1115 ビジネスソリューションフェアin虎ノ門 案内状 最終版 · 介護事業者における安全の確保と リスクマネジメントについて ~事故事例を踏まえ対策を考える~
アクセルとブレーキの...
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アクセルとブレーキの踏み間違いによる事故事例
篠原 一光
(大阪大学大学院人間科学研究科)
木村 貴彦
(関西福祉科学大学健康福祉学部)
概要
• 内容• 実際に起こった踏み間違いの事故事例を分類する。• 踏み間違いにつながった人間要因を整理する
• 結果• 通常の走行中でも減速する必要があると踏み間違いが起きる
• 駐車場内ではハンドル操作やペダル操作が多く、注意すべき対象も多いことが踏み間違いを誘発する。
• 脇見、不注意、漫然が踏み間違いにつながる。• 「驚き」「焦り」「急ぎ」が踏み間違いにつながる。• 不適切な運転姿勢やペダル操作により、ブレーキからアクセルに足が滑ることがある。
• 高齢ドライバーの注意・認知機能特性が踏み間違いの多さに関係するように思われる。
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目的
•実際に発生した踏み間違いによる事故事例に基づき、事故発生に至る過程を明らかにする。• 事故発生状況を分類する。
• 事故発生時または事故直前に、運転者がどのような行動をとっていたかを整理する。
• 様々なパターンの事故発生状況の中に潜在する、踏み間違いにつながる要因を抽出する。
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分析対象事例
• 212件のペダル踏み間違いによる事故事例を収集した。• 事故要因区分コードの人間要因として「ブレーキとアクセルの踏み違い」が選択されているものである。
• 調査対象となった都道府県により、調査対象時期や、調査対象の事故内容に違いがある(死亡・重傷事故のみ対象とした場合と、すべての事故を対象とした場合がある)
↓
本調査で収集した事故事例について統計的分析を行うことは適切ではない。
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事故発生状況の分類①
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状況 件数 平均年齢
通常走行中している 28 69.9
先行車に続いて停止しようとしている 28 74.3
交差点を直進する 6 77.6
交差点を右左折する 18 75.2
渋滞した車列の中にいる 2 70.0
方向転換・転回する 5 70.6
走行中
事故発生状況の分類②
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状況 件数 平均年齢
車道から駐車場へ進入する 11 71.6
駐車場内を移動する 13 74.0
駐車するため駐車位置に向け前進する 25 72.7
駐車するため駐車位置に向け後退する 17 72.8
駐停車の状態から発進する 14 74.4
降車時に車が意図せず動く 3 80.3
駐停車の状態から不本意に発進する 5 70.0
ギア操作ミス 6 74.2
駐車場から車道に進出する 20 77.3
状況不明確 11
駐停車関連
通常走行中①
•概要• 対向自転車に気づいたが考え事をしながらそのまま進行、接近してブレーキをかけようとした時に踏み間違えた。
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通常走行中②
•概要
•曲がり角に進入してハンドル操作を誤った。
•その後踏み間違って、路外逸脱して川に転落
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通常走行中③
•概要• たたんでいたドアミラーを戻そうとしていたら、相手に近づきすぎて慌て、踏み間違った。
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先行車に続いて停止
•概要• 停止先行車に対応して減速・停止しようとして踏み間違えた。• 考え事をしていた
• 漫然としていた
• ブレーキのつもりで踏んだらアクセルだった
• 足の位置がずれた・滑った
• 焦った
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まとめ:通常走行中・先行車に続いて停止
•考え事や漫然等、運転から注意が離れており、その結果対応が遅れ、急いで操作しようとして踏み間違える。• 焦り、慌てが影響する
•見落としや対応遅れはないが、踏み間違える場合がある。• 足の状態が誤って認識される
• ブレーキのつもりがアクセルに足がかかっていた
• 足が滑った• 正しくペダルを踏めていない
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交差点を直進
•事故内容
交差点を直進通過する時、右方から接近した自転車を発見するのが遅れた。
↓
