ブロッコリーの需給動向 - alic月の野菜 野菜 26 2016.9...

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今月の野菜 野菜情報 2016.9 26 ブロッコリーは、地中海沿岸原産の野生種 ケールを起源とするアブラナ科の野菜で、つ ぼみの固まり(花 らい )と茎を食用とする。日 本へは明治の初めに渡来したが普及せず、戦 後の1970年代に、洋風化に伴って食卓に上 るようになった。国民の栄養意識が高まった 1980年代に入って、米国カリフォルニアか らの輸入物などによって一年中出回るように なると、その栄養価が評価されて消費量が一 気に伸びた。その後、国内産地も増え、予冷 施設や冷蔵輸送が整うことで、国産ブロッコ リーの周年供給体制が確立した。 ブロッコリーの生育温度は18〜20度で、 冷涼な気候を好む。そのため、6〜8月に種 子をまき、11月以降に収穫する夏まき秋冬 どり栽培が主流だが、北海道、東北、長野な どの高冷地では春まき夏どり栽培が、関東以 南の暖地では夏まき冬春どり栽培が行われて いる。緑黄色野菜として需要は堅調であり、 ブロッコリーの作付面積や出荷量は、増加傾 向にある。 ブロッコリーの需給動向 調査情報部 ブロッコリー(北海道産) ブロッコリー(長野産) 主要産地 ①北海道 7月~ 10月中旬 ②埼玉県 10月中旬~ 5月下旬 ⑦群馬県 9月中旬~ 6月中旬 ⑧長崎県 10月中旬~ 6月上旬 ④香川県 9月下旬~ 7月中旬 ⑨鳥取県 5月下旬~8月上旬 10月~3月 ⑥徳島県 10月~5月 ③愛知県 10月~6月 ⑤長野県 6月上旬~ 11月中旬 ⑩福岡県 9月上旬~ 6月上旬 資料:農林水産省「平成26年産野菜生産出荷統計」 注: 図中の番号は収穫量の多い順番、期間は主な出荷 期間を表している。

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Page 1: ブロッコリーの需給動向 - alic月の野菜 野菜 26 2016.9 ブロッコリーは、地中海沿岸原産の野生種 ケールを起源とするアブラナ科の野菜で、つ

今月の野菜

野菜情報 2016.926

ブロッコリーは、地中海沿岸原産の野生種ケールを起源とするアブラナ科の野菜で、つぼみの固まり(花

蕾らい

)と茎を食用とする。日本へは明治の初めに渡来したが普及せず、戦後の1970年代に、洋風化に伴って食卓に上るようになった。国民の栄養意識が高まった1980年代に入って、米国カリフォルニアからの輸入物などによって一年中出回るようになると、その栄養価が評価されて消費量が一気に伸びた。その後、国内産地も増え、予冷施設や冷蔵輸送が整うことで、国産ブロッコ

リーの周年供給体制が確立した。ブロッコリーの生育温度は18〜20度で、冷涼な気候を好む。そのため、6〜8月に種子をまき、11月以降に収穫する夏まき秋冬どり栽培が主流だが、北海道、東北、長野などの高冷地では春まき夏どり栽培が、関東以南の暖地では夏まき冬春どり栽培が行われている。緑黄色野菜として需要は堅調であり、ブロッコリーの作付面積や出荷量は、増加傾向にある。

ブロッコリーの需給動向   調査情報部

ブロッコリー(北海道産)

ブロッコリー(長野産)

主要産地①北海道7月~10月中旬

②埼玉県10月中旬~5月下旬

⑦群馬県9月中旬~6月中旬

⑧長崎県10月中旬~6月上旬

④香川県9月下旬~7月中旬

⑨鳥取県5月下旬~8月上旬10月~3月

⑥徳島県10月~5月

③愛知県10月~6月

⑤長野県6月上旬~11月中旬

⑩福岡県9月上旬~6月上旬

資料:農林水産省「平成26年産野菜生産出荷統計」 注:�図中の番号は収穫量の多い順番、期間は主な出荷

期間を表している。

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野菜情報 2016.927

平成26年の作付面積は、1万4100ヘクタール(前年比102.9%)と、前年よりわずかに増加している。上位5道県では、◦北海道� 2470ヘクタール(同102.5%)◦埼玉県� 1300ヘクタール(同102.4%)◦愛知県� 927ヘクタール(同100.4%)◦香川県� 902ヘクタール(同101.9%)◦長野県� 836ヘクタール(同101.3%)となっている。

26年の出荷量は、13万400トン(前年比106.5%)と、前年よりかなりの程度増加した。上位5道県では、◦北海道� 2万1700トン(同105.9%)◦埼玉県� 1万3800トン(同107.0%)◦愛知県� 1万3300トン(同 98.5%)◦香川県� 8750トン(同107.6%)◦長野県� 7280トン(同 99.6%)となっている。

