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デジタルとアナログ

デジタル-アナログ-コンピュータ

                                 2012.07.12

                                村上 彰(文責)              

<目次>

デジタル概論・・・2

アナログとデジタルの概念2 デジタル画像3 アナログとデジタルの両立と二面性5

デジタル化のカテゴリー6 ラスター画像とベクター画像8 

デジタル編

デジタル11 信号処理12 画像処理12 データ圧縮13 暗号化15 

A/D変換(アナログ-デジタル変換回路)20  D/A変換(デジタル-アナログ変換回路)23

標本化26 量子化26 数値化26 符号化(エンコード)27 復号化28 正規化28

サンプリング周波数29 ナイキスト周波数31 誤り訂正符号33 可逆圧縮34 

非可逆圧縮34 コーデック35 符号化方式37 伝送路符号化38 文字符号化方式38

データ40 エンコード(符号化 )41 情報理論41 誤差42 誤り検出(誤り訂正)45

標準偏差45 パリティチェック47 

アナログ編・・・50

アナログ50 アナログ信号処理51 音53 アナログコンピュータ55 

コンピュータ編・・・61

コンピュータ61 マイクロコンピュータ(マイコン)66 

コンピュータグラフィックス71 デジタル画像処理74 コンピュータビジョン75 

イメージングサイエンス75 画像編集76 写真編集81 映像編集84 

医用画像処理90 ネットワーク93 コンピュータネットワーク93 

OSI参照モデル99 ユビキタスコンピューティング101

ユビキタスネットワーク104 ウェアラブルコンピュータ105 

クラウドコンピューティング106 オペレーティングシステム115

デジタル概論

アナログとデジタルの概念

-アナログ:計量、連続量 デジタル:計数、離散量(とびとびの値)

アナログ(Analog)とは、機械で情報を扱う際の表現方法の1つで、情報を電圧の変化など連続的な物理量の変化に対応付けて表現し、保存・伝送する方式のことである。

アナログで情報を扱う利点として、デジタル化において避けることができない数値化に伴なう誤差が生じないという点がある。情報の発生時点では、それを正確に表現して記録することができる。ただし、保存や伝送、再生、複製に際して劣化やノイズによる影響を受けやすく、変化した情報は復元することができないため、伝送・複製を繰り返したり長年に渡って保存すると内容が変質してしまう。

また、デジタル(Digital)とは、アナログと同様に機械で情報を扱う際の表現方法の1つで、情報をすべて離散的な数値(整数など)の集合として表現し、明確に区別可能な段階的な物理量に対応させて記憶・伝送する方式のことである。そのようにして表現されたデータを「デジタルデータ」(digital data)という。特に、コンピュータのようにデータをすべて0と1の組み合わせ(二進数の数値の羅列)に置き換えて、これをスイッチのオン/オフや電圧の高低など二状態の物理量に対応させて保存・伝送する方式のことを意味する場合が多い(理論上は三値以上の系で情報を表現する場合もありうる)。(上表参照)

デジタルで情報を扱う利点として、保存や伝送、再生、複製などを行う際に劣化やノイズの影響を受けにくく、伝送・複製を何度繰り返しても内容が変化しない点や、様々な種類の情報を数値の集合として同じように扱うことができ、保存や伝送の媒体を選ばない点などがある。ただし、すべてを離散量で表現するために数値化に伴う誤差が必ず発生することになる。

 デジタル画像は、正にデジタル情報としてすべての信号を0と1に割り当てることで、コンピュータの内部で信号処理できるようになる。このように、アナログからデジタルに変換することをデジタイズという。

 デジタイズ(Digitize)とは、オブジェクト、画像、信号(通常アナログ信号)を離散的な値で表現することである。デジタイズされた結果を「デジタル表現」あるいは「デジタル画像」「デジタル形式」などと呼ぶ。

アナログ信号は、時間的にも値としても連続的に変化する。しかし、デジタル信号はどちらの観点からも離散的であり、デジタイズは本来の信号の近似でしかない。しかし、アナログ信号が通常情報成分だけでなくノイズ成分を含むことを考えれば、デジタイズによって必ず情報が失われるとは言えない。

デジタル信号は整数の数列として表される。デジタイズでは、一定間隔(サンプリング周波数)でアナログ信号を読み取り、その時点の値を整数化する。このように間隔を設定して読み取ることを標本化と呼び、また読み取った値を8ビットあるいは16ビットのような範囲で表現することを量子化と呼ぶ。標本化の精度はしばしば分解能、あるいは解像度と呼ばれ、量子化の精度はビット深度と呼ばれる。サンプリングの精度は標本化と量子化の二つの要素によって決定される。なおデジタイズを行う電子回路をアナログ-デジタル変換回路と呼ぶ。

整数列をアナログ信号に戻すことで本来の信号の近似が得られる。この変換を行う電子回路をデジタル-アナログ変換回路と呼ぶ。この近似の正確性は基本的にサンプリング周波数とビット深度によって決定される。

例えば、「デジタイズ」という用語は、音声だけでなく写真やビデオなどをスキャンしてコンピュータに取り込むことも指す。写真の場合、サンプリング周波数は画像の解像度(dpi)に相当する。また読み取りデータは24ビットカラー、あるいは8ビットモノクロ形式が一般的である。デジタイズは画像を電気通信で転送可能にしたり、コンピュータで処理できるようにする主な手法と言える。

地理情報システムでは、地理的な特徴をデジタイズしてビットマップ画像(ラスタ形式)にする。電子地図は様々な地理的画像や地図をデジタイズすることで作成される。

また、ペンタブレットなどの図形・画像情報を入力する機器を総称してデジタイザー(Digitizer)と呼ぶ。大型の機器は図面の読み取りに利用されている。この場合、基本的に機器からは座標データが送信され、ソフトウェアで意味のあるベクトルデータに変換される。機器の読み取り精度は通常0.02~0.1mm程度あるが、手操作では誤差が生じるので、ソフトウェア側で補正することが多い。小型の機器はマウスに替わるポインティングデバイスとして、手描きのタッチでイラストを描く、文字を書くといった使い方に利用される。

・アナログからデジタルへ

現在では、音楽の録音はほとんど全てデジタイズを伴う。約50万本のInternet Movie Databaseにある映画のうち、約10%がDVD上にデジタイズされている。2006年現在、世界中の全文書の約5%がデジタイズされている。

5.1.2 デジタル技術

a.デジタル画像

・デジタル化の仕組み

 二次元画像や三次元画像を問わず、画像のデジタル化は、まず標本化から始まる。標本化する場合にはサンプリング周波数、つまり画像を分割する目盛の大小を決める。周波数が高ければ高い程、細かいサイズに分割できる。標本化が終ると、それを数値で置換する。これを量子化(0,1の数字以外も含む)というが、量子化は離散的な値(とびとびの値)に数値化することである。また、デジタルの意味は、次の3つがある。

①0101の配列により情報を信号化し運用する総体的事柄をいう。(これは符号化である)

つまり、デジタルは0と1からなるコードをもとに表現される。数字・アルファベット・漢字・図などは、ドットの数が多くなるだけ書体や図の表現を詳細にかつ大量な処理を可能にする。アナログ情報と違ってデジタル情報は、その信号を遠隔地に劣化なく送信することができるのが最大のメリットである。

②紙・マイクロフィルム情報(文書・帳票・図面)・写真などのアナログデータをデジタル信号に変換して記録することをいう。また、画像加工・コピー・検索・通信などデジタルデータにすることで利用範囲を拡大することができる。

③デジタルデータを活用することでオリジナルであるアナログデータの劣化防止、データ活用の効率化を実現できる。

・デジタルの特徴

画像処理

デジタルの画像データはゴミ・かすれ等を修正することが可能。

階調処理

以前白黒2値でしかなかったデータから現在では写真調画像の入力においてより再現性が向上。

加工・編集

画像の回転、拡大・縮小、トリミング、傾き補正、部分修正等加工・編集が可能。

データ圧縮

データ量が大きい階調処理、高解像度のデータは圧縮を行うことによりデータ量を低減し運用を容易にすることが可能。

検索

パソコン等でデータを参照する際に、検索(画像の読み出し)が瞬時に可能。

通信

ネットワーク上でのデータ情報の共有、通信が可能。

複製

デジタルデータの複製を作成する場合データの劣化がほとんどなく、オリジナルと同等の複製が容易にできる。

解像度

dpi(dot per inch)…1インチ(25.4mm)の中にドット(黒点)がいくつ表現できるかによりデータの精密さを表す。

書類の一般的解像度目安

漢字を含む日本語書類

400×400dpi

英数字の書類

300×300dpi

大きな手書き文字書類

200×200dpi

 アナログ量(A:Analog)とは、連続した値で、身の回りの音声、温度、湿度、圧力などの物理量は、アナログ量になる。一方、デジタル量(D:Digital)とは、離散的な値をとり、番号や、数の表現に当たり前のように用いられているものである。 現在は、デジタル時代とよく言われ、電子技術や制御技術などの世界でもよくデジタルという用語が使われている。しかし、実際に生活している環境ではアナログ量で表されることが多い。 そこで、温度や圧力などのアナログ量を、センサ等を介して扱うときには、A-D変換器を利用し、アナログ値をデジタル値に変換し、制御部へ取り入れられることになる。