焦って停止しようとして踏み間違えた。
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交差点右左折時
•事故内容① 進入時に一時停止しようとして踏み間違えた。
② 右折中に自転車等を発見して回避しようとしたが接触、驚愕して踏み間違えた。
③ 進行方向が間違っていることに気づいてとっさにブレーキを踏もうとして踏み間違えた。
223
①
③
②
1
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まとめ:交差点直進・右左折時
•左右から他車や自転車等が現れ、減速しようとした時に踏み間違える。• その相手が予想していなかったものである場合、焦り、慌てが影響する。
•交差点に進入する時、減速しようとした時に踏み間違える。
•交差点で自分の進行方向が間違っていたことに気づいた時に、減速しようとして踏み間違える。
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渋滞
•事故内容• 渋滞のため発進と停止を繰り返しており、発進後に停止しようとして、相手の後方で停止しようとした際、ブレーキペダルを踏んでいた右足が右に滑ってアクセルペダルを踏んでしまい、追突してしまった。
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転回
•事故内容• いつも転回で使っている場所でUターンした後、曲がりすぎたので減速しようとした際に踏み間違えた。道路の法面に衝突。
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方向転換
•概要• 丁字交差点で後退し方向転換して発進した際に踏み間違えた。
• 電柱に衝突。
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まとめ:渋滞・転回時
•渋滞の中で加速と減速を繰り返す中で、踏み間違える。• 覚醒低下が影響している可能性もある。
•転回時に大きなステアリング操作とペダル操作を同時かつ連続的に行う中で踏み間違える。
•方向転換時に踏み間違える。• 不慣れであること、個々の操作を確実に行わないことが踏み間違いにつながる。
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1
車道から駐車場に進入
•事故内容① 車道より左折で駐車場に進入。歩道縁石に乗り上げて慌て、踏み間違えて先に進入していた車に追突した。
② 車道より右折で駐車場に進入。前進して駐車しようとした際に踏み間違えて壁に衝突。
1
2
19
2
駐車場内の移動中
•事故内容• 駐車スペースを探しながら
• 減速しようとして
• 左折しようとして
↓
• 駐車場の壁面、駐車車両、歩行者に衝突
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まとめ:車道から駐車場へ・駐車場内移動
•路外の駐車場に出る際、確認のための一時停止や精算機操作が必要で、その際に踏み間違える。
•縁石に接触して驚くことが踏み間違いのきっかけになる。
•駐車場内の移動はひんぱんなステアリング・ペダル操作が必要で、注意すべき対象も多く、踏み間違いのきっかけが多く存在する。
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駐車場内で駐車のため前進
•人的要因に関する特徴的記述• 同乗者の携帯電話での会話に気をとられた
• 同乗者がシートベルトを外したことを注意し、そのことに気をとられた。
• 事故を起こしたことに動揺して踏み間違えた
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駐車場内で駐車のため後退
•事故内容• 駐車位置を調整するために後退・前進した後、店舗駐車場にバックで駐車する際、踏み間違えた。 1 1
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駐車場内で駐車のため後退②
•事故内容① 一度後退してスーパーの壁にぶつかったことで慌てた。
② 不用意にアクセルを強く踏みすぎ、慌てた。
③ 普段ブレーキを踏むタイミングで少しアクセルを踏んで加速し、慌てた。
111
1
1
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駐車場内で駐車のため後退③
•事故内容• 後方確認し、後退を始めたところ、車輪止めに気を取られて踏み間違えた。
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まとめ:駐車のための前進・後退
踏み間違いを引き起こすきっかけ:
•同乗者の行動など車内で気になることがあって、注意をとられること。
•操作の失敗とその結果としての事故。
•駐車位置の微調整などでひんぱんなステアリング・ペダル操作を行うこと。
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駐停車状態から発進①
