びわ湖の水温・濁度・クロロフィル・透明度の最近...

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びわ湖の水温・濁度・クロロフィル・透明度の最近の変化傾向 について 誌名 誌名 陸水學雜誌 ISSN ISSN 00215104 巻/号 巻/号 741 掲載ページ 掲載ページ p. 21-27 発行年月 発行年月 2013年1月 農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センター Tsukuba Business-Academia Cooperation Support Center, Agriculture, Forestry and Fisheries Research Council Secretariat

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びわ湖の水温・濁度・クロロフィル・透明度の最近の変化傾向について

誌名誌名 陸水學雜誌

ISSNISSN 00215104

巻/号巻/号 741

掲載ページ掲載ページ p. 21-27

発行年月発行年月 2013年1月

農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センターTsukuba Business-Academia Cooperation Support Center, Agriculture, Forestry and Fisheries Research CouncilSecretariat

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陸水学雑誌 (JapaneseJournal of Limnology) 74: 21 -27 (2013)

査_j正 (LimnologicalrecordJ

びわ湖の水温・濁度・ク口口フィル・透明度の最近の変化傾向

について

奥村康昭 1)・遠藤修一 2).石川俊之 2)

Recent Changes in Temperature, Turbidity, Concentration of Chlorophyll-a,b, and

Transparency in Lake Biwa, Japan

Yasuaki OKUMURAI), Shuichi ENDOH2

) and Toshiyuki ISHIKAWA2)

Abstract

Vertical profiles of temperature, turbidity and concentration of chlorophyll-a,b were measured every month

from 1996-2011 at a fixed point in Lake Biwa, Shiga Prefecture, Japan, using a multi-parameter aqua-quality

profiler. During this time, turbidity and concentration of chlorophyll-a,b decreased and the transparency increased.

Therefore, th巴seresults indicate an improv巴mentin the quality of water from Lake Biwa.

Keywords: aqua-quality profiler, temperature, turbidity, chlorophyll-aムtransparency,Lake Biwa

摘要

多項目水質プロファイラーを使用して,びわ湖を南部から北部へ縦断する測線に沿った水質調査を

1996年から続けている。北小松沖の定点における水温,濁度,クロロフィル量と透明度のデータを使っ

て,水質の変化傾向を調べた。水温のデータには特に温暖化の傾向は見られなかった。濁度とクロロフィ

ノレ量は漸減傾向で、あり,透明度は高くなっていることが分かつた。びわ湖の水質は改善傾向にあるとい

える。

キーワード:水質プロファイラー,水温,濁度,クロロフィル,透明度,びわ湖

(2012年 4月 10日受付;2012年 5月 24日受理)

はじめに

びわ湖は日本で一番大きな湖であり,世界でも 3番目

に古い古代湖 (Horie,1984) である。この湖は長い間,

貧栄養糊であったが, 1960年代以降の経済成長に伴っ

て,水質が悪化し中栄養湖(手塚, 1991)に位置づけら

れるようになった。最近では,様々な汚濁防止の対策が

取られるようになって,びわ湖の水質は改善傾向に有る

1)大阪電気通信大学工学部干 572-8530大阪府寝屋川市初町 18-8. Faculty of Engineering, Osaka E1ectro-Communication University, 18-8

Hatsumachi, Neyagawa, Osaka 572-8530, Japan 2)滋賀大学教育学部〒 520-0862滋賀県大津市平津 2-5-1. Facu1ty of Education, Shiga University, 2-5-1 Hiratsu, Otsu, Shiga 520-0862, Japan

(連絡先奥村康昭 [email protected]

