ビッグデータ・人工知能がもたらす 経済社会の変革 ·...

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ビッグデータ・人工知能がもたらす 経済社会の変革 2015年4月21日 経済産業政策局 資料3-3

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ビッグデータ・人工知能がもたらす経済社会の変革

2015年4月21日経済産業政策局

資料3-3

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目次

1.AI・ビッグデータによる経済社会の変革

(1)変革の動きとその本質(2)変革のインパクト(3)変革の時間軸

2.産業構造の変革

(1)構造的な競争環境の変化に対応できなかった我が国産業(2)製造業など現実世界の産業を飲み込むAI・ビッグデータによる変革(3)高付加価値部門を一気に失うリスクに晒されている我が国(4)産業構造の変革の本質を見極めるための視点

①「モノ」から「システム」への価値の移行②産業活動のプロセスのシステム化と企業を超えた移転可能性③データのバリューチェーンにおいて産業競争力の源泉がどこにあるか

3.就業構造の変革

(1)労働力人口の減少(2)AI・ビッグデータ等による雇用への影響

①量的影響②質的影響

2

目次

4.我が国の課題と対応

(1)データの円滑な利用(2)サイバーセキュリティの強化(3)研究開発(4)人材

①雇用・労働②人材育成

a)企業内IT人材育成b)教育

(5)制度的環境①個別分野におけるAI・ビッグデータの利用・更なる進化の促進

a)自動運転b)製品安全c)産業保安d)サービス業規制

②デジタルプラットフォームに対応した競争政策

5.終わりに

3

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1.AI・ビッグデータによる経済社会の変革

(1)変革の動きとその本質(2)変革のインパクト(3)変革の時間軸

2.産業構造の変革

3.就業構造の変革

4.我が国の課題と対応

5.終わりに

4

5

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1.(1) 変革の動きとその本質

○AI・ビッグデータによって、既に、製造プロセス、モビリティ、健康・医療、流通、インフラ・産業保安、エネルギー、行政などの幅広い分野において、変革の動きが見られる。

○その本質は、

①デジタルデータとなった森羅万象(人間の営み、社会現象、自然現象など)が、

②コンピューティング能力の飛躍的向上と

③人工知能の技術革新によって解き明かされ、

これまで認識し得なかった人間社会や自然界の様々な法則や関係性、無意識的なものを含めた個々人の行動や嗜好などが明らかになることにある。

これによって今後は、個々人のそれぞれのニーズに応えるなど、これまでになかった全く新しい価値を生み出すことが可能となるのではないか。

6

AI・ビッグデータによる新たな価値の創造

AI・ビッグデータ

設計・製品・保守管理の 適化。「規格品」から「テーラーメード」品へ

安価で安定的なエネルギー供給。新サービス創出による電力小売市場活性化

交通事故・渋滞の低減等に加え、自動走行技術を活用した新たなモビリティの創造

データ駆動型行政によるサービスの抜本的向上

「予防」サービス普及による医療費等の社会コストの適正化

公共インフラの持続的運営・民間参入拡大、保安水準向上、被規制者負担の軽減

「規格品の大量生産販売」から「個人の嗜好に合わせたものをリードタイムゼロで販売」へ

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1.(1) 変革の動きとその本質

新たな価値創造を素早く、かつ、的確に実現することによってのみ、高い付加価値を得ることができるため、必要なデータを迅速・的確に収集・解析・活用できることが産業競争力の源泉となるのではないか。

その結果、例えば、従来型のモノ作りで規格品を販売し、規格化されたサービスを提供することでは、競争優位を築くことはできなくなるのではないか。

従来型のモノ作りやサービスの提供に代わり、個々人の異なる価値にテーラーメードで応えていくことが主流となっていくではないか。

8

新たな価値

産業競争力の源泉

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1.(2) 変革のインパクト

このため、AI・ビッグデータがもたらす産業へのインパクトは、これまでのように、繊維産業から重厚長大産業へ、そして電気・電子機器産業や自動車産業へと、単に、産業全体における各産業分野の構成比率が変化するにとどまらず、従来の産業区分が意味をなさなくなるような質的な変化に及ぶのではないか。

この結果、就業構造にも大きな変革がもたらされるのではないか。

10

産業の区別自体が変化

産業構造の変化

産業構造の変遷

出所:経済産業省「工業統計調査」(注)数値は、製造業出荷額に各製造業(中分類)が占める割合

11

0%

20%

40%

60%

80%

100%

1955年 1980年 2010年

その他

繊維・衣服

木材、紙パルプ

化学

石油・石炭

非鉄金属

鉄鋼

輸送用機械

電気機械

就業構造の変化

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1.(2) 変革のインパクト

<経済活動の変容>

さらに、従来は同業種に存在したライバル企業が、全く異なる業種あるいはベンチャー企業から現れるなど、競争環境が構造的に変化し、また、従来からの継続的な取引関係が崩れ、サプライチェーンの組替えが起きるなど、経済活動も大きく変容するのではないか。

<社会生活の変容>

ライフスタイルの面においても、例えば、自動車の自動走行により従来の移動時間が仕事や余暇の時間となり、また、病院は病気を治す場というより病気を予防する場としての色彩を強めるなど、社会生活をも大きく変化させるのではないか。

12

出所:メルセデス・ベンツHP

メルセデス・ベンツが2015年1月の米・Consumer Electronics Show(CES)で発表した自動走行車のコンセプトカー

新たなライフスタイルをもたらす自動走行車

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1.(2) 変革のインパクト

さらに、AI・ビッグデータ時代の到来は、

①人口減少・少子高齢化に伴う物理的な労働投入量の減少による潜在成長力の低下

②高齢化社会における医療・介護のあり方

③地方における人口減少による地域の存立の危機

④省エネの推進等によるエネルギー制約への対応

⑤社会保障費の増加等による財政負担の増大

などの日本が直面する大きな課題への対応についても、新たな角度から解決に導く大きな可能性を秘めているのではないか。

14

産業構造・就業構造の変化

人工知能(AI)ビッグデータ

・データ量の増加、処理能力の向上・「ディープラーニング」等の技術進展

経済社会変革

AI・ビッグデータが日本の直面する課題を解決する可能性

人口減少・少子高齢化に伴う労働力の減少

人手不足の産業分野におけるAI・機械導入の進展

高齢化社会における医療・介護のあり方予防医療の効果を上げる

ことによる健康寿命の延伸・老後の生活の質の向上

地方の人口減少地域存立の危機

地域における自動走行システムによる高齢者のモビリティの確保

財政負担の増大(社会保障費の増加)

予防医療による医療費増加の抑制による

財政負担の軽減

エネルギー制約への対応

スマートメーターの本格導入、家庭内機器の制御等による家庭部門の省エネ

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AI・ビッグデータ時代の到来

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1.(3) 変革の時間軸

○インターネットは、その登場当時には、ほとんど誰も予想し得なかった程に経済社会を変化させた。

しかし、その変化でさえ、

①現在の立ち位置と、

②今後のデジタルデータ量・コンピューティング能力の指数関数的な増加と人工知能の非連続的な進化

を考えれば、そのほんの入り口に過ぎず、今後は、想像を超えるスピードで、想像を超える変革が起きるのではないか。

今、これらの変革に、迅速ではありながら、戦略的かつ的確に対応していくかどうかが、今後、致命的な差となっていくのではないか。

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データ量の増加 処理性能の向上 AIの非連続的進化

センサーやソーシャルメディア等から次々と情報を取り込み、世界のデータ量は2年ごとに倍増。

132

EB

4400

EB

44000

EB

0

15000

30000

45000

2005 2013 2020

出所:IDC「The Digital Universe of Opportunities」より経産省作成

※EB(エクサバイト) = 1018B

EB PFLOPS

ハードウェアの性能は、ムーアの法則に沿って指数関数的に進化し、短時間での分析等が可能に。

※PFLOPS=演算速度の指標

出所:TOP500.org「TOP500 list」より経産省作成

ディープラーニングをベースとするAIの技術的発展により、AIで実現できることが非連続的に増加。

出所:東京大学・松尾准教授資料を基に経産省作成

これらの進歩が相まって、想像を超えるスピードで変革が起きる可能性

<世界のデータ量> < 先端のスパコンの演算速度><AIの技術的発展の見通し>

次元1(今後0~2年)

次元2(今後3~5年)