•事故内容• 駐車場から発進するさい、タイヤが右方向を向いていたことに驚き、停止しようとしたところ踏み間違えた。
• 壁面、歩行者と衝突
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駐停車状態から発進②
•事故内容• 集合住宅敷地内の駐車場で前進で発車した際、ほかの駐車車両に接触し、踏み間違えた。
集合住宅玄関
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駐停車状態から発進③
•事故内容• 発進後、減速しようとしたときに、足をアクセルからブレーキに乗せ換えたと思い込んでしまい、アクセルペダルを踏み込んだ。
• 暴走後は気が動転してどうすることもできなかった。
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駐停車状態から発進④
•事故内容• 右方向へ発進したところ、進行方向から接近する自転車を発見した。
• ブレーキを踏もうとしたが踏み間違えた。
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駐停車状態から発進⑤
•事故内容• 駐車場から出ようと右にハンドルを切って発進し、ブレーキを踏もうとしたところ、滑ってアクセルを踏んでしまった。
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まとめ:駐停車状態からの発進
踏み間違いを引き起こすきっかけ:
•発進時に自車の予想外の動きがあった• タイヤの方向
• アクセル操作に対する加速の程度
•発進時に周囲で急な変化があった• 接近する自転車
•加速・減速操作の中で、足の位置を誤認した
•接触事故をきっかけに気が動転した
•操作中に足が滑った32
駐車場から車道へ進出①
•事故内容• 敷地と歩道との段差で右にハンドルが切れて慌て、踏み間違えた。
• 右から来た対向車と衝突。
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駐車場から車道へ進出②
•事故内容• ブレーキを踏みながら車道に出たが、敷地と歩道との段差で足が滑り、アクセルを踏んでしまった。
• 向かいのブロック塀に衝突。
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駐車場から車道へ進出③
•事故内容• 駐車券を機械に入れた時につい足を踏み換えてしまった
• 精算機のところでなかなかギアが入らず
• 後ろで車が待っていたので慌てて
駐車料金の支払いに伴う踏み違い
料金精算機
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駐車場から車道へ進出④
•事故内容• 同乗者がシートベルトを締めたか確認するため、同乗者のほうを見た後、前を見たところ、前の車が止まっており、止まろうとしたところで踏み間違えた。
同乗者
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まとめ:駐車場から車道へ進出
踏み間違いを引き起こすきっかけ:
•道路の縁石に接触・段差への乗り上げ• 驚き、焦り。• ハンドルをとられる等運転操作への影響。
•同乗者の行動など車内で気になることがあって、注意をとられること。
•駐車場出口の精算機の操作。• 後続車が待っているときの焦り、急ぎ
•先行する他車への対応の失敗。
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ギア操作ミス①
•事故内容• 駐車場2階に上がろうと加速した後に減速しようとした際、踏み間違えて壁に衝突した。その後焦ったままギアをバックに入れて急加速し、後方の車等に衝突した。
1
2F
1F
38
ギア操作ミス②
•事故内容• 事故を起こしたことに慌て、ドライブからバックに入れ、踏み間違えて急発進した。
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まとめ:ギア操作ミス
•踏み間違いが事故の原因になる場合と、事故をきっかけに踏み間違える場合がある。• 踏み間違いにより驚がくしてギアを誤ってバックに入れて急発進
• 事故をきっかけにギアを誤ってバックに入れて急発進
•自分の意図とは逆にギアを入れ、意外な方向に動いて事故となる場合もある。
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降車時に車が動く
•事故内容• 歩道に駐車して降車した際、自車を発進させて歩行者に衝突した
• 勝手に発進した車を停止させるべく乗り込んだ際に踏み間違え、対向歩道上に設置した信号中に衝突した
• 駐車場内で、もめた相手に注意しようと降車した時に車が後退し、慌てて乗り込んだところペダルを踏み間違え、車を暴走させた。
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駐停車状態から不本意な発進
•事故内容• 停止中に後部座席においてカバンを取ろうとして体をひねり、右足を踏ん張った際に足が滑ってアクセルを踏んだ。
