大気・海洋拡散モデルを用いた福島第一原発 事故による放射...

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日本原子力学会 2014年春の年会 2014326日(水)~28日(金) 東京都市大学 世田谷キャンパス (JAEA) 堅田元喜,○茅野政道,寺田宏明,小林卓也, 太田雅和,永井晴康,(気象研) 梶野瑞王 大気・海洋拡散モデルを用いた福島第一原発 事故による放射性物質の大気放出量の推定 B22 1/10

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日本原子力学会 2014年春の年会 2014年3月26日(水)~28日(金) 東京都市大学 世田谷キャンパス

(JAEA) 堅田元喜,○茅野政道,寺田宏明,小林卓也, 太田雅和,永井晴康,(気象研) 梶野瑞王

大気・海洋拡散モデルを用いた福島第一原発 事故による放射性物質の大気放出量の推定

B22

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背景と目的 • 発表者らは、福島第一原発事故当初から、大気拡散モデルと環境

モニタリングデータを用いた、放射性物質の大気放出変動の逆推定を実施。

(Chino et al., 2011; Katata et al. 2012a, b; Terada et al. 2012; Kobayashi et al. 2013, 2013年春の年会(近畿大))

• 地表沈着モデルの改良と新たな環境モニタリングデータの公表: 降雨、雪、霧による湿性沈着の細分化、地表面状態による乾燥沈着の細分

化、ヨウ素の化学形態による沈着プロセスの細分化 2011年3月12日から16日にかけて測定された福島県の環境モニタリングポ

ストデータ(詳細値)の公表。 米国DOEやJAEAの航空機サーベイに基づくI-131及びCs-137の地表沈着量

分布。 (Torii et al. 2013)

目的:新たな環境データと大気・海洋拡散モデルのコンビネーション による2011年3月の大気放出率の時間変動を再推定

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大気放出率の推定フロー

逆推定 (Reverse estimation)

単位放出を仮定した大気拡散・ 地表沈着計算

大気中濃度、地表沈着量、 空気吸収線量率

環境モニタリング 拡散シミュレーション

プルームが陸側に流れた時の放出率時間変動

逆推定 (Inverse estimation)

大気モデルによるフォールアウト 計算+ 海洋モデルによる移行計算 海表面濃度(Cs-134)

放出率の時間変動の包括的な評価

初期条件

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(陸側に流れた期間の放出率 は固定)

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数値計算モデル

大気拡散モデル (WSPEEDI-II) 初期条件と境界条件: 気象庁 GPV(Grid Point Value) 気象モデル: MM5 of PSU/NCAR 大気拡散モデル: 原子力機構 GEARN

海洋拡散モデル(SEA-GEARN) 初期条件と境界条件:FNMOC, OISST, TOPEX/Poseidon, WOD2001 海洋モデル: 海洋研究開発機構 AFES and OIFES 海洋拡散モデル: 原子力機構 SEA-GEARN 使用データ ・3/12, 3/15-16: 主に福島県内の可搬型モニタ、ポスト(線量率) ・他の期間:陸側:福島県及び茨城県内のダストデータ(濃度) 海側:北太平洋の海表面サンプリング(濃度)

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Rele

ase

rate

(Bq

h-1) I-131 Cs-137

推定結果(3月前半)

プラント事象との関連

3月14日 3号機ベント 5:20 .

3月13日午前 3号機 DW 圧力上昇

3月15日 3号機 ベント 16:05 ~ 2, 3号機 DW圧力低下 16:00–01:00

5/10 日 時 3/12 3/13 3/14 3/15 3/16 3/17

2号機 SR弁開: 3月14日 21:30, 23:25 3月15日01:02

3月14日 3号機 水素爆発11:01 .

3月15日 2号機 DW圧力低下7:00–11:25

3月16日 3号機 DW 圧力低下09:00–12:00

3月13日 3号機ベント9:24, 12:30

3月12日午前1号機 DW圧力上昇.

3月12日 1号機 ベント 14:00-15:00 1号機 水素爆発 15:36

放出率

(Bq/

h)

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3/31

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00h

Rele

ase

rate

(Bq

h-1)

JAEA Cs137 JAEA I131

6/10

Cs-137 I-131

3号機 ベント. 21:30 3月17日05:30 3月18日11:25 3月20日

2号機 再溶融の指摘(Tanabe)

1号機, 3号機再溶融の指摘 (Tanabe)

3/17 3/20 3/23 3/26 3/29 4/1

推定結果(3月後半)

プラント事象との関連

日 時

放出率

(Bq/

h)

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新しいソースタームと計算モデルによるCs-137 沈着量分布の再現性

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WSPEEDI-II (1 Apr. 2011) 文科省航空機サーベイ (31 May. 2012)

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プルームの動き ①3月12日 ②3月13日 ③3月14日夜~15日 ④3月15日朝~夕方 ⑤3月15日午後~16日 ⑥3月20日 ⑦3月21日

3月15日午後 ~16日の降雨

3月20日の降雨

3月21日の降雨

拡散計算から推定 される広域の地表 汚染形成プロセス

下図引用:航空機サーベイの結果 http://radioactivity.mext.go.jp/ja/1910/2011/11/1910_111112.pdf 8/10

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下図引用: http://radioactivity.mext.go.jp/ja/1910/2011/12/1910_1216.pdf

局地域の地表汚染 形成プロセス (主な寄与)

3/12 1号機ベント14:30-水素爆発15:36を含む。(NNWで乾燥沈着)

3/14夜~15 未明 2号機リーク (降雨沈着)

3/14夜~15 未明 2号機リーク(乾燥沈着) 3/16 朝、3/21夜間、他

3/15 午後 2号機圧力減少

(降雨沈着)

3/15 午前 2号機圧力減少 (乾燥沈着)

3/15 午前 2号機圧力減少

(降雨沈着) 3/15 夜中(NNWで降雨沈着)

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結論

これまでの結果(Terada et al., 2012) との主な違いは以下の通り : (1) 3月12日午後 • 3月12日14時からの1号機でのベント操作による放出率を再推定した。1時間

程度の放出であり、放出量は、その直後(15時36分)に発生した水素爆発による放出量と同オーダーであったと推定された。

(2) 3月13日午前 • 3月13日午前中の3号機でのベントによる放出量を、海洋データと大気・海洋モ

デルにより推定した。これまでの数値より若干、放出量は増加した。 (3) 3月14日夜間から3月15日早朝 • これまでほぼ連続的と推定していた2号機からと思われる放出が、3回のピーク

(21:00, 23:00 (3/14), 01:00 (3/15))を持つことが推定された。 (4) 3月15日午前から3月16日午前 • 主要な放出は、15日の午前7時から11時くらい、午後4時から16日午前1時くら

い、 16日の午前9時から12時くらいに起きたと推定された。2回目の放出開始時刻はこれまでの推定より4時間程度遅く、3回目の放出は新たな推定である。

• 2回目の大量放出は他に比べてI-131/Cs-137比が大きいと推定された。この結果は、航空機サーベイによるI-131, Cs-137沈着量分布やJAEA-Tokaiでのダストサンプリング結果と符合する。

(参考)3月末までの総放出量(放出率の積算)⇒ I-131: 120PBq, Cs-137: 11Pbq 10/10