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シュレディンガー方程式 ~基礎からの量子力学攻略~ 発展問題解答 1-1. 波動関数 (1.7) 式と期待値の定義 (1.5) 式を用いる.Ψ が偶関数なので,x=0,また x 2 = 2a π -∞ e -ax 2 x 2 e -ax 2 dx = 2a π 1 2 1 2a π 2a = 1 4a . 1-2. 例題から p = 2 a - 0= a.また前問より, x =1/ 4a.よって不確定さの積は x · p = /2. 2-1. [ˆ p 2 , ˆ p] = 0, [ˆ p 2 ,x]=ˆ pp, x]+[ˆ p, xp = -2iˆ p. 公式より p 2 ,x 2 ]=ˆ pp, x]x + x ˆ pp, x]+ xp, xp + p, xpx = -2ipx - x ˆ p)= -22 . 2-2. 交換しないのは同じ成分の座標と運動量だけなので,その項だけ残す. [L x ,L y ]=[yp z - zp y ,zp x - xp z ]=[yp z ,zp x ]+[zp y , xp z ] = yp x [p z ,z ]+ p y x[z,p z ]= -iyp x + ixp y = iL z . 3-1. 連続の方程式の両辺を x で積分すると,第 2 項目は実行可能で ∂t -∞ |Ψ 2 |dx + 2im [ Ψ * ∂x Ψ - Ψ * ∂x Ψ ] -∞ =0 となる.x → ±∞ で波動関数が 0 ならば,第 2 項目は 0 になる.よって,第 1 項目の時間微分が 0 になるので, -∞ |Ψ 2 |dx は時間によらない一定の数である. 注意3 次元のシュレディンガー方程式を用いて同様に計算すると,連続の方程式の積分は ∂t -∞ |Ψ 2 (r)|d 3 r + 2im d 3 r ∇· * Ψ -∇Ψ * Ψ) = 0 となる.第 2 項目でベクトル解析のガウスの定理を用いて d 3 r∇· * Ψ -∇Ψ * Ψ) = s * Ψ -∇Ψ * Ψ) · nds と書ける.ここで,ds は無限遠での表面の積分で n は表面に垂直な単位ベクトルである.無限円 での波動関数が 0 であれば,表面の全域で波動関数は 0 なので,やはり確率密度は保存する. 3-2. 例題と同様に計算すると,ポテンシャルが実数でないため Ψ * V Ψ - Ψ * V * Ψ=2iΓ|Ψ| 2 という項が連続の方程式に残ってしまう.この項を含めて微分方程式を解けば,確率が減少する解 を得られる. 1

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シュレディンガー方程式 ~基礎からの量子力学攻略~ 発展問題解答

1-1. 波動関数 (1.7)式と期待値の定義 (1.5)式を用いる.Ψが偶関数なので,⟨x⟩ = 0,また

⟨x2⟩ =√

2a

π

∫ ∞

−∞e−ax2

x2 e−ax2dx =

√2a

π

1

2

1

2a

√π

2a=

1

4a.

1-2. 例題から∆p =√ℏ2a− 0 = ℏ

√a.また前問より,∆x = 1/

√4a.よって不確定さの積は∆x ·∆p =

ℏ/2.

2-1. [p2, p] = 0, [p2, x] = p[p, x] + [p, x]p = −2iℏp. 公式より [p2, x2] = p[p, x]x + xp[p, x] + x[p, x]p +

[p, x]px = −2iℏ(px− xp) = −2ℏ2.

2-2. 交換しないのは同じ成分の座標と運動量だけなので,その項だけ残す.

[Lx, Ly] = [ypz − zpy, zpx − xpz] = [ypz, zpx] + [zpy, xpz]

= ypx[pz, z] + pyx[z, pz] = −iℏypx + iℏxpy = iℏLz.

3-1. 連続の方程式の両辺を xで積分すると,第 2項目は実行可能で

∂t

∫ ∞

−∞|Ψ2|dx+

ℏ2im

[Ψ∗ ∂

∂xΨ− ∂Ψ∗

∂xΨ

]∞−∞

= 0

となる.x → ±∞で波動関数が 0ならば,第 2項目は 0になる.よって,第 1項目の時間微分が

0になるので,∫∞−∞ |Ψ2|dxは時間によらない一定の数である.

注意:3次元のシュレディンガー方程式を用いて同様に計算すると,連続の方程式の積分は

∂t

∫ ∞

−∞|Ψ2(r)|d3r + ℏ

2im

∫d3r∇ · (Ψ∗∇Ψ−∇Ψ∗Ψ) = 0

となる.第 2項目でベクトル解析のガウスの定理を用いて∫d3r∇ · (Ψ∗∇Ψ−∇Ψ∗Ψ) =

∫s(Ψ∗∇Ψ−∇Ψ∗Ψ) · nds

と書ける.ここで,dsは無限遠での表面の積分で nは表面に垂直な単位ベクトルである.無限円

での波動関数が 0であれば,表面の全域で波動関数は 0なので,やはり確率密度は保存する.

3-2. 例題と同様に計算すると,ポテンシャルが実数でないため

Ψ∗V Ψ−Ψ∗V ∗Ψ = 2iΓ|Ψ|2

という項が連続の方程式に残ってしまう.この項を含めて微分方程式を解けば,確率が減少する解

を得られる.

1

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4-1. 例題と同様にシュレディンガー方程式 iℏ∂Ψ/∂t = (−ℏ2/2m)∂2Ψ/∂x2 + VΨ とその複素共役を代

入して期待値を計算する.

d⟨p⟩dt

=

∫ ∞

−∞dx

∂t

(Ψ∗(−iℏ ∂

∂x

)= −iℏ

∫ ∞

−∞dx

(∂Ψ∗

∂t

∂Ψ

∂x+Ψ∗ ∂

∂x

∂Ψ

∂t

)=

∫ ∞

−∞dx

[(− ℏ2

2m

∂2Ψ∗

∂x2+ VΨ∗

)∂Ψ

∂x−Ψ∗ ∂

∂x

(− ℏ2

2m

∂2Ψ

∂x2+ VΨ

)]=

∫ ∞

−∞dx

[− ℏ2

2m

(∂2Ψ∗

∂x2∂Ψ

∂x−Ψ∗∂

∂x3

)−Ψ∗∂V

∂xΨ

]= −

⟨∂V

∂x

⟩.

最後の等式では,第 1項に部分積分を 2回施し,波動関数が無限遠方で 0になることを用いた.

4-2. 前問と同様にシュレディンガー方程式を代入する.ここでは角運動量の z成分を計算する.また積

分は 3次元である.

d⟨(xpy − ypx)⟩dt

=

∫ ∞

−∞d3x

∂t

(Ψ∗(−iℏ(x ∂

∂y− y

∂x))Ψ

)= −iℏ

∫ ∞

−∞d3x

(∂Ψ∗

∂t(x

∂y− y

∂x)Ψ + Ψ∗(x

∂y− y

∂x)∂Ψ

∂t

)=

∫ ∞

−∞dx3

[(−ℏ2∇2

2mΨ∗ + VΨ∗

)(x

∂y− y

∂x)Ψ

−Ψ∗(x∂

∂y− y

∂x)

(−ℏ2∇2

2mΨ+ VΨ

)].

ここで,∇2を含む項は部分積分をくり返すことでキャンセルし,消える.ポテンシャル V を含む

項は,第 2項目の積分内では微分が V とΨの両方に働くことを考慮すると,

−∫ ∞

−∞dx3

[Ψ∗(x

∂V

∂y− y

∂V

∂x)Ψ

]= −⟨(x ∂

∂y− y

∂x)V ⟩ = −⟨(r ×∇)zV ⟩.

5-1. 基底状態(実線),第 1励起状態(太い点線),第 2励起状態(細い点線)を図示した.左図が波

動関数,右図が確率密度分布 ρ(x) = |ψ(x)|2.

図 1: 無限井戸型ポテンシャルの波動関数と確率密度.

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5-2. 古典力学では,粒子は壁によってはね返される往復運動をくり返す.ポテンシャル内では自由粒子

なので密度分布は一様になり,規格性から ρcl = 1/a となる.一方,量子力学では確率密度は波の

ように濃淡があるが,n → ∞ の極限では非常に激しく振動するので,近似的に ρ(x) が一定の関

数とみなせる.この場合,密度分布は古典的予想に類似している.

6-1. ⟨x2⟩ = 2

a

∫ a

0sin2

nπx

ax2dx =

1

a

∫ a

0

(1− cos

2nπx

a

)x2dx =

a2

3− a2

2n2π2.

6-2. 運動量演算子を波動関数に 2回作用させればよい.例題 6(b)の ⟨p2⟩ の計算とまったく同じである.

6-3. 波動関数を代入すると

∞∑n=1

2

asin

nπx

asin

nπx′

a=

1

a

∞∑n=1

cos

nπ(x− x′)

a− cos

nπ(x+ x′)

a

=1

a

(1

2+

∞∑n=1

cosnπ(x− x′)

a

)− 1

a

(1

2+

∞∑n=1

cosnπ(x+ x′)

a

)= δ(x− x′)− δ(x+ x′).

