トトママトトトマト葉かび病・ トマト葉かび病・葉かび病・すす...

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トマト トマト トマト トマト葉かび病・ 葉かび病・ 葉かび病・ 葉かび病・すすかび病 すすかび病 すすかび病 すすかび病の調査実施基準(案) の調査実施基準(案) の調査実施基準(案) の調査実施基準(案) 葉かび病は、比較的冷涼を好み、多湿条件が続くと発生が助長されるため、 発病推移及び気象要因からその後の発生量を予察する。また本病は、感染から 発病まで 14 日以上の潜伏期間を要するため、初発確認時には、ある程度感染が 広がっている。 すすかび病は斑点状の病徴を葉に示し、光合成を妨げる。発病の潜伏期間は、 気温 2830℃では 10 日程度、気温 25℃では、3 週間程度である。本病は潜伏 期間が長いため、発病が進行してからの殺菌剤散布では防除効果が劣る。 両病害とも、初発時期の予察に重点をおき、発病初期からの防除対策に資す る。 1. 調査 1) 定点における調査 ア.発病推移調査 (調査方法及び調査項目) 地域の標準的な作型で栽培した予察ほ場において、1 ほ場当たり 50100 株を任意に選んで、通路側片面の全複葉表面について株全体を眺めて 調査し、初発日を把握する。初発確認後は発病株周辺から 2550 株を選 び、通路側片面の全複葉表面について株全体を眺め、株ごとの発病程度 を調査し、次の式によって発病度を算出する。 発病度=((4A3B2CD)/(4×調査株数)) ×100 A:調査株の 2/3 以上の複葉に発病が認められる B:調査株の 1/3 以上 2/3 未満の複葉に発病が認められる C:調査株の 1/3 未満の複葉に発病が認められる D:調査株の 1 枚のみの複葉に発病が認められる。 E:発病が認められない ※ここでいう調査株とは、調査する株の通路側片面をいう。また、通 路側から見える範囲の複葉表面を調査する。 (調査時期及び調査間隔) 調査は定植後、2 週間〜1 ヶ月間隔で実施する。 -193-

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トマトトマトトマトトマト葉かび病・葉かび病・葉かび病・葉かび病・すすかび病すすかび病すすかび病すすかび病の調査実施基準(案)の調査実施基準(案)の調査実施基準(案)の調査実施基準(案) 葉かび病は、比較的冷涼を好み、多湿条件が続くと発生が助長されるため、

発病推移及び気象要因からその後の発生量を予察する。また本病は、感染から

発病まで 14 日以上の潜伏期間を要するため、初発確認時には、ある程度感染が

広がっている。

すすかび病は斑点状の病徴を葉に示し、光合成を妨げる。発病の潜伏期間は、

気温 28~30℃では 10 日程度、気温 25℃では、3 週間程度である。本病は潜伏

期間が長いため、発病が進行してからの殺菌剤散布では防除効果が劣る。

両病害とも、初発時期の予察に重点をおき、発病初期からの防除対策に資す

る。

1. 調査

(1) 定点における調査

ア.発病推移調査

(調査方法及び調査項目)

地域の標準的な作型で栽培した予察ほ場において、1 ほ場当たり 50〜

100 株を任意に選んで、通路側片面の全複葉表面について株全体を眺めて

調査し、初発日を把握する。初発確認後は発病株周辺から 25〜50 株を選

び、通路側片面の全複葉表面について株全体を眺め、株ごとの発病程度

を調査し、次の式によって発病度を算出する。

発病度=((4A+3B+2C+D)/(4×調査株数)) ×100

A:調査株の 2/3 以上の複葉に発病が認められる

B:調査株の 1/3 以上 2/3 未満の複葉に発病が認められる

C:調査株の 1/3 未満の複葉に発病が認められる

D:調査株の 1 枚のみの複葉に発病が認められる。

E:発病が認められない

※ここでいう調査株とは、調査する株の通路側片面をいう。また、通

路側から見える範囲の複葉表面を調査する。

(調査時期及び調査間隔)

