ブロカートフィルハーモニー管弦楽団 第39回定期...

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ブロカートフィルハーモニー管弦楽団 第 39 回定期演奏会 2017 年 9月18日(月祝)午後 1 時 30 分開演 (午後 1 時開場) すみだトリフォニーホール 大ホール

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Page 1: ブロカートフィルハーモニー管弦楽団 第39回定期 …schneeland.sakura.ne.jp/sblo_files/schneeland/image/39...Pyotr Tchaikovsky Symphony No.4 in F minor, Op. 36 第1楽章

ブロカートフィルハーモニー管弦楽団 第39回定期演奏会2017年9月18日(月祝)午後1時30分開演 (午後1時開場)すみだトリフォニーホール 大ホール

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ブロカートフィルハーモニー管弦楽団 第39回定期演奏会

指揮 𠮷川 武典Conductor Takenori Yoshikawa

フルート 甲斐 雅之Flute Masayuki Kai

グリーグ 劇音楽「ペール・ギュント」からEdvard Grieg from Incidental music " Peer Gynt ", Op. 23

1 イングリッドの嘆き  2 山の魔王の宮殿にて  3 オーゼの死4 朝の気分  5 アニトラの踊り  6 ペール・ギュントの帰郷

(約25分)

ニールセン フルート協奏曲Carl Nielsen Flute Concerto

第1楽章 Allegro moderato  中くらいの快速さで第2楽章 Allegretto  やや快速に

(約20分)

<休 憩>

チャイコフスキー 交響曲第4番 ヘ短調Pyotr Tchaikovsky Symphony No.4 in F minor, Op. 36

第1楽章 Andante sostenuto - Moderato con anima - Moderato assai, quasi Andante - Allegro vivo音を保って歩く速さで〜生き生きとふつうの速さで〜まさに中くらいの速さで、ほとんど歩く速さで〜生き生きと快速に

第2楽章 Andantino in modo di canzona - Piu mosso速めに歩く速さで歌うように〜もっと速く

第3楽章 Scherzo. Pizzicato ostinato. Allegro - Meno mossoスケルツォ 常にピチカートで 快速に〜もっと遅く

第4楽章 Finale. Allegro con fuoco終曲 火のように快速に

(約45分)

主催 ブロカートフィルハーモニー管弦楽団

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ようこそ! ブロカートフィルハーモニー管弦楽団へ

 本日は、お忙しいところブロカートフィルハーモニー管弦楽団第39回定期演奏会にお越しいただき、まことにありがとうございます。 今回は、当団のトレーナーとしてご指導くださっている甲斐雅之先生をソリストにお迎えして、ニールセンの協奏曲に取り組みます。ソロの美しい音色との協演をお楽しみください。また、グリーグの多様な情景とチャイコフスキーの力強い音楽も客席の皆様にお届けしたいと思います。 さて、わたしたちは素晴らしい指導者のもと、本日の演奏会を準備して参りました。多くの皆様にお楽しみいただけるよう心をこめて演奏しますので、最後までごゆっくりお聴きくださいますようお願い申し上げます。また、当団では一緒に音楽を創る仲間を募集しておりますので、ご興味がありましたらお声をかけていただければと思っております。 最後になりましたが、この演奏会のためにご指導くださいました先生方の皆様、ご賛助出演くださる方々をはじめとするお手伝いの皆様、そして、何より本日この会場にお越しくださいました皆様に厚く御礼申し上げます。

ブロカートフィルハーモニー管弦楽団団長 小野口 泰

プロフィール

指揮 𠮷川 武典 (よしかわ たけのり) NHK 交響楽団トロンボーン奏者。東京藝術大学在学中、新日本フィルハーモニー交響楽団に入団。1988年、第5回日本管打楽器コンクール・トロンボーン部門第1位、およびコンクール大賞を受賞。1991年、NHK 交響楽団に移籍。1996 〜 1997年、文化庁海外派遣芸術家在外研修員としてベルリンへ留学。2013年、香川 県文化芸術選奨受賞。伊藤清氏、ヴォルフラム ・ アルント氏に師事。オーケストラ活動のほか、リサイタルの開催やオーケストラとのコンチェルト協演などソリストとしても活躍し、日本各地で行われる室内楽や現代音楽のコンサートにも出演している。これまでに、ソロアルバム「風花賛礼」、「トロンボネッタ」、トロンボーン四重奏、金管アンサンブルなど、13枚の CD をリリースした。トロンボーン・クァルテット・ジパング、トウキョウブラスシンフォニー、N-crafts のメンバー。東邦音楽大学特任准教授、沖縄県立芸術大学音楽学部非常勤講師、高松第一高等学校音楽科中央講師。Photo 田中丸 豊次

