クラウドファンディングと地域再生 -...

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証券経済研究 第88号(2014 . 12) 17 近年,世界的にクラウドファンディングが注目されている。 我が国では,2013年6月に閣議決定された,政府の日本再興戦略を受けて,金 融審議会が資金調達の多様化および地域のリソースの活用のための方策として, クラウドファンディング等を通じた資金調達の枠組みについて検討を行い,さら に第二種金融商品取引業協会も「投資型クラウド・ファンディングに関する検討 会合」を設置し検討を行っている。 他方,現政権下でも,地方創生関連法案が審議され,地域活性化・再生は,重 要な課題と位置づけられているが,かねてより内閣官房地域活性化統合事務局に よって「ふるさと投資プラットフォーム推進協議会」が設置され,一般から小口 の投資資金をファンド形式で調達し,地域活性化を促すという試みを支援する取 組が進められている。 本稿では,クラウドファンディングの類型を確認した上で,日本での現状を概 観するとともに,世界規模でのクラウドファンディングの市場規模と最近の動向 を検討する。その上で,地域再生におけるクラウドファンディングの役割を考察 する。さらに,今後クラウドファンディングが拡大するためには,規制の役割が 重要な課題となることを踏まえ,規制のあり方について検討を加える。 特に,地域再生という観点では,地域の小規模な事業者の活性化・再生が重要 な課題であり,そこではクラウドファンディングが重要な役割を果たし得ること を示唆した。 ただし,今後のクラウドファンディングの成長にとって,規制のあり方をどの ように設計するかは,きわめて重要である。過剰な規制が採用されると,このよ うなスキームはコスト面で成り立たなくなる反面,過小な規制状況では,不正の 横行が懸念される。適切な規制をどのように設計するかは,今後のクラウドファ ンディングの成長にとって不可欠な課題である。 クラウドファンディングと地域再生

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証券経済研究 第88号(2014 .12)

17

要 旨

近年,世界的にクラウドファンディングが注目されている。

我が国では,2013年6月に閣議決定された,政府の日本再興戦略を受けて,金

融審議会が資金調達の多様化および地域のリソースの活用のための方策として,

クラウドファンディング等を通じた資金調達の枠組みについて検討を行い,さら

に第二種金融商品取引業協会も「投資型クラウド・ファンディングに関する検討

会合」を設置し検討を行っている。

他方,現政権下でも,地方創生関連法案が審議され,地域活性化・再生は,重

要な課題と位置づけられているが,かねてより内閣官房地域活性化統合事務局に

よって「ふるさと投資プラットフォーム推進協議会」が設置され,一般から小口

の投資資金をファンド形式で調達し,地域活性化を促すという試みを支援する取

組が進められている。

本稿では,クラウドファンディングの類型を確認した上で,日本での現状を概

観するとともに,世界規模でのクラウドファンディングの市場規模と最近の動向

を検討する。その上で,地域再生におけるクラウドファンディングの役割を考察

する。さらに,今後クラウドファンディングが拡大するためには,規制の役割が

重要な課題となることを踏まえ,規制のあり方について検討を加える。

特に,地域再生という観点では,地域の小規模な事業者の活性化・再生が重要

な課題であり,そこではクラウドファンディングが重要な役割を果たし得ること

を示唆した。

ただし,今後のクラウドファンディングの成長にとって,規制のあり方をどの

ように設計するかは,きわめて重要である。過剰な規制が採用されると,このよ

うなスキームはコスト面で成り立たなくなる反面,過小な規制状況では,不正の

横行が懸念される。適切な規制をどのように設計するかは,今後のクラウドファ

ンディングの成長にとって不可欠な課題である。

松 尾 順 介

クラウドファンディングと地域再生

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はじめに

近年,クラウドファンディングが注目されて

いる。クラウドファンディングとは,必ずしも

明確な定義が確立されているわけではないが,

インターネットを通じて多数の資金提供者を集

め,投資や寄付などの形態で小口資金を資金調

達者に提供する仕組みと理解される。通常,多

数から小口の資金を集めるためには,相当な調

達コストがかかるが,IT 技術によって,ウェ

ブ上で情報提供から契約や決済などの手続きが

低コストで容易に行われるようになったこと

が,クラウドファンディングの運営を可能にし

ている。さらに,クラウドファンディングが広

がっている背景には,フェイスブックなどの

ソーシャルネットワークが普及したことで,こ

れらを介してビジョンや価値観などを共有する

人々が集まるネット上のコミュニティが形成さ

れたことが指摘できる。つまり,このようなコ

ミュニティの中で,多種多様な目的のもとに資

金提供者と資金調達者が出会い,資金のやり取

りを行っている。したがって,クラウドファン

ディングには,寄付型,物品・サービス購入

型,投資型など,資金の性格の異なるものが混

在しており,資金調達者や資金使途なども多岐

に及んでいる。

そのような状況の中,我が国では,2013年6

月に閣議決定された,政府の日本再興戦略を受

けて,金融審議会が資金調達の多様化および地

域のリソースの活用のための方策として,クラ

ウドファンディング等を通じた資金調達の枠組

みについて検討を行っている。つまり,ここで

は新規・成長企業に対するリスクマネーの供給

促進策として,クラウドファンディングが取り

上げられている1)。さらに,同審議会の審議に

対応するため,第二種金融商品取引業協会は,

「投資型クラウド・ファンディングに関する検

討会合」を設置し,2013年8月から検討を開始

している2)。

他方,現政権下でも,地方創生関連法案が審

議されているように,地域活性化・再生は,重

要な課題と位置づけられているように,2012年

8月に内閣官房地域活性化統合事務局によって

「ふるさと投資プラットフォーム推進協議会」

が設置されており,一般から小口の投資資金を

ファンド形式で調達し,地域活性化を促すとい

う試みを支援する取組が進められている3)。こ

の観点から考えると,地域の中堅・中小企業,

さらにはコミュニティ・ビジネスやソーシャ

クラウドファンディングと地域再生

18

Ⅰ.クラウドファンディングとは

1.クラウドファンディングの類型

2.クラウドファンディングの現状と規制

Ⅱ.クラウドファンディングの世界的市場規模

1.massolutionによる調査と分類

2.世界のクラウドファンディング市場の成長と

内訳

3.キャンペーンの成功率と活発さ

4.クラウドファンディング市場の今後の発展

Ⅲ.地域再生におけるクラウドファンディングの役

1.クラウドファンディングによる再生事例(酔

仙酒造)

2.クラウドファンディングによる再生事例(八

木澤商店)

Ⅳ.クラウドファンディングにおける規制上の課題

まとめ

目 次

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ル・ビジネスにとって,クラウドファンディン

グが有力な資金調達手段となる可能性がある。

したがって,本稿では,クラウドファンディ

ングの類型を確認した上で,日本での現状を概

観するとともに,世界規模でのクラウドファン

ディングの市場規模と最近の動向を検討する。

その上で,地域再生におけるクラウドファン

ディングの役割を考察する。さらに,今後クラ

ウドファンディングが拡大するためには,規制

の役割が重要な課題となることを踏まえ,規制

のあり方について検討を加える。

Ⅰ.クラウドファンディングとは

1.クラウドファンディングの類型

「クラウドファンディング(crowdfunding)」

と呼ばれているものの定義は必ずしも明確でな

い。通常,ネットを通じた不特定多数からの資

金調達をこの名称で呼んでいる場合が多く,そ

の資金調達には,寄付,物品・サービス購入,

投資などが含まれている。金融審議会資料で

は,資金調達別にクラウドファンディングを寄

付型,購入型,投資型に分類している。

寄付型は,ウェブ上で寄付を募るものであ

り,金銭的リターンは想定されていない。この

種のクラウドファンディングとして有名なもの

は,一般財団法人ジャスト・ギビング・ジャパ

ンが運営する JustGiving Japan であり,同サ

イ ト は,2001 年 に 英 国 で 設 立 さ れ た

JustGiving を端緒として,2010年3月から運

営が開始された。このサイトでは,寄付を呼び

かけるのは,サイトの運営者や資金調達者では

なく,チャレンジャーといわれる呼びかけ人

が,支援する団体を指定して,サポーターと呼

ばれる資金提供者に寄付を呼びかける仕組みと

なっている。その際,支援先は,子ども,社会

環境,医療・障がい・介護,人権,地域芸術・

スポーツ,教育,自然資源・エネルギー,被災

者など17の分野から選択する。現在,寄付金総

額1,077,860,223円,チャレンジ件数5,773件,

寄付件数101,002件,寄付件数896団体となって

いる4)。なお,iPS 細胞の研究でノーベル賞を

受賞した山中伸弥教授もこのサイトで研究費の

寄付を募集したことが報道されている5)。

購入型は,ウェブ上でモノ作りなどのプロ

ジェクトに対して資金調達が行われ,そのプロ

ジェクトの成果となるモノやサービスなどが対

価として資金提供者に還元される仕組みであ

る。現 在,こ の 種 の サ イ ト と し て は,

READYFOR? (レ デ ィ ー フ ォ ー),

CAMPFIRE(キ ャ ン プ フ ァ イ ア ー),

COUNTDOWN(カウントダウン),motion

gallery(モーションギャラリー),myringHR

(マイリングエイチ・アール),WESYM(ウィ

シム)などがある。例えば,READYFOR?