調査は定植後、2 週間〜1 ヶ月間隔で実施する。

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(2) 巡回による調査

ア.発病状況調査

定点調査に準ずる。

発病度から、次の発病程度別基準によって発病程度別面積を算出する。

(発病程度別基準)

程度 無 少 中 多 甚

発病度 0 1〜20 21〜40 41〜60 61 以上

2. 予察法

(1)葉かび病は施設栽培で発生が多く、特に抑制栽培や長期栽培の晩秋~

早春に発生しやすい。ほ場内では、通気不良の場所で発生しやすい。露地栽

培においても、降雨が続く時期に見られる。

(2)葉かび病発生の好適条件は、湿度 95%以上、気温 20~25℃である。

気温 30℃以上あるいは湿度 80%以下で結露しない条件では、本病の発生は抑

制される。

(3)葉かび病は、肥料切れや着果負担によって草勢がおとろえると発生し

やすい。

(4)すすかび病の発生好適気温は、25〜30℃と葉かび病と比べて高い。25℃

付近では潜伏期間が 3 週間ほどあるため、同時期に感染した病原菌が、潜伏

期間を経て次々に発病するため、初発からその後の拡散を早く感じる。また、

夏期に定植する作型では、気温が 30℃付近で潜伏期間が 10 日ほどに短くな

るので、初発が早く、伝染環も速く回るため、発病が激しくなりやすい。

(5)葉かび病の発生部位は下位葉に多いが、すすかび病は下位葉に限らず

各葉位に発生し、また草勢にかかわらず発生するので、生育初期から株全体

をよく観察する。

(6)トマト葉かび病とトマトすすかび病の判別

トマトすすかび病とトマト葉かび病の両病害は病徴が酷似していること

から、病徴観察による判別は困難である。しかし、分生子の形態に特徴があ

り、顕微鏡(総合倍率 100~200倍)で分生子を観察することで判別が可能

である。判別の目的は、両病害の発生比率を確認するとともに、葉かび病抵

抗性品種を作付けした場合には、その品種が持つ抵抗性遺伝子を侵すトマト

葉かび病菌レースの発生の有無を確認するために行う。

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ア.対象サンプル

病斑部に菌叢を形成している被害葉

イ.調査時期

病害発生初期(ただし、病斑部に菌叢を形成している時期)及び確認を要

する時

ウ.調査方法

病徴部に、短く切ったセロハンテープの角を軽く押し付け、プラスチック

シャーレ等に貼付ける。貼付けたプラスチックシャーレの反対側から小型顕

微鏡で検鏡する。

発病葉を採取せず、病徴部から直接セロハンテープを押し付ける方法は、

トマトを傷つけることなく調査できる。また、生産者の同意が得られれば、

発病葉を調査時に採取し、まとめてテープ貼りと検鏡を行うことで調査時間

を調整できる。

なお、分生子の観察には「小型顕微鏡を利用したトマト葉かび病とトマト

すすかび病の簡易診断マニュアル」(HP アドレス)を参考にする。

エ.調査点数と株数

1ほ場当たり発病した約 10 株を任意に選んで、株毎に 1 病斑の分生子の

形態を観察する。約 10 病斑を確認して混在していた場合は、目的に応じて

追加調査を行う。

オ.発病程度別面積

両病害が混在する場合は、エ.で調査した比率で、1.(2)で算出した発病

程度別面積を案分する。

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小型小型小型小型顕微鏡顕微鏡顕微鏡顕微鏡を利用したトマト葉かび病とを利用したトマト葉かび病とを利用したトマト葉かび病とを利用したトマト葉かび病と