・分解能

 A-D変換は、アナログ値をデジタル値に変換することである。例えば、アナログ値をデジタル値に置き換えた例を下表に示す。

アナログ値

デジタル値

+2.5~+3.5

  111 

+1.5~+2.5

  110 

+0.5~+1.5

  101 

-0.5~+0.5

  100 

-1.5~-0.5

  011 

-2.5~-1.5

  010 

-3.5~-2.5

  001 

-4.5~-3.5

  000 

 この表では、アナログ量を8分割し、それぞれのデジタル値に対応させます。入力電圧が、+1.7Vのときは、「110」で扱い「+2.0V」となり、0.3Vの誤差を生じる。これを量子化雑音という。 誤差を小さくするには、入力するアナログ量の範囲を小さくするか分割する数を増やすことになる。この場合は、分解能は3ビットと表現し、分解能をあげることにより、量子化雑音を小さくするこ とができる。

・サンプリング

 つぎにA-D変換をする上で重要になってくるのが、サンプリング(標本化)である。アナログ量の時間的変化を表現するために、一定間隔の時刻に、アナログ量を取り込むことをサンプリングという。

 各時刻のサンプリング値をA-D変換することになり、その間の情報は測定の対象とはならないことになる。時間間隔が短い(サンプリング周波数が高い)ほど、厳密な波形再現が可能になる。また、「サンプリング周波数が、入力信号の周波数の2倍以上でなければ、波形を正確に復元できない。」という性質をサンプリング定理という。一般的に、サンプリング周波数は、2倍ではなく数倍~10倍以上で利用されている。

  

b.アナログとデジタルの両立と二面性

-一般的には、アナログ>デジタル 同じと言えるか?

-サンプリングを大きくとると、アナログ=デジタル

例えば、デジタルカメラに使われているCCDなどの撮像素子は、光の量に応じた電圧を発生させる。この電圧はアナログ量である。そのために、画像処理する前にアナログからデジタルに変換しなければならない(A-D変換)ので、アナログとして扱われる。一方、アナログの代表格であるフィルムは、ベース上に塗布された感光層のハロゲン化銀に光を与えることによって感光する。これは1つの銀塩に1つの光子(フォトン)が当たってデジタル的であり、デジタルとして扱われる。

このように、アナログとデジタルは、日常当たり前に思われる概念がじつは逆になっているのである。(二面性)

アナログからデジタルに変換する仕組みは、上図に示す通りである。

つまり、アナログ画像→サンプリング→量子化→数値化→符号化→デジタル画像

というプロセスを経ることになる。

c.デジタル化のカテゴリー(標本化、量子化、符号化、規格化、数値化)

・概念

   アナログとデジタルはともに情報を送るための信号であるが、記録の方式が異なる。

   アナログ は曲線グラフのような連続的に変化する物質量による表現に関する用語である。つまり、データを実数で表される連続的な物質量として表すことである。連続的な信号のためノイズが入ったりする。例えば、ラジオや電話の音声、テレビの映像などはアナログ信号である。また、時間を時計の針で連続的に表現したり、電圧や温度などの変化をメーターなどで表現するのはアナログである。

   デジタル は数字によるデータまたは物理量の表現に関する用語である。つまり、数・量を数値により表現することである。整数値で表される離散的データをデジタルデータという。例えば、コンピュータにキーボードから打ち込まれた数値データはデジタルである。アナログの映像や音声、文字、などの情報を0と1の信号にして表したものをデジタルという。デジタル化されたデータは加工したり、そのままの形で複写・移動ができる。例えば、従来の写真やビデオ画像はアナログデータで、複写するたびに画質が劣化していくが、デジタル画像では複写してもほとんど劣化しない。

アナログ

デジタル

感覚的

論理的

連続的

離散的

ノイズに弱い

ノイズに強い

演算精度が低い

演算精度が高い

劣化しやすい

劣化しにくい

人間向き

機械向き

・デジタル変換

  ある日の温度を精密な温度計で測ったら、20.85(℃)だった。これを小数点1桁目で四捨五入すると、21(℃)になる。温度の単位を1とすれば、これはその21倍という整数で表される。2進数に変換すればコンピュータで扱える値になる。デジタル化の際の近似を 量子化 とも呼ぶ。ここで、整数21を2進数で表すと、10101になるが、これを 符号数 と呼び、符号数を求めることを 符号化 という。この2進数10101が20.85に対する最終的な デジタル値 である。

   このように、アナログ情報は近似的にデジタル情報として表現できる。連続するアナログデータからデジタルデータへの変換の様子を以下に示す。

  上の左の図は、温度変化などの連続的なアナログデータである。ここで、真中の図のように一定時間ごとに温度を読み取ってみる。これを 標本化 という。ここでサンプル値をなんらかの整数値で近似する(量子化する)と、時間に沿った温度変化は上図のように、

符号化 できる。これをデジタルデータ化すると図示した2進数を得る。

・デジタル画像とアナログ画像

   例えば、ビデオカメラは、入力された光の信号をCCD(電荷結合素子)という半導体で受けて、光の信号を電気の信号に変換する。これを 光電変換 という。光の強弱は無段階に無限の情報をもつのでアナログ信号といえる。そこでビデオカメラで取り込まれた信号は電圧の強弱に変換されたアナログの映像信号である。コンピュータはデジタルに情報を処理する。1ビットでは 0 と 1 の2通りの情報を表現し、8ビットでは28=256通りの情報を表現する。当然、入力される情報は離散的な値を要求されるので、処理される情報が連続的に無限大のものはコンピュータでは処理しきれない。

-A/D変換

   そこで、先の光電変換した信号を一定の段階ごとに分割してまとめ、整数化するとデジタル信号となり、情報の数も格段に減り、コンピュータ処理に適した形態となる。この変換のことを A/D変換 という。A/D変換の際に、元のアナログ画像をどれだけ細かい部分に分けて読み取るかを決めるのが、上で既に述べた サンプリング(標本化)である。通常、縦横の格子状に標本点を配置し、格子の数によってデジタル画像の大きさが決まる。サンプリングの際の格子は、正方形格子以外に正三角形格子、正六角形格子が考えられる。

-量子化

    この形の信号では、どの段階においても入力された情報(映像)は固定された値をとることになり、安定する。標本点における濃淡をどれだけの段階に分けるかを決めるのが 量子化 である。たとえば、1ビットで映像信号を表すなら、真っ黒(0)か真っ白(1)だけを含む映像になる。また8ビットなら、真っ黒から真っ白までを 28=256 分割することになり、0 は真っ黒に、255 は真っ白に、また 127 は灰色に対応することになる。この数値が デジタル画像 のデータになる。このように、デジタル画像は平面に濃淡や色が離散的な値で分布して表現されたものである。カラー画像ではRGBそれぞれの原色ごとに量子化 を行い、各色に 8 ビットを割り当てると合計 24ビットで、224=約1677万(16,777,216)色の表示ができる。

   量子化レベル(階調数、濃淡の段階の程度)は細かければ細かいほど有効なわけではない。通常の写真などでは 256レベル(8ビット)程度で十分だが、濃淡情報が診断に直接関わるようなX線写真などでは 1024レベル程度を必要とする。また、図面などでは黒か白かの 2レベルで済む。なお、レベル数が 2の画像を2値化画像、それ以上の画像を 濃淡画像 と呼んでいる。

-D/A変換

  デジタル画像を表示するCRTはアナログの機器なので、デジタル信号をアナログ信号に変換しなければならない。これを D/A変換 という。この役割を担っているのが ビデオボードである。上述したようにD/A変換は、アナログに逆戻りさせるものであるから、復号化という範疇に入るものであるとも考えられる。デジタル画像処理において、次のステップで要求されるデバイスの信号がアナログでない限り、D/A変換の必要はない。

* 画像のA/D変換は、通常画像の入力装置(イメージスキャナ、デジタルカメラ、デジタルビデオレコーダ、ビデオキャプチャーボードなど)で行なわれる。

d.ラスター画像とベクター画像 

・ラスター画像(ビットマップ画像)

ビットマップ画像

 「画像の種類」でも述べたが、ビットマップ画像(bitmap image / bitmap graphics)とは、コンピュータグラフィックスにおける画像の形式の1つである。画像を格子状に多くの細密な点(ピクセル、pixel)に分割し、その点の色や濃度をRGB等の表色系を用いて数値として表現することによってコンピュータのデータとして扱う。これに対し、画像を、その画像を作成するための作成情報を数値や式として表現することによってコンピュータグラフィックスのデータとして扱うものをベクトル画像(ベクタ画像とも呼ぶ)と呼ぶ。(上図参照)ビットとは、格子によって分けられた1つ1つの部分のことである。この点のことをピクセルとかドットと呼んでいる。