は,同社の HPによると6),同社は日本初のク

ラウドファンディングサービスであり,取扱額

でも国内最大である。また,2011年4月の開設

後,約400プロジェクトの資金調達を行い,こ

れまで合計で約3万人から約2億4千万円を調

達している。さらに,他のクラウドファンディ

ングサイトに比べ,公共性・社会貢献性の高い

活動への支援が特に多いことを特徴とする,マ

ルチジャンルのプラットフォームとしている。

なお,同サイトで公開されるプロジェクトは,

同社が審査した上で支援募集が開始される。ま

た,同サイトでは,「All or Nothing」型が採

用されており,プロジェクトの実行者は,支援

金の目標金額と募集期間を設定し,募集期間内

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に目標金額が集まった場合のみ,プロジェクト

が成立し,支援金を得ることができる。逆に,

目標金額に満たない場合は,プロジェクトは成

立せず,支援金は支援者に全額返金されること

になる。それは,不十分な資金では,プロジェ

クトは実行できず,支援者へのお礼もできない

からであるという。なお,プロジェクトが成功

した場合の手数料は17%である。現在,同サイ

トでは,小津安二郎監督作品「晩春」の修復プ

ロジェクトに対する資金募集が行われており,

1万円の資金提供者には,修復後のブルーレイ

1枚などが送られることになっている。

投資型は,資金提供者は資金調達者から金銭

的リターンを受けることを想定しており,ここ

には,集団投資スキーム型と株式出資型が含ま

れる。前者は,運営業者を介して,投資者と事

業者との間で匿名組合契約などの出資契約を締

結し,出資を行う仕組みである。また,後者は

資金調達者が株式を発行し,資金提供者はその

株式を取得し,剰余金分配や株価の値上がりに

よって利益を得る仕組みである。この投資型に

ついては,次の2で考察する。

なお,金融審議会の資料では,以上の3分類

以外に,「匿名組合契約に基づき投資家から出

資を募り,集めた資金の貸付を行う形態」が存

在することが注記されている。この場合は,資

金調達者は資金提供者に対して,一定期間後に

所定の利息と元本を返済する仕組みとなる。現

在,この種のサイトとしては,2009年からサー

ビスを開始した AQUSH(運営会社は,株式会

社エクスチェンジコーポレーション)による,

AQUSH ローンマーケットが挙げられる。この

スキームは,匿名組合を通じて出資者から資金

を集め,資金調達者に融資を行うものであり,

資金調達者は AQUSH の審査によって,5段

階の信用格付け(AQUSHグレード)が付与さ

れ,出資者は,この AQUSH グレードと金利

で特定された匿名組合を選択して出資する。そ

れぞれの匿名組合は,特定された AQUSH グ

レードに合致する,個人または法人の借り手に

対して,審査を行った上,小口分散化して貸し

付けを行う。現在,出資額は総額884,017,686

円である7)。また,2013年から日本クラウド証

券はクラウドバンクという業務を開始し,個人

投資家がネットを通じて小口資金をベンチャー

企業や新興国のマイクロファイナンス金融機関

等に貸付ける業務に取り組んでいる。同社のス

キームも匿名組合を設立した上で,ネット上で

出資者を募り,同社が審査し,融資可能と判断

した複数の貸付先に融資を行うものであり,現

在の運用資産総計は177,860,000円である8)。

これらのスキームは,「貸付け型」と分類され

ることもあるが,このスキームでは直接資金調

達者と資金提供者が貸付契約を結ぶわけではな

く9),出資者は匿名組合契約に基づく出資者で

あることを考えると,投資型の側面もある10)。

なお,金銭的リターンを伴うもの(投資型)

と金銭的リターンを伴わないもの(非投資型)

とに分類する考え方もある。この分類によれ

ば,前者はエクイティ投資型とデット投資型に

区分され,後者は寄付型と財・サービス型に区

分される11)。

以上は,資金調達あるいは提供の面からクラ

ウドファンディングを分類したものであるが,

クラウドファンディングの規制を考える際,第

三者の関与のあり方によって規制の内容や種類

も異なるものとなる。そこで,第三者の関与の

あり方によって,プラットフォーム提供型,媒

介型,引受け(元請け)型に分類される12)(図

表2および3参照)。

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まず,プラットフォーム提供型では,第三者

(ウェブサイトの運営者)は,あくまでもプ

ラットフォームを提供しているだけで,資金調

達者と資金提供者の間の取引に関与しない13)。

次に,媒介型では,第三者が両者の間の取引を

媒介するものである。さらに,引受け(元請

け)型では,第三者が引受人となり,それぞれ

資金調達者および資金提供者と取引を行なうこ

とになる。

このように分類した場合,プラットフォーム

提供型と媒介型においては,第三者は資金調達

者と資金提供者間の取引に参加しないため,資

金調達や対価の提供は当事者の自己責任となる

(ただし,プラットフォーム提供や媒介を行な

うことに伴う説明責任などが発生する)が,引

受型では,第三者は両者との取引に直接関与す

るため直接的な責任を負担することになる14)。

2.投資型クラウドファンディングの現

状と規制

1で述べたように,投資型クラウドファン

ディングには,集団投資スキーム型と株式出資

型がある。現状を見る限り,前者は匿名組合方

式を採用するスキームがほとんどを占めている

ものと思われる。また,後者は新株式発行によ

る事例が出てきている。

集団投資スキーム型としては,メディア等で

もよく紹介されているのが,ミュージックセ

キュリティーズであり,同社は2000年に設立さ

れ,当初は音楽ファンドを運営していたが,現

在では食品,日本酒,衣料,農業,林業,ス

ポーツクラブ,工芸品,さらに被災地や途上国

支援など多種多様な業種・分野に投資するファ

ンドを運営しており,これらはいずれも匿名組

合契約である15)。ただし,同社の場合は,単に

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業登録の要否

事業の収益商品・サービスなし対価

運営業者を介して,投資家と

事業者との間で匿名組合契約

を締結し,出資を行う等

購入者から前払いで集めた代

金を元手に製品を開発し,購

入者に完成した製品等を提供

する等

ウェブサイト上で寄付を募

り,寄付者向けにニュースレ

ターを送付する等

概要

投資型購入型寄付型

図表1 日本におけるクラウドファンディングの概況

類型

※上記のほか,匿名組合契約に基づき投資家から出資を募り,集めた資金の貸付けを行うといった形態も存在。

〔資料〕 各種ウェブサイト

〔出所〕 金融審議会「新規・成長企業へのリスクマネーの供給のあり方等に関するワーキング・グループ」第1回会合配布資料,

p.13

http://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/risk_money/siryou/20130626/03.pdf

数百万円〜数千万円程度数万円程度資金調達規模

一口1万円程度〜一口1,000円程度〜一口1円〜

(任意)

