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33 1992年 3月 日本沿岸域会議論文集, 4,p33-44 (PrOc」 apan Assoc Coastal Zone Studios) ウォ フロ ン ト開発 にお ける計画手順 と計画課題 Planning PrOcedure and lssues fOr WaterfrOnt Deve 1 . はじめに 現在の大都市の多 くが河川や海に面 しているこ とか らも解 るように,上下水や水運 など太古か ら 人々の生活の中で,水辺 との関わ りは不可欠の も のであった。 そ して この水辺空間は,第二次産業の発展 とと もに産業開発優先の利用がなされてきたが,近年 の環境意識の高まりや景観の優位性などにより, 水辺空間の特徴を活か した開発が必要 とされ,ウ ターフロン ト開発が注 目され るよ うにな って きた。すなわち,港湾整備や産業基盤整備などの 目的を中心におこなわれていたウォータ ーフロン ト開発が, レク リ エーションなどの機能 も含み, より多 くの 目的を もった もの と変化 している。 このよ うに複数の 目的を持 ち, か つ地域開発の 視点か らお こなわれ るウ ォー ター フロン ト開発 は, 正会員 東京商船大学商船学部 (〒 135 江東区越中島 2-1-6) * YOji TAKAHASHI 他の一般的な計画 と同 じよ うに,計画の 目的や内 容を吟味 し,適切な計画手順に したが った計画の 作成が重要 とな って くる。 そこで本論文では,ウォータ ー フロン ト開発 に ついて,①ウォータ ー フロン トの内容 と特徴を明 らかに し,② システムエ学か らみた計画の一般的 な手順を整理 し, これ らにもとづき,③ウォータ ーフロン ト計画の計画手順 と,その際に必要 とな る検討項 目を明 らかにす るとともに,④ 日本 にお けるウォ ターフロン ト計画の実現上の課題を示 す ことを 目的 とす る。 2.ウォ ーターフ ロン トの内容 と特徴 (1)ウ ーターフ ロン トの定義 と特性 ウォ ー フロン トの定義ない し領域 について は,種 々の考え方がある。たとえば,ウォーター フロン トの水域の設定や陸域の設定に地形や行政 区分などを考慮 した り, ウォ ーフロン トを港 湾機能 と都市機能の交流の接点の場所 として人間 * HirOhitO KusE The man has interacted、 ァith the、 vaterfrOnt fOr a long tilne.Recen the waterfront development has became to have many k nurnber Of different kinds of facilities are constru vaterfront area. The purpose of this paper is tO make clear the char proposing the planning prOcedure based on systems en to discuss issues for the v7aterfront development in apan. Keywords;WaterfrOnt Development,Planning Procedure,

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1992年3月日本沿岸域会議論文集, 4,p33-44(PrOc」apan Assoc Coastal Zone Studios)

ウォーターフロント開発における計画手順と計画課題Planning PrOcedure and lssues fOr WaterfrOnt Development

1.は じめに

現在の大都市の多くが河川や海に面 しているこ

とからも解るように,上 下水や水運など太古から

人々の生活の中で,水 辺との関わりは不可欠のも

のであった。

そしてこの水辺空間は,第 二次産業の発展とと

もに産業開発優先の利用がなされてきたが,近 年

の環境意識の高まりや景観の優位性などにより,

水辺空間の特徴を活かした開発が必要とされ,ウ

ォーターフロント開発が注目されるようになって

きた。すなわち,港 湾整備や産業基盤整備などの

目的を中心におこなわれていたウォーターフロン

ト開発が, レクリエーションなどの機能も含み,

より多くの目的をもったものへと変化している。

このように複数の目的を持ち,か つ地域開発の

視点からおこなわれるウォーターフロント開発は,

正会員 東京商船大学商船学部(〒135 江東区越中島 2-1-6)

高 橋 洋 二*

YOji TAKAHASHI

他の一般的な計画と同じように,計 画の目的や内

容を吟味し,適 切な計画手順にしたがった計画の

作成が重要となってくる。

そこで本論文では,ウ ォーターフロント開発に

ついて,① ウォーターフロントの内容と特徴を明

らかにし,② システムエ学からみた計画の一般的

な手順を整理し, これらにもとづき,③ ウォータ

ーフロント計画の計画手順と,そ の際に必要とな

る検討項目を明らかにするとともに,④ 日本にお

けるウォーターフロント計画の実現上の課題を示

すことを目的とする。

2.ウ ォーターフロントの内容と特徴

(1)ウ ォーターフロントの定義と特性

ウォーターフロントの定義ないし領域について

は,種 々の考え方がある。たとえば,ウ ォーター

フロントの水域の設定や陸域の設定に地形や行政

区分などを考慮したり, ウォーターフロントを港

湾機能と都市機能の交流の接点の場所として人間

苦 瀬 博 仁*

HirOhitO KusE

The man has interacted、 ァith the、vaterfrOnt fOr a long tilne.Recently,since

the waterfront development has became to have many kind of ailnes,a

nurnber Of different kinds of facilities are constructed in、vaterfront area.

