドイ

ツロマン濠の伝統とはまったく異った音楽語法を

形窪る。養律,穂声,色彩.琴ズム,形式療遷を

購いる。並鱗この第3の印象主義{乳〉音楽護吾法の特…徴

をもう少し詳しく達べるならば, 「教会旋法・五

音音踏・全音音躇など捷法性の再発見ないし発明

導入。各種壷行音程および壷行報音。不協舞音一

農次倍音・付綴音・隣接音などを食む穂音が,解

決を醗擾とせぬ音凝集としてとりあげられ,いわ

贈る葬音踏音が,単音贈法による変化音としてで

なく,本来穣有のものとして購鱗られる。騰達し

て3度報声によらない新しい秘音の発見。さらに

摘簸によらず,総分された律動法や精綴織綴な感

覚を求める,楽器法.管導玄楽法。」等である。覇

 さて,ドビュッシーの鐸品を蟹搾隼代顯に分け

るならば,次の5つの時期1こ分けることができる。

すなわち,韓)習{乍莫鐸,{21形成1顛.嬢/確立莫鐸,韓響彗

繍.それに藩1総合難である。この纏)の轡繍は

綾の代表的オペラ,ペレアスとメリザン縫》磁e3s

et躍翻sa懇eから欝欝隼羨後までで,音楽上の印

象主義といわれるものはこの時顛に完織した。こ

の薄奏麟第i集は鐙G9隼㌶簿から翌年欝欝隼2肩

までに完成しており,この時期のピアノ麟の代表

{乍となっている。

 ドビュッシーの券港鰯の{乍晶はig盤審避の{重縫的音

楽の影響が多く見られ,麹の題名もそれまで多く

罵騨られ。ていたプレ》ユード, トッカータ, アラ

ベスク,ノクターン,ノくラード,メヌエット等を

用いている。しばしばよく演奏される野アラベス

ク」や「ベルガマスク総懸」は形絞難,または確

』皇籍1の作品であり. ドビュッシー独特の零露気を

そこに見いだすことができるが,形式的にも,ま

た,稲声的にも欝量紀の調性音楽が基盤である。

したがって,古典派,ロマン諏音楽を主として学

饗して来ている学生にとっては,ドビュッシーの

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8 橿鳥大学教無学藩論集第30弩

紫乍晶を学鬱する1ここうしたものから学習する方寿ぜ

邊解しやすいと思う。

 さて,諺奏麟第至集は先に述べたように,郎象

主義の確立完成した彼の円熟難に作麟された作品

であり,邸象主義的ピアノ認法の極致といわれ,

被のピアノ作品の中でも代表的な{乍品集である。

したがって,この醜集を乏寅奏するにあたっては,

先に違べた印象主義の特鐵とその音楽藷法をあら

かじめ頭に入れて学習することが望ましい。

 この薦奏麟は第i集i2麟と第2集i2麟計鍛麟か

ら成っている。この講者の翼には内容的な違いも

見られ,第2集の方は,綾の総合簸の作品に含ま

れる。このような2弊議から成る繭奏霞1集1ま,かつ

てバッハ」.S.露ac暴やショノ母ンC}欝舞舞等にも晃ら

れるが,特にショノぐンを愛したドビュッシーは,

シ3ノ{ンに験発されてず馨讒したのかも知れない。

あるも蝿ま, こうした裟露なぞ乍難形式をかりて, 嚢

庄1な作風というところにその魅力を感¢たのかも

知れない。いずれにせよ,この麟奏麟によって印

象主義といわれる音楽語法を完威することに成功

したのである。シ欝ノ《ンの麟奏麟尋ま,五度圏の講

号の瀬に醍擁してあり,演奏にあたっては,普通

2嘆麟通して才寅奏される。しかしドビュッシーの脅馨

奏麟集は各醜それぞれ独立しており,各懸単猿に

ても薯寅奏され。る。またこの羨奏麟集1こは,麟象三豊

義の特鐡の一つである「暗示的な表現によって雰

囲気を喚起するゴように,表題が各麹の叢冬鯵にし

かもひかえめに揺懸に入れて示されている。その

表題を見ると。

 第i麟〈デルフィの舞い媛たち>

 第2麟〈麟〉

 第3磁董〈野を渡る屡〉

 嬉4曲〈音と秀吟は夕暮れの大気に漂う〉

 第§饑くアナカプげの丘〉

 第6麟〈雪の上の足跡〉

 第7離〈西風の見たもの〉

 第8懸〈亜蠹魚の髪の鳶とめ〉

 第警曲〈とだえたセし・ナーデ〉

 第欝麟〈瀧める寺〉

 第ii齢〈ノ受ックの茎毒弩〉

 第i2醗〈ミンストレル>

である。このように,海,騰,光など翕然からそ

の霊感を得て,あるいはそれと経連のあるものが

欝7窪一質

多く,更には,異国趣妹や異羅藩緒をその表題に

しているもの,また,彼の性絡からくる,皮肉や

ユーモアを表わしている表題もある。第尋麹のく

音と香り1ま夕i暮;れの大気に漂う〉1言1ボードレエノレ

磁arlεsBa癩e茎罐e(i8i2~i8771の詩ヂタベの

講調ゴより詩の一廉をとっており,第8饑く亜藤

色の髪のおとめ〉は,ルコンド・ド夢ルLeco蹟e

δeL三s鎗 韓8童8~i8≦獲)の岡む題名のそれをとっ

ている。また,ドビュッシーは鎌錠に(絡82年末

畠藪/この詩に歌鶴を作離している。

 ドビュッシーはまた,象徴派詩人との交友があ

り,マラルメS縫燐鍛eMa撫r灘る (i8基2~i898)