最後の変形ではディリクレ核の関係式と,デルタ関数の公式 δ(cx) = δ(x)/|c|を用いた.今,x, x′

はともに正なので,第 2項は常に 0である.よって無限井戸型ポテンシャルの波動関数は完全性の

関係式を満たす.

6-4. 例題の結果を a/2平行移動させると問題のポテンシャルになる.よって波動関数は

ψn(x) =

√2

asin

(nπ(x− a/2)

a

)=

√2

a

[sin

nπx

acos(nπ

2

)− cos

nπx

asin(nπ

2

)].

n = 1, 3, 5, · · · の場合は,解は cos(nπx/a)となり,パリティ変換 x→ −xについて変化しない.一方,n = 2, 4, 6, · · · の場合は,解は sin(nπx/a) となり,パリティ変換に対して符号が変わる.つ

まり,パリティ変換に対し偶奇が交互に現れる.

7-1. 式 (3.14)の絶対値 2乗をとって積分すると

∫ a

0|Ψ(x, t)|2dx =

∫ a

0

∞∑n=1

c∗nψ∗n(x) e

iEnt/ℏ∞∑

m=1

cmψm(x) e−iEmt/ℏ dx

=

∫ a

0

∞∑n=1

∞∑m=1

c∗ncmδn,meiEnt/ℏe−iEmt/ℏ =

∞∑n=1

|cn|2.

2番目の等式で規格直交関係を用いると,n = mのときにのみ値を持つので和の記号が一つなく

なる.(この関係式は数学ではパーセバルの定理と呼ばれる.)⟨H⟩の場合はH演算子を作用させて

から同様の積分をすればよい.

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7-2. 初期条件を完全系で展開し,両辺に ψmをかけて積分する.∫ a

0ψm(x)ϕ0(x) dx =

∫ a

0

∞∑n=1

cn ψm(x)ψn(x) dx.

左辺は 0 ≤ x ≤ a/2でのみ 0でないので,∫ 2/a

0

√2

asin

mπx

a·√

2

adx =

2

(1− cos

2

)となり,右辺は直交性から cmである.時間 tにおける波動関数は

Ψ(x, t) =

√2

a

∞∑n=1

2

(1− cos

2

)sin

ax e−iEnt/ℏ

である.基底状態に存在する確率は |c1|2である.※ 巻末の解答は,最後の式の中に ’57’という数字が入っていますが,間違いです.

7-3. 基底状態,第 1励起状態単独での運動量の期待値は,例題 6ですでに計算したように 0になる.つ

まり平均としては運動していない.一方,混合状態では

⟨p⟩ = 1

a

∫ a

0

(sin

πx

ae

iE1tℏ + sin

2πx

ae

iE2tℏ

)(−iℏ d

dx

)(sin

πx

ae−

iE1tℏ + sin

2πx

ae−

iE2tℏ

)=

8ℏa

sin[3E1t/ℏ]3

となる.(E2 = 4E1を用いた.)混同状態では,二つの固有状態の間を移り変わる運動をしており,

運動量は 0ではない.この運動はポテンシャル内の古典力学的運動と類似なものである.

7-4. この波動関数を用いてハミルトニアンの期待値を計算する.∫Ψ∗Hψdx =

∫1√7(√2ψ1 − 2ψ2 + ψ3)H

(1√7(√2ψ1 − 2ψ2 + ψ3)

)dx

=

∫1√7(√2ψ1 − 2ψ2 + ψ3)

1√7(√2E1ψ1 − 2E2ψ2 + E3ψ3)dx

=1

7(2E1 + 4E2 + E3).

以上の計算では,最初の等式では波動関数がハミルトニアンの固有状態であり固有値がEnである

ことを用い,最後の等式で波動関数の規格直交性を用いている.

7-5. 幅が aの場合,基底状態の波動関数は ϕ0(x) =√

2/a sin(πx/a)である.一方,新しい系の任意の

状態は固有状態の重ね合わせで

Ψ(x, t) =∑n

cnψ′n(x) e

−iE′nt/ℏ, ψ′

n(x) =

√1

asin(nπ2ax)

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と書ける.急激にポテンシャルの幅が変化したことは,Ψに対して t = 0で初期状態 ϕ0(x)が与え

られたと解釈できる.係数の計算方法は例題と同じであるが,幅が異なるので積分領域に注意し

て(ϕ0の方は a < x < 2aの領域では 0である),c1を計算すると

c1 =

∫ a

0dx

√1

asin( π2ax)√2

asin(πax)+

∫ 2a

adx

√1

asin( π2ax)× 0 =

4√2

3π.

したがって,新しい状態の基底状態で発見される確率は 32/(9π2)である.

8-1. x < 0ではポテンシャルが 0なので,シュレディンガー方程式を解くと

ψ(x) = Ae−p′x/ℏ +Bep′x/ℏ, p′ =

√2m(−E)

である.x→ −∞で発散しない条件からA = 0である.

 同様に,x > 0では

ψ(x) = De−qx/ℏ, q =√

2m(V0 − E)

である.

 境界 x = 0での連続条件からB = Dである.また微分の連続条件は,デルタ関数ポテンシャル

による不連続性を考慮して

−qD/ℏ− p′B/ℏ = −2gD

である.したがって,q + p′ = 2gℏが成り立つ. また,p′, qの定義より q2 − p′2 = 2mV0 が成り立つ.これらの 2式を解くと,

E = −ℏ2g2

2m

(1− mV0

2g2ℏ2

)2

である.

8-2. シュレディンガー方程式は

− ℏ2

2m

d2

dx2ψ(x)− g

ℏ2

mδ(x− a) + δ(x+ a)ψ(x) = Eψ(x)

である.領域に分けて解を求めると,x < −aでは

ψ(x) = Aekx +Be−kx, k =

√2m(−E)

となる.ただし,x→ −∞で発散してはならないのでB = 0である.

 同様に,−a < x < aでは ψ(x) = Cekx +De−kx である.また,x > aでは無限遠方で発散し

てはならないことも考慮して ψ(x) = Ge−kx である.

  x = −a, aでの連続条件から

Ae−ka = Ce−ka +Deka , Ge−ka = Ceka +De−ka

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が成り立つ.また,微分についてはデルタ関数ポテンシャルにより不連続となるので,

k(Ce−ka −Deka)− kAe−ka = −2gAe−ka,

−kGe−ka − k(Ceka −De−ka) = −2gGe−ka

が成り立つ.

 これらの方程式からA,Gを消去すると,二つの方程式(−2ge−ka (2k − 2g)eka

(2k − 2g)eka −2ge−ka

)(C

D

)=

(0

0

)

にまとめることができる.この方程式がC = D = 0でない解を持つには,行列式が 0でなければ

ならない.よって

(2ge−ka)2 − ((2k − 2g)eka)2 = 0

である.この方程式の解はk−g > 0ならばg/(k−g) = e2kaとなり,k−g < 0ならばg/(g−k) = e2ka

となる.これらがエネルギーを決定するための方程式となる.前者の解は,例題のデルタ関数が

一つの場合の束縛よりも強い束縛エネルギーになる.逆に後者は弱い束縛になる.

9-1. 最初の二つの性質は定義から自明である.三番目の性質について考える.エルミート共役の定義

式 (5.2)から∫ψ∗1(AB)†ψ2 dx =

(∫ψ∗2(AB)ψ1dx

)∗

である.ここでBψ1 = Ψ1て書いてみる.すると(∫ψ∗2AΨ1dx

)∗=

∫Ψ∗

1A†ψ2 dx

と書ける.ここではエルミート共役の定義を逆に用いた.

 新たにΨ2 = A†ψ2と定義し,Ψ1を元に戻すと∫(Bψ1)

∗Ψ2 dx.

この式はエルミート共役の定義 (5.2)の真ん中の変形と同じであり,定義式に戻す変形から∫(Bψ1)

∗Ψ2 dx =

∫ψ∗1B

†Ψ2 dx =

∫ψ∗1B

†A†ψ2 dx

となる.よって (AB)† = B†A† が成り立つ.回りくどく示しているようだが,エルミート共役の

定義と,A, Bが線形演算子であることのみを用いて示したことになる.

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9-2. (1) 転置して複素共役をとると元に戻ることを確かめる.

(2) 固有値を λ,固有ベクトルを x = (a, b)と表すと,(0 i

−i 0

)(a

b

)= λ

(a

b

),

(−λ i

−i −λ

)(a

b

)= 0

となる.この方程式が 0でない固有ベクトルを持つためには,行列式が 0でなくてはならない.し

たがって

λ2 − 1 = 0 , λ = ±1

である.固有ベクトルを求めるには,行列の式に戻して a, bの関係を求めればよい.規格化の条件

と合わせると,二つの固有値は λ = ±1,固有ベクトルは

1√2

(i

1

),

1√2

(−i1

)

である.