一人あたり

投資額

第二種金商業−−

主な

資金提供先

被災地・途上国等の個人・小

規模事業 等

被災地支援事業,障碍者支援

事業,音楽・ゲーム制作事業

等を行う事業者・個人 等

音楽関連事業,被災地支援事

業,食品,酒造,衣料品 等

数万円〜数百万円程度

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金銭のリターンだけでなく,投資先の生産品の

現物給付やイベント参加などの特典をつける

ファンドも多く,購入型の要素も併せ持ってい

る面があるといえる。

他方,株式型16)としては,2013年8月,日本

クラウド証券が春うららかな書房の新規発行株

クラウドファンディングと地域再生

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〔出所〕 有吉[2013]p.17

第三者(引受人)が資金調達者・資金提供者とそれぞれ取引を行い,資金提供者か

ら調達した資金を資金調達者に供与しつつ,資金調達者から提供される対価を資金

提供者に還元する

媒介型 第三者(媒介者)が資金調達者と資金提供者の間の取引を媒介する

引受け(元請け)型

第三者(プラットフォーム提供者)は,資金調達者が必要情報を掲示し,資金調達

を募るためのクラウドファンディングの「場(プラットフォーム)」となるウェブサ

イトを運営し,提供するが,資金調達者と資金提供者の間の個別の取引には存在し

ない

図表2 第三者の関与態様による類型

プラットフォーム提供型

第三者の関与の態様類型

〔出所〕 有吉[2013]p.18

図表3 第三者の関与態様による類型:類型イメージ

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式をフェイスブックや YouTubeを使って募集

した事例がある。この事例では,1株113,000

円,募集額は約5,000万円であった17)。

ところで,投資型クラウドファンディングの

規制を考察する際,現状のスキームは,資金調

達手段として,不特定多数の投資家に対して株

式発行を行う場合と,匿名組合を利用する場合

とに大別されるため,両者を区別して規制を考

察する。

まず,株式発行の場合については,50名以上

の投資家に対する株式発行による資金調達は,

原則として金融商品取引法上の有価証券の募集

に該当し,株式の発行総額が1億円未満である

ことなどの要件を満たす場合を除き,同法に基

づく開示規制が課されることになる。これに

は,いわゆる「プロ私募」などの例外規定が定

められているが,クラウドファンディングの性

格上,このような除外規定に該当する可能性は

ほとんどないと考えられる。したがって,有価

証券届出書の提出や目論見書の作成・交付など

の発行開示とともに,有価証券報告書の提出な

どの継続開示が必要となる。

さらに,ここで論点となるのは,株式発行に

関与する第三者の位置づけであろう。第三者が

有価証券の募集の取扱いを行う場合,金融商品

取引業に該当し,第一種金融商品取引業の登録

が必要となる。ただし,クラウドファンディン

グにおいては,第三者がどのような行為を行っ

た場合,募集の取扱いとみなされるかについ

て,必ずしも明確な基準はないようであるが,

株式の取得について,事実上尽力した場合,募

集の取扱いに該当するという見方が示されてい

る18)。なお,有価証券の募集の際,当該有価証

券を取得させることを目的として,その一部ま

たは全部を取得した場合,有価証券の引受に該

当し,これを業とする場合,第一種金融商品取

引業に該当する19)。特に,元引受を行う場合

は,財務要件がより厳しくなる。

次に,匿名組合を利用する場合,資金提供者

は匿名組合との間で出資契約を締結し,集団投

資スキーム持分,つまり金融商品取引法上の有

価証券を有することになる。また,集団投資ス

キーム持分の発行者は,業としてこれを行う場

合,第二種金融商品取引業の登録が必要とな

る20)。しかし,クラウドファンディングのよう

な比較的資金規模の小さなスキームを運用する

場合,資金調達者にとって第二種金融商品取引

業の登録は負担が大きい可能性がある(ちなみ

に,最近設立された市民出資型の太陽光発電

ファンドでは,上記の負担を回避するため,匿

名組合を利用せず,信託を利用した事例がみら

れる21))。そこで,第二種金融商品取引業の登

録を必要としない場合としては,発行者が第三

者に取得勧誘を委託した(自分では全く行わな

い)と評価される場合がこれに該当する。ただ

し,その評価基準は明確でなく,スキームの個

別事情に応じて判断されることになるとされて

いる22)。あるいは,資金調達者が1名以上の適

格機関投資家と49名以下の適格機関投資家以外

に限定した取得勧誘を行った場合,調達者が適

格機関投資家等特例業務の届出を行うことによ

り,第二種金融商品取引業の登録は不要である

が,クラウドファンディングの性格上,これに

該当する可能性はほとんどないと考えられる。

また,開示規制については,集団投資スキー

ム持分は,株式とは異なり,流動性に乏しいと

いう理由から,原則として金融商品取引法上の

開示規制は適用されない。ただし,出資対象事

業が主として有価証券に対する投資を行う事業

である場合には,開示規制が適用される(な

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お,この場合も取得者を500名未満に制限する

ことで,開示規制の適用を回避できる)。しか

し,実際のクラウドファンディングの資金調達

者には,これに該当するような事業はほとんど

ないように思われる。したがって,匿名組合を

利用したスキームの場合,ほぼ開示規制の対象

とはならない。むしろ資金調達者または媒介

者・引受人に課される規制として,契約締結前

交付書面の交付による情報提供がある。同書面

の記載事項は,①金融商品取引業者の商号,名

称または氏名,住所,②金融商品取引業者であ

る旨および登録番号,③当該金融商品取引契約

の概要,④手数料・報酬等,顧客が支払うべき

対価に関する事項,⑤市場リスクによる損失が

生ずるおそれがあるときはその旨,⑥市場リス

クにより元本を上回る損失が生ずるおそれがあ

る時はその旨,⑦その他顧客の判断に影響を及

ぼすこととなる重要事項として内閣府令定める

もの,となっている。なお,この金融商品取引

業等に関する内閣府令82条〜97条は16条にわ

たって書面の共通記載事項等が定められてい

る。ただし,この契約締結前交付書面に関して

は,顧客が適切な投資判断を下す際の重要な資

料であるとされるものの,一般投資家にとって

内容が難しく,理解することが至難であるとい

う指摘もある23)。なお,このスキームにおい

て,第二項有価証券の募集・私募の取扱を行う

者は,第二種金融商品取引業者の登録が必要と

なる24)(さらに,引受を行う場合は,第一種金

融商品取引業の登録が必要である)。

Ⅱ.クラウドファンディングの世

界的市場規模

1.massolutionによる調査と分類

世界のクラウドファンディング市場の現状に

ついて,詳しい調査結果を公表しているのは,

massolution という組織であり,その調査レ

ポートが“2013CF The Crowdfunding Indus-

try Report”である。なお,同社は,政府,機

関および企業のクラウドソリューションの利用

について先駆的な調査・助言会社であるとい

う25)。

同レポートは,いくつかのデータソースと外

部調査から情報を得ている。同レポートによる

と,813と推計されるプラットフォーム(活動

中と準備中を含む)のうち362のクラウドファ

ン デ ィ ン グ・プ ラ ッ ト フ ォ ー ム が

Crowdsourcing.org のウェブサイトを通じて

この調査に参加しており,回答率は45%であ

る26)。以下,同レポートの主たるポイントを紹

介する。

まず,クラウドファンディングの分類とし

て,以下の4モデル,①寄付型(donation-

based),②還元型(reward-based)27),③貸付

型(lending-based)28),④エクイティ型(eq-

uity-based),および新規モデルとして,ロイ

アリティ型(royalty-based)29)が挙げられてお

り,これらは取引ベースの分類である。他方,

Threshold-Pledge System(TPS)をベースに

した3分類も示されている。この Thresh-

old-Pledge Systemについては,的確な訳語が

見当たらないが,いわゆる all or nothing型に

相当するものと思われる。通常,クラウドファ

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ンディングには,all or nothing 型と keep it

all 型があると言われ,前者は当該事業者

(キャンペーンオーナー)の設定した資金調達

目標額を下回る資金しか集まらなかった場合,

資金調達者に資金が渡されず,キャンセルされ

るタイプであり,後者は資金調達目標額を下

回った場合でも,資金が渡されるタイプとされ

る30)。したがって,ここでは,当初公表された

資金調達目標額がキャンペーンオーナーにとっ

て達成を義務付けられているかどうかという点

が分類上のポイントとなる。つまり,キャン

ペーンオーナーが資金目標額を達成しなればな

らない場合,そのクラウドファンデング・プ

ラットフォームは TPSを有しているとされる。

TPSは,しばしばクラウドファンディングに

おいて必須のものと考えられているが,それは

必ずしも正確ではなく,全世界の54%のプラッ

トフォームしかこのシステムを採用しておら

ず,28%は到達目標に達するかどうかとは関係

なく,キャンペーンオーナーに資金を提供して

いる。また,プラットフォームによっては,両

方のキャンペーンオーナーをターゲットにして

いる場合やその判断をキャンペーンオーナーに

委ねている場合があり,その比率は18%であ

る31)。さらに,タイプ別の TPSの採用状況に

ついては,図表4の通りである。ここからは,

還元型やエクイティ型の採用率が高く,逆に寄

付型では低いことがわかる。これは還元型やエ

クイティ型においては,目標とする資金調達が

達成できない場合,イベント自体が成り立たな

くなる可能性が高いのに対し,寄付型ではその

ような可能性が低いことが理由として考えられ

る。

2.世界のクラウドファンディング市場

の成長と内訳

世界のクラウドファンディング市場の成長に

ついて,同レポートでは,2012年の資金調達額

は,前年比81%増で約27億ドルと報告してい

る。内訳は,北米16億600万ドル,欧州9億

証券経済研究 第88号(2014 .12)