トマトすすかび病の簡易診断マニュアルトマトすすかび病の簡易診断マニュアルトマトすすかび病の簡易診断マニュアルトマトすすかび病の簡易診断マニュアル

2015年1月27日

1111 はじめにはじめにはじめにはじめに

トマト葉かび病は,葉に斑点状の病徴を示し,生育不良・着果不良などを引き

起こす病害です。また,トマトすすかび病は,トマト葉かび病抵抗性品種の普

及に伴って全国的に問題となっている病害で,トマト葉かび病と同様,葉に斑

点状の病徴を示します(5 両病害の葉の病徴参照)。

両病害の病徴はいずれも,はじめ葉裏に不明瞭な淡黄緑色の病斑が現れ,やが

て灰褐色の菌叢を生じます。病斑はしだいに拡大して,円形あるいは葉脈に囲

まれた不整形病斑となり,灰褐色~黒褐色に変わります。葉の表面には裏面よ

りやや遅れて不明瞭な淡黄褐色の病斑から菌叢を生じますが,葉裏に比べて少

ないです。その後病勢が激しくなると,被害葉は垂下し,乾燥巻縮して全葉が

灰色から濃緑褐色のかびで覆われます。

このように両病害は病徴が酷似していることから,肉眼観察による判別は困難

ですが,顕微鏡(総合倍率100-200倍)で分生子の形態を観察することで判別が

可能です。

トマトの発生予察調査において,通常、病原菌の観察に用いる生物顕微鏡は卓

上型で持ち運びに不向きなため,葉かび病とすすかび病を現地で判別する手段

として適しません。しかし,持ち運びが容易な小型顕微鏡を使用することで,

現地での診断が可能となります。

以下に,小型顕微鏡を利用した両病害の簡易診断方法を示します。

2222 材料材料材料材料

1)小型顕微鏡(倍率100-200倍)

2)シャーレ(透明なプラスチック

板、ガラス板などでも応用可能

です。)

3)セロハンテープ

4)細書きの油性ペン

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3333 診断方法診断方法診断方法診断方法

1)病斑部に菌叢を形成している被害葉を対象とします。

2)診断方法

a 病斑部に短く切り取ったセロハンテープを軽く押し付け,分生子をセロハ

ンテープに付着させます。この際,分生子の付着部が分かるように,テープ

の角に付着させます。

b aのセロハンテープを,シャーレの内側に貼り付けます。この際,細書き

のマジックで印をつけると分生子を見つけやすくなります。

c bを小型顕微鏡で、シャーレの外側から観察します。明るいところで観察

してください。ただし、太陽に向けてはいけません。

多くの検体を検鏡する場合は長方形のプラスチックシャーレ(1 号角シャーレ)

が便利です。セロハンテープの両端に各病斑をつけ、プラスチックシャーレ中央

に並べると検鏡の際、ピント合わせが微調整で良いため効率よく観察できます。

d 分生子の形態で,トマト葉かび病(楕円や樽形)かトマトすすかび病(棒

やひも形)かを診断します(4 両病害の分生子の形態参照)。

セロハンテープ

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4444 トマト葉かび病菌とトマトすすかび病菌トマト葉かび病菌とトマトすすかび病菌トマト葉かび病菌とトマトすすかび病菌トマト葉かび病菌とトマトすすかび病菌のののの分生子分生子分生子分生子の形態の形態の形態の形態

(1) 小型顕微鏡で観察した葉かび病菌とすすかび病菌の分生子

(2) 生物顕微鏡で観察した葉かび病菌とすすかび病菌の分生子

葉かび病菌の分生子は、無色単胞から褐色 2 胞の楕円形です。すすかび病菌の

分生子は、淡褐色で棒やひも形で、0-15 個の隔壁があります。

左:葉かび病菌分生子,右:すすかび病菌分生子(100倍)

左:葉かび病菌分生子,右:すすかび病菌分生子(100倍)

左:葉かび病菌分生子,右:すすかび病菌分生子(400倍)