・ 画像・動画の認識・ 異常検知・将来予測

・ 試行行動を伴う異常検知・ 仮説生成・高度なシミュレーション

0

100

200

300

400

500

600

700

1990 2000 2010 2020

約680PFLOPS

33.86PFLOPS

現状

現状現状

将来予測は、18か月ごとに性能が倍になるものとして算出

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次元3(今後5~10年)・ 翻訳・ 言語による知識獲得

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1.AI・ビッグデータによる経済社会の変革

2.産業構造の変革

(1)構造的な競争環境の変化に対応できなかった我が国産業(2)製造業など現実世界の産業を飲み込むAI・ビッグデータによる変革(3)高付加価値部門を一気に失うリスクに晒されている我が国(4)産業構造の変革の本質を見極めるための視点

①「モノ」から「システム」への価値の移行②産業活動のプロセスのシステム化と企業を超えた移転可能性③データのバリューチェーンにおいて産業競争力の源泉がどこにあるか

3.就業構造の変革

4.我が国の課題と対応

5.終わりに

18

19

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2.(1) 構造的な競争環境の変化に対応できなかった我が国産業

○過去、半導体、液晶テレビ、携帯電話など、かつては競争力を誇った我が国産業は、今日、その競争力を失っている。

○これらが市場に広がるスピードは加速。その一方、当初は大きなシェアを占めていた我が国企業がそのシェアを失うスピードも速くなっている。

その本質的な要因は、技術革新、ビジネスモデルの革新等による構造的な競争環境の変化が起きる中、それを先取りし、あるいは、柔軟かつ迅速に対応できなかったことにあったのではないか。

20

出所: Harvard Business Review ” The Pace of Technology Adoption is Speeding Up”, by Rita McGrath“Seeing What’s Next” by Horace Dediu, ASYMCO

製品が市場に広がるスピードは加速傾向

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普及率

固定電話(73年間)

エアコン(53年間)

電子レンジ(27年間)

インターネット(20年間)

携帯電話(14年間)

10%→

90%に

到達する期間

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22出所: 小川紘一「プロダクト・イノベーションからビジネス・イノベーションへ」

日本企業の市場シェアが急速に低下する製品

<我が国産業が競争力を失った要因の例>

①ピラミッド型の価値創造モデル(系列企業間の高度なすり合わせによって価値創造を行う垂直統合モデル)から抜け出せず、プラットフォームと水平分業の新たなモデルを先取りできなかったこと

②大胆な再編・統合に踏み切れず、研究開発と設備投資の負担の巨大化とスピードの点でファウンドリーとファブレスについて行けなかったこと

③自前主義から抜け出せず、ベンチャー企業との連携などオープンイノベーションを進められなかったこと

④世界の新たな産業をリードしていくようなベンチャー企業群を次々と生み出すエコシステムを構築できていないこと

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2.(2) 製造業など現実世界の産業を飲み込むAI・ビッグデータによる変革

○欧米の企業の中には、AI・ビッグデータによる産業の組み替え等の大きな可能性を睨み、ネットの世界からリアルの世界に進出し、あるいは、リアルの世界からネットの世界に進出し、少しでも他よりも先行し、あるいは、少しでも他よりも魅力的な価値を提供する形で、新たな産業のプラットフォームを築こうとする様々な動きが見られる。

<ネットからリアルへの動き>

・ネットの世界を中心に活動してきたGoogleのリアルな世界のビジネス(自動走行、ロボット)への進出

・Amazonによる配送のための無人小型機の開発、生鮮食品配達サービスの展開

<リアルからネットへの動き>

・GEのpredix(機器・設備の高度な制御を行うためのクラウドコンピュータのアプリケーション)の展開

・シーメンスのものづくりのプラットフォーム構築の動き

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リアルの世界⇒ネットの世界 ネットの世界⇒リアルの世界

GEのpredix(機器・設備の高度な制御を行うためのクラウドコンピュータのアプリケーション)の展開

シーメンスのものづくりのプラットフォーム構築の動き

Googleは、ロボット分野など、ソフト関連以外の企業の買収を拡大。

Amazonによる配送のための無人小型機の開発、生鮮食品配達サービスの展開

GE

Siemens

Google

Amazon

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2.(3) 高付加価値部門を一気に失うリスクに晒されている我が国

○今日の我が国の産業構造は、主要先進国との比較においても、輸出額や付加価値等において、自動車産業、電気・電子機器産業等を始めとする特定のグローバル製造業に依存している。

仮に、これらの産業が、過去経験したように、事業環境の構造変化をリードし、あるいは、柔軟かつ迅速に対応することができず、欧米企業のプラットフォームの下で単に下請け的にモノづくりのみを行う産業となれば、我が国の産業構造は、急速に、かつ、将来にわたって、高付加価値部門を失うことになりかねないのではないか。

我が国として取るべき対応を見極めるためには、欧米企業に見られるプラットフォーム構築の動きによる産業構造の変化を含め、今後想定される変化をしっかりと見定め、分野・時間軸・手法などを十分に踏まえ、具体的な形で対応していくことが求められているのではないか。

26

27

日本は自動車や電気機械等の特定のグローバル製造業に依存

輸出額シェア(2014年) GDPの伸びの内訳

我が国は、輸出の3分の1超を自動車・電気機械が占める。

20.6%

8.4%

17.2%

15.1%

10.6%

9.7%

0%

10%

20%

30%

40%

日本 米国 ドイツ

自動車

電気機械

6.9%

43.2%

49.9%

0%

25%

50%

75%

100%

2000-2013

電気機械

輸送用機械

2000年から2013年の実質GDPの伸びの半分は自動車・電気機械によるもの。

その他

50%超

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2.(4) 産業構造の変革の本質を見極めるための視点

我が国産業に求められるのは、欧米企業に見られるプラットフォーム構築の動きに受け身で対応することではなく、AI・ビッグデータがもたらす産業構造の変革をリードしていくことではないか。

そのためには、まず、今後の産業構造の変革の本質を見定めることが必要ではないか。

28

今後の産業構造の変革の動きを具体的に見極めていくための視点としては、例えば、

①「モノ」から「システム」への価値の移行

②産業活動のプロセスのシステム化と企業を超えた移転可能性

③データのバリューチェーンにおける産業競争力の源泉の所在

を挙げることができるのではないか。

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2.(4)① 「モノ」から「システム」への価値の移行

○「モノ」は、多くの場合、それ自体に意味があるわけではなく、人間は、目的を果たすために「モノ」を「使う(操作する)」。

「使う(操作する)」という人間の行為を、AI・ビッグデータによってシステムが代替できるようになれば、人間はもはや「モノを使う(操作する)」ことなく目的が達成される。この結果、「モノの使いやすさ」などは価値を失い、また、「モノ」は人間にとって独立の価値評価の対象ではなくなり、目的を実現するシステムの中に埋没し、価値評価の対象はシステム全体となるのではないか。

この際、システム全体の中で、データ、モノ(ハードウェア)、ソフトウェア、ソフトウェアの生成・更新のアルゴリズムなどのいずれにおいて高い付加価値が生み出され、産業競争力の源泉となり得るかについては、分野や産業毎に異なると考えられるため、それを見極める必要があるのではないか(③参照)。

30

モノ

データ分析アルゴリズム(機械学習等)

ソフトウェア

人に価値を提供するシステム

モノはシステムの構成要素に過ぎず、人との関係で独立の価値を持たない。

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いずれで高い付加価値が生み出され、産業競争力の源泉となるか分野や産業ごとに異なるのではないか。

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<例1> 自動走行自動車

○自動車の「運転」という人間の行為を、AI・ビッグデータによってシステムが代替できるようになれば、「自動車」の「運転」を人間が担わない場合もありうる。

○この場合、車両(ハードウェア)単体では、独立した価値評価の対象ではなくなり、「快適・安全・安価な移動」を実現してくれるシステムが、全体として価値評価の対象となる。

○この際、自動走行システム全体の価値の中で、モノ単体としての車両は、どの程度のウェートを占めるか。

32

33

車載センサ

自動走行用OS

データ通信 データ解析

様々なサービス(保険、保守、エンタメ等)

「快適・安全・安価な移動」を実現するシステム 付加価値のシフト(イメージ)

車両

サービス

現在 自動走行車普及後

車両

サービス

付加価値

独立した価値評価の対象でなくなる

車両単体

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<例2> スマートハウス

○自らの快適な室温に「調節」という人間の行為を、AI・ビッグデータによってシステムが代替できるようになれば、人間が「エアコン」や「サーモスタット」を「調節」するという行為自体がなくなる場合もありうる。

○この場合、「エアコン」や「サーモスタット」単体は、独立した価値評価の対象ではなくなり、「快適空間」を実現してくれるシステムが、全体として価値評価の対象となる。

○この際、スマートハウスのシステム全体の価値の中で、モノ単体としての「エアコン」や「サーモスタット」は、どの程度のウェートを占めるか。

34

35

「快適空間」を実現するシステム

サーモスタット

データ通信 データ解析

様々なサービス(自動制御、宅配、高齢者見守り等)