- 呼称

 元々は、白黒2値の画像(すなわち、各点の色は白か黒のいずれか)をビットマップ画像と呼んでいた。これは、画像の1点1点が2進数の1ビットに対応(マップ)するからである。しかし現在では上記のようにベクトル画像に対する表現として広く使われるようになった。なお、この白黒2値の画像と区別するために「ピクセルマップ画像」と呼ぶこともある。また、かつてのグラフィックス・ワークステーションで広く用いられていたX Window Systemでは白黒2値画像を保持するデータの型を"Bitmap"、各点に色情報をもつデータの型を"Pixmap"と名付けていることより、カラーのビットマップ画像のことを「ピクスマップ」と呼ぶ人もいる。

ラスター画像

-ラスター画像

 また、ビットマップ画像は、点が線上に並んだもの(ラスター)の集まりであるとして扱われることが多いので、「ラスター画像 (raster image / raster graphics)」とも呼ばれている。(上図参照) このことより、ベクター画像をビットマップ画像に変換する作業は「ラスターライズ」と呼ばれている。ただし、面の陰影付けや透明度の処理を行なうなどの、高度な処理を用いてベクター画像データをビットマップ画像化する場合には「レンダリング」と呼ぶことが多い。

- 解像度

 ビットマップ画像では、縦方向、横方向それぞれに、単位長さあたりに何ドット分のデータがあるかによって、データのきめの細かさが変わる。このドットの密度のことを解像度と呼ぶ。

また、1ドットで表現できる色の種類のことを色解像度、色分解能などと呼ぶ。

いずれもビットマップ画像を考える際には重要な要素である。

-画像圧縮

 一般に、ビットマップ画像は画素1点について1~4バイト程度のデータ量を持つ。A4サイズで600dpi、1ドットあたり色解像度が24ビット(3バイト)のビットマップ画像の場合、(8.27 inch x 600 dpi) x (11.69 inch x 600 dpi) x 3 = 約104x106 bytes = 約100メガバイト となり、かなり巨大なデータとなる。

このため、ビットマップ画像を外部記憶装置に保存する場合や、通信回線で受け渡す場合には、このデータを計算処理により圧縮しデータ量を削減している。このとき、圧縮後に元のデータを完全には再現できないものを「非可逆圧縮」、全く同じデータに戻すことができるものを「可逆圧縮」と呼ぶ。非可逆圧縮の場合には、「人間の目で見て変化ができるだけ判らないように」という指標に基づいて情報量を減らすことができるので高い圧縮率を得ることができる。実際、可逆圧縮に比べ非可逆圧縮の圧縮率が格段に高いため、情報量が多い写真などのビットマップ画像を保存するときのフォーマットにはJPEGなどの非可逆圧縮が用いられることが多い。しかし、いわゆる「ベタ塗り」部分の多い画像は、自然画に最適化されたJPEGでは、画質の劣化が目立ちやすく圧縮率も高くないため、GIFやPNGなどを用いることが多い。GIFやPNGは可逆圧縮であるが、元の画像の情報量が少ないために十分に高い圧縮率を得ることができる。

-その他

 コンピュータソフトウェアにおいては、ビットマップ画像を編集する(絵を描く)ためのソフトは一般には「ペイントソフト」と呼ばれる。対照的に、ベクトル画像を編集するソフトは「ドローソフト」と呼ばれることが多い。これは、画像編集ソフトがいち早く充実していたMacintoshにおいて、ビットマップ画像を編集するソフトの初期の代表格が「マックペイント」、ベクタ画像を編集するソフトが「マックドロー」という名前であったことに由来する。

・ベクター画像(ベクトル画像)

 ベクター画像とは、コンピュータグラフィックスにおける画像の形式のひとつである。ドロー形式、ドローグラフィック、ベクタイメージなどとも呼ばれる。線の起終点の位置、曲線であればその曲がり方、太さ、色、それら線に囲まれた面の色、それらの変化のしかたなどを、数値で表すことにより、コンピュータで扱うデータとしたものである。ピクセル(画素)の集まりで表現するビットマップ画像と対比される。(上図参照)

-概要

 図形を点で結ばれた線で表す。結ばれた線の終点が始点と重なった、四角や円、多角形などの閉じた図形の内部の面部分を塗りと呼ぶ。   

点の座標と、線の属性(線の太さ、色、破線、実線など)、線で囲まれた塗りの属性(色や、模様など)、を記録するのがベクトル画像の基本である。すなわち、ベクトル画像とは、点、線、塗り、のそれぞれのさまざまな性質、つまり、線の起終点の位置、曲線であればその曲がり方、太さ、色、それら線に囲まれた面の色、それら の変化のしかたなどを、数値で表す    

ことにより、コンピュータで扱うデータとした     ラスターとベクター           

ものである。画像を点の集合で表現しようとするビットマップ画像と比べ、拡大、縮小、その他の変形を施しても画像が基本的に劣化しないという特性を持つ。また一般にビットマップ画像よりもデータサイズは小さい。

しかしながら、写真のような画像から線や面を抽出して数値化することは現在の技術では困難であり、実際には、はじめからグラフィックソフトを使用してベクトル画像を作成する場合を除いては、画像には使われない。すなわち、ロゴや非リアリスティックなイラストには向くが、そのほかの画像には不向きである。逆に、文字のフォントにおいては、拡大や縮小その他の変形が容易なことから、多用される。このようなベクトル画像の手法を用いた文字フォントを「アウトラインフォント」と呼ぶ。

-出力方法

 上述したように、ベクター画像は、各図形の情報をもとにビットマップ画像に展開することができ、これをラスターライズと呼んだ。ベクターデータを直接表示するベクターディスプレイも存在するがビットマップ画像を表示するのが難しいため、今日の一般的なコンピュータではビットマップ画像のみが表示可能なビットマップディスプレイが用いられ、ベクトル画像を表示する際もラスターライズしてから表示している。

1950~1980年代ごろの初期のコンピュータではベクターディスプレイが用いられていた。これはブラウン管の電子銃が、ペンで線を書くように、線の頂点から頂点へ動かして作図するように光線で表示面をなぞる仕組みであった。このプロセスを一分間に何回も繰り返すことによってちらつきが感じられない画像が見えるようになっていた。なおビットマップディスプレイでは、電子銃は表示面を走査するのであって、出力画像はあくまで光線の強さを変調することで表現している。

今日のプリンタの多くもディスプレイ同様ビットマップ画像をベースにしている。それゆえアウトラインフォントのテキストやベクター画像を印刷するときは、OS上もしくはプリンタの内部でラスターライズされてから印刷している。

ベクターデータを直接印刷するプロッター(plotter)というプリンタの一種もある。これはペンなどを移動させて作図するものであり、座標を指定して作図することからX-Yプロッタとも呼ばれる。このプロッタは設計図面の印刷などに用いられている。

デジタル編

デジタル

 デジタルまたはディジタル(digital)とは、工学的には状態を示す量を数値化して処理(取得、蓄積、加工、伝送など)を行う方式のことである。 デジタル処理、デジタル記録、デジタル伝送、デジタル制御などがある。

日本語訳として計数(けいすう)がある。古い学術文献や通商産業省の文書などで使われている。Digitalの本来の意味は「指」であり、数を指で数えるところから離散的な数を意味するようになった。

・概要

 データの数値化にあたっては量子化を行い、整数値(すなわちdigit)で表現する。このため、データ量を離散的な値として表現することになり小さい量に対しては誤差を持つ。この誤差は適切な量子化を行うことで実用上影響の無い範囲にすることができ、データ量に比例したアナログ量を用いるのとほぼ等価な処理を提供可能である。

今日のコンピュータの主流であるデジタルコンピュータにおいては、0と1だけからなる2進数を物理的な表現形式 (電圧の高・低) として持つため、デジタルは0と1からなるという説明がよくなされるが、はっきりと区別できる2以上の状態で表現されているデータ (例: そろばんの玉など) はどれもデジタルと呼ぶことができる。

一般的には「デジタル」と記述される。しかし、電気・電子・情報工学の分野では「ディジタル」と記述される。これは、「digital」のスペル「di」を意識してのことである。

・特徴

 デジタルデータは、離散値として数値化しているため、アナログデータと比べて劣化しにくい特性を持つ。伝送・記録再生などを行う場合、デジタル量もアナログ量と同様に電圧・電流などの電気信号に置き換えて取り扱われるが、外乱が生じて信号にノイズが混入した場合、アナログ処理では特別な処理を行わない限り信号に混じったノイズを取り除くことが困難である。これに対しデジタル処理では、数値は離散化してあり中間値を持たない(注1)ため、ノイズによって生じた誤差が一定以下ならばそれを無視でき、元の数値データを劣化無しに復元可能である。