(3) 直交関係はベクトルの内積に関する関係である.ここでのベクトルは複素数なので,内積は複

素共役を用いて定義される.つまり,λ = 1の固有ベクトルと λ = −1の固有ベクトルの内積は

1√22

(−i 1

)( −i1

)=

1

2(−1 + 1) = 0

となるので,直交している.一方,λ = 1の固有ベクトル同士の内積は

1√22

(i 1

)( −i1

)=

1

2(1 + 1) = 1

となり,規格化されている.

(4) 完全性の条件は

1√22

(i

1

)(−i 1

)+

1√22

(−i1

)(i 1

)=

(1 0

0 1

).

9-3. ψ′2と ψ1を直交するように選ぶので,∫

dx(c∗1ψ∗1 + c∗2ψ

∗2)ψ1 = c∗1 + c∗2

∫ψ∗2ψ1 dx = 0

が条件式である.また,ψ′2の規格化条件から∫

|c1ψ1 + c2ψ2|2dx = |c1|2 + |c2|2 + c1c∗2

∫ψ∗2ψ1 dx+ c∗1c2

∫ψ∗1ψ2 dx = 1

の条件を課すことにより,c1, c2が決定できる.さらに縮退がある場合は,ψ1と ψ′2に直交するよ

うに次の状態を定める.

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10-1. 図 6.3左図で交点を一つ持ち,右図では交点が一つもない場合を考えればよい.すなわち,

0 <

√2ma2V0ℏ

2

である.

10-2. V0 → ∞の極限をとると k → ∞である.すると case I, case IIの条件は,tan ℓa, cot ℓaが発散す

る条件となるので,ℓa = π/2× nである.この条件は無限井戸型のと同じエネルギーを導く(た

だし,ポテンシャルの幅が 2倍になっている).また k → ∞なので,|x| > aでの波動関数は常に

0になっている.

10-3. 例題の有限井戸型ポテンシャル全体を−V0シフトさせて考える.すると固有値を求める条件式は√2m(−E)

ℏ2= p tan(pa), p =

√2m(E + V0)

ℏ2

となる.ただし,E < 0で V0 > 0である(E < 0でなければ束縛されない).この式に 2aV0 = α

の条件を代入し,αは一定に保ったままで a→ 0の極限操作を行うと

p =

√2m(E + α

2a

)ℏ2

→√mα

ℏ2a

となる.また tan(pa) ∼ paとなることも用いると,最初の条件式から√2m(−E)

ℏ2=

(√mα

ℏ2a

)2

a, E = −mα2

2ℏ2

となり,例題 8のデルタ関数のエネルギーに一致した.

10-4. 有限井戸型の場合,波動関数がポテンシャルの幅よりも外側にしみだすことが可能になる.その

結果,波動関数が広がる空間的領域が増加するので,不確定性関係から運動量の大きさは減少す

る.エネルギーは運動量の 2乗に比例するので,有限井戸型の方がエネルギーの励起は低く抑え

られる.

10-5. 束縛状態においてシュレディンガー方程式Hψn = Enψnが成り立っているとする.今,エネルギー

を連続的に微小にずらし,En → En + δEになる場合を考え,そのとき波動関数が ψn → ψn + δψ

になったとする.この場合でもシュレディンガー方程式は成り立つので,

H(ψn + δψ) = (En + δE)(ψn + δψ)

である.2次以上の微小量を無視すると

Hδψ = δEnψn + Enδψ

である.左側から ψ∗nをかけて積分すると∫

ψ∗nHδψ dx = δEn

∫ψ∗nψn dx+ En

∫ψ∗nδψ dx.

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ここでH はエルミート演算子だから,右側に作用させても,左側に作用させても良いので

En

∫ψ∗nδψ dx = δEn

∫|ψn|2 dx+ En

∫ψ∗nδψ dx ∴ δEn

∫|ψn|2 dx = 0

が成り立つ.この問題は束縛状態を考えているので,波動関数は規格化可能である.つまり,積分∫|ψn|2 dxは有限値である.したがって δE = 0となり,エネルギーは離散的になる.

10-6. シュレディンガー方程式から

d2

dx2ψ =

ℏ2

2m(V (x)− E)ψ

である.以下では背理法を用いて証明しよう.

 Eが V の最小値よりも小さいと仮定すると,V (x)−Eは常に正の量である.すると,ψ > 0と

なる領域では,その 2階微分 ψ′′も正となるので,波動関数は常に下に凸となる.V (x) − E > 0

が保たれると,xが増えるにつれて ψは一方的に増え続けることになる.

 一方,ψ < 0の場合には常に ψ′′ < 0となり上に凸となる.つまり,xが増えるにしたがい,一

方的に減少する関数になる.どちらの場合でも,無限遠方で波動関数の絶対値は増加する関数に

なっており,このような関数は規格化不能である.

 この結果は問題の前提条件と矛盾している.すなわち,規格化可能な波動関数を得るにはEmin ≤V (x)でなければならない.

11-1. 無限遠方でのポテンシャルとエネルギーを比較する.E > V1.

11-2. E > 0.

11-3. 本文中で説明したように,波動関数はポテンシャルの期待値∫ψ∗V (x)ψdxが,より小さくなるよ

うに分布する.図 6.6の場合の方が xの大きい領域でのポテンシャルが小さいため,波動関数はそ

の領域により大きく存在することが可能になる.ポテンシャルは 0に近づいているので,多少の

しみだしがあってもエネルギーが大きくなることがない.その結果,波動関数がより右側(xの正

側)に寄って分布することになる.

注意:もちろん,全エネルギーは運動エネルギーからの寄与も含むので,常にこの解釈が成り立つ

わけではない.しかし,r → ∞の領域では束縛状態の波動関数はほぼ平らになり,dψ/dxは 0に

近づくので運動エネルギーはほぼ 0である.そのため,この領域を考える場合には,ポテンシャル

エネルギーの形だけから波動関数の振る舞いを議論できる.

12-1. 期待値を計算すると

⟨x⟩ = 1

L

∫ L

0e−ipnx/ℏxeipnx/ℏdx =

L

2,

⟨x2⟩ = 1

L

∫ L

0e−ipnx/ℏx2eipnx/ℏdx =

L2

3.

よって∆x =√L2/3− L2/4 = L/(2

√3)である.L→ ∞の極限では∆xは無限大になる.

9

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13-1. 水素原子中の電子のおおよその運動量を pとすると rp ∼ ℏである.これをエネルギーに代入するとE = ℏ2/(2mr2)− e2/(4πε0r)である.極小となる条件は

dE

dr= − ℏ2

mr3+

e2

4πε0

1

r2= 0 , r =

4πε0ℏ2

me2.

よって,E = − me4

2(4πε0)2ℏ2である.

13-2. 電子,陽子の質量をm,M,それぞれの運動量を p, P と書く.それぞれの束縛エネルギーは,オー

ダーとしては運動エネルギー程度のはずなので

p2

2m:P 2

2M∼ 1 : 106

である.M ∼ 2000mなので,p2 : P 2 ∼ 1 : 109である.一方,不確定性関係から運動量は半径に

反比例するはずである.したがって,原子の半径は原子核の半径の 104倍程度大きい.

14-1. エルミート演算子A,Bに対しA′ = A− ⟨A⟩, B′ = B − ⟨B⟩を導入し,Ω = A′ + iλB′を定義する

(λは実数).よって

Ω†Ω = A′2 + λ2B′2 + iλ[A′, B′]

である.ここで

([A,B])† = (AB −BA)† = BA−AB = [B,A] = −[A,B]

であるから,新たにエルミート演算子 C を導入すると [A′, B′] = [A,B] = iC と表せる.

 両辺の期待値をとると ⟨Ω†Ω⟩ = ⟨A′2⟩ + λ2⟨B′2⟩ − λ⟨C⟩ となるが,左辺は必ず正なので右辺も正である.右辺を λの 2次関数とみると,右辺が必ず正になる条件は(2次方程式の判別式から)

⟨C⟩2 − 4⟨A′2⟩⟨B′2⟩ ≤ 0である.ここで ⟨A′2⟩ = ∆A2, ⟨B′2⟩ = ∆B2なので,

∆A2∆B2 ≥(⟨[A,B]⟩

2i

)2

が成り立つ.

14-2. Pψ(x) = cψ(−x)の両辺にもう一度 P を作用させる.P 2は 2回空間を反転する操作なので何も変

化しない.一方右辺は c2ψ(x)となる.よって 1 = c2となり,c = ±1以外にありえない.

14-3. x2, p2は空間反転を行っても符号が変化しないので,パリティ演算子の固有状態である.実際に,

表 10.1の調和振動子の波動関数は,パリティ+,−の状態が交互に繰り返している.(補足:ハミルトニアンが P と可換であることを意味している.つまり,波動関数は Pψn = cnψnを満たし,an

は+1か−1のどちらかである.)