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5555 トマト葉かび病とトマトすすかび病トマト葉かび病とトマトすすかび病トマト葉かび病とトマトすすかび病トマト葉かび病とトマトすすかび病のののの葉の葉の葉の葉の病徴病徴病徴病徴

(1) 葉表

葉の表面は裏面よりやや遅れて不明瞭な淡黄褐色の病斑を生じます。

葉の表面にも病斑から菌叢を生じます。

<トマトすすかび病> <トマト葉かび病>

初期 初期

中期

後期 後期

中期

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(2) 葉裏

両病害ともに、はじめ葉裏に不明瞭な淡黄緑色の病斑が現れ,やがて灰褐色

の菌叢を生じます。

病斑はしだいに拡大して,円形あるいは葉脈に囲まれた不整形病斑となり,

灰褐色~黒褐色に変わります。

葉かび病の病斑は盛り上がりが大きい、すすかび病の病斑は黒色に近いなど

の特徴はありますが、実際の病斑には様々な形態があります。病斑の見た目

のみで判断せず、小型顕微鏡で分生子の形態を確認してください。

初期 初期

中期

後期 後期

中期

<トマトすすかび病> <トマト葉かび病>

-200-

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6666 診断診断診断診断の実際(例)の実際(例)の実際(例)の実際(例)

(1) 対象サンプル

病斑部に菌叢を形成している被害葉

(2) 調査時期

病害発生初期(ただし、病斑部に菌叢を形成している時期)

(3) 調査点数と株数

ほ場毎に10株を選び、株前面(通路側)に伸長している複葉から、1株当

たり5複葉を選びます。その5複葉から、複葉毎に1小葉を選んで分生子

形状を観察します。なお、株・複葉・小葉は、いずれも任意に選びます。

7777 参考文献参考文献参考文献参考文献

黒田克利(2012)関西病虫研報54:109−110.

附表附表附表附表::::診断事例診断事例診断事例診断事例

1 宮城県の事例

表1・2に示したとおり、宮城県で調査した結果では、多くの場合、葉かび病、

すすかび病のいずれか一方の病害が優勢でした。ただし、表2のEほ場やFほ場

のように、両病害が一定割合で混在する場合もありました。

表1 葉かび病およびすすかび病の発生状況(平成 23 年)

ほ場名「品種名」 調査小葉数 葉かび病 すすかび病 混在

A「レッドオーレ」 100 99 1 0

C「TTM-055」 100 6 93 1

E「CF 桃太郎はるか」 100 95 5 0

G1「富丸ムーチョ」 100 0 100 0

G2「フロリーノ」 100 97 3 0

宮城農園研

「CF 桃太郎ファイト」 100 3 97 0

ほ場・・・現地ほ場:4か所(A,C,E,G),宮城農園研ほ場:1か所 サンプリング日・・・A:H23.10.28,C:H23.11.24,E:H23.11.4,G1:H23.10.27,

G2:H23.11.30,宮城農園研:H23.11.29 いずれのほ場も慣行防除。 各ほ場,任意の 100 株から菌叢を形成している小葉を各1葉サンプリングして,小型顕微鏡(総合倍率 100 倍)で分生子形状を観察。

-201-

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表2 葉かび病およびすすかび病の発生状況(平成 26 年)