HEMS

エアコン

付加価値のシフト(イメージ)

家電

サービス

現在 スマートハウス

家電

サービス

独立した価値評価の対象でなくなる

家電単体

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2.(4)② 産業活動のプロセスのシステム化と企業を超えた移転可能性

○産業活動のプロセス(例:生産スケジューリングや設備の保全管理等の工場オペレーション、品質保証・メンテナンス、マーケティング、在庫管理)は、需要予測、設備の稼働状況、部品の劣化状況、顧客の嗜好の変化等を分析・判断し、それに基づいて実行されている。

○AI・ビッグデータは、需要、設備の稼働、部品の劣化、顧客の嗜好の変化等について、法則、関係性等を解き明かすことで、産業活動のプロセスをシステム化する。

システム化されたプロセスは、工場・事業場や企業の枠を超えて活用することが可能となる。この結果、自らは工場・事業場を保有せず、システム化されたプロセスを工場や事業場に提供する企業・ビジネスモデルが登場する可能性があるのではないか。

この際、システム全体の中で、データ、ハードウェア、ソフトウェア、ソフトウェアの生成・更新のアルゴリズムなどのいずれが、いかなる形で競争力の源泉となり、高い付加価値を生み出し得るかについては、分野や産業毎に異なり、それを見極める必要があるのではないか(③参照)。

36

37

工場オペレーション

品質保証・メンテナンス

マーケティング・在庫管理

AI・ビ

グデータ

A産業 B産業 C産業

【各プロセスの変革が産業全体に影響を及ぼす(イメージ)】

工場オペレーション

品質保証・メンテナンス

マーケティング・在庫管理

工場オペレーション

品質保証・メンテナンス

マーケティング・在庫管理

【生産活動プロセスのシステム化】①システム化されたプロセスは、工場・事業場や企業の枠を超えて活用することが可能に

【企業を超えた移転可能性】②システム化されたプロセスを、企業や産業を超えて提供する企業・ビジネスモデルが登場する可能性

AI・ビ

グデータが需要・設備の稼働・部品の劣化・顧客の嗜好の変化等

の法則・関係性を解き明かす

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<例1> 工場オペレーション

・従来は、ノウハウとして蓄積されてきた工場設備の操作、保安等の工場オペレーションが、AIと操業データ(例:歩留まり、設備の不具合い状況)によってシステム化される。

・工場オペレーションのシステムは、工場内で利用されるにとどまらず、工場、企業を超えて利用され、利用される中で更に学習し、性能を向上させていく。

・日本の製造業が、工場の「現場力」を自らシステム化し、海外展開などに活用し、今後の競争力の源泉とすることができる可能性がある一方、これまで工場オペレーションを担ってこなかった事業者が工場における情報収集、分析、システム化によって、工場オペレーションのプラットフォームを構築する可能性もある。

・この際、工場のオペレーションについて、ノウハウの保有、工場設備の保有、操業データの管理、オペレーションのソフトウェア、ソフトウェアを生成・更新するアルゴリズム等のいずれが産業競争力の源泉となるか。モノ作りの効率性のみを追求する工場の操業を行う製造業は、高い付加価値を得ることができるか。

38

39

工場オペレーション

品質保証・メンテナンス

マーケティング・在庫管理

工場オペレーション

品質保証・メンテナンス

マーケティング・在庫管理

産業A(企業a1)

工場オペレーション

品質保証・メンテナンス

マーケティング・在庫管理

産業B(企業b)

産業A(企業a2)

ノウハウ

モノ作りの効率性のみを追求する工場の操業を行う製造業は、高い付加価値を得ることができるか?

AIと操業データ(例:歩留まり、

設備の不具合状況)

保安設備操作

工場オペレーションのシステム化

企業、産業を超えて利用され、システムの性能が向上

複数企業の工場オペレーションを

担う事業者が登場

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<例2> マーケティング・在庫管理

・従来は人的に蓄積されてきたノウハウに依存してきた面が強かった発注・出荷、在庫管理が、AIと顧客情報、販売実績情報等によってシステム化される。

・ 適タイミングで発注・出荷、 適量の在庫管理を行うシステムは、企業の枠を超えて利用され、利用される中で更に学習し、性能を向上させていく。

・また、在庫の減少は、企業のキャッシュフローの増加、利益率の向上をもたらし、マクロ経済面でも、安定をもたらす可能性がある。

・この際、発注・出荷・在庫管理システムについて、顧客情報等のデータ、発注・出荷・在庫管理のソフトウェア、ソフトウェアの生成・更新アルゴリズム等のいずれが産業競争力の源泉となるか。モノ作りの効率性のみを追求する工場の操業を行う製造業は、高い付加価値を得ることができるか。

40

41

分析サービス事業者

A産業 B産業

工場オペレーション

品質保証・メンテナンス

マーケティング・在庫管理

品質保証・メンテナンス

マーケティング・在庫管理

複数企業の分析サービスを提供する

事業者が登場

ノウハウ

AIと顧客情報、販売実績情報等

モノ作りの効率性のみを追求する工場の操業を行う製造業は、高い付加価値を得ることができるか?

マーケティング・在庫管理のシステム化

設備操作

発注 出荷 在庫管理

マーケティング・在庫管理のシステム化

企業、産業を超えて利用され、システムの性能が向上

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0

2

4

6

8

10

1999

2000

2001

2002

2003

2004

2005

2006

2007

2008

2009

2010

2011

2012

2013

(%)

在庫水準の低い企業

在庫水準の高い企業

収益のボラティリティが小さい(特に不況時の下振れリスク小)

0.6

0.7

0.8

0.9

1

1.1

1.2

1.3

1.4

1999

2000

2001

2002

2003

2004

2005

2006

2007

2008

2009

2010

2011

2012

2013

(回)

在庫水準の低い企業

在庫水準の高い企業

資産効率が良い

0

1

2

3

4

5

6

7

8

9

10

1999

2000

2001

2002

2003

2004

2005

2006

2007

2008

2009

2010

2011

2012

2013

(%)安定して高い収益効率

在庫水準の低い企業

在庫水準の高い企業

×=<収益効率性(ROA)> <総資産回転率> <売上高利益率(ROS)>

出所:日経NEEDSより経産省作成(東証1部上場企業(金融等除く))

在庫水準を低下させることは、効率的に収益を稼ぐ力の向上と、安定した収益基盤の構築に寄与

在庫の多寡による企業財務指標の比較

(注) 在庫水準の高い/低い企業 : 在庫回転日数が業界平均より長い/短い企業 42

在庫

売掛金 買入債務

運転資金

投資に回せば、年間約18%増に相当

<日米企業の在庫率比較(2014年)>

出所:【左】S&P1200対象企業の公開データ【右】法人企業統計(財務省)、平成26年科学技術研究調査結果(総務省)、国民経済計算(四半期別GDP速報)(内閣府)、貸出約定平均金利の推移(日本銀行)

0%

5%

10%

15%

20%

25%

在庫率

棚卸資産/売上高

日本企業

米国企業

<在庫水準の適正化のポテンシャル>

約15兆円

(足下、研究費12兆6920億円、設備投資68兆7487億円、計81兆4407億円)

削減

日本企業の在庫保有が米国並みになれば、

手元資金に約15兆円の余裕が生まれる。

①キャッシュフローの創出

②資金調達コストの改善借入を返済すれば、年間約1,780億円の金利負担を軽減

③在庫保有コスト等の削減

倉庫保管料、配送コスト等の物流コスト削減返品リスク・在庫陳腐化リスクの低減 等

(S&P1200対象の137社の合計)

43

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メーカー

卸売

小売

<ロスのイメージ>

納品 納品

返品 返品

廃棄廃棄物流 物流

出所:2013年度物流コスト調査報告書、流通情報No.506・製配販連携の現状と展望~返品削減・食品ロス削減の取組みを中心に(加藤弘貴)

取引の0.33%(加工食品)

取引の2.03%(日用雑貨)

取引の0.78%(加工食品)

取引の3.01%(日用雑貨)

返品の21%(加工食品)返品の74%(加工食品)返品等に係る物流コストは

物流コスト全体の

2.67%

不要な在庫を発生させないことで、

利益率が約1.6%向上する可能性も。※日本企業の返品率が2%、そのうち廃棄されるものが75%と仮定した場合。

44

<在庫調整による景気変動> <生産と雇用・所得の連動>

需要の変動以上に生産が変動(生産のボラティリティは需要の1.67倍)