10

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15-1. xの負領域から正の方向に向け入射させたとする.x < 0での波動関数は

ψ(x) = Aeikx +B e−ikx, k =√2mE/ℏ

である.一方,x > 0の領域では負の方向に向かう波は条件から存在しないので ψ(x) = C eikx と

書ける.

  x = 0での連続条件からA+B = Cである.また,微分の連続条件は,デルタ関数を考慮して,

ik(C −A+B) = −2mα

ℏ2C

となる.二つの関係式からBを消去すると,透過率が計算できる.

T =|C|2

|A|2=

1

1 + (mα2/2ℏ2E).

同様に反射率は

R =1

1 + (2ℏ2E/mα2)

である.このポテンシャルでは,E → ∞で完全透過が起こる.

15-2. 式 (9.17)で sinκa = 0になれば T = 1になり完全透過である.この条件は無限井戸型ポテンシャ

ルのエネルギーを求める条件式と全く同じになる.

16-1. このポテンシャルは無限遠方で 0で,中心がへこんだような形をしている.見慣れない形だが指

示にしたがって考えればよい.

(1) 波動関数の微分は

ψ′ =d

dx(A sech(ax)) = A

d

dx

2

e−ax + eax= 2aA

−e−ax + eax

(e−ax + eax)2= −aA sech(ax)tanh(ax),

ψ′′ = −a2A[−sech(ax)tanh2(ax) + sech(ax)

(e−ax + eax)2 − (eax − e−ax)2

(e−ax + eax)2

]= a2A

[sech2(ax)tanh2(ax)− sech3(ax)

]となる.シュレディンガー方程式に代入すると,

− ℏ2

2md2ψdx2 + V (x)ψ = − ℏ2

2ma2A

[sech(ax)tanh2(ax)− sech3(ax)

]− ℏ2a2

msech2(ax)A sech(ax)

= −Aℏ2a2

2m

[tanh2(ax) + sech2(ax)

]sech(ax)

= −Aℏ2a2

2msech3(ax)

となる.したがって,ψ = A sech(ax)はエネルギーE = −ℏ2a2

2mの解になっている.

 規格化のためには∫ ∞

−∞A2sech2(ax)dx

11

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が必要である.u = tanh(ax) =sinh(ax)

cosh(ax)を導入し

du

dx=

a

cosh2(ax)

を用いると,∫ ∞

−∞A2sech2(ax)dx = A2

∫ ∞

−∞

1

adu =

1

aA2 [tanh(ax)]∞−∞ =

1

aA21− (−1) = 1

なので,A =√a/2である.

(2) (1)と同様に代入すると,シュレディンガー方程式が成り立つことが分かる.エネルギーは

E = ℏ2k2/(2m)である.

(3) 透過率,反射率を知るには,無限遠方での波動関数の振る舞いを知るだけで十分である(例題

16参照).x→ ∞での波動関数は,

ψsc → A

(ik − a

ika+ a

)eika

となる.一方,x→ −∞では

ψin → A

(ik + a

ika+ a

)eika = eika

となる.

 またどちらも,eikaの項のみを含むということは,xの正の方向に進む波であり,負の方向への

波(反射波)が存在していない.

 計算するまでもないが,透過率は∣∣∣∣ ik − a

ika+ a

∣∣∣∣2 = 1

となり,常に透過することがわかる.

17-1. 式 (10.13)に,式 (10.15)の条件 2n− ε+ 1 = 0を代入すると,

aj+2 =2j − 2n

(j + 2)(j + 1)aj

となる.量子数 nは n = 0, 1, 2, · · · である. 第 1励起状態は奇数列の初項なので

ψ1 = a1ξ e−ξ2/2.

12

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a1は規格化積分より決定される.

 第 2励起状態は偶数列の n = 2の波動関数で,係数は

a2 = −2a0, aj = 0 (j ≥ 4)

となる.よって

ψ2 =(a0 + a2ξ

2)e−ξ2/2 = a0

(1− 2ξ2

)e−ξ2/2

である.以上で a1, a0は規格化により,表 10.1のように定まる.

17-2. 基底状態の波動関数を用いて期待値を計算する.ポテンシャルは

⟨V ⟩ = 1

x0√π

∫ ∞

−∞dxe−ξ2/2 mω

2x2

2e−ξ2/2 =

1√π

ℏω2

∫ ∞

−∞dξ ξ2e−ξ2

=1

4ℏω.

ここではガウス積分の公式を用いた.

 運動エネルギーについては

⟨K⟩ = 1

x0√π

∫ ∞

−∞dx e−ξ2/2 −ℏ2

2m

d2

dx2e−ξ2/2 = − ℏω

2√π

∫ ∞

−∞dξ e−ξ2/2 d

2

dξ2e−ξ2/2

= − ℏω2√π

∫ ∞

−∞dξe−ξ2/2

(−1 + ξ2

)e−ξ2/2 = − ℏω

2√π

(−√π +

1

2

√π

)=

1

4ℏω.

17-3. 第 1励起状態の波動関数

ψ(x) =1

(2x0√π)

1/22ξe−ξ2/2

を用いて計算すると

⟨x2⟩=

∫ ∞

−∞dxψ(x)x2ψ(x) =

4x302x0

√π

∫ ∞

−∞dξ ξ4e−ξ2 =

4x302x0

√π

3

4

√π =

3

2x20,⟨

p2⟩=

∫ ∞

−∞dxψ(x)

(−ℏ2

d2

dx2

)ψ(x) =

−4ℏ2

(2x0√π)x10

∫ ∞

−∞dξ e−ξ2

(−3ξ2 + ξ4e−ξ2

)=

−4ℏ2

(2x0√π)x10

(−3

2+

3

4

)√π =

3ℏ2

2x20

となる.一方,⟨x⟩ = ⟨p⟩ = 0となるので,

∆x∆p =

√3

2x20

√3ℏ22x20

=3ℏ2

となる.(不確定性関係が励起状態に拡張された形である.)

13

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18-1. 波動関数

Ψ =1√2

[ψ1(x)e

−iE1tℏ + ψ2(x)e−iE2tℏ

]を用いて期待値を計算する.例題 18(b)の結果を用いると

⟨x(t)⟩ = 1

2

∫ ∞

−∞

(eiωtψ2(x)xψ1(x) + e−iωtψ1(x)xψ2(x)

)dx

=1

2

(2x0

√π)−1/2 (

x0√π)−1/2 (

eiωt + e−iωt)√

π =1√2x0cos(ωt).

この結果は古典的な単振動と類似している.

 無限井戸型の際にも学んだように,量子力学における定常状態の解は古典的な意味での運動を

しない.いくつかの定常状態の重ね合わせを考えると,その定常状態の間で古典的運動に類似し

た振動運動をすることがわかる.

18-2. エルミート多項式による表示を用いてエネルギーの期待値を計算する.その際,例題 18の冒頭に

まとめてある漸化式を利用するのが便利である.波動関数は ψn = Nne−ξ2/2HN (ξ)である.

 最初にポテンシャル項から計算する.ポテンシャルの期待値を計算するには式 (10.20)の漸化式

を 2回用いて,以下の変形を行うと便利である.

mω2x2

2ψn =

Nnmω2x20

2

(ξ2Hne

−ξ2/2)

=Nnmω

2x202

ξ

(1

2Hn+1 + nHn−1

)e−ξ2/2

=Nnmω

2x202

(1

4Hn+2 +

1

2(n+ 1)Hn + n

1

2Hn + n(n− 1)Hn−2

)e−ξ2/2.

期待値を計算するには,左から ψnをかけて積分するわけだが,直交関係からHnの項しか残らな

い(括弧内の第 2項,第 3項).

 式 (10.19), (10.28)を用いると,ポテンシャルの期待値は∫ ∞

−∞ψnmω2x2

2ψn dx =

mω2x202

(n+

1

2

)=

1

2ℏω(n+

1

2

).

 一方,運動エネルギーを計算するには微分が必要だが

d

dxψn =

Nn

x0

d

(e−ξ2/2Hn(ξ)

)=Nn

x0

(−ξHn +

dHn

)e−ξ2/2

である.ここで

dHn

dξ= 2nHn−1

14

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という漸化式を利用して微分を消去する.

 さらに微分を実行すると,2階微分は

d2

dx2ψn =

Nn

x20

d

((−ξHn + 2nHn−1)e

−ξ2/2)

=Nn

x20

(−Hn − ξ

dHn

dξ+ 2n

dHn−1

dξ+ (−ξHn + 2nHn−1)(−ξ)

)e−ξ2/2

=Nn

x20

(−Hn + ξ2Hn − ξ · 2nHn−1 + 4n(n− 1)Hn−2 − 2nξHn−1

)e−ξ2/2

=Nn

x20

(−Hn + ξ2Hn − nHn − 2n(n− 1)Hn−2 + 4n(n− 1)Hn−2

−n Hn + 2(n− 1)Hn−2) e−ξ2/2.

また,括弧内の第 2項はポテンシャルの計算結果を用いることができるので,上の計算で得た結

果を代入する.それ以外の項については,直交関係からHnを含む項だけが残る.寄与する項のみ

を書くと

=Nn

x20

(−Hn + (n+

1

2)Hn − 2nHn

)e−ξ2/2

=Nn

x20

(−(n+

1

2)Hn

)e−ξ2/2

となる.

