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一 橋論叢 第五 十 七 巻 第 四 号 ( 6 4 )
ウィ
リ
ア
ム
・
フ
ォ
ー
ク
ナ
ー
一人と
作品
-
一
九
六二
年七
月
六
日
に
心
臓麻痺とい
う
突然の
死で
もっ
て、
ウ
ィ
リ
ア
ム
・
フ
ォ
ー
ク
ナ
ー
を
失っ
た
こ
と
に
よ
り、
そ
(
l)
の
ほ
ぼ一
年前に
、
猟銃に
よ
る
自殺と
い
う
劇的な
死に
か
た
を
し
た
ア
ー
ネ
ス
ト・
へ
、
、
、
ン
ダ
ウ
ェ
イ
に
つ
づ
い
て、
我々
は
偉大
な
作
家
を二
人
まで
亡
く
して
し
まっ
た。
俗に
「
巨星
墜
つ+
とい
う
けれ
ど
も、
こ
の
二
人の
死こ
そ
こ
の
表現
に
ふ
さ
わ
しい
と
思
う。
い
ま、
こ
の
二
つ
の
巨
星の
うちの
一
つ、
ウ
ィ
リ
ア
ム
・
フ
ォ
ー
ク
ナ
一
に
つ
い
て、
そ
の
人と
なり
を
見、
業績に
つ
い
て
考察しょ
うと
する
に
当っ
て、
一
つ
困
難が
あ
る
こ
と
を
最初に
断っ
て
お
くぺ
き
だ
ろ
う
と
思
う。
そ
の
困
難
と
は、
彼の
伝記
を
書くこ
と
の
困
難で
ある
。
作品の
解
釈は
そ
れ
を
読む
人
間の
自由に
ま
か
せ
ら
れ
る
が、
伝記と
な
れ
ば
平
野
信
行
そ
うは
い
か
ない
。
そ
こ
に
登
場する
事柄は
厳然と
し
て
存在
する
事実で
あ
り、
本
来そ
こ
に
仮想や
想
像の
介在
する
余地
は
ない
は
ずで
あ
る。
とこ
ろが
、
フ
ォ
ー
ク
ナ
一
に
つ
い
て
伝
記を
書こ
うと
すれ
ば、
曖昧
なこ
と、
不明
なこ
と
が
こ
こ
か
しこ
に
あ
る
の
で、
い
きお
い
推断臆測の
や
む
な
きに
い
た
る
の
で
あ
る。
我
国に
あっ
て
伝記を
書くよ
り
も
直
接資料に
触
れ
る
の
が
は
る
か
に
容易な
は
ずで
ある
彼国の
学
者の
もの
し
た
伝
記に
し
て
か
ら
が
そ
うなの
で、
試み
に、
一
、
二
冊
と
り
あ
げて
頁を
繰っ
て
み
る
と
よ
い。
そ
の
な
か
に、
琵e
日忘
胃PT
e
nt-
ヨ
岩p
pO
琵d-
y-
2-
g
E
訂
とい
っ
た、
い
ずれ
も
直接
断
定を
避け
た
語が
数
多く
用い
ら
れ
て
い
る
こ
とに
気が
つ
くこ
と
だ
ろ
う。
筆者が
こ
れ
か
ら
ふ
り
か
えっ
て
み
よ
うと
し
て
い
4 5 ∂
血「
l
鵬.
-
「
肋リ
( 65 ) ウ ィ リ ア ム ・フ ォ
ー ク ナ ー
血甲
れ
′血叩
.
向
る
フ
ォ
ー
ク
ナ
ー
の
生
涯に
し
て
も、
こ
れ
ら不
確か
な
伝
記
資
料に
基か
ざる
を
得ない
。
右に
あ
げ
た
語
に
も
う一
つ、
巴Y
0
0
a-
ロg
t
O
とい
う
表現
を
加えて
よ
い
と
思
うが
、
こ
の
「
人
と
作品+
は
い
わ
ば、
琶8
邑訂g
t
O
に
も
う一
つ
P0
8邑どg
什
○
が
つ
い
た
もの
に
なる
だ
ろ
う。
人の
一
生を
振り
返っ
て
み
る
と
き、
そ
の
数に
相
違は
あ
る
に
せ
よ、
なん
ら
か
の
形で
重
大
な
影
響を
うけ
た
人
物が
必
ず
何
人か
ある
も
の
で
あ
る。
フ
ォ
ー
ク
ナ
ー
の
場合
も、
そ
の
例
外で
は
な
く、
少く
と
も三
人の
名
前を
あ
げ
る
こ
と
が
出来
る。
た
とえ
、
そ
の
影響の
及ぼ
し
か
た
は
違っ
て
い
て
も。
そ
の
三
人
とは
、
曾祖父
ウ
ィ
リ
ア
ム
・
カ
ス
バ
ー
ト・
フ
ォ
ー
ク
ナ
ー
(
弓≡㌻ヨ
C
已ビ
訂Ht
句
巴付
記ユ
、
友人フ
ィ
ル
・
ス
ト
ー
ン
(
吋
E-
St
O
ne
)
そ
れ
に
先
輩作
家、
シ
ャ
ー
ウ
ッ
ド・
ア
ン
ダ
ソ
ン
(
S
訂→
弓
きd
An
許諾O
n)
で
あ
る。
こ
の
三
人
を
中心に
、
フ
ォ
ー
ク
ナ
ー
の
生
涯を
振
り
返っ
て
み
よ
うと
思
う。
一
フ
ィ
ル
・
ス
ト
ー
ン
ー誕
生か
ら
修業時
代まで
-
ウ
ィ
リ
ア
ム
・
フ
ォ
ー
ク
ナ
ー
(
≠1
≡㌻ヨ
句a
已片口e
ユ
(
こ
の
方
の
ス
ペ
リ
ン
グ
に
は
。
仁
。
が
入っ
て
い
る
こ
と
に
注
目
さ
れ
た
い
)
は一
八
九
七
年九
月二
五
日、
、
、
、
シ
シ
ブ
ピ
ー
州の
小
都市
・
ニ
ュ
ー・
オ
ー
ル
バ
ニ
ー
(
字芸
、
A-
訂ロy)
に
四
人兄
弟の
長子
と
して
う
まれ
た。
父
は、
マ
リ
ー
・
チ
ャ
ー
ル
ズ・
フ
ォ
ー
ク
ナ
ー
(
民声
∃呵
CF
賀-
¢
∽
句a-
好
日e
ユ
母は
、
モ
ー
ド・
バ
ト
ラ
ー
(
呂
呂d
甲トt
-
e
ユ
とい
っ
た。
こ
こ
で
フ
ォ
ー
ク
ナ
ー
の
綴に
つ
い
て一
言し
て
お
こ
う。
こ
の
綴字に
ほ
句
巴村
ne
→
と
句P
已好
日e
→
の
二
種類が
ある
。
ふ
つ
うフ
ォ
ー
ク
ナ
ー
とい
う
と
きに
は
後
者の
綴で
書くの
だ
が、
彼自身は
、
二
種類を
両
方
と
も
用い
て
い
る。
「
人
名
録+
に
は
前者が
載っ
て
い
る
と
い
う。
そ
こ
で一
体
ど
ち
らが
正
式なの
か、
後に
フ
ォ
ー
ク
ナ
一
再
認識の
きっ
か
けを
与え
る
も
と
と
なっ
た、
ポ
ー
タ
ブ
ル
・
フ
ォ
ー
ク
ナ
ー
(
叫声内
容ミ
乳~
缶
きP
已
ぎ笥)
の
編
者で
あ
るマ
ル
カ
ム
・
カ
ウ
リ
ー
(
呂巳0
0-
ヨ
CO
弓-
e
ユ
が
問う
た
こ
とが
あ
る。
そ
れ
に
対
して
、
フ
ォ
ー
ク
ナ
ー
は、
前
者、
つ
ま
り、
:
ミ、
の
な
い
方で
あ
る
と
答え
て
い
る。
し
か
し
な
が
ら、
なぜ
句
巴村
ne→
な
の
か、
あ
る
い
は、
い
つ
:
仁、
、
を
入
れ
た
もの
を
使
うよ
う
に
なっ
た
の
か
は
答えて
い
ない
。
要す
る
に
彼に
とっ
て
は
そ
ん
なこ
と
は
ど
うで
もい
い
こ
とな
の
で
あっ
て、
彼の
い
う
とこ
ろに
よ
れ
ば、
i
m)
読e】
代
言巴-
呵
dO
nt
打ゴ
b
弓t
訂t
コー
e
詔P
岩戸
Ht
j
{
玩t
4 ∂9
一 橋 論叢 第 五 十七 巻 第四 号 ( 6 6 )
詔e
ヨe
み
t
O
me
t
F
巴
Pひ
冒○ロ
a払
H
gOt
p
弓P
y
符○
ヨ
已訂・
巴設
-
苫-
-
I
f
O亡
n
d
t
訂
。
ロ
。
i
n
t
Fe
弓○
邑
弓Fe
旨eり
Ⅰ
弓-
巴Fe
払
i
{
○→
ゴOt
一
H
払t
ご】
t
En
打
-
t
i
∽
○均
nO
-
日匂○
ユ巴岩e
、
(
2)
P
ロd
e-
t
Fe
→
One
ロ
亡i
t
仏
H
ロe.