注1) 例えばデータが整数表現の場合、ノイズによって1が0.8や1.2に変化しても1と認識させることが可能である。

 実際の記録・伝送などではノイズなどの影響が無視できず、もとのデータと異なるデータが再生されてしまうこともある(上の例では1が0.4や1.6に変化すると別な値、すなわち0あるいは2として再生される)。しかし、データを予め誤り訂正符号などを使って冗長化しておくと、途中で劣化しても自動的に修復したり、誤りの発生を検出して再送を要求したりすることができ、信頼性の高い処理を提供することが可能になる。

・デジタル処理の適用

 実際のデジタル処理に当たっては、2進数ひとつの単位をビットとし、8ビットなどのまとまった単位を合わせてオクテットまたはバイト、ワードという単位にして取り扱うことが多い。これは処理装置や記憶装置の語長に合わせて効率よく使えるようにするためである。

 デジタルデータにおいては、表現可能な数値範囲を超えたり、最小値に近い数値を扱う際には注意が必要である。 アナログ処理では、多少入力電圧が規定より超過しても影響がないか、わずかな影響で済む場合もある。しかしデジタル処理では、定義された最大値を超えた場合には桁あふれ(オーバーフロー)となり、以後の演算処理の結果は保証されない。また、最小値に近い数値では量子化誤差が無視できず、S/N比の劣化として現れることがある。さらに、数値計算の際に不用意な処理手順による桁落ちが生じ、著しい有効桁数の減少を招くこともあるため、注意を要する。

・符号化

 様々な分野でそれぞれ適切な表現形式を用いてデータを符号化している。

数値は、整数や浮動小数点型、固定小数点型などとして扱える。

文字は、文字コードで文字とコードを対応させることができる。

音声は、PCMなどでデジタル化できる。楽譜情報を電子化したものはMIDI、MMLなど。

絵、映像は、光をRGBなど色の成分に分解し、各色の明るさなどを数値化する。

・国策としてのデジタル化

 日本の高度経済成長を支えたものは、テレビジョン・冷蔵庫・洗濯機などのアナログ家庭電化製品であった。

しかし、1983年頃から、ワードプロセッサーや、パーソナルコンピューターなどデジタル家庭電化製品が庶民の手に届くようになる。

政府が国策により、日本の輸出主力を、アナログ家電からデジタル家電に改めたのであった。いわゆる産業構造の転換である。

1990年代に登場した携帯電話は、初期のアナログ方式から電波利用効率の高いデジタル方式への切り替えにより、料金の低下と普及率の上昇をもたらした。

アナログのテレビジョン放送も、日本では数年中(2011年)に廃止の運びだが、デジタル化は庶民に利益はなく(テレビ受像機の買い替えが必要となるなど)、ただ日本企業が欧米企業に負けないための政策だとも言われる。

信号処理

 信号処理(signal processing)とは、光学信号、音声信号、電磁気信号などの様々な信号を数学的に加工するための学問・技術である。

アナログ信号処理とデジタル信号処理に分けられる。

基本的には、信号から信号に変換するものであり、信号とは別の形式の情報を得るもの(例えば、カテゴリ分けや関連づけ、推論的な情報を得る認識や理解など)は含まれない。圧縮も含まれないことが多い。但し、認識や理解、圧縮の前段階としての信号の変換は信号処理と呼ばれる。そのため、信号処理はそれらの技術に対して非常に重要であるとともに関連が強い。なお、また入力と出力が同じ種類(物理量)の信号である場合(例えば入力と出力ともに同じ音圧である場合)には、フィルタリングとも呼ばれる。

信号処理の例としては、ノイズの載った信号から元の信号を推定するノイズ除去や、時間的な先の値を推定する予測、時間周波数解析などを行う直交変換、信号の特徴を得る特徴抽出、特定の周波数成分のみを得るフィルタなどがある。

・さまざまな応用

音響技術:デジタル録音・編集、音楽CD作成、MP3など音声ファイルの圧縮、音声認識 など

画像処理:デジタルカメラ、デジタルビデオ、画像編集、画像認識、JPEGなどの画像ファイル圧縮  など

音声処理:音声合成、音声認識、音声符号化 など

動画処理:MPEG-1、MPEG-2、MPEG-4 などで用いられる動画ファイルの圧縮

医療技術:X線CTやMRI などの断層撮影、超音波検査、脳波、脳磁図の解析 など

通信:移動体通信、レーダー技術、アンテナ技術、暗号化 など

天文学:各種望遠鏡の信号解析 など

画像処理

 画像処理とは、電子工学的(主に情報工学的)に画像を処理して、別の画像に変形したり、画像から何らかの情報を取り出すために行われる処理全般を指す。まれにコンピュータグラフィックスによる描画全般を指して使われることがあるが、あまり適切ではない。歴史上CGアプリケーションはCADが先行し、そのころのCGは「図形処理」と呼ばれていて、実際図形処理情報センターという出版メディアも存在した。画像処理は本来CGとは無関係にテレビジョン技術の発達とともに、産業界では早くから注目を浴びていたテクノロジーであり、当初からビデオカメラの映像信号を直接アナログ-デジタル変換回路へ通すという方法が試みられた。その成果の一部(輪郭強調によるシャープネスなど)が現在のCGアプリケーションに生かされている。

・概要

処理の対象としてはデジタル画像が用いられることがほとんどで、処理はコンピュータ上で行われる。取り出したい情報の特徴に応じて適切なアルゴリズムを記述することが必要となる。

画像処理の流れの一例として、画像入力-画像変換-分類 というものを挙げる。まず対象とする画像を入力し、この画像に対して変換処理を行う。変換の方法としてはさまざまなものが存在するが、基本的なものでは濃淡画像を白黒2値にする「2値化」、濃度変化から物体の境界を見出す「エッジ検出」などがよく用いられる。これらいくつもの変換処理を重ねて行うことで必要な情報の抽出を行い、最後に得られた情報の分類を行う。

画像処理が生産用に実用化されている事例として、製品の欠陥検査がある。集積回路のマスクパターンなどの工業製品の欠陥検査のほか、形が一様ではない農産物の選別などにも用いられる。また、ロボットが外界を認識するための方法としての画像処理も研究が進んでいる。

データ圧縮

データ圧縮とは、あるデータをそのデータの実質的な性質を保ったまま、データ量を減らした別のデータに変換すること。高効率符号化ともいい、情報理論においては情報源符号化と呼ばれている。

主な目的は、データ転送におけるトラフィックやデータ蓄積に必要な記憶容量の削減といった、資源の節約である。なお、アナログ技術を用いた通信技術においては通信路の帯域幅を削減する効果を得るための圧縮ということで帯域圧縮ともいわれた。

データ圧縮には大きく分けて可逆圧縮と非可逆圧縮がある。また、バイナリデータを対象としたデータ圧縮方式の中には、複数のファイルを1つにまとめて扱えるようにするアーカイブ機能を兼ね備えるものもある。

・基本原理

-可逆圧縮

可逆圧縮とは、データを復元したときに、完全に元にもどる圧縮方法をいう。通常、意味のあるデータには、現れる符号に偏りすなわち規則性、冗長性が存在する。そのため多くの可逆圧縮では出現頻度の高いものに短い符号を、出現頻度の低いものに長い符号を与えることで、平均符号長を短くする方法がとられている。また区間的に分けてそれぞれ符号を変える、より長い符号に対して前述の処理を行う(拡大情報源)などの方法で、可逆圧縮間でも圧縮率や展開速度に差が出る。

-非可逆圧縮

非可逆圧縮とは、データを復元したときに、完全には元にもどらない圧縮方法をいう。多くの非可逆圧縮では人間があまり強く認識しない成分を削除することでデータを圧縮する方法がとられている。たとえば人間は大きな音と小さな音を同時に聞いた場合、小さな音をあまり認識できないし、画像に対しても小さな色の変化は認識されない。このためデータをフーリエ変換(あるいは離散コサイン変換などフーリエ変換の一種)し、高周波成分や低振幅成分を削除してしまっても、受け手に与える印象の変化に大きな差は現れない。当然削除する範囲が多ければ、元データとの差異は大きくなり、違いに気づく人間も増える。画像のサイズを小さくする、動画のフレームレートを下げるなども一種の非可逆圧縮と言える。

-アナログ帯域圧縮

代表的なものとして、TV放送に用いられるNTSC、PALなどのコンポジット映像信号がある。これは、映像信号を輝度成分と色成分に分離し、さらにインターレースと呼ばれる方式を用いて放送信号の伝送に必要な帯域が少なくなるように工夫されている。

また、電話においても多重化するために帯域圧縮を行っている。電話は300 Hz - 3600 Hz程度が伝われば良いので、その範囲以外をカットする手法が使われている。