フルート 甲斐 雅之 (かい まさゆき) 広島県出身。9歳からフルートを始める。東京藝術大学を経て同大学院修了。旧東京音楽学校奏楽堂にて卒業披露演奏会に出演。また奏楽堂復元開館10周年記念演奏会に出演。藤原勢子、三村園子、峰岸壮一、金昌国、中野富雄、P. マイゼン、M. コフラーの各氏に師事。第61回日本音楽コンクール入選、第9回フルートコンヴェンションコンクール入選。2002年、NHK 交響楽団に入団。2005年、文化庁芸術家在外研修員としてオーストリア・ザルツブルクのモーツァルテウム音楽院にて研鑚を積む。オーケストラ活動のみならずソロや室内楽で活躍するほか、各地の音楽祭などにも参加している。また後進の指導にも力を入れ、ジュニアオーケストラや音大生のための公開レッスンなど積極的に行っている。東京音楽大学講師。アジアフルート連盟理事。NHK 交響楽団首席フルート奏者。

Greeting & Profile

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グリーグ 劇音楽 「ペール・ギュント」から

 ノルウェーの作曲家エドヴァルド・グリーグ(1843−1907)は、自国の民謡や民族舞曲の独特な形式を重視し、作品にその国らしさを色濃く反映させるいわゆる「国民楽派」として、北欧の歴史や伝説、自然等から着想を得て数々の魅力的なピアノ小品や管弦楽曲を残している。彼の代表作である「ペール・ギュント」は、同じくノルウェーの劇作家イプセンの同名の戯曲への付随音楽として作曲された全5幕26曲から成る大作だが、のちにグリーグ自身によって、人気の高い4曲ずつをまとめた第1組曲と第2組曲が出版されてからは、さらに好評を博した。本日の演奏は、その二つの組曲の中から6曲を抜粋し、物語の流れに沿って構成している。 主人公は夢想家でほら吹きのノルウェーの青年ペール・ギュント。母オーゼと二人で暮らしていたが、王様か皇帝になるなどと言い出し、恋人ソルヴェイグを故郷に待たせて旅に出る。怪しい商売で金持ちになったり騙されて無一文になったりを繰り返すその半生を描く。 「イングリッドの嘆き」村の富豪の娘イングリッドの結婚式に現れたペールは、花嫁を略奪し逃亡するも一夜で飽きて彼女を捨て去る。絶望したイングリッドの心情が悲痛に歌われ、やがて慟哭へと高まる。 「山の魔王の宮殿にて」迷い込んだ森の中でペールは一国を支配する魔王の娘と出会い、権力欲しさに結婚を迫るが、訪れた宮殿で魔王から示される条件は恐ろしいものばかり。逃げようとしたペールは魔王の手下たちに追いつめられ、命からがら脱出する。 「オーゼの死」村に残してきた母が気にかかり、家へ戻ると、そこには瀕死の母の姿が。最後に優しく語りかけるペール。上昇型の主題が下降型に変化したころ、母は息子の腕の中で静かに息を引き取る。 「朝の気分」時は流れ、ペールは新天地モロッコの砂漠で清 し々い朝を迎えていた。フルートが奏でる清らかな旋律が広大なランドスケープへと鮮やかに展開する。 「アニトラの踊り」大金を儲けて、預言者と偽り、地元の部族の歓迎を受けたペールは、宴席で官能的に踊る酋長の娘アニトラに魅了されるが、色仕掛けに騙され全財産を奪われてしまう。 「ペール・ギュントの帰郷」無一文から再び財を成した老人ペールは、ようやく旅を終え帰郷のため航海に出た。が、嵐の海に難破。渦巻く下降音型と激しい低弦と打楽器のトレモロが船を転覆させる。 身一つで故郷の村にたどり着くと、年老いた恋人ソルヴェイグが彼の帰りを待っていた。彼女の膝の上でペールは、その奔放な人生の幕を閉じる。