ほ場名「品種名」 調査小葉数 葉かび病 すすかび病 混在 不明

A「カンパリ」 100 90 1 1 8

B「カンパリ」 100 1 92 5 2

C「CF桃太郎はるか」 100 0 95 0 5

D「桃太郎セレクト」 100 0 100 0 0

E「CF千果」 100 21 57 16 6

F「カンパリ」 106 42 45 19 0

G「麗夏」 100 0 100 0 0

H「CF桃太郎はるか」 100 6 89 5 0

サンプリング日:H26.5.9・・・A・B・C,H26.9.26・・・D・E・F・G・H

いずれのほ場も慣行防除。

各ほ場,任意の 100 株から菌叢を形成している小葉を各1葉サンプリングして,小型顕微鏡(総合倍率 100 倍)で分生

子形状を観察。

「不明」は,病斑はあったが胞子を確認できなかった小葉。

2 三重県の事例

平成25年の三重県松阪市ではトマト葉かび病菌レース9が未発生であるため、

葉かび病抵抗性遺伝子Cf-9を持った品種に、葉かび病の発生は確認されませんで

した(表3)。

平成26年の調査では、場内Bおよび現地Aにおいて少発生ながら葉かび病が確認

されました(表4)。一方、他のほ場では、すすかび病だけが確認されました。

以上の結果から、10株各1病斑で10病斑程度を観察すれば十分と考えられまし

た。

表3 トマトすすかび病およびトマト葉かび病の発生状況(平成25年)

調査実施場所:三重県農業研究所内植物工場三重実証拠点(三重県松阪市)

調査品種:CF桃太郎ヨーク、冠美

調査月 調査株数 調査

斑数 葉かび

すすかび

混在

9月 100 100 0 100 0

10月 100 100 0 100 0

11月 100 100 0 100 0

12月 100 100 0 100 0

-202-

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表4 トマトすすかび病およびトマト葉かび病の発生状況(平成26年)

場内Aハウス:桃太郎コルト 場内Bハウス:ハウス桃太郎

現地A:ミニトマトSC5036 現地B:ミニトマトSC5036

現地C:TYみそら86

現地E:りんか409

現地D:TYみそら86

調査実施場所:場内Aハウス、Bハウス:三重県農業研究所内ビニルハウス(三重県松阪市)