さらに昔、電話の交換機と交換機の間をPAM(パルス振幅変調)方式を使い0.125μsに分割した信号を多重化して送っていた。後にPAM方式からPCM(パルス符号変調)方式へ変わり、事実上デジタル方式に変わっている。

-デジタル圧縮

デジタル圧縮の歴史

デジタル符号化されたデータの圧縮の歴史は意外と古く、1830年代に発明されたモールス信号に用いられるモールス符号も圧縮符号の一種である。これは、文字通信の中で比較的出現頻度の高いアルファベットに短い符号を割り当て、出現頻度の低いものには長い符号を割り当てることで、通信に要する手間を省いている。(しかし日本語のモールス符号はそうなっていない。モールス信号の項目を参照)

その後、コンピュータの発達とともに、デジタル通信やファイルの保存でデータ圧縮の重要性が高まったことで研究が進み、1970年代後半頃からはデータ圧縮の要素技術に関する重要な特許も出願されるようになった。特許については、近年でも、オーディオ圧縮で用いられるMP3のライセンスの問題や、ウェブサイトの画像で広く用いられている GIF画像のライセンス問題など多くの紛争を発生させており、それだけデジタル時代の重要な基幹技術であることを示している。

1980年代に入ると音声通信分野のデジタル化の動きが始まり、音声圧縮の分野ではADPCMなど初期の比較的単純な圧縮方式が実用化された。また、パーソナルコンピュータやパソコン通信(ただし、日本では通信自由化以降)が普及するようになり、オンラインソフトウェアの分野からもZIPやLHAといった現在も幅広く使用されているファイル圧縮方式も誕生した。

1990年代前半に入ると、音声圧縮や画像圧縮の分野で2005年現在でも広く知られている多くのデータ圧縮方式が発表された。音声(オーディオ)の分野では、1992年に登場したミニディスク (MD) に搭載されているATRACなどがある。また、画像の分野ではJPEG圧縮方式が国際標準規格として勧告され、広く普及した。これらの背景には、集積回路 (IC) の生産技術や設計技術の発達で大規模で高度な処理が行えるICが比較的安価な製品でも搭載可能になった点や、パーソナルコンピュータの急速な性能向上でソフトウェア的な画像処理が容易に行えるようになった点も大きい。

また、動画圧縮の分野でも、この頃、TV会議システム用の動画圧縮方式 (H.261) やビデオCDの圧縮方式 (MPEG-1) も標準化されている。また、パーソナルコンピュータ向けに企業独自の圧縮方式を採用したコーデックも登場するようになった。しかし、動画圧縮の分野では音声圧縮や画像圧縮に比べてさらに高度な技術が要求されるため、まだしばらくの間、業務用や限定的な用途に限られていた。これとは別に、デジタル時代の重要な基幹技術である動画圧縮技術には特許の権益に絡む思惑もあり、この方面でも標準化までに長い時間を要した。

1990年代後半になると、動画圧縮の分野でも国際的な標準規格であるMPEG-2が標準化され、業務用分野から幅広く利用されるようになり、1996年に登場したDVDプレーヤーや、2000年に開始されたBSデジタル放送など、家電製品にも採用されるようになった。

-静止画像圧縮

代表的なものとしては、インターネットのウェブサイトで広く用いられるJPEG、GIFがある。非可逆圧縮による高能率圧縮を行うものと、劣化を生じさせない可逆圧縮を用いるものがある。

例えば、非可逆圧縮形式のJPEGの場合、一定の画素数のブロックに分割したデータを離散コサイン変換 (Discrete Cosine Transform, DCT) と呼ばれる演算で処理して符号化を行う。

画像圧縮アルゴリズムの評価には、レナなどの画像サンプルが広く使われている。

-音声圧縮

音声圧縮では、人の聴覚の特性を利用して高能率の非可逆圧縮を行うものが広く用いられている。非可逆圧縮の代表的な方式としてMP3がある。CDの音声データ (1411.2kbps: 44.1kHz, 16bit, 2ch) を128kbpsのMP3形式に圧縮した場合、圧縮率は約1/11となる。最近では高音質の320kbpsの圧縮率が一般的になりつつある。

一方で、まったく劣化を生じさせない可逆圧縮方式を用いたものも増えてきている。 ALAC、FLAC、Monkey's Audio(APE)などがその代表である。

-動画圧縮

代表的なものとしては、DVD-Videoに用いられるMPEG-2、第3世代携帯電話などに用いられるMPEG-4、次世代DVDやワンセグに用いられるH.264がある。

動画では1秒あたり30コマ程度の静止画像に加えて音声データも入る、単純な静止画像圧縮と音声圧縮だけではデータ量が膨大となるため、以下のような動画特有の圧縮を行う場合がある。

暗号化

暗号(cryptography, cipher, code)あるいは暗号化(あんごうか、Encryption)とは、第三者に通信内容を知られないように行う特殊な通信(秘匿通信)方法のうち、通信文を見ても特別な知識なしでは読めないように変換する表記法(変換アルゴリズム)のことである。通信だけでなく保管する文書等の内容を秘匿する方法としても用いることができる。

・概要

秘匿通信には、主に次の3種類の方法がある。

ステガノグラフィ 通信文を人目に付かない場所に記録する。画像などに情報を埋め込む電子透かしなど。また掲示板でよく見かける縦読みも一見して普通の文章の中に見えるためステガノグラフィーの一種と言える。

コード 通信文の単語やフレーズを、事前に決めておいた言葉・記号で置き換える。これらは符牒や隠語とも呼ばれる。

サイファ 通信文を、意味とは関係なく、所定のアルゴリズムに従って、(1つまたは複数の)文字やビットごとに置換や転置を行うことで、読めない文に変換する。

秘匿通信を行う上で最も単純な方法は、(1)の通信文そのものの所在を隠してしまうことである。歴史上実際に行われたものとしては、通信文を丸めて飲み込んだり、ベルトの内側に書き普通の被服のように身につけたり、新聞の文字に印(文字横に穴を開ける等)をつけて文章を作る、頭を剃りあげて頭皮に通信文を刺青し、再び頭髪が生えそろうことで隠す、などもあったようである。

(2)の事前に「○◇△といえば、~のこと」等と事前に取り決めておくことで秘匿することも行われた。個人間で行うものから組合やギルド等の特定のグループ内で行うものがある。事前の取り決めではなく、特定の人達だけが知る事項などを元に、意味は同じままで、言い方を変えることで秘匿することもある。秘匿したい特定の単語だけ置き換えることも、コードブックと呼ばれる辞書を作成して、全ての単語を置き換えることもあり、「ルイ14世の大暗号」、「ナポレオンの小暗号」などが知られている。しかし、(2)のコードは、歴史的な使用例は幾つか知られているが、現代の通信技術での使用例はあまり知られていない。コードという言葉自体は「圧縮」や「誤り訂正」の目的で使われるコード(符号)や、認証用のコード (MAC) などで使用されている。

秘匿通信を行う方法としては(特に第二次世界大戦後は)、(3)のサイファが主流である。

戦時下における作戦や命令を敵に知られると作戦の裏をかかれて文字通り致命的な結果を招くことになるなど、第三者に通信内容を知られては困ることがある。暗号はそのような場合に独特の表記法を使って通信文を変換することによって、第三者が通信文を盗み見ても意味が分からないようにする為に考案され、主に戦時下において軍事技術の一つとして発達してきた。 初期の暗号は、安全性が不確かなものも多く、使用中に解読され、その場しのぎに改良を試みるものの、更に巧妙な手口によって破られてしまうといった、イタチごっこに陥る事もあった。 暗号の歴史については暗号史を参照。

この記事では、主に(3)の解説を行い、(2)にもふれることにする。また、暗号技術は、秘匿通信に限らず、相手の身元を確認する認証や改竄の検出にも応用され、貨幣の偽造防止技術への応用も研究されている。これらについては電子署名、認証、ハッシュ関数、電子マネー等を参照。

なお、暗号化に対応する単語は「復号」であり、「~化」とは表現しない。

・種類

暗号には様々な方式があるが、現存する暗号は主に下記のように分類することができる。

暗号(サイファ)の分類

古典暗号 - 暗号化・復号に鍵の概念を使わないものもある。

換字式暗号 - 別の文字を割り当てる。単一換字、多表式換字などがある。

転置式暗号 - 文字を並べ替える。

現代暗号 - 鍵を使い、アルゴリズムを公開したものが多い。

共通鍵暗号 - 暗号化・復号で同じ鍵を使う。ブロック暗号、ストリーム暗号などがある。

公開鍵暗号 - 暗号化・復号で異なる鍵を使う。

鍵を使わない方法は、一度敵に知られた方法は二度と使えない、暗号の信頼性を客観的に評価することができないなどの問題がある。例えば、シーザー暗号(古典暗号の一つ)は、暗号化・復号の表記法が秘密でなければ安全性が保てなかった。 それに対し鍵を使う方法は、アルゴリズム自体を敵に知られても構わないような方法が目標であり、一度考案した方法は、鍵を変えることで何度でも使える、アルゴリズムを広く公開することで信頼性を十分に検討することができるなどの多くの利点がある。 近代になると、このように鍵のみを秘密にしていれば暗号化・復号の方法を皆に公開した場合でも安全を保てることが暗号にとって望ましい目標である(ケルクホフスの原理)と認識され、現代暗号では鍵を使うものが主流となった。 さらに現代暗号では、暗号化・復号の方法だけではなく、暗号化の鍵を公開しても安全性が保てる方式(公開鍵暗号)も扱う。