 以上から運動エネルギーの期待値は

− ℏ2

2m

∫ ∞

−∞ψn

d2

dx2ψndx =

ℏ2

2m

1

x20

(n+

1

2

)=

ℏω2

(n+

1

2

)となる.

 したがって,全エネルギーの期待値は

En = ℏω(n+

1

2

)となる.また,ポテンシャルエネルギーの期待値と運動エネルギーの期待値は,任意の nの状態

で常に等しい.これはビリアル定理の帰結である.

19-1. 交換関係の公式を用いて

[a†a, a†] = a†[a, a†] + [a†, a†]a = a†.

この関係を a†ψK の固有値方程式に用いる.

(a†a)a†ψK = a†(a†a) + a†ψK = (K + 1) a†ψK

なので,a†ψK の固有値は (K + 1)である.

15

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19-2. 基底状態と第 1励起状態を考えると,∫dx (c1a

†ψ0)† ψ0 = c∗1

∫dxψ∗

0 a ψ0 = 0

となる.(aψ0 = 0を用いた.)第 2励起状態も同様である.

19-3. aは消滅演算子なので aψn = Cnψn−1と書ける.ここで Cnは定数で,以下でそれを決定したい.

この式の両辺を絶対値 2乗して積分すると,∫dxψ∗

n(a†a)ψn = |Cn|2

∫|ψn−1|2dx.

ψnはそれぞれ規格化されているので,右辺は |Cn|2である.また,左辺は数演算子の期待値なので

a†aψn = nψn

が成り立つ.よって左辺は nに等しい.したがって,Cn =√nである.

  a†の場合は,a†ψn = Kψn+1と書いておき,両辺の 2乗の積分を考えると∫dxψ∗

n(aa†)ψn = K2.

ここで交換関係を用いた後で,数演算子の関係式を代入すると∫dxψ∗

n(a†a+ 1)ψn = n+ 1 = K2

が得られる.(状態は規格化されていることを仮定している.)したがって,K =√n+ 1.

19-4. 昇降演算子の性質から ψ0 に a† を n 回作用させれば量子数 n の状態が作れる.つまり,ψn =

Nn(a†)nψ0である.規格化定数Nn = 1/

√n!であることは n = 1, 2, · · · の順番で帰納的に示すこ

とも可能だが,ここでは別な方法を用いる.

 規格化条件は∫ψ∗nψndx = |Nn|2

∫ψ∗0(a)

n(a†)2ψ0dx = 1

なので (a)n(a†)nψ0を計算する必要がある.最初に,

(a)n(a†)nψ0 = (a)n−1[a, a†(a†)n−1]ψ0

の変形から出発する.(なぜなら aψ0 = 0だから.)

 交換関係の公式 [A,BC] = B[A,C] + [A,B]C を用いると,

(a)n−1[a, a†(a†)n−1]ψ0 = (a)n−1[a, a†](a†)n−1 + a†[a, (a†)n−1]

ψ0

= (a)n−1(a†)n−1ψ0 + (a)n−1a†[a, (a†)n−1]ψ0

16

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となる.最後の等式で [a, a†] = 1を用いた.

 第 2項に対して,再び交換関係の公式を用いると

(a)n−1(a†)n−1ψ0 + (a)n−1a†[a, a†(a†)n−2]ψ0

= (a)n−1(a†)n−1ψ0 + (a)n−1a†(a†)n−2ψ0 + (a)n−1a†a†[a, (a†)n−2]ψ0

となる.ここで第 1項と第 2項は同じあることに気付くであろう.第 3項に対し同じトリックを繰

り返せば,最終的に n (a)n−1(a†)n−1ψ0 となる.したがって,一般的に

(a)n(a†)nψ0 = n (a)n−1(a†)n−1ψ0

が得られた.この公式を繰り返し用いれば

(a)n(a†)nψ0 = n (a)n−1(a†)n−1ψ0 = n(n− 1) (a)n−2(a†)n−2ψ0 = · · · = n!ψ0

となる.この結果を規格化積分に代入すれば,|Nn|2n! = 1が得られる.演算子の方法を用いると,

エルミート多項式の方法よりもはるかに簡単に計算できることがわかる.

19-5. ポテンシャルの期待値は⟨1

2mω2x2

⟩=

⟨1

2mω2 ℏ

2mω(a+ a†)2

⟩=

⟨ℏω4

(a2 + (a†)2 + 2a†a+ 1

)⟩である.ここで [a, a†] = 1を用いて順番を入れ替えた.それぞれの項の期待値を計算すると,波

動関数の直交性から∫dxψ∗

na†a ψn = n

∫dxψ∗

n ψn = n,∫dxψ∗

n(a†)2 ψn ∝

∫dxψ∗

n ψn+2 = 0,∫dxψ∗

na2 ψn ∝

∫dxψ∗

n ψn−2 = 0

となる.よって⟨1

2mω2x2

⟩=

ℏω4(2n+ 1) =

ℏω2

(n+

1

2

).

19-6. a†演算子を微分を用いて表す.

a† =

√mω

2ℏx− 1√

2mℏωip =

√1

2ξ − 1√

2

d

dξ.

19-3.の結果から

ψ1 = a†ψ0 =1√2

(ξ − d

)(Nexp[−ξ2/2]

)=

N√2(ξ + ξ) e−ξ2/2 = 2Nξe−ξ2/2

17

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同様に

ψ2 =√2a†ψ1 =

1√2

(ξ − d

)(2Nξe−ξ2/2

)=

N√2

(2ξ2 − 2 + 2ξ2

)e−ξ2/2

=N√2

(4ξ2 − 2

)e−ξ2/2

である.このようにして表 10.1の波動関数は導出できる.

21-1. x, yの偏微分は例題中で与えてあるので,z成分を新たに計算する.必要となるのは

∂r

∂z=

z√x2 + y2 + z2

= cosθ,

∂θ

∂z=

−1

sinθ

−z2√

x2 + y2 + z23 +

1√x2 + y2 + z2

= −sinθ

1

r,

∂ϕ

∂z= 0

の偏微分である.chain ruleを用いると zに関する偏微分は

∂z=∂r

∂z

∂r+∂θ

∂z

∂θ+∂ϕ

∂z

∂ϕ= cosθ

∂r− sinθ

1

r

∂θ.

 ラプラシアンは x, y, zの偏微分の 2乗を計算し合計すれば得られる.ただし,その計算には注

意が必要である.例えば,zの 2階偏微分は

∂2

∂z2=

(cosθ

∂r− sinθ

1

r

∂θ

)(cosθ

∂r− sinθ

1

r

∂θ

)= cos2θ

∂2

∂r2+ sin2θ

1

r2∂2

∂θ2− cosθsinθ

(−1

r2∂

∂θ+

1

r

∂r

∂θ

)−sinθ

1

r

(−sinθ

∂r+ cosθ

∂θ

∂r

)+ sinθ

1

r2cosθ

∂θ

= cos2θ∂2

∂r2+

sin2θ

r2∂2

∂θ2+

sin2θ

r

∂r− 2

sinθcosθ

r

∂θ

∂r+

2sinθcosθ

r2∂

∂θ

となる.左側にある偏微分は,その右側にある関数にも微分演算子にも作用することを考慮する.

長い計算となるが,x, yの 2階偏微分も合計すると,多くの項がキャンセルした結果,

∇2 =∂2

∂r2+

2

r

∂r+

1

r2∂2

∂θ2+

1

r2cosθ

sinθ

∂θ+

1

r21

sin2θ

∂2

∂ϕ2

が得られる.

 以下では別な方法も紹介しておこう.極座標 r, θ, ϕ方向の単位ベクトル er, eθ, eϕを用いて,ナ

ブラ演算子を

∇ = er∂

∂r+ eθ

1

r

∂θ+ eϕ

1

rsinθ

∂ϕ(1)

18

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と表せる.(分母にある rや rsinθはそれぞれの方向の単位長さを表している.)単位ベクトルは当

然だが er · eθ = 0のような直交関係を満足している.

 これらの単位ベクトルは,もとのデカルト座標系の単位ベクトル i, j, kと

er = sinθcosϕi+ sinθsinϕj + cosθk, (2)

eθ = cosθcosϕi+ cosθsinϕj − sinθk, (3)

eϕ = −sinϕi+ cosϕj (4)

の関係になっている.(図を書いて考えてみると納得できます.)

  (1)の 2乗を用いてラプラシアンは

∇2 =

(er

∂r+ eθ

1

r

∂θ+ eϕ

1

rsinθ

∂ϕ

)·(er

∂r+ eθ

1

r

∂θ+ eϕ

1

rsinθ

∂ϕ

)と書けるが,左側の微分は右側の単位ベクトルにも作用することを忘れてはいけない.