The purpose of this paper is tO make clear the characteristics of waterfront

proposing the planning prOcedure based on systems engineering rnethod and

to discuss issues for the v7aterfront development in」apan.

Keywords;WaterfrOnt Development,Planning Procedure, Planning lssues.

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活動を重視する考え方がある1)2)3)。

このようにウォーターフロントを考えるには,

自然的な特性 とともに,そ こにある歴史 。文化や

居住する人々の活動も重要である。

これらの考え方を基礎に,空 間的な意味に重点

をおくとき,「 ウォーターフロントとは,人 々が

活動をおこなうときに利用できる水際線近傍の陸

域と水域を合わせた空間」とすることができる。

よって,ウ ォーターフロントには,海 ,河 川,湖

沼などのウォーターフロントなどがある。

ウォーターフロントは一般の陸域と比較 して,

水際線を持つがゆえに,以 下の点に特性がある。

① 自然特性 :景観,地 盤,形 状,水 質,気 象

・海象など

自然特性は,水 際線と水域の持つ資源であり,

生物 ・鉱物 ・水 ・エネルギー ・空間 ・景観などに

分類できる。たとえば,水 域をもつゆえにウォー

ターフロントは景観上優れていることも多く,ま

た海洋生物や水面上空の空間があることで,陸 域

とは異なる特徴が認められる。

② 人為的特性 :歴史 。文化性,後 背地 (ない

し後背都市),交 通施設,供 給処

理施設など

人為的特性は,歴 史 。文化性や都市との関連性

などである。ウォーターフロントに限らず計画立

案に際して, これらの要素への配慮は不可欠であ

るが,特 にウォーターフロントには歴史 ・文化的

に重要な場所が多く,ま た開発適地が都市周辺で

あることも多い。

③ 法制度運営特性 :関連法体系,開 発 ・運営

主体など

法制度特性は, ウォーターフロントが陸域と水

域の両者を含むことから,管 理主体や関連法体系

が輻帳しており, これらの検討が不可欠なことを

意味している。

苦瀬。高橋 :

