新たな宿泊モデルとしての都市型民泊の実態と活用可能性 ·...

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新たな宿泊モデルとしての都市型民泊の実態と活用可能性 伊藤杏里 1. はじめに 1-1. 研究の背景と目的 近年外国人観光客の増加やホテル不足等の影響から 主に都市圏で「民泊」と呼ばれるサービスの利用が急 増している。これは 2008 年以降 Airbnb (1) 等の宿泊 予約仲介サイトを通して、気軽に住宅や部屋を貸し出 せる仕組みが生まれたことによる ( 図 1)福岡市は都 市圏でも家賃が比較的安価で Airbnb の掲載数も多く、 全国初の行政主体のイ ベント民泊が行われた ことで民泊への注目が 集まっているが、これ らは法整備が不十分で 運営の透明性や安全性 において問題も多い。 「民泊」は日常生活に近いまちへの滞在体験を提供 し、ニーズが多いことから、民泊の利用状況はその都 市の魅力と密接な関係があると考えられる。また、空 室の有効活用や住居専用地域への宿泊など、民泊が今 後都市に与える影響は大きい。本研究では都市型民泊 の概要や運営目的などの実態を明らかにし、課題等を ふまえ民泊が都市の中でどのように発展し得るか、ま た活用の可能性について推察する事を目的とする。 1-2. 既往研究と本研究の位置づけ 青木ら 1) は 2013 年 に 全 国 で Airbnb に 登 録 さ れ た物件をサイトをもとに分析、またホストへインタ ビューを行い、国籍や運営目的を明らかにしている。 しかし、認知度や法改正など民泊を取り巻く状況は大 きく変化し日本人ホストの増加や運営目的の多様化な どが予測される。本研究では、サイトからの情報をも とに現在の福岡市における都市型民泊の特徴を捉える と共に、ホスト・利用者・行政などあらゆる視点から 民泊の実態を調査し考察する。 2. 研究の方法 まず民泊の制度や関連法規について整理すると共 に、 「民泊」として運営されているものについて分類し、 概説する。次に Airbnb サイトからリスティングと呼 ばれる物件情報を採取し、分類する。サイトでのリス ティングの位置は地図上で半径約 500m の円で表示 されるため、円の中心付近の任意の点を立地点と仮定 して GIS マップを作成し、立地の特性を分析する。ま た運営目的の異なるホスト 2 人にヒアリングを行い、 運営側の意見を聴取すると共にサイトレビューより用者の民泊に対する評価をテキストマイニング (2) 用いて視覚化する。さらに福岡市を含めイベント民泊 を実施した 3 自治体にヒアリングを行い行政から見 た民泊の状況を合わせて考察し、最後にまとめを行う。 3. 民泊の定義と制度 3-1. 民泊の分類 法的定義のある民泊は以下の3つに分類される。 ①簡易宿所 : 所謂ゲストハウス等の小規模宿泊施設の ことで民泊利用に合わせた規制緩和が進んでいる。ま た、農林漁業体験民宿業もこの一種である。 特区民泊 : 国家戦略特区 (3) において旅館業法の適用 外で一定要件を満たす施設に限り宿泊を提供できる。 ③イベント民泊 : 年 1 回のイベント開催時に宿泊施設 の不足が見込まれる場合、自治体の要請等により旅館 業法適用外で自宅での宿泊を提供できる。 福岡市は国家戦略特区の指定を受けているが①は活 用していない。また Airbnb 掲載物件の多くは法的に 位置付けられておらず、立地や運営形態も不明瞭で自 治体の指導も難しい状況にある。これは予約するまで 正確な住所が不明であること、企業本部が海外であり 法律の適用範囲が不明瞭であることが原因である。 3-2. 制度の改正と課題 福岡市では旅館業法を緩和し現行制度の範囲での民 泊の推進を図ろうとしているが、建築基準法や消防法 12-1 -福岡市を対象として- 図 1 Airbnb のシステム ゲスト ホスト Airbnb マッチングサービス マッチングサービス 宿泊費 (清掃料金) ※ホストによる (予約時) クレジットカード 電子マネー等 現金不可 支払金額の3 % 支払金額の 6~12% 表 1 民泊の種類と法的分類