 単位ベクトルの表式 (2), (3), (4)から微分が 0でないのは

∂er∂θ

= cosθcosϕi+ cosθsinϕj − sinθk,

∂eθ∂θ

= −sinθcosϕi− sinθsinϕj − cosθk,

∂eϕ∂ϕ

= −cosϕi− sinϕj,

∂er∂ϕ

= −sinθsinϕi+ sinθcosϕj,

∂eθ∂ϕ

= −cosθsinϕi+ cosθcosϕj

である.したがって,基底ベクトルと基底ベクトルの微分の内積を計算すると

eθ · ∂eθ/∂θ = 0, eθ · ∂er/∂θ = 1,

eϕ · ∂eϕ/∂ϕ = 0, eϕ · ∂er/∂θ = 0, eϕ · ∂er/∂ϕ = sinθ, eϕ · ∂eθ/∂ϕ = cosθ

が得られる.

 以上得られた結果と,単位ベクトルの直交性を用いると

∇2 =∂2

∂r2+

1

r2∂2

∂θ2+

1

r2sin2θ

∂2

∂ϕ2

+1

reθ ·

∂eθ∂θ

1

r

∂θ+

1

reθ ·

∂er∂θ

∂r+

1

rsinθeϕ ·

∂eϕ∂ϕ

1

rsinθ

∂ϕ

+1

rsinθeϕ · ∂er

∂ϕ

∂r+

1

rsinθeϕ · ∂eθ

∂ϕ

1

r

∂θ

=∂2

∂r2+

1

r2∂2

∂θ2+

1

r2sin2θ

∂2

∂ϕ2+

1

r

∂r+

1

rsinθsinθ

∂r+

1

r2sinθcosθ

∂θ

=∂2

∂r2+

2

r

∂r+

1

r2∂2

∂θ2+

cosθ

r2sinθ

∂θ+

1

r2sin2θ

∂2

∂ϕ2

が得られる.煩雑なことに変わりはないが,若干見通しはよい.

19

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21-2. x = rcosϕ, y = rsinϕで定義される円柱座標 (r, θ, z)を用いる.ラプラシアンを円柱座標で表し,

波動関数を ψ(r) = F (r, θ) ·G(z) と変数分離して代入すると,シュレディンガー方程式は

− ℏ2

2m

(∂2F

∂r2+

1

r

∂F

∂r+

1

r2∂2F

∂θ2

G+ F

∂2G

∂z2

)+ V (z)FG = E · FG

である.両辺を FGで割り,移項すると

1

F

[− ℏ2

2m

(∂2F

∂r2+

1

r

∂F

∂r+

1

r2∂2F

∂ϕ2

)− EF

]=

−1

G

[− ℏ2

2m

∂2G

∂z2− V0e

−z2/z20G

].

異なる変数の関数が常に等しいので,両辺はある一定数に等しい.その数を−Ez とすれば,分離

された方程式は

− ℏ2

2m

(∂2F

∂r2+

1

r

∂F

∂r+

1

r2∂2F

∂ϕ2

)= (E − Ez)F (r, θ),

− ℏ2

2m

∂2G

∂z2− V0e

−z2/z20G(z) = EzG(z)

となる.F (r, θ) = R(r)Θ(θ)とおいて代入すれば,さらに変数分離できる.R(r)がしたがう方程

式は Besselの微分方程式になる.

21-3. デカルト座標系で 3次元調和振動子のシュレディンガー方程式を書くと,

− ℏ2

2m

(∂2

∂x2+

∂2

∂y2+

∂2

∂z2

)Ψ+

1

2mω2

(x2 + y2 + z2

)Ψ = EΨ

である.Ψ = ψx(x)ψy(y)ψz(z)を代入して変数分離を行う.代入した上で両辺を ψx(x)ψy(y)ψz(z)

で割ればよい.(本来は,ψx(x)χ(y, z)のように分離して計算するが,今の場合は 3つの変数につい

て対称的なので,簡単である.)

 変数 xについての方程式は

− ℏ2

2m

∂2ψx(x)

∂x2+

1

2mω2x2ψx(x) = Exψx(x)

となる.変数 y, zについても同様な方程式が得られ,3つの方程式のエネルギーEx, Ey, Ezの和が

元のエネルギーEに等しく,E = Ex + Ey + Ez が成り立つ.

 それぞれの方程式は 1次元のシュレディンガー方程式なので,すでに求めた 1次元調和振動子の

解を用いて

E =

(nz + ny + nz +

3

2

)ℏω (nz, ny, nz = 0, 1, 2 · · · )

となる.

20

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22-1. ルジャンドルの微分方程式

(1− x2)d2F

dx2− 2x

dF

dx+ ℓ(ℓ+ 1)F = 0

に F =∞∑j=0

ajxj を代入する.

(1− x2)

∞∑j=2

ajj(j − 1)xj−2 − 2x

∞∑j=1

ajjxj−1 + ℓ(ℓ+ 1)

∞∑j=0

ajxj = 0,

∞∑j=2

ajj(j − 1)xj−2 −∞∑j=2

ajj(j − 1)xj − 2∞∑j=1

ajjxj + ℓ(ℓ+ 1)

∞∑j=0

ajxj = 0.

xj−2の項の添え字を jから j + 2にずらすと,恒等式

∞∑j=0

aj+1(j + 2)(j + 1)xj −∞∑j=2

ajj(j − 1)xj − 2∞∑j=1

ajjxj + ℓ(ℓ+ 1)

∞∑j=0

ajxj = 0,

∞∑j=2

[aj+2(j + 2)(j + 1)− j(j − 1) + 2j − ℓ(ℓ+ 1)aj ]xj = 0

が得られる.よって aj の満たす漸化式は

aj+2 =(j − ℓ)(j + ℓ+ 1)

(j + 2)(j + 1)aj

となる.

 この漸化式は j → ∞の極限では

aj+1 ∼ aj

となる.そのため,x = ±1の場合にこの級数は,

∞∑j

aj(1)j ∼ a0(1 + 1 + 1 + 1 + · · · ) → ∞

となり,発散してしまう.しかし物理的に意味のある解は有界でなければならない.そこで,jの

最大値 jmaxが存在し,かつ jmax − ℓ = 0を要請すると,jmax+2以降∗の数列がすべて 0になり解

は発散しない.(* 書籍では jmax以降となっておりますが,厳密には jmax+2以降です.)

 ここで j は 0または正の整数なので,この条件は ℓについても強い制限を与えている.すなわ

ち,この解が発散しないためには,ℓは負でない整数でなければならない.

22-2. θ, ϕの積分を実行するだけである.ϕの積分は Yℓ,mの中の eimϕが,常にその複素共役とキャンセ

ルしてしまうため,2πを与えるだけである.θの積分については,例題で示したように x = cosθ

と置き換えることによってルジャンドル陪関数の公式が用いられる形になる.

21

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22-3. もしx, y, z方向の角運動量の成分が同時に正確に定まるのであれば,L2の固有値は ℓ2であるべきで

ある.しかし,例題22(c)の結果からx, y成分の角運動量は不確定性を持ち,∆Lx = ∆Ly = ℏ/√2で

ある.この不確定性により,ℓ2から ℓ(ℓ+1)にずれると考えられる.実際,例題22(c)では,角運動量が

1の状態でL2の期待値を計算すると,1ℏ2ではなく,⟨L2⟩ = ⟨L2x+L

2y+L

2z⟩ = ℏ2+ℏ2/2+ℏ2/2 = 2ℏ2

が得られる.

22-4. 交換関係の公式を用いてL2 = L2x + L2

y + L2z と Lz の交換関係を計算する.Lz 同士は常に交換す

ることを考慮すると,

[Lz, L2x + L2

y + L2z] = [Lz, L

2x + L2

y]

= Lx[Lz, Lx] + [Lz, Lx]Lx + Ly[Lz, Ly] + [Lz, Ly]Ly

= iℏLxLy + iℏLyLx + (−iℏ)LyLx + (−iℏ)LxLy

= 0.

この結果は,L2と Lz の演算子が同時固有状態を持つことを意味している.

22-5. 極座標表示 x = rsinθcosϕを用いて

x

r= sinθcosϕ = sinθ

1

2(eiϕ + e−iϕ) = −

√2π

3Y1,1 +

√2π

3Y1,−1

と表せる.y, z方向の単位ベクトルも同様にできる.

 あるいは一般的に

x

r=

1∑m=−1

cmY1m

と展開した上で,両辺に Y ∗1mをかけて直交関係を用い,係数を決めることも可能である.例えば

c1は

c1 =

∫dΩY ∗

1,1 sinθcosϕ

=

∫ π

0dθ sinθ

(−√

3

)sin2θ

∫ 2π

0dϕ e−iϕ 1

2

(eiϕ + e−iϕ

)= −

√3

8ππ

∫ π

0dθ sinθsin2θ

= −√

8

∫ 1

−1

(1− u2

)= −

√2π

3

と計算できる.