の[火曜の夜の集鵜に参擁しヴェルレーヌP麟

Vεrlal総轄8艇~璽896/やボードレェ膨の誇に多

くの薯実懸を残している。 ドビュッシーはドすべて

を象鐙的なイメージに置き換え,葭葉の下に複雑i

多様な響きを振麟させる」蟷という象徴滋詩人た

ちの芸術に心をi惹きつけられ,フランス象徴滋詩

人の本質的手段である「擢i写ではなくて暗示が,

伝達ではなく喚趨が,記号ではなく象籔が∫ばこ

れ1ま, とりもなほさず音楽の特質でもあるのだ力滞

{痩の』音楽表現の特質ともなるのである。この象徴

的な矢憂かい表題1まこの慈を解釈するための醤顧的

な暗示であるのだが,この齢を表現するあにどう

しても馨り離すことのできないほど深く纏わって

来ている。それは鱗匂や馨本震1二見られるように,

すべてを書き表わすのではなく単的に表現された

もののなかに凝縮された奥深い表現をみる味わい

がドビュッシーめ表題に見られる。ノーマン・デ

マスは「フランス・ピアノ音楽史」の中で〈音と

香りが夕暮れの大気に漂う〉とかくアナカプ馨の

丘.〉はその表題が音楽を雛写するただ一つの印象

を与えるものであるが, ドビュッシー1ま,あま琴

1こも楽器に難待をかけすぎており,それを音楽で

はっきりさせることができない。このことは一つ

の弱点である済と達べている。しかし,この表題

のもつ雰麗気とか鷲感は,詩や欝毎の頬かい文章

あるいは単藷の中に凝縮的に書いたり,多義的な

ニュアンスをもつ,あるいはアすべてを表現しな

い,{葬匂や§本嚢に睡頃緩しんでいる欝本人は疑:

較的理解しやすいのではないかと思われる。ドビ

ュッシーもまた,鰺89年のパ縫方蟹博覧会を通し

て広まったジャポニズムの影響を受け,北斎や広

重の洋盤峯会などから}インスヒ。レーーションを欝てい

るという愛したがって.ドビュッシーの麟を演奏

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ドビュッシー「饒奏酸葉」の演奏についての一考察(そのi/ 9