具体的な暗号方式の一覧は、主な暗号の分類と一覧を参照。

・暗号(サイファ)の例

古典暗号:

換字式 - 最もシンプルな単一換字式としてシーザー暗号、ポリュビオス暗号などが知られている。より安全性が高い多表式換字にヴィジュネル暗号などがある。これらの暗号は小説で扱われることもあり、「黄金虫」、「踊る人形」(単一換字)、「ジャカンタ」(多表式換字)などがある。

転置式 - スキュタレー、レールフェンス暗号、回転グリル - 「謎の暗号」

現代暗号:

共通鍵 - AES、DES(ブロック暗号)、RC4(ストリーム暗号)、ワンタイムパッド

公開鍵 - RSA、楕円曲線暗号 (ECC) 、ElGamal

参考:コードの例

例1 ルイ14世の大暗号(ロシニョールが作成): コードブックは「act=486、ion=102、…」のように音節単位で3桁の数に対応させる(600個程ある)。暗号文「486-102」を復号すると act-ion になる。19世紀末フランス軍の暗号解読者バズリが解読を発表した。

例2 日露戦争で使われた暗号文:「アテヨ イカヌ ミユトノケイホウニセツシ、ノレツ ヲハイタダチニヨシスコレヲワケフ ウメルセントス、ホンジツテンキセイロウナレドモナミタカシ」。コードブックは「アテヨ=敵、イカヌ=艦隊、ノレツ=連合艦隊、…」のように秘匿したい単語をカナ3文字に対応(2文字目は単語の最初と同じ音にもなっている)させている。平文は「敵 艦隊見ユトノ警報ニ接シ、連合艦隊 は直チニ出動、コレヲ撃沈 滅セントス、本日天気晴朗ナレドモ波高シ」となる。

例3 真珠湾攻撃で使われた暗号文:「ニイタカヤマノボレ1208」(=12/8に日米開戦、事前に決めておいたフレーズを合図とした)。なお、「ト」の連打(=全軍突撃せよ)、「トラ」の反復(=我、奇襲に成功せり)などもよく知られているが、正確には電信の短点連打音等の聞き分け易い音を合図としたものである。日本海軍機が搭載していたのは無線機電話機ではなく、無線電信機であったため、交戦時に複雑な電文の送信・聴取は困難なことから、和文電信で単純な符号の組み合わせとなった。

「ト」は短点3ツ(…)、「ラ」は短点4ツ(‥‥)、区切りの無音間隔(_)を組み合わせて、

短点連打音([ト][ト][ト][ト]・・・= …………・・・=全軍突撃せよ)

短点7ツの反復音([トラ]_[トラ]_[トラ]_・・・= …‥‥_…‥‥_…‥‥_・・・=我、奇襲に成功せり)

を合図としたものである。

ちなみに陸軍のマレー作戦の暗号は「ヒノデハヤマガタ」である。

例4 単語を暗号書(コードブック)で対応する数字に変え、さらに乱数表から一定の法則で抜き出した数字を加える二部制の暗号もある。復号には、暗号作成時に使用したものと同一の乱数表と暗号書が必要。太平洋戦争における日本海軍がこうした二部制の暗号を使用していた。

・実装

初期の古典暗号は、多くは紙と鉛筆のみで暗号化を行うが、多少の道具を用いるものもあった。暗号解読の進歩により単純な暗号では安全ではなくなると、複雑な処理を自動化するための機械が発明された。

  

スキュタレー         南北戦争時の暗号円盤    

  

ヴィジュネルの表    機械式暗号(M-209)

紀元前5世紀、古代ギリシアで、特にスパルタにてスキュタレー σκυτάλη と呼ばれる棒が暗号に使用された。同じ太さの棒を2本用意し、送信者と受信者が各々所持する。送信者は右図のように棒にテープを巻きつけて平文を横書きする。するとテープには平文の文字が飛び飛びに記されることになる。棒からテープを外してテープのみを受信者に送る。転置式暗号の一種である。暗号強度は決して高くないが、転置の際の書き間違い・読み間違いを回避できる手段である。

円盤

15世紀、アルベルティの考案した暗号円盤が最古のものとされる。大小2枚の円盤からなり、内側の円盤を回転させて平文・暗号文の対応を決める。位置を固定して暗号化・復号を行うとシーザー暗号となり、一文字毎に位置をずらすと多表式暗号となる。南北戦争でも使用された。ローター式暗号は多段に接続した暗号円盤を機械化したものともいえる。

カード

16世紀、ジェロラモ・カルダーノが穴をあけたカード(カルダングリルと呼ばれる)を使って作成する分置式暗号を考案している。

換字表

多表式暗号を行う際のツールとして使用。トリテミスの換字表あるいはヴィジュネルの表として知られる。

ブック

コードの対応表(略号集、ノーメンクラタ)や乱数表などを記載するのに使った。鍵フレーズを指定するために聖書や辞典が使用されることもあった。MI5が捕まえたスパイが所持していたとされる乱数表は、指サイズの小型のもので多数の数値が印刷されている。

18世紀末、ジェファーソンが考案し、後にバセリも再発明している。ホィール(ディスク)、ストリップ、ロッドなど様々な形状をした暗号器が考案されている。M-94、M-138A(アメリカ)、REIHENSCHIEBER(ドイツ)など実際に使用された。

機械式

20世紀になると、エニグマ(ドイツ)、パープル(日本)、M-209、M-325、SIGABA(アメリカ)、NEMA(スイス)、TypeX(イギリス)など機械式の暗号装置が開発され、特に第二次世界大戦中に各国で使用された。

計算機

コンピュータの進歩と普及により、ハードウェアだけではなく、ソフトウェアでも暗号が実装できるようになった。

一般的なコンピュータでの具体的な実装例としては、Internet ExplorerやSafariなどのブラウザに実装されているTLS上で提供される共通鍵方式暗号化機能、オープンソースソフトウエアのGnuPGで提供される公開鍵暗号方式のファイル暗号化・メール暗号化や、TrueCryptでの暗号化仮想ディスクソリューションなどが有名である。また、LinuxにおいてはLUKS(en)のようシステムディスクそのものを暗号化する実装もある。その他、企業などでは有償の高度な暗号化ソリューションが使われていることも多い。

また、企業などの拠点間通信をインターネット上を経由させるときに盗聴や改ざん等を防ぐため、VPNでは(ソフトウエアとハードウエアの両面で)暗号化もサポートされている。

・用語 [編集]

平文 (plaintext)

暗号化される前の文。

暗号文 (ciphertext)

平文を、独特の表記法によって第三者が読み解けないようにした通信文。

鍵 (key)

表記法のパラメータ。表記法によっては鍵はないこともある。鍵が異なると平文が同じでも暗号文が異なる。

平文空間

平文全体の集合

暗号文空間

暗号文全体の集合

鍵空間

鍵全体の集合

セキュリティパラメータ (security parameter)

暗号の安全性を表す尺度。鍵のサイズなどを指定する。

暗号化 (encryption; encode, encipher)

表記法に従って平文を暗号文に変換すること。

復号 (decryption; decode, decipher)

表記法に従って暗号文を平文に戻すこと。

攻撃 (attack)

暗号化に用いられた表記法の特定あるいは鍵を探索する行為。または鍵を用いずに暗号文を平文に戻すこと。解読ともいう。暗号の方式によって様々な攻撃法が考案されている。

暗号解読 (cryptanalysis)

受信者以外の第三者が暗号文を通信文に戻そうとすること。

共通鍵 (common key; symmetric key)

共通鍵暗号において、暗号化にも復号にも用いられる鍵。暗号化側と復号側が同じものを持っている必要があり、鍵を共有する過程で盗聴された場合に通信の秘密はまったく保てなくなる。秘密鍵ということもある。

公開鍵 (public key)

公開鍵暗号において、暗号化に使用する鍵。暗号化鍵とも言う。復号側が持つ秘密鍵と対になった鍵が必要で、復号側はあらかじめ自分の公開鍵を暗号化側に通知しておく(公開する)ことから公開鍵と呼ばれる。

秘密鍵 (private key)

公開鍵暗号において、復号に使用する鍵。復号鍵とも言う。復号側だけがこのデータを持っている(秘密にする)ことから秘密鍵と呼ばれる。(秘密の共通鍵にたいして)私有鍵ということもある。公開鍵から秘密鍵を推測することは非常に困難(事実上不可能)である暗号法を選択する必要がある。