'1-タ

ー70ントの特性 計画の視点 ,1-タ ーフコントの41微

①自然特性

②人為的特性

③法制度迎営4寺性

①水際の場

②憩いの場

③人と1勿の

活動の場

④多目的な場⑤需要変動の場

図-1 ウォーターフロント計画の視点

(2)ウ ォーターフロントの特徴と計画の視点

ウォーターフロントの特性から考えると,陸 域

のみの計画に比較して, ウォーターフロントは計

画の場として以下のような特徴がある。そしてこ

れらの特徴にもとづき,い くつかの計画上の視点

が必要となる (図-1)。

① 水際の場 :ウォーターフロントは水面を有

しており,水 域と陸域の接点でもある。その

ため,地 盤の複雑さや水害危険などに対する

「安全性」の確保が必要となる。

② 憩いの場 :ウォーターフロントの水域部分

は,緑 地計画や景観計画上有利であり,市 民

の水辺への要求も,憩 いの要素に重点が置か

れることが多い。よって計画においてもこれ

らに対する 「適合性」が必要となる。

③ 人と物の活動の場 :ウ ォーターフロントで

は,港 湾に代表される物流施設や,臨 海工業

地帯も多いため,一 般の用途が限定された計

画とは計画の考え方も変える必要がある。と

くに,人 の活動と物の移動が計画対象地域で

同時に生じる場合には,両 者の機能を阻害さ

せずにかつ両者の特徴を活かすように,利 用

の 「複合性」を前提とした計画の 「複合性」

の配慮が必要となる。

④ 多目的な場 :ウォーターフロントは,憩 い

の場としての利用を始めとして,複 数の用途

を前提とした多目的な計画が必要であり, こ

れによリー般の市民の利用が可能となる。そ

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ウォーターフロント開発における計画手順と計画課題

のため,生 産活動と憩う活動の調整や,公 的

部門と民間部門の間での計画上の調整を前提

とした 「複合性」とともに,市 民が容易に水

際へ近づける 「開放性」と,水 際へ至るため

のアクセスの 「近接性」が必要となる。

⑤ 需要変動の場 :ウォーターフロントにおい

て,憩 う機能を考慮した場合には,季 節 ・曜

日・時間 。天候などによる利用者の需要の変

動が激しいことが多い。このため,利 用者の

需要変動に対応できるように,同 一敷地を需

要変動によって使い分けることなど,計 画対

象地の利用に対して 「柔軟性」が必要となる。

3.シ ステムエ学からみた計画の手順

(1)シ ステム開発のプロセスと計画手順

システム開発のプロセスを参考に,都 市計画や

地域計画のプロセスを整理すると,計 画内容が変

化する時点は,① 理念確立,② 構想提示,③ 基本

計画決定,④ 整備計画の決定と事業開始,⑤ 事業

終了,⑥ 使用完了,の 6時点となる。この時点の

間に各種の段階 (フェーズ)が あるが,こ のうち

広義の意味での計画は,① 企画 。構想,② 基本計

画 (ないし計画),③ 整備計画 (ないし設計),

④事業実施,の 4段階となる (図-2)。

また各段階 (フェーズ)に おける計画手順 (ス

テップ)は ,① 目的分析,② 機能分析,③ 代替案

作成,④ 評価と決定,の 4つ になる (図-3)。

このとき,段 階 (フェーズ)が 進行するにつれ

て,戦 略的 。質的なものから戦術的 ・量的なもの

へと変化し,各 段階のステップが進行するにつれ

て,調 査 ・分析型から作成 。決定型へと変化して

ぃく4)5)。

このような計画手順の考え方は,地 域計画や都

市計画一般に当てはまるものであり,そ の一環で

あるウォーターフロント計画も同様である。

理念

理念

広 義 の 計 画

企画 Jlt本 整備 事業

運用

維 持 廃 棄

理念

確立

図-2

【|キ点】

の変

臓 諄ふ

1「想 計画 事業 1`業 使用

1是示 決定 開始 終 了 完 了

都市 。地域計画における計画手川頂

Folttn7決手 順

ス テ ソプ

の成

企画 lF想 7

基本計 ll l

一「一

検討Irl日

ないし

技 法

7〓‐ン整備鳥1画

11業実 うこ

質 的 1■ 略 的

01,1的 骨‖l亜税

長 lVI的 確実 11小

||lR的 11●in句

定常的 :‖

:重視

"l的

確実性大

調査型 一

―一―― 作成型

分析型 決定型

図-3 計画におけるフェーズとステップ

(2)フ ェーズ別の検討項目

企画 。構想段階では,① 計画を意図した動機や

要因を明示し,② この計画がもたらすであろう開

発利益や最適な計画時期を考えながら,③ 計画概

念 (コンセプト)を 明らかにし,④ 開発方針と計

画方針を決定する。

基本計画段階では,① 企画 。構想段階で与えら

れた計画方針にしたがつて基本計画の目標を設定

し,② 現状や将来予測の分析を通じて,③ 代替案

を作成し,④ 計画案を決定する (図-4)。

整備計画段階では,基 本計画段階の作業をより

精密なものとする段階であり,基 本計画段階をプ

ランニングとすれば,整 備計画段階はデザインと

なる。

事業実施段階では,① 整備計画に示された事業

目的を整理し,② 整備計画にしたがつて事業化計

画が検討され,③ 実施計画が作成され,④ 事業実

施となる。そしてこの事業は,構 造物の構築と法

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制度による規制 。誘導により実施される。

実際の計画にあたつては, これらの検討項目が

すべて考慮されるわけではなく,検 討項目の中に

は所与のものがある場合もある。

むしろ問題は,検 討すべき項目を検討せずに,

計画を進めることである。必要な検討を省略する

と,計 画の精度を深めていく段階で,再 び計画を

しなおすことが起きやすいので,基 本的には順序

よく検討することが,計 画を進める際の無駄を省

くことにつながるであろう。

4.ウ ォーターフロント計画の計画手順

(1)計 画概念の変化

高度成長期は人口の都市集中にもとづく住宅や

街路などの基盤施設整備と産業振興のための開発

が優先されてきた。石油危機後の安定成長期にお

いては,人 々の意識が変化し価値観の多様化する

時代を迎えることで,地 域の個性が重視され,生

活環境を重視した計画が多 くなってきた。

この変化をウォーターフロント計画について考

えてみれば,従 来は港湾施設 。工業施設 ・漁業施

設など人々の行動のうち 「働」に関する計画が主

であったが,近 年では 「働」に加えて,「 住」 ・

「学」 。「憩」など行動を含めた多目的な計画ヘ

と変化している。

このように,多 くの目的の中から計画目標を定

めていくような計画は,ど のような評価基準のも

とで,ど のような計画を立てていくべきかなど,

計画理念の形成と計画目標の明示を含む企画 ・構

想が,計 画の成否にとつて重要となっている。

12)計 画理念と調和の考え方 (理念の形成)