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新たな宿泊モデルとしての都市型民泊の実態と活用可能性

伊藤杏里

1. はじめに1-1. 研究の背景と目的 近年外国人観光客の増加やホテル不足等の影響から主に都市圏で「民泊」と呼ばれるサービスの利用が急増している。これは 2008 年以降 Airbnb(1) 等の宿泊予約仲介サイトを通して、気軽に住宅や部屋を貸し出せる仕組みが生まれたことによる ( 図 1)。福岡市は都市圏でも家賃が比較的安価で Airbnb の掲載数も多く、全国初の行政主体のイベント民泊が行われたことで民泊への注目が集まっているが、これらは法整備が不十分で運営の透明性や安全性において問題も多い。 「民泊」は日常生活に近いまちへの滞在体験を提供し、ニーズが多いことから、民泊の利用状況はその都市の魅力と密接な関係があると考えられる。また、空室の有効活用や住居専用地域への宿泊など、民泊が今後都市に与える影響は大きい。本研究では都市型民泊の概要や運営目的などの実態を明らかにし、課題等をふまえ民泊が都市の中でどのように発展し得るか、また活用の可能性について推察する事を目的とする。1-2. 既往研究と本研究の位置づけ 青木ら 1) は 2013 年に全国で Airbnb に登録された物件をサイトをもとに分析、またホストへインタビューを行い、国籍や運営目的を明らかにしている。しかし、認知度や法改正など民泊を取り巻く状況は大きく変化し日本人ホストの増加や運営目的の多様化などが予測される。本研究では、サイトからの情報をもとに現在の福岡市における都市型民泊の特徴を捉えると共に、ホスト・利用者・行政などあらゆる視点から民泊の実態を調査し考察する。

2. 研究の方法 まず民泊の制度や関連法規について整理すると共に、「民泊」として運営されているものについて分類し、概説する。次に Airbnb サイトからリスティングと呼

ばれる物件情報を採取し、分類する。サイトでのリスティングの位置は地図上で半径約 500m の円で表示されるため、円の中心付近の任意の点を立地点と仮定して GIS マップを作成し、立地の特性を分析する。また運営目的の異なるホスト 2 人にヒアリングを行い、運営側の意見を聴取すると共にサイトレビューより利

用者の民泊に対する評価をテキストマイニング (2) を用いて視覚化する。さらに福岡市を含めイベント民泊を実施した 3 自治体にヒアリングを行い行政から見た民泊の状況を合わせて考察し、最後にまとめを行う。

3. 民泊の定義と制度3-1. 民泊の分類 法的定義のある民泊は以下の3つに分類される。

①簡易宿所 : 所謂ゲストハウス等の小規模宿泊施設のことで民泊利用に合わせた規制緩和が進んでいる。また、農林漁業体験民宿業もこの一種である。

②特区民泊 : 国家戦略特区 (3) において旅館業法の適用

外で一定要件を満たす施設に限り宿泊を提供できる。

③イベント民泊 : 年 1 回のイベント開催時に宿泊施設の不足が見込まれる場合、自治体の要請等により旅館業法適用外で自宅での宿泊を提供できる。 福岡市は国家戦略特区の指定を受けているが①は活用していない。また Airbnb 掲載物件の多くは法的に位置付けられておらず、立地や運営形態も不明瞭で自治体の指導も難しい状況にある。これは予約するまで正確な住所が不明であること、企業本部が海外であり法律の適用範囲が不明瞭であることが原因である。