25

〔出所〕 massolution [2013] p.136

図表4 TPSの有無による分類

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4,500万ドル,オセアニア7,600万ドル,アジア

3,300万ドル,南米80万ドル,アフリカ6.5万ド

ルとなっており,北米と欧州の規模が圧倒的で

ある32)。なお,このような2012年のクラウド

ファンディングの市場規模の拡大は,主に貸付

型と寄付型の成長に牽引されたものである。図

表5に示された通り,2012年貸付型は対前年比

11%で約12億ドルに急伸し,寄付型も45%増で

9億7,900万ドルに増加している。なお,貸付

型の主たる増加要因として,同レポートはマイ

クロ・ローンや地域中小企業向けローンを挙げ

ている。また,寄付型や還元型のような金銭的

なリターンのないクラウドファンディングにつ

いては,両者合わせて前年比85%増の約14億ド

ルである。このうち顕著な増加を示しているの

は還元型である。つまり,資金提供者に対して

何かが還元されるようなキャンペーンが増加し

たことを意味している。なお,ここには寄付と

還元を結合させたタイプと純粋に対価の支給を

求めるものとが含まれる33)。また,エクイティ

型は法規制があり,世界的に成長が頭打ちと

なっている。

さらに,同レポートは,2013年の市場規模を

51億ドル,うち北米36億9,820万ドル,欧州13

億3,000万ドル,その他地域1億970万ドルと推

計している34)。時に,北米のクラウドファン

ディングの急成長の要因として,貸付型の成長

を指摘している35)。逆に,エクイティ型は欧州

で成長しているが,北米の貸付型に比べると市

場規模は小さなものである。さらに,北米と欧

州以外の地域では,今のところクラウドファン

ディングはまだ新規の概念であるが,今後3年

以内に急成長するものと推測している36)。

また,2012年には,全世界で110万件のキャ

ンペーンが実施され,その内訳は,北米62.5万

件,欧州47.0万件,その他地域0.8万件であっ

た。また,タイプ別では,寄付型68万件,貸付

型25万件であり,その割合は寄付型62%,貸付

型22%,寄付・還元混合型15%,その他1%で

あった37)。タイプ別のキャンペーン規模の中央

値は,寄付型1,400ドル,寄付・還元混合型

2,300ドル,還元型2,300ドル,貸付型4,700ド

ル,エクイティ型190,000ドルであった38)。

3.キャンペーンの成功率と活発さ

キャンペーンの成功率については,図表6通

りである。前述の通り,寄付型の場合,TPS

を採用していないものが多いため,資金が支払

クラウドファンディングと地域再生

26

1430.3

2013年(推計)2012年

979.3

2010年

675.7

2011年

460.4寄付型

図表5 種類別のクラウドファンディングの拡大

(単位:100万ドル)

1344.2383.361.515.7還元型

74.112.4――混合型

5137.92660.41381842.5合計

〔出所〕 massolution [2013] p.25および p.29。ただし,元の2つのグラフを表に書き換え,合

計額を算出した。

165.9115.788.949.9エクイティ型

2123.41169.7554.9316.5貸付型

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われる可能性が高くなり,成功率も94%に達し

ている。

また,同レポートでは,プラットフォームの

活発さ(activity)について,キャンペーンの

成功件数と個々のカテゴリーの資金調達額とい

う2つのパラメータを使って測定し,10のカテ

ゴリーについて,図表7その結果を示してい

る。ただし,このデータで示されている百分率

の計算根拠は示されていない。また,寄付・還

元型と金銭リターン分配型という2つのタイプ

別に,各カテゴリーの活発さを示したものが図

表8ある。ここでも図表7同様に,社会奉仕が

最も高い数値を示している。また,社会奉仕や

アート系の分野では,寄付・還元型の活発さが

比較的高いのに対し,ビジネス・起業,エネル

ギ―・環境,情報・通信技術の分野では,逆に

金銭リターン分配型の数値が高くなっている。

このことは,前者のカテゴリーの資金提供者が

金銭的なリターンよりも,社会貢献やあるいは

趣味・趣向を動機として資金提供している割合

が高く,逆に後者のカテゴリーの資金提供者は

金銭的リターンを重視して資金提供しているこ

とを裏付けるものと考えられ,興味深い結果を

示している。

さらに,これらのカテゴリー別の活発さにつ

いて,寄付型,還元型,貸付型,エクイティ

型,ロイアリティ型という5タイプ別に示した

のが,図表9である。

4.クラウドファンディング市場の今後

の発展

同レポートは,クラウドファンディング市場

の今後の発展について,いくつかの方向性を示

している39)。

① ニッチ・プラットフォーム:特定のタイプ

のキャンペーンオーナーに特化したプラット

フォームで,ビデオゲーム,レコード芸術,演

劇,不動産,食品・飲料,情報技術,ファッ

ション,ジャーナリズムなどが挙げられる。

② 地域投資/コミュニティ・プラットフォー

ム:地域投資に特化したプラットフォームであ

り,クラウドファンディングが,地域の投資を

拡大させることが指摘されている。

③ ハイブリッド・プラットフォーム:様々な

証券経済研究 第88号(2014 .12)

27

〔出所〕 massolution [2013] p.39

図表6 キャンペーンの成功率

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クラウドファンディング・モデルを統合したプ

ラットフォームであり,キャンペーンオーナー

のニーズに即して,モデルを設計するようにな

るとされている。

④ 企業クラウドファンディング:規模の大き

な企業がクラウドファンディングの採用に関心

を持つようになってきており,将来の製品・

サービスの需要調査としてクラウドファンディ

ングを採用すれば,市場分析などにかかるコス

トを低減させることを指摘している。

クラウドファンディングと地域再生

28

〔出所〕 massolution [2013] p.41

図表7 プラットフォームの活発さ(各カテゴリー別)

〔出所〕 massolution [2013] p.43

図表8 プラットフォームの活発さ(2タイプ別)

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⑤ クラウドファンディングの経済成長:今後

のクラウドファンディングの発展段階として,

マクロレベルでの経済発展にどのように貢献で

きるかが問われるようになる。その際,クラウ

ドファンディングが主要な開発銀行・機関の活

動に組み込まれるかどうか,そこでシナジー効

果が発揮されるかどうか,さらにクラウドファ

ンディングという手法が,経済発展に寄与する

かどうか,といった点が問われるようになる。

⑥ ライブ・クラウドファンディング:最後

に,ライブ・クラウドファンディング(Live

Crowdfunding)が特定の投資家のニーズに合

致していることが指摘されている。ここでのラ

イブ・クラウドファンディングについては,明

らかではないが,一種のイベントと結びついた

ものであり,イベントとクラウドファンディン

グとの相互関係が,特定の起業家ニーズを充足

するために進化すると指摘している。

なかでも,興味深いのは,地域投資/コミュ

ニティ・プラットフォームという方向性であ

る。近年,地域投資(locavesting)という用

語が登場し40),この用語がクラウドファンディ

ングとともに語られるようになっており,クラ

ウドファンディングが,地域の投資を拡大させ

ることが指摘されている。さらに,地域での資

金調達は,事業者と投資家の信頼関係を強化

し,両者はそれぞれに得るところが大きいと指

摘している。さらに,今後,マクロレベルでの

経済成長にどの程度寄与できるのかという点も

重要な指摘であると考えられる。

そこで,以下では,上記の指摘を踏まえ,Ⅲ

において地域再生との関連でクラウドファン

ディングを検討する。

Ⅲ.地域再生におけるクラウド

ファンディングの役割

ここでは,地域再生におけるクラウドファン

ディングの役割を考察するにあたって,東日本

大震災の被災企業のうちクラウドファンディン

グによって資金調達を行った2社の事例を取り

上げ,上記2社へのインタビュー調査を踏まえ

て検討する41)。

証券経済研究 第88号(2014 .12)

29

32.6社会奉仕

12.514.6―17.714.1映画・演劇

図表9 プラットフォームの活発さ(5タイプ別)

ロイアリティ型貸付型報酬型寄付型 エクイティ型

――――情報・通信技術

10.4――――ファッション

17.7 12.5 23.3 15.6

14.9

4.29.3音楽・レコーディング

――4.28.27.9アート一般

12.55.125.0――エネルギー・環境

11.1

(注) 元の5つのグラフをひとまとめにした。

〔出所〕 massolution [2013] p.45-49

32.354.216.312.8ビジネス・起業

――

29.1

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1.クラウドファンディングによる再生

事例(酔仙酒造)

酔仙酒造株式会社は,岩手県陸前高田市に本

社(工場:同県大船渡市)を置く老舗酒造で,

その創業は,1944年である。ただし,同社はも

ともと地元にあった8軒の造り酒屋が,戦時中

の「企業統合令」によって1社に統合されたも

のである(統合時の社名は「気仙酒造」)。した

がって,そのルーツは,江戸時代にさかのぼる

ことができるという。しかし,2011年3月11日

の東日本大震災による津波によって,同社倉庫

を含む全ての建物が壊滅・流失し,一切の生産

設備,在庫を失うとともに,7名の従業員も失

う被害を被った42)。

被災後,同社は,経営者および従業員の尽力

と,各種義捐金,また同県所在の酒造,岩手銘

蔵が酒蔵を貸し出すなどの支援によって,被災

半年後には酒造を再開するにこぎつけた。さら

に,震災翌年の2012年3月には,大船渡市に新

工場の建築を開始し,同年8月には,新工場で

仕込みを再開した43)。

同社が,クラウドファンディングによって,

資金調達するに至った経緯は,ファンド運営会

社のミュージックセキュリティーズが被災直後

の3月中から被災地企業に積極的にアプローチ

したことがきっかけとなっている。その際,同

社社員が同社に転職する前に勤務していた,別

の酒造会社がクラウドファンディングによって

資金調達した経験を有しており,当該社員がこ

の資金調達方法について,ある程度認識してい

たことも,同社がクラウドファンディングを利

用する上で有益だったという。

同社がクラウドファンディングによって調達

した資金は,3,000万円,ファンドは匿名組合

契約であり,そのスキームは,以下の通りであ

る44)。

①取扱者:ミュージックセキュリティーズ株式

会社

②出資募集最大総額(口数):15,000,000円

(3000口)

