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135 2008.11 金属資源レポート ―E - Scrap Conference カリフォルニア州等における電子廃棄物リサイクルの現状 E - Scrap Conference 参加報告 1. はじめに 2008 年 9 月 17 ~ 18 日 に、 米 国 ア リ ゾ ナ 州 の グ レ ン デ ー ル 市 に お い て、2008 North American Electronic Recycling Conference(通称 E-Scrap 2008)が開催された。この会合は、北米における電子廃棄物の収集・リサイ クル事業に関わる企業や NPO が集合し、リサイクル事業の進め方等について意見を交換する場である。使用済み 小型電子 ・ 電気製品からのレアメタル回収技術の開発に取り組んでいる当機構金属資源技術部では、北米において 自治体や NPO が数多くの回収・リサイクルを実施している状況は、既存技術を用いたリサイクルを実施した場合 の可能性と限界を見ることができるショーケースと捉え、この会合に参加して情報収集を行ったので、結果を報告 する。 松本 茂野 金属資源技術研究所 主任研究員 5412. E-Scrap Conference の概要 この会合の主催者は雑誌E-Scrap News 及びResource Recycling を編集発行する Resource Recycling 社であ る。雑誌 Resource Recycling は、26 年以上にわたっ て発行されている定期刊行物で、リサイクル業なら びに有機系廃棄物処理業(コンポスト)向けの雑誌 である。同社は Resource Recycling 以外に、E-Scrap News Plastics Recycling Update 等を発行している。 E-Scrap Conference は、2003 年以降毎年秋に米国の 各地で展示会と共に開催されている。2007 年は 10 月 にジョージア州アトランタで開催され、2009 年は 9 月 にフロリダ州オーランドで開催が予定されている。 E-Scrap 2008 は 9 月 17 ~ 18 日の 2 日間開催されたが、 前日の 16 日には後述する国際電子器機リサイクル協 会 主 催 の 教 育 プ ロ グ ラ ム・Preconference workshop (事前ワークショップ)も開催された。 本会議の日程とプログラムは表 1 のとおり。計 3 回 の共通セッション以外は、2 つの並行セッションが別 会場で同時に行われた。各セッションでは、テーマご とに座長及び複数名の講演者が登壇し、まず座長が セッションの趣旨説明を行い、講演が始まる。講演が 終わるごとに質疑応答があり、最後の講演の終了後も 座長が講演者に対して質問したり、聴講者との質疑応 答を行う等していた。 会合参加者は総勢 824 名であり、アメリカ以外にカ ナダ、メキシコ等 15 か国から参加があった(図 1)。 米国からは、全米 45 州から 726 名の参加があった。 カリフォルニア州の 136 名を筆頭に、地元アリゾナ 州 62 名、テキサス州 51 名、イリノイ州 45 名、ミネ ソタ州 34 名、ミシガン州、オレゴン州、フロリダ州、 写真 1.E-Scrap 2008 会場入り口

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カリフォルニア州等における電子廃棄物リサイクルの現状 ―

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参加報告―

カリフォルニア州等における電子廃棄物リサイクルの現状― E-Scrap Conference 参加報告 ―

1. はじめに2008 年 9 月 17 ~ 18 日 に、 米 国 ア リ ゾ ナ 州 の グ レ ン デ ー ル 市 に お い て、2008 North American Electronic

Recycling Conference(通称 E-Scrap 2008)が開催された。この会合は、北米における電子廃棄物の収集・リサイクル事業に関わる企業や NPO が集合し、リサイクル事業の進め方等について意見を交換する場である。使用済み小型電子 ・ 電気製品からのレアメタル回収技術の開発に取り組んでいる当機構金属資源技術部では、北米において自治体や NPO が数多くの回収・リサイクルを実施している状況は、既存技術を用いたリサイクルを実施した場合の可能性と限界を見ることができるショーケースと捉え、この会合に参加して情報収集を行ったので、結果を報告する。

松本 茂野金属資源技術研究所 主任研究員

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2. E-Scrap Conference の概要この会合の主催者は雑誌E-Scrap News 及びResource

Recycling を編集発行する Resource Recycling 社である。雑誌 Resource Recycling は、26 年以上にわたって発行されている定期刊行物で、リサイクル業ならびに有機系廃棄物処理業(コンポスト)向けの雑誌である。同社は Resource Recycling 以外に、E-Scrap News やPlastics Recycling Update 等を発行している。

E-Scrap Conference は、2003 年以降毎年秋に米国の各地で展示会と共に開催されている。2007 年は 10 月にジョージア州アトランタで開催され、2009 年は 9 月にフロリダ州オーランドで開催が予定されている。