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奥村康昭ほか

と言われている(岡本ら, 2011)。

この論文では,筆者らが 1996年から月に一回の頻度

で続けているびわ湖の観測データに基づいて,最近の水

温・濁度・クロロフィル量と透明度の変化から,水質の

改善傾向を調べた。観測は,浜大津から竹生島を結ぶ琵

琶湖の軸に沿った縦断線上に測点を設定(例えば遠藤ら,

データの取り扱いには注意が必要である。水温に関して

は両測器で同時観測を行えば簡単に器差を求めることが

でき,実際に行った結果,器差はなかった。濁度とクロ

ロフィ/レ量に関しては,検定方法や原理に差があるので

検討を加える必要がある。

2011) して行っている。測点の間隔はその年の観測目的 濁度

に応じて変えているが,解析は北湖西岸北小松沖の水深 両測器の濁度計は赤外線後方散乱方式であるの

75 m地点 (Fig.1の・)のデータについて行った。この で,原理的には同じであるが,検定方式が異なってい

地点は,北湖の南部における最深部(奥村ら, 2003) に る。 ACL1170回Dはカオリナイト懸濁液 (Kaorin) で,

なる。 AAQ1183はホノレマジン水溶液(FfU)で検定されている。

Lake Biwa

1360

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5km 暗時四一争

350

OO'OO"N

Fig. 1. Map of Lake Biwa showing an observation point of data

using analysis.

