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ラウンドアバウトの性能評価と都市空間整備 Performance...
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ラウンドアバウト展開に向けた課題と方策
名古屋工業大学 大学院工学研究科
社会工学専攻 鈴木弘司
ラウンドアバウトサミット in 一宮2020/11/19
ラウンドアバウト(RAB)の種類
類型
ミニ
ラウンドアバウト
コンパクト
ラウンドアバウト
多車線
ラウンドアバウト
適用市街地,住宅地の小規模な交差点
市街地内,住宅地内の交差点,集落入口
の交差点
郊外の幹線道路,高速道路のランプ下
都市内,郊外幹線道路
外径 13-22m 26-40m 30-50m 40-60m中央島
僅かな段差,乗り上げ可能
乗り上げられない構造
分離島
僅かな段差,原則として乗り上げ可能
乗り上げられない構造
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他には,ターボラウンドアバウト(左)や瓢箪型ラウンドアバウト(中・右)も
RABが持つ特徴安全性
➢幾何構造による速度抑制効果
➢重大な事故の削減
円滑性
➢赤信号による待ち時間の削減
➢信号では困難な交差点の処理(多枝交差点,変形交差点での処理能力向上)
経済性
➢信号制御の電力消費不要,燃料消費少
災害に強い
➢停電時も安全・自律的に機能
ラウンドアバウト
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国内の設置箇所数は着実に増えている.(環状交差点の設置数H27.3:43か所⇒R2.3:101か所,警察庁調べ)
RAB導入検討時によく聞かれる声①用地が広く必要では?
➢通常の交差点と比べると,右折車線分の用地は不要なのでそれほど広くならない
➢直径25m程度であれば適用できる例も
交通量が1万台/日を超える場所には設置できない?
➢1万台/日は全然心配ないレベル.
➢国内事例(糸満市)で約1.3万台/12時
間(資料:沖縄県))の調査結果もあり,「1万台/日を超える=即NGではない」
⚫ 1万台/日を超える場合には,(一社)交通工学
研究会「ラウンドアバウトマニュアル」を参考に交通容量を詳細確認し,適用可否を判断し,安全性にも十分に留意する.
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RABに必要だが信号交差点には不要な部分
信号交差点には必要だがRABには不要な部分
凡例
出典:NCHRP Report 672, “Roundabouts: An Informational Guide, 2nd Edition, 2010
RAB導入検討時によく聞かれる声②特別な交差点で横断者に受け容れられにくいのでは?障がい者への特別な配慮は?
➢分離島による二段階横断で安全・安心な空間へ
⚫横断機会の増加,流出入車両の速度抑制,逆走抑止などの効果.
➢通常の交差点と同様の対応が基本となるが,RABの構造や横断の仕方の事前周知の活動は重要
⚫名古屋市の取り組み実績など
自転車と自動車の事故が心配.矢羽根を設置すればよい?
➢国内の調査例
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自動車…高速 自転車…低速環道から流出する自動車と環道走行中の自転車が交錯する危険性
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RABで心配される自動車・自転車間の危険事象
環道内での追越・横切り
国内RABでの自転車安全性に関する分析結果例環道外側よりを走行するRABで,自転車は自動車に追い越される
割合が高くなる.
➢自転車の通行位置を少しでも中心に寄せられれば安全?
➢そもそも自転車と自動車が同じ空間を通行する必要がある?
エプロンが段差構造であると自転車は環道内で追越しされにくい.
➢段差のあるエプロンは自転車の安全性向上にも寄与
流入時に,自転車よりも自動車の速度が高く,速度差が大きいと
自転車の追越しが発生しやすくなる.
➢流入時の自動車速度を抑制させるためには?
中央島直径が大きいと左折車による自転車の追越し挙動が発生
しやすく,流入部に分離島があると左折車の追越しが発生しにくい.
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出典:鈴木・粟田,ラウンドアバウトにおける自転車通行安全性に関する基礎的分析,土木学会論文集D3(土木計画学),Vol.75,No.5, I-923-I_932,2019.