するにあたっては,単に楽譜からだけでなく,被

のと陰まいた印象濠の総懸や象鍛諏の詩人の詩な

ども知ることによって,音楽表現の一つの手がか

辱を得ることが大窮と思われる。このようにドビ

ュッシーの音楽1ま特に想{象力に富む掻寅奏が要求さ

れるので卑ある。

 古典濠,ロマン派の音楽すなわち,機能穣声を

中心とした音楽を主として学習してきた者にとっ

て,こうした伝統的な機能1秘声原理にもとずく力

性的な緊張,彗麹緩σ)音楽ではなく非機能的な音そ

れ自体の響きの魅力を中心とする馨象主義の音楽

には,少々のとまどいを感ずる。 ドビュッシーの

音楽は1線的な輪郭より音の響きを重視した「響き盛

の巻藁である野したがって, ドビュッシーのピア

ノ麟を演奏するにあたっては,そうした響きに対

するするどい感覚的なよい耳を作ること,微妙な

色彩感を表現できるよいタッチを得ること,その

タッチと権挨ってペダリングに綴心の注意をはら

うことが重要な課題となるσ

 この3点は弱り離されるべきものではなく, お

互に深く溺熱しているが便宣上3点について考察

してみる。まず纂i点の感覚的なよい耳をつくる

ということは,1馨…機嚢藝的穣声に交書癒できる葺をつ

くることであり,平行報音の連続や解決を離提と

しない不協穣音の綾絹,あるいは,戴音音驚,全

音音賠の使繕によるこうした響きに顧癒し不協報

音そのものより,感覚的な魅力をき・とることの

できる耳を{㌻ることである。特iこ全音音繕の綾絹

1こより増3穣青海書し1蓄し1ま驚㌧翼られこの響きに注

意する必要がある。{粥えば,第2懸〈麟、〉や第7

慈の(建藝風の見たもの〉,第i2懸〈ミンストレル〉

などに多く見られる。次にドビュッシー巻楽の特

籔の一つである色彩,光線,陰影などに憩する鋭

い感覚,この色彩感覚に支醗された運勢神経によ

って色彩的なよいタッチを得ることが大燐であり,

また, ドビュッシー独特の零露気を表現すること

が驚喜麩となる。このよいタッチを{馨るということ

1ま,その麟提として羨達したように,美しい音を

表現しようとする騒挿経の饑きによって(音への

鮮造的な意志によって/手,指への運鶉神経へ伝

達されることである。」撥音一つおさえるにしても

柔らかい∫,堅い∫,鐘のようなPP,賜るいPPなど

我々の耳には幾種類もの響きが椿感として伝わっ

てくる。ヨーセフ・ガードのεピアノ演奏のテク

ニック」によると「音量が一定の場合タッチを変

えても音色に厨の変化も生じない三三1と述べている。

これは音量が一一定の場合であって,遵に音量を変

{とさせることによって,音{互の変費二を感ずるので

ある。擁えば,穣音のようにいくつかの音を瞬時

1こお}さえる場合,その音のバランスの変{とによっ

て,その報音の響きはいろいろと苔色の変化を感

ずる。この音量麗分は,デイッヒラーの「ピアノ

寺蜜奏法の芸篠量的完繊撃によると,美しいと感ずる

報音, あるいは隣るい欝欝と感ずる秘蕎=の音のノ{ラ

ンス1よ次のようになっている。 (iは畜楽として

綾絹するもっとも小さな音であり,婚暮はもっとも

大きな音である。/

 譜i

ε亨

をζ

言6

幡2

皇3

嫁一

美トヒむアノの

美し薦み費ノ

瞬5“俘

鏤めよう響野

鱒よ弓

ぎぎ

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欝 橿鳥大学教育学都議集第3磐号

ぎむ

ぎぎ

繋 醜・チ

ぎ夢2

ヰこのように美iしいと感ずる響きは肉声の音を弱く

外声を幾分強めに演奏する。特に隣るい感e,鐘

のような響きをと琶すときは肉声を特に弱く右手高

音を強く奏するとよい。勿論こうした穂音は瞬時

に響かせることがその藩提であるのだが, しかし

ドビュッシーの零轟音を響かせる場合,常1ここのよ

うに外声を強めに肉声を弱く奏するタッチの仕方

とはかぎらない.内声部に麓律の轟きがくる場合

がよくあるからである。{翼えば,第i麟〈デルフ

ィの舞い姫たち>の第i,第2小簾,第2麟の〈概〉

の第33小簾からの右手,第荏麟(音と香りは夕暮

れの大気に漂う>の第建小簾からの左手の肉声董

の指に淡き麓律が浮か.観このように音色の変化

は音量のバランスの変化によって決まるが,1つ

の1穣音をおさえるにしても,時には,平均の強さ

1こておさえる場合もあらうし,外声音響を強く奏す

る場合,あるいは内声部を強く奏さねばなら灘場

合もある。したがって,各指がそれぞれ独立し,

どの指も飽の指よりも強く,あるいは弱く目窪iに

奏することができるようなタッチを歪馨る練習が必

要である。

 ピアノの発音のメカニズムは打鍵すると,ハン

マーが弦を打ち発音する。この場合ピアノの音量

は打鍵のスヒ㌧ドと比擁する。すなわちピアノの

音色はタッチの瞬題のスピードによって決まって

しまう。したがって,この打鍵のスピードをコン

トロールすることが得ようとする音色を表現する

ための大燐な鍵になっている。この打鍵のスピー

ドをコントロールするためには,鍵盤のエスケー

プメント・レベナレを正確に感宍聾して’必要なカを適

弱な速度に醍分することが重要である。そのため

には,上からたたく打鍵ではなく,鍵盤に手をの

せて深く押すようなタッチが大{勇であり,それを

指先に感ずることが必要である。ドビュッシーも

ヂ手はピアノの上で憲にあるべきものではない。

内部にくいいるためのものだ」難1と違べている。纏

えば,第i懸〈デルフィの舞い観たち〉の特に奏

法上のタッチに離する露について検討してみよう。

この麟1まほとんど1穣音にて奏され,ギ寧シャ;神殿

謄?8一穫

を思わせる荘重で;神秘的な慰し1の麟であるが,こ

の齢の演奏にあたっては,ドビュッシーのびうそ

うした厘するようなタッチが必要であ琴.また,

タッチ1二よる音{竺の変{とが大切な麟でもある。こ