○ 需要見通し・増 → 出荷・増+在庫・増 ⇒ 需要以上の生産増○ 需要見通し・減 → 出荷・減+在庫・減 ⇒ 需要以上の生産減

-40%

-30%

-20%

-10%

0%

10%

20%

30%

1979 1982 1985 1988 1991 1994 1997 2000 2003 2006 2009 2012

終需要

鉱工業生産

前年比

-20%

-15%

-10%

-5%

0%

5%

10%

15%

-40%

-30%

-20%

-10%

0%

10%

20%

30%

1991 1994 1997 2000 2003 2006 2009 2012

鉱工業生産(左軸)

所定外給与(右軸)

-80%

-60%

-40%

-20%

0%

20%

40%

60%

-40%

-30%

-20%

-10%

0%

10%

20%

30%

1991 1994 1997 2000 2003 2006 2009 2012

有効求人倍率(右軸)

鉱工業生産(左軸)

生産が安定すれば、雇用や給与も安定

出所:国民経済計算(内閣府)、鉱工業指数(経済産業省)、一般職業紹介状況、毎月勤労統計調査(厚生労働省)

前年比 前年比

前年比 前年比

45

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○データ(非構造化データを含む)、データベース(構造化データ)、分析アルゴリズム(機械学習等)、アプリケーションのいずれが、産業競争力の源泉となるかについては、産業によっても異なると考えられ、現時点では、様々な見方がある。

<様々な見方>・データこそが価値を生む源泉。これを囲い込むことが優先。・データにはノイズが多い。質の高いデータベースに前処理することが正確な分析に不可欠。・競争力の高いアルゴリズムがあればデータはどころからでも入手可能。・顧客価値を提供するアイディアがあればデータやアルゴリズムは調達可能。

○業種、製品、サービス毎に、データのバリューチェーン(データ、データベース、分析アルゴリズム、アプリケーション)の各セクターにおいて世界の先進的取組はどのような状況にあり、我が国は現時点においてどのようなポジションにあるのか(彼我の差)、如何にして差別化を図っていくことが可能か。

データのバリューチェーンのいずれのセクターがいかなる形で産業競争力の源泉となり、その結果、その総体としての産業構造がどう変化していくかを分析・検討する必要があるのではないか。

2.(4)③ データのバリューチェーンにおいて産業競争力の源泉がどこにあるか

46

データ基点のバリューチェーンにおいて、競争力の源泉がどこにあるかについては、様々な見方が存在。

データ(非構造化データ含む)

データベース(構造化データ)

分析アルゴリズム(機械学習等)

アプリケーション

競争力の高いアルゴリズムがあればデータはどころからでも入手可能。

顧客価値を提供するアイディアがあればデータやアルゴリズムは調達可能。

データこそが価値を生む源泉。これを囲い込むことが優先。

データにはノイズが多い。質の高いデータベースに前処理することが正確な分析に不可欠。

47

・いずれが、いかなる形で産業競争力の源泉となるか。・産業構造は、どう変化していくか。

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1.AI・ビッグデータによる経済社会の変革

2.産業構造の変革

3.就業構造の変革

(1)労働力人口の減少(2)AI・ビッグデータ等による雇用への影響

①量的影響②質的影響

4.我が国の課題と対応

5.終わりに

48

49

Page 26: ビッグデータ・人工知能がもたらす 経済社会の変革 · 人口減少・少子高齢化 に伴う労働力の減少 人手不足の産業分野 におけるAI・機械導入の進展

50

3. 就業構造の変革

○ 少子高齢化に伴う労働力人口の減少は、経済成長にとって 大のマイナス要因の一つ(出生率が大きく回復したとしても、ここ20-30年この傾向は変わらない) 。

○ このため、女性・高齢者等の全員参加が必要となってくるのはもちろんのこと、外国人労働者のさらなる活用が必要ではないかとの議論もある。

他方で、AI・ビッグデータが雇用を代替し、社会全体で人材が余ってしまうのではないかという議論がある。介護や運輸など特に将来的な人手不足が見込まれる分野を含め、これまで技術導入が

難しかったサービス業等の非定型的業務にも早いスピードで浸透していけば、構造的な人手不足が解消する可能性もあるのではないか。

また、AI・ビッグデータは、いつでもどこでも仕事を効率的に行うことを可能とするものであり、個人と組織の関係も含め、働き方や生活スタイルが大きく変わっていく中で、雇用管理・情報管理などのあり方を大きく変化させていくべきではないか。

AI・ビッグデータの導入度合いとそのスピードは産業ごとに異なり、また創造的な仕事が新たに創出されてくるため、今後、産業別に分析して時間軸をもって就業構造を見通していくことが必要ではないか。

51

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(出所)平成26年5月「選択する未来」委員会 未来への選択<参考図表編> 52

3.(1) 労働力人口の減少

○ 労働投入の寄与度は、出生率が回復し、かつ女性・高齢者の労働参加が図られ、高齢者の労働時間が増えた場合でも、マイナス傾向が続く見込み。

○ 産業別にみても、雇用のミスマッチは深刻な状況。例えば、介護分野は、2025年度に人材が30万人程度不足することが見込まれている。その他、物流分野・農業分野等においても、需要の伸びや就業者の高齢化とも相まって、深刻な人手不足が継続していく見込み。

介護人材確保に向けた総合方策

53

(出所)平成27年2月23日 第4回社会保障審議会福祉部会 福祉人材確保専門委員会介護人材にかかる需給推計検証ワーキングチーム資料

(出所)平成26年9月16日経済財政諮問会議 「経済の好循環の拡大に向けて」有識者議員提出資料

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54

3.(2) AI・ビッグデータ等による雇用への影響①量的影響

○これまで、従来型のITとロボットは、グローバル化とも相まって、会計事務や生産工程といった定型的業務を中心に代替してきたが、IT化しづらい非定型な業務の雇用全般は拡大してきたところ。

○AI・ビッグデータ及びそれとロボットを組み合わせたシステムは、定型的業務にとどまらず、さらに幅広い職種に対して影響の拡大が見込まれる。

55

Autorモデルに基づく「5業務分類」と、技術導入による雇用への影響

Routine Non-Routine

Analytic and interactive

Manual

定型認識(例:一般事務、会計事務)

定型手仕事(例:生産工程従事者)

非定型相互(例:コンサルティング、

営業等)

非定型分析(例:研究、調達、設計)

非定型手仕事(例:サービス等)

池永(2009)、Autor et al(2003) に基づいて経済産業省作成

(これまで)従来型のICT・製造ロボットによる効率化

(今後)AIビッグデータサービスロボット

技術導入による雇用代替は、定型業務から非定型業務へ

詳細は60ページへ

次ページへ

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今後、将来的な人手不足が見込まれる分野を含めたサービス業等において、これまで技術導入が難しかった非定型的業務にも早いスピードでAI等が浸透していけば、構造的な人手不足が解消する可能性もあるのではないか。

<人手不足解消の先進的取組>

●介護サービス介護者が通常2人がかりで行う移乗作業を1人で行えるベッド型介護ロボットが昨年発売。また、見守りシステムの開発も進められている。

●流通・物流画像認識システムとロボットを組み合わせたシステムにより、数百人規模の必要人員を半減させる物流センターが昨年から本格稼働。自動走行の研究開発事業ではトラック4台の隊列走行を2012年に成功。

●対人サービス接客や清掃等を行うロボットや、カギ代わりに顔認証システムを用いることで、人件費を7割削減することを目指すホテルが本年7月開業予定。

●保安警備体制管理システムの高度化により、カバーエリア当たりの警備体制が2倍以上に。

56

3.(2) AI・ビッグデータ等による雇用への影響①量的影響

(資料) 厚生労働省「一般職業紹介状況」(2014年)

※ 一般職業紹介状況の中分類によるが、中分類がないものは大分類を使用。

求職者数上位20位の職業(ただし有効求人倍率の1倍以下の企業を除く)

0 50 100 150 200

介護サービスの職業

商品販売の職業

飲食物調理の職業

接客・給仕の職業

保健師助産師看護師

自動車運転の職業

営業の職業

社会福祉の専門的職業(福祉施設指

導専門員、保育士)

製品製造・加工処理の職業

(金属除く)

清掃の職業

(万人)

有効求人数(上軸)

有効求職者数(上軸)

有効求人倍率(下軸)

(倍)

H26

H25

2.22

1.38

1.95

2.61

2.63

1.90

1.05

1.64

1.16

1.19

57

0 50 100 150 200

保安の職業

建築・土木・測量技術者

情報処理・通信技術者

金属材料製造、金属加工、金属

溶接・溶断の職業

生活衛生サービスの職業

土木の職業

医療技術者

建設の職業

機械整備・修理の職業

保健医療サービスの職業

(万人)

(倍)

H26

H25

4.67

3.69

1.88

2.84

建設・土木関係は、復興や五輪対応等の一時的な要因による影響が大きい。

は、次ページ以降で事例の説明があるもの。

全職種の有効求人倍率

下軸

0.