調査株数:場内は60株、現地は100株を調査。

ただし、発病株が調査株数より少ない場合は、発病株数を調査。

調査月 調査株数 調査

斑数 葉かび

すすかび

混在

5月14日 60 60 0 60 0

5月28日 60 60 0 60 0

6月11日 60 60 0 60 0

6月24日 60 60 0 60 0

7月9日 60 60 0 60 0

調査月 調査株数 調査

斑数 葉かび

すすかび

混在

6月10日 15 15 9 6 0

6月25日 9 9 5 4 0

9月30日 3 3 3 0 0

10月15日 1 1 1 0 0

調査月 調査株数 調査

斑数 葉かび

すすかび

混在

9月11日 21 21 0 21 0

9月30日 15 15 0 15 0

10月15日 24 24 0 24 0

10月30日 15 15 0 15 0

11月13日 6 6 0 6 0

12月4日 89 89 0 89 0

調査月 調査株数 調査

斑数 葉かび

すすかび

混在

6月10日 2 2 0 2 0

6月25日 4 4 0 4 0

9月11日 10 10 0 10 0

調査月 調査株数 調査

斑数 葉かび

すすかび

混在

6月24日 60 60 0 60 0

7月9日 60 60 0 60 0

7月22日 60 60 1 59 0

調査月 調査株数 調査

斑数 葉かび

すすかび

混在

4月24日 100 100 0 100 0

5月8日 100 100 0 100 0

5月22日 100 100 0 100 0

6月10日 100 100 0 100 0

6月25日 100 100 0 100 0

9月11日 15 15 0 15 0

9月30日 100 100 0 100 0

10月15日 100 100 0 100 0

10月30日 100 100 0 100 0

11月13日 66 66 0 66 0

12月4日 28 28 0 28 0

調査月 調査株数 調査

斑数 葉かび

すすかび

混在

4月24日 100 100 0 100 0

5月8日 100 100 0 100 0

5月22日 100 100 0 100 0

6月10日 100 100 0 100 0

6月25日 100 100 0 100 0

9月11日 100 100 0 100 0

9月30日 100 100 0 100 0

10月30日 26 26 0 26 0

11月13日 50 50 0 50 0

12月4日 100 100 0 100 0

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発生予察調査基準(案)イチゴのアザミウマ類

G アザミウマ類

施設イチゴにおけるアザミウマ類の発生量は、ほ場内の防除やほ場周辺植生の影響が

大きく、生産者の管理状況によって大きく異なる。そのため、巡回調査を中心として予

察を行う。定点調査を行う場合は、防除管理等を考慮して調査ほ場を設定する。

1.調 査

効率の高い簡易調査の方法はイチゴの草姿によって異なり、花の見取り調査もしく

は花叩き調査を行う。冬期の無加温栽培など、草姿が匍匐気味で、花房が横向きに出

ている場合は見取り調査では見落としが大きく、花叩き調査が良い。これに対し、草

姿が立性で花房が上向きに出ている場合は花叩きでは誤差が大きく、見取り調査が良

い。

(1) 定点における調査

ア.花叩き法

(調査方法及び調査項目)

20×15cm程度の大きさの白色ホーロー引きバットの上で花房を10回程度軽く叩

き、花に寄生するアザミウマ類を叩き落とす。落下したアザミウマ類の虫数と叩

いた花房の開花数を計数し、花当たりのアザミウマ類個体数を算出する。

調査花数は 20~100 花の範囲とし、アザミウマ類の発生量が多い場合には、調

査花数と落下したアザミウマ類の累積個体数に応じて、以下の要領に従って調査

花数の削減が可能である。

① 最低 20 花は調査を行うこととし、これ以降は以下②~④のように、アザミウ

マ類の累積個体数が一定数を超えた時点、又は 100 花に達した時点で調査を終

了する。

② 調査花数 20~39 花の範囲で、落下したアザミウマ類の累積個体数が 30 頭を越

えた場合

③ 調査花数 40~79 花の範囲で、落下したアザミウマ類の累積個体数が 25 頭を越

えた場合

④ 調査花数 80~99 花の範囲で、落下したアザミウマ類の累積個体数が 20 頭を超

えた場合

調査花数とアザミウマ類の累積個体数から花当たり個体数を算出する。

必要に応じて1ほ場あたり成虫 20 頭程度を上限に採集して持ち帰り、種構成を

把握する。

(調査時期および調査間隔)

調査は、基本的に本ぽでの栽培期間中、月1~2回程度実施する。促成栽培

では概して3月以降アザミウマ類の密度が急増するが、10 月までに開花が始ま

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る作型では、開花~11 月までに密度が急増する場合もある。このような密度増

加時期には、発生状況に応じて適宜調査間隔を短くするのが望ましい。

(発生程度別基準)

発生程度 無 少 中 多 甚

虫数/花 0 0.01~0.03 0.04~0.26 0.27~0.37 0.38 以上

イ.見取り法

(調査方法及び調査項目)

ほ場内の複数の畦から、開葯した花を合計 100 花調査する。アザミウマ類寄生

の有無を目視観察し、100 花あたりのアザミウマ類寄生花率を求める。

(調査時期及び調査間隔)

アに準ずる。

(発生程度別基準)

程 度 無 少 中 多 甚

寄生花率(%) 0 1~2 3~8 9~15 16 以上

(2) 巡回による調査

定点における調査に準ずる。

2.予察法

促成イチゴ本ぽにおけるアザミウマ類の発生は、防除状況や開花開始時期、周辺植生

の影響が大きい。したがって、ほ場におけるアザミウマ類の発生密度の推移や防除状況、

気温等の気象条件を勘案しながら発生予察を行う。

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イチゴのアザミウマ類 発生予察調査実施マニュアル

1.概説

イチゴの本圃において果実を加害するアザミウマ類は、ミカンキイロアザミウマ、ヒラ

ズハナアザミウマ、ビワハナアザミウマ、ハナアザミウマ、ネギアザミウマの4種が確認

されている。いずれも花に集まる習性があるので、花を調査することで容易に発生密度を

推定できる。

(1)調査方法の概略(花叩き調査と見取り調査)