とい
うこ
と
に
な
る。
彼に
は
ど
うで
も
よ
くて
も、
こ
ちら
に
は
気に
なる
こ
と
なの
だ
が、
教え
て
くれ
ない
以
上は
や
む
を
得ない
。
少々
伝説
め
くが
、
へへ
ミ、
が
ない
こ
と
に
つ
い
て一
つ
紹介し
て
お
くと
、
も
と
も
とは
。
仁
。
が
あっ
た
の
だ
が、
曾
祖
父の
時代の
こ
と、
近
隣の
町に
同
名の
よ
か
らぬ
輩(
琶ヨe
ロ
?g00d
官○
旦e)
が
い
た
の
で、
一
緒に
さ
れ
て
は
ご
め
ん
と
(
3)
:
仁
。
を
とっ
て
し
まっ
た
の
だ
と
い
う。
フ
ォ
ー
ク
ナ
ー
の
生
れ
た
町の
呼び
方
をニ
ュ
ー
ヨ
ー
ク
の
オ
ー
ル
バ
ニ
ー
と
区
別
す
ヽ
ヽ
る
た
め
に
わ
ざ
わ
ざ
オ
ル
ベ
イ
ニ
ー
と
発音する
土
地の
人
間が
(
4)
い
る
そ
うだ
か
ら、
こ
の
詰も
あ
る
い
は
本
当の
こ
とか
も
し
れ
ない
が、
ど
うも
出来すぎ
て
い
る
よ
うな
気が
する
。
名
前の
こ
とで
だ
い
ぶ
道草を
食っ
た
の
で
先
をい
そ
ご
う。
誕生の
翌
年、
父
親の
職業の
関係で
リ
ブ
リ
ー
(
巴p
-
e
ユ
と
い
う町に
移り
、
そ
れ
か
ら
四
年後に
は
オ
ク
ス
フ
ォ
ー
ド
(
○
甲
f
O
a)
・へ
と
移っ
た。
リ
ブ
リ
ー
ほ
フ
ォ
ー
ク
ナ
ー一
家、
と
り
わ
け、
曾祖
父
と
縁の
深い
町で
あ
り、
オ
ク
ス
フ
ォ
ー
ド
は
母
の
生れ
た
町で
あ
り、
郡庁所在地
で
あ
る。
彼は
生
涯の
大部
純
分
を
こ
の
町で
過
すこ
とに
なる
の
で
あ
り、
後に
詳し
く
触れ
る
つ
もり
だ
が、
い
わ
ゆ
る
「
ヨ
ク
ナパ
ト
ー
フ
ァ
物
語+
の
中
に
ジ
ェ
フ
ァ
ソ
ン
(
-
eh
訂詔O
n)
と
して
出て
く
る
の
は、
こ
の
オ
ク
ス
フ
ォ
ー
ド
をモ
デル
に
した
もの
で
あ
る。
幼少
年時代
の
フ
ォ
ー
ク
ナ
ー
は
穏や
か
な
性格で
殊の
は
か
読書を
好ん
だ
ら
し
く、
祖
父が
豊富な
蔵書をか
か
え
て
い
た
た
め
も
あっ
て、
専ら
、
読書に
あ
け
く
れ
して
い
た
ら
しい
。
少
年フ
ォ
ー
ク
ナ
一
に
つ
い
て
は
こ
ん
な
逸話が
あ
る。
学
校で
担任の
先生
に
将来何に
な
り
た
い
か
と
きか
れ
た
と
き、
「
大
祖
父
さ
ん
の
よ
う
な
本を
書く
人に
な
り
た
い
で
す+
と
答え
た
とい
うの
で
あ
る。
大
祖父さ
ん
と
は、
も
ち
ろん
曾祖父
ウ
ィ
リ
ア
ム
・
カ
ス
バ
ー
ト・
フ
ォ
ー
ク
ナ
ー
の
こ
とで
あ
る。
彼ほ
、
政
治家
・
軍人・
実業家
・
文人
そ
の
他の
方
面に
名を
な
し
た
の
で
あ
る
が、
フ
ォ
ー
ク
ナ
ー
が
こ
れ
らの
うちの
文人
を
自らの
う
ちに
と
り
入れ
た
こ
と
は、
少
年の
心に
そ
の
方向
が
最も
入
り
や
す
い
とい
う
事実を
考慮に
入
れ
た
と
して
も、
意味の
ある
こ
と
で、
作家フ
ォ
ー
ク
ナ
ー
は
こ
の
時すで
に
胚胎して
い
た
とい
っ
て
も
過
言で
は
ない
で
あ
ろ
う。
フ
ォ
ー
ク
ナ
ー
が
学
校教
育を
満足に
うけ
ら
れ
た
の
は
グ
ラ
、軸-
鵬
巾
( 6 7 ) ウ ィ リ ア ム ・
フ ォー ク ナ ー
紳
d叩
.
。.
j
叩
マ
ー
・
ス
ク
ー
ル
だ
けで
、
ハ
イ・
ス
ク
ー
ル
や
大
学の
教育も
い
っ
た
ん
受ける
に
は
受け
る
の
だ
が、
すべ
て
中途で
終っ
て
い
る。
こ
うした
時に
あっ
て、
彼を
指導し
、
助
言を
与
えた
の
が
フ
ィ
ル
・
ス
ト
ー
ン
で
あ
る。
彼の
力が
な
くし
て
は、
後
の
作家フ
ォ
ー
ク
ナ
ー
は
生
れ
なか
っ
た
で
あ
ろ
う。
彼の
生
涯
を
考え
る
と
き、
フ
ィ
ル
・
ス
ト
ー
ン
の
存在を
忘れ
る
こ
とは
出来ない
。
彼は
曾祖
父の
名
声に
よっ
て
胚
胎し
た
フ
ォ
ー
ク
ナ
ー
の
作家
性を
大
き
く
守り
育て
る
役割を
果し
た
とい
っ
て
よ
か
ろ
う。
とい
っ
て
も、
フ
ィ
ル
は
文学
専攻で
は
な
く、
専
門は
法
律で
あ
る。
しか
し、
文
学に
深い
関心
を
持ち
、
理
解
力も
相当
あっ
た
よ
うで
あ
る。
フ
ォ
ー
ク
ナ
ー
の
文
学
的
素質
を
認め
る
と、
彼は
、
読むぺ
き
本を
推薦した
り、
自分の
蔵
書を
貸し
与
えた
り
し
た。
実弟の
書い
た
回
想
記に
よ
る
と、
フ
ィ
ル
は
古い
大型の
ス
チュ
ー
ドベ
イ
カ
ー
に
本を
満載し
て
やっ
て
来、
フ
ォ
ー
ク
ナ
ー
は
静か
な
路
傍で
読書に
耽っ
た
と
(
5)
い
うか
ら、
い
わ
ば
個人
相
手の
巡
回
文
庫を
作っ
た
わ
けで
あ
る。
た
だ
本を
読む
よ
うす
す
め
た
り、
貸し
た
り
し
た
だ
けで
は
ない
。
彼の
書くも
の
を
批評し
、
助
言を
与
え
た
とい
うか
ら、
専門が
法
律で
あ
る
こ
とを
考え
れ
ば、
い
か
に
文
学に
関
心
が
あっ
た
と
は
い
え、
た
い
し
た
能力
が
あっ
た
もの
だ
と
鴬
か
ざ
る
を
得ない
。
しか
も、
彼の
素質に
つ
い
て、
彼の
将来
性に
つ
い
て
は
誰に
で
も
わかっ
た
は
ずと
い
うの
だ
か
ら
ま
す
ま
すそ
の
感を
深く
する
。
こ
うし
て、
フ
ィ
ル
の
指導で
読書
を
進
め
て
い
る
う
ち
に、
十
六
歳の
時「
ス
ウ
イ
ン
バ
ー
ン
(
S
弓i
ロ
b
ロ
⊇e
)
を
発見+
する
。
こ
の
こ
と
は、
フ
ォ
ー
ク
ナ
ー
の
作品
に
お
ける
影響関係を
考える
上に
重
要で
あ
る。
文
学
修業を
積み
な
が
ら、
一
時期
祖
父の
経
営す
る
銀
行に
就職す
る
が、
性に
あ
わ
ない
と
み
え
て
ま
もな
く
辞め
た。
し
か
し、
こ
の
時期は
あ
る
い
み
で
彼に
とっ
て
は
楽しい
時期で
あっ
た。
とい
うの
は、
幼い
時か
ら
親し
かっ
た、
、
、
ス
・
エ
ス
テ
ル
・
オ
ー
ル
ダ
ム
(
呂玖
村
訂t
e
亡e
O-
旨P
ヨ)
との
問が
ま
す
ま
す
親密に
なり
、
フ
ォ
ー
ク
ナ
ー
自身
結婚まで
考え
た
か
ら
で
あ
る。
銀行を
辞め
て
し
ば
ら
くぷ
ら
ぶ
ら
して
い
た
が、
一
九一
八
年の
四月
、
ニ
ュ
ー
・
ヘ
イ
グン
(
Ze
宅
HP
諾n)
に
行
っ
て、
た
ま
た
ま
そ
こ
に
い
た
フ
ィ
ル
・
ス
ト
ー
ン
に
頼り
、
兵
器
製造
会社で
働き
出
した
もの
の、
や
が
て
の
こ
とに
、
そ
こ
もや
め′て
し
まっ
た。
そ
し
て
同じ
年の
七
月に
カ
ナ
ダ
の
ト
ロ
ン
ト
に
あ
る
イ
ギ
リ
ス
空
軍の
訓練隊に
入
隊する
。
彼自
身は
飛
行
機に
の
っ
て
戦争に
参加し
た
かっ
た
ら
しい
が、
一
九一
八
年七
月
とい
え
ば、
大戦も
末期で
、
つ
い
に
実戦に
参加し
縦
一 橋論叢 第 五 十 七 巷 第 四 号 ( 6 8 )
ない
うち
に
終
戦に
なっ
て
し
まっ
た。
実弟に
よ
る
と、
彼が
入
隊する
気に
なっ
た
の
は、
結婚相
手と
き
め
て
い
た
エ
ス
テ
(
6)
ル
が
他の
男性上
結婚し
た
た
め
だ
とい
う。
あ
る
い
は
そ
うか
も
し
れ
ない
。
後に
発表
し
た
作品の
中に
飛
行
機に
関する
記
述が
し
ば
し
ば
出て
くる
が、
そ
れ
らは
、
こ
の
時の
経験が
基
に
なっ
て
い
る
と
思わ
れ
る。
そ
うい
え
ば、
彼が
は
じ
め
て
公
に
し
た
短
篇小
説(
。
「a
n
已ロ
g
ど
「戸口
打
J
は、
イ
ギ
リ
ス
空
軍の
訓練基地
を
舞台に
トム
プ
ソ
ン
とい
う
訓
練兵を
中
心に
(
7)
し
た
物
語で
あ
り、
航空
用語
が
ふ
ん
だ
ん
に
出て
く
る。
除隊
後は
郷
里
に
帰っ
て
詩作な
ど
し
て
い
た
が、
翌一
九一
九
年の
九
月、
父
が
ミ
シ
シ
ッ
ピ
ー
大学の
事務官を
し
て
い
た
関
係も
あ
り、
同
大
学の
特
別生
と
なっ
た。
こ
れ
は
し
か
し、
彼の
い
うとこ
ろ
に
よ
る
と、
全
く父の
強制で
あっ
て、
彼自身は
行
く
気持が
な
かっ
た
と
い
う。
そ
の
た
めで
もあ
ろ
う、
大
学で
は
フ
ラ
ン
ス
語や
ス
ペ
イ
ン
語は
よ
く
出来た
が、
英語ほ
出
来
(
8)
が
悪かっ
た
そ
うで
あ
る。
そ
し
て
学
業よ
り
は
ス
ポ
ー
ツ
に
熱
を
入れ
て
い
た。
だ
が、
こ
の
大学
生
括は
決
して
無為に
終っ
た
わ
けで
は
ない
。
こ■の
時期は
、
フ
ォ
ー
ク
ナ
ー
の
文
学修行
時
代で
大切
な
時期で
あ
る。
とい
うの
は、
大
学在学
中に
、
そ
して
卒業後も
彼は
校内
詰や
年報に
寄
稿
し、
挿絵を
書く
等の
仕事を
し
て
お
り、
そ
の
内容は
未熟で
は
あ
る
が、
将来
鰯
性を
示
し
て
い
る
か
らで
あ
り、
初期の
小
説に
つ
い
て
指摘さ
れ
る
世
紀末文
学的特質も
、
こ
の
時期に
ま
で
跡づ
け
る
こ
と
が
出来る
か
らで
あ
る。
た
と
え
ば、
彼の
描い
た
絵は
ビ
ア
ズ
レ
一
風の
もの
で
あ
り、
彼の
書い
た
詩に
は
ス
ウ
イ
ン
バ
ー
ン
(
9)
的な
色彩
が
濃い
。
も
ちろ
ん
フ
ォ
ー
ク
ナ
ー
の
代
表作とい
え
ば
「
響き
と
怒り+
(
3恥
幹g
已
S丸
印
訂
き遥)
や
そ
の
周
辺
の
作
品を
挙げ
る
だ
ろ
うし
、
そ
れ
は
間遠っ
て
い
ない
。
し
か
し、
そ
れ
らの
傑作も
突然に
あ
ら
わ
れ
た
もの
で
は
な
く、
習
作の
時
代を
経て
作られ
た
も
の
で
あ
る。
そ
の
い
み
で
も、
彼
が
大
学に
関係し
て
い
た
時期に
発表し
た
作品に
もっ
と
光
を
あ
て
て
よ
い
と
思
うの
で
あ
る。
ハ
イ・
ス
ク
ー
ル
の
時
と
同
様、
せっ
か
くの
大
学も
中
途で
退
学し
、
し
ば
ら
く
し
て、
ニ
ュ
ー
ヨ
ー
ク
ヘ
出た
。
そ
の
目
的
の
一
つ
は
出版社に
縁を
み
つ
け
て
自作を
出版する
こ
と
だっ
た
そ
うで
あ
る。
こ
の
方の
目
的を
達す
る
こ
と
ほ
出来な
かっ
た
が、
そ
の
か
わ
りに
、
彼が
勤め
て
い
た
書店の
マ
ネ
ジ
ャ
ー
を
して
い
た、
エ
リ
ザベ
ス
・
ブ
ロ
ー
ル
(
巨岩
.