97

限る常用

2.71

2.66

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58

既に人手不足が顕在化している産業の課題解消に向けた先進事例①【介護・流通】

介護分野の例 物流分野の例

パナソニック「リショーネ」 介護者の負担の大きい移乗作業が1人でも行え

るようになり、工数削減に効果。 施設における介護士の身体的負担を軽減する

だけでなく、一人でできる作業が増えることで人手不足に効果がある可能性。

東邦薬品 物流センター 少子化対策を見据えてロボットと画像認識を組み合

わせたシステムを導入。 人手作業の工程を58%削減(12工程から5工程

へ)、人員を130名に半減。 一人あたり生産性は

77%向上。 結果として、高齢者にも

対応できる雇用を創出。

隊列走行 幹線輸送に大型トラックの自動隊列走行を活用する

ことで、隊列の先頭ドライバー1人で多くの貨物輸送が可能に。

NEDOの研究開発事業では、テストコースにおけるトラック4台の隊列走行を実現。

← 見守りシステムの導入も効果。

59

対人サービス分野の例 警備分野の例

HISの「変なホテル」における省人化ロボット投資

ALSOK 警備ロボットの導入により、夜間警備の効率化や

サービス機能の向上を図る。 ITやビックデータの活用により、

地域単位での警備人員配置を 適化。同時に、指令センターの数も全国で40か所から13か所に集約。

既に人手不足が顕在化している産業の課題解消に向けた先進事例②【接客・保安】

ハウステンボス「変なホテル」(今年7月OPEN予定) フロント係・ロッカー係・ポーター・(一部の)清掃員を

ロボットで代替。同規模のビジネスホテルと比べ、人件費を7割程度削減することが可能となる見込み(10名程度で144部屋を運営)。

自動顔認証システムを導入しルームキーをなくす等、可能な限り自動化を進めて生産性を向上。

ハウステンボスに建設中のホテルを0号店と位置付け、サービス水準等を実証した上で、今後国内外に展開予定。LCCに続く、LCH(low cost hotel)の普及を目指す。

← 「変なホテル」で受付に導入予定のAldebaranRoboticsの人型ロボット「NAO」。三菱東京UFJ銀行でも、店舗にて接客用に導入を検討中(今年春から店舗で試用を開始)。

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60

3.(2) AI・ビッグデータ等による雇用への影響②質的影響

I. 仕事の内容への影響

前述の産業構造転換が進み、労働集約的業務がAI等により代替される中で、人間の仕事は、ヒューマンインタラクションが必要なものと、より創造的なものにシフトしていくことが見込まれるのではないか。

既存産業においては、例えば

・ 生産工程での単純作業が減少し、開発工程や生産システムのメンテナンス・調整などの複雑な業務が増加、

・ マーケティングがビッグデータを活用したより高度なものに、

といったように仕事の質が変容していき、また、人々の感性に応えて新たな価値を提供するといった市場創造型の新規産業が創出されていくのではないか。

61

3.(2) AI・ビッグデータ等による雇用への影響②質的影響

Ⅱ. 働き方への影響

時間と場所の制約を受けない働き方や生活スタイルが可能となるのはもちろんのこと、組織と個人の関係までも変化していくのではないか。

これまでは使用者と労働者が雇用契約という形で半ば主・従の関係を構築し、時間に基づいて勤怠管理され、毎月一定報酬を授受することが基本前提であった。他方で、世界ではクラウドソーシングによって「個」による国境を越えた取引

が、米国では「スーパーテンプ」と呼ばれる高度人材による個人主体の働き方が、台頭してきている。今後は、AI等が個人の能力発揮を 大化する結果、個人がその知恵と行

動力により、使用者と対等の関係で案件に応じて取引し、成果に基づき評価し合うような動きも大きくなっていくのではないか。

こうした環境変化の中で、より多くの人間が「個」の能力発揮により創造性・生産性の高い仕事に対応できるよう、雇用制度・慣行や教育を、変革していくことが必要ではないか。

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1.AI・ビッグデータによる経済社会の変革

2.産業構造の変革

3.就業構造の変革

4.我が国の課題と対応

(1)データの円滑な利用(2)サイバーセキュリティの強化(3)研究開発(4)人材

①雇用・労働②人材育成

a)企業内IT人材育成b)教育

(5)制度的環境①個別分野におけるAI・ビッグデータの利用・更なる進化の促進

a)自動運転b)製品安全c)産業保安d)サービス業規制

②デジタルプラットフォームに対応した競争政策

5.終わりに62

63

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4.(1) データの円滑な利用

64

○我が国には、a)皆保険制度の下で所得等に偏りのない構造化された医療データ、b)データ送信頻度の高いスマートメーターの本格的普及による電力使用データといった利用価値の高いデータが存在し、また、c)ブロードバントの普及率も高く、データの転送のためのインフラも整備されている。

○また、本年10月に個人番号の通知が開始されるマイナンバー制度は、複数の行政機関に点在する個人の情報の照合を可能とする。効率的な情報の管理・利用を実現するための社会基盤であり、こうした基盤が整備されることも、我が国の強みの一つと考えられる。

個人情報を適切に保護する一方で、データを有効に活用するための新たなルール整備を検討することが必要ではないか。

○日本は、皆保険制度によって構造化された医療データの構築・利用に向けて大きな潜在力があるのではないか。

• 皆保険であるため、所得等に偏らない医療データの収集が可能• 公的制度であるため、各機関が持つ医療データを提供してもらう際に、政府の方針が反

映しやすい。

①医療データ

○日本が普及させようとしているスマートメーターは、電力会社への提供ルート(Aルート)では、データが1時間以内に提供される設計で構築が進められているため、諸外国に比べより多様なエネルギーマネジメントサービスの提供が可能。(※)需要家への直接提供ルート(Bルート)を用いればHEMS等を通じてデータを即時に入手するこ

とが可能。

(参考)諸外国のスマートメーターのデータ提供

②電力使用データ

日本 1時間以内

英国、ドイツ 1日後

テキサス州 2日後

スウェーデン 遅くとも5営業日以内

65(出典)電力システム改革の詳細制度設計に関係する諸外国の実態調査(PwC)

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66

我が国のインターネット普及率は世界でも上位であり、且つ高速ブロードバンドの普及率では世界トップクラス

出所:Akamai Technologies「インターネットの現状(2012年第1四半期版)」

ブロードバンド普及率上位10国

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

(10Mbps以上の通信速度がある高速回線)

50

60

70

80

90

100

1.韓

10.英

11.ドイツ

13.日

18.フ

ランス

36.米

43.イ

タリア

44.ロ

シア

インターネット普及率(世帯ベース)

出所:ITU HP

<データの有効活用のための新たなルール整備に向けた検討事項の例>

a)いわゆる「データの所有権」の在り方

・データ取得における観測・測定対象(例:人の行動情報であればその人、工場の操業データであればその工場の操業者)が取得されたデータの管理や利用等についていかなる権利を持つか等の在り方

b)機械学習がもたらす性能向上の価値の帰属の在り方

・データと機械学習によってアプリケーションや製品が性能を向上させた場合における増加した価値の帰属の在り方(例:データの提供に協力した者、機械学習を用いて性能を向上させた者、性能が向上した製品の所有者等のいずれに価値の増加分が帰属するか)

67

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4.(2) サイバーセキュリティの強化

○ サイバー攻撃は近年増加傾向にあり、顧客情報の漏洩、工場オペーレションの停止、公開前映画情報の流出など短期間に多くの事件が起きている。また、 被害企業のCEOが事件の引責辞任するなど企業経営を脅かす明確な脅威となってきている。

○ 加えて、単に自社が攻撃されるだけでなく、自らのサーバーが踏み台にされる事例も見られることから、知らず知らずのうちに自分がサイバー攻撃に加担し、責任を取る立場になることも起こりうる。

○ 米国政府は、2015年4月に「悪意のあるサイバー犯罪者」に対抗するための大統領令を発表。米国企業や政府機関のネットワークを脅かすサイバー犯罪者に制裁を科すことができることとした。また、2015年1月に開催されたダボス会議でもサイバーセキュリティ対策は も注目されたトピックとなっている。

○ さらに、プラント輸出等を図る上でも、サイバーセキュリティに十分対応しているシステムであることが、今後、競争力の源泉となってくるのではないか。

こうした状況を踏まえ、我が国としても、サイバー攻撃に関する官民や業種の垣根を越えた情報共有の仕組みの構築、サイバー保険の活用、対策指針の策定などサイバーセキュリティの抜本的な強化が必要ではないか。