23-1. R(r)の代わりに u(r)を用いるのが便利である.式 (13.4)のシュレディンガー方程式で r → ∞ を考えると,第 2項目の遠心力ポテンシャルは無視できる.また V (r)も 0になるので,結局

− ℏ2

2m

d2

dr2u(r) = Eu(r)

22

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に帰着する.この方程式の解は eikr, e−ikr なので,動径波動関数は R(r) = eikr/rまたは R(r) =

e−ikr/rが得られる.

 時間依存シュレディンガー方程式を変数分離したとき得られる,時間に依存する解 e−iEt/ℏを合

わせて考えると,前者は

exp [i(kr − Et/ℏ)] = exp

[ik

(r − Et

kℏ

)]となるので,時間が増えるに従い rの正の方向に平行移動する.つまり,中心から外向きに向かう

外向波である.また,後者の解は内向波である.

23-2. 式 (13.1)において変数を無次元化することを考える.この式の中で単位を持っている量はm, ℏ, Eである.したがって,ξ = maℏbEcr が無次元になるように a, b, cを決めればよい.結果は a =

1/2, b = −1, c = 1/2である.rを消去して ξだけで表すと,

1

2

(− d2

dξ2− 2

ξ

d

dξ+

1

ξ2

)R(ξ) = R(ξ)

である.分母の 2は見にくいので,新たに x =√2ξと定義すれば,(

d2x

dx2+

2

x

d

dx+ (1− 1

x2)

)R(ξ) = 0

が得られる.この方程式は数学ではよく知られた特殊関数の方程式で,その解は球ベッセル関数,

球ハンケル関数と呼ばれている.物理的には 3次元の球面波を表すので,電磁気などの分野でも

重要である.

24-1. 図 13.2から考えて,2ma2V0/ℏ2 < π2/4であれば一つも解がない.u(r)の満たす方程式は 1次元

の井戸型ポテンシャル同じだが,u(0) = 0の条件のため 1次元の場合の case IIの解のみが現れる.

つまり 1次元の場合の基底状態に対応する解は最初から存在していない.1次元の問題では,基底

状態が存在するのでポテンシャルがどんなに弱くても必ず一つは束縛状態が現れるが,3次元では

ポテンシャルの深さによっては束縛しない可能性がある.

 また,運動エネルギー,ポテンシャルエネルギーの個々の寄与を考えると以下のように説明で

きる.波動関数は u(0) = 0の条件のため,u(r)の傾き du/drは原点で決して 0にはならない.(も

しこの条件がなければ,波動関数が原点付近で平らになり,du/dr = 0になることが起こりうる.

実際,1次元有限井戸型ポテンシャルの基底状態は,原点で微分が 0になっていることを確認して

みるとよい.)

 微分が 0にならないため,運動エネルギーの期待値

∫dr u∗(r)

(− ℏ2

2m

d2u

dr2

)=

∫dr

ℏ2

2m

(du

dr

)2

は決して 0になることはない.そのため,波動関数 uがポテンシャル内で束縛されるためには,こ

の運動エネルギーよりもポテンシャルが深くなくてはならない.つまり,非常に弱いポテンシャル

では決して束縛することできない.

23

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24-2. 例題 24とよく似ているが,違いは r ≤ aでポテンシャルが無限大である点である.また,束縛状

態を考えているのでE < 0である.

 まず,r ≤ aで u(r) = 0である.次に,a < r < bの領域でのシュレディンガー方程式は,

− ℏ2

2m

d2u(r)

dr2− V0u(r) = E u(r)

なので,p ≡√

2m(V0 +E)/ℏを用いて

u(r) = A sin pr +B cos pr

である.しかし,境界条件から u(a) = 0を満たす必要があるので,

Asinpa+Bcospa = 0, B = − sinpa

cospaA.

よって

u(r) = A sin pr − sinpa

cospaA cos pr

=A

cospa(sinpr cospa− sinpa cospr) = A′ sin (p(r − a))

が得られる.

 一方,r > bでは自由粒子なので

− ℏ2

2m

d2u(r)

dr2= E u(r)

となる.q ≡√−2mE/ℏを定義すると

u(r) = C exp[qr] +D exp[−qr]

である.r → ∞で発散してはならないので,C = 0でなければならない.

 得られた波動関数を用いて r = bでの連続条件を考える.波動関数とその微分の連続性から

A′sin[p(b− a)] = De−qb,

pA′cos[p(b− a)] = −qD e−qb

である.A′, Dは 0でないので

p cot[p(b− a)] = −q

である.この条件とポテンシャルの条件式

(qa)2 + (pa)2 =2ma2V0

ℏ2(5)

24

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の交点の数が束縛状態の数である.例題と同様な関係式を作ると

π2ℏ2

8m(b− a)2< V0 <

9π2ℏ2

8m(b− a)2(6)

である.

25-1. 散乱状態を考えるので E > 0である.r < aでの波動関数は,シュレディンガー方程式を解いて

u(r) = Asinkr, k =√2mE/ℏ である.本来は cosの解も存在するが,u(0) = 0の条件から禁止さ

れる.続いて r > aでの解は,位相のずれ δを用いて u(r) = Csin(kr + δ) と書く.

  r = aでの連続条件は

Asinka = Csin(ka+ δ), kCcos(ka+ δ)− kAcos(ka) =2mα

ℏ2Csin(ka+ δ).

この 2式を変形して

cot δ = −(cot(ka) +

ℏ2k2mα sin2(ka)

).

25-2. 束縛されているときは動径方向の流れは生じないが,角度方向の流れは存在する.散乱状態の場

合は,動径方向にも流れが存在する.

26-1. 素直に代入して交換関係を計算する.

PCM = pp + pe , p =mppe −mepp

M

を用いると,

[riCM , P

jCM

]=mp

M

[rjp, p

jp

]+me

M

[rje, p

je

]=mp +me

Miℏδij = iℏδij ,[

ri, pj]=mp

M

[rje, p

je

]+[−rjp,−

me

Mpjp]me

M

[rje, p

je

]=mp +me

Miℏδij = iℏδij

となる.

 念のため,重心の座標と相対運動量の交換関係 [riCM , pi]を計算すると

[riCM , p

i]=

[mer

ie +mpr

ip

M,mpp

je −mep

jp

M

]= 0

となる.つまり,重心座標と相対座標は常に可換であり,量子力学系として別々に扱えることを意

味している.

27-1. 3次元調和振動子を極座標で解く場合には,動径方向の方程式は

− ℏ2

2m

(d2R(r)

dr2+

2

r

dR(r)

dr

)+ℓ(ℓ+ 1)ℏ2

2mr2R(r) +

mω2r2

2R(r) = ER(r)

25

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となる.R(r) = u/rを代入すれば

− ℏ2

2m

d2u(r)

dr2+ℓ(ℓ+ 1)ℏ2

2mr2u(r) +

mω2r2

2u(r) = Eu(r)

である.最初に,1次元の場合と同じように無次元化しよう.ρ0 =√

ℏ/mω, ρ = r/ρ0 を導入す

ると

d2u

dρ2− ℓ(ℓ+ 1)

ρ2u− ρ2u+ εu = 0, ε ≡ 2E

ℏω.

 続いて,r ∼ 0や r → ∞での漸近解を調べる.1次元で学んだように,ρ→ ∞では e−ρ2/2.ま

た,例題 23から u ∼ rℓ+1である.そこで u(ρ) = rℓ+1e−ρ2/2v(ρ)と仮定して代入すると,v(ρ)に

対する方程式

d2v

dρ2+

(2(ℓ+ 1)

ρ− 2ρ

)dv

dρ+ (ε− 2ℓ− 3)v = 0

が得られる.v(ρ)に対してべき級数展開を仮定して代入すると

∑j=2

j(j − 1)ajρj−2 + 2(ℓ+ 1)

∑j=1

jajρj−2 − 2

∑j=1

jajρj + (ε− 2ℓ− 3)

∑j=0

ajρj = 0.

最初の 2つの項の添え字を 2ずらすと∑[(j + 2)(j + 1) + 2(j + 2)(ℓ+ 1)

aj+2 −

2j − (ε− 2ℓ− 3)

aj

]ρj = 0,

aj+2 =2j − (ε− 2ℓ− 3)

(j + 2)(j + 1) + 2(ℓ+ 1)(j + 2)aj .

 この級数が無限に続くと v(ρ)は発散する.そこで級数には上限 j = jmax が存在することと,

j = jmax のとき 2jmax − (ε − 2ℓ − 3) = 0 が成り立つことを要請する.この条件から固有値

E =ℏω2(2jmax + 2ℓ+ 3)が決定される.

 この級数は偶数項と奇数項が別々に存在する(2つおきの数列)だが,もとの微分方程式の第

2項を見ると,j = 1のとき 2(ℓ+ 1)a11

xという項が存在している.この項は x = 0で発散するの

で,u(0) = 0の条件を満たさない.したがって,a1 = 0でなければならないので奇数項は存在し

ない(一方,a0の項は存在していないことに注意).jは偶数のみであることを考慮し,あらため

て nr = jmax/2, nr = 0, 1, 2, · · · とおいて,

Enℓ = ℏω(2nr + ℓ+

3

2

)(nr = 0, 1, 2 · · · , ℓ = 0, 1, 2 · · · )

が得られた.