旨et
F
冒巴-
)
と
知り
合い
に
なっ
た。
彼女は
後に
シ
ャ
ー
ウッ
ド・
ア
ン
ダ
ソ
ン
夫
人と
な
る
女
性で
あ
り、
彼女を
通
して
後に
知己を
得る
、】 .
叩
岨同
山ノ
斡
( 6 9 ) ウ ィ リ ア ム ・
フ ォー ク ナ ー
細
也
■
一
iI
ア
ン
ダ
ソ
ン
こ
そ
は、
彼の
作家生
活の
上に
絶大
な
影響を
及
ぼ
すこ
と
に
なる
の
で、
彼女に
会え
た
こ
と
は
全
く
幸運で
あ
っ
た
と
い
うべ
きで
あ
る。
ニ
ュ
ー
ヨ
ー
ク
か
ら
帰っ
た
彼は
、
以
前に
籍を
置い
た、
、
、
シ
シ
ァ
ピ
ー
大
学の
構内
郵便局の
局
長に
就任
し
た。
こ
の
局
長
ほ
お
そ
ら
く
最低の
局
長で
あっ
た。
仕事は
なま
け
放題に
怠
け、
読
書に
は
精一
杯力
をつ
く
し
た。
こ
ん
な
局
長が
長つ
づ
き
する
は
ずが
な
く、
非難の
声は
次
第に
高ま
り、
一
九二
四
年の
秋つ
い
に
辞め
な
け
れ
ば
な
ら
な
く
なっ
た。
も
とよ
り
好
ん
で
就任し
た
わ
け
で
は
な
く、
友人フ
ィ
ル
の
たっ
て
の
勧め
を
う
け入
れ
て
の
こ
と
だっ
たの
だ
か
ら、
お
そ
ら
く
辞め
る
こ
と
は
の
ぞ
む
と
こ
ろ
だっ
た
だ
ろ
う。
し
か
し、
辞め
る
に
し
て
も、
お
と
な
し
く
辞め
る
こ
とは
せ
ず、
彼を
非難した
者
達を
チ
タ
リ
と
刺すこ
と
を
忘れ
な
かっ
た。
そ
の
辞職の
言
葉に
は
次
の
よ
うに
あ
る。
A仏
-
O
n
的
p∽
Ⅰ
-
-
くe
仁
n
計H
t
訂
β甘t
巴-
浩-
c
∽
y仏
訂喜一
I
e
H
勺e
Ot
t
O
Fp
諾
m叫
-
-
訂-
已】
⊆川
口C
e
d
gこFe
de
ヨ巴-
d払
○叫
日O
ne
Ye
a
廿e
O
旦e.
出
已I
+
已ご
訂
計r
mロe
一
式H
、七
3pO
旨t
O
訂
毘t
Fe
訂○
打
P
n
仁
○
巴-
○
叶
ed
d→
Ⅵ
訂e
ne
r
P
n{
害○
戸口
dHe
-
弓FO
F
監什
弓0
0
2
ロt
払
什
○
-
nJ
dS
t
訂P
匂○
∽
訂ge
賢P
ヨp・
→
E払
】
(
1 0)
S】
→}
-
00
ヨ呵
→
e∽-
gロ
巴-
O
P
皮
肉とい
お
うか
、
痛烈と
い
お
うか
、
とに
か
く
よ
は
ど
腹に
す
え
か
ね
た
らしい
。
同
じ
年の
暮
十
二
月、
フ
ィ
ル
・
ス
ト
ー
ン
の
出
資に
よ
っ
て、
処
女
詩集「
大
理
石の
牧神+
(
ヨ払
旨ぎ→
巴恥
+
ざ
§)
が
ボ
(
1 1)
ス
ト
ン
の
出
版社
か
ら
出た
。
こ
の
詩
集は
献辞に
「
母
上に+
とあ
る
が、
フ
ィ
ル
・
ス
ト
ー
ン
が
説明
し
て
い
る
とこ
ろに
よ
る
と、
本詩
集に
収
め
られ
て
い
る
詩の
大
部分の
稿は
除隊後
の一
九一
九
年春か
ら
夏に
か
か
れ
て
い
る
とい
うこ
と、
入
隊
の
動
機にエ
ス
テ
ル
の
結婚が
入っ
て
い
る
と
い
うこ
と、
さ
ら
に、
こ
の
詩集の
全
体の
雰囲
気が
暗く
、
悲
しい
気
持を
歌っ
て
お
り、
そ
の
悲し
み
の
対
象が
過
去に
あ
る
と
い
うこ
と、
こ
れ
らの
事柄を
総
合し
て
み
る
と、
「
母
上に+
とい
う
内実ほ
エ
ス
テ
ル
なの
で
ほ
ない
か
と
い
う
気が
し
ない
で
も
ない
。
そ
の
せ
ん
さ
くだ
て
は
別の
こ
と
と
し
て、
「
大
理
石の
牧神+
の
内容に
つ
い
て
み
る
と、
こ
れ
とは
別に
、
一
九一
九
年八
月
六
日
号
の
『
ニ
ュ
ー・
リ
パ
ブ
リッ
ク』
(
宅雷q
知
名已
~
且
誌に
掲載さ
れ、
後に
や
や
書き
直した
形で
、
、
、
、
シ
シ
ブ
ピ
ー
大
学
の
学生
新
聞『、
、
、
シ
シ
ピ
ア
ン
』
(L
5
邑設
昏叫
S)
に
載っ
た
「
牧神の
午後+
(
占-
Ap→
釘・
呂已
d
ビn
勺p
仁
ne
J
と
の
題名の
比
較か
ら
恕
像さ
れ
る
よ
うに
、
牧歌的
・
田
園詩
的
情調が
豊
畑
一 橋論叢 第 五 十 七 巻 第 四 号 ( 7 0 )
か
に
感じ
と
られ
、
彼が
フ
ラ
ン
ス
象徴諸に
多分の
関心
をよ
せ
て
い
た
こ
とが
理
解で
き
る
の
で
あ
る。
た
だ
こ
の
詩集の
場
合に
つ
い
て
特徴的
なの
は、
象徴詩の
影響が
看取さ
れ
る
も
の
の、
純
粋に
そ
の
もの
で
は
な
く、
そ
の
中に
彼の
世
紀末文
学趣味が
入っ
て
い
る
こ
と
で
あ
る。
そ
れ
ゆえ
、
詩と
して
は
奇妙な
効果を
挙げて
は
い
る
け
れ
ど、
なに
か
し
ら
不
自然さ
を
感じ
さ
せ
る。
こ
の
傾向
は、
大学時代に
書い
た
詩に
特に
著しい
。
し
か
し、
こ
の
不
自然さ
を
欠点
とし
て
非難する
の
は
酷で
あ
ろ
う。
けだ
し、
青年期に
お
い
て
複数の
対
象に
興
味を
覚え
て
そ
れ
らを
自己の
詩
作に
とり
入れ
る
とい
うこ
と
は
よ
くあ
る
こ
とで
あ
る
し、
む
し
ろ
当然の
こ
と
とい
っ
て
よ
い
か
らで
あ
る。
そ
う
した
不
自然な
要素が
次
第に
整理
さ
れ、
醸成さ
れ
て
行
く
過
程が
、
と
り
も
なお
さ
ず、
修業時代
か
ら
次
第に
一
人
立
ち
して
行
く
こ
と
な
の
で
あ
る。
そ
れ
で
は、
フ
ォ
ー
ク
ナ
ー
の
場合の
醸成
過
頼は
い
か
なる
もの
で
あ
っ
た
ろ
うか
。
こ
の
段階の
彼に
も
う一
人
指導者が
あ
ら
わ
れ
た。
とい
っ
て
も、
彼の
方か
ら
求め
た
とい
うぺ
きで
あ
ろ
う
が。
そ
の
人
物が
シ
ャ
ー
ウァ
ド・
ア
ン
ダ
ソ
ン
で
あ
る。
二
シ
ャ
ー
ウ
ッ
ド・
ア
ン
ダ
ソ
ン
一作家と
し
て
の
出発---
シ
ャ
ー
ウ
γ
ド・
ア
ン
ダ
ソ
ン
に
会
うきっ
か
けは
、
フ
ォ
ー
ク
ナ
ー
が、
ニ
ュ
ー・
オ
ー
ル
リ
ー
ン
ズ
を
訪れ
た
こ
と
か
ら
う
まれ
た。
彼が
、
、
、
シ
シ
ァ
ピ
ー
大
学の
郵
便局
長を
辞職し
た
翌
年の一
月、
フ
ォ
ー
ク
ナ
ー
は
ニ
ュ
ー
・
オ
ー
ル
リ
ー
ン
ズ
に
向
っ
た。
そ
の
目
的
はヨ
ー
ロ
ッ
パ
ヘ
行く
た
めの
つ
て
を
求め
て
とい
うこ
と
が
主で
あ
っ
た
とい
わ
れ
る。
そ
の
こ
ろ、
ア
メ
リ
カ
で
は
若い
作家
志
望者が
、
自国の
文
学の
伝統に
満足出来
ず、
続々
ヨ
ー
ロ
ッ
パ
に
渡り
、
主と
し
て、
パ
リ
に
集まっ
て
エ
ク
ス
ベ
サ
ロ
ン
を
作っ
た。
い
わ
ゆ
る、
「
エ
グ
ザ
イ
ル+
と
か
「
国籍
イ
ト
リ
ユ
ト
喪失
者+
とい
わ
れ
る
者達が
こ
れ
で
ある
。
フ
ォ
ー
ク
ナ
ー
の
ヨ
ー
ロ
ッ
パ
行き
もー
つ
に
は
こ
の
時流に
乗っ
た
もの
と
み
て
よ
い
だ
ろ
う。
だ
が
彼が
そ
れ
ら
「
エ
グ
ザ
イ
ル+
の
仲間に
入
ら
なか
っ
た
とこ
ろ
を
み
る
と、
個人
的な
理
由、
つ
まり
自作
の
不
評判に
対
する
失望の
気持が
強かっ
た
の
で
ほ
ない
だ
ろ
うか
。
い
い
か
え
れ
ば、
自国の
文
学の
伝
統に
満足しな
い
と
い
うよ
り
は、
自分を
評価して
くれ
ない
、
自国の
文
学環境
に
不
満を
抱い
た
の
で
ほ
な
か
ろ
うか
。
4 β4
巾.