68

69

①顧客情報漏洩: 米小売Target 社 ②工場オペの停止: 独鉄鋼会社 ③公表前情報流出: Sony Pictures社

【2013年11月】ハッキングにより、米国5位の大手小売り企業

から1億1,000万人超の顧客のクレジットカードデータが流出。情報開示等の事後対応も後手に回り、35年間務めたCEOが解任される事態に

【2014年11月】社内システムへの不正アクセスにより、幹部

間の電子メールやりとり、公開予定映画5作品のほか大量の個人情報が外部へ流出。数日間業務が停止するとともに、決算も確定できず、被害規模は1億ドルを超すとも報じられた。

【2013年12月】

外部からのサイバー攻撃により、工場内オフィスからプラント制御システムまで侵入され、終的に溶鉱炉の切断システムが無効化さ

れ、プラントに大規模な被害が発生

サイバー攻撃による被害実例

経済界のサイバー攻撃に対する意識

0%

20%

40%

60%

80%

前回 今回

サイバーの脅威を懸念事項に挙げたCEOの割合は増加

プライスウォーターハウス(PwC)「第18回世界CEO意識調査」(2015年1月ダボス会議にて発表)

世界経済フォーラム発表のレポートでは、5大グローバルリスクの一つとして「サイバー攻撃」を明示

(世界経済フォーラム(WEF) 「The Global Risks 2015」)

① 国家間紛争

② 水危機

④ 失業・不完全雇用

③ 気候変動

⑤ サイバー攻撃

横軸:発生可能性

縦軸:影響度

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4.(3) 研究開発

○AI等の分野の研究は低調であり、国の科学技術プロジェクトにおけるAI等のテーマの扱いも少ないのが現状。

AI・ビッグデータに関する技術は、実際に利用されることで更なる進化を遂げる。我が国を、国内外のトップレベルの研究者や、積極的な研究開発投資を行う企業が集い、AI・ビッグデータの 先端の利用の試みがなされる場としていくため、機動的な規制の特例等が認められることが必要ではないか。

また、AI・ビッグデータの技術には、それを研究開発に用いることにより、分野横断的にその効率を上げる効果があり、その活用の有無が致命的な差となるケースも考えられる。AI・ビッグデータ技術の経済社会における利用のみならず、研究開発の基盤的技術としても意義もある。国の科学技術プロジェクトとして重点的に取り組んでいくことが必要ではないか。

70

0

100

200

300

400

500

600

700

800

2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012

研究者所属機関国籍別 論文件数推移及び論文件数比率(国際会議発表、2000年~2012年)

(出典)平成25年度特許出願技術動向調査報告書(ビッグデータ分析技術)※注目論文とは、被引用件数の多い論文及び有識者から推薦のあった論文を総合的に勘案し、ビッグデータ分析で影響

力の大きいと認められる論文を選定したもの

全体の論文件数約2.8倍

論文件数

注目論文22件のうち、日本国籍のものは0件であり、過半数の13件が、米国企業から発表されたもの。(グーグル(5件)、IBM(3件)、ヤフー(2件)、フェイスブック(2件)、アマゾン(1件))

日本は件数少なく、増加傾向も見られない

米国籍

中国籍

日本国籍その他

71

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• 日本の大型の科学技術プロジェクトの中で人工知能等を扱うテーマは、以下のように、限定的。

• 全10テーマ中、1テーマ(25.35億円)の一部• 「自動走行システム」(渡邉浩之 トヨタ自動車顧問)

• 全30テーマ中、1テーマ(39.5億円)• 「超巨大データベース時代に向けた 高速データベースエンジンの開発と当該エンジンを

核とする戦略的社会サービスの実証・評価」(喜連川教授)

• 全12テーマ中、2テーマ• 「量子人工脳を量子ネットワークでつなぐ高度知識社会基盤の実現」(山本喜久教授)• 「脳情報の可視化と制御による活力溢れる生活の実現(意識しただけで制御可能な機器開

発や多言語入力などものづくりやサービス革新の基盤構築)」(山川義徳 (株)NTTデータ経営研究所代表取締役)

1. 先端研究開発支援プログラム(FIRST)平成21年度補正:1000億円

2.革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)平成25年補正:550億円

3.戦略的イノベーションプログラム(SIP)平成26年度:500億円

72

• インシリコ創薬(コンピュータを活用した創薬)

– 候補化合物の構造や作用の情報、疾患部位や病原体の情報などを元に、シミュレーションを行い、候補化合物の絞り込みや開発期間の短縮(3~3.5年が2.5年に)が可能。

• 自動車開発

– パワートレイン開発(エンジン等の設計・開発)

– 空気力学設計(車体形状の設計)

– 衝突安全性試験[従来コスト・時間が大幅に低減]

1.シミュレーションによる実証の効率化

2.人工知能が導き出す仮説

• AI・ビッグデータを活用することで、技術開発のアプローチも大きく変化していくことが見込まれる。

(例)

• 人工知能が18万件の論文を読み込み、抗がん剤の候補物質のリストを提示。これは専門家が10年かかって作業した結果とほぼ同じ。

• 350万件の論文から、偏頭痛の発生にはセロトニンの分泌レベルが関係しているということを提示

73

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産業技術総合研究所人工知能研究センターの設立

フィードバック

脳型人工知能 データ・知識融合型人工知能 その他

起業技術の売却 等

ベンチャー企業大企業

技術の売却 等

大学、研究機関等に散らばる様々な研究者・技術

好循環大規模

目的基礎研究

応用領域

自然言語処理テキスト

マイニング音声認識推薦・予測適化 画像認識

ネットワーク/ウェブサービス

ロボット、製造、自動運転 官庁、公共部門専門サービス 流通、設計

実用化、社会・ビジネスへの適用

○ 海外では、Google、IBMなどが、様々な要素技術を組み合わせ、これまでにない性能の人工知能を開発し、事業化。このような研究開発に、優れた基礎研究者が世界中から集められ、参画。その結果完成した人工知能は実世界で使われ、豊富な知見が蓄積し、実世界から基礎研究へのフィードバックといった好循環が生まれている。

○ 一方、日本では、研究者が個別に基礎研究を行っており、優れた研究も多いが、これらを統合的して革新的な人工知能を開発する動きは少ない。この結果、日本の研究者は実用化されない基礎研究を続けるか、海外企業に就職するかといった事態に陥っており、海外で見られるような好循環が日本では見られない。

○ 国内外の多様な人工知能研究のトップ・新進気鋭の研究者や優れた技術を集結し、先進的な人工知能の開発・実用化と基礎研究の進展の好循環を生むプラットフォームを形成。

75

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4.(4) 人材 ① 雇用・労働

AI・ビッグデータ等により、働き方や雇用の在り方が大きく変化する可能性がある。工場での労働管理を出発点として改善・発展してきたこれまでの雇用・労働制度は、知的労働のマネジメントにはますます適合しなくなってくるのではないか。

例えば、日本では導入が遅れている、時間と場所にとらわれない成果重視の働き方はより一層重要となり、また、必ずしも直接雇用ではない形態で個人と企業が繋がるような動きも大きくなっていくのではないか。

さらに、求人・求職のマッチングについても、ビッグデータの活用によってより高度になっていくことが期待され、クラウドソーシング等の一層の普及も見込まれる。

こうした働き方や雇用仲介の変化によりマッチした法制度を整備し、企業の雇用管理や情報管理の在り方を大きく変えていくべきではないか。

翻訳機能の向上により、言語の壁の撤廃が実現していけば、優秀なスキル・経験を持つ外国人材の採用・登用が拡大する。日本語能力を意識した制度も、一定の資格知識・技能のみが尺度となるよう

変更していく必要があるのではないか。

76

(出所)2012年7月18日 RIETI BBLセミナー資料『国際比較の視点から日本のワーク・ライフ・バランスを考える』 (2012年ミネルヴァ書房)

柔軟な労働時間制度の普及状況 企業のワーク・ライフ・バランス支援制度導入割合

• 日本はフレックスタイム制度や、とりわけ在宅勤務制度の導入率が低い。

企画業務型裁量労働制

適用労働者の割合0.2%※

【対象】

事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析の業務に常態として従事する場合

【効果】

特別に設置した労使委員会で決議した時間を労働したものとみなす。

通常の労働時間制

【一般的な働き方】

・1日8時間、週40時間(法定労働時間)・36協定により法定労動時間を超えることができる。(割増賃金の支払いは必要)

フレックスタイム制

適用労働者の割合8.3%※

【対象】

労使協定で定めた総労働時間の範囲内で、始業・終業時刻を労働者にゆだねる場合。対象業務や対象労働者に関する制限はない。

【効果】

労使協定を締結することで、始業・終業時刻を労働者の自由にできる。

専門業務型裁量労働制

適用労働者の割合1.0%※

【対象】

専門性が高い業務に従事する労働者(例:新商品や新技術の研究開発、情報処理システムの設計、コピーライター、新聞記者等)