人々の意識が治水 ・利水から親水へと変化する

につれて,産 業施設の集中的な立地や直立護岸の

形成などにより人々の接近を阻んできた水際線に

対して,そ の開放が叫ばれるようになっているが,

この一方で水際を安全な場所としておく必要もあ

苦瀬 ・高橋 :

(注 ) 一一 ::1画 プ ロセ ス

: : 検討項 目の関 連性

図-4 フェーズ ・ステップ別の検討項目

る。このウォーターフロントの開放の要請と,水

際線での安全の要請は,計 画を進める上でしばし

ば相反することがある。

このように,ウ オーターフロントの計画を進め

るためには,そ こで生活する人 ,々利 用する人々,

管理する人々など,様 々な人々の価値観を調整す

る必要がある。

このため,以 下の点に関する合意の形成と計画

理念の確立が必要となる。

① 水辺の開放性と安全性のバランス

② 産業重視と生活重視のバランス

③ 治水 ・利水と親水のバランス

このとき,価 値観の変化と計画の柔軟性,計 画

の評価基準などについても,検 討できればより望

ましい。

13)水 域利用構想 (企画 ・構想段階)

ウォーターフロントの計画は,地 域計画や都市

計画の一部でもあるから,先 の計画手順にしたが

いウォーターフロントの計画手順と計画課題を整

理することができる。

企画,構 想段階においては,① 計画課題 (a動

ステ メブ

フ ェー ズ

目01分rf 機llttt gf 代 llttlT成 評 価 と決定

Problc●

Dcrlnitin

Systc●S

Ana!ysiS

Plallning

& Dcs:“n

Eva:uation

& Docl sion

企画 ・構想段階

ProRraロ

,1■●nl!:g

a rJl機

b製 因

↓ 一

gl・t木:l lT

EI標設定

c!サ‖発利益

d‖‖■1l lVI。 概念 のり|

確 化

F il Fll方

'Iの決,t

―・ :一

― ― ― ― ―

基本 :1画 段階

PrOICC t

Planning

h現 状 把据

:将 来予測l

l計 画 1 1ヽ4

案 の作成

k基 本 計 l■l

案 の 決定

1

`111画

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Systeロ

Dcvclopncnt

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■現状把握

n将 来予測

。11画代ll

案の作成

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1`業実施 段階

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q事 業 F」的

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r事 業 化計

u施 ェ 管 rll

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ウォーターフロント開発における計画手順と言|口1課題

機)の 解明と計画立案理由 (b要 因)の 解明にも

とづく計画目標の設定,② 主体別開発利益 (c開

発利益)の 解明と最適開発時期 (d開 発時期)の

選定をおこない,③ 計画代替案(e概 念の明確化)

を描くことで計画コンセプ トを明示 し,④ 最適計

画案の選定 (f計 画方針の決定)に より計画方針

を決定する (図-5)。

計画を企画したり構想をたてるとき,そ の計画

の持つ背景があまり吟味されずに,計 画案が提案

されることがある。しかしながら,計 画にはそれ

なりの動機や要因が存在するはずであり, これら

を軽視したり検討を省略することは,基 本計画や

整備計画などによって計画を具体化していくとき

に,混 舌Lを招く恐れがある。

特にウォーターフロントは陸域と水域の両者を

含む地域であるから,両 者を一体的に計画を立て

ることが望ましい。もしも種々の制約から両者を

個別に計画する場合には,企 画構想段階の検討項

目 (図-1, a動 機, b要 因, c開 発利益, d開

発時期, e概 念の明確化)に おいて,水 域と陸域

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の利用構想の整合を図ることが重要となる。

(4)ウ ォータ=フ ロン トの計画対象(計画段階)

ウォーターフロントの計画段階 (基本計画 ・整

備計画)に おいては,計 画内容を人々の行動や自

然特性を活か したものとする必要がある。

このために,ウ ォーターフロントにおける行動

。資源 。活動 ・施設 。建設制御技術の相互関係を

図-6の ように設定してみる。すなわち,行 動と

資源により活動が生じ,活 動に適した施設が必要

となる。そして施設が行動を喚起したり,施 設が

不適当な場合は建設技術や水域制御技術により,

資源をさらに計画目標に適したものに改変するこ

とが考えられる。

このとき人々の行動に着日し,行 動の需要に合

わせて活動の設定と施設計画をおこない,必 要に

応 じて自然特性の持つ諸資源を建設 。制御技術に

より改変していこうとする計画は,ニ ーズ優先型

計画とすることができる。この一方, 自然特性の

持つ諸資源に着目し,資 源に合わせて施設計画を

図-6 行動 。資源 ・活動 ・技術の相互関係6)

o動機

EI画課題の構j宣の解明(現在 ・将来の課題解明)