略
′
.酌
( 7 1 ) ウ ィ リ ア ム ・ フ ォー ク ナ ー
▲叩
d
ヨ
ー
ロ
ッ
パ
へ
行き
た
い
とい
う
希望
も
す
ぐ
に
は
実
現
せ
ず、
い
ろい
ろ
仕事を
し
なが
らそ
の
機会を
待っ
た
の
で
あ
る
が、
そ
の
間に
夫人
を
通
して
シ
ャ
ー
ウ
ァ
ド・
一
ア
ン
ダ
ソ
ン
に
会っ
た
の
で
あ
る。
彼は
フ
ォ
ー
ク
ナ
ー
は
じ
め
若い
世
代の
先
達と
し
て
重
要な
役割を
果した
の
で
あ
る
が、
彼に
つ
い
て、
後に
イ
ン
タ
ヴュ
ー
の
際こ
ん
な
風に
い
っ
て
い
る。
He
弓監t
Fe
f
pt
Fe
→
○巾
m叫
ge
ne
→
巳i
O
n
O巾
A
ヨe
ユ
2n
弓ユt
e
謡
巴-
n
t
訂t
冒巴ti
O
n
Of
Aヨe
ユO
p
β
弓コ.
t-
n
的
弓
已且F
O
喜+
望-
ge
宏○
記
弓ェ】
¢P
∃叫
O
P
He
F
琵
莞くe
→
記Oe-
≦U
d
E払
召1
0
勺e
→
e
く
巴仁
巳6
.
戸
口r
e-
s
e
→
-
∽
E∽
○】
de→
オ
弓Ot
Fe→
(
1 2)
P
ロー
タ几
訂→
打
→弓巳ロ
t
Fe
f
Pt
Fe
→
○巾
t
オe-
ロ
ビ
Ot]
F
彼の
い
っ
て
い
る
こ
と
は、
シ
ャ
ー
ウ
ッ
ド・
ア
ン
ダ
ソ
ン
の
ア
メ
リ
カ
文
学上
に
占め
る
位置を
端的に
あ
ら
わ
す
もの
と
い
っ
て
よ
か
ろ
う。
後に
は
不
仲に
なっ
た
とい
わ
れ
る
が、
や
は
り
偉大な
作家
と
して
認め
て
い
た
こ
と
が
わ
か
る
し、
こ
こ
に
は
引用し
なか
っ
た
が、
ア
ン
ダ
ソ
ン
の
方で
も
「
彼は
才能が
あ
り
す
ぎる
の
が
欠
点だ+
とい
っ
た
位に
、
彼の
才
能を
認めて
い
た。
そ
れ
ば
か
り
か、
彼の
た
めに
積極的に
出版の
労を
と
っ
て
い
る
の
で
あ
る。
こ
う
して
フ
ォ
ー
ク
ナ
ー
の
処女
小
説、
「
兵士の
報酬+
(
幹
琵琶匂
-
h打
S
は
世に
出た
の
で
あ
る。
こ
の
よ
うに
骨折っ
て
くれ
た
ア
ン
ダソ
ン
の
中に
フ
ォ
ー
ク
ナ
ー
が
見
出し
た
もの
ほ
何で
あっ
た
か。
い
くつ
か
あ
げ
る
こ
とが
出来る
で
あ
ろ
うが
、
そ
の
第一
は、
テ
ー
マ
、
技法の
漸新さ
で
あ
ろ
う。
例え
ば、
代
表作
「
オ
ハ
イ
オ
州・
ワ
イン
ズ
バ
ー
グ+
(
ヨ莞鼓
弓q
)
Q已Q
)
を
とっ
て
み
よ
う。
そ
の
冒頭に
「
グ
ロ
テ
ス
ク
の
書+
(】
ざ○
打
Of
t
Fe
曾Ot
e
β
喜)
と
して
彼・の
考え
を
披摩し
て
い
る
の
は
きわ
めて
有名
な
事実で
ある
が、
こ
こ
に
の
べ
て
い
る
「
グ
ロ
テ
ス
ク+
とい
う
考え
方が
漸新さ
の
一
つ
で
あ
る。
そ
の
中に
、
「
人々
が
真実を
知る
と
き
彼等は
グ
ロ
テ
ス
ク
と
なる+
とい
うい
み
の
一
節が
ある
が、
お
そ
ら
く
フ
ォ
ー
ク
ナ
ー
と
して
は
惹か
れ
る
と
こ
ろが
十
分あっ
た
に
ち
が
い
ない
。
次の
章で
述べ
る
「
ヨ
ク
ナパ
ト
ー
フ
ァ
物語+
の
人
物達に
、
ア
ン
ダ
ソ
ン
が
ワ
イ
ン
ズ
バ
ー
グ
の
人
間達に
み
た
グ
ロ
テ
ス
ク
の
要素が
感じ
とれ
る
か
らだ
。
た
だ、
ヨ
ク
ナ
パ
ト
ー
フ
ァ
の
人
間の
グ
ロ
テ
ス
ク
加減に
は、
真実を
知っ
た
も
の
と
知らない
もの
の
差が
ある
とい
う相違は
あ
る
が。
も
う
一
つ
フ
ォ
ー
ク
ナ
一
に
とっ
て
関心
が
あっ
た
と
思
わ
れ
る
の
は、
ワ
イ
ン
ズ
バ
ー
グ
と
い
う架
空の
場所を
設定し
て
舞台を
局
限
し
た
こ
と、
ジ
ョ
ー
ジ・
ウ
ィ
ラ
ー
ド
(
Ge
O
ぷ2
弓≡駕d)
-+
∂
とい
う
視点
人
物を
置い
た
こ
とで
あ
る。
彼の
生
れ
育っ
た、、
、
卯
一 橋論叢 第 五 十七 巻 第四 号 ( 7 2 )
シ
シ
ァ
ピ
ー
州とい
う
閉鎖的な
社
会を
考えて
み
れ
ば、
し
か
も、
彼自
身が
そ
の
閉鎖性の
中に
い
た
の
で
あっ
て
み
れ
ば、
作品の
舞台
を
限
定
する
こ
と
は、
当然考
え
う
る
こ
と
で
あ
る。
こ
の
点か
らみ
て、
彼が
ヨ
ク
ナパ
ト
ー
フ
ァ
郡を
設定
す
る
時に
、
ワ
イ
ン
ズ
バ
ー
グ
を
考え
に
入
れ
た
と
考え
て
も
よ
い
で
あ
ろ
う。
また
、
彼の
作品
に
は、
そ
の
者の
視点か
ら
全
体
を
語る
「
視点
人
物+
(
時に
よ
り
単数で
あっ
た
り、
複数
で
あっ
た
り
する)
が
出て
くる
が、
そ
の
構想に
大き
な
関係が
あ
る
の
が、
「
オハ
イ
オ
州・
ワ
イ
ン
ズ
バ
ー
グ+
で
あ
る
と
思
わ
れ
る。
そ
の
結晶が
、
「
行け
、
モ
ー
ゼ
よ+
(
9Y
b。
ぢさ
ー
』
菅篭古
で
あ
る
と
考え
ら
れ
よ
う。
今、
「
ワ
イ
ン
ズ
バ
ー
グ+
の
み
を
と
り
出して
み
た
の
だ
が、
他に
た
と
え
ば
「
貧
乏
白
人+
(
h
廿
葛
-
言誉)
に
お
ける
機械の
侵略を
「
熊+
(
二っ
Fe
汐弓〕
に
お
け
る
「
文明+
対
「
荒野+
の
問題に
関係づ
けて
考え
る
こ
とも
出来よ
う。
前に
述べ
た
よ
うに
、
い
ろい
ろ
尽して
く
れ
た
ア
ン
ダ
ソ
ン
とフ
ォ
ー
ク
ナ
ー
は
い
つ
の
ま
に
か
不
仲に
なっ
た。
直接の
原
因は
、
第二
作の
「
蚊+
(
b
旨題邑什
宝エ
の
中
で
ア
ン
ダソ
ン
を
モ
デル
に
して
戯画
化し
た
た
め
だ
とい
わ
れ
る。
彼はへ
、
、
、
ン
グ
ウェ
イ
に
も
同じ
仕打ちを
うけ
て
い
る
の
だ
が、
は
じ
め
恩
義を
感じ
て
い
て
も、
次
第に
そ
れ
に
慣れ
て
く
る
と、
煙た
い
郷
存在に
なっ
て
くる
の
で
あ
ろ
うか
。
あ
る
い
ほ、
こ
の
あ
た
り
で
ふ
ん
ぎ
り
を
つ
け
て、
自己の
世
界を
開発し
ょ
う
と
思っ
た
の
だ
ろ
うか
。
い
ずれ
に
せ
よ、
ア
ン
ダ
ソ
ン
は、
へ
、、
、
ン
グ
ウ
ェ
イ、
フ
ォ
ー
ク
ナ
ー
と二
人
なが
ら
に、
あ
え
て
強い
表現を
使え
ば、
裏切
ら
れ
た
の
で
あ
る。
もっ
と
も、
彼を
裏切
っ
た
ヘ
ミ
ン
グ
ウェ
イ
は、
後輩作家にパ
ロ
ディ
化
さ
れ
て
い
る
か
(
1 3)
ら、
フ
ォ
ー
ク
ナ
ー
もや
が
て
同じ
目
に
あ
う
の
か
も
し
れ
な
ヽ
0
-
∨
ア
ン
ダ
ソ
ン
と
の
関係に
字
数を
資し
す
ぎて
し
まっ
た
が、
フ
ォ
ー
ク
ナ
ー
の
ニ
ュ
ー
・
オ
ー
ル
リ
ー
ン
ズ
滞在
中に
、
土
地
の
新聞や
碓
諸に
寄稿し
た
こ
と
は
落せ
な
い。
た
と
え
ば、
『
タ
イ
ム
ズ・
ビ
カ
ユ
ー
ン
』
(
ヨき空丁
謹告写莞)
紙や
『
ダ
ブ
ル