3-2. 制度の改正と課題 福岡市では旅館業法を緩和し現行制度の範囲での民泊の推進を図ろうとしているが、建築基準法や消防法

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-福岡市を対象として-

図 1 Airbnb のシステム

ゲスト

ホスト

Airbnb

マッチングサービス

マッチングサービス

宿泊費+

(清掃料金)※ホストによる

(予約時)クレジットカード電子マネー等現金不可

支払金額の3 %

支払金額の 6~12%

部屋提供

表 1 民泊の種類と法的分類

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在で家や部屋をまるごと貸し出す「まるまる貸切」タイプがある。シェアルームは部屋の一部をカーテンやパーティションで区切り、個室は扉で区切られた一室を貸し出すことである。採取した 1,015 件の内、シェアルーム 79 件(ホスト数 34)、個室 177 件(ホスト数 127)、まるまる貸切 759 件(ホスト数 354)であった。立地は全体的に中心市街地である商業地域に集中しているが、特にまるまる貸切はその傾向が強く、都心部から西部の鉄道沿線上に集中している。シェアルームと個室は住宅専用地域にも広く分布していることがわかる。また、まるまる貸切タイプは住宅の空き家・空室率の高い 3 区に集中していた ( 図 2)。4-2. ホスト数の推移とホスト属性 福岡市では、2013 年以降日本人ホストが急増しており、外国人ホストは近年アジア系国籍のホストが増加傾向にある。これより 2013 年以降日本を始めアジ

ア地域に Airbnb が広く認知されてきたことがわかる(図 3)。自己紹介から抽出できるホストの属性として「旅好き」の記載が最も多く、「交流したい」「様々な人と出会いたい」等交流目的でホストを始めた人も多くいた ( 図 4)。食事や観光を共にするなど民泊ならではのゲストとの交流を楽しめることがホストを始める理由の一つにもなっている。また、自分のお勧めの場所や店等を案内・紹介したいというホストには地元の人が多かった。日本文化やその他のサービスを売りにしているものは少数であった他、自己紹介の記載がない等特徴が見られないホストも多く、これらは投資収益を主な目的としていることが推察できる。

等の規制が依然としてハードルとなる。また、グレーゾーンにある物件を適用させるため、新法の整備も進められているが、営業日数制限が付加される見込みで事業としての運営は厳しくなる。しかし一方では規制緩和や新法の整備で旅館業の圧迫も懸念される。

4. 福岡市における Airbnb 登録民泊の実態 本研究では、2016 年 11 月〜 12 月における福岡市内の Airbnb 掲載物件約 1,696 件の内データを採取できた 1,015 件を対象とする。サイトからわかる情報は、建物タイプ・部屋タイプ・ホスト登録時期・立地する範囲で、部屋紹介やプロフィールからキーワードを抽出しホストの属性を推察、類型化した(図 5)。

4-1. 部屋タイプによる立地の分布 物件の部屋タイプは大きく分けて家主同居型の

「シェアルーム」及び「個室」の 2 タイプと、家主不

12-2

図 2 Airbnb 掲載物件の部屋タイプ別立地分布  

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201 0’ 11 ’12’ 13 ’14’ 15 ’16日本 アジア系 その他外国 企業

抽出キーワード 属性旅行が好き、バックパッカー経験有 旅好き交流したい、世界中の人に出会いたい、異文化に興味 交流一緒に食事しましょう/できます 食事お話したい/会話相手になります 会話オススメのスポットを紹介/案内できます 紹介/案内福岡が好きで紹介/案内したい、地域を知って欲しい PR日本文化に触れる機会を提供 ( 茶道、着物、生け花) 日本文化

Airbnb の宿泊スタイルが好きで自分も提供したい サービス提供就活相談/テーマ部屋/アート展示/D IY 等 その他サービス

返答率・レビュー満足度等で水準が高いホスト スーパーホスト自己紹介の記載がない/特になし 特記なし

※重複あり

11190

2211

5342

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1159

73

文化交流系

魅力発信系付加価値系

図 3 ホスト数の推移 図 4 抽出キーワードによるプロフィール分析

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鉄道

商業地域

工業地域

近隣商業地域

準工業地域

工業専用地域

旅館業立地不可地域(住宅専用地域)