(打楽器 江尻 明紀)

楽器編成 フルート 2、ピッコロ 1、オーボエ 2、クラリネット 2、ファゴット 2、ホルン 4、トランペット 2、トロンボーン 3、テューバ 1、ティンパニ 1、大太鼓 1、シンバル 1、トライアングル 1、弦楽5部。

Program Notes

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ニールセン フルート協奏曲

 カール・ニールセン(1865−1931)は、デンマークのオーデンセから南に12kmほど離れた村ノーレ・リュンデルセに、貧しい農民の子として生まれました。デンマークの国民的作曲家であり、かつてこの国の100クローネ紙幣には、彼の肖像画が印刷されていたほどです。ニールセンは、フィンランドのシベリウスと同じ年の生まれで、シベリウスと同じように優れた交響曲を残しています。彼の六つ交響曲の中では、第4番「不滅」と第5番がとりわけ有名です。ニールセンは、デンマーク王立劇場オーケストラのヴァイオリン奏者として活動するかたわら作曲を続け、のちには王立コペンハーゲン音楽院の理事に就任し、指揮者としても活躍しました。交響曲のほかには、ヴァイオリンとフルート、クラリネットのための三つの協奏曲、管弦楽曲、「仮面舞踏会」などのオペラ、室内楽曲など多彩な作品が知られています。 フルート協奏曲は、交響曲第6番が発表された翌年、1926年に完成されました。ニールセンは1922年にコペンハーゲン管楽五重奏団のために管楽五重奏曲を作曲して、好評を博しました。そののち、同団の団員のために協奏曲を書こうということになり、最初に完成したのがこのフルート協奏曲です。そのあと、1928年にクラリネット協奏曲を作曲しましたが、オーボエとホルンとファゴットのための協奏曲は完成に至らず、1931年にその生涯を閉じることになります。 フルート協奏曲は、ニールセンがその15年前に作曲したヴァイオリン協奏曲と同じように、二つの楽章で構成されています。オーケストラの編成には、フルートとトランペットが含まれておらず、トロンボーンはバス1本のみとなっています。両楽章とも、フルートとオーケストラ、フルートとクラリネット、ファゴット、トロンボーン、ティンパニなどとの軽妙な掛け合いが印象的で、聴きどころでもあります。ことにバストロンボーンは第2楽章で多用されるグリッサンドが印象的です。曲は、不安感をあおる場面とそれが解消される場面や、子どものように無邪気で楽しい場面が繰り返し出てきます。そして、時おりすべてを優しく包み込んでくれるような暖かく美しい旋律に救われるような気持ちになるところもあり、その感情の豊かさやそれらを表現する自由な作風に心を奪われます。 ソリストの甲斐雅之先生の演奏は、この曲の持っている魅力をさらに引き出し、観客の皆さまと我 オ々ーケストラメンバーともにニールセンの世界を堪能できると思います。

(フルート 園田 弘世)