【効果】

労使協定で定めた時間を労働したものとみなす。

※ 「適用労働者」の割合の出所:平成26年就労条件総合調査(厚生労働省) 77

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4.(4)② 人材育成

AI・ビッグデータによる産業構造の転換に対応するためには、これを支える人材の育成がより重要になるのではないか。

足下で急務となっているAI等の開発・導入を担う企業内IT人材の育成とともに、AI等を使いこなし、変化に対応してチャレンジし続けられる人材を広く育てるための教育改革が必要不可欠ではないか。

AI時代においては、こうした人材育成を広く実施していくことこそが、格差の固定化を抑制する意味でも重要ではないか。

78

各国のIT技術者数

(出所)産業構造審議会 商務流通情報分科会 情報経済小委員会 中間とりまとめ

我が国のIT人材は、特にユーザー企業において、質・量ともに不足

日米のIT技術者分布状況

a)企業内IT人材育成まずは、我が国産業界で特に質・量ともに不足するユーザー企業におけるIT人材の確保・育成とともに、ITベンチャー起業家・ホワイトハッカー・データサイエンティストといった既成概念を超えた人材の育成が必要ではないか。

ⅰ. IT人材育成を質・量ともに大幅に充実-ビジネスに活かせるIT研修の充実-高度なセキュリティを含め、AI時代に対応したITスキルの見える化

ⅱ. インドやベトナム等の高度なITスキルを有する外国人材の獲得-現地のIT関連高等教育機関からの採用推進-高度外国人材を始めとする多様な人材の採用・登用に資するダイバーシティ経営の推進

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b)教育全ての人がAI等を使いこなし、変化に対応してチャレンジし続けられる人材となりうるよう、教育改革を加速すべきではないか。

i. AI等の高度IT技術と協働していくためには、文系・理系に分け隔て無く、早期からITを教育に取り入れていくことが重要。しかしながら、学校のICT環境は不十分な状況。インフラ整備を加速して時間と場所の制約を受けない教育環境を構築し、

国境を越えて世界水準の授業をオンライン配信するMOOCsも活用しながら、個々の能力に応じたカスタマイズ教材を用いて、以下のような取組を進めていくべきではないか。

-早期からのプログラミング教育や、人文科目も含めて全ての科目において「データ解析」の取り入れ

-既存の考え方を超えた発想力を育むための「文理」の区分の相対化

-試行錯誤を通じて学ぶアクティブラーニングの抜本的強化

80

アクティブ・ラーニングとは

MOOC(Massive Open Online Course)とは

• 世界の有名大学による講義がインターネット上で公開され、無料で受講可能。小テストや課題提出があり、修了認定証等を得られる講座もある。

• 1講座あたり数千~数万人と受講者が多いため、相互採点や掲示板機能を利用した受講者同士の学びを重視。

• 国内教育制度が未整備の途上国の方が、制約なくMOOCsの恩恵を得て、世界 高水準の教育を受けている可能性も。

○設立:平成25年11月○提供科目数: 36講座○参加大学数: 38大学○登録者数:約10万人(平成27年1月時点)

海外の主なMOOC機関

日本ではまだ普及が進んでいない

日本版

• 一方向的な講義形式の教育ではない、能動的な学習法。

• グループ・ワーク等により、発見、問題解決、体験、調査等を通じて学習する。

出典:文部科学省「平成25年度学校における教育の情報化の実態等に関する調査」(平成26年3月時点)

学校におけるICT環境の整備状況

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b)教育

ii. 知識の収集がより容易になっていく中で、「チャレンジ精神」を持ち続けることは、より一層重要になるのではないか。しかしながら、起業家精神を持つ人材は少なく、画一的・均一的な教育が中

心となっており、大学等における社会人学生の数は国際的に見て少ない状況。こうした中で、以下のような取組を加速化していくべきではないか。

-起業家教育の強化

-突出した才能を持つ天才の発掘・成長を支える仕組みの強化

-社会人の学び直しニーズにも合致した高等教育機関・職業訓練の整備

82

83

25歳以上の学士課程への入学者の割合(国際比較)

日本は約2%と極めて少ない

出典:OECD Stat Extracts (2010)。ただし、日本の数値については、「学校基本調査」及び文部科学省調べによる社会人入学生数

日本では起業家精神が低調(主要先進国における起業活動指数の国際比較)

(※起業活動指数とは、アンケートを実施し、起業者・起業予定者であると回答を得た割合(%))

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b)教育

iii. 翻訳技術向上により、語学そのものが価値ある時代から異文化理解のツールと位置づけられる時代になるのではないか。しかしながら、日本人の対話能力も含めた英語力の水準は低調。異文化

を肌で感じられる留学については、日本からの留学生数は近年横ばい、海外からの留学生の受入れは世界全体の増加トレンドと比して低調。こうした中で、以下のような取組を加速化していくべきではないか。

-日本人の留学機会の増大、海外からの留学生受入れの増大

-対話重視の外国語教育の早期化

84

United States¹ 16%

United Kingdom¹ 13%

Germany 6%

France 6%Australia¹,³ 6%Canada² 5%

Russian Federation 4%

Japan  3%

Spain 2%

China 2%Italy 2%

Austria 2%New Zealand 2%South Africa 2%Switzerland 1%Netherlands 1%

Korea 1%Belgium 1%

Other OECD countries 8%

Other non-OECD countries 17%

60,138 

0

10,000

20,000

30,000

40,000

50,000

60,000

70,000

80,000

90,000

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

3.5

4.0

4.5

5.0

2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012

Worldwide OECD G20 countries

Europe North America Oceania

japan

(百万人)

世界全体の留学生数は430万人に

一方、日本人留学生の伸びは低調

【日本】(人)

【日本以外】

(左軸)

(右軸) Japan

外国人留学生受入れ数の国際比較(2012年)

各国の学生に占める留学生の内訳

世界の留学生数の増大と、日本人留学生の推移

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4.(5) 制度的環境

デジタル単一市場統合を目指し、欧州域内では様々な規制等の実施、検討が進められている。こうした動きに比して、我が国の対応は遅れをとっているのではないか。

AI・ビッグデータがもたらす経済社会の変革の中で、我が国の産業構造において高付加価値部門を維持・強化していくとの観点から幅広く検討を進めるべきではないか。

86

ニュースの使用料負担スペインでは、知的財産法を改正(2014年)し、ニュース検索等による記事の引用等に対する使用料の支払を求めることを可能した。ドイツでも同様の法案が検討。

租税回避企業への課税対策イタリアやイギリスでは、国内で利益を得ている多国籍企業の租税回避を阻止するための新税措置を検討。

データポータビリティ欧州議会等で個人データを他のデータ管理者に移転する権利が提案されており、個人データ保護指令の見直しを検討中。

支配的地位の濫用欧州委員会は、Googleが検索結果の操作に対する競争法違反について調査を実施。

忘れられる権利欧州では、個人情報保護の観点から、削除要請のあったリンクを検索結果などに表示させなくする忘れられる権利の適用範囲を全世界に拡げるガイドラインを発表(2014年11月)。

通信インフラの利用負担フランスでは、インターネット企業のサービスの増加によって生じる通信ネットワークの維持・強化費用の企業負担を議論。

ネット中立性欧州では、ネットユーザー等の接続装置、通信モードの違いによらず通信速度を全て平等に扱うべきとのネット中立性について議論中。

競争法 知財・インフラ

税制

個人情報

欧州におけるデジタル経済でのプラットフォーム事業者に対する規制

事業分割欧州議会では、Google等検索エンジン事業の分割論を決議。

プラットフォームの支配力調査欧州委員会は、オンライン・プラットフォーム事業者の支配力に関する調査を検討。

支配的地位の濫用

事業分割

プラットフォーム支配力調査

ニュース記事引用負担

通信インフラ使用負担

ネット中立性

租税回避企業への課税対策

データポータビリティ

忘れられる権利

EUでは、域外からのネット配信サービスに対する付加価値税制を見直し(2015年1月)。

域外ネット配信サービス課税

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4.(5)① 個別分野においてAI・ビッグデータの利用・更なる進化の促進

以下のような視点から、規制等の制度改革、事故時の責任分担等のあり方等を検討することが必要ではないか。

① 現時点で社会的に活用可能なAI・ビッグデータ技術を実社会で大限活用すること

② 先進的利用の試み(AI・ビッグデータに関する技術は、実際に利用されることで更なる進化を遂げる傾向が強い)を促進すること

88

a)自動運転

・道路交通法では「車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作…(中略)…しなければならない」とされているところ、平成26年3月に、道路交通に関する条約(ウィーン条約)に関し、自動走行技術について、「運転者が操作介入又はスイッチオフできる場合は」、「車両の運転方法に影響する車両システム」は「車両を制御下におかなければならない」との規定に「適合しているものとみなす」といった改正案が採択された。