の麟1ま婆ノ卦簸にわたる荘重で静かな旋律で始まる

が,褪めの2小節は内声部に後半の2小節はソプ

ラノにその議i律が移っている。 ドビュッシーはこ

の旋律の部分はレガートに,亀の報音はメゾスタ

ッカートで記議しているが,こ・は蔑律を強調す

る意味で,あえて叢蓮律をレガートに飽の報音をメ

ゾスタッカートと区駕して演奏しなくてもよいと

、馨う。ただ寺寅奏にあたってはタッチによって豪男め

の2小金霧ま内声を浮かせるよう右手の2の指を強

めに,後半2ノ罫籔は婆・5の詣,すなわちソプラ

ノの音をはっきりと浮1かすようにお・さえて才蜜奏す

る。具体的には,おさえる捲を軽く鍵盤に絞れ圧

するようにゆっくりおさえ,更に強く鍵盤をつか

むように深く壽さえる。 (実鐸祭にはエスケープメ

ント・レベルでのスヒ。一ドによってその音の彗蜜さ

音色は決ってしまうのだが。/第4小節の第2拍後

半からの報奮の下降は蚕}Pで明るく,そして沈みゆ

く色彩の変化(ハーモニーの変化1を感εながら

磁醗をきかせて演奏する。そのため,ここはアゴ

ーギグによるゆれが多少あった方がよい。ここの

報音のタッチはただ単にソプラノだけが強く浮か

せるのではなく,ハーモニー全{本を大{雰に響かせ

たいところである。(勿i論,ディヒラーのいう美し

い音を出すため幾分1まソプラノの音が彗蚕めに奏さ

れるが。〉ドビュッシーはこうした夕峯声を浮かせる

毒薄奏に業重してヂ名著寅奏家の第5指1ま,ヨ猛にきずだ,

 一ハーモニーは:メ賢デ4を重視する考えの綴下

に』立つものでたく, 2つは一身羅{奉の関{系にある

もので,歌はたんにぼかし浮彫りくらいの陳付け

の役割しかもたないもの轡と遠べているように,

鴬にソプラノあるいは,薦律を強く奏するのでは

なく,ハーモニーそのものの響きを大切に薯寅奏せ

ねばなら雄ことを捲鑛している。また,穣音内で

飽のノぐ一トの』音より彗螢く浮き、勲らせるよう奏さね

ばならぬところ1ま,声部をかえて記議した琴,音

符の上に矯かい線一をつ1幸るか,あるいはレガー

トやスタッカートによるアーティキュレーション

の変化によって示している。第6小雛からは蔚の

楽簾と岡診養律が繰蓼返えされるが,旋律と報音

が半捲遅れ交互に奏され,麓律の方は浮かすよう

に少し強めに,半拍ずつ遅れて打たれる穂音の方

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ドビュッシー弩舞奏葭簾」グ)演奏1:ついての一考察/その王} ii

はPPで圭匂1舞のとれたタッチで奏する。第iiノ∫、婁器か

らは舛・声の下降する差建律を明るいPPでよく響かせ

浮き慮るように,それと対称的に上昇する報音は

おさえるように, しかも均衡のとれたタッチで音

色を変えて奏する。第i5小簾からは,また,内声

部に縫律が移麟するが.全体としてノとなり充実

した響きが要求されるが柔らか雛感じでしかもノノ

ではな残第2i小簾からの旋律はオクターブでレガ

ートに,季麦打ちの和音1まスタッカートに言曇譜され

ているが,ここは1その厳密に奏さなくとも,それ

よリタッチにて獲律を贈るいPではっきりと穣音

はやや暗くおさえるように音色の変此をつけて奏

すれ繕fよも嵩と患う。第25ノ卦欝董1よ業容めの動機力婁率嚢声

によって奏されるが特定のパートの音を強く奏す

るのではなく,均衡のとれたタッチで奏する。最

後第2§小簾のノの綴音は鍵盤をしっかりっかむよ

うに深く押し下げ柔らかい∫で,次の小簾の同じ報

音も嚢薩の穣音の響きの残響の内での欝Pでしかも,

しっかりと蔑…するようなタッチでおさえる。この

麟は纏かい旋律とそれに対癒する穂音が交互に演

奏されるような構絞になっており,一つ一一つ(今1穣

音のタッチを変えながら,その微妙に変化する色

彩感を大{雰に感じとりながら演奏することが大{灘

である。

 「ドビュッシーは麹分の音楽を章寅奏するピアニ

ストは:ピアノをノ、ンマーのないものとして考える

べきだ墾というように破独特の鍵盤にぴったりつ

いて離れないようなタッチカぐ要求されるeしかし

これとは反鰐にプ質コフイェフSe竃響Se醤ey¢、4-

c鼓Pro薮。麩εv(i8§i~玉9§3〉ノ勲レトークB襲aBart6藍

(i88i~董94瞬あるいは:ストラヴィンスキー亙籔鍵

Feoδoro醜磁S甘a軸蕊y(i882~欝7i/等はピア

ノは:打楽器であるとしてその特誓…を生かしほとん

どペダルを硬わず衝撃的で金羅的な響きで演奏し

た。ドビュッシーもまた,常にこのようなタッチ

ばかりではない1叢溺れのよい騰る静スタッカート

の音楽においてはこうしたむしろ指先を堅く打つ

ようなタッチも必要である。{強えば,第5麟〈ア

ナカプ琴の丘〉の第i珪小簾からの右手の露分音符

による軽量爽な蕊…律,第i2麟〈ミンストレル〉のi6

分音符のスタッカートの動きなどは1そうである。

 次にペダ琴ングについて逮べよう。ペダリング

については,微妙なタッチと権挨って特に難象派

の音楽のように音と音の重な鯵の中に淡い雰暖気

をかもし出すドビュッシーの音楽にお・いては重要

な課題である。ドビュプシーはチンボ,フレージ

ング,アーティキュレィシ3ン,ディナーミク,

それにルバート等.詳しく記入しているがペダ琴

ングについては記入していない。D曜aη{碁緩の原典

を見ると唯一ケ所第2麟〈競>の最後に見られる

のみである。このペダルの使繕については,鍵盤

を押すタッチの問題同様,演奏考の演奏技術の麗

題に入るからである。ネイガウスも「警衛的ペダ

ルの隣題1ま音の形象の翼題とまったく燐獣まなせ

ない。だからこそ楽譜のなかのペダルの標記がど

れほど精密であるとはいえ,あら曲るペダルがそ

れほど不完全なものである攣と逓べている。しか

しドビュッシーの楽譜を詳しく見れば,ある程農:

のペダルの使醗が邊解されるよう謡講されている。

飼えば,ペダルの長さは左手低音のバスの長さに

よって決められるし (譜2〉彊線によっても一部

示されている(譜3〉

緩善2〉{灘においては,左手のB音の長さと等し

くペダルを踏みつづけ,(譜3〉綴においては麟の補

めからペダルは踏み2小簾一醍踏み続けて隣る。

第5・6小簾も懸様であるがこちらは亨の葎がな

いので第7ノ卦釜爺まで…露嚢髪沓み続1ナる。ドビュッシ

ーは書葉でも鍵墨tt鋸,磁媛SS繊t v池rerと記入し

ている.また第2臨の第i5小簾からの動きについ

てもここはどうしても2小簾づつペダルを踏まざ

るを蓄辱ない(譜逢〉

 また譜鯛の先第2i小簾からは低音のバス8音の

長さによって2小簾あるいはi小簾をそのまま踏

み続ける。

 ドビュッシーはペダルの技衛をド呼畷のような

もの肇と考えていたという。被のピアノ麟の演奏

にあたっては欠くことの出来ないものであ鯵,更

に演奏の時々の状態の必要に癒じて踏まなければ

なら轟ものである。このペダリングを講どるもの

は,磨きすまされた鋭敏な耳である。したがって

演奏する楽器あるいは演奏の会場の響き具合によ

ってもその使絹は当然変ってくる。ギーゼキング

は「完全なペダル使いはそみときどきの音楽的状

溌に瞬懸的に対癒してはじめて達成することがで

きるものであるゴ脳と遠べている。

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i2 福藷大学教奮学部論集築欝彗 博7琶一驚

(譜欝戯の第33小簾より麟

   .一  ( (  ( (  (露 」「ラ一 ㎜

4“

妙 一 一                   一 タ{ 一 }

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き(譜3〉アナカプ縫の丘の燐めの部分

(一当率.(:

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ドビュノシー弩霧奏盤箋」の演奏につい“ζ一の一考察(その亜) i3

 ペダルの鐘矯については音のひびきをよくする

ため, レガードに奏するため,音色の変{ヒを与え

るため,音量を増1大させるためとその難的はいく

つかあげられるが, ドビュッシーの醸を豪蜜奏する

にあたっては特に音のひびきをよくするため,春

色の変箆グ〉ために多く購いる。このペダルの綾絹

によって,いくつかの旋律が,または,穣音が重

なって響かせることによって特殊な雰露気をかも

し鐵す。したがって数小簾踏み続終ることも,し

ばしば見受けられる.このペダルの綾羅にあたっ

ては,いつどこで踏むかということも大燐である

が.どの{立踏むかその踏み簾滅が大窮である。ペ

ダ簿の下まで完全に踏むフル・ペダル,半分位踏

むハーフ・ペダル,更には壱位踏む場合,甚位踏

む場合もある。このフル・ペダル以下をすべてハ

ーフ・ペダルに含めると,ネイガウスは8倉%はハ

ーフ・ペダルを購いるというし齢,ワルター・ギー

ゼキングは今盤紀最大の印象濠の演奏家といわれ

特にドビュッシー才寅奏の第一人者であるが,この

ハーフ・ペダノレ使絹の名人であった齢といわれる

ように,ドビュッシーを演奏するに,長いペダル

を鐙んでいる懸所が多いがこのハーフ・ペダルの

有効な{吏絹がこのξ寅奏を成功させる鍵でもある。

このペダルの綾羅については燐むのと瞬時にまた

離す練減が大湧である。下まで踏み続けたペダル

を完全に上まで上げずにひびきを少し残してすぐ

に踏み換えるペダルが必要である。この披講はダ

ンパーが弦を半分おさえて離れるため震難が完全

に洋重えることなく残響が残る。特に高音の倍音(響

き〉が消され低音が残る。 ドビュッシーの羨奏鹸

集には,しばしば低続音が屍られるが,その閣ペ

ダルを踏み続縁るとあまりにも濁導過ぎる場合が

ある(特に∫において/簿えば,第総懸〈波める

寺〉の嬉28小簾からのコラ一夕囑な稲音の連綿:

ついてである。このような場合,窪手のC音を∫ノ

でしっかり弾きペダルをフ陶・ペダルで下まで踏

み込みコラールの報音を演奏するにつれその濁り

の具合を耳で響薮しながら鞍音が変るところです

ばやく踏み換える。この際完全に上までペダルを

上げることなく響きが残るよう蕗み換えるのであ

る。そうすることによって抵続音のC音はびびき,

圭二声のコラール風の報声の連続もそう濁らずに演

奏することができる.この藩奏臨集を演奏するペ

ダル妓徳の鍵はここにあると思う。讐通ペダルの

記号は踏む記号と離す記号のみでそれがどの獲麟

み込むのか,あるいは,どこまで上げ戻すのか不

覊醗である。しかし,麟奏懸集の演奏にあたって

は,完全にペダ彬を下まで踏み,または上げるい

わゆるフル・ペダルの綾絹よ鯵ぱ半分下げ,また

1ま, トまで餐蕾み込み離す場合に完全1二音が量二まる

までL揮ずにダンパーが弦に駿れた瞬懸1二踏み返

えすこうした技馨重が大切に思う。ジ葺ン・ラスト

はこの妓籍をハーブ・ペダルでなく,クイック・

ペダルと浮んでいる懸がこのようなペダルの使絹

が葬常に多い。したがって,ペダナレは踏む綾徳も

さることながら離す技鯵量がより大{灘である。鱗え

ば,第尋醗,この麟慧そうしたクイック・ベダ勘

によって踏み換えるところが多い。第i8小簾より

省手は談sとClsによって難き左手が報音によっ

て旋簿がほのかに浮き鐵て歌う部分があるが.こ

この所のペダ》ングについて第2i小簾までは小簾

の麟で,第麗小簾と第23小難は半拍遅れた付点窪

分音符のところで踏み換えられるが,ハーフ・ペ

ダルで踏み.踏み換えはクイック・ペダルで行う。

また第2§小簾の報音も一つ一つグイック・ペダル

で踏み換えるとよいと思う。箋§懸の第難ノ卦簾寿}

らの左手のF童sと至)熱の玉6分音符の動きのところ

と,垂麦半の第7窪層、隻爺フがらの動き(覆部分も共1こ左手

はレガートに右手はスタッカートで奏されるが,

ペダ膨を全然踏まないと乾燥した感じになりここ

の部分はペダルをほんの少しすなわち毒位驚み右

手は指の先に少し力を入れ購確なタッチで軽快に

演奏する。

 左のペダ庵の使矯については,グランド・ピアノ

とアプライト・ヒfアノで1まその構造が違うのでそ

の綾絹については気をつけなくてはならない。グ

ランド・ピアノは,左のペダルを踏むことによっ

てハンマーが右に少しずれ.3本の弦が2本に,

2本の裟玄はi本になりしたカぐって,響i力数輩、さくな

り音色も変化する。これも音量,音毯とも急に変

化するため,右のペダ勘隅棟ハーフ・ペダルを踏

むことによって,その差をいくらか緩1醸すること

ができる。すなわち, 3本の餐玄1よそのまま響かせ

るようにするがハンマーの頭の部分がいつも打つ

堅い部分と違い柔らかい藻分にて打弦するためそ

の音色が柔らかい感じになる。(あるピアニストは,

ピアノ講律纈に左のペダルについてフルに踏んだ

とき3本目の彗玄海ぜわずかにノ、ンマーに航れる{立に

調律してくれと頼んだという。これは左のペダル

は常1こ3本彗玄を2本弓玄にすることなく3本弦のま

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錘 福島大学教官学認譲纂第鍵馨

までその楚果を上げることを物語っている。〉ドビ

ュッシーのこうした琶彩豊かな麟を演奏するにあ

たっては.その効果を手分発揮するため,右のペ

ダル講様,左のペダルの綾絹を併醸することによ

りその効果をより、量づデることができる。 しかし,

アプライト・ピアノのペダ篤の場合は,左のペダ

勘を籍むとハンマーが弦に透ずく構造になってお

吟溺εスピードによって打輩建した音であっても,

ノ、ンマー寿ぜ著書玄するまでの餐憂離毒サ無憂力、くな湾青めす

小さくなるようになっている。そのため鍵盤が少

し軽くなり感纏が変りタッチによる微妙な変乾を

与えにくくなる。また,音色の変化もグランド・

ピアノよりその効果1ま薄いのでその鰹…灘1こあたっ

ては特に気をつけねばならない。

 以上ドビュッシーの蕩奏懸集を演奏するにあた

って涯意すべき3点について遠べたが更に注意す

べき点について少しく違べると,フレージング,

アーティキュレイション,ディナーミク,ルバー