楽器編成 オーボエ 2、クラリネット 2、ファゴット 2、ホルン 2、トロンボーン 1、ティンパニ 1、弦楽5部、独奏フルート。

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チャイコフスキー 交響曲第4番 ヘ短調

 ピョートル・チャイコフスキー(1840−1893)が完成させた六つの交響曲の中でも、本日お聴きいただく交響曲第4番以降の3曲は「三大交響曲」と呼ばれ、その芸術性が高く評価されています。交響曲第4番のほかにも、バレエ「白鳥の湖」、歌劇「エフゲニー・オネーギン」といった傑作が生み出され、チャイコフスキーが芸術家として大きな一歩を踏み出した1877年は、彼の人生においても、大きな転機となる年でした。 その転機は、二人の女性からの手紙によってもたらされます。一人は大富豪の未亡人、ナデージダ・フォン・メック夫人。1876年の末に熱烈なファンレターを書いてチャイコフスキーに援助を申し入れ、以降14年間にわたり、一度も直接会うことなく、巨額の年金や作曲依頼を通じて作曲家を経済的に支え続けます。もう一人はアントニーナ・ミリュコーヴァという、「自称」チャイコフスキーの教え子でした。1877年の4月に送られてきた一方的な求愛の手紙をきっかけに二人は出会い、7月には夫婦となります。しかし、チャイコフスキーはすぐさま逃亡して自殺まで図り、ほどなく結婚は破綻してしまいます。この年、チャイコフスキーは、メック夫人に金を無心する手紙の中で、交響曲第4番の献呈を提案し、結婚から逃亡して巡った冬のヨーロッパで、曲を仕上げたのです。天からふってきた幸運と、地獄の結婚生活の間をさまよいながら。 さて、完成した曲がいたく気に入ったメック夫人の求めに応じて、チャイコフスキーはみずから、曲の内容を説明する手紙を書き送ったために、この交響曲第4番は、作曲家自身による解説文が後世に残されるという、貴重な例となりました。その手紙の言葉を引用しながら、各楽章を見ていくことにしましょう。 第1楽章の標題は、「厳しい現実と、つかの間の幸福の夢との、絶え間のない交代」だといいます。序奏を形作る、重苦しいファンファーレは、幸福追求を妨げる「宿命的な力」です。憂鬱なリズムを持つ第一主題が執拗にくり返され、心地よい場面が現れたかと思えば、「宿命」の序奏が回帰して夢を妨げます。 第2楽章は「夕方、一人腰掛けて、仕事に疲れ、本を手にとっても滑り落ちてしまう」時の、メランコリックな感情。過去の苦しみや喜びが次々浮かぶが、それらすべてがもう遠いという、思い出の甘美な悲しみが、静かに昔語りをするようなアンダンテのリズムににじみ出ます。 第3楽章は「ほろ酔い気分になった時に脳裏をかすめる、気まぐれなアラベスク」。弦楽器のピチカートと、おどけた行進曲風の木管楽器の調べからなる一風変わったスケルツォで、夢の中のようにどこか脈略がありません。 突然喜びが爆発する第4楽章は「民衆のお祭り騒ぎ」。有名なロシア民謡を用いた第一主題と、勇ましい行進曲風の第二主題がくりかえされたあと、あの第1楽章の「宿命」のファンファーレが戻ってきますが、それを気にも止めずに迫り来る荒 し々いコーダによって、曲は閉じられます。「他人の喜びを喜びなさい。素朴ではあっても、力強い喜びは存在します。いずれにしても、生きて行くことはできます」という作曲家の言葉を、宿命に対する喜びの勝利宣言と取るか、ともかくも人生は続くという開き直りと取るかは、聴き手にまかされているのです。

(ヴァイオリン 宮本 友紀子)

楽器編成 フルート 2、ピッコロ 1、オーボエ 2、クラリネット 2、ファゴット 2、ホルン 4、トランペット 2、トロンボーン 3、テューバ 1、ティンパニ 1、大太鼓 1、シンバル 1、トライアングル 1、弦楽5部。

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「初めてフルートから音の出た瞬間の感動は、ものすごく大きかったです」

── 甲斐雅之さんに聞く

── ニールセンとのご縁は。

 20年ほど前の夏のことです。フルートのコンクールに出場するために、デンマークのオーデンセを訪れました。ここはアンデルセンの生まれた街です。童話に出てきそうな可愛らしくてきれいな街並みや、街の人たちの素朴な人情が強く印象に残っています。オーデンセのあるフュン島は、デンマークの国民的作曲家であるニールセンの故郷で、「カール・ニールセン国際音楽コンクール」に参加しました。フルート部門はこの年が第1回目でした。しかも出番は40人近くいた出場者のうち1番目だったんです。審査員がアルファベットの札を引いたら、最初に出たのが K。Kai ですから私になるんですね。私にとっては、海外旅行も初めてだったし、コンクールを受けるのも初めてのことでした。ホームステイ先のおばちゃんが、明るくておしゃべりで、作ってくれた食事もおいしかったことを懐かしく思い出します。3年ほど前にも行きましたが、街はほとんど変わっていなくて、のんびりした感じでした。