イチゴの花の調査方法は、イチゴの花房を手で叩いて、落下したアザミウマ類を計数す

る「花叩き調査」と、イチゴの花を肉眼で観察し、アザミウマ類の寄生の有無を確認する

「見取り調査」がある。

イチゴの花房が横~斜め上向きに抽出、開花する場合(冬の無加温栽培など)は、見取

り調査は作業性が悪く、精度が低下するが、花叩き調査は容易である(写真1)。これに

対し、花房が上向きに抽出、開花する場合(加温栽培など)、花叩きは困難だが、見取り

調査は容易に行える(写真2)。各都道府県の品種特性や栽培特性により、花叩き調査と

見取り調査のいずれが適しているかを判断して調査手法を選択する。

(2)調査に使用する道具

調査花数を軽減可能な調査

花数と累積個体数の関係を

書いておくと分かりやすい

(花叩き調査の項を参照)。

ヘッドルーペ

微小な虫が見えにくい

場合に便利。

1.8倍程度あれば良い。 カウンター

2連以上あれば良い。

白色バット(花叩き調査)

花を叩いてアザミウマ類

をこの上に叩き落とす。

22cm×16.5cm×高さ3cm

程度が使いやすい。

花叩きしやすい花叩きしやすい花叩きしやすい花叩きしやすい 見取りしやすい見取りしやすい見取りしやすい見取りしやすい

写真2.上向きに抽出した花房 写真1.横向きに抽出した花房

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2.調査方法

A.花叩き調査

この調査事例の場合、38 番目の花房を調査した時点で、累積調査花数 81 花、アザミウマ

類累積個体数は 26 頭となり、「調査花数 80~99 花の範囲で 20 頭以上」に該当し、この時

点で調査を終了することができる。この圃場のアザミウマ類の推定発生密度(花当たり個

体数)は、調査終了した時点のデータから、26 頭/81 花=0.32 頭/花と算出される。

①開花数を計数し、調査花数と

する(写真の場合は4花)。

②花房を軽く 10 回程度叩き、白

色バット上にアザミウマ類を落

とす。

③アザミウマ類の個体数を計数

する。

複数種が混発している場合は同

定用サンプルを採集する。

④調査花数とアザミウマ類個体

数を累積して計数する。下表に

該当又は 100 花に達した時点で

調査終了。

花当たり個体数を算出する。

具体例は下記の事例を参照

調査花数 累積個体数

20~39花 30頭以上

40~79花 25頭以上

80~99花 20頭以上

調査事例(2011,5/12 奈良県桜井市、品種:アスカルビー)

アザミウマ類の推定密度:0.32 頭/花

調査花房No. 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19

調査花房の開花数 2 2 3 2 4 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2

累積調査花数 2 4 7 9 13 15 17 19 21 23 25 27 29 31 33 35 37 39 41

アザミウマ類落下個体数 0 0 2 0 0 2 2 0 0 1 1 0 0 0 1 3 0 0 1

アザミウマ類累積個体数 0 0 2 2 2 4 6 6 6 7 8 8 8 8 9 12 12 12 13

調査花房No. 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38

調査花房の開花数 2 2 2 3 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 3 2 2 2

累積調査花数 43 45 47 50 52 54 56 58 60 62 64 66 68 70 72 75 77 79 81

アザミウマ類落下個体数 3 0 0 0 0 3 0 3 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 3