③申込単位(1口あたり):5,000円,ただし,

本匿名組合契約の申込には1口あたり5,000円

の応援金が別途必要となり,出資金のみまたは

応援金のみでの申込は不可。(上限口数:100

口)

④出資金取扱手数料:500円(ただし,応援金

には手数料は不要。)

⑤取扱者の報酬:出資金取扱手数料500円/口

⑥募集受付期間:2011年10月21日〜2012年3月

31日

⑦会計期間:営業開始日から7年(84ヶ月)

⑧契約期間:本匿名組合契約成立日から会計期

間終了日

⑨分配比率:会計期間開始日から36ヶ月間は,

無分配期間とされ,売上金額の0.00%である

が,無分配期間終了後から会計期間終了日まで

の48ヶ月間は,売上金額の1.06%である。

⑩予想リクープ平均月売上金額:29,481,132円

(税込)

⑪被災前概算平均月売上金額:77,356,583円

(税込)

なお,資金使途は,原材料購入費(酒米購入

費等)22,300,000円,酒造設備(充填機,ボイ

ラー,ジェットプリンター,タックラベラー

等)7,700,000円,計30,000,000円である。

また,取扱者(ミュージックセキュリティー

ズ)は,年1回監査を行うことになっている。

このスキームでは,1口1万円で総額3,000

万円の資金を集めている。このうち半額の

クラウドファンディングと地域再生

30

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5,000円は寄付,残り半額の5,000円が出資であ

り,寄付と出資によって被災企業を支援するも

のとなっている。また,出資部分の5,000円に

ついては,最初の3年間は無分配で,残りの4

年間で分配される。その際の分配金は,売上高

の1.06%を設定している。予想リクープ月次売

上高は,29,481,132円とされているので,年間

353,773,584円となり,これが実現すると年間

の分配金総額は,3,750,000円となるので,4

年間の合計額15,000,000円となり,1口当たり

5,000円の分配となる。したがって,予想を上

回る売上高が実現した場合,分配金額は出資金

額を上回ることになり,逆に下回れば,分配金

額は出資金額を下回ることになる。

なお,投資家特典として,①出資口数3口以

上の出資者を対象に,「活性原酒・雪っこ」

(720ml)を3口ごとに1本送付,②同社の蔵

での交流会参加(ただし,渡航費,宿泊費,食

費等は参加者負担)を実施する予定である。

同社によると,出資者は842名であり,その

うち出資以前からの同社商品の購入者は,2割

程度で,残りの8割は震災をきっかけに,被災

地支援のもとに出資に参加したと推測されると

のことである。また,同社の本格的な再建のた

めには,工場建設資金として10億円以上が必要

とされるので,クラウドファンディングでの調

達資金によって全額を賄えない。したがって,

クラウドファンディングを利用する趣旨は,単

なる資金調達だけでなく,同社商品のマーケ

ティング的な側面があり,これを契機に情報発

信し,購入者層の拡大につなげる意図を有して

いるようである。そのためには,出資者向けの

イベント企画(工場見学など)が有益であり,

継続的に企画を実施したいとのことである。特

に,ミュージックセキュリティーズのファンド

に出資すると,IDおよびパスワードが設定さ

れ,同社 HPからファンド情報にアクセスでき

る仕様となっている。ここでは,ファンドの運

用状況,出資先企業の営業状況,様々なメッ

セージ,動画などの情報が発信され,出資者と

企業のコミュニケーションが図られており,一

種のコミュニティが形成されていると考えられ

る。このようなコミュニティが,マーケティン

グにも有用なチャネルになるものと思われる。

2.クラウドファンディングによる再生

事例(八木澤商店)

株式会社八木澤商店は,岩手県陸前高田市に

本社を置く,醤油醸造会社である。設立は1960

年であるが,そのルーツは1807年(文化4年)

の八木澤酒造の創業に始まる。大正年間は,醤

油醸造業を兼業していたが,1944年,8つの酒

造業が合併し,気仙酒造操業工場となるもの

の,1945年には気仙酒造操業工場を辞退し,ヤ

マセン味噌・醤油製造を開始し,上記の通り

1960年,株式会社八木澤商店が設立された。そ

の後,1982年には,しょうゆを加工した,つ

ゆ・たれ類製造を開始し,2007年には,創業

200周年を迎えた。しかし,2011年3月11日の

東日本大震災によって,同社の蔵および製造工

場が全壊,流失した。震災直後から,岩手県の

内陸に営業拠点を移し,岩手県,秋田県,宮城

県,新潟県の醸造蔵に製造を委託,その商品の

販売を開始し,翌2012年5月には,岩手県一関

市大東町に製造工場の建設を着工し,同年10月

には,岩手県陸前高田市に戻り,本社兼店舗を

再開するとともに,岩手県一関市大東町に自社

製造工場を竣工し,2013年2月からは,自社工

場での製造を開始した45)。

同社社長によると,社長自身も従業員もクラ

証券経済研究 第88号(2014 .12)

31

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ウドファンディングのみならず,投資ファンド

に関する知識はなく,むしろ警戒心も持ってい

たという。それにもかかわらず,クラウドファ

ンディングによって資金調達することとなった

のは,クラウドファンディングによって資金調

達した会社関係者と人的な信頼関係があり,そ

の紹介でミュージックセキュリティーズの担当

者に出会ったのがきっかけという。

同社は,2回にわたってクラウドファンディ

ングによる資金調達を行っている(ただし,2

号ファンドは,2014年10月末現在,募集中)。

まず,第1号ファンドによる資金調達額は,

5,000万円であり,そのスキームは,以下の通

りである46)。なお,①および③〜⑤について

は,酔仙酒造のスキームと同様であるので省略

する。

②出資募集最大総額(口数):25,000,000円

(5000口)

⑥募集受付期間:2011年4月25日〜2011年9月

30日

⑦会計期間:営業開始日から8年10ヶ月

(106ヶ月)

⑧契約期間:本匿名組合契約成立日から会計期

間終了日

⑨分配比率:会計期間開始日から36ヶ月間(無

分配期間):売上金額の0.00%,無分配期間終

了後から会計期間終了日まで(70ヶ月間):売

上金額の1.00%

⑩予想リクープ平均月売上金額:35,714,286円

(税込)

⑪被災前概算平均月売上金額:12,250,000円

(税込)

なお,資金使途は,新工場の設備費(ボイ

ラー,ライン設備,釜の設置等)23,000,000

円,製品原材料購入費(1年分)27,000,000

円,計50,000,000円である。

また,酔仙酒造のスキームと同様,予想を上

回る売上高が実現した場合,分配金額は出資金

額を上回ることになり,逆に下回れば,分配金

額は出資金額を下回ることになる。

同社によると,この第1号ファンドは,予定

よりも早く8月末には満額の出資が集まり,募

集完了となった。また,出資者総数は1620名で

あった。

現在,募集中の第2号ファンドは,資金調達

額1億円となっているが,そのスキームは第1

号ファンドとほぼ同様であるので,主な相違点

のみ挙げると,以下の通りである。

②出資募集最大総額(口数):50,000,000円

(10000口)

⑥募集受付期間:2011年11月29日〜2015年3月

31日

⑦会計期間:2012年4月1日から2022年3月31

日(10年)

⑨分配方法:分配金は一括して,最終決算日後

に支払われる。なお,分配金には劣後特約が付

される。

⑩分配比率:会計期間開始日から36ヶ月間(無

分配期間):売上金額の0.00%,無分配期間終

了後から会計期間終了日まで(84ヶ月間):売

上金額の3.9%

⑪予想リクープ平均月売上金額:15,262,515円

(税込)

⑫被災前概算平均月売上金額:15,005,250円

(税込)