── フルートを始めたきっかけは。

 ピアノの教師をしていた母から手ほどきを受けて、小学校の1年生のころにピアノを始めていましたが、その後、夢中になったのは学校で習ったリコーダーでした。テレビアニメ「機動戦士ガンダム」の主題歌や、広島カープの応援歌なんかを耳で聴き憶えて、ピーヒャラピーヒャラやたらと吹いて、友だちにも教えて得意になっていました。4年生のとき、リコーダーと同じように縦にかまえるクラリネットを吹きたいと母に頼みました。そのころは広島県の東の方にある府中市に住んでいたのですが、あいにくクラリネットの先生が見つかりませんでした。けれどもフルートの先生ならいるよ、と。ここで人生が変わったんですね。「アルルの女」のフルートのあの音色に憧れて、とか言ってみたいのですが、そうではなかったんです。楽器を横にかまえるということは眼中にありませんでした。ともかくそうわけでフルートを習うことになりました。電車に1時間ほど乗って福山市の先生のお宅へ毎週、通いました。

Interview

ホームステイ先の部屋で練習。 美しいフュン島。 ホームステイ先のおばちゃんと。

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 フルートは、初めは吹き口のある頭部管だけを使って音を出す練習をします。ところが、毎週毎週挑戦してもいっこうに音が出ません。リコーダーと同じように管を口にくわえている感じで吹いてしまうのです。まったく音が出ないまま3か月がたち、もうフルートが嫌いになりかけました。やめてしまおうかと思い始めて、ちょっと投げやりな気持ちで吹いたところ、ポーッと初めて鳴ったのです。その瞬間の感動はものすごく大きかったのです。

 中学生になると、スポーツのほうが面白くなってレッスンをサボったこともあります。ピアノも、ときどき投げ出したりしながらなんとか続けていました。でもフルートの音色が好きだったのでしょう。だんだんピアノよりも熱を入れるようになりました。中学校の後半から高校にかけては練習曲を一生懸命さらったりしました。曲が難しくても気になりませんでした。初めて音が

鳴ってうれしかったときの感動がずっと残っていましたから。その後もフルートをやめようと思ったことは一度もありません。

── その後はどんな転機がありましたか。

 フルートをずっと続けていて、やはり大きな転機は東京に出てきて東京藝術大学に入ったことでしょうね。広島にいる時にはまだ、いろいろな曲が器用に吹けて友だちに自慢できたらいいな、ぐらいの感じでした。けれども、高校3年ごろのときに本格的に勉強したいと思うようになりました。地元の大学の教育学部の音楽科に行って小学校か中学校の音楽の先生になるか、専門の音楽大学に行くか考えて、東京に出ることを選んだのです。東京は毎日音楽会があって刺激的な街でした。NHK 交響楽団も3階の後ろの方の自由席でよく聴きました。

 2002年に N 響に入りました。入れるとは思っていなかったのですが、タイミングがよかったのですね。オーケストラのオーディションは、いつでもあるわけではなくて、ちょうど空きが出たときにこちらの条件が合っていなくてはなりません。それまでに、N 響を含めていくつもの在京のオーケストラにエキストラとして出演していました。当時は、中で吹いていてオーケストラの違いも楽しかったです。フルートだけではなく弦も含めて、オーケストラによって発音の仕方やタイミングが違っていて、それぞれにいいところがあるのです。とっても勉強になりましたね。

 2005年9月から1年間は、ザルツブルクで勉強しました。ちょうどモーツァルトの生誕250年に当たる年でした。たまたま借りた部屋が、モーツァルトの生まれた家のすぐ近くでしたので、いろいろと想像がふくらみました。モーツァルト週間というのが冬にあり、夏には有名なザルツブルク音楽祭がありました。ニコラウス・アーノンクールの指揮した「フィガロの結婚」は、残念ながらチケットが手に入らなくて行かれませんでしたけれど、いろいろな演奏会に通いました。そのときちょうどパーヴォ・ヤルヴィの指揮するドイツカンマー・フィルハーモニーも聴きましたね。

── ニールセンの協奏曲を知ったのはいつでしょうか。

 高校3年生の秋に、神戸で開かれたフルートコンクールを聴きに行きました。フィンランドのペトリ・アランコとその後ベルリン・フィルに入ったエマニュエル・パユの二人が1位を分け合いました。パユは当時19歳で