シェアルーム

用途地域

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まるまる貸切

住宅全般空室率 *12%~

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15%~

17%~

14%~

16%~

まるまる貸切

*平成 20 年度住宅・土地統計調査より算出

天神地区

博多地区

天神地区

博多地区

天神地区

博多地区

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12-3

6. 利用者の民泊に対する評価 ゲストが宿泊後に物件やホストに対し書き込んだレビューをもとにテキストマイニングを行い、民泊を利用してどのような印象を受けているかをデータ化し考察する。本研究では部屋タイプ別に合計約 1 万件の

レビューを採取し KH Coder(5) を用いて分析を行う。

6-1. レビュー言語別に見る特徴 採取したレビューは主に 4 つの言語に分類される。

(図 5)レビュー言語は必ずしも母国語ではないが韓

国語が最も多いことから、韓国人のゲストが多いこと

がわかる。また英語レビューの約 6 割はシェア・個

室タイプの利用であり、英語圏のゲストは家主滞在

型の民泊を選ぶ傾向が他の 3 つより高い。日本語レ

ビューの多くはホストとの接触が少ないまるまる貸切

タイプのもので、日本人は民泊をホテル利用と同じよ

うに捉える一面があることが伺える。

6-2. 全体と部屋タイプ別の評価 レビュー全体の評価としては、場所の利便性や部屋の清潔さを肯定的に評価したものが多いことがわかる ( 図6)。利便性は駅やコンビニが近く、天神や博多といった市街地に徒歩で移動できることが評価のポイントになっている。また、ホストが親切という評価も多い。部屋タイプ別に見ると、シェアルームは立地の評価に加えホストが親切という評価が高いことがわかる。個室は部屋がきれいで快適という評価が多く見られる。まるまる貸切の場合は立地評価が主な評価となっている。これらの評価は、ゲストがリスティングを選ぶ際の 1 つの基準になっていると考えられる。

5. ホストによる民泊の運営実態  部屋タイプ・運営形態別に 2 人のホストにヒアリングを行った。以下にヒアリング内容を示す ( 表2)。

 Y さんは元々会社でデザインをやっていたことから内装を工夫し質の高いリスティングの提供を行っている。今後福岡市ではマンションタイプのホテルも増え

るため、付加価値を付けての差別化が重要と考えてお

り、地元クリエイターと協力するなどコンセプトを付加した宿泊を提供していきたいと話していた。 S さんは将来的にホスティング経験を生かしゲストハウスを開きたいと考えている。また、介護職の経験から高齢者が一人広い家に住む現状を見て、そのような家でも「間に立つ人や仕組みができれば外国人が求める日本の生活体験を提供しつつ高齢者の見守りにもなり、地域力の向上に繋がるのでは」と話していた。 国や自治体への要請としては両ホスト共通して現状の民泊の合法化と答えていたが現実は難しいだろうという考えであった。また、S さんからは法整備をするなら「ビジネス目的の人と交流目的の人との線引きをしてほしい」との意見もあり、多様なホストに対応できるような柔軟な法整備が求められている。

図 5 言語別採取レビュー数

日本語

英語韓国語中国語

シェアルーム 個室 まるまる貸切

図 6 全体の共起ネットワークと部屋タイプ別の特徴クラスタ

表 2 ホストへのヒアリング内容

Page 4: 新たな宿泊モデルとしての都市型民泊の実態と活用可能性 · 用してどのような印象を受けているかをデータ化し考 察する。本研究では部屋タイプ別に合計約1万件の

流人口の拡大などを図るためイベント民泊が行われた。募集期間は福岡市に比べると余裕があるが申請は 6 〜 7 件と少数である。しかし、南相馬市と五所川原市ではいずれも現地調査を実施し、その際サイトにアップする写真撮影を市の職員が行っていた。その他、南相馬市では事前説明会の実施やサイトへの仲介手数料の負担、五所川原市では現地調査の際ホストと共に仲介サイトへの申請書を作成するなどホスト個人の負担を軽減していることがわかった。福岡市では新たなホテルの整備も進んでおり、今後の需要と供給の動向を見極めながら実施を検討するとしており、他 2市も今後継続していく考えで、イベント民泊に対し前向きな姿勢を見せている。