E-Scrap 2008は9月17~18日の2日間開催されたが、前日の 16 日には後述する国際電子器機リサイクル協会主催の教育プログラム・Preconference workshop

(事前ワークショップ)も開催された。本会議の日程とプログラムは表 1 のとおり。計 3 回

の共通セッション以外は、2 つの並行セッションが別会場で同時に行われた。各セッションでは、テーマごとに座長及び複数名の講演者が登壇し、まず座長がセッションの趣旨説明を行い、講演が始まる。講演が終わるごとに質疑応答があり、最後の講演の終了後も座長が講演者に対して質問したり、聴講者との質疑応答を行う等していた。

会合参加者は総勢 824 名であり、アメリカ以外にカナダ、メキシコ等 15 か国から参加があった(図 1)。

米国からは、全米 45 州から 726 名の参加があった。カリフォルニア州の 136 名を筆頭に、地元アリゾナ州 62 名、テキサス州 51 名、イリノイ州 45 名、ミネソタ州 34 名、ミシガン州、オレゴン州、フロリダ州、

写真 1.E-Scrap 2008 会場入り口

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共通セッションⅠ:主要産業問題点・市場、データセキュリティー及び環境 座長:Doug Smith(SONY)

・「市場を知る」David Daoud(International Data Corp.)

・「データの消去処理法にもたらされた変化」Bob Johnson(National Association for Information Destruction)

・「カーボンフットプリント(CO2 排出量表示)の削除」Eric Harris(Institute of Scrap Recycling Industries)

並行セッション A:「生産者責任の側面」 座長:John Chilcott(EPSC, ISRI e-scrap 部門理事)

・「集団企業体の取り組み」David Thompson(Manufacturers Recycling Management Co., LLC)

・「拡大生産者責任選択の調査」Mike Watson(Dell)

・「日本における e-waste 削減フローの紹介」吉田 文和(北海道大学)

並行セッション B:「アナログテレビの終焉」 座長:Jim Taggart(ECS Recycling)

・「消費者が必要としているもの」Parker Brugge(Consumer Electronics Association)

・「デジタル切り替え装置はアナログテレビを本当に切り替えることができるのか」Todd Sedmak(National Telecommunication & Information Administration)

・「津波の前触れ:何を想定し、何を備えるか」Shelia Davis(Silicon Valley Toxics Coalition)

並行セッション C:「ブラウン管処理技術」 座長:Peter Muscanelli(International Association of Electronics Recyclers)

「ブラウン管処理技術」(このセッションでは講演者全員がこの題で自社のプロセスを紹介)・Bob Erie(E-World Recyclers)・David Harris(CRT Heaven)・Simon Greer(Nulife Glass)・Sven Stenarson(MRT System)

並行セッション D:「州の活動・方策と連邦政府の構想」 座長:Scott Cassel(Product Stewardship Institute)

・「州-リサイクル請負業者委託プログラムの始動」Jason Linnell(National Center for Electronics Recycling)

・「法律、法律そして法律」Jerry Powell(E-Scrap News)

・「すべてに共通した解決策の創成」Kim Holmes(E-Scrap News)

並行セッション E:「カリフォルニア州等での電子廃棄物リサイクルの現状」 座長:Wallace MacKay(GEEP)

・「カリフォルニア州は何故料金を改定したか?」Matt McCarron(California Integrated Waste Management Board)

・「黄金州ではビジネスはいつも盛況か?」Julie L Rhodes(JLR Consulting)

・「各地域の電子廃棄物収集事業の成功例」Carrie Hakenkamp(WasteCap Nebraska)

並行セッション F:「注目の処分業者」 座長:Paul Adamson(Round2 Technologies)

・「最善の管理体制はより良い実践へつながる」Thea McManus(U.S. Environmental Protection Agency)

・「より良い ELV 管理体制を築くためのより良い構想」Pamela Brodie-Heine(Eco-Stewardship Strategies)

・「E-Scrap 処分業者への調査結果」Anne Peters(Gracestone Inc.)

9 月 17 日(水)

表 1.E-Scrap 2008 プログラム

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ニュージャージー州が各々 25 名と続く(図 2)。各州を 3 地域(西部・中部・東部)に分類すると、カリフォルニア州、アリゾナ州からの参加人数が多いため、人

数では西部が最大となるが、州の数では東部が最も多かった。

(543)

共通セッションⅡ:E-Scrap のリサイクルシステムを EU から学ぶ 座長:Jeff Sacre(CHWMEG, Inc.)