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いかにも若き神童という感じでしたが、アランコは26、7歳。学者肌で、のちにシベリウス音楽院の先生になった人です。彼には大人の音楽を感じました。素朴で温かくてしっかりしていて、しかもどことなく涼しげな音に魅せられました。そして、自分もああいう音を出してみたいと思いました。

 そのアランコの演奏するモーツァルトやバッハを生演奏で聴きました。彼の CD で聴いたのが、ニールセンのフルート協奏曲との出会いでした。そして東京藝大の卒業試験で、この曲を演奏したのです。現在では、学生がこの曲を採り上げることがよくありますが20年ぐらい前にはまだ珍しい曲でした。

 今ではニールセンの協奏曲は、フルートを勉強する学生にとっては避けては通れない曲です。でも、オーケストラと一緒に演奏されることはめったにありません。N 響もおそらく採り上げたことがないでしょう。ですから今回はすごくうれしい機会なのです。

── この協奏曲の魅力はどんなところにありますか。

 この協奏曲は、近代の曲で、あまりおしゃれという感じでもないのですけれど、日本人にはあまり聞きなれない感じかもしれません。でも、どことなく涼しげで、北欧の雰囲気を感じさせます。チャイコフスキーやラフマニノフのねっとりした感じとはまったく違っていて、あっさりしていて、きっぱりしています。メロディに不思議な感じがあります。フルートの特性を生かしたよくできた曲です。高い音域で鳥のように飛び回ったりする、フルートらしい技巧的な部分がたくさんありますね。

 この曲のフルートは、高音域だけではなくて低音域も魅力的です。フルートの魅力をまんべんなく聞かせていると思います。トリルがたくさん出てきますし、フルートの得意な速いパッセージをなめらかなレガートで吹く部分、叙情的な旋律をたっぷり歌わせる部分も十分に含まれています。第2楽章には、おどけたところも顔を出します。バストロンボーンやクラリネットとのやりとりなど、管楽器の扱い方がうまいですね。ティンパニとのからみも聴きどころです。ニールセンにはクラリネットの協奏曲もあります。フルートとクラリネットは、彼にとってことに重要な楽器だったのだと思います。この協奏曲は、ニールセン自身がヴァイオリンを弾いていたコペンハーゲンのオーケストラのフルート奏者のために書かれたものですが、その人はとっても上手だったのでしょう。

(聞き手 鈴木 克巳)

卒業試験のときに使った楽譜と現在出版されている楽譜。スラーの位置など、演奏指示が微妙に違っている。

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ブロカートフィルハーモニー管弦楽団

 1989年に「東京電機大学 OB 管弦楽団」として創立した当団は、2004年5月に「ブロカートフィルハーモニー管弦楽団」へと改称しました。「ブロカート」とはドイツ語で「錦」という意味です。出発点である東京電機大学の所在地、神田錦町に由来していますが、「錦」という言葉には「色彩や模様などが艶やかで美しいようす」という意味合いもあり、我々の表現したい音楽と重なり合っています。 2003年からは、合奏指導と指揮を NHK 交響楽団トロンボーン奏者の𠮷川 武典先生に一貫してお願いしております。また、それぞれのセクション、パート単位でも指揮者と交流の深い方々にご教示頂いており、指揮者とトレーナー陣の密な連携によるご指導のもとで音楽を創造していけることが、最大の特徴となっています。 2007年2月に開催された第20回記念演奏会に伴う特別企画として、団を象徴するマークを全国に公募し、多くの応募作品の中から阿部展也氏による作品をシンボルマークに決定致しました。指揮棒の軌跡が「B(ブロカートの音楽)」を描き出すさまを表した、当団に相応しいマークとともに活動を続けています。ブロカートフィルハーモニー管弦楽団公式サイト http://www.brokat.jp/

指導陣 / 役員

団員募集

 ブロカートフィルでは、一緒に音楽を創る仲間を募集しております。「新しい音楽が生み出される驚きと喜び」を求め、さまざまな年齢、楽器経験の人が集う活気あふれる管弦楽団です。NHK 交響楽団トロンボーン奏者の𠮷川 武典先生の指揮をはじめ、各セクションのトレーナーには NHK 交響楽団の先生方をお招きして活動しています。ぜひ一度、練習を見学してみてください。