8. 考察・まとめ 本報では都市型民泊を様々な視点から捉え、その実

態を明らかにした。現在の都市型民泊はホスト個人の

裁量に委ねられた部分が大きく、都市の観光や魅力発

信の仕組みとして安全に活用するには法整備だけでな

く、多様なニーズに応えることのできるホストを活か

す仕組みづくりが必要である。また、空室や空き家等

のストックを有効活用するには 50 代以上の潜在ホス

トが外国語や IT へのハードルをクリアできるような

新たな仲介の仕組みが求められる。イベント民泊は地

域行事と共に開催することで観光 PR や地域交流の手

段として期待でき、制度を使い分け地域実情に合致し

た利用が民泊の有効活用になるといえる。

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7. イベント民泊の実態 イベント民泊とは 3-1 で触れた通り、自治体等の要請によって年 1 回提供が可能となる民泊サービスのことであり、2015 年 12 月に福岡市で社会実験的に行われた。その後観光庁より「イベント民泊ガイドライン」が示され、他地域では福島県南相馬市と青森県五所川原市、また宮城県石巻市などで実施されている。7-1. 福岡市の事例 福岡市は宿泊稼働率が年平均 80%を超え慢性的な宿泊施設不足の状態にあり、2015 年 12 月のアイドルグループのコンサートが実施される期間は明らかな宿泊施設不足が見込まれたためイベント民泊を実施した。この試みは民泊の有効性について検証を行うための社会実験的取組みとして実施された。この時点でガイドライン等はなく、市が独自に募集要件を作成し同意書の提出を経て要請を行う仕組みになっていた。主な要件は、①対応を自身の責任でできること ②居住している住宅であること(家主居住型)③暴力団関係者ではないこと ④共同住宅の場合、ルールを遵守すること ⑤賃貸住宅の場合、大家の同意を得ること などである。募集開始後約 200 件の問い合わせが寄せられたが、最終的に申請 38 件、実際の宿泊募集は 22 件、マッチングは 4 件と少数にとどまった ( 表

3)。これは、宿泊募集は「イベント民泊」と明示した上で Airbnb 等の情報サイトで行われたが、マッチングはゲストの選択に左右されるため、ごく少数になったと考えられる。また、市は宿泊に際しホスト・ゲスト双方にアンケートを実施している。宿泊したゲスト9 名のうち 7 名は外国人であったが特にトラブルもなく、地域の生活が感じられたというゲストもいた。市としては民泊が新たな宿泊モデルとして多様な宿泊ニーズに応えることができるものではないかとしている。また、申請数が少なかった理由として募集期間が短く周知が不十分であったこと、宿泊提供を希望する人の多くが 50 代以上でありインターネットを使ったマッチング方法等へのハードルが高かったためであることが考えられる。7-2. 他地域の事例 南相馬市と五所川原市は、年 1 回というイベント

民泊の特性を生かし、地域の伝統祭事に合わせて実施した。この 2 つの地域は伝統祭事の際、宿泊施設の不足が明らかで、また南相馬市では東日本大震災による復興需要の高まりによる宿泊施設不足の常態化も起こっていた。よって宿泊施設不足による機会損失の解消、伝統行事と合わせた市内滞在型の観光客誘致・交

表 3 実施自治体別イベント民泊の概要

福岡市 南相馬市 五所川原市

イベント コンサート 相馬野馬追 五所川原立佞武多

募集期間 約 1週間 約 1か月 約 1か月

事前説明会 なし 実施 なし

現地調査 なし 実施 実施

申請数 38 7 6

宿泊募集数 22 6 6

マッチング 4 4 6

ゲスト数 9 8 23

料金設定 3000 ~ 5000 3500 5000 ~ 7500

ホスト年代 20 ~ 40 代 不明 40 ~ 60 代

貸出理由

・国際交流がしたい

・子供が出ていき部屋   

が余っているから

・観光客の役に立てれば

・自分も民泊を利用した

ことがあるから

・将来農家民宿をするこ

とも考えているから

・交流がしたい

・子供が出ていき部屋

が余っているから

・余った部屋を活用して

稼ぎたい

今後の実施 検討中 継続 継続