・
ディ
ー
ラ
ー』
(
b
冨監Q
b
昌訂
ユ
諸に
短篇
を
よ
せ
て
い・
る。
そ
れ
らは
、
カ
ー
プエ
ル
・
コ
リ
ン
ズ
教授の
お
か
げで
、
召
さ叫
P
∋
き已
ぎ笥㌧
ゝ
訂弓
Qユ
昌宏
恕乳Q
訂h
ス一
茂加)
と
し
て
容易
に
読むこ
とが
出来
、
そ
の
い
くつ
か
は、
後の
長篇の
芽生
え
と
も
考え
られ
る
の
で
重
要で
あ
る。
也ト
胞
め
( 7 3 ) ウ ィ リ ア ム ・ フ ォー ク ナ ー
】
叩
一珊
1
_叩
三
ウ
ィ
リ
ア
ム
・
カ
ス
バ
ー
ト・
フ
ォ
ー
ク
ナ
ー
ーヨ
ク
ナパ
ト
ー
フ
ァ
郡
-
ア
ン
ダ
ソ
ン
の
お
か
げ
で
出版さ
れ
た
処女
作と
第二
作は
、
い
うな
れ
ば、
テ
ー
マ
も
技法も
未整理の
作品で
あ
る。
処
女
作の
幹己叫
3-
迦〔
哩
(
-
¢
N
か)
は、
大戦で
重
傷を
負っ
た
帰還
兵士
と
そ
の
故郷の
町
の
人
間
との
間で
起る
様々
の
事件を
描
い
た
もの
で、
戦争とい
う
もの
に
対
する
前線と
銃後の
意識
の
問題を
含ん
だ、
当
時と
し
て
は
「
身近な+
テ
ー
マ
を
扱っ
た
もの
で
あ
る。
身近
と
い
え
ば、
第二
作の
b
旨
ぷ邑
什
宝又-
浩○
も
そ
うで
、
彼が
滞在
し
て
い
た、
ニ
ュ
ー
・
オ
ー
ル
リ
ー
ン
ズ
に
住むボヘ
、
、
、
ア
ン
達の
行
状と
思
想を
描き
出し
た
もの
で
あ
る
が、
こ
の
中で
恩義あ
る
ア
ン
ダ
ソ
ン
を
戯画
化
し
た
とい
う
の
で
感情を
害し
た
とい
う
問題の
書で
あ
る。
そ
うい
え
ば、
題名の
「
蚊+
と
は、
彼等ボ
ヘ
、、
、
ア
ン
を
諷刺し
た
もの
の
よ
うで
皮肉に
き
こ
え
る。
こ
の
よ
うに
扱い
や
すい
身近の
材料
を
用い
て
い
れ
ば、
ア
プ
ロ
ー
チ
の
方
法に
よっ
て
は
傑作が
生
れ
る
可
能性が
あ
る
の
だ
が、
二
作と
も
売れ
なか
っ
た
の
は、
作者の
意識の
浅さ
に
よ
る
もの
だ
ろ
う。
そ
の
こ
とは
、
た
と
え
ば、
同じ
帰還
兵士
を
扱っ
た
もの
で
も、
へ
、
、
、
ン
グ
ウェ
イ
の
作品
と
比
較し
て
み
れ
ば
理
解さ
れ
る
だ
ろ
う。
長篇と
短
篇
と
で
は
比
較に
な
ら
ない
か
も
し
れ
ない
が、
へ
、
、
、
ン
ダ
ウエ
イ
の
「
兵士の
故郷+
(
琉○-
已e
㌧の
HO
日e
J
を
と
り
あ
げて
み
る
と、
短い
なが
ら、
フ
ォ
ー
ク
ナ
ー
の
「
兵士
の
報
酬+
よ
り
ほ
阜れ
て
い
る。
そ
れ
は、
な
ん
とい
っ
て
も、
へ
、
、
、
ン
ダ
ウエ
イ
が
実戦に
参加し
た
とい
う経
験を
もつ
強味で
あ
ろ
う
し、
そ
れ
だ
けに
対
象に
鋭く
肉迫す
る
こ
とが
出来た
の
で
あ
ろ
う。
フ
ォ
ー
ク
ナ
ー
の
場合ほ
、
こ
の
テ
ー
マ
に
世
紀末
文
学風ス
タ
イ
ル
とい
う
色
ど
り
を
つ
け
て
い
る
の
で
あ
る。
そ
の
た
め
で
も
ない
だ
ろ
うが
、
テ
ー
マ
全
体
が
唾昧
に
なっ
て
い
る
感が
強
い。
「
兵士
の
報
酬+
と
は
「
兵士と
し
て
従
軍
し
た
こ
と
の
報
酬+
の
意で
あ
ろ
うか
ら、
こ
こ
を
追求すれ
ば、
さ
らに
す
ぐ
れ
た
作品
が
う
まれ
た
に
相
違ない
。
話が
前後した
が、
「
兵士の
報酬+
が
出
版さ
れ
る
前、
フ
ォ
ー
ク
ナ
ー
は
友
人の
画
家、
ウ
ィ
リ
ア
ム
・
ス
プ
ラ
ト
リ
ン
グ
(
W≡-
P
mS
p
旨t-
F巴
とヨ
ー
ロ
ッ
パ
に
出か
け
た。
ほ
ぼ
半年
待っ
た
機会が
よ
うや
く
来た
の
で
あ
る。
ジ
ュ
ノ
ア
か
らス
イ
ス、
パ
リ
と
旅し
、
パ
リ
に
長く
滞在し
た。
しか
し、
一
九二
五
年の
七
月に
出発し
て
年も
越さ
ない
うち
に
帰国
した
。
前
記二
作が
出版さ
れ
た
の
は
帰国
後の
こ
とで
あっ
た。
壷β7
一 橋論叢 第 五 十七 巻 第 四号 ( 7 4 )
「
兵士の
報酬+
と「
蚊+
に
お
い
て
は、
作品の
舞台を
探し
て
迷っ
て
い
た
感が
あ
る
が、
次の
作品
に
お
い
て
よ
うや
くそ
の
舞台を
発見し
た。
そ
の
い
き
さ
つ
を
彼自
身次の
よ
うに
い
っ
て
い
る。
少々
長い
が、
重
要で
あ
る
の
で
引
用して
お
く。
…‥
≦1
芹F
幹己叫
笥〉
叫
b打哩
p
β中
b
旨遜邑
什
宝払
一
句3
t
e
訂→
t
Fe
ロ
P
村e
Of
弓ユ江口
g
d
ゐO
P
岳e
-
t
弓P∽
f
仁
n.
出e
的
Fni
n
g
w-
t
F
幹H
・ま胃訂
H
已払
8くe
諾d
t
F
巳
ヨy
O
弓n
-
賢】
e
せ○
賢p
呵e
∽什
p
2p
O均
n
巳-
≦U
琶〓
弓P払
弓○
ユF
弓ユ江ロ
g
P
♂〇
・已p
β
払
t
FPt
H
弓○
已d
ne
d
d→
-i
くe
-
O
n
g
e
nO
ロ
粥
ビ
t
O
e
H
F
巴-
∽
・〓t
-
巴乙t
F
賢♂叫
和
声
E-
ヨ邑
-
ng
t
Fe
POt
亡
巴-
已O
t
Fe
p
p0
0→
叫匂
F巴H
弓○
已d
FP
諾0
0
日p
-
ete
--
訂ユ叫
什
○
口
汚
宅F
賢・
(
1 4)
e
く0
→
t
巴e
ロt
I
喜好Ft
FPd
d
t
O
芹払
a
訂○-
已e
ざり
自己の
創作の
基に
すべ
き
世
界を
発見
し
た
喜び
が
満ちあ
ふ
れ
て
い
る。
右の
文
中で
ヨ叫
○
弓β-
-
t
t-
e
葛口
訂ge
∽
訂ヨp
Of
nむ
已
孟
邑-
が、
こ
の
後の
作品
群中でヨ
ク
ナパ
ト
ー
フ
ァ
郡
(
ぺ○
村
nP
pP
ぎwp
FP
CO
亡
nt
ユ
とよ
ば
れ
る
とこ
ろで
あ
る。
こ
の
長い
名
前は
、
イ
ン
ディ
ア
ン
の
言
葉だ
そ
う
で、
意
味は
「
水が
平地
を
ゆ
る
く
流れ
行く+
とい
うこ
と
だ
とい
う。
こ
こ
を
舞台に
描くに
あ
た
っ
て
題材に
求め
た
の
は、
主と
し
て
一
家の
歴史で
あっ
た
が、
そ
れ
に
は、
彼の
幼
少
年時の
経
験
が
大をな
影響を
与
え
て
い
る
もの
と
思わ
れ
る。
伝え
られ
る
とこ
ろで
は、
フ
ォ
ー
ク
ナ
一
家の
人々
は、
集まる
とよ
く
昔
鰯
の
話を
した
そ
うで
あ
る。
そ
の
中に
は
当
然一
家の
歴史が
出
て
来
た
し、
そ
れ
に
よ
り
南部歴史が
実感と
し
て
把
え
られ
る
よ
うに
なっ
た
の
だ
と
い
う。
また
黒
人女
の
マ
、
、
、
-・
キ
ャ
ロ
ラ
イ
ン
・
バ
ー
(
呂P
2日呵
C
告○-
訂e
田P
∃)
ほ
奴隷
だっ
た
こ
ろの
話を
して
くれ
た。
そ
の
彼女をモ
デル
に
した
の
が、
傑
作「
響き
と
怒り+
(
3包
容串
邑
§軋
叶
訂
勺弓S(
-
¢
N
β
中の
ディ
ル
シ
ー
(
ロr
-
芳y)
で
あ
る。
自
分の
一
家の