図1.解析に使ったデータの観測地点、

観測方法の検討

観測に使っている測器はアレック電子(現 JFEアド

パンテック(株))のクロロテック ACL1170心と AAQ1183

であり,前者は 1996年から 2004年6月まで,後者はそ

れ以降である。途中で計測器が変更になっているので

22

両測器で、同時に観測を行ってデータを比較した。両者の

関係式はFfU= 0.576*Kaorin + 0.008であり,相関係数

は0.912であった。濁度の計測範囲がカオリナイト濁度

で2.5ppmまでと少し小さいが,びわ湖では大雨後の特

別な場合を除いてあまり大きな値を示さないので,この

式を用いて ACL1170-Dの観測データをFfU値へ変換し

でも差し支えない。

クロロフィル量

ACL1170-Dは,光源にハロゲンランプを使用して,

干渉フィルターで 410~ 470 nmの励起光とし,側方散

乱光の内 640~ 700 nmの蛍光を測定してクロロフィル

の量を求めている。 AAQ1183は青色発光ダイオードを

励起光として,後方散乱光の蛍光を測定してクロロフィ

ル量を求めている。測器の精度や直線性を保証するため,

メーカーではウラニン水溶液を使用して検定を行ってい

る。そして,クロロフィル濃度を求める場合には,湖沼

などで採取した植物プランクトンを使用して検定を行う

ことが推奨されている(アレック電子, 1993)。しかし,

植物プランクトンを採取して検定を行った場合に問題が

あることが分かつた。

ACL1170-Dのクロロフィルセンサーのウラニン水溶

液による検定は,励起用光源のハロゲンランプを交換

した時などに行った。クロロフィノレセンサーの検定式

をTable1に示す。表の右欄は,センサーの出力 Nから

クロロフィノレ量を求める式であり,左欄はおなじ N値

からウラニン濃度を求める式である。その結果,ランプ

を交換しでもウラニンによる検定式は Table1の左欄の

式を見ても大きく変化していない。しかし,同時に行っ

た,植物プランクトンを採取して化学分析によって求め

たクロロフィル濃度と出力の関係を求めた検定式では,

Table 1の右欄に示すように係数が大きく変化すること

が判明した。

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トン中のクロロフィノレ量が過小評価されることになる。

これらのことが原因となり,植物プランクトンを用いた

検定では,検定式の係数が大きく変化したと考えられる。

蛍光式クロロフィノレセンサーは,植物プランクトンを

使用して検定することが推奨されているが,検定毎に検

定係数が大きく変動する。これでは,別の測器のデータ

や,同じ測器でも観測時期が異なればデータの比較が困

難である。また,我々が行っているような,一回の観測

機会に全湖に渡って多数点の測定を行うような場合に,

クロロフィノレセンサー検定用の採水を行うのは現実的で‘

ない。ウラニン水溶液で、検定を行った場合は検定毎に検

定係数が大きく変動することはない。以上のことから,

蛍光式クロロフィノレセンサーの検定はウラニン水溶液で

行い,センサーの出力はクロロフィノレ量に比例したウラ

ニン水溶液の濃度として取り扱い,直接,植物プラント

ンの濃度と結びつけない方がよいと考えられる。

ACLl170-Dのクロロフィノレセンサーの検定結果から,

植物プランクトンによる検定に問題があることが判明し

たので, AAQ1l83のクロロフィノレセンサーは,ウラニ

ン水溶液で検定を行っている。

以上述べたことからこの論文では,センサーの方式が異

なるし,植物プラントンを用いた検定式の係数の変化が大

きいので,両センサーの測定値は,ウラニン濃度として表

示し,クロロフィノレ濃度の指標としてもちいることにした。

びわ湖の水温・濁度・クロロフィル・透明度の最近の変化傾向について

Table 1. Comparison of calibration curves of a chlorophyll sensor

caljbrat巴dby uranin water solution and phytoplankton.

表 lウラニン水溶液と植物プランクトンを用いて検定を

行ったときのクロロフィル計の検定係数の比較.

1996年 5月から 2011年 12月まで、の水温の変化を Fig.

2に示す。底層の水温が地球温暖化の影響を受けて上昇

している ことが遠藤ら (1999)によって報告されている。

時系列データの検討

水温

Uranin Water Solution

0.05599N-6.27

Phytoplankton

0.0470N-5.31

0.0198N-1.37

ウラニン水溶液による検定式の係数に大きな差がない

ことは,クロロフィノレセンサーが計測器として信頼出来

ることを示している。しかし,植物プランクトンによる

検定式の係数は検定ごとに大きく変化した。検定方法に

問題があるか,植物プランクトンの蛍光特性などに問題

があると考えられる。つまり,検定を行う毎にプランク

トンの生理活性や種組成などの状態が異なるためではな

いかと思われる。

植物プランクトンは,湖水中の栄養分の濃度や種類,

水温などの違いによって生息する種類が異なり,種によっ

て励起光強度が同じでも蛍光強度が異なると言われてい

る(ホーン ・ゴーノレドマン, 1999;中山ら, 2∞0)。例え

ば,水温が 200Cに近づく初夏にはウログレナによる淡水

赤潮が発生し,300

Cに近い夏の終わりにはミクロキスティ

スやアナベナによるアオコがよく発生する。そして,植

物プランクトンは細胞単体で生活するものもあるが,多

くの種では細胞が集まり群体をつくっている。群体を形

成する場合の形状は種により様々であり単純ではない(一

瀬 ・若林, 2005)。群体を作る場合には,植物プランクト

ンの細胞は立体構造を持つことになり,励起光が照射さ

れない細胞が生じることになる。あるいは,重なった細

胞によって励起光や蛍光の吸収が起こり,植物プランク

0.0796N-9.79

0.0504N-5.90

0.05219N-5.90

0.05142N-5.90

0.05876N-7.43

Temperature (OC) 30 25 20

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Fig. 2. Annual changes of water temperature with depth in Lake Biwa from 1996-2011.

図2.7ki昆の年変化(1996 年~2011 年)

23

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。0.5 Turbidity (FTU) 2 1.5 1

奥村康昭ほか

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Fig. 4. Revised Fig. 3 graph of annual changes of turbidity, with

limited time axis from 2007-2011 and expanded turbidity

scale.