・このような自動走行技術に関する国際的な議論の動向も踏まえつつ、我が国としても、自動走行技術の活用において、世界をリードできるよう、技術開発のみならず、事業モデルの検証や制度環境整備の必要性の検討等、必要な取組を進めるべきではないか。

b)製品安全

・現行の製品安全規制では、製品の安全性を担保するため、経年劣化にも配慮した技術基準を設定し、出荷時に規制を行っている。

・今後AIが搭載された製品(例:家庭用ロボット)の中には、家庭での利用を通じた機械学習や消費者のインストール等によって、性能が変化・向上するものが現れることが想定される。

・こうした観点から、性能の変化・向上を視野に入れたリスクアセスメント手法の開発や、必要な制度面での対応について検討を行うことが必要ではないか。

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c)産業保安

・AIと工場の操業データ等を活用することにより、それぞれの工場において、例えば、設備Aの稼働状況と設備Bの負荷の関係、設備Bにおける事故を予防するための適な措置等が明らかになるが、これらは、工場毎に異なる。

・現行保安規制は、講ずべき措置を画一的に定める仕様規定(例:低圧架空電線は引張り強さ4.3N以上又は直径3.2mm以上の硬銅線であること)から、工場ごとに異なる 適な保安措置を講ずることが可能となるよう、性能規定(例:感電、火災等の危険が生じないこと)へ基本的に移行した。しかし、その運用においては、性能規定に適合するものとして通達で例示された限定的な措置(例:LPガスのタンクには防消化のために2箇所の放水銃を設置すること)しか認められていない。

・AI・ビッグデータを活用することで工場毎に異なる 適な安全確保措置が明らかになり、それを網羅的に例示することは困難であること等を踏まえ、保安規制の運用の在り方について検討すべきではないか。

・また、AI・ビッグデータ等を活用した高度な保安システム(例::リアルタイムの予防保全、予知保全)を導入している事業者には、定期点検の頻度を減らすなどのインセンティブ付与を検討することが技術の普及には有効ではないか。

90

d)サービス業規制

・AI・ビッグデータの活用によって、個々人に対するマッチングの機能が飛躍的に向上し、設備、施設等を自ら保有しないプラットフォーマーが、保有する者と利用希望者をマッチングすることで、これまでサービスの提供者になり得なかった個人等が、従来事業とされてきた領域に参入可能な状況。(例:空き家・空室と利用者をマッチングするAirbnb、自動車のライドシェアをマッチングするUberやLyft)

・これにより、資産の稼働率の向上と社会コストの低減等のメリットが生じる一方、安全性の担保措置等なしに自由な参入が認めれば、安全や衛生等の事業の健全な発展等が確保できないおそれがある。

・現行法で従来想定していないサービスが登場しつつあるため、現行法における扱いや今後の制度の在り方の検討を行う必要があるのではないか。

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4.(5)② デジタルプラットフォームに対応した競争政策

○短期間で市場を席巻する可能性があるデジタルプラットフォーム事業者による市場の支配的な地位の濫用等が懸念される中で、欧州を中心にこれら事業者に対する競争法上の対応が図られつつある。

○例えば、EUでは検索エンジン市場において圧倒的シェアを持つGoogleに対し、検索結果の恣意的操作による競争法違反の疑いから調査を行う等の動きに加え、欧州各国でも知財法の改正や忘れられる権利(個人情報の扱い)、税制等の様々な対応が見られる。

我が国においては、欧州のような様々な議論は顕在化していないが、今後、様々な分野で影響を及ぼす可能性があるこれらデジタルプラットフォーム事業者について、その実態等を考慮した競争政策の検討が必要ではないか。

92

90%

3%7%

55%39%

6%

日本

66%

16%

18%

出所:日経「業界地図」、アウンコンサルティング調べ

米国

欧州

その他

その他

その他

日・米・欧の検索エンジンのシェア

• 欧州委員会は、Googleに対し、検索結果の恣意的操作等による競争法違反の疑いで、2010年から複数回の調査を実施し、2015年4月に異議告知書を送付。

• また、Android端末を導入している携帯端末メーカーに対して他社のソフトを導入しないよう働きかけた疑いがあるなどして新たな調査が開始。

• 欧州議会では、Googleの独占体制を念頭にネット検索エンジンとそれ以外の事業を切り離すことを求める決議を2014年11月に採択され可決。

欧州での動き

◆Googleに対する競争法違反の調査

◆Googleの事業分割案の可決

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競争法:Googleの反トラスト法違反調査米国

ネット中立性:インターネット利用規則の採択

連邦取引委員会は、Googleに対し、ネット検索結果の不公正な操作、Android端末メーカーに競合サービスの使用制限等の観点から調査。Googleが改善案を示すことで和解(2013年)。

連邦通信委員会は、インターネット接続業者を公益事業者と同等に位置づけ、特定コンテンツ配信の拒否禁止等利用者を平等に扱うネット中立性を定める新規則を採択(2015年)。

公正取引委員会は、GoogleとYahoo Japanの業務提携(Googleによる検索エンジン及び検索連動型広告システムの提供)を承認(2010年)。

競争法:GoogleとYahooの業務提携

個人情報の漏えい事案等を踏まえ、「個人情報の保護に関する法律についての経済産業分野を対象とするガイドライン」を改定(2014年)。

個人情報:ガイドライン改定

日本

国外事業者が国境を越えて行うネット配信サービスに消費税を課税する(2015年10月施行)。

消費税:海外からのネット配信サービス課税

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1.AI・ビッグデータによる経済社会の変革

2.産業構造の変革

3.就業構造の変革

4.我が国の課題と対応

5.終わりに

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5. 終わりに

上記のように、今後検討を深めていかねばならない課題は幅広く、輻輳的であり、また、その一つ一つが重い課題である。それぞれの検討を深め、具体的な戦略を講じていく上でも、まずは、 も大きな変化が生じ、様々な変化のベースとなってくる産業構造・就業構造が、いかなる時間軸で、どのように変化していくのかの検討を深め、それらを世の中に示していくことが要請されている。

また、ビックデータ・AIがもたらす変革は、データ量等の指数関数的な増加、非連続的な進化により、今後、想像を超えるスピードで、想像を超える態様で生じていく可能性が高い。そのような中、民間企業の中には、変革があまりに広範・複雑であるため、未来に向けた投資の決断ができないという声もある。

世界を見ると、米国・ドイツ等の他国も既にこの変化に対応すべく動きはじめており、次のグローバル大競争を勝ち抜けるかは、この変革の動きに対応できるかにかかっている。

こうした問題意識の下、次のような検討を行う。

98

【産業構造・就業構造の変化の提示】

産業構造の変化について本資料では一例を提示しているが、さらに広範に、

① 産業全体として今後どのように競争力の源泉が変化していくか、

② 産業区分自体を含めて産業構造がどのように変化していくか、

③ 産業活動の各プロセスがシステム化されることで企業の枠を超えてどのように事業が変化していくか、

等について、世の中にわかりやすく提示し、コンセンサスを得ていくべきではないか。

労働力人口の減少という大きな課題に我が国が直面する中、こうした産業構造の変化が就業構造にどのような影響を与えるのかを、時間軸を含め明示するべきではないか。また、量的な労働需給のみならず、働き方など労働の質的側面がどのように変化していくかも明らかにしていくべきではないか。

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【変革に対応するための政府や民間企業の対応のあり方】

制度やインフラの整備状況等の要素も踏まえながら、例えば、

① いつ頃にどのような変化が生じ、どのようなビジネスチャンスが生まれてくる可能性があるのか、

② その好機をつかむため、政府や民間企業はどのような対応(設備・人材投資等)を進めておく必要があるのか(逆に言えば、どのような対応を怠った場合、日本企業は立ち遅れてしまう可能性があるのか)、

等について、具体的な時間軸を含めて検討・提示すべきではないか。

こうした産業構造・就業構造の変化、競争力の源泉の変化の中で、我が国産業がこの新たなグローバル競争を勝ち抜くためにどのような未来への投資を進め、企業組織をどのように変革することが求められるかについて明らかにしていくべきではないか。

産業構造・就業構造の変革により生じる新たなグローバル競争を勝ち抜くため、変革のボトルネックとなる課題を特定するとともに、その課題を克服するための処方箋をあるべきスケジュール感を含めて具体化していくべきではないか。

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