出荷量上位5道県について、10アール当たりの収量を見ると、愛知県の1.54トンが最も多く、次いで埼玉県の1.17トン、香川県の1.04トンと続いている。その他の府県で10アール当たりの収量が多いのは、大阪府(1.71トン)、静岡県(1.46トン)であり、全国平均(単純平均)は1.03トンとなっている。

作付面積・出荷量・単収の推移

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

14,000

16,000

平成19 20 21 22 23 24 25 26

(ヘクタール)

その他

長野

香川

愛知

埼玉

北海道

(年)

作付面積の推移

資料:農林水産省「平成26年産野菜生産出荷統計」

0

20

40

60

80

100

120

140

平成19 20 21 22 23 24 25 26

(千トン)

その他

長野

香川

愛知

埼玉

北海道

(年)

出荷量の推移

資料:農林水産省「平成26年産野菜生産出荷統計」

1.54

1.17 1.04 0.94 0.93

1.71

1.46

1.03

0

0.5

1

1.5

2

愛知 埼玉 香川 北海道 長野 大阪 静岡 全国

(トン/10a)

平成26年の主産地の単収

資料:農林水産省「平成26年産野菜生産出荷統計」 注:黄色は、単収が多い2県および全国平均。

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野菜情報 2016.928

ブロッコリー産地は、早生種、中早生種、晩生種などの品種を使い分けたり、は種日をずらすことなどによって収穫期を分散させ、長期出荷を実現している。また各産地は、栽培環境などに合わせて秋冬どり栽培や夏どり栽培などの作型を選択している。こうした産

地間のリレー出荷により、国産ブロッコリーの周年供給体制は確立した。比較的多くの産地で作付けされているおはようやサマードームは中早生種、晩緑99Wは晩生種である。

東京都中央卸売市場の月別入荷実績(平成27年)を見ると、11〜12月に多いが、年間を通じて安定した入荷となっている。秋冬作と冬春作である11月から5月にかけては埼玉産、

愛知産および香川産の入荷が多い。夏作の6月から10月にかけては、北海道産および長野産の入荷が多くなっている。また、米国産はカリフォルニアなどから年間を通じて入荷される。

作付けされている主な品種等

資料:農畜産業振興機構の関係者聞き取りによる。

都道府県名 主 な 品 種北 海 道 ピクセル、おはよう、スターラウンド埼 玉 県 おはよう、サマードーム、グランドーム愛 知 県 ベルネ、ファイター、グリーンキャノン、むつみ、アーサー、晩

おく

緑みどり

99 W香 川 県 おはよう、クリア、SK7-096、晩緑99W長 野 県 サマードーム、おはよう、SK9-099

東京都・大阪中央卸売市場における月別県別入荷実績

愛知

(35)愛知(39)

愛知(44) 埼玉

(30)

埼玉

(29) 長野

(28)

北海道

(59)北海道

(76)北海道(65) 北海道

(35)

埼玉

(39) 愛知(26)

香川

(21) 香川(21)香川

(22)愛知(27)

香川(14)

福島(14)

長野(23)

米国(13)長野(19)

埼玉(18)

愛知(10)埼玉

(26)埼玉(14) 埼玉(13) 埼玉(7)

香川(16) 愛知(13)

青森(13)

米国(10)

長野(10)米国(9)

長野(15)

香川(9)

香川(18)

長崎(5)長崎(5)

長崎(6)

米国(10)福島(10)

米国(11)

米国(6)

群馬(8)

群馬(10)

米国(5)

長崎(7)米国(8)

北海道(7)

福島(5)栃木(8)

長崎(4)

その他

(25) その他(22) その他

(16)

その他(10) その他

(26)

その他(27)

その他(8)

その他(1)

その他(7)

その他

(21)

その他

(26)

その他(16)

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

3,500

4,000

4,500

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12

(トン)

(月)

平成27年 ブロッコリーの月別入荷実績

(東京都中央卸売市場計)

資料:農畜産業振興機構「ベジ探」(原資料:平成27年東京都中央卸売市場年報) 注:( )内の数値は、月別入荷量全体に占める割合(%)である。

平成27年 ブロッコリーの月別入荷実績(東京都中央卸売市場計)

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野菜情報 2016.929

大阪中央卸売市場の月別入荷実績(平成27年)を見ると、東京都中央卸売市場と同様に、11〜12月を中心に通年で入荷してい

る。東京と比較すると、鳥取産、徳島産および長崎産の入荷が目立つ。また、米国産は大阪でも年間を通じて入荷している。

東京都中央卸売市場の価格(平成27年)は、1キログラム当たり206〜525円(年平均394円)の幅で推移している。年ごとに天候などの影響を受けるものの、1月以降は冬春どり栽培の産地の入荷量が増え、価格はや

や下げ基調となる。夏になると、夏どり産地は限定されるために入荷量が減少し、価格は上げ基調となる。10月以降は秋冬どり栽培の入荷により入荷量が増加し、価格が大きく下げ基調に転じる。

0

100

200

300

400

500

600

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12

(円/kg)平成25年

平成26年

平成27年

(月)

