ダチョウの飼育方法（マニュアル）

誌名誌名鳥取県中小家畜試験場研究報告 = Bulletin of Tottori Swine & PoultryStation

ISSNISSN 0918998X

著者著者

三浦, 泰忠野田, 一臣忠田, 孝樹奥村, 敏広

巻/号巻/号 55号

掲載ページ掲載ページ p. 26-30

発行年月発行年月 2005年3月

農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センターTsukuba Business-Academia Cooperation Support Center, Agriculture, Forestry and Fisheries Research CouncilSecretariat

ダチョウの飼育方法(マニュアル)三浦泰忠・*野留一臣・忠田孝樹・**奥村敏広

(*現倉吉家畜保健衛生所村現鳥取農業改良普及所)

Manual of ostrich feeding Yasutada Miura， Kazutomi Nodaラ KoukiT刊taラ ToshihiroOkumura

要約ダチョウ飼育の可能性を探るため、 1998年10月に16ヶ月齢のアフリカンブラック種のダチョウ6羽(雄2

羽、雌4~~) を導入し、産卵調査および僻化調査を開始し、育雛及び育成、肥育の一貫調査を5年間実施し

た。そこで得られた技術を紹介する。

2)地面

排水を良くするため地下に暗きょ排水を設置。

産卵のために穴を掘るので山砂(別名:山士、砂

質土)を約 20cm敷いた 2)。

3)柵の種類

フェンスの高さは約1.5mとし、頚部の傷を紡

ll::するため更に、フェンス上約0.5mlこ寵径50m

mの塩化ビニールパイプを外周に張った(図 2)。

2群に分ける仕切りは作業時間の短縮が最優先だ

ったため、長さ 3mの挙管パイプ(直径50mm) を

人力で 1m土中に打ち込んで地上から1.5mの間

に向じ単管パイプを横に 3本取り付けた柵を設置

した(写真2)。しかし、一度だけ 1羽の雌が仕

切りの下をくぐり、 i捧の区に移動したので柵の下

端を地面から30cmの高さで4段にする 3)などの対

策が必要と考えられる。

40m

酬明会滋縫

1.要点

1)飼育場の面積のとり方として直線距離を設ける

ことで大きな音等でパニックを引き起こした際

のケガや脱走等の危険が少なくなる。雌は通常

フェンス際を歩く習性がある 2)のでフェンス際の

地面が国くなる。また、産卵は軟らかいところ

に巣穴を掘って産む習性があるので、地面は)11

砂や山砂などを用い、水はけを良くした方がよ

2)柵の高さは1.6""'2. Omあれば良いが、柵による

ダチョウ頚部のケガを防止するため、上部は塩

ピパイプや単管パイプ、竹などの丸い材質のも

のを用いること o また、柵は丈夫なものなら一

震でよいが弱し、材質のものだとダチョウが逃げ

出したり、柵を蹴ることがあるので柵を二重に

して見学者や作業者の安全を考慮する必要があ

る。

3)ダチョウは雨が降っても外にいることが多く、

小屋は餌が濡れないようにする給餌場と考えて

よい。構造はダチョウの出入りがスムーズにで

き、強度があるものが良い。

飼育場について

曜診

親鶴育場の概轄図

。

ダチョウ♂ダチョウ♀

図1

2.親飼嘗場の概要

1)面積

イノシシ飼育場を改造して約700rdで雄2羽、

4羽を飼養。導入 1年半(生後10ヶ月 ""'28ヶ

月)は 6羽 1群で銅育していたが雄間士の闘争が

激しくなり 2群(約250niと450ni) に分けた1)

(閤 1、写真 1)。

26-

写真 1 親飼育場全景

写真2 親飼育場の仕切り柵

4)小屋

給餌小屋(屋根はスレート、外壁コンパネ)と

休息小屋(屋根はスレート 、外壁石官ノ号ネノレ)を

設置 したが雨や雪の日でも小屋をあまり利用しな

い。給餌小屋は餌が雨などで濡らさないためと夕、¥

チョウに風や直射日光を避けるための設置と考え

て良い。また、殆どが小屋の外で、産卵するが、ま

れに小屋で卵を生み出すこともあるので床面はコ

ンクリート打ちしなくても良い。小屋内に産卵す

ることにより、卵に雨が当たらなく、巣に水がj留

まらないため衛生的で、集卵作業の効率化にもな

る。小屋