計 画 日 標 の 設 定

b要因

計画立案理由(必要性解明と将来予測)

c開 発利 益

主 体男lrjn発利益 の解 明

(主体 別 利益 と相互関 係)

計 画 内 容 の 検 討

d,1発 時 期

最 適開 発n寺期の選定

(環1寛変化 予lllと手順 )

(1)ニ ーズ優先型の計画手順

建設 ・制,,技体i

(2)シ ー ズ優先型の計画手順

企画 。構想段階の計画手順図-5 図-7 ニーズ優先型とシーズ優先型の計画手順

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おこない, これにより行動を喚起することを主眼

とする計画は, シーズ優先型計画とすることがで

きる6)(図 -7)。

このうちニーズ優先型計画について,① 行動と

資源による活動の抽出,② 行動と資源による施設

の抽出,③ 活動 。施設と資源による必要条件ない

し制御条件の抽出,の手順を示すと図-8と なる

(表-3~ 5)。

15)ウ ォーターフロントの計画要素(計画段階)

陸域の計画の代表例である都市計画では,計 画

要素を大きく土地利用 ・交通 ・供給処理 。公園緑

地に区分している。これと同様にウォーターフロ

ントにおける計画要素を整理すると,① 陸域にお

ける土地利用計画,② 水域における水域利用計画,

③基盤施設としての交通計画 ・供給処理計画,④

防災計画 ・環境計画 。景観計画なとがある。

これらウォーターフロントの計画要素のなかで

も,特 に考慮すべき課題には以下の点が考えられ

る。

第一に水域利用計画は,陸 域の計画に付随する

形で考えられることが多い。たとえば,陸 域部分

でマリンスポーツの施設が計画されるとき,そ こ

に面する水域部分ではどの範囲までを

スポーツ活動のエリアとして認めるべ

きか,ま た漁業などとの水域利用の重

複を避けるべきか認めるべきかなどは,

重要な問題であるにもかかわらず,考

慮されない場合も多い。よってウォー

ターフロントについては,陸 域と水域

の計画区域を定める基準の設定とともに

表-1 ウオーターフロントの資源

生 物 :食 穏、成長 ・増殖、観察、rJlき、知11し

鉱 物 :熱 、変化、形態 ・形状、密度、硬度、色彩、量

水 :熱 、動き、重nt、溶解、音、光、連続

エネルギー :動 き、熱、圧力、濃度、重量、エネルギー密度

空 「1 :大 きさ 〈面積)、 収容 〈水中)、 利用

景 観 :形 態、色彩、光、動き、時間 (季日)

苦瀬 ・高橋 :

水域部分の利用用途についても区分の設定をおこ

なうことで,陸 域と水域との利用上での食い違い

を避け,両 者の一体的な利用を増進することでき

ると考えられる。

第二に交通計画においては,ウ ォーターフロン

トが陸域だけでなく水域も持つことから,陸 上交

通手段だけでなく,水 上交通手段の活用も可能で

あり,両 者の整合を図ることが必要である。

第二に水域を持つがゆえに,陸 域の計画に比べ

て防災への配慮が必要であるとともに,そ の景観

上の特性を活かすことが必要である (図-9)。

(61 事業手法の内容 (事業実施段階)

事業実施段階は,事 業目的の整理をおこない,

事業化計画をたてて,事 業を実施する。このとき

の課題は,以 下のように考えられる。

第一に,計 画の実現の方法は,構 造物の構築だ

けでなく法制度による規制 。誘導も必要である。

ウォーターフロント開発は構造物の構築と利害調

整に力点が置かれる傾向があるが,計 画実現のた

めには規制 。誘導も重要な事業手法であり,こ の

意味において手法の整備が望まれる。

第二に,ウ オーターフロントにおける管理主体

(表 -3) (表 -4) (表 -5)

図-8 ニーズ優先型のウォーターフロント開発の計画手順6)

表-2 ウォーターフロントにおける行動

住む :居 住、居住支援、居住活動

●lく :一 次産業、二次産業、三次産業、交通系、研究系

学ぶ :体 験、観察 ・見学、実習 ・研修、研究

憩う :文 化 ・自然、サービス、スポーツ

支える :交通、情報通信、エネルギー、廃棄物

守る :環 境保全、F/J災

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ウォーターフロン ト開発における計画手順 と計画課題

表-3 行動一資源マ トリックスにおけるウォーターフロントの活動6)

表-4 行動―資源マ トリックスにおけるウォーターフロントの施設。)