なお,資金使途は,醤油工場建設費の一部

25,000,000円,醤油工場製造設備(麹室,ボイ

ラー等)の一部25,000,000円,醤油原材料費の

一部(初年度)50,000,000円,計100,000,000

円である。

クラウドファンディングと地域再生

32

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同社社長によると,クラウドファンディング

による資金調達の意義は,同社商品のマーケ

ティングの側面があるだけでなく,むしろ調達

資金が金融庁の「金融検査マニュアル」上,資

本性劣後ローンとされ,資本とみなされる措置

がとられたことが重要であると指摘している。

この措置は,以下である。

金融庁は,2011年11月,「『資本性借入金』の

積極的な活用を促進することにより,東日本大

震災の影響や今般の急激な円高の進行等から資

本不足に直面している企業のバランスシートの

改善を図り,経営改善につながるよう,金融検

査マニュアルの運用の明確化を行う」旨を発表

した47)。それによると,金融検査マニュアルに

記載されている「十分な資本的性質が認められ

る借入金」(「資本性借入金」)について,「資

本」とみなすことができる条件を明確化した。

具体的には,①償還条件:15年から5年超に変

更,②金利設定:業績悪化時の最高金利0.4%

から「事務コスト相当の金利」の設定も可能」

に変更,③劣後性:無担保(法的破綻時の劣後

性)から「必ずしも『担保の解除』は要しない

(但し,一定の条件を満たす必要)」に変更,で

ある。さらに,ここでは,この措置により「例

えば,震災の影響で資本が毀損している企業で

あっても,既存の借入金を「資本性借入金」の

条件に合致するよう変更(DDS:デット・

デット・スワップ)することにより,バランス

シートが改善し,結果として,金融機関から新

規融資を受けやすくなるなどの効果が期待され

る」とし48),具体的な利用例として,①日本政

策投資銀行と地方銀行との連携ファンド等によ

る活用,②被災企業を支援する小口出資ファン

ドによる活用が挙げられ,「小口出資ファンド

のような匿名組合出資方式のファンド等におい

ても,本スキームを活用することが可能」であ

ることが明記されている。

現在,同社の資本金は1,000万円であるが,

再建のための資金を融資として受け入れると財

務上負債に組み込まれるため,過剰債務を抱え

ることになり,金融検査マニュアル上の債務者

区分が低くなり,金融機関からの新規融資が得

られなくなるが,クラウドファンディングに

よって得られた資金が資本とみなされると,過

剰負債状態に陥らず,債務者区分も上方遷移

し,通常先として新規融資の対象となる。その

財務上の効果は,再建を目指す企業にとって極

めて重要であると考えられ,この事例は,クラ

ウドファンディングが資本増強策として活用さ

れた事例と言える。

この事例の意義を敷衍すると,クラウドファ

ンディングの資金規模は,当該企業の必要資金

規模からすると,必ずしも大きなものではなく

ても,その資金が提供されることで,既存の金

融機関の資金を誘引する効果が生じ,両者の資

金チャネルが結合され,一種のシナジー的な効

果が生まれると考えられる。つまり,クラウド

ファンディングと既存の金融機関は,二者択一

的なものではなく,両者が共存することで企業

再生に寄与するものと考えられる。このこと

は,企業のみならず地域再生を考える上でも示

唆的であると思われる。

Ⅳ.クラウドファンディングに関

する規制上の課題

もともとクラウドファンディングが注目され

るきっかけの一つとして,2012年4月に米国で

Jumpstart Our Business Startups Act(通称

JOBS法)が成立し,従来の証券法等の改正と

証券経済研究 第88号(2014 .12)

33

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して,クラウドファンディングの除外規定が定

められたことにより,不特定多数の投資家から

インターネットを通して資金調達することが可

能となったことが挙げられる。同法の背景とし

て指摘されるのは,同法の主たる目的は,小規

模の成長企業が資金調達を容易に行うことがで

きるように改革することをされており,その背

景としては米国 IPO市場の低迷に対する懸念

が示され,その要因として従来の証券規制など

が問題視されたことが挙げられる。そのような

経緯のもとに提出された同法案は,①新興成長

企業に対する米国資本市場の再開放,②雇用創

出者のための資本調達方法,③クラウドファン

ディング,④小規模会社の資本形成,⑤閉鎖会

社の柔軟性及び成長,⑥資本増強,という6法

案から構成されている。したがって,JOBS法

の第3章は,クラウドファンディングについて

の規定が定められており,ここでは小規模成長

会社がインターネットを通じて資金調達するた

めの手段として,クラウドファンディングが位

置付けられており,そのための規制改正が導入

されている49)。つまり,リスクマネーの調達手

段としてクラウドファンディングが位置付けら

れているものと思われる。

他方,日本では,2013年6月に閣議決定され

た日本再興戦略を受けて,金融審議会に対し

て,新規・成長企業へのリスクマネー供給のあ

り方などが検討課題として示された。これを受

けて,金融審議会は,新規・成長企業へのリス

クマネーの供給のあり方等に関するワーキン

グ・グループを立ち上げ,クラウドファンディ

ングを含めた検討を行い,2013年12月に報告書

を公表した。また,金融審議会の審議に伴い,

2013年7月,第二種金融商品取引業協会は,

「投資型クラウド・ファンディングに関する検

討会合」を設置し,投資型クラウドファンディ

ング市場の健全な成長を促し,投資者の信頼性

確保並びに市場仲介者である第二種金融商品取

引業者による機能発揮の観点から,自主規制規

則の導入を含む必要な施策について検討を開始

した。具体的な検討項目は,①金融審議会ワー

キンググループにおける検討への対応,②投資

型クラウドファンディング業務を第二種金融商

品取引業者が行う場合の必要な支援策(市場イ

ンフラ作り),③投資型クラウドファンディン

グを活用しようとする営業者(事業者)に対す

る支援策,④投資型クラウドファンディングの

健全な市場としての拡大に不可欠な投資者保護

のための方策の検討,⑤規律ある投資型クラウ

ドファンディング市場の成長を支える正会員の

増加に向けた方策,などである50)。

このように日米では,リスクマネー供給手段

としてクラウドファンディングを位置づけ,そ

の活用をそれぞれ模索している状況にあるとい

える。そこで,リスクマネー供給手段としてク

ラウドファンディングが活用されるためには,

どのような課題があり,どのような方向性が見

いだされるべきかを検討する必要がある。その

際,上記の分類の中では,投資型クラウドファ

ンディングに焦点が絞られることになる。

まず,規制のあり方については,金融審議会

報告では,自主規制機関による適切な自主規制

機能の発揮が示されている。クラウドファン

ディングの場合,資金調達規模が相対的に小さ

いため,規制に伴うコスト負担が過大である

と,金融商品としてのスキームが成り立たなく

なる可能性がある。その反面,過小規制になる

と,詐欺的なスキームなど市場参加者の信頼を

損ねる危険性もある。したがって,自主規制機

関による適切な自主規制に委ねる方向性は妥当

クラウドファンディングと地域再生

34

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なものであると思われる。ただし,適切な自主

規制のあり方については,必ずしも明確ではな

く,今後検討を積み重ねていく必要があるが,

その際,クラウドファンディングの市場参加者

の特性を十分考慮する必要があると思われる。

つまり,クラウドファンディングは,経済的に

は金融仲介の新たな分野として位置づけられ

る51)が,そこでの市場参加者は,資金提供者・

調達者もプラットフォームの運営者も含めて,

従来の金融や証券市場の参加者ではなく,むし

ろソーシャルネットワークなど,ネット上のコ

ミュニティの参加者となる可能性がある。ま

た,それによって市場の成長が促されるものと

考えられる。したがって,従来の金融・証券規

制やその基になっている概念が共有されにく

く,むしろ独自な志向性や価値観を有している

可能性がある。そうなると,いわばカルチャー

の異なる市場参加者が拡大する中で,自主規制

のあり方を設計することになる。したがって,

そのようなカルチャーの異なる市場参加者との

コミュニケーションをとりながら,自主規制を

設計する必要がある。仄聞するところ,すでに

クラウドファンディングのサイトの運営業者の

間で,自主規制的な団体をつくる動きもあるよ

うである52)。もしそうならば,そのような動き

と連携しながら自主規制を設計することが望ま

しいと思われる。

次に,投資型クラウドファンディングの資金

調達者として,新規・成長企業が想定されるも

のの,現在の資金調達者を見る限り,地域のリ

ソースを活用した伝統的産業・業種や再生可能

エネルギー分野がかなりの割合を占める傾向に

あり,今後も当面この傾向は変わらないように

思われる。その際,このような資金調達者は,

資金や成果の地産地消を重視する場合がある。

例えば,再生可能エネルギーの場合,発電施設

(大型風車など)は地域住民にとっては迷惑な

設備である場合もあり,常に地域住民に受け入

れられるとは限らない。そこで,地域との親和

性を確保するため,「コミュニティパワー3原

則」53)といった考え方が提示され,かなり広く

受け入れられている。この考え方によれば,資

金提供者は地域住民が中心となるものと解され

る。しかし,クラウドファンディングの場合,

資金調達の地域性はなくなり,むしろ広域性が

特徴となるため,「地産地消」という側面は重

視されなくなり,地域との親和性が確保されな

くなる可能性がある。現在,地方自治体の中に

は,地域活性化の中でクラウドファンディング

の利用を検討する動きがあるが,そこでも地域

の資金を活用することが政策的に重視されてい

るようである。しかし,資金の地域性に拘泥し

すぎると,クラウドファンディングの特性を生

かすことができない。むしろ,成果の地域への

一部還元など,スキームの中に地域との親和性

を確保するような工夫を凝らすべきだろうと思

われる。

第三に,投資型クラウドファンディングだけ

でなく,寄付型なども含めて,資金提供者に

は,社会貢献や環境に対する意識が高く,その

ような価値観からスキームに参加することも見

込まれる。これについては,内閣官房地域活性

化統合事務局が「ふるさと投資プラットフォー

ム推進協議会」を設置し,そこでは「家計の志

を活かした新たな資金の流れの形成と活性化に

向け,『ふるさと投資(地域活性化小口投資)