・「加工業界の展望」Norbert Zonnefeld(European Electronics Recyclers Association)

・「EU 共通の引き取りメソッド」Pascal Leroy(WEEE Forum)

・「注意深い選択がもたらす川下業者への影響」Graham Davy(Sims Recycling Solutions)

並行セッション G:「州のプログラムが暗示すること」 座長:Lynn Rubenstein(Northeast Recycling Council)

・「E-Waste に関するミネソタ州法の履行」Lisa Bujak(Minnesota Pollution Control Agency)

・「ワシントン州における電子機器のリサイクル」John Friedrick(Washington Materials Management and Financing Authority)

・「ブリティッシュ ・ コロンビア州(カナダ)におけるリサイクリングプログラムの実施」Neil Hastie(Encorp Pacific)

・「メリーランド州のリサイクリングプログラムの実施」Hilary Miller(Maryland Department of the Environment)

並行セッション H:「再利用-機器への適用のための第 2 章」 座長:Walter Alcorn(National Center for Electronics Recycling)

・「再利用のグローバル化」Bill Benton(Microsoft)

・「再利用の潜在資源としての評価」Eric Williams(Arizona State University)

・「最善な再利用実施のケーススタディー」Bill Goman(Goodwill Industries of the Columbia Willamette)

最終共通セッション:輸出について 座長:Jerry Powell(E-Scrap News)

・「中国:変化する E-Scrap 市場」Jinhui Li(Basel Convention Regional Center for Asia and the Pacific)

・「処分業者への深刻な警告」Bob Tonetti(U.S. Environmental Protection Agency)

・「国際社会における輸出刷新への取り組み」Jim Puckett(Basel Action Network)

9 月 18 日(木)

写真 2.並行セッション間の移動風景

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3. 会合の雰囲気学術会議ではないので、実務に近い問題解決を提案

するプレゼンテーションが多い。参加者も、大学や研究所からよりも企業や NPO からが圧倒的に多い。実務に沿った(実現可能性の高い)成功事例を紹介するので、発表者と聴講者との質疑応答も活発に行われる。ポスターセッションは行われず、新規開発された粉砕機や分離装置等が多数展示されていた。

今回の情報収集の主眼である、米国における廃小型家電の収集・リサイクルの現状に関する情報収集としては、カリフォルニア州が運用するリサイクルシステムの現状について州当局や NPO 団体が発表する並行セッションが注目された。このセッションは聴衆が多く、大ホール(200 ~ 300 名収容)のほぼ 70%以上の席が埋まっていた。彼らの確立したシステムは今後も見直しを継続してゆく状況であるが、今後同様のリサイクルシステム構築を検討している州や自治体が多いのかも知れない。

他のセッションでは、アメリカでは来年秋にテレビ放送が完全地上デジタル化されるため、ブラウン管テ

レビの廃棄処理、ブラウン管からの金属回収等について熱気のこもった質疑応答がなされていた。日本でも2011 年には地上デジタルに移行されるので、同様の問題やリサイクル・システム確立の準備が必要となるであろう。

4. カリフォルニア州等での電子廃棄物リサイクルの現状以下に、9 月 17 日午後に行われた並行セッション

E「特集:カリフォルニア州等での電子廃棄物リサイクルの現状」における3つのプレゼンテーションの内容を紹介する。

講演 A:「カリフォルニア州は何故料金を改定したか?

   ―州の特定電子廃棄物リサイクル事業における助成金引下げに関する議論」

     カリフォルニア州廃棄物総合管理委員会(CIWMB)

     電子廃棄物リサイクル事業 上級専門家 Matt McCarron 氏

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図 1.会合参加者の国別内訳

図 2.米国からの参加者の州別内訳

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参加報告―講演 B:「黄金州(Golden State:カリフォルニア州)

ではビジネスはいつも盛況か?   ―カリフォルニア州に登録した収集・処分業者

が直面する問題を掘り下げる」     JLR コンサルティング社 Julie L Rhodes 氏講演 C:「各地域の電子廃棄物収集事業の成功例   ―米国、カナダで事業を成功させるには?」     ネブラスカ州「WasteCap of Lincoln」代

表 Carrie Hakenkamp 氏各プレゼンテーションは内容の一部が互いに重複す

るため、セッション全体の話題をまとめた一つの紹介として再構成した。以下の紹介のうち、4-1. は講演 A及び B、4-2. と 4-3. の①、②は講演 A、4-3. の③は講演