それによると底層の水温は 1984年までは 5~ 80

Cの聞で

変化していたが, 1984年以降は急速に温暖化が進み 90

C

付近まで上昇している年がある。また,成層期聞が長く

なり, 2月3月においても弱い成層が残ることがある。

Fig.2の底層水温の平均値は 7.60

Cであるが, Fig.2を

見る限りにおいては,特に温度の上昇傾向はないし,成

層の期聞が長くなったようにも見えない。図の描画の関

係上 2.50

C刻みでデータを表示しているので, 2.50

C以下

の変化は分からない。

また,成層期の表面水温は,ほとんどの年で 27.50

C以

上になっているが, 1996年や2003年には 27.50Cを超え

ていない。これらの年の AMeDASのデータを見ると, 8

月の平均気温はやや低く,これが表面水温に影響した可

能性がある。

図 4. 図 3 のグラフの 2007 年~ 2011年分を取り 出し,濁度

の値の刻みを細かくして描いた図

一方, Fig.5を見るとクロロフィノレの値は, 2001年以

前の 4,5月頃には大きな値になり,春のブノレームを示

している。2002年以降では顕著な春のブノレームは見ら

れないが,全層のクロロフィノレ濃度には濁度と同じよう

に規則的な季節年変化がみられる。

Fig.3とFig.5を見比べると, 2004年以前の低層を除

いて,定性的にはクロロフィノレ量と濁度は比例している

ように見える.そこで,クロロフィノレ量と濁度で散布図

(Fig.6)を作成し,両者の関係を調べると,クロロフィ

ノレ量の小さい部分(およそ 2.5ppb以下)では濁度の値

と比例関係にない。しかしクロロフィノレ量が大きくな

ると濁度と比例関係が見て取れる。前者の比例関係が無

濁度とクロロフィル量

濁度の変化の様子を Fig.3に示す。この図を見れば

2005年以降は濁度の値が全体的に小さくなっている。

2004年以前の成層期の底層には毎年湖底高濁度層(鷺ら,

1997)が見られたが,Fig.3では2005年以降は見られない。

そこで, 2007年以降のデータを用いてスケーノレを拡大

して図を描き直したのが Fig.4であり,この図を見ると

値はノj、さいが湖底濁度層が存在していることがわかる。

表層の濁度は,春のブルームが発生する時期には値

が大きくなり,それ以外の時期には小さく,全層が循環

する時期にはほぼ一様になり,規則的に季節変化してい

る。規則的な季節変化を示す場合でも,表層における濁

度は 2004年以前には大きな値が見られる事があったが,

2005年以降にはない。

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Fig. 3. Annual changes of turbidity with depth in Lake Biwa from 1996-2011

図 3. 濁度の年変化 ( 1996 年~ 2011年)

24

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2012/111

Fig. 7. Monthly changes of transparency from 1996-2011. Thick

line represents an annual mean, and dashed line ind.icates a

linear regression.

図7.1996年から 2011年の透明度の月々の変化:太線は年平

均値,点線は回帰式

Fig.7を見ても閉じような傾向を示している。透明度の

変動幅を見ると,最ノl、が 1.6mで,最大が 11.0mであり ,

分散が 2.82m,平均値は 6.21mである。

透明度の月々のデータをフーリエ解析すると 12ヶ月

の周期があるのが分かつた.透明度のデータはバラツキ

が大きいので経年変化の傾向が分かり難いので,年平均

値を求めて Fig.7に重ねて描いた.年平均値を見ると値

が年々大きくなっているのが分かる.一次式を当てはめ

ると(西暦では取り扱いにくいので,年としては lから

25の数を振った)透明度の年々の変化は 0.0483x+ 5.58 (ここで xは年である) (相関係数は 0.60 (p=0.0015))

で表せる.つまり年に約 4.8cmずつ値が大きくなって

いる.

また,滋賀県の環境白書(滋賀県琵琶湖環境部環境政

策課, 2010) の透明度のデータを使って,1979年から

2010年のデータで一次式を当てはめると,やはり漸増

傾向を示し,年に 7.4cmずつ高くなっている。

滋賀県水産試験場が 1921年から北湖の中央部で測定

2007/1/1

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2002/111

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びわ湖の水温・濁度 ・クロロ フィル ・透明度の最近の変化傾向について

Fig. 5. Annual changes of chlorophyll with depth in Lake Biwa from 1996-2011.

