ポルフィリン誘導体を用いた 光殺菌療法の新展開 -...

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1 ポルフィリン誘導体を用いた 光殺菌療法の新展開 旭川医科大学 医学部 呼吸器センター 教授 大崎能伸 光が拓く未来の医療

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ポルフィリン誘導体を用いた 光殺菌療法の新展開

旭川医科大学 医学部

呼吸器センター

教授 大崎能伸

光が拓く未来の医療

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• 癌の治療に用いられていた、安全で効果が高い光線力学療法を抗菌療法に応用した、光線力学抗菌療法を開発する。

• グラム陽性菌、グラム陰性菌、真菌に強い効果をもつ光増感剤を開発する。

• 光増感剤と使用目的の双方に最適の光照射装置を開発する。

• 光線力学的抗菌療法による光殺菌の表在性感染症の治療、脆弱な医療機器

の滅菌、食品の殺菌などへの応用を検討する。

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プロジェクトの概要

1)新規ポルフィリン誘導体の開発 岡山県ポルフィリン研究所と共同研究を行い、生体材料から新規ポルフィリン誘導体の TONS 502とTONS 504を開発した。

2)TONS 502とTONS 504の抗菌作用を増強する添加剤 TONS 502とTONS 504の抗菌作用を高める手段を開発する。

3)光線力学抗菌療法の目的に適した光源を開発する CCS社(京都市)と共同でLED光照射装置のME-PT-DSRD660-0201を開発した。 更に大型の光源を開発している。

4)TONSとLED光源を用いた光線力学的抗菌療法の効果を明らかにする TONS 502とTONS 504およびME-PT-DSRD660-0201を使用して、大腸菌、耐性ブ ドウ球菌(MRSA)、緑膿菌などに対する殺菌作用を検討する。

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光感受性薬剤を注射

4-48時間

低エネルギーレーザー

肺癌に対する光線力学療法

レザフィリン フォトフリン

PDレーザー エキシマダイレーザー

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我が国でのPDTの適応疾患

肺癌、表在性食道癌、 表在性早期胃癌、子宮頸部初期癌および異形成、加齢黄斑症

世界の動向

進行癌、癌の補助療法、皮膚疾患、感染症

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IPA 2001

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抗ウイルス・原虫活性 血液の汚染除去

口腔内 感染症

尋常性坐瘡 (にきび)

表在性 感染症 etc・・・

抗菌剤療法に代替・凌駕し得る

細胞

細胞の傷害・壊死 光増感剤投与 取り込み

細胞 細胞

光増感剤の励起 活性酸素の発生

光線照射

腫瘍性疾患 PDT

PACT 抗菌・抗真菌活性

局在性感染症に対する治療法

PACT (photodynamic antimicrobial chemotherapy)とは

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実用化に向けた課題 • 細菌に対して作用のスペクトルが広い薬剤がない。 ➡グラム陽性菌、陰性菌、真菌などに効果を示すポルフィリ ン誘導体を開発した(特許、特開)。 • 有効性な波長を安定して照射できる光源がない。 ➡ポルフィリン誘導体の効果を最大に引き出す660nmの 体表照射用LED光源を開発した。 • 培養細菌を用いた基礎的検討。 ➡グラム陽性菌、陰性菌に対する殺菌効果を確認した。 ➡効果を増強する添加剤を発見した(特願)。 • 感染モデル動物による検討。 ➡研究計画中

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NH N

HNN

New Photosensitizers

TONS 504 Positive Charge Porphyrin (グラム陽性・陰性菌用)

TONS 502 Negative Charge Porphyrin

(グラム陽性菌用)

MeO OMe

N HN

NNH

OO

HO

O

O

PorP

Mw. 680.8

N HN

NNH

OO

HO

O

O

NH

N

NH

NMe MeI- I-

Mw. 1116.9

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660nm LED デスクスタンドタイプ

ME-PT-DSRD660-0201 (CCS)

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PACT抗菌活性試験の方法

1.各培地に菌 20μL(2.0 X 108/mL)、

薬剤 100μL (各1, 3, 5, 8, 10, 20, 30, 50μg/mLに調整) 加えた後、

各濃度の添加剤 10μL を添加

2.上記全量130μLをコンラージ棒で培地に均等塗布し、

5分間 暗所に放置

3.光源(660nm LED)を距離 5cm に固定して

各時間照射(0分、4分)

4.24時間培養(35℃)

5.24時間後に各培地のコロニー数を計測

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TONS 504の効果増強法

• TONS 502、504はグラム陽性菌に有効 • TONS 504はグラム陰性菌に有効 • 50mg/mlが必要だが絶対的ではない • 効果を増強する手立てが必要 • キレート剤に注目した

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添加剤 EDTA を用いた場合の E.coli に対する PACT抗菌活性