歴
史を
題材に
する
に
し
て
も、
誰か
中
心に
なる
人
物が
い
な
い
と
扱
い
に
く
い。
フ
ォ
ー
ク
ナ
ー
の
場合
は、
幸い
なこ
と
に、
曾祖父ウ
ィ
リ
ア
ム
・
カ
ス
バ
ー
ト
とい
う偉大
な
人
物が
い
た。
ヨ
ク
ナパ
ト
ー
フ
ァ
物を
語る
と
き、
ど
う
して
も
彼の
こ
と
を
語
ら
な
けれ
ば
な
らない
。
こ
の
事の
表題に
彼の
名を
記し
た
の
は
そ
の
い
み
で
あ
る。
さ
て、
偉大
な
曾祖
父
とは
一
体ど
ん
な
人
物か
、
ス
ケッ
チ
を
し
て
み
よ
ゝ
フ0
う
まれ
た
の
は一
八
二
五
年、
場
所は
テ
ネ
シ
ー
州
内ロ○
舛
〔○
牢ロt
叫
や
が
て、
、
、
ズ
ー
リ
州に
行き
、
父の
死
後歩い
て、
、
、
シ
シ
ッ
ピ
ー
州の
リ
ブ
リ
ーへ
行く
、
十
歳か
ら
十
四
歳の
間で
あ
っ
た
とい
う。
一
八
四
五
年の
こ
と、
マ
ア
キ
ャ
ノ
ン
と
い
う
男
也
蛎
( 75 ) ウ イ リ ア ム ・フ ォ
ー ク ナ ー
血叩
ぷ叩
l
角
が、
旅行中の
一
家を
惨殺する
とい
う
事件が
起っ
た。
い
ろ
い
ろい
き
さ
つ
が
あっ
て、
犯
人は
絞首刑に
なる
の
だ
が、
そ
の
前に
身の
上
話や
殺人の
話
をし
た。
彼ほ
そ
れ
をパ
ム
フ
レ
ッ
ト
に
し
て
見物人に
売りつ
け
大
儲け
し
た。
そ
れ
か
らメ
キ
シ
コ
戦争に
参加
守∽
:訂
まe
日
昌t
と
なる
。
同じ
隊の
琵0
0
n
み
ー
ー
2
已e
n
P
已
に
ハ
イ
ン
ド
マ
ン
(
H
旨か
ヨPβ)
と
い
う
男が
い
た。
彼等は
互
に
友人で
あっ
た
が、
あ
る
日、
ハ
イ
ン
ド
マ
ン
が
突然
ピ
ス
ト
ル
で
打と
う
と
する
。
不
発で
、
逆に
刺殺さ
れ
る。
ウ
ィ
リ
ア
ム
は
裁判に
か
け
られ
る
が、
正
当防
衛とい
うこ
と
で
釈放さ
れ
る。
裁判所か
ら
出て
来た
とこ
ろ
別の
人
間に
襲わ
れ
又し
て
も
殺して
し
ま
う、
直ち
に
再
逮捕さ
れ
裁判に
か
け
られ
る
が
再び
釈放さ
れ
る。
リ
ブ
リ
ー
で
は
田口
○
苧宅Ot
En
的
吋軒H
首
とい
う
結社
の
指導者と
し
て
政
治
的手
腕を
発
揮し
た。
南北
戦争が
は
じ
まる
と、
義勇軍(
→Fe
巳
品nO-
㌻
巴・
ロe
ひ
○{
ゴp
官け
CO
仁
ロt
ユ
を
組織し
て
大
佐と
なる
。
ヨ
ク
ナ
パ
ト
ー
フ
ァ
物の
中に
CO-
○
ロe-
-
O
ドロ
SP
ユ○
ユ¢
と
して
出て
く
る
の
は
こ
の
肩書きの
た
めで
あ
ろ
う。
戦争後は
鉄道事業に
関係する
。
彼が
加
わっ
て
作っ
た
鉄道の
こ
とは
、
曾孫の
作
品の
中に
し
ば
し
ば
出て
くる
。
一
八
八
〇
年に
ほ
「
メ
ム
フ
ィ
ス
の
自バ
ラ+
(
ヨ岩
寸
言叶
訂
哲詮
阜b
旨→
竜已古
とい
う小
説を
書き
当
時の
ベ
ス
ト
セ
ラ
ー
に
なっ
た。
ハ
イン
ド
マ
ン
との
争い
の
内
幕が
入っ
て
い
る
よ
う
なこ
の
小
説は
、
一
九
〇
九
年に
絶版に
な
る
まで
、
三
五
版
(
1 5)
を
か
さ
ね、
一
六
万
部を
売っ
た
とい
うか
ら、
評判の
ほ
ど
が
わ
か
る
だ
ろ
う。
そ
の
他
に
小
説や
旅行記を
書い
て
い
る。
そ
し
て、
一
八
八
九
年に
、
前記の
鉄道事業に
一
緒に
関係した
こ
と
の
あ
る、
サ
ー
モ
ン
ド
(
戸
ナ
→F
喜ヨO
n
d)
に
ピ
ス
ト
ル
で
射殺さ
れ
た。
以
上
は、
曾祖
父の
生
涯の
概略だ
が、
い
か
に
多方
面に
活
躍し
、
波乱の
一
生
で
あっ
た
か
が
よ
くわ
か
る
と
思
う。
こ
の
よ
う
な
人
物を
一
家の
中
に
持て
ば、
何等か
の
形で
彼を
と
り
あ
げ
た
く
な
る
の
は
自然で
あ
ろ
う。
第三
作の
「
サ
ー
ト
リ
ス+
をは
じめ
て
と
して
、
曾祖
父
の
す
が
た
は、
か
げ
に
な
り、
ひ
なた
に
なり
し
て
作品
中に
あ
らわ
れ
て
く
る。
第三
作
以
後の
作品
群の
ほ
と
ん
ど
すべ
て
は、
CO-
O
ne
こO
Fn
S
邑○
ユロ
を
中
心に
展開して
い
る
とい
っ
て
よ
く、
臭っ
た
話で
あっ
て
も
糸をた
どれ
ば、
彼に
結び
つ
ける
こ
と
が
で
き
る
とい
う
印
象を
う
ける
。
フ
ォ
ー
ク
ナ
ー
が
最も
強い
印象を
うけ
た
曾祖
父
を
中
心に
9
据え
て
自分の
家の
歴史を
、
や
が
て
ほ
南部の
歴史を
措くこ
舶
一 橋論叢 第 五 十七 巻 第 四 号 ( 7 6 )
と
に
なっ
た
の
は、
表現
を
か
え
て
い
え
ば、
「
家+
とい
う
も
の
を
はっ
きり
と
意識す
る
よ
う
に
なっ
た
とい
うこ
とで
あっ
て、
ヨ
ク
ナパ
ト
ー
フ
ァ
物を
読む
際に
考え
に
入
れ
て
お
か
ね
ば
な
ら
ない
事柄で
あ
る。
「
家+
の
意識が
強い
の
は
南部の
特色で
あ
る
が、
こ
れ
は
そ
の
保守性に
関係が
あ
る。
ア
メ
リ
カ
南部を
例に
と
る
まで
も
な
く、
我
国の
農村の
構造を
考え
て
み
れ
ば、
保守性と
家の
意識の
関係は
首肯さ
れ
る
と
こ
ろ
で
あ
る。
保守性の
強い
と
こ
ろで
は、
自ら
自己
閉鎖的に
な
る。
こ
れ
に
よっ
て
保守性を
正
当
化し
ょ
う
と
す
る
の
で
あ
る。
こ
うし
た
場合
、
家の
意識は
同
族結合
意識へ
と
進み
、
や
が
て、
自己の
家
系を
他か
ら
区
別し
ょ
う
と
する
方
向へ
と
進むの
で
あ
る。
こ
う
した
とこ
ろか
ら
家
と
家
との
対
抗意識
が
生
れ
て
く
る。
自
己
閉
鎖性は
ま
すま
す
強く
な
らざ
る
を
得
な
くな
る
の
で
あ
る。
南部の
うち
特に
、
、
、
シ
シ
ッ
ピ
ー
州の
閉
鎖性に
つ
い
て
は
ジ
ェ
イム
ズ
・
シ
ル
プア
ー
(
J
P
meの
芦
S
芋
孟ユ
教授が
「
ミ
シ
シ
フ
ピ
ー、
閉ざ
さ
れ
た
社
会+
の
中で
(
1 6)
明ら
か
に
し
て
い
る。
こ
の
本は
、
一
九六
二
年の
九
月
末に
起
っ
た、
「
メ
レ
ディ
ス
事件+
に
材
を
とっ
て、
、、
、
シ
シ
ブ
ピ
ー
社会の
白
人
優越主
義に
メ
ス
を
入
れ
た
も
の
だ
が、
こ
の
中に
は
フ
ォ
ー
ク
ナ
ー
ヘ
の
言
及も
あ
り、
黒人
間題に
つ
い
て
の
彼
の
意見な
ど
が
み
られ
る。
シ
ル
プア
ー
教授は
、
、
、
、
シ
シ
ッ
ビ
和一
告
-
の
閉鎖性は
絶対
的な
もの
で
は
な
く、
住民が
、
ア
メ
リ
カ
(
1 7)
人と
し
て
の
意識に
めざ
め
る
時、
な
く
なる
だ
ろ
うとい
う。
た
し
か
に
そ
うだ
ろ
う、
が、
そ
の
時が
い
つ
くる
か
が
問題で
あ
ろ
う。
彼が
作品の
舞台を
見出し
たい
き
さ
つ
に
つ
い
て
は