• 停止中に助手席のバッグをあさっていたところブレーキが緩み、ぶつかる直前に気づいたが踏み間違った。
• 信号待ち中、左側方を通過した車の運転手から給油口が開いていることを告げられ、慌てて踏み間違い。
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まとめ:降車時に車が動く・不本意な発進
•車外や車内に注意をひかれるものがあると、ブレーキを十分にかけず、車が意図しない動きをする場合がある。
•車の意図しない動きは驚き、慌てといった気持ちを引き起こし、踏み間違いを誘発する。
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踏み間違いにつながる要因①
•走行中に加速や減速の操作を繰り返す中で踏み間違える。• 自分の足の状態の認識に誤りが生じる。
• 考え事等により運転行動から意識がそれる
• 同じ走行状況であっても、足の状態がありうる• どのペダルに足がかかっているか
• ペダルを踏んでいるか、足をのせているだけか
踏み間違いを防ぐために• 特に、前に減速または停止する車がいる時に自分も減速しようと思ったら、足の位置とペダルに意識を向ける
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踏み間違いにつながる要因②
•車が予想外の動きをしたり、その結果として危険な状況になると、「驚き」「慌て」「あせり」といった気持ちを誘発する。• 車が縁石や壁に接触したり、段差などでハンドルが取られる
• 気になるものに対応したり脇見をすることで、車が予想外の動きをする
踏み間違いを防ぐために• 車が予想外の動きをしないよう、運転に集中する。
• 予想外の動きを誘発するような急な加速や操作は避ける
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踏み間違いにつながる要因③
•予想していない他車や自転車・歩行者があらわれて、急いで対応する必要が生じる場合、「驚き」「慌て」「あせり」といった気持ちを誘発する。• 駐車場内を移動中に歩行者等が現れる
• 交差点右左折時に、自転車等が前方にいるのに気づく
踏み間違いを防ぐために• 危険予測を確実に行えるようにする
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踏み間違いにつながる要因④
•多くの注意すべき対象がある状況では、ペダル操作に意識を向けることは難しい• 駐車スペースを探しながら駐車場を移動する場合、自分の進路、ほかの車や歩行者、空いている駐車枠等、運転しながら多くの注意すべき対象がある。
• ハンドル操作、ペダル操作もひんぱんに行う必要がる。
踏み間違いを防ぐために• 速度を十分に落として運転する。状況によっては一時停止する。
• 同乗者との会話などはやめ、運転に集中する。47
踏み間違いにつながる要因⑤
•ブレーキペダルから足が滑ってアクセルペダルを踏んでしまう。• 「足が滑る」という表現はしばしばみられる。
• 「足が滑る」のは運転姿勢やペダルの踏み方に問題があることを示している。
踏み間違いを防ぐために• 自分がペダルをどのように踏んでいるのか確認してみる。
• 正確にペダルを踏めるよう座席の位置を適切に調節する。
• 正しい運転姿勢で運転する。特にペダルの踏み換えを多く行う状況では重要。
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踏み間違いにつながる要因⑥
•不注意が踏み間違いを誘発する。• 脇見や考え事、漫然状態が踏み間違いをもたらす要因となっている。
• 次の二つの流れがある• 不注意→見落とし・発見遅れ→慌て→踏み間違い
• 不注意→ペダル操作ミス→踏み間違い
踏み間違いを防ぐために• 頻繁なハンドル操作、ペダル操作が必要となる状況では運転に集中し、不注意状態になることを避ける。
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高齢ドライバーの問題①
•高齢ドライバーで踏み間違いが多いのはなぜ?
①注意機能の衰え
•加齢に伴う注意・認知機能低下• 注意できる範囲が狭くなる• 情報を記憶できる範囲が狭くなる
→見落とし増加、予想できない状況・対象が増える→発見遅れ等により「驚く」ことが増える→とっさの反応により踏み間違える
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高齢ドライバーの問題②
• 高齢ドライバーで踏み間違いが多いのはなぜ?
②行動コントロール機能の衰え
• 行動を正しい順番で行わずに途中の段階を飛ばしたり、すべきでない行動をとっさにしてしまうことが増える
→「ペダルを踏みかえた後踏み込む」必要があるのに、踏みかえを飛ばして、すぐに踏み込むという反応が起こる
→踏み間違えに気づいても、「踏み込んだペダルを戻す」という即座の行動修正ができない
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