B、4-4. は講演 C の内容に基づくものである。

4-1. 制度の概要米国カリフォルニア州では、全ての使用済み家電

製品はそのまま廃棄されると有害廃棄物となるという認識に基づき、そのリサイクル(製品として再使用、二次原料に加工して利用、及び安全な形での廃棄処分)を推進している。2003 年に Electronic Waste Recycling Act(廃家電リサイクル法)が成立し、その施行令 SB20 により、家電製品のうち、4 インチ以上の大きさの画面を持つ製品(テレビ、ディスプレイ等)の廃棄物が Covered Electronic Waste(特定電子廃棄物;CEW)に指定され、CEW が環境を汚染する

写真 3.カリフォルニア州の E-Scrap リサイクルに関する講演(NPO 代表)

写真 4.ブラウン管リサイクルのセッション終了後、講演者へ質問が集まる

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ことなく安全に収集・リサイクルされることを促すために、各種の制度・ルール(以下「SB20 制度」と呼 ぶ。)が定められた。

California Integrated Waste Management Board(カリフォルニア州廃棄物総合管理委員会;CIWMB)は、カリフォルニア州内で特定電子機器(Covered Electronic Devices;CED)が販売される際に徴収されるリサイクル料金を原資とする Electronic Waste

Recovery and Recycling Account(電子廃棄物回収リサイクル会計;EWRRA)を管理している。CIWMBはこの資金から、予め登録された廃棄物処分業者が提出する実績報告に基づき、カリフォルニア州内で発生した CEW を処分した量に応じて助成金を交付する。助成金を受取った処分業者は、そのうちの一部を、当該 CEW を収集し指定された書類を添えて持ち込んできた廃棄物収集業者に支払う(図 3 参照)。

CIWMB

CED

CED

CEW

CED

Electronics

CED: Covered Electronic DeviceCEW: Covered Electronic Waste

$$

図 3.カリフォルニア州の CEW リサイクルに伴う資金の流れ

2005 年の制度運用開始以来、CIWMB が処分業者に支払う助成金のレートは、48¢/lb-CEW 重量と定められてきた。これは、CEW 収集作業に要する費用が20¢/lb、リサイクル処理の費用が 28¢/lb という想定である。一方 CED の販売時に徴収されるリサイクル料金は、機器の画面の大きさが 4 ~ 15 インチの小型機器は 1 台につき 6US $、15 ~ 35 インチの中型機器は 1 台につき 8US $、35 インチ以上の大型機器は 1 台につき10US $に設定されている。販売される機器数量の 7 割近くが中型製品、2 割強が小型製品であるため、CED 1 台当たりの平均リサイクル料金は 8US $を下回る。

これらの設定は制度維持のために定期的に見直されることになっており、後述の事情により、今秋に助成金レートが引下げられた。さらに 2009 年からは、リサイクル料金単価の引上げも予定されている。

SB20 制度は、法律によりリサイクルを義務付けるものではなく、社会が必要とする規模の CEW リサイクル事業が市場原理に基づいて実施されることを目指している。CEW リサイクルのサービス供給コストは需要者が許容する負担水準を大きく上回るため、そのままではごく一部の非常に条件の良いケースしかリサ

イクルされない。そこで州が需要者から料金を徴収しサービス供給者に配分し、リサイクルコストを需要者が許容する額に近づけることで、リサイクル企業の自助努力(価格競争や技術革新)があれば利益が得られる状況を作り、リサイクル量を増やそうという試みである。

4-2. 制度の運用状況①リサイクル量の拡大

2005 年の制度運用開始から半年の間に、州内の登録処分業者が処理した CEW の総量は、24 百万 lb(10,886t)で、これに対し CIWMB は 11.4 百万 US $の助成金を交付した。一方この期間の CED 販売時にリサイクル料金として徴収された金額は 31 百万 US $であった。

その後 CEW リサイクル量は、四半期に 4 百万 lb(1,814t)のペースで増加し、2005/06 年度(2005 年第 3四半期~ 2006 年第 2 四半期)には 96 百万 lb(43,545t)、2006/07 年度には 158 百万 lb(71,668t)に達した(図4 参照)。これに伴い、助成金支払い額も 2005/06 年度が 46 百万 US $、2006/07 年度が 75 百万 US $と急増している。2007/08 年度の実績は現在最終集計中で

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あるが、CEW リサイクル量は 200 百万 lb(90,718t)を越え、助成金支払総額は 1 億 US $に達すると予想されている。

②基金の枯渇懸念リサイクル量が拡大する一方でカリフォルニア州内

での CED 販売量は、この期間年 10 百万台前後で横這いであったため、リサイクル料金の年間徴収額も年に約 80 百万 US $で一定であった。そのため EWRRA の収入・支出の収支は、当初の 2 年間は黒字で残高が積み上がったが、3 年目の 2006/07 年度にほぼ均衡となり、2007/08 年度には確実に赤字となる見込みである。2008/09 年度には残高が底を尽き、借金運用となる可能性が高い。