ト等は詳繕に言藝譜されている。更1こ蛋塗懇、について

も楽語や短かい言葉にて瞬記してあるので,これ

ら醇謹護王されている毒養君己暑1こついては1正蓑窪に趨・実に

1憲奏するよう・む力鑓ナることである。 ドビュッシー

も紅綬心の注意と容赦ない§でそれが守られてい

るかをみていた蛍というように練習に入る講にこ

れらの諸護褻号について詳しく縷言書する必要がある。

 麟奏醜集のテンポについては速度標語及ぴメト

鰹ノームの数字によって,はっきりと示されてい

る。 ドビュッシーの音楽1ま負業多的なひびきを重1ん

ずるため,テンポ,摩ズムが曖昧になりがちであ

るがテンポの変化の蓬1示のないところは,テンポ

も鱗ズムも一定に王難iに演奏する。第玉麟〈デル

フィの舞い観たち〉のドビュッシー自身の肇覆螢の

ときは, メトPノームのような廷萎窪さで蓄寅奏して

いだ鷲というしまた「指示のある懸所以弊では,

テンポは原雛として均一であり3難「リズムの途中

で引き建ばしたり,みだりに遠さを変えることば

致命的である。」欝しかし「シ避ノ竃ンの醗の演奏のと

きのように,ドビュッシーの場合もルバートはつ

きもの攣であ陰,その場合も「車盆享饗や孝倉子を変え

るので1まなく,ニュアンスと勢いを変える塗ので

あって,そうしたテンポの揺れ,すなわち,アゴ

ーギグはしばしば見られるしまた演奏にあたって

は必要である。ドビュッシー音楽の特徴である色

彩的ひびき,音色の変化というものは,このアゴ

ーギグとディナーミクに関係があり微妙な音楽的

徳器一難

揺れ1こよって色事多交き崇がより一と1がるのである。夢舞

えば第i麟〈デナレフィの舞い観たち>の第5・6

小簾の下降の和音,翻むく第§・臆小簾の下降の

稲音の部分,更には第些藤〈音と香りは夕暮れの

大気にを票う>の肇君めの、上舞!奪形,あるいは第5麟

の中間部第32小籔からの左手の麓律の動きなどで

ある。この第尋麟は特にε溢re艶瞼嬢ナSe鞭ez

膿夢磁.衰ete鍼,幽s茎e蟹,C鍵εz,裂癒ato,と

醤まぐるしくそのテンポグ)変{ヒの書意示くがあるが,

その地,捲示のない音聾分においてもアゴーギグが

あり,曲の雰麟気を作るため総かいニュアンスの

変化の必要とする楽麟である。また最後の第鎗麟

の〈ミンストレノレ〉の豪男めの部分は特にテンポの

揺れが大きく表現しなければならぬところである。

 デュナーミクについてはその大部分はPPPから

ノまでであ弓,ときにはかや涯ブも弔いている。ガ∫

は第獲麟の最後のところで苑火を打ちまゴデたよう

に,明るい華やかな麓で終っている。第7懸〈西

颪の見たもの〉は, ドビュッシーの麟1こ1まめずら

しく激しい音楽であり,がが多く晃られる。 一般

的には,そのニュアンスはP以下のものが多くそ

れも,登,P蝕P,PP,P雛PP,PPPと碧以下の纏

かい変{とが天綴なようである。その勲費も隣るい

P欝,霊童のような費P,賠:いPP,柔らかい欝欝とそのニ

ュアンス1ま微妙である。第2麟歩第垂霞の最垂髪の

部分などは,全身の力が脱けてしまったような塵

鷹廃案、態の夢野,欝欝費で奏される。また,夕籔が本実む

ように,一亥彗一亥彗とそのあたりの色彩が変化する

ように青魚の変死をも聴、き分けなカぜら蓄籔奏する。

きらに深い海原へ静かに沈み融くように第鎗難〈沈

める寺〉の第逢2小簾からのようにi小簾ごと葺》,

P瞬費,PP,P搬PPと羅1音の色彩豹変{ヒを聴きな

がら繊纏なタッチによって少しずつ畜量を減少し

つつ演奏される。このようにP以下のニュアンス

が多いがただ単に弱く柔らかい音だけではなく心

の通った,そして大きなホールでも十分響くP,PP

がほしいものである。

おわ撃バこ

 嫉_飲述べたようち, ドビュッシーの毒奪奏酸集を

演奏するにあたっては,印象派音楽の特…微を知る

と共に被独特の色彩的な音楽を表現するための鋭

敏な感覚と,その色彩効果をあげるための繊纏な

タッチと,ペダ弓ングの韓究・練習がよ弩表構で

ある。講各慈の具体的奏法については次璽に違べ

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ドビュッシー「蒲葵懸纂」グ凝寅奏iこついて’の一考察(その}/ 蔦