TONS 504 + 添加 無 + : 生菌確認、- : 細菌死滅

TONS 504 conc : μg/mL 0 1 5 10 20 50 100

light 0 min (0 J/cm2) + + + + + + +

light 2.5min (10 J/cm2) + + + + + + +

light 4min (15 J/cm2) + + + + + + +

light 5 min (20J/cm2) + + + + + + +

light 8 min (30 J/cm2) + + + + + + +

TONS 504 + 高濃度 EDTA (50mM) 添加 + : 生菌確認、- : 細菌死滅

TONS 504 conc : μg/mL 0 1 5 10 20 50 100

light 0 min (0J/cm2) + + + + ND + ND

light 2.5min (10J/cm2) + + + - ND - ND

light 4min (15J/cm2) ND ND ND ND ND ND ND

light 5 min (20J/cm2) + - - - ND - ND

light 8 min (30J/cm2) + - - - ND - ND

TONS 504 + 低濃度 EDTA (4mM) 添加 + : 生菌確認、- : 細菌死滅

TONS 504 conc : μg/mL 0 1 5 10 20 50 100

light 0 min (0 J/cm2) + + + + + + +

light 2.5min (10J/cm2) ND ND ND ND ND ND ND

light 4min (15J/cm2) + + + + - - -

light 5 min (20J/cm2) ND ND ND ND ND ND ND

light 8 min (30J/cm2) + + + + - - -

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添加剤 EDTA (4mM)を用いた場合の E.coli に対する PACT抗菌活性

E.c TONS 504 20μg / mL EDTA 添加無 LED (660nm) 15 J / cm2

E.c TONS 504 20μg / mL EDTA 添加有 LED (660nm) 15 J / cm2

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TONS 504 + 添加 無 + : 生菌確認、- : 細菌死滅

TONS 504 conc : μg/mL 0 1 5 10 20 50 100

light 0 min (0 J/cm2) + + + + + + +

light 2.5min (10 J/cm2) + + + + + + +

light 4min (15 J/cm2) + + + + + + -

light 5 min (20J/cm2) + + + + + + +

light 8 min (30 J/cm2) + + + + + + -

TONS 504 + 高濃度 EDTA (50mM) 添加 + : 生菌確認、- : 細菌死滅

TONS 504 conc : μg/mL 0 1 5 10 20 50 100

light 0 min (0J/cm2) + + + + ND + ND

light 2.5min (10J/cm2) + + + - ND - ND

light 4min (15J/cm2) ND ND ND ND ND ND ND

light 5 min (20J/cm2) + - - - ND - ND

light 8 min (30J/cm2) + - - - ND - ND

TONS 504 + 低濃度 EDTA (4mM) 添加 + : 生菌確認、- : 細菌死滅

TONS 504 conc : μg/mL 0 1 5 10 20 50 100

light 0 min (0 J/cm2) + + + + + + +

light 2.5min (10J/cm2) ND ND ND ND ND ND ND

light 4min (15J/cm2) + + + + + + -

light 5 min (20J/cm2) ND ND ND ND ND ND ND

light 8 min (30J/cm2) + + + - - - -

添加剤 EDTA を用いた場合の P.aeruginosa に対する PACT抗菌活性

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添加剤 EDTA (4mM)を用いた場合の P.aeruginosa に対する PACT抗菌活性

P.a TONS 504 10μg / mL EDTA 添加無 LED (660nm) 30 J / cm2

P.a TONS 504 10μg / mL EDTA 添加有 LED (660nm) 30 J / cm2

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TONS 502 グラム陽性菌用

「皮膚疾患治療剤」 特願 2008‐118187(H20.4.30) 特許 第 5179245 号 (H25.1.18) 「クロリン誘導体」 特願 2010‐238359(H22.10.25) 特開 2012‐92024 (H24.5.17) TONS 504 グラム陽性・陰性菌用

「クロリン誘導体」 特願 2010‐23835(H22.10.25) 特開 2012‐92024 (H24.5.17) 「ポルフィリン誘導体の殺菌作用増強方法」 特願 2013‐037671 (H25.2.27)

本技術に関する知的財産権

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PACT療法における抗菌作用増強法について

特願2013-037671, 2013.2.27出願

増強剤 EDTA や AA を初めとするキレート剤

添加効果

大腸菌に対して

添加無 薬剤濃度 100μg/mLでも無効

添加有 薬剤濃度 20μg/mL以上で有効(無菌)

緑膿菌に対して

添加無 薬剤濃度 50μg/mL以下で無効

添加有 薬剤濃度 10μg/mL以上で有効(無菌)

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先行技術との違い

• 歯科ではメチレンブルーを用いた歯周病の殺菌療法が保険外診療として行われている。

• メチレンブルーによる光線力学療法は、抗菌スペクトルが狭い。

• メチレンブルーによる光線力学療法は、抗菌作用が弱い。

• 光脱色(photobleaching)の可能性がある。 • ポルフィリン誘導体によるPACTでは上記の欠点が

克服される可能性がある。 • PACTに最適なポルフィリン誘導体がなかった。

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Biogel: methylene blue Periowave Ondine Biomedical Inc. Vancouver, BC, Canada

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衛生 殺菌、消毒

皮膚科 真菌性(マラセチア等)外耳炎、褥瘡、

水虫、爪感染、疣、脂漏性湿疹

内科 MRSA、結核、緑膿菌、大腸菌、

ウイルスなど

歯科 歯周病

眼科 角膜潰瘍

PACTの感染症診断と治療に 想定される用途

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• 生食する食品の殺菌

• 医療器具の消毒

• 皮膚など体表の消毒

• 皮膚感染症の治療

• 内視鏡を使用した臓器表面の感染症治療と蛍

光観察による感染巣の局在診断

• 腹腔や胸腔に注入したPACT、消化管、気道

PACTの感染症診断と治療に 想定される用途-2

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お問い合わせ先

国立大学法人 旭川医科大学 知的財産センター 尾川直樹 TEL 0166-68-2259 FAX 0166-66-0025 e-mail sho-kenkyu@asahikawa-

med.ac.jp