CEW リサイクル量の増加は制度の目的上好ましいことであるが、EWRRA の赤字運用化は制度の維持を困難にする。CIWMB は制度の運用状況を監視し、適切な運用が可能となるよう 2 年に 1 回助成金のレートやリサイクル料金単価を見直す権限を持っている。制度創設 4 年目の 2008 年には、こうした見直しを実施せざるを得ない状況となった。

③助成金レートの引下げ制度創設の狙いである CEW リサイクル事業への競

争原理の導入は、助成金をリサイクル費用の平均水準に設定することで実現される。しかし後述する 2007年の実態調査の結果は、リサイクル費用は制度創設以来の低下傾向が続き、従来の助成金支払いレートを大きく割り込む状況を示した。

これを受けて 2008 年 6 月に CIWMB は、CEW リサイクル助成金のレートを、従来の lb 当たり 48¢から、39¢まで引下げることを決定した。引下げは 2008 年 7

月から 9 月の間に 2 段階に分けて実施された。

④リサイクル料金の値上げ上述の助成金支払いレートの引下げにより助成金支

出が減少することで、EWRRA の今後の収支は若干改善するが、それでも 2008/09 年度中に残額が不足することは避けられない。CIWMB は EWRRA が向こう 2年間の助成金を支払える状態を維持することとなっており、これを達成するためには、CED 新規販売時に徴収するリサイクル料金の単価を上げる必要がある。

今後の州内での CED 販売台数とその画面サイズ内訳は現状のままで推移し、CEW リサイクル量は毎四半期 4 百万 lb ずつ増加すると仮定すると、2008/09 年度の資金不足を補う借入金を翌年度中に全て返済した上で、向こう 2 年間以上の助成金支払いが可能な額の EWRRA を確保するためには、CED 販売 1 台当たり 15 $を徴収する必要がある。そのため CIWMB は、CED 販売時のリサイクル料金を小型機器:6 → 8 $、中型機器:8 → 16 $、大型機器:10 → 25 $に引上げることを決定した。新たな料金は 2009 年 1 月から適用される予定である。

4-3. 制度の実態検証CIWMB は、SB20 制度の運用条件を見直すに当たり、

幾つかの点について検証作業を行った。①違反と不正

助成金の支払い額は、処分業者が CIWMB に提出する CEW リサイクル実績報告の内容に基づき、処理量に助成金レートを乗じて決定される。そのため、報告する業者の誤解や不正による処理実績量の誤り・虚偽が多いと、助成金支出が CEW リサイクルの促進に結びつかなくなる恐れがある。リサイクル実績量がど

| 2005 | 2006 | 2007 | 20082008 2 3 8/26

図 4.CEW リサイクル量の推移

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こまで正しく報告されるかは、この制度が目的を達するかどうかの重要なポイントである。

CIWMB は、処分業者からの実績報告書や、これに添付される収集業者の書類をチェックし、誤りがあれば修正する。ルールに適合しない処理量には助成金は支出されない。制度創設直後の 2005 年の半年間に支払われた助成金総額は 11.4 百万 US $であったが、これは当初報告された内容のうち 1.9 百万 US $分が

CIWMB のチェックによって修正減額された結果で、当初の報告に基づく助成金申請額の 14%は「水増し」であったことになる。助成金交付額の修正減額の理由の大部分は、補助対象としての認定に必要な書類が揃っていないためで(図 5)、制度運用当初は、多少の書類不備は意に介さず助成対象として申請されがちであったことが伺える。

86.73

0.008.02

5.25

図 5.助成金申請額が修正されたケースにおける修正理由の内訳

こうしたルール違反や不正は制度の目的達成を阻害するだけでなく、直接(チェックをすり抜ける対象外請求)及び間接(書類チェックに要する費用の増大)に助成金支出を増大させる。ただし、2007 年には申請額の「水増し判明率」は 5%以下にまで減少し、リサイクル業者の制度理解とモラル向上が進んでいる様子が伺えることから、この問題が最近の EWRRA の赤字転落の主原因ではない模様である。

②リサイクル費用の実態リサイクル助成金の支払いレートは、CEW リサイ

クルに伴う収入と支出の差引費用の平均的な水準に設定されることになっている。これまで設定されていた1lb 当たり 48¢というレートは、制度創設時の実態調査の結果に基づいて設定されたものである。こうする