自転車の安全性向上に留意した構造・路面表示(海外)
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←RAB手前で自転車を車道から歩道へ迂回させている事例(フィンランド・ヘルシンキ,コンパクトRAB)
環道の流出入部付近をカラー化(デンマーク・コペンハーゲン)
RAB手前(下),環道で自転車と自動車の動線を構造分離(上)している事例(オランダ・ロッテルダム)
自転車の安全性向上に留意した構造・路面表示(国内)
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図面提供:名古屋市緑政土木局道路維持課
名古屋市の事例➢流入部の走行速度抑制
➢環道での走行安定性向上
⚫並走や追越し抑制
ガードパイプ設置,矢羽根・自転車ピクト敷設 従来よりも幅広の矢羽根を外側線より少し離して敷設
自転車・自動車の接触回避のために必要なコミュニケーション
自動車は流出時にウインカーを正しく使用する
自転車利用者はハンドサイン(手信号)
➢流出車両とのコミュニケーション(自転車が流出するのか,環道走行を続けるのかの意思を明確に伝える)
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ハンドサインによる意思表示(デンマーク・コペンハーゲン)左:環道走行を続けるハンドサイン,右:流出することを示すハンドサイン
円滑な移動,メリハリのある都市形成に資するRAB
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M4
A3102
B4534
B4533
200m
A3102
出典:Google map
英国・スウィンドン市
道路階層変化,都市入口部の明示,住宅地内の交通静穏化の装置として積極的に活用
「コンパクト+ネットワーク」形成に資するRABの役割➢コンパクトな拠点におけるRABの適用
⚫集落や住宅地などの拠点入り口/出口境界部に設置し,境界部である
ことを明示してメリハリ
⚫集落や市街地中心部,商店街出入口などに設置,中心市街地活性化
⚫生活道路などに速度抑制デバイスとして設置
⚫観光地の出入口のシンボルゲート機能
➢拠点間を結ぶ道路ネットワークへのRABの適用
⚫地方部有料道路,自動車専用道路のICや端末部
⚫スマートインターチェンジの一般道接続部
➢災害に強い交差点としての活用
⚫南海トラフ地震など津波被害想定エリア
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島根・大田朝山RAB→(写真提供:神戸信人氏)
合意形成
ラウンドアバウトが整備されていない箇所での検討
➢住民の方にラウンドアバウトがどのようなものか,使い方,整備による効果などを説明し,疑問点を解消してもらい,理解を深めて頂くことが重要
⚫住民対話型
⚫協議会設置型
➢説明に用いるツール
⚫バーチャルリアリティ(VR)などの映像体験
⚫模擬ラウンドアバウト(実寸大のラウンドアバウトを再現など)
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周知・広報
整備するラウンドアバウトを地域住民や利用者に広く知って頂く周知活動も重要な取組
➢様々な媒体での情報発信
⚫広報,ホームページ,ラジオ・テレビ,新聞,SNS,...
➢観光地など,様々な利用者が想定される箇所
⚫観光客向けのリーフレット(多言語)の作成
➢現地での利用者への案内
⚫環道優先ルールの徹底,ウインカーの出し方など
ポイント
➢整備内容や導入効果,通行方法を誰もがわかりやすくコンパクトにまとめて伝えることが必要.
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教育整備箇所での交通弱者への教育,また,ラウンドアバウトに対する理解を深めて頂くことは重要
➢近隣小学校を対象とした現地での通行方法の講習⚫児童にもわかりやすい説明ツールを使うこと(例.平面図上で磁石を用いて人や車の動きを説明する(飯田市東和町)).
⚫正しい通行方法を体で覚えて貰えるように,実際に現場での横断体験も行う(所轄警察署との連携(軽井沢町ほか))
➢国内未設置のラウンドアバウトにおける体験走行会(松江)
➢視覚障がい者の安心感向上のための補助的整備(北九州)
15瓢箪型RABの体験走行会(写真提供:神戸信人氏)流出部の舗装に溝を切り込み,歩行者に対して,流出車両の存在を音で知らせる工夫(北九州・尾倉RAB)
今後のさらなる展開に向けてラウンドアバウトは信号制御に頼らない分,安全で適切な利用,対策の徹底が必要
➢学校や地域社会に向けたPR,安全教育による交通ルールの徹底
➢利用者を自然と導く構造とするラウンドアバウトの設計技術の普及が重要
⚫ 各地での整備効果を定量的に分析・共有し,今後の整備に反映することが重要.
✓ これまでの整備事例や成果,課題を整理したわかりやすいデータベースの構築
((公財)国際交通安全学会,ラウンドアバウト普及促進協議会の取り組み)
✓ 最新の知見や研究成果を反映したRABマニュアルの改訂((一社)交通工学研究会)
ラウンドアバウトを特別なものとして扱うのではなく,まちづくり,ネットワークの性能向上に資する装置として捉え,適切な箇所に戦略的・積極的に導入
北九州市尾倉RAB16
UK’s First Roundabout (英国・レッチワース)