ることにする。

   注・参考文献

働バッハ・インベェンション演奏についての一

考察。福島大学教育学郭講集第25号の3,欝器隼

 き)o搬ε魏重co Sca罫la癒のソナタ演奏に関する一考

察。福島大学教畜学部譲薬箋26号の3,欝腿隼

/21亙)o照経ぬy G算α膿著,織部幸三・戸口幸策共

訳「西洋音楽虫下」音楽之友鍾董〉鍵5

/3/ ドビュッシーと印象滋について

平島正郎はその著ヂドビュッシrの中で葎象濠

か象籔灘か結局のところドビュッシーの音楽の特

籔を十分に艶握した様式論は現窪あらわれていな

いように患われると遽べている。また「標準音楽

辞典」の中でゼ音楽ま二の印象滋1まドビュッシーをそ

の代表者とするが,印象濠は,一時代を完全にし

たがえる支醗的様式となるまでにはいたらなかっ

た。時代精神に基盤をおく歴史的様式とはいうも

ののさしあたっていわば一驚の作麟家たちのig崔1

紀末から20黛紀締獺にいたる纒々の様式を総捲し

連縄づけるものと考えるべきである」と述べてい

るまたマルグ!声ット・冒ン著「ドビュッシーとピ る

アノ麟」の中でドビュッシー自身は自分は印象滋

でないと鐘琴書している。しかしト言ビュッシーの評

論集「音楽のために」の中で披は「印象というこ

の書葉をよくおほ1えていてくだきい。この譲葉を

私が撰:りどころにするのも,一{雰の寄生的な美学

から露分の感動を鉾秀籍する自由というものを,こ

れが私に残しておいてくれるからである。珪と述べ

ている。

(4)麟掲書「西洋音楽虫下釜}}8慧

(5/ド標準音楽瀦典」音楽之友縫p66

鯵) 平島正嚢婆著ヂドビュッシー」音楽之友裡1碧玉22

/7/野上チュードゴ50.感.3()発行 ミュージック・

ジャーナル社 桑津麩雑著(フランス象徴派詩人

と音楽l P36

/8/ ノーマン・デマス著,徳永隆男訳ヂフランス

ピアノ音楽史3登1欝

懲/ 「ムジカ・ノーヴア3簿73年6日号P28,単材

洪介著(ドビュッシーとその周辺/

麟 繭掲書「ピランスピアノ音楽史暴P欝8

繧/ヨーゼフ・ガート著,大宮真琴訳「ピアノ演

奏のテクニック盛音楽之友縫∫}捻

!欝 ヨーゼフ・ディッヒラ一著,渡透護・尾高簾

子訳算ピアノ1寅奏法の芸繍量的完成3Pきi-53

農3) マノレグリツト・窪ン著,室幸享介訳「ドビュッ

シーとピアノ麟塞音楽之友縫P26

(騰表掲書,マルグ》ット・窟ン著「ドビュッシ

ーとピアノ麟」P27

(講 岡上「ドビュッシーとピアノ醸ゴP27

ハ駿馬ド・C・シ3一ンバーグ著,中溝漂攣,矢

島繁湊共訳,芸衛現代社紅ピアノ音楽の甕匠たち

P37i

雛/ゲンリック・ネイガウス著,園部墾部訳「ピ

アノ演奏警衛について」音楽之友被P}17§

麟髄℃a磁Prel磁esC翌a曲Deも駿ssyより転載建霧 蔚掲書  マルグリット・ロン著「ドビュッシ

ーとピアノ麟j P37

(轡 ギーゼキング著.杉浦簿訳紅ピアノとともに」

白水娃至》i83

韓馨 霞}揚書,ネィガウス著ドピアノ演奏芸馨糞こつ

いて」Pi77

⑳ 麟掲書,ショーンバーグ著ドピアノ音楽の琶

匠たち涯費399

乾2/ ジョーン・ラスト著,黒鱗武訳「学習者のた

めのピアノ演奏の解報」全音楽譜出額種Pi2婆

 私はハーフ・ペダル以下垂・甚のペダルも含め

てハーフ・ペダルと呼ぶことにする。ジ避ン・ラ

ストはこのようなハーフ・ペダルをハーフ・ダン

パーと呼び,ハーフ・ペダルを,クイック・ペダ

ルと曝んでいる。しかし私は.ハーフ・ペダルと

クイック・ペダルとは区甥し,クイック・ペダル

は踏み込みは,フル・ペダル,ハーフ・ペダんい

ずれでも離す燦にいち早く踏み換えすペダルをク

イック・ペダ膨と浮ぶことにする。

(23/ 岡上 「ドビュッシーとヒfアノ麟」費27

乾辱 霞1掲書「ドビュッシーとヒfアノ麟J Pi(踵

偽 薩掲書,ギーセキング著「ピアノとともに匪

P2i8

!2萄 前掲書ヂドビュッシーとピアノ臨ゴP38

穣窪2霧網主. 「ドビュッシーとピアノ曲ゴ費45

   参考楽譜

/il P雌麟esC董a曲Oeも慧ssy馳を油sD罎r雛δ()r縛難艶,

/2) ドビュッシーピアノ麟集V 安lil擁寿子孝交譲圭

音楽之友袖

!3/Cla麟eA,Deb簸ss”rel磁es全音楽譜墨叛縫

   レ纂一ド

/糞 前奏麟集第i巻  ドビュッシー, ピアノ,ワ

ルター,ギーゼキングA8一総58

12/麟奏麟集第i巻,ドビュッシー,ピアノ,安

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i6 橿鳥一大一蜜r教誓事詳鉾寡暮譲.集第3(}筆} 欝7琶一嘗

燐擁寿子,Slx-7§蔦               繊 前奏麟集第i巻 ドビュッシー ピアノ・サ

/鋳 前奏麟集第茎巻, ドビュッシー ヒfアノ・ミ  ンソン・フランソワ EAC-7()2尊2

シエ,ナレ・べ’寮フ £AC-7蟹》5i

         AS雛dyo釜山ePer{or驚膿ceo{C玉&醸墨εA.

              De菱}蓑ssジs P罫ekdes  Parti

                               K麗就綴欝 SA亙丁O

 T紮e曲1εc毛。ξ藏sβa群ls竜oex轟1麟藝e爵ee麺資tswes勤。鰻1鋤ays夢eclal践tte醗lo猷ol鍵鮭鱒εrξ一

(}r醗a資。εo∫De董}罎ssゾs Pre至難{墨es:t難at ls,毛06eve茎。費a轟轟e,se鶏s董t量ve e禽r,to弩e重a客oo{玉t{)糠。}董w}}lc骸ca糞

魯X置eSS磁ICateS捻6eSO{CO董O耀S短毛難eP罫e熱壷S,雛δ齢総OV劔,tO陣¥ClOSea竜te資tlO凱0夢e齪撫琶aS

well as tO I賑{}to翅C}垂キ