図5.クロロフィル量の年変化(1996 年~ 2011年)•

1997/111

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12

2

25

い部分は主として,2004年以前の低層のデータであり,

湖底高濁度層である。この部分では濁度に寄与するのが

植物プランクトンだけではなく,土壌起源物質が寄与す

るので,濁度とクロロフィノレ量は比例しないと考えられ

る。濁度とクロロフィノレ量が比例しない,クロロフィノレ

量が 2.5ppb以下, 濁度が 2FfU以上の部分を除くと,

両者の比例関係がわかりやすい。この場合の相関係数を

求めると 0.49になる。全データで相関係数を求めると

0.33であるから,全データの場合よりは相闘が良くなる。

相関係数が 0.49であまり大きくないのは,濁度に寄与

するのがクロ ロフィノレだ、けで、はなく,土壌由来物質の影

響が大きいためであろう。

透明度

1987年から 2011年の透明度の月毎のデータを Fig.7

に示す。透明度は季節により値が大きく変動し,冬季

には高くなり ,春から夏にかけて低くなる場合が多い。

4

Fig. 6. Scatter diagram showing relationship between

chlorophyll and turbidity.

図6.散布図で表したクロロフィノレ量と濁度の関係.

Chlorophyll (Uranin ppb)

10 9 8 7 6 5

5 10 15 20

Ch1orophyll-a,b (Uranin ppb)

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奥村康昭ほか

している透明度の年間平均値のデータ(滋賀県水産試験

場, 2007) によると, 1927年の約 9 mから 1950年の約

6.5mまで透明度が低くなり,その後 1980年までは約 6.5

mで一定になっている。それ以降 1997年までは 6m以

下になったが, 2008年にかけては7mまで回復している。

濁度やクロロフィノレ量,透明度のデータから,近年,

植物プランクトンの生産および現存量が低めに推移して

いるように見え,びわ湖の水質は改善傾向にあるといえ

る。このことは滋賀県の環境白書(滋賀県琵琶湖環境部

環境政策課, 2010) からも言える。 Fig.8とFig.9は滋

賀県の環境白書のデータを図化したものである。Fig.8

は透明度,クロロフィノレ, SS, COD, BODのデータを,

Fig.9は全リンと全窒素のデータである。 CODを除い

た,いずれのデータも増減を繰り返しながらも減少傾向

(透明度は高く)にあり,びわ湖の環境は改善しつつあ

ると言える。これらは 1979年"-'2010年の北湖に設けら

れた観測点の年聞を通じた平均値であり,北湖の長期的

な傾向を示している。筆者らの観測期間と重なる 1996

年以降のデータを見ても, COD以外は改善傾向にある。

ミ ー・回 T即日parency(m) ー+-COD (mg!L)

z -+幽 BOD(mg!L) ー←.SS(mダL)

CODが減少しない原因は, 最近の研究よると難分解性

有機物の蓄積によるためであると指摘(岡本ら, 2011

や 岡本・早川,2011) されていて,対策が進められよう

としている。

謝辞

クロロフィノレセンサーの検定には元滋賀大学教育学

部教授の川嶋宗継氏の協力得ました,ここに記して感謝

の意を表します。また,観測に協力された大阪電気通信

大学工学部と滋賀大学教育学部の学生諸君にも感謝しま

す。

文献

アレック電子 (1993) 水中クロロフィノレ測定装置

ACL-1170取扱説明書.

遠藤修一 ・山下修平・川上委子 ・奥村康昭 (1999):び

わ湖における近年の水混上昇について.陸水学雑誌,

ー骨・ Chlorophy 11 (llg!L)

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Fig. 8. Annual changes of t1'ansparency, chlorophyll, COD, BOD, and SS from the environmental

white paper fo1' Shiga prefecture from 1979-2010.

図8.滋賀県環境白書(滋賀県琵琶湖環境部環境政策課,2010)のデータに基づく透明度,

クロロフィノレ量,COD, BOD, SSの年変化.

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Fig. 9. Annual changes of total phosphorus (TP) and total nit1'ogen (TN) from the environmental

white pape1' for Shiga prefecture from 1979-2010目

図9.滋賀県環境白書のデータに基づく全燐 (TP) と全窒素 (TN)の年変化

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びわ湖の水温・濁度・クロロフィノレ・透明度の最近の変化傾向について

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