鍵ペア (key pair)

秘密鍵と、対応する公開鍵とからなるペアの事。同時に生成される。

鍵交換 (key exchange)

共通鍵暗号において、公開鍵暗号方式などを用いて暗号化側と復号側が共通鍵を共有すること。鍵配布センター (KDC) などの信用できる第三者機関を利用する集中型と、各人が秘密の値と通信データを用いて共有の鍵を生成する分散型がある。鍵配送 (key distribution) 、鍵共有 (key agreement) ともいうが、集中型のことを鍵配送、分散型のことを鍵共有として両者を含めて鍵交換とする場合など、区別する書籍もある。

オラクル

入力に対して出力が得られる関数のようなもの。オラクルを必要とするモデルで使用される。

アリスとボブ (Alice and Bob)

暗号理論に登場するプレイヤーはAからアルファベット順に並ぶことが一般的であり、論文では通常Alice、Bobが使われる。これはRSA暗号が発表されたときのプレイヤー名にもとづく。C以降は様々だが、Catherine、Carol、Charlie、などが多い。

A/D変換(アナログ-デジタル変換回路)

A/D変換(analog to digital conversion) A/D変換とは、アナログの信号をデジタルの信号に置き換える操作のことである。

一般に、コンピュータは、1か0か、有るか無いか、といったデジタル

HYPERLINK "http://www.sophia-it.com/content/%E6%83%85%E5%A0%B1" \o "情報" 情報しか取り扱うことができず、連続的な中間量を含むアナログデータを扱うのは苦手である。そこで、A/D変換を行い、入力されたアナログ量を、最も近いデジタル量にあてはめて取り込む。

例えば、音声や絵などは、アナログデータのため、直接扱うことができない。アナログのデータをコンピュータで扱うには、それらをいったんデジタル化しておく必要がある。そこで、スキャナーで画像の形や明るさ、色などを読み取り、デジタル信号に変換してコンピュータに送り込む。

アナログ-デジタル変換回路

アナログ-デジタル変換回路(A/D変換回路)は、アナログ

HYPERLINK "http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9B%BB%E6%B0%97%E4%BF%A1%E5%8F%B7" \o "電気信号" 電気信号をデジタル電気信号に変換する電子回路である。A/Dコンバーター(ADC(エーディーシー))とも言う。

また、アナログ-デジタル変換(アナログ-デジタルへんかん、A/D変換)は、アナログ信号をデジタル信号に変換することをいう。

逆はデジタル-アナログ変換回路である。

アナログ-デジタル変換回路上:連続量であるアナログ信号下:離散化されたデジタル信号

アナログ・デジタル変換回路の方式

名称

サンプリングレート(Hz)

分解能(bit)

特徴

用途

フラッシュ形(並列比較形)

10G~10M

12~6

高速・大規模

高速測定器

パイプライン形

200M~10M

14~8

映像、通信

逐次比較形

1M~10k

16~8

低消費電力

マイコン

デルタシグマ形

10M~100

24~12

高分解能

音声処理、計測、通信

二重積分形

1k~10

22~12

高精度

計測

変調方式の一種として見た場合は、A/D変換はパルス符号変調である。また、A/D変換のような操作をより一般にはデジタイズという。

基本的なA/D変換の操作は、まずサンプリング周波数で入力を標本化し、それを量子化することでおこなわれる。標本化にともなう折り返し雑音は、重要な問題である。また、量子化にともなう量子化誤差による量子化雑音もある。

・原理

「比較器」とは、入力電圧を基準電圧と比較して、基準より高いか低いかを出力する回路であり、1bitのAD変換器とも言える。

-フラッシュ型(並列比較型)

 bit出力のAD変換であれば、個の比較器を用意して変換を行う。たとえば0Vから15Vまで1V間隔でAD変換して4bit出力を得る場合であれば、1Vから15Vまで15個の比較器を用意して入力と比較を行い、必要があればそれらの出力を2進数にエンコードする。

-逐次比較型およびパイプライン型 

比較器の他にDA変換器も用意し、入力とDA変換器の出力とを比較しながら1bitずつ精度を上げていく。したがって n bitの場合は n 回の比較を行う必要があるが、比較器1つを用いてループ状に n 回の操作を行う場合が逐次比較型、パイプライン処理のように n 段階の回路構成で処理する場合がパイプラン型である。

この他に、上位半分用と下位半分用のフラッシュ型および上位半分に相当するDA変換器を用意して、2段階に分けて変換する方法などがある。この場合でも完全なフラッシュ型と比べれば比較器の数を大幅に削減できる。

1回の変換のために何度も入力を参照する必要があり、その間に入力電圧が変動すると誤変換をしてしまう。そのため、変換が完了するまでの一定時間だけ入力電圧を固定する回路(サンプルアンドホールド回路)が必要となる。

-傾斜型および追従型 

のこぎり波を常時発生させておき、入力電圧と比較する。その上で、のこぎり波の立ち上がりの時点から、のこぎり波の電圧が入力電圧と一致するまでの時間を計測する(傾斜型)。

のこぎり波の代わりに、必要な精度のDA変換器とカウンタにより生成した階段状波形と入力電圧とを比較する場合もある(追従型)。この場合は入力電圧を超えた時点のカウンタ値を採用すればよい。

回路は簡単かつ小規模であるが、遅い。DA変換器を用いる追従型の場合、同じくDA変換器の出力と入力電圧との比較を行う逐次比較型と比べれば、その遅さは明らかである。また、サンプルアンドホールド回路で入力を固定せず入力が変動すると、サンプリングのタイミングが不均等になる。

-二重積分型(二重傾斜型)

まず入力電圧を一定時間積分する。その後に逆符号の基準電圧で積分して、積分値が0になるまでの時間を計測する。これにより入力電圧と基準電圧の比を、時間の比として計測できる。

積分回路を用いるので一種の平均化が行われる。別の言い方をすると回路自体が1次ローパスフィルタであり、ある程度高い周波数成分はカットされるので、アンチエイリアスフィルタが不要な場合もある。しかしナイキスト周波数付近でも中途半端に減衰されるので、ナイキスト周波数ギリギリまで用いる用途にはあまり向かない。

-VF変換型

入力電圧をコンデンサに充電するマルチバイブレータを用いて矩形波を発生させる。この時、矩形波の周波数(F)は入力電圧(V)に比例する。必要な場合はこれをカウントする。

-ウィルキンソン型

パルス状入力信号のピーク値、またはパルスの総電荷を計測するために、核物理学者のD.H.Wilkinsonが考案した方法である。

ピーク値測定の場合は入力をコンデンサに接続し、ピーク判定をした時点で接続を切る(一種のピークホールド回路になっている)。総電荷の場合は入力を積分回路に接続し、パルスが完了した時点で接続を切る。その後に充電したコンデンサを定電流で放電し、コンデンサの電圧が0になるのに要する時間を測定する。

-デルタシグマ型

もっとも簡単な、量子化を1bit(比較器)で行う1次デルタシグマモジュレータの場合で説明する。

入力は1bitでAD変換され、この結果は+1と-1の列からなる。しかし積分器により量子化誤差が蓄積されていくので、入力を単純に1bit AD変換した値とは異なる値の列が出る。入力の変化が遅い場合、例えば入力が0Vであれば+1と-1が交互にほぼ等しい回数出力され、高い電圧ならば+1が多くなる等、+1と-1の個数の比が入力電圧に比例するように出力される。つまり一種のディザ化を行っている。この+1と-1の個数をmステップ分だけ数えれば、それに応じたbit数のAD変換となる。

「mステップ分だけ数えた後の結果」という最終的なAD変換のサンプリング周波数から見ると、1bitのAD変換器はそのm倍のサンプリング周波数で変換を行っている、すなわちオーバーサンプリングを行っている。あるいは、高いサンプリング周波数の低ビットAD変換の結果を、低いサンプリング周波数の高ビットAD変換に変換している。

ここで見方を変えると、この回路は量子誤差を帰還させる一種のフィルタになっている。実際この回路は、入力信号に対しては1次ローパスフィルタ、量子化誤差に対しては1次ハイパスフィルタになっている。入力信号では、最終的なナイキスト周波数以下の部分が必要であり、高い周波数成分は除去したい。一方量子化誤差に起因するノイズは出来るだけ除去したいが、これはフィルタにより高い周波数帯に残っている(上記の0Vの例では+1と-1の交互列、すなわちオーバーサンプリングのナイキスト周波数で出力されている)。そこで、1bitオーバーサンプリングで量子化された出力に対しデジタルフィルタを適用し、量子化ノイズを可能な限り除去して、目的のbit数とサンプリング周波数の出力に仕立てる。上記の「mステップ分だけ数える(連続したmステップのデータを単純平均する)」というのも、一種のデジタルフィルタになっている。