ことで、相対的に費用が割高な業者は助成金を受取ってもまだ収益が出ないため市場から淘汰され、後に残る割安なリサイクル業者がより多くの処理を手がけるようになる。

この助成金支払いレートは、常に適切な水準に維持されねばならない。そのため CIWMB は登録業者に対し、毎年の CEW リサイクル処理実績数量に加え、それに伴い得た収入と要した支出について報告を求めている。この報告を行わなければ、助成金の受取りを申請する権利である業者登録は認められない。CIWMBはこの報告内容に基づき、2 年に 1 回、助成レートの見直しを行うこととなっている。

表 2 は、CIWMB によるリサイクルコストの実態調査の結果を集計したものである。収集作業、リサイクル作業のいずれも、差引費用の平均値は 2 年続けて前

表 2.CEW リサイクルの差引費用の平均値の推移

2005 20062007

(仮集計値)

収集作業 17.1 16.7 14.8

処分作業 25.2 21.5 21.0

合 計 42.3 38.2 35.8

*平均値は、調査対象の全ての業者が報告した費用の合計を、処理された CEW の総重量で割った値である。従って、各業者の実態が CEW 処理量の大小によって重み付けされた加重平均となっており、大規模な業者の実態がより強く反映されている。

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年より低下する傾向にある。両者を合計したリサイクル事業全体の差引費用の平均値は、2005 年時点で lb当たり 42.3¢で、既に助成金レート 48¢を下回っていたが、2007 年の仮集計ではこれが 35.8¢にまで低下した。その結果 2007 年には、登録収集業者の 85%、登録処分業者の 78%が、助成金受取額以下の差引費用で作業していたことが判明した。

処分業者が報告する CEW リサイクル費用について、CIWMB は業者への立ち入り検査等によりその内容の信憑性を確認し、より正確な実態を把握している。その結果は業者によって様々であるが、報告内容全体としての信憑性は十分あると評価されている。その上で、個々の業者の報告内容の正確さを評価し、これが企業の種類や規模等とどのような関係を示すかが調査され、以下の傾向が見出された。(1) 収集と処分を両方行っている業者の報告内容は、

そうでない業者のものよりも正確(2) CEW リサイクルを専門に行う業者の方が、幅

広い事業の一部として実施する業者よりも報告が正確

③業界の実態調査さらに最近、登録業者に対するサンプル調査が複数

実施され、本制度の下で CEW リサイクルを行う業界の実態が調べられた。

(1)CEW 収集業者CIWMB に登録するカリフォルニア州の CEW 収集

業者の 8%を対象に、CEW を引渡した処分業者から実際にどの程度の報酬を受取っているかを調査したところ、報酬は 8 ~ 43¢/lb-CEW の範囲をとり、その平均値は 23.3¢であった。従来の助成金レート決定の際の想定である 20¢を上回る報酬を受取っていた業者は全体の 77%という結果が得られた。この結果はCIWMB が処分業者側に対して行った前述の実態調査の結果とほぼ一致している。

調査対象とした収集業者のうち、SB20 に基づく現在の制度が立ち上がった 2005 年以前から使用済み電子機器の収集を行っており、制度立ち上げ直後に収集業者として承認されたのは、全体の 5 割強で、残りの半数近くはその後に参入した業者であった。

95%の収集業者が、CIWMB 助成金のレート引き下げは処分業者から自分たちへの支払額の減額を招く恐れがあると考えている。しかしそれが理由で CEW 収集事業から撤退する予定の業者は居なかった。68%の収集業者は、今後もリサイクル料金や助成金の見直しが繰り返されると考えている。

CEW の収集実績に関する質問への回答状況を図 6に示す。制度運用開始以降の CEW 収集量の急速な伸びは、収集業者自身から見ても期待以上のものであったことが伺われる。また CEW を引取る相手先として、企業や地域住民だけでなく、リサイクル運動を展開する学校や NGO が重要であることが分かる。

なお、CEW 収集業者の 52%は、これまでの事業

規模の拡大は SB20 制度の効果であると感じており、49%が今後も収集量は増え続けると予想している。一方で、カリフォルニア州内では CEW 収集業者の数が多くなり過ぎ、市場は飽和状態にあると答えた業者が全体の 57%に達した。

また、現在 CED に指定されておらず販売時にリサイクル料金徴収の対象外になっている製品のうち、パソコンについては 82%、プリンターやファックスは67%、携帯電話やビデオレコーダー、DVD プレイヤー、音響機器についても 60%の業者が、これらをリサイクル料金徴収の対象に含めることに賛成している。