アザミウマ類累積個体数 16 16 16 16 16 19 19 22 22 22 22 22 22 23 23 23 23 23 26

①①①①

②②②②

③③③③

④④④④

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B.見取り調査

3.アザミウマ類のサンプル採集と同定方法

(1)サンプル採集に必要な道具

①下図のように、施設端と中央の通路を

通り、両側の花を調査すると効率よい。

②調査は、開葯した花を対象とする。

③直接目視によって、アザミウマ類の寄生を確認する。体色が黄色系の個体は見落とし易

いため、ヘッドルーペを使用するか、息を吹きかけ動いたところを確認するとよい。

ビワハナアザミウマ(黄色系)ビワハナアザミウマ(黄色系)ビワハナアザミウマ(黄色系)ビワハナアザミウマ(黄色系) ヒラズヒラズヒラズヒラズハナアザミウマ(ハナアザミウマ(ハナアザミウマ(ハナアザミウマ(褐褐褐褐色系)色系)色系)色系)

④合計 100 花となった時点で見取り調査は終了。

出入

面相筆

これでアザミウマ類を捕獲する。使い古し

て毛先が少し開いたものが捕獲しやすい。

スクリュー管瓶

捕獲したアザミウマ類は

これに入れて持ち帰る。

口の広い中型管瓶(内径

3.5cm×高さ 7.5cm)が使

いやすい。

片面を折り返したメンディ

ングテープを貼っておき、採

集日、場所などを記録する。

約 70%エタノールを 1/3 程

度入れておく。

①面相筆による採集

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複眼

前胸部 ②前胸前縁刺毛

③前胸後縁刺毛

①複眼後方刺毛

(2)アザミウマ類の種同定

イチゴを加害する4種の同定に

は右図①~③の刺毛と体色を観察

する。

この他の種も含めた同定には、

「植物防疫特別増刊号 No.14 アザ

ミウマ類の見分け方(社団法人日本植物防疫協会)」を参照する。この中でも、「粘着ト

ラップに誘殺されたアザミウマ類の簡易同定法(千脇と佐野)」が最も分かりやすい。

イチゴを加害するアザミウマ類の簡易同定チャート 長刺毛がない

チャノキイロアザミウマなど

複眼後方に長刺毛がある 複眼後方の長刺毛がない前胸後縁の長刺毛が前胸の長さの1/2より短い

前胸後縁の長刺毛が前胸の長さの1/2以上ある

ミカンキイロアザミウマ ヒラズハナアザミウマ ネギアザミウマ 下図へ

前胸部の長刺毛は前縁と後縁にある 前胸部の長刺毛は後縁のみにある

Frankliniella属 Thrips属

雄成虫

体色は褐色、触角第3節

が黄色で褐色の他節と明

瞭なコントラストがある

体色は橙色、腹部背板に

褐色の縦帯模様体全体が黄色

実体顕微鏡で確認できる体色、刺毛の差

異がなく、プレパラート標本を作成し、文献

に基づいて同定する

ハナアザミウマ ビワハナアザミウマ キイロハナアザミウマ

雌成虫

吸虫管

先端に 1ml 用のピ

ペットチップが取

り付けられるもの。

捕集後、チップ部分

ごと PP 容器に入れ

持ち帰る。

予め 1ml のピペット

チップを入れ、ラベル

にメンディングテー

プを貼付けておく。

PP 容器

1ml ピペットチップ

が入る高さの容器。

②簡易吸虫管による採集

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4.果実被害調査

発生予察調査においては、花に寄生するアザミウマ類の密度を調査対象とするため、果

実被害調査は必ずしも必要ではない。しかし、被害の発生程度を把握したい場合は、以下

に注意して調査する。

成熟果の被害(右下:拡大)

健全部と被害部のコントラストが

不明瞭で、被害が分かりにくい。

未成熟果の被害(右下:拡大)

健全部と被害部のコントラストが

明瞭で、被害が分かりやすい。

①着色前の未成熟果は被害が分かりやすい

チャノホコリダニによる被害

果実の褐変、葉の萎縮と葉脈沿

いの褐変が生ずる。

左:アザミウマ類

による被害

種子周囲の窪みは

褐変しない。

右:チャノホコリ

ダニによる被害

種子周囲の窪みが

褐変する。

②チャノホコリダニによる被害との区別

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