26

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27-2. 前問 27-1.で,漸近解を除いた後の関数 v(ρ)は微分方程式

d2v

dρ2+

(2(ℓ+ 1)

ρ− 2ρ

)dv

dρ+ (ε− 2ℓ− 3)v = 0

に従う.この方程式がラゲールの微分方程式に帰着することを示せばよい.

 ここで x = ρ2の変数変換を行う.つまり

d

dρ=

d

dx

dx

dρ= 2ρ

d

dx,

d2

dρ2=

d

(2ρ

d

dx

)= 2

d

dx+ 4ρ2

d2

dx2= 2

d

dx+ 4x

d2

dx2.

この結果を微分方程式に代入すると(2d

dx+ 4x

d2

dx2

)v +

(2(ℓ+ 1)

ρ− 2ρ

)2ρdv

dx+ (ε− 2ℓ− 3)v = 0,

xd2

dx2v +

((ℓ+

1

2+ 1)− x

)dv

dx+

1

4(ε− 2ℓ− 3)v = 0

この式は確かにラゲール陪多項式を導く微分方程式である.この方程式が有限な解を持つために

は,正の整数 nを用いて

1

4(ε− 2ℓ− 3) = n

でなければならない.つまり

E = ℏω(2n+ ℓ+

3

2

)である.これは前問の答と一致している.

28-1. (1) 代入すると ρ(r) = 4r2e−2r/a0 である.これを微分して極大値を決定する.

dρ/dr ∼ 2r(−r/a0 + 1) = 0.

よって,r = a0.

(2) 期待値の計算である.

⟨r⟩1s =4π

pia30

∫ ∞

0e−2r/a0r2dr r =

4

a30

a4024

3! =3

2a0,

⟨r2⟩1s =4

a30

a5025

4! = 3a20.

よって,∆r1s =

√3

2a0.

27

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28-2. (1) 規格化積分を実行し,定数 c0を決定する.∫ ∞

0r2R20(r)

2dr = c20

∫ ∞

0r2(1− r

a0+

r2

4a20

)e−r/a0

= c20

(2!a30 − 3!a30 +

4!

4a30

)= 2c20a

30,

c0 =√

1/2a30.

∫ ∞

0r2R21(r)

2dr =c204a20

∫ ∞

0r2r2 e−r/a0 =

c′2

16a404!a50 = 1,

c0 = 1/√

6a30.

(2) 期待値を計算する.20の状態は

⟨r2⟩ =∫ ∞

0r4R20(r)

2dr =1

2a30

∫ ∞

0r4(1− r

a0+

r2

4a20

)e−r/a0

=1

2a30

(4!a50 − 5!a50 +

6!

4a50

)= 42a20.

21の状態は

⟨r2⟩ =∫ ∞

0r4R21(r)

2dr =1

24a50

∫ ∞

0r4r2e−r/a = 30a2.

したがって,R20(r)の平均 2乗半径がより大きい.

(3) r2R20(r)2などを rで微分して最大になる点を探す.結果は 20の状態は r = (3 +

√5)a, 21の

状態は r = 4aである.

0 2 4 6 8 10

-0.1

0.0

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

r

RnlHrL

図 2: 第 1励起状態の波動関数.実線が

ℓ = 0,点線が ℓ = 1.

0 2 4 6 8 100.00

0.05

0.10

0.15

0.20

0.25

r

ΡHrL

図 3: 確率密度分布.

28-3. 角運動量の期待値を計算する.角運動量の固有状態なので固有値に置き換えるだけである.

⟨L2⟩ =∫

Ψ∗L2Ψd3r =1

10

[4× 0 + 1× 2ℏ2 + 4× 2ℏ2 + 1× 2ℏ2

]= 12ℏ2,

⟨Lz⟩ =1

10[4× 0 + 1× ℏ+ 4× 0− ℏ] = 0.

28

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29-1. x, y, z方向の量子数をぞれぞれ自然数m,n, ℓと表すと,エネルギーは

Emnℓ =ℏ2

2m

π2

a2(m2 + n2 + ℓ2

)となる.基底状態は (m,n, ℓ) = (1, 1, 1)の 1通りである.第 1励起状態は (2, 1, 1), (1, 2, 1), (1, 1, 2)

の 3通り,第 2励起状態は (2, 2, 1), (2, 1, 2), (1, 2, 2)の 3通りである.スピンの自由度も考慮する

と,(1 + 3 + 3)× 2 = 14個.

29-2. 水素原子と同様に,状態が電子で完全に埋まる場合が安定と考える.基底状態 (3ℏω/2)は (nr, ℓ) =

(0, 0)である.同様に,第 1励起状態 (5ℏω/2)は (0, 1),第 2励起状態 (7ℏω/2)は (1, 0)と (0, 2)の

二つの状態が縮退している.さらに,一つの ℓの状態は 2ℓ + 1重に縮退している.スピンも考慮

すると,基底状態が埋まった場合の電子数は 1 × 2 = 2,第 1励起状態までが埋まった場合には

2 + 3× 2 = 8,第 2励起状態まで埋まった場合は 2 + 6 + 1× 2 + 5× 2 = 20個である.

※ 書籍中では,最後の式は 2 + 8+ 1× 2 + 5× 2 = 20 となっていますが,途中計算から明らかな

ように 2 + 6 + 1× 2 + 5× 2 = 20の誤りです.訂正をお願いします.

29-3. ヘリウムはZ = 2なので,1個の電子の束縛エネルギーは−13.6× 4 = −54.5 eVである.よって,

ヘリウム原子の基底状態のエネルギーは−109 eV.実験値−79 eVと比べると,より強く束縛さ

れている.これは二つの電子の間の反発力(正の量)を無視したためである.

29-4. 図から ℓ = 0の波動関数は原点付近で大きい値を持つのに対し,ℓ = 0の状態は,相対的に動径距

離 rの大きい領域での存在確率が高い.中心の原子核から離れた電子から見ると,原子核との間

に他の電子が多数存在することになり,それらの電子から反発力を受ける.結果として,中心の原

子核からの引力が遮蔽されてしまう.その逆に,ℓ = 0の状態は中心近くに存在するため,その内

側に他の原子が入り込むことが起こりにくく,遮蔽されにくい.

30-1. 例題 30のA2を計算する.

A2 =B2

4

(x2 + y2

).

z方向の一様磁場に対し,xy平面の 2次元調和振動子ポテンシャルが得られた.

30-2. 例題とは異なるゲージ固定条件A = (0, Bx, 0)をとると,磁場はやはり z方向の一様磁場になる.

一方,例題の (b)にしたがってハミルトニアンを計算すると

H =1

2m

[p2x + (py − eBx)2 + p2z

]となる.このハミルトニアンは z座標に依存していないので,その方向には自由粒子として振る

舞う(同時対角化可能と言える).したがって,第 7章「自由粒子」で学んだように,z成分の方

程式を解けば

pz =2πℏLz

k (k = 1, 2, 3, · · · )

29

Page 30: シュレディンガー方程式 ~基礎からの量子力学攻略~ 発展問題 … · シュレディンガー方程式 ~基礎からの量子力学攻略~ 発展問題解答

となる.ここで Lz は周期境界条件を用いるために導入した z方向の長さである.

 また一見,y方向の運動量は変更を受けているように見えるが,ハミルトニアン内に yを変数と

する量がないため,y方向についても自由粒子として振る舞い,演算子 py はハミルトニアンと同

時固有状態を構成する.z方向と同様にして

py =2πℏLy

m (m = 1, 2, 3, · · · )

となる(Ly は Lz と同様な量).

  y, z方向の運動量固有値を hy, hz と表すとすると,ハミルトニアンは

H =1

2m

[p2x + (hy − eBx)2 + h2z

]となる.このうち hzはエネルギーの原点をずらすだけである.xyの 2次元の運動に限って考える

と,2次元でのH は

H =1

2mp2x +

1

2m

(e2B2

m2

)(x− hy

eB

)2

となる.これは振動中心が x = hy/(eB)である 1次元調和振動子ポテンシャルの運動と同じであ

る.振動子定数を読み代え,z 方向のエネルギー(自由粒子)も足し合わせると,エネルギー準

位は

En =eB

m

(n+

1

2

)+

ℏ2

2m

(2π

Lzk

)2

(n, k = 1, 2, 3, · · · )

となる.これをランダウ準位と呼ぶ.

 私たちは 3次元の問題を扱っており,特に xyの 2次元平面では調和振動子の運動になっていた.

得られたエネルギーは,調和振動子の量子数 n,z方向の量子数 kには依存するが,(不思議なこと

に)y方向の量子数には依存しない.y方向の量子数mは 0から無限大までの値をとるので,あ

る n, kを定めたときに,(y方向の運動量の異なる)無限個の状態が縮退することになる.この現

象はランダウ準位に特有なものである.

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