プラットフォームの構築』」が検討された54)。

このような「志ある資金」に基づくスキームの

場合,資金提供者に対して,その投資あるいは

資金提供によって,どのような成果が達成され

証券経済研究 第88号(2014 .12)

35

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たのかが明示される必要があるだろう。その

際,スキームの運営者が情報提供するだけでな

く,中立な第三者が公正かつ客観的な評価を行

い,その評価が適切に開示される仕組みも必要

であると考えられる。そのためには,第三者に

よる評価機関も検討されるべきであろうと思わ

れる55)。また,このような評価が行なわれるこ

とによって,詐欺的なスキームや市場参加者の

排除が図られるものと考えられる。

まとめ

以上,本稿では,クラウドファンディングの

類型を確認した上で,日本での現状を概観する

とともに,世界規模でのクラウドファンディン

グの市場規模と最近の動向を検討した。その上

で,地域再生におけるクラウドファンディング

の役割について考察を加えた。さらに,今後ク

ラウドファンディングが拡大するためには,規

制の役割が重要な課題となることを踏まえ,規

制のあり方について検討した。

特に,地域再生という観点では,地域の小規

模な事業者の活性化・再生が重要な課題であ

り,そこではクラウドファンディングが重要な

役割を果たし得ることが示唆される。中でもク

ラウドファンディングによる資金調達が,従来

の金融機関からの融資資金の調達を促すという

側面が確認できたことは興味深い。このこと

は,クラウドファンディングと従来の金融チャ

ネルが共存することで,シナジーを高める側面

があることを示唆するものと考えられる。

ただし,今後のクラウドファンディングの成

長にとって,規制のあり方をどのように設計す

るかは,きわめて重要である。クラウドファン

ディングは,単にツールとしてインターネット

を利用するというだけでなく,市場参加者のあ

り方やニーズといった点で,従来の金融・証券

市場の常識や通念が通用しにくいという側面を

持っていると思われる。それは,ソーシャル

ネットワークの世界が,従来のアナログの世界

とはかけ離れているのと同様であろう。した

がって,クラウドファンディングのあり方を考

える際,そのような質的な差異を踏まえた議論

を積み重ねる必要があるだろう。

1) 金融審議会「新規・成長企業へのリスクマネーの供給

のあり方等に関するワーキング・グループ報告」平成25

年12月25日,http://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu

/tosin/20131225-1/01.pdf,参照。

2) 同検討会合の検討内容については,第二種金融商品取

引業協会 HP,http://www. t2fifa. or. jp/event/k-kai

go.html,参照。

3) ふるさと投資プラットフォームに関しては,同推進協

議会メンバーによる共著書,赤井厚雄,小松真実,松尾

順介『ふるさと投資のすべて』きんざい,2013年5月,

を参照。

4) JustGiving Japan の HP,http://justgiving.jp/about

/justgiving,参照(2014年1月26日)。

5)「iPS 細胞研究の山中教授マラソンで資金集め」『産経

新聞』(大阪)2012年2月22日朝刊,p.22,参照。

6) READYFOR? の HP,https://readyfor. jp/,参 照

(2014年1月26日)。

7) AQUSH の HP,https://www.aqush.jp/invest/mar

kets,参照(2014年1月31日)。

8) 日本クラウド証券 HP,https://www.crowdbank.

jp/,参照(2014年1月31日)。また,同社へのインタ

ビューによる。

9) 我が国の場合,資金提供者が資金調達者に対して直接

貸付を行う場合,現行規制では,資金提供者に対して貸

金業法上の規制が課される可能性がある。有吉[2013]

p.22参照。

10) ただし,匿名組合と資金調達者との間では,貸付契約

が結ばれていることから,「貸付け型」として,別の区

分を設けるという考え方もある。海外の統計を見ると,

「Lending」(貸付け型)を区分しているものもあり,比

較的大きな割合を占めているようである。例えば,クラ

ウドファンディングの市場規模を見る際に,しばしば参

照される massolution [2013]は,Equity(株式型),

Lending(貸 付 型),Donations(寄 付 型),Rewards

(報酬型),Donation-Reward mix(寄 付・報酬混合

型),mixed others(その他混合型)という分類のもと

に統計を公表している(同 p.25)。ただし,どのような

スキームがそれぞれの分類項目に含まれているのかは,

クラウドファンディングと地域再生

36

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必ずしも明確ではない。

11) 例えば,神山[2013]p.175,参照。

12) 有吉[2013]pp.17-18

13) ただし,ビジネスという観点からすると,ただ単にプ

ラットフォームだけを提供し,なんら取引に関与しない

という事態は想定しにくいものと思われる。

14) 詳しくは,前掲,有吉[2013]p.17,参照。特に,プ

ラットフォーム提供者の責任については,「特定電気通

信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開

示に関する法律」を参照。

15) 同社の取組については,小松真実・猪尾愛隆「ふるさ

と投資の実例」(赤井厚雄・小松真実・松尾順介[2013]

pp.52-84,参照。

16) 株式型クラウドファンディングについては,有吉

[2014]および森本[2014]参照。

17)「『クラウド』で株募集」『日本経済新聞』2013年8月

29日朝刊,p.15,参照。

18) 前掲,有吉[2013]p.20,参照。

19) 2014年5月23日に成立した「金融商品取引法等の一部

を改正する法律」(平成26年法律第44号)において,非

上場の電子募集取扱業者であって,有価証券の発行価額

が少額であることなどの要件を充たすのみを行う業者を

「第1種少額電子募集取扱業者」(第29条の4の2の第9

項)とし,通常の第1種金融商品取引業者に比べて,登

録時の要件緩和などが図られることとなった。これにつ

いては,有吉[2014],一般社団法人第二種金融商品取

引業協会[2014],小長谷他[2014],森本[2014],松

尾[2014d],参照。なお,金融審議会報告書では,「少

額」については,発行総額1億円未満かつ一人当たり投

資額50万円以内であることが適切であるとされている。

これについては,金融審議会[2013]p.3,参照。

20) 前掲注19の法改正において,第1種と同様,「第2種

少額電子募集取扱業者」の規定が設けられた(第29条の

4の3第2項)。これについては,小長谷他[2014]p.

33,参照。

21) 例えば,福島県伊達市霊山町に建設された「アース

ソーラー(りょうぜん市民共同発電所)」の事例では,

信託が利用されている。http://tvt-f. jp/ryouzen/ind

ex.html

22) 前掲,有吉[2013]p.21,および金融庁「『金融商品

取引法制に関する政令案・内閣府令案等』に対するパブ

リックコメントの結果等について−コメントの概要及び

コメントに対する金融庁の考え方」(平成19年7月31

日),p.58,参照。

http://www.fsa.go.jp/news/19/syouken/20070731-

7/00.pdf

23) 河本一郎・大武泰南[2011]p.306,参照。

24) なお,金融審議会報告では,「第一種金融商品取引業

のうち,非上場株式の募集又は私募の取扱いであってイ

ンターネットを通じて行われる少額のもののみを行う者

を『特例第一種金融商品取引業者』と,また,第二種金

融商品取引業のうち,ファンド持分の募集又は私募の取

扱いであってインターネットを通じて行われる少額のも

ののみを行う者を『特例第二種金融商品取引業者』とそ

れぞれ位置付け,財産規制等を緩和することが考えられ

る」とし,「少額の範囲としては,『発行総額1億円未満

かつ一人当たり投資額50万円以下』とすることが考えら

れる」としている。金融審議会[2013]p.3-4,参照。

したがって,この提言に沿って本国会で審議が行われる

ものと思われる。

25) massolution の HP,http://www.massolution. com/

about,による。

26) massolution [2013] p.12

27) 寄付とは異なり,資金提供者に対して,当該事業やイ

ベント等の成果が還元されるタイプを指しており,しば

しば日本で「購買型」と称されるタイプはこれに含まれ

ると考えられる。

28) 以下,Debt とされている場合もあるが,本稿では

「貸付型」と表記した。

29) ロイアリティ型とは,massolution [2013] p.49による

と,「キャンペーンオーナーが報酬を生み出す企業の利

害(stake)を提供するのではなく,報酬(revenue)

の分配を提示する」モデルを指し,最も新しいタイプで

あるという。

30) 両タイプについては,神山哲也[2013]p.179,参照。

31) massolution [2013] p.20.