(2)CEW 処分業者CIWMB に登録するカリフォルニア州の CEW 処分

業者は、いずれも CEW 収集業者でもあり、その他に解体業、材料販売、建物改装、部品販売、中古品販売業等を営む企業が多い。州全体の CEW リサイクル量に占めるシェアは、上位 2 社で全体の 30%、5 社で50%に達する。

調査した処分業者の 54%は、SB20 制度で支払われる 48¢/lb-CEW の助成金で、CEW リサイクル費用は十分カバーできると回答している。77%が CEW 取扱量は期待どおりに伸びていると感じ、同じく 77%は2009 年以降処理施設の能力増強を計画している。

図 7 に、処分業者が用いている処理技術に関する調査結果を示す。一般に小型電子機器のリサイクルにおいて作業効率上のネックになりがちな分解方法については、やはり手作業が主体であることが明らかである。一方、プラスチック部材の選別は色による方法が一般的なようである。また今後の課題は、有害物質を含む部品を効率よく識別し取除く技術の確立にあるとの認識が伺える。

一方、CEW リサイクルにおける社会的側面からの配慮についての調査結果を図 8 にまとめた。CEW に含まれるハードディスク等の記憶媒体の取扱いは、個人情報保護の観点から特別な配慮が求められ、特に機器の再利用を図る際には十分な措置が必要となる。またスクラップ輸出市場の存在は、近年北米において電子機器リサイクルの鎖を形成する上での障害として捉えられている。今後の最大の課題としては、輸送コスト抑制やリサイクル業者間の競争激化が多くの業者によって挙げられた。

4-4. その他のリサイクルの事例米国及びカナダでは、市や郡等の地方自治体が主体

となって電子廃棄物の収集・リサイクル事業を進めている例が多く見られる。これらには、カリフォルニア州やカナダ諸州のように州の規模で運用されているリサイクル制度と一体となって実施されている場合と、国や州政府の制度や支援が存在しない中、地方自治体が単独で運用している場合とがある。

こうしたリサイクル事業の実情はケースによって千差万別であると考えられるが、その中でもリサイクル

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Q1

Q2 CEW

NGO

図 6.CEW 収集業者へのアンケートの結果

CEW

図 7.CEW リサイクル技術に関する調査結果

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図 8.CEW リサイクルの社会的側面に関する調査結果

事業が成立するために必要な一定の条件が存在するかも知れない。これを明らかにする目的で、北米各地から 10 地域の事例を選定し、その状況について聞き取り調査を行った。

事例の選定に当たっては、上述の州政府との連携・支援の有無の他、対象地域の面積、人口、収集する電子廃棄物の総量や人口一人当たりの量等、多くのファクターに偏りが出ないように配慮されている。10 件の事例の概要を一覧で比較したものを表 3 に示す。

多くの事例に共通して見られる要素として、以下の点が挙げられる。(1) 地域の多様なNGOや、可能であれば自治体とも、

連携体制を作り育ててゆくことで、収集ソースの確保と人件費の圧縮に努めることが非常に重要。

(2) 成功する取組みでは、無料引取イベントの開催ないしは引取料金を安価に保つことによって、参加者を増やしている。

(3) CEW 収集時に、廃バッテリーや蛍光管、家庭で発生する有害廃棄物をも引取るようになった事例が増えている。

(4) 一回の持込みで引受ける品物の数に上限を設けるケースが多い。こうすることで、引取り量をより正確に予想でき、作業計画が立て易くなる。

ここでピックアップした事例は、カリフォルニア州の SB20 制度のように、市場メカニズムの導入を目指

すようなものではなく、自治体の旗振りの下に地域住民がボランティア的に(あるいは NGO を組織して)リサイクル運動を展開しているケースが多い。また、当該自治体が電子廃棄物を廃棄物処分場に捨てることを条例で禁じていたり、住民が埋め立て処分に反対している等の背景を持つケースが少なくない。従って、この調査で多くの事例に認められた要素は、環境保護運動の延長線上に位置付けられるリサイクル運動に特徴的なものではないかと考えられる。

また、廃家電製品の収集活動の全体的な傾向として、以下の事実が明らかとなった。(1) 対象地域の人口が少ない事業ほど、人口一人当

たりの収集量は多い。(2) 収集イベントでは、水銀を含む品物が多く集ま

るので、これに対処するために有害物質を取扱えるボランティアを確保しておく必要がある。

(3) 人口が多く、かつ/または、裕福な地域では、収集される廃棄物総量に占める廃テレビの割合が高くなる。

(4) 廃テレビを引取っている事業主体では、引取らない事業主体に比べ、廃テレビ以外の収集量も多い。

(5) 何年も続けるうちに事業コストの劇的な減少が起こっているケースが多い。

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実施主体 州政府の支援 対象人口 2007収集量(t)