Resource →

↓ Behav:orMarine

LiFe

Mineral Sea

Water

Energy Space Scenic

じnvironment

Resldence

Residence

Working

Support

Fishing

Fishing

Market

‖ot Spring

Mining

011,Cas

Boat House

Genaration

Housing

Energy Plant

Housing

Sight―seeing

Working

Prim lndustry

Secondary ″

Tertiary ″

Transportation

Reseach

FishingFood ind‖oal

Market‖arine Life

Hining

Market

‖ining

Cultivation

Energy Plant

しolsure

Shipping

Meteorology

Energy Plant

Energy

Fishing

Plant

Storage

Shipping

Sight―seeing

Education

Experienco

ObservatiOn

Training

Reserch

Fishing

‖arine Life

Fishing

Harine Life

Mining

Hineral

‖ining

‖ining

Swimming

7ave, Wind

Wave, Wind

Energy

S,l mtti ng

Sight―seeing

Sight―seeing

Recreation

Culture

Sports

Service

Sight―seeing

Fishing

Meal

Sight―seeing

Diving,Swim

Preservation

Sa1ling Crusing

Lodging

Sight―seeing

Supporting

Function

Transportation

ComllunicatiOn

Energy

Waste Dust

Shipping

Cable

Fave, Wind Wave. lind

Dust

Mainte― Preservation

Prevention

Purification

Polution Polution

Purification

Polution DisasteF

Preservation

ProtectiOn

(F=FacH ity)

Resource ―・↓ Behavior

Marine

Life

‖ineral Sea

Water

Energy Space Scenic

Environment

Residence

Residence

Working

Support

FIshing Spot

Fishing Spot

Market PlacO

Hot Spring

Mining Plant

01l Plant

Boat ilouse

Energy Plant

House

Energy Plant

House

Scenic Spot

Working

Prin industry

Secondary ″

Tertiary ″

Transportation

Research

Fishing Area

Food Plant

Restaurant

Market Place

Research F

Mining

Market PlaceResearch F

Harine Ranch

Energy Piant

Theme Park

Port

Research F

Energy Plant

Research F

FIshing

Plant

Warehouse

Port

Scenic Spot

Education

Experience

Observation

Training

Research

Marinc Park

Aquarium

School

Research F

Marine Park

‖useum

School

Research P

Swin―School

Energy Plant

energy Plant

Research FSwinmingArea

Scenic Spot

Scenic Spot

Recreation

Cul ture

Sports

Service

Aquarium

Fishing Area

Restaurant

Museull

Diving Area

Lifeguard

Marina MarinaCamping Area

Scenic Spot

Supporting

Function

Transportation

Communication

Energy

Waste しivingFllter

Port

Cable

Bnergy Plant Energy plantDisposalArea

Mainte― Presarvation

Protection

LivingFllter

Monitoring Monitoring

しlvingFlltor

Monitoring Jetty

Preservation

Protection

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苦瀬 ・高橋 :

表-5 活動 ・施設―資源マ トリックスにおける建設制御技術 (例,憩 う活動)6)

Resource ―・

Characteristic

Activity Facility

↓ ↓

‖arine

Life

‖ineral Sea Water Energy Space Scenlc En―

v ironlnen t

00LO”¨一一0一E一

■8

目0¨一●,』0●一〇

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(Culture)

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(Sports)

Sailing &

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(Service)

Residencial

Transport

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Cultivation

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Living Filter

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Desirable Condition for Activity and Faclllty