32) massolution [2013] p.23-24

33) massolution [2013] p.25

34) massolution [2013] p.27

35) massolution [2013] p.28

36) massolution [2013] p.28

37) massolution [2013] p.32-33

38) massolution [2013] p.34

39) massolution [2013] p.83-86

40) この locavestingという用語は,経営・金融ジャーナ

リストの Amy Cortese が2011年に出版した著書,

Cortese[2011]の中で「地域的な投資の革命」がいか

にして出現するかという文脈の中で使ったとされる。

41) 以下,2社に関する記述は,特に注記がない限り,イ

ンタビュー調査によるものである。

42) 同社HP,http://suisenshuzo.jp/about/history.html

43) 同社HP,http://suisenshuzo.jp/about/history.html

44) ミュージックセキュリティーズ HP,http://www.

musicsecurities.com/communityfund/details.php?st=i

&fid=201

45) 同社 HP,http://www.yagisawa-s.co.jp/outline/in

dex.html#p02

46) ミュージックセキュリティーズ HP,http://www.

musicsecurities.com/communityfund/details.php?st=a

&fid=167

47) 金融庁「「資本性借入金」の積極的活用について」

(2011年11月22日),http://www.fsa.go.jp/news/23/

ginkou/20111122-4.html

48) ここでは,DDSによる劣後化が挙げられているが,

「金融検査マニュアル」では,「『債務者の実態的な財務

内容』の把握にあたり,十分な資本的性質が認められる

借入金は,新規融資の場合,既存の借入金を転換した場

合,のいずれであっても,負債ではなく資本とみなすこ

とができることに留意する」と注記され,新規融資も対

象としている。「金融検査マニュアル」(2014年6月)p.

証券経済研究 第88号(2014 .12)

37

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209-10,参照。

http://www.fsa.go.jp/manual/manualj/yokin.pdf

49) JOBS 法成立およびその内容については,千田

[2012],岩井[2012],金融商品取引法研究会[2013],

野村[2013]などに詳しい。

50) 同検討会合の報告書は,「『投資型クラウドファンディ

ングに関する検討会合』報告書」として,2013年2月12

日に公表された。

http://www. t2fifa. or. jp/event/pdf/k-kaigo-hokok

u.pdf

51) この点については,赤井[2014]p.25-29,参照。

52) 海外では,すでにクラウドファンディング協会などが

設立され,行動規範を発表するような事例もあるようで

ある。神山[2013]p.187,参照。

53) この考え方は,World Wind Energy Association(世

界風力エネルギー協会)が示したものとされ,①地域の

利害関係者がプロジェクトの大半もしくはすべてを所有

している,②プロジェクトの意思決定はコミュニティに

基礎をおく組織によっておこなわれる,③社会的・経済

的便益の多数もしくはすべては地域に分配される,とい

う3原則から構成されている。

http://www.wwindea.org/home/index.php?option=

com_content&task=view&id=309&Itemid=40,参照。

54) ふるさと投資プラットフォーム推進協議会[2013]p.

2,参照。

55) 諸外国での取組については,拙稿[2013]pp.72-79,

参照。

参 考 文 献

赤井厚雄[2014]「クラウド・ファンディングの現

状と課題」『証券アナリストジャーナル』第52

巻第1号,2014年1月,pp.24-36

赤井厚雄・小松真実・松尾順介[2013]『ふるさと

投資のすべて』きんざい,2013年5月,pp.

1-111

有吉尚哉[2013]「クラウドファンディングの類型

と規制の適用関係」『NBL』No.1009,2013年

9月15日,pp.15-24

有吉尚哉[2014]「非上場株式取引制度に関する近

時の動向と実務への影響−株式投資型クラウド

ファンディングと「投資グループ」制度の活用

可能性と留意点」『金融法務事情』No.2005,

2014年11月10日,pp.88-96

一般社団法人第二種金融商品取引業協会[2014]

「『投資型クラウドファンディングに関する検討

会合』報告書」2014年2月12日,pp.1-20

岩井浩一[2012]「JOBS法の成立と米国 IPO市場

の今後の動向」『野村資本市場クォータリー』

第16巻第2号,2012年秋,pp.125-136

小長谷章人・山辺紘太郎・伊東成海・佐々木豪・原

昌宏[2014]「新規・成長企業へのリスクマ

ネー供給促進等」『商事法務』No.2039,2014

年7月25日,pp.28-36

神山哲也[2013]「米国におけるクラウド・ファン

ディングの現状と課題」『野村資本市場クォー

タリー』第16巻第4号,2013年春,pp.174-180

神山哲也[2013]「欧米におけるクラウドファン

ディング市場の現在」『金融財政事情』3033号,

2013年7月15日,pp.20-23

金融審議会[2013]「新規・成長企業へのリスクマ

ネーの供給のあり方等に関するワーキング・グ

ループ報告」2013年12月25日,pp.1-22

千田雅彦[2012]「クラウドファンディングの幕開

け〜 JOBS Act成立の意義とその内容〜」『月

刊資本市場』323号,2012年7月,pp.38-47

出縄良人[2013]「グリーンシート市場はなぜうま

くいかなかったのか」『金融財政事情』3033号,

2013年7月15日,pp.24-30

野村敦子[2013]「米国で成立したクラウド・ファ

ンディング法の概要とわが国への示唆」『金融』

2013年6月,pp.3-11

比嘉邦彦・井川甲作[2013]『クラウドソーシング

の衝撃』2013年,インプレス R&D(電子版)

ふるさと投資プラットフォーム推進協議会[2013]

「ふるさと投資プラットフォーム推進協議会と

りまとめ」2013年3月,pp.1-14

増島雅和[2013]「エクイティ・クラウドファン

ディングの規制を考える」『金融財政事情』

3033号,2013年7月15日,pp.15-19

松尾順介[2013]「ソーシャルインパクト債と社会

貢献型投資の評価手法」『証券経済研究』第84

号,2013年12月,pp.63-82

松尾順介[2014a]「投資型クラウドファンディング

とリスクマネー供給」『証研レポート』1682号,

クラウドファンディングと地域再生

38

Page 23: クラウドファンディングと地域再生 - JSRI近年,世界的にクラウドファンディングが注目されている。 我が国では,2013年6月に閣議決定された,政府の日本再興戦略を受けて,金

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2014年2月,pp.1-19

松尾順介[2014b]「海外におけるクラウドファン

ディングの現状」『証研レポート』(日本証券経

済研究所・大阪研究所),No.1683,2014年4

月,8〜26頁

松尾順介[2014c]「「クラウドファンディングの投

資家と地理的分散」『証研レポート』(日本証券

経済研究所・大阪研究所),No.1685,2014年

8月,1〜15頁

松尾順介[2014d]「クラウドファンディングの可

能性」『証研レポート』(日本証券経済研究所・

大阪研究所),No.1687,2014年12月

森本健一[2014]「株式投資型クラウドファンディ

ングに関する我が国における規制の今後の展望

について」第82回証券経済学会全国大会報告,

2014年11月1日,和歌山大学,要旨:http://

www.sess.jp/meeting/report_82/03.pdf

山際勝照[2013]「黎明期にある日本のクラウド

ファンディング」『金融財政事情』3033号,

2013年7月15日,pp.10-14

Cortese, A. [2011] Locavesting, John Wiley &

Sons, Inc., (digital version)

massolution [2013] “2013CF The Crowdfunding

Industry Report”, http://research.crowdsour

cing.org/2013cf-crowdfunding-industry-repo

rt, pp1-92

*筆者は,内閣官房地域活性化統合事務局ふるさと

投資促進プラットフォーム協議会および第二種金融

商品取引業協会の検討会合に委員として参加する機

会を与えられ,委員の方々から有益なご教示を賜り

ました。厚く御礼申し上げます。また,本稿を執筆

するに際し,有吉尚哉氏(西村あさひ法律事務所),

池田唯一氏(金融庁),浦出俊和氏(大阪府立大学),

大前和徳氏(日本クラウド証券),梶原耕太郎氏(金

融庁),神谷亘氏(ミュージックセキュリティーズ株

式会社),河野通洋氏(株式会社八木澤商店),小松

真実氏(ミュージックセキュリティーズ株式会社),

金野連氏(酔仙酒造株式会社),金野泰明氏(酔仙酒

造株式会社),竹歳一紀氏(桃山学院大学)から有益

なご教示を頂戴いたしました。厚く御礼申し上げま

す。ただし,本稿中の意見に関する部分は,すべて

筆者のものであり,記述内容に関する責任も,すべ

て筆者に帰属することをお断りいたします。なお,

本稿は桃山学院大学共同研究プロジェクト(11連

213)の成果です。同研究プロジェクトに厚く御礼申

し上げます。

(桃山学院大学経営学部教授・当研究所客員研究員)

証券経済研究 第88号(2014 .12)

39