【募集パート】(2017年9月18日現在)

ヴァイオリン 9名 ヴィオラ 3名 チェロ 3名 コントラバス 3名 ファゴット 1名【入団資格】毎回の練習にきちんと参加していただける方。詳細はパートごとによって多少異なりますので、お問い合せ下さい。

【練習日と練習場所】日曜夜間(月2、3回) 東京23区内(主に南部地区)公共施設にてお問い合わせ(人事係) E-Mail:[email protected]

公式トレーナー指揮 𠮷川 武典(NHK 交響楽団)高弦 白井 篤(NHK 交響楽団) 松田 拓之(NHK 交響楽団)低弦 桑田 歩(NHK 交響楽団)木管 菅原 恵子(NHK 交響楽団)金管 𠮷川 武典(NHK 交響楽団)打楽器 植松 透(NHK 交響楽団)

パートトレーナー第1ヴァイオリン 松田 拓之(NHK 交響楽団)第2ヴァイオリン 白井 篤(NHK 交響楽団)ヴィオラ 村松 龍(NHK 交響楽団)チェロ 桑田 歩(NHK 交響楽団)コントラバス 西山 真二(NHK 交響楽団)フルート 甲斐 雅之(NHK 交響楽団)オーボエ 池田 昭子(NHK 交響楽団)クラリネット 万行 千秋(東京フィルハーモニー交響楽団)ファゴット 菅原 恵子(NHK 交響楽団)ホルン 今井 仁志(NHK 交響楽団)トランペット 井川 明彦(NHK 交響楽団)トランペット 小林 正樹(フリーランス)トロンボーン 𠮷川 武典(NHK 交響楽団)テューバ 池田 幸広(NHK 交響楽団)打楽器 植松 透(NHK 交響楽団)

役員団長 小野口 泰運営委員長 田中丸 桂太郎運営委員 足立 洋希 尾畑 圭一 吉岡 克英 𠮷川 深雪会計 落合 貴子 白井 詩織会計監査 刈込 佐奈恵

音楽委員コンサートマスター 野崎 絢子弦セクションリーダー 坂本 亮子木管セクションリーダー 吉岡 克英金管セクションリーダー 仙波 靖之打楽器セクションリーダー 江尻 明紀

インスペクター 尾畑 圭一渉外 新井 一矢 木原 桂子人事 刈込 佐奈恵 田中丸 桂太郎 中尾 希美子ライブラリアン 猪俣 陽子 鈴木 克巳公式サイト管理 𠮷川 深雪合宿実行委員 足立 洋希後援会 下田 英考

Orchestra profile - Recruitment

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これからの演奏会

有志によるアンサンブルコンサート 錦 vol.142017年11月25日(土) 午後2時開演予定 かつしかシンフォニーヒルズ アイリスホール

ブロカートフィルハーモニー管弦楽団 第40回定期演奏会2018年2月4日(日) 午後2時開演 かつしかシンフォニーヒルズ モーツァルトホール指揮 𠮷川 武典ベルリオーズ ローマの謝肉祭ラヴェル クープランの墓サン・サーンス 歌劇「サムソンとデリラ」から バッカナールフランク 交響曲 ニ短調

ブロカート室内合奏団 第9回演奏会2018年4月28日(土) 午後2時開演 江東区文化センターホール指揮 𠮷川 武典メンデルスゾーン 管楽器のためのノクターンレスピーギ リュートのための古風な舞曲とアリア 第3組曲グラズノフ 主題と変奏モーツァルト 交響曲第35番 ニ長調「ハフナー」

後援会会員募集!