実際にはもっと複雑な帰還をかけて高次のデルタ・シグマ・モジュレータを構成し、フィルタとしての特性を急峻にする。 しかしアナログ回路部分の構成は、他の方式のAD変換及びアンチエイリアスフィルタにおけるアナログ回路部分よりは簡単であり、その分デジタル回路で処理する部分が増える。

・AD変換器の性能表示

AD変換器の性能を表示するため、以下のような項目がある。

-分解能

測定可能な最大値(または最大値と最小値の幅、フルスケール)が、離散化の最小単位でみていくつになるかを表したもので、通常は2進数の桁数(すなわちビット)で表示する。ただしデジタル電圧計など目読する場合は10進数の桁数などで表す。いわば表示可能桁数であるが、他の要因の誤差があるので必ずしも有効桁数とは言えない。

AD変換における誤差要因

-誤差

理想的なAD変換をグラフで表示すると、原点を通る傾き一定の階段状であり(量子化誤差を除けば直線であり)、フルスケースが指定値通りとなる。 しかし現実にはこれからずれており、それを許容誤差として表示する必要がある。

誤差の表示方法としては、平均直線からのずれ(積分非線形性誤差)、部分的な傾きのずれ(微分非線形性誤差)、原点やフルスケールでのずれ、これらの温度依存性などがある。

-変換時間とサンプリング周波数

入力がデジタルに変換されて出力として現れるまでの時間、または変換開始のための合図を入力して結果が出るまでの時間が変換時間である。 一方、サンプリング周波数は、時間方向の分解能と呼べるものである。

単純な構造であればサンプリング周波数は変換時間の逆数より小さいが、パイプライン型のように変換処理を同時平行で行える場合はそれより早くなる。

-時間方向の誤差

音声信号など、最終的にアナログ信号に復元するためのデジタル化のケースを考えると、サンプリングのタイミングのずれ(ジッター)も重要な誤差の要素になる。 入力信号の周波数が高いと、短い時間の間でも値が変化してしまい、誤差の要因になる。

D/A変換(デジタル-アナログ変換回路)

D/A変換 (Digital to Analog Conversion)

デジタルの信号をアナログの信号に戻すことをD/A変換という。これは、2値化された信号を時間的になめらかなアナログ信号にすることである。例えば、デジタル信号の画像データをディスプレイで表示するグラフィックボードは、デジタルなデータをアナログ信号に変換している。

デジタル-アナログ変換回路

デジタル-アナログ変換回路(デジタル-アナログへんかんかいろ、D/A変換回路 digital to analog converter)は、デジタル電気信号をアナログ電気信号に変換する電子回路である。D/Aコンバーター(DAC(ダック))とも呼ばれる。

また、デジタル-アナログ変換(デジタル-アナログへんかん、D/A変換)は、デジタル信号をアナログ信号に変換することをいう。

逆はアナログ-デジタル変換回路である。集積回路化されている。

デジタル-アナログ変換回路上:離散値であるデジタル信号下:復元された連続量を持つアナログ信号

デジタル・アナログ変換回路の方式

名称

サンプリングレート(Hz)

分解能(bit)

特徴

用途

抵抗ラダー型

10M~DC

12~6

小面積、低消費電力

サーボ、制御

抵抗ストリング型

1M~DC

12~6

小面積、低消費電力

電子ボリューム、制御

電流出力形

1GHz~DC

14~8

高速

デルタシグマ形

10M~100K(オーバーサンプリング)

24~18

高分解能

音声処理

・原理

3レベルのパルス幅変調出力(青)と、それを積分するという「ローパスフィルタ」に通した時の出力(赤)。フィルタ特性による位相の遅れが見られる。

-パルス幅変調型

2進数データをパルス幅変調データに変換し、その出力をローパスフィルタに通してパルス周波数による高周波成分を除去する。

パワートランジスタによるスイッチングの直後にLCローパスフィルタを挿入すると、リニアアンプ無しに低損失大出力DA変換を実現でき、そのままスピーカーやモーターを直結できる(D級アンプ、チョッパ制御)。

-デルタシグマ型

デジタル入力を時間方向に補完してサンプリング周波数を数十倍にする(オーバーサンプリング)。この出力をデルタシグマモジュレータを通すことで低ビットのオーバーサンプリングデータにする。デルタシグマモジュレータの目的はAD変換の場合と同じだが、高ビットのデジタル入力を、デジタル処理によって低ビットの「ディザ化」されたデジタル出力にする。1bit出力であればパルス幅変調と似た出力になるが、デルタシグマモジュレータにより、より良いパルス波形になる。

この低ビット出力をDA変換し(1bitの場合は出力電力が足りればそのままでもよい)、パルス幅変調型と同様にローパスフィルタに通すことで折り返し雑音(エイリアス)成分や量子化誤差成分を除去して、アナログ出力とする。

-抵抗ストリング型

 bitの場合は個の抵抗を直列に接続し、アナログスイッチで必要な箇所に接続する。デジタルポテンショメータとして使われる場合もある。

-抵抗ラダー型

オペアンプによる演算機能を用い、抵抗のオンオフや電圧印加から目的の電圧を得る。R-2Rラダー型抵抗回路によるものが有名である。

-容量アレイ型

ビットに応じて重み付けをしたコンデンサを充電し、全体の電圧を測定する。

-電流出力型

ビットに応じて重み付けした抵抗を、スイッチを介して並列接続する。ここに一定の電圧をかけると、総電流量はスイッチでオンした抵抗に流れる電流の総和となり、結果として2進数値に比例する電流が流れる。ビット数だけの抵抗とスイッチが基本構成であり、高速化が容易である。

通常は電流出力を電圧に変換して利用する。ここで変換係数を自由に設定出来る変換回路を使用すると、出力=(自由に設定出来る離散化単位電圧)×(デジタル入力)という、全体としてはアナログとデジタルの乗算を実現する回路になる(乗算型)。

・RAMDAC

特にIBM PC/AT互換機に使用するビデオカードにおいて用いられる、映像信号処理用DACをRAMDACと呼ぶ。Color Lookup Translation(CLUT)を行う為の792バイトのメモリを持ち、インデクスカラー256色を最大1680万色のいずれかに変換する(パレット変換)機能を持つ。インデクスカラーによる表示は主にゲームに使われたが、WindowsとDirectXの普及により使われなくなった。しかし、CLUTの機能は表示のブライトネス・コントラスト・γ補正に技術的に転用が容易であった事から、現在の市販されているビデオカードはCLUTに加え各チャンネルごとの発色特性を補正できるRAMDACを搭載している。2011年現在市販されているビデオカードではRAMDACはGraphics Processing Unitに吸収内包され、単体パッケージとしてビデオカード上に見ることはできない。

・オーディオ機器としてのDAC

CDプレーヤーやSACDプレーヤー、PC等のデジタル機器の内部でDA変換を行うと、その産物である音にノイズが乗りやすいとされる。このため、DAC変換を別のコンポーネントに担当させることがある。この機器をその機能からDAC、外部DACと通称する。機器からDACへの信号の転送にはS/PDIFが多く用いられる。高級機では信号のジッタ(時間軸のわずかな揺れ)の影響を排するためにIEEE 1394で接続したり、さらなる高精度を用いる場合にはS/PDIF同軸ケーブルで接続された機器同士で、クロックを同期させる機構を併用したり外部クロックジェネレータを利用する場合もある。なお、内部のDACを用いずに専らデジタルデータの送出のみに利用されるプレーヤーはトランスポートと呼ばれる。

・マイルストーン

1984年にソニーがDAS-702ESを発売する。セットになるCDトランスポートはCDP-552ESDであった(これらはいわゆるESシリーズで、型番末尾のDはS/PDIFによるデジタル出力を備えることを意味する)。

標本化

標本化または英語でサンプリング(sampling)とは、連続信号を一定の間隔をおいて測定することにより、離散信号として収集することである。アナログ信号をデジタルデータとして扱う(デジタイズ)場合には、標本化と量子化が必要になる。標本化によって得られたそれぞれの値を標本値という。

連続信号に周期 T のインパルス列を掛けることにより、標本値の列を得ることができる。 この場合において、周期の逆数 1/T をサンプリング周波数(標本化周波数)といい、一般に fs で表す。

周波数帯域幅が fs 未満に制限された信号は、fs の2倍以上の標本化周波数で標本化すれば、それで得られた標本値の列から元の信号が一意に復元ができる。これを標本化定理という。

数学的には、標本化されたデータは元信号の連続関数 f(t) とくし型関数 comb(fs t)の積になる(fs はサンプリング周波数)。 これをフーリエ変換すると、スペクトルは元信号のスペクトル F(ω) が周期 fs で繰り返したものになる。 このとき、間隔 fs が F(ω) の帯域幅より小さいと、ある山と隣りの山が重なり合い、スペクトルに誤差を