す
で
に
の
べ
た
が、
そ
の
舞台を
扱うに
あ
たっ
て、
彼は
一
つ
重
要な
こ
と
を
い
っ
て
い
る。
そ
れ
は、
→Fe
蒜
訂
n
O
∽
ロO
F
t
Eロ
粥
琵
琶
e
-○
已呵
九
戸
H巾
昌
宏
e
已の[
e
♀t
Fe
岩
宅○
已み
すO
nO
g
ユeれ
○叫
払
○
∃○
弓一
で
あ
る。
過
去を
認め
ず、
現
在の
み
を
問題に
する
。
そ
う
す
る
と、
彼が
自分の
豪の
歴
史を
扱うの
も、
南部の
歴史に
触
れ
る
の
も、
すべ
て
現
在の
た
め
とい
うこ
と
に
なる
わ
け
だ。
そ
れ
を
拡大
すれ
ば、
南部の
現
実と
い
うこ
と
に
も
な
ろ
う。
彼が
右の
よ
うに
い
っ
た
の
は、
作品
執筆当
時の
こ
とで
は
な
い
か
ら、
こ
れ
を
額面
通
り
に
う
けと
る
の
は
危険で
あ
る
か
も
し
れ
ない
。
そ
の
危険
性を
認め
た
上
で
こ
の
言
葉を
信じる
な
ら
ば、
彼は
「
サ
ー
ト
リ
ス+
以
後ヨ
ク
ナパ
ト
ー
フ
ァ
郡を
舞
台に
次か
ら
次へ
と、
現
在を
み
つ
め
た
作品
を
うみ
出し
て
行
くの
で
ある
。
蛎
( 7 7 ) ウ ィ リ ア ム ・
フ ォー ク ナ ー
ル
ー
叩
内
「
サ
ー
ト
リ
ス+
で
は、
故郷の
土が
描くに
値
する
もの
と
知っ
た
と
は
い
うもの
の、
サ
ー
ト
リ
ス
家を
設定
し
て
そ
の
人
物を
通
し、
歴史を
概観し
た
に
と
どま
っ
た。
そ
の
中に
は
ま
だ
処女
作の
内
容の
残韓が
感じ
られ
る
の
で
あ
る。
次に
出版
さ
れ
た
の
が、
現
在彼の
最高傑作
と
い
わ
れ
る
「
響き
と
怒
り+
で
あ
る。
同じ一
九二
九
年の
出版とい
い
な
が
ら、
出来
栄え
は
段違い
で、
こ
れ
が
同
じ
作者の
も
の
か
と
思い
た
くな
る
ほ
どで
あ
る。
題名
を
シ
ェ
イ
ク
ス
ピ
ア
の
「
マ
ク
ベ
ス
+
に
借り
た
こ
の
作品
は、
そ
の
内
容の
複雑性
、
文
体の
特異
性ゆ
え
に
や
か
ま
しい
議論
を
よ
ん
だ
の
で
あ
る
が、
こ
の
大
変な
作
(
1 9)
晶
も、
フ
ォ
ー
ク
ナ
一
に
い
わ
せ
る
と、
成
立の
過
程は
単純で
あ
る。
梨の
木の
上に
の
ぼ
っ
て、
窓を
通
して
中で
行な
わ
れ
て
い
る
祖母の
葬式の
もよ
うを
木の
下に
い
る
兄
弟た
ち
に
知
らせ
て
い
る
女の
子の
、
泥の
つ
い
たパ
ン
ツ
の
お
尻の
部
分か
らほ
じ
まっ
て、
次か
ら次へ
と
話
を
す
す
め
て
行っ
た
結果が
あ
あ
なっ
た
の
だ
と
い
う。
こ
ん
な
単純なこ
と
か
ら、
複雑で
し
か
も
事
件の
時間
的推移が
計
算さ
れ
て
い
る
物
語が
出来る
もの
か
ど
うか
、
疑わ
しい
が、
他の
と
こ
ろで
も
同じ
ょ
う
な
こ
と
を
い
っ
て
い
る
か
ら、
一
応信じ
て
よ
い
だ
ろ
う。
こ
の
傑作とい
わ
れ
る
「
響き
と
怒り+
に
つ
い
て
い
う
と
す
れ
ば、
「
秩序の
破
壊+
で
あ
ろ
う。
時間の
秩序
、
行
動の
秩
序、
道徳の
秩序等の
様々
の
要素が
すべ
て
破
壊さ
れ
て
い
る。
作品
全
体
は
四
部に
わ
か
れ
て
お
り、
は
じめ
の
三
部を
夫
夫一
人の
内
的
独
自で
語り
、
最後の
部分を
作者(
と
考え
て
よ
い
と
思
う
が)
が
語る
とい
う構成で
あ
る
が、
最後の
部分
は
別
と
して
前三
部の
語り
手が
み
な
程度の
差こ
そ
あ
れ、
ノ
ー
マ
ル
で
ない
。
就中
、
第一
部の
語り
手、
ベ
ン
ジ
イ
(
出ゐ
エy)
は
白痴で
あ
る。
一
体
白
痴が
語
る
な
ど
と
い
うこ
と
が、
ど
れ
ほ
どの
価値が
あ
る
の
か
とい
う
疑問が
出て
こ
よ
うが
、
そ
の
よ
うな
疑問を
う
ち
消すよ
うに
、
ベ
ン
ジ
イ
の
うめ
き
声が
きこ
えて
くる
の
で
あ
る。
しか
も、
彼の
意識(
白
痴の
意識
とい
う
もの
が
考
え
られ
れ
ばの
話
で
あ
る
が)
ほ
事
件を
一
様に
は
伝え
ない
。
現
在の
事柄を
伝え
て
い
る
か
と
思
え
ば、
突然過
去に
と
び、
再び
現
在に
戻っ
て
くる
とい
っ
た
具合で
行動の
秩序
の
破
壊が
み
ら
れ
る。
時間に
つ
い
て
は、
行動の
説明が
一
様
に
なさ
れ
ない
とい
うこ
と
自体
す
で
に
時間の
破
壊で
あ
る
が、
な
お
著しい
の
は、
各部分に
与
え
ら
れ
た
年代と
日
付の
順序で
あ
る。
順に
な
らべ
る
と、
一
九二
八
年四
月七
日、
一
九一
〇
年六
月二
日、
一
九二
八
年四
月
六日
、
一
九二
八
年四
月八
日
と
な
る
が、
全
く
奇妙な
配列で
あ
る。
こ
うい
う
配列
捌
一 橋論叢 第五 十 七巻 第四 号 ( 7 8 )
を
み
る
と、
お
互
に
夫々
独
立
して
い
る
の
で
は
ない
か
と
思わ
れ
る。
た
しか
に、
各部と
して
ほ
夫々
独立
し
てモ
ノ
ロ
ー
グ
が
行な
わ
れ
て
い
る。
だ
が、
フ
ォ
ー
ク
ナ
ー
自身もこ
の
作品
の
創作
過
程で
い
っ
て
い
る
よ
うに
、
完成は
し
て
い
ない
の
で
あ
る。
そ
の
未完成の
部分
は
他に
よっ
て
補足さ
れ
ね
ば
な
ら
ない
。
た
と
え
ば、
第一
部でベ
ン
ジ
イ
ほ
姉の
キ
ャ
ディ(
C
邑・
d
ユ
に
つ
い
て
想い
出すが
、
そ
れ
は
あ
くま
で
感
覚的
な
と
ら
え
か
た
で
あ
り、
知的に
は
と
ら
え
られ
ず、
そ
の
た
めに
は
イ
ン
テ
リ
ジ
ェ
ン
ス
の
あ
る
人
物が
必
要なの
で
あ
る。
そ
こ
で、
第二
部に
お
ける
ク
ェ
ン
テ
ィ
ン
(
の亡e
已-
ロ)
の
役割が
重
要に
なっ
て
くる
。
た
だ
し、
彼は
一
九二
八
年四
月七
日
と
い
う
時
点で
ほ
し
ない
。
そ
れ
よ
り
も
十
八
年も
前に
さ
か
の
ぼっ
て
い
る。
こ
こ
で
時間の
ずれ
が
生
じ
る
の
だ
が、
ベ
ン
ジ
ィ
の
記憶
に
出て
くる
キ
ャ
ディ
は、
ま
さ
に、
ク
ェ
ン
テ
ィ
ン
がモ
ノ
ロ
ー
グ
し
て
い
る
次
元の
キ
ャ
ディ
な
の
で、
そ
こ
で
脈絡が
つ
け
られ
る
の
で
あ
る。
そ
うし
て、
第三
部
の
ジュ
イ
ソ
ン
(
甘・
若ロ)
が
語る
とこ
ろ
まで
来る
と、
事件全
体に
よ
り
具体
的
な
パ
ー
ス
ぺ
ク
テ
ィ
グが
与え
られ
る
の
で
あ
る。
こ
うし
て
混
沌
の
秩序の
破
壊の
様相
も、
第四
部に
な
る
と
秩序
再建の
志
向
が
み
られ
る
の
だ
が、
果して
秩序が
得ら
れ
た
の
か
ど
うか
。
作品の
最後は
ゃ○
∽t
a
n
P
t
岩e
)
弓ど中ロ
宅
牢ロト
計ロ
1
宅P七)
P
n
d
巴的
ロ
bO
P
a、
(
20)
①
空〕
F-
n
ぎ∽
○]
己e
詔P
旦琶e.