(一人当たりkg) 収集の対象 引取料金 収集の方法 廃棄禁止

条例 特筆すべき取り組み 収集量と内容の傾向

Decatur市(ジョージア州) なし 1.9万人 60.5t

(3.2kg)

・ コード付き電化製品全て(TV除く)

・ ポリ容器,電池,水銀

-

・ 年一回の収集イベント+道端での宣伝活動

-

・ より小規模な収集イベントの頻繁な開催へ移行中 -

Pasco郡(フロリダ州)

なし(立ち上げ時に州が資金援助)

44万人 303.2t(0.7kg) - -

・ 常設拠点×2箇所

・収集イベント-

・ 再利用出来る物はE-Bayで売却

・ 2007年6月以降TV回収量が増加

Sioux Falls市(サウスダコタ州) なし 23万人 477.9t

(2.1kg)

・ 全ての電子・電気機器

無料

・回収イベント・ 水道代請求書

にリーフレット添付

・04年に禁止

・ 処理施設で回収イベントを開催しコスト削減狙う

・ ドライブスルーで時間短縮

-

Orange郡(カリフォルニア州) なし 12万人 408.3t

(3.4kg)

・ CRT、パソコン、AV機器(家電を除く)

無料・ 市内5箇所+

埋立処分場で常時収集

・ 02年に一部機器を禁止

・ 地域NPOと連携し再利用を促進、売却で経費の一部を賄う

-

Snohomish郡(ワシントン州) なし 65万人 838.3t

(1.3kg)

・ 電子・電気機器全般(廃棄禁止対象外のものを含む)

有料

・ 3公共施設+15私有施設で回収 -

・ 国の制度が施行されるまでの間代わりに実施するとの位置づけ

-

Crow-Wing郡(ミネソタ州)

州の制度と一体で運用 2.6万人 138.5t

(5.3kg)

・ 全ての家電製品・ バッテリー、タ

イヤ、モーターオイル、有害物質

$5/品+$15/世帯

・ 埋立処分場で収集(30~45km間隔で所在)

- -

・ 近年収集量が減少傾向にある

Hennepin郡(ミネソタ州)

州の制度と一体で運用 115万人 2720t

(2.4kg)・ 全ての家電製品・TV、パソコン 無料 ・ 常設拠点×2

箇所 - ・ 州の財政支援もあり近年は収支黒字化

・ 年15~20%ずつ増加中

Napa市(カリフォルニア州)

州の制度と一体で運用 13.4万人 325.5t

(2.4kg)

・ コード付き家電全て

・ バッテリー、蛍光灯、有害物質

(試行中)

無料

・ 年一回収集イベント

-

・ リサイクル業者、NPO等と連携し再利用促進

・ 近年減少しつつある

Calgary市(アルバータ州)

制度は州、収集拠点を市が運営

102万人 2049t(2.0kg) - 有料 - -

・ 5~10年後のコスト増を見越した高めの料金設定

・ 近年TV引取量が増加

Yorkton市(サスカチュワン州)

州の収集施設の所在地 1.5万人 46.5t

(3.0kg) - - - -・地域NGOとの連携・地域住民を雇用

・ TV引取量は増えていない

表 3. 北米における電子廃棄物収集・リサイクル事業の事例 10 選

* Compiled from “Coast to Coast Collection Success” presented by Carrie Hakenkamp at the E-Scrap Conference, September 2008 in Phenix, AL.

5. 終わりに私がこれまで多く参加した学術的な会合では、実用

化に向けての技術的な提案が行われるケースが多かった。公表したシーズを実用化まで至らしめるのは、主に企業体もしくは企業体と研究者との共同作業であった。

一方 E-Scrap Conference は科学色、学術色には乏しいものの、今回この会合に参加したことで、企業体が地域住民とともに実務に添ったリサイクル手法を試行錯誤した末に、リサイクル事業の実施に至った経緯を知り、これを支援した NPO の活動を学ぶことができた。その結果、職務上担当する研究テーマにおいて、リサイクルプロセスの技術的な確立だけではなく、それが実用化しやすいプロセスかどうかという点も必ず念頭におきながら研究開発活動を進めることが重要であると再認識した。

なお、この会合に参加するに当たり、E-Scrap 主催者とコンタクトを取った際に、日本での E-Scrap リ

サイクルの現状等を次年度に発表あるいは Resource Recycling や E-Scrap News に寄稿して欲しいとの要請を受けている。

(2008.10.20)

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