資料:農畜産業振興機構「ベジ探」(原資料:東京都中央卸売市場「市場月報」) 注:外国産も含む。

卸売価格の月別推移(ブロッコリー)

徳島(44)

徳島(41) 徳島

(34)徳島(36)

徳島(37) 長野

(29)

北海道(43)

北海道(57)

北海道(51)

鳥取(27)

鳥取(29)

徳島(34)

長崎(11)長崎(14)

香川(15)香川(16)

鳥取(15)

鳥取(17)

長野(40)

長野(20)長野(35)

長野(24)

徳島(25)

鳥取(18)

鳥取(10)香川(11)

長崎(11)長崎(14)

香川(15)

徳島(15)

米国(8)

その他

海外(12)

その他

海外(8)北海道(19)

長崎(10)

香川(12)

和歌山(8)鳥取(7)

群馬(9)

その他

海外(9)長崎(12)

香川(12)

米国(8)徳島(11)

熊本(6)

長崎(7)

香川(6)和歌山(6)

その他

海外(8) 鳥取(6)熊本(6)

北海道(5)

その他

海外(6)

北海道(6)

熊本(6)

その他(21) その他

(21)

その他(23) その他

(19)

その他(15)

その他(22)

その他(9)その他(3)

その他(6)

その他(13)

その他(24)

その他(23)

0

300

600

900

1,200

1,500

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12

(トン)

(月)

平成27年ブロッコリーの月別入荷実績

(大阪中央卸売市場計)

資料:農畜産業振興機構「ベジ探」(原資料:平成27年大阪市・大阪府中央卸売市場年報) 注:( )内の数値は、月別入荷量全体に占める割合(%)である。

平成27年 ブロッコリーの月別入荷実績(大阪中央卸売市場計)

東京都中央卸売市場における価格の推移

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野菜情報 2016.930

生鮮ブロッコリーの輸入量は、平成24年をピークに減少傾向にあり、冷凍ブロッコリーの輸入量は、年を追って増加傾向にある。27年の輸入量を国別にみると、生鮮ブロッ

コリーでは米国(1万5422トン)が8割以上を占め、冷凍ブロッコリーでは中国(2万2056トン)とエクアドル(1万7634トン)とで9割以上を占めている。

輸入量の推移

0

10

20

30

40

50

平成20 21 22 23 24 25 26 27

(千トン)

(年)

資料:農畜産業振興機構「ベジ探」(原資料:財務省「貿易統計」)

ブロッコリー(生鮮)輸入量の推移

0

10

20

30

40

50

平成20 21 22 23 24 25 26 27

(千トン)

(年)

ブロッコリー(冷凍)輸入量の推移

国別輸入量

米国

31,84098.4%

中国

5101.6%

その他

30.0%

合計 32,353 トン米国

15,42286.6%

中国

1,1136.2%

メキシコ

9485.3%

オーストラリア

3211.8%

合計17,804 トン

平成20年ブロッコリー(生鮮)

平成27年ブロッコリー(生鮮)

中国

13,52159.5%

エクアドル

6,45428.4%

メキシコ

2,0709.1%

グアテマラ

6432.8%

その他

240.1%

合計22,712トン中国

22,05651.8%

エクアドル

17,63441.4%

メキシコ

1,3553.2%

グアテマラ

1,2593.0%

その他

2850.7%

合計42,589トン

平成20年ブロッコリー(冷凍)

平成27年ブロッコリー(冷凍)

資料:農畜産業振興機構「ベジ探」(原資料:財務省「貿易統計」)

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野菜情報 2016.931

ブロッコリーは、さまざまな料理の主材料としてだけでなく、サラダの彩りや肉料理の付け合わせなどにも使える人気の高い野菜である。栄養価に優れる緑黄色野菜としての評価も高く、安定した需要を持っている。1人当たり年間購入量を見ると、平成26〜27年は1300グラムを上回る推移となっている。ブロッコリーは、ビタミンやミネラル、食物繊維などの栄養素を豊富に含んでいる。中

でも、疲労回復や美肌効果が期待できるビタミンCの含有量は、野菜でもトップクラスである。また、ブロッコリーに含まれるスルフォラファンは、ポリフェノールの一種であり、体内に入った発がん性物質を解毒する酵素を活性化させる働きを持つ。栄養価が高く、子どもや若者にも人気のあるブロッコリーは、幅広い年代におすすめの野菜である。

消費の動向

1,204

1,270

1,1291,170

1,243

1,212

1,369

1,327

1,000

1,100

1,200

1,300

1,400

1,500

平成20 21 22 23 24 25 26 27

(グラム)

(年)

資料:農畜産業振興機構「ベジ探」(原資料:総務省「家計調査年報」)

1人当たり年間購入量の推移

592

564

659

616

604

624

604

710

500

600

700

800

平成20 21 22 23 24 25 26 27

(円/㎏)

(年)

資料:農畜産業振興機構「ベジ探」(原資料:総務省「小売物価統計調査」)

小売価格(東京都区部)の動向