ブロカートフィルハーモニー管弦楽団を、資金的に応援してくださる方を募集しています。

1. 会員になってくださった方には、以下のような特典があります。(1) 定期演奏会の招待券を、後援会費1口につき2枚お送りします。(2) ご希望により、お送りした招待券2枚の座席指定をいたします。開場前にお並びになる必要がなくなります。 事前に客席のご希望をエリアでうかがい、席を指定させていただきます。招待券の送付時に詳細をご案内 いたします。

(3) 年2回、演奏会の情報などを掲載した後援会会報をお送りします。(4) 定期演奏会のプログラムにご氏名を掲載します。ただし、ご希望により掲載しないこともできます。

2. 年会費は1口3000円です。1口からお申し込みができます。

3. お申し込みの方法は、以下のとおりです。(1) 演奏会会場でのお申込み 休憩時間より終演後まで、ロビーに後援会受付窓口を設置しております。 受付に用意した後援会入会申込書にご記入の上、会費とともにお渡しください。

(2) メールによるお申込み 下記のメールアドレスあてに、メールをお送りください。折り返し、入会方法についてご案内いたします。お問い合わせ お申し込み(後援会係) E-Mail:[email protected]

後援会会員として当団の活動をご支援くださっている方々(敬称略)伊藤 恭子 大島 直樹 荻野 知昭 藤本 幸温 松井 裕治 宮本 晃雄 吉岡 忠 吉田 さとし ほか匿名15名

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Page 12: ブロカートフィルハーモニー管弦楽団 第39回定期 …schneeland.sakura.ne.jp/sblo_files/schneeland/image/39...Pyotr Tchaikovsky Symphony No.4 in F minor, Op. 36 第1楽章

第39回定期演奏会実行委員会

実行委員長吉田 峰子

会計落合 貴子

広報向坂 雅樹園田 弘世田中丸 桂太郎牧田 九乃重

印刷物デザイン𠮷川 深雪

プログラム編集鈴木 克巳

招待状係飯高 直美高山 京子

受付統括尾畑 圭一坂本 亮子里見 悠

レセプション宮川 祥一吉岡 克英

スタッフ統括田中丸 桂太郎

録音田中丸 桂太郎

録画門嶋 拓也

ステージ仙波 靖之

ホール担当刈込 佐奈恵田中丸 桂太郎

リハーサル見学会菱川 朝美

ホルン斎藤 美紅(G)

岸田 睦美谷 美佳原田 竜也𠮷川 深雪 ♪(N,T)

長谷川 真弓 ※

トランペット里美 悠仙波 靖之 ♪(G,T)

新藤 学 ※

トロンボーン落合 貴子(G)

小成 昭雄 ♪(N)

三浦 葉月(T)

テューバ木庭 美穂

打楽器江尻 明紀 ♪(G,N)

尾畑 圭一飛田 健士郎(T)

米倉 幸子 ※

ステージマネージャー菅野 重彦

♪ パートリーダー、トップ※ 賛助出演

G グリーグのトップ奏者N ニールセンのトップ奏者T チャイコフスキーのトップ奏者

チェロ猪俣 陽子 ♪大熊 陽香田中丸 順子中尾 希美子梅本 幹子 ※通山 光正 ※平井 康文 ※森川 雅子 ※矢田 啓介 ※ ♪

コントラバス新井 一矢門嶋 拓也宮川 祥一 ♪朝倉 雅史 ※有路 絵里香 ※平岡 やす子 ※

フルート桒田 要子 園田 弘世(G)

高山 京子牧田 九乃重 ♪(T)

オーボエ刈込 佐奈恵 ♪(G,N)

川 瀬 博士吉岡 克英(T)

クラリネット木原 桂子向坂 雅樹(G)

田中 隆宝地戸 千秋 ♪(N,T)

ファゴット足立 洋希(N)

二村 純子 ♪(T)

吉田 峰子(G)

コンサートマスター野崎 絢子 ♪

第1ヴァイオリン小川 早奈子小野口 泰田中丸 桂太郎野崎 彰山根 明樹枝薄井 麻由佳 ※岡崎 真由美 ※小林 豊 ※白井 妙子 ※末永 一花 ※仲間 文 ※ 松島 和彦 ※ 村上 淳 ※

第2ヴァイオリン柏 昂希菊池 桜白井 詩織宮本 友紀子 ♪渡邊 智子榮木 翔子 ※白井 篤 ※髙野 恵子 ※多勢 薫 ※只野 孝子 ※鳥谷部 幸 ※坂内 万里 ※保嶋 博子 ※

ヴィオラ飯高 直美坂本 亮子 ♪下田 英考鈴木 克巳菱川 朝美森屋 隆昭天野 洋 ※重野 隆 ※藤井 しのぶ ※横川 公俊 ※

Performers