と
なっ
て
い
る
が、
。
昆e
→
が
あ
る
の
か
ど
うか
疑問で
あ
る。
そ
の
す
ぐ
前に
、
ベ
ン
ジ
ィ
が
わ
め
きに
わ
め
くとこ
ろが
あ
る
だ・
け
に。
「
サ
ー
ト
リ
ス+
が
出版さ
れ
た
こ
ろ、
フ
ォ
ー
ク
ナ
ー
は、
こ
の
あ
た
りで
び
とつ
金も
うけ
を
して
や
ろ
うと
思っ
て、
想
像の
及
ぶ
か
ぎ
り
最もお
そ
ろ
しい
話をか
き
は
じ
め
た。
そ
れ
が
後に
書き
改
め
ら
れ
て
「
サ
ン
ク
チュ
ア
リ+
(
幹ヾ
邑∈→
已
と
し
て
出版さ
れ
る
もの
で
あ
る。
こ
の
前後は
、
彼の
創作力
が
充実し
切っ
て
い
た
と
き
で、
一
九三
〇
年に
「
死の
床に
横
た
わ
り
て+
(
ゝゎ
ー
卜
墨
b思
羞)
一
九三
一
年に
「
サ
ン
ク
チュ
ア
リ+
、
一
九三
二
年に
「
八
月の
光+
(
ト
音だ
ぎ
』
毒害
叶
)
と、
現
在彼の
傑作とい
われ
る
作品が
つ
づ
けざ
まに
出た
。
先
に
「
響き
と
怒り+
に
つ
い
て
述べ
た
以
上、
こ
れ
らに
つ
い
て
も
み
な
けれ
ば
な
ら
ない
と
思
うが
、
与え
ら
れ
た
紙数も
そ
ろ
そ
ろ
尽き
る
の
で、
ご
く
簡単に
触れ
て
お
く
に
と
ど
め
よ
う。
「
死の
床に
横た
わ
り
て+
に
登場する
の
は、
バ
ン
ド
レ
ン
家
(
野ト
n
dりe
ロ)
と
そ
の
周
辺の
人々
で、
母
親ア
ディ
(
A
監互の
≠7 β
略
( 7 9 ) ウ イ リ ア ム ・ フ ォー ク ナ ー
死
体を
埋
葬すべ
く
運ん
で
行
くとい
う内
容を
持っ
て
い
る。
述べ
方は
、
「
響き
と
怒り+
に
似
て
い
る
が、
ナレ
ー
タ
ー
の
数を
ふ
や
し、
交替で
ナレ
ー
シ
ョ
ン
を
行な
わせ
る
とい
う方
法を
とっ
て
よ
り
複薙に
なっ
て
い
る。
「
サ
ン
ク
チュ
ア
リ+
ほ、
不
能の
男の
と
う
も
ろこ
し
の
穂軸に
よ
る
凌辱
、
「
八
月
の
光+
は
白人か
黒人か
わ
か
ら
ない
男の
悲
劇を
夫々
主
と
し
て
扱っ
て
い
る。
い
ずれ
も、
重
要な
問題が
含まれ
て
い
る
の
だ
が、
「
サ
ン
ク
チュ
ア
リ+
の
場合は
、
創作動機に
つ
い
て
の
作者の
言
葉が
わ
ざ
わ
い
し
て
で
あ
ろ
う、
不
当に
低く
み
ら
れ
す
ぎ
て
き
た
き
らい
が
あ
る。
フ
ォ
ー
ク
ナ
ー
の
努力に
も
か
か
わ
ら
ず、
「
サ
ン
ク
チュ
ア
リ+
を
除い
て
は
評判に
な
ら
ず、
一
九四
六
年に
なっ
て、
マ
ル
カム
・
カ
ウ
リ
ー
の
手に
なる
「
ポ
ー
タ
ブ
ル
・
フ
ォ
ー
ク
ナ
ー+
が
出版さ
れ
る
ま
で
は、
全
く
忘れ
ら
れ
て
い
た。
こ
の
選
集が
出た
た
め
に、
フ
ォ
ー
ク
ナ
ー
は
再
認識さ
れ
ほ
じめ
、
一
九五
〇
年に
は
ノ
ー
ベ
ル
文
学賞を
受賞し
た。
こ
うなる
きっ
か
けをつ
くっ
たカ
ウ
リ
ー
は
眼が
高かっ
た
とい
うぺ
き
だ
ろ
ぅ。
「
八
月の
光+
以
後、
受賞まで
の
主
要な
作品
を
あ
げ
れ
ば、
「
パ
イ
ロ
ン
+
(
h
ぜ訂さ
)
-
諾ぃ
)
、
「
ア
ブ
サ
ロ
ム、
ア
ブ
サ
ロ
ム
!+
(
ゝ
ぎ訂ヨ
)
ゝ
訂已Q
ヨL
ご巴か
)、
「
野生の
様相+
(
3Q
ヨ己
山
叩
辞ぎゎ
こ£β
、
「
村+
(
3Q
出打
邑阜
-
窒○
)、
「
行け
、
モ
ー
ゼ
よ、
そ
の
他+
(
9)
bQ
等音
容記叫
白
邑
Q叶
訂1
無葛訂♪
-
窒N)
、
「
墓地
侵入
者+
(
一
己→
邑笥
訂叶
訂
b
邑-
-
苫∞
)
等が
あ
る。
こ
れ
らか
ら
問題に
なる
もの
を
指摘す
れ
ば、
「
ア
ブ
サ
ロ
ム
、
ア
ブ
サ
ロ
ム
・・
+
で
は、
今まで
と
ち
がっ
て、
南部そ
の
もの
と
対
決する
姿勢を
示
し
て
い
る
こ
と、
「
村+
で
は、
南部敗
北
後の
新興
勢力
と
し
て
の
ス
ノ
ー
ブ
ス
(
S
ロ○
勺e仏
)
家を
正
面
に
押し
出し
て
従
来か
らの
勢力
に
とっ
て
か
わ
らせ
て
い
る
こ
と、
「
行け
、
モ
ー
ゼ
よ+
で
は、
荒地
対人
間、
あ
る
い
は、
自然対
文明
とい
う
問題を
入
れ
て
い
る
こ
とが
あ
げ
ら
れ
る
で
あ
ろ
う。
フ
ォ
ー
ク
ナ
ー
は
人
前に
出る
こ
とが
嫌い
で
あっ
た
が、
ノ
ーベ
ル
賞受
賞を
機に
、
積極的に
人
と
接する
よ
うに
な
り、
一
九五
五
年に
は
我
国を
訪れ
て、
長
野で
の
セ、
、
、
ナ
一
に
参加
(
2 1)
し
て
い
る。
また
、
一
九五
七
年か
らほ
ヴァ
ー
ジ
ニ
ア
大
草で
学生
達と
語
り
合っ
た。
姓
誌記
者の
イ
ン
タ
ヴュ
ー
に
も
応じ
た。
作品の
方で
は、
彼が
発表した
短
篇の
大
部分
をお
さ
め
た
9患Q
訂乳
転写
札
琵
阜司\表訂3
山
ざ已
ぎ笥(
-
況-
)
が
Z
邑O
n
巴
申8打
A弓
焉P
を
得た
。
そ
の
他、
一
九五
七
年に
「
町+
(
3缶
ク
J
ざ
§)
、
一
九
五
九
年に
「
館+
(
3Q
短打
莞訂
且
が
出て
「
ス
好
一 橋 論叢 第 五 十 七 巻 第 四 号 ( 8 0 )
ノ
ー
ブ
ス
三
部作+
が
完成し
た。
全
体
を
暖い
ユ
ー
モ
ア
で
包
ん
だ
も
の
で、
フ
ォ
ー
ク
ナ
ー
の
別
の一
面、
す
な
わ
ち∽t
O→
て
t
e
亡e→
と
して
の
才
能を
発
接し
た
もの
と
して
注目さ
れ
る。
一
九六
二
年に
出
た
「
自動車
泥棒+
(
叫声他
出几
き笥ユ
は
彼の
最
後の
作品で
、
副
題に
p
河e
邑n
訂5e
喜e
と
あ
る
の
は、
そ
れ
か
らま
も
な
く
世
を
去っ
た
だ
けに
象徴的で
あ
る。
「
人と
作品+
と
し
て
は
まこ
と
に
バ
ラ
ン
ス
の
と
れ
ない
も
の
だ
が、
ウ
ィ
リ
ア
ム
・
フ
ォ
ー
ク
ナ
ー
の
生
産を
概観し
た。
本稿を
作成
する
に
当っ
て
筆者は
数
冊
の
文
献
を
参照
し
た
が、
そ
の
中で
最近
出
版に
なっ
た、
研
究社の
二
十
世
紀
英米
文
学案内
叢書中の
「
ウ
ィ
リ
ア
ム
・
フ
ォ
ー
ク
ナ
ー+
に
特に
お
世
話に
なっ
た
こ
と
を
記し
て
お
く。
なお
こ
の
書は
、
フ
ォ
ー
ク
ナ
一
案内
書と
して
大
変よ
く
出来て
い
る
こ
と
を
附記し
て
お
き
た
い。
(
1)
ヘ
ミ
ン
グ
ウェ
イの
死に
関
し
て
は、
お
お
か
た
の
「
自
殺
説+
に
対し
て、
夫
人
は
「
事
故
死+
を
主
張
し
っ
づ
け
て
い
た
が、
最
近に
なっ
て、
自
殺
で
あっ
たこ
とを
は
じ
めて
明ら
か
に
した
。
(
『
文
芸』
昭
和四
十二
年一
月
号
参
照)
。
(
2)
呂a-
0
0-
ヨ
CO
弓-
e
叫
e
d"
→
訂
叫打
已如
き笥・
〔す
弓訂哩
勺叫
訂.
ト九
条胃h
P
さ乱
b
賢∋Q
→
訂h
】
b
応札
こ篭如
(
Z.
ぺ.
→Fe
くー
En
g
勺
蒜S∽
}
-
宗か)
勺
り
監-笥.
(
3)
ロ0
3t
げ呵
→⊆U
村‥
9・
きe
邑-
わ
辞声
染毛計
長
句打
已-
ぎ胃
指一
生
(
→FO
ヨP∽
ペ.
C
⊇弓e
ご
CO
ヨp
甲ロ
y}
-
岩上
ワ
N
い
N・
(
4)
一
九
六一
年か
ら
六二
年に
か
けて
の、
東
京
大
学で
の
セ
、、
、
ナ
ー
で
カ
ー
プ
エ
ル
・
コ
リ
ン
ズ
教
授
談。
(
5)
-
O
F
n
句P
已灯
ne
コ
∋哩
ぎQ
罫宅
地
罠㌧
ゝさ
P
きQ
㌻q
声
已n
→屯→
已さ
訂Q
屯
営払
(
=芦
ぺ.→コ.(訂nt
勺
昌宏〉
-
漂い
)
p●
-
い
〇・
(
6)
ヽ
訂乱
p.
-
い
阜.
(
7)
きP
已計
さ熊
てへ
〔
訂旨買
わ
史哩
七完缶
琵
b
呵
C
罵d
d-
CO
亡
訂∽
人研
究社)
中
に
集
録さ
れ
て
い
る。
(
8)
呂-
つ
F
ae-
営口ー
ー
gPt
e‥
→
訂ゝQ
訂等
§3
;ヽ寸
ヨ記白
き
きP
已一
計
莞→
(
C早口
賢P
♂-
2〉
-
まか
)
p.
γ
(
9)
註
(
7)
に
あ
げた
書物に
詩とペ
ン
画が
い
くつ
か
集め
ら
れ
て
い
る。
(
1 0)
}H
P
∃叫
声∈ロ
叫
Pロ‥
ゝ
きロ
已計
莞1
9Q
琵
琶苧
(
芦
ぺ・→Fe
C-
訂de-
勺
完∽
ユ
中の
引
用
に
よ
る。
(
1 1)
こ
の
詩集
は
長い
こ
と
絶
版で
あ
っ
た
が、
最近
、
ゝ
Qす
悪さ
如岩音
と
合
本で
再
版さ
れ
た
(
一
九
六五
年
声甲n
争U
ヨ
HO
{
玩e
社
刊)
。
(
1 2)
呂巴
8-
ヨ
CO
弓-
e
叫
e
P
こ苛
富1
払
已
き1
計
(
→Fe
くー
En粥
勺→
e
琵-
-
¢
盟Y
)
ワ
ー
訟.
(
1 3)
ZO→
ma
n
呂
邑e
→
‥
3屯
旨訂丸
申
さ丸
註缶
b昌弘
中
に
明
らか
に
へ
、
、
、
ン
グ
ウェ
イ
を
下
敷き
し
た
箇
所が
あ
る。
(
1 4)
註
(
1 2)
の
書
物
中一
四一
頁参
照。
(
15)
S
打n
et
版の
哲【
註胃訂
に
つ
い
て
い
る
ロ
バ
ー
ト・
キ
ャ
ン
ト
ウェ
ル
の
序文
参照
。
曾祖
父に
つ
い
て
の
ス
ケッ
チ
は、
同
序
的・
I
▲叩
( ぬ) ウ ィ リ ア ム ・ フ ォー ク ナ ー
4 7 5
山
川
、
一叩
文
を
参
考に
した
も
の
で
あ
る。
(
1 6)
甘ヨe∽
芦
S-
-
く0
→
L
5設計叫
昏叫
‥
叶
訂
9Q
完乱
酔Q軋
監哩
(
H巴
1
8声ユ
、
ロ→
宍り
e
紆
≦1
0
ユd
-
-
ま土
.
(
1 7)
同
右書
一
四一
頁、
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