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ウォーターフロント開発における計画手順と計画課題

や関連法体系が輻較していることから,計 画主体

や開発主体の役割と区分を明確にする必要がある。

たとえば基盤施設整備における公的主体間での役

割分担や,公 民の協調ないし民間主体への開発権

限の委譲などは,よ り多くの議論が必要である。

5。 ウォーターフロント計画の実現上の課題

(1)計 画事例にもとづく計画課題の検討

いままで述べた計画手1慣を,実 際の計画に対応

させることで,計 画手順の整合性の確認と計画実

現上の課題を整理することにする。

事例とする 「湖南なぎさプラン」は,神 奈り!1県,

藤沢市、茅ヶ崎市,平 塚市および大磯町により,

江ノ島から大磯にいたる東西約15kmの湘南海岸を

中心に,昭 和60年に策定された計画である。

(2)湘 南なぎさプランの段階別の計画概要

1)計 画の理念 :国道 134号線と海岸に挟まれ

た区域は公園として都市計画決定されており,そ

の中で湘南海岸公園,辻 堂海浜公園,汐 見台公園

の 3県立公園が開設されている。また昭和29年に

着手された湘南海岸公園は,都 市計画法59条にも

とづく特許事業として水族館やマリンランド等の

民間施設を導入したもので,全 国でも先駆的な民

間活力導入の整備手法によるものであった。

そして当該地域は,首 都圏の海水浴場やマリン

スポーツの場として親 しまれてきたが,次 第に都

市化の波が押 し寄せ,自 然や水質等環境の悪化が

進むとともに, レジャーの多様化と施設の老朽化

により,入 り込み客数が年々減少する傾向にある。

そこで,価 値観の変化に対応 し,生 活重視のウ

オーターフロントとして,「 豊かなみどりと美 し

いなぎさが生かされた,快 適で過ごしやすい海岸

文化ゾーン」を創出することを理念として,計 画

が着手された。

2)企 画 ・構想段階 :湘南なぎさプランの基本

方向としては,① 自然環境の保全 (自然緑地の保

|ウ ォー ター フ ロン トの特性 |:【 自然特 性 】 :

: 景 観 、地 盤、形 状 、水質 ‐: 気 象 ・海象 、 な ど :

|【 人 為的特性 】 |

1 纂避発詣廿)t籐芝超なし||【法11度・運営特性】 |: lXl述法体系、 :

I F8発 ・運営主体、など |

:の 1キ徴 :‐―= 水際 の場 |

: 憩 いの場 :

1 人 と物 の活 動の場 |: 多 日的 な場 :

1 需 要変 動の場 |

図-9 ウォーターフロント開発の計画手順

全,砂 防林の保護育成,美 しい浜辺の保全,き れ

いな海の回復), ②快適な生活環境の向上 (地域

の緑の創造とネットヮークの形成,交 通機能の確

保と環境デザイン,防 災機能の確保と環境デザイ

ン),③ 文化的空間の創出 (海洋レクリエーショ

ンスポーツ施設の整備と環境デザイン,憩 いとも、

れあいの場の整備,海 岸文化創造のための環境デ

ザイン)が 掲げられている7)。

さらに対象地域を,① 都市機能と豊かな自然と

文化の融合する 「都市景観ゾーン」,② 湘南の景

観のベースとなる 「自然景観ゾーン」,③ 憩いと

ぶ、れあいを楽しむ 「公園景観ゾーン」のいずれか

に性格づけ,21世紀を展望した湘南なぎさづくり

ウ ォー ター フロ ン ト利用 の

「F念 の形成

ウ ォー ター フ ロ ン ト利用 の

基 本構想

ウ ォー ター フロ ン トの計 画対象

住 :住 居 、 ホ テル、別 荘 な ど

働 :オ フ ィス、商 業、 な ど

学 :学 校 、水族館 、展 示場 など

憩 :公 園 、マ リー ナ、 など

ウ ォー ター フロ ン トの周1画要素

土 地利 用ヨ1面

水 域利用ヨ1画

交 通 :1画 (陸上 ・海上)

Jtl合処「」IEI画

防 災 ・環境日l画

景 観Hi画

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ウオーターフロント開発における計画手順と計画課題

の基本構想としている。

3)基 本計画段階 :基本計画では地域を 6つ の

拠点地区に分け,そ れぞれの計画を定めている。その中で,最 も東側にある江ノ島 ・片瀬 。鵠沼海

岸地区については,「 湘南なぎさシティ」とぃぅヨンセプトにもとづき,基 本計画をコンペによっ

て策定することとしてぃる。

その前提として,第 一に現在の砂浜に堀込み港

湾を整備する一方,導 流堤を築き,境 川の堆砂を

防ぐとともに,新 たに堤防を築き,養 浜により海岸線を沖合いに展開することとしてぃる。第二に,

今後のレクリエーションの動向を勘案して老朽化している既存の公園施設を更新するほか,新 たに

文化的,都 市的機能としてホール,ホ テル, レス

トラン,店 舗等の複合施設の導入が考えられてい

る8)(図 -10,11)。

13)計 画技術面での実現上の制約と課題

湘南なぎさプランはニーズ優先型計画であるため,種 々の制約条件の克服を前提にしている。よって計画実施のためには,建 設 。制御技術の視点から,以 下の諸問題の解決が必要となってぃる。

① 技術上の問題 :境川および沿岸流や潮流に

よる境り|1河日の堆砂,江 ノ島の半島化の現象がみられるが,新 たに導流堤や防波堤を築くことによる堆砂の防御や養浜の可能性につい

て,土 木技術上の十分な検討が必要である。

② 生態系への影響 :大規模な土木構造物が建

設されることにより,陸 上 。海中の生態系へ

大きな影響が及ぶことも考えられる。事前の

アセスメントを十分に加えなければならない。

③ 防災上の問題 :海岸に建築物を建設するこ

とになるが,地 震,高 潮,津 波等の災害に対

する安全性の検討が必要である。

④ 景観上の問題 :江ノ島,長 く美 しい海岸線,

遠景としての富士山は,名 勝として古来親 し

まれてきたが,そ の中に,人 工的な土木構造

図-11 センターゾーン計画 (案)8)

イダl」

漁港区域

海岸保全区崚

昴1'1:画公回区取

13市公回区壊

河川区崚

図-12 現況法制度の輻鞍状況8)

Page 12: ウォーターフロント開発における計画手順と計画課題kuse/pdf/Planning_procedure_and...ウォーターフロント開発における計画手順と計画課題 のため,生産活動と憩う活動の調整や,公的

44

物や建築物をランドークとして持ち込むこと

の是非を十分に吟味しておく必要がある。

(4)法 制度面での実現上の制約と課題

わが国ではウオーターフロントの整備を進める

場合,各 種法制度上の制約が大きく影響してくる。

当該地区についても,都 市計画法の市街化調整区

域,都 市計画公園区域,漁 港法の漁港区域,海 岸

法の海岸保全区域,河 川法の河川,都 市公園法の

公園,道 路法の道路,風 致地区等が複雑に錯綜し

て指定されているほか,国 有財産法,公 有水面理

立法上の調整も必要とされる (図-12)。

湘南なぎさプランを進めるためには, これらの

区域指定を各法律に則して同時に変更していくこ

とが求められているが,省 庁間の縦割制度の問題

もあって,大 きな困難が予想されている。しかも,

各法律上変更できるのは,プ ロジェクトの合理性

や卓越性によつてではなく,そ のプロジェクトが

個々の法律の目的遂行上でプラスの影響があると

認定された場合に限られる。そのため,各 法律は

それぞれの立法主旨にもとづき区域,施 設,利 用,

整備,管 理等について規定しているが,ウ オータ

ーフロント計画の目指している多様で複合化され

た計画目標には,柔 軟に対応できないことが多い。

本来ウォーターフロント計画は,河 川,海 岸,

公園,道 路,港 湾といった個々の施設それぞれの

見地から,施 設個々の最適化という視点で計画の

是非を判断するのではなく,計 画全体を通じて,

安全性,快 適性,利 便性,効 率性を総合的に勘案

し,か つ判断すべきものである。

しかしながら,計 画全体の複合的かつ一体的効

果を総合的に判断するための仕組みが,法 制度上

担保されていない。このことが, ウォーターフロ

ントの整備,開 発,保 全を進めていくうえで最も

緊急に解決すべき課題であり,こ のような法制度

の整備が強く望まれる。

苦瀬 ・高橋 :

6.お わりに

本論文では,① ウォーターフロント計画の内容

と特徴を示し,② その計画手順を整理し,③ 事例

研究を通じて計画手順の整合性と,④ 計画実施上

の課題を明らかにした。

今後の研究の方向としては,① 個々の段階にお

ける具体的な計画技法,② ウォーターフロント開

発の実施段階における課題の解決方法,③ とくに,

法制度上の制約と整備手法の開発などの研究が,

考えられる。しかしながら,基 本的な考え方の整

理については,本 論文の示した範囲であっても,

計画の参考に供すことができるものと考えている。

参考文献

1)吉田宏一郎。苦瀬博仁・磯崎芳雄。大楠丹・津垣

昌一郎 :海洋システムの計画の特徴と方法,第 10

回海洋工学シンポジウム,日本造船学会,P.363

-371, 1990。

2)横 内憲久+横 内研究室 :ウォーターフロント開発

の手法,鹿 島出版会,P.10-28,1988.

3)日 本建築学会,海 洋委員会ウォーターフロント計

画小委員会,研 究資料,1988~1990.

4) A. D. Hall : Three―Demensiona1 loFph010gy Of

Systems Engineering, IEEE TransactiOnS Of

Systems Science and Cybernetics. V01 SSC-5,

no.2, P.156--160, 1969.

5)苦 瀬博仁 :システムエ学を利用した都市計画の計

画手順と技法に関する基礎的研究,第 24回日本都

市計画学会学術研究論文集,P.631-636,1989.

6)苦 瀬博仁 ・島崎敏一 。窪山潔 。大塚年久 :海洋空

間の新しい活用技術の考え方と活用手順一モーム

プロジェクトよリー,テ クノオーシヤゾ 90。 国

際シンポジウム,P.249-256,1990.

7)神 奈川県 。藤沢市他 :湘南なぎさプラン,1991.

8)神 奈川県 ・藤沢市 :湘南なぎさプラン,江 ノ島 ・

片瀬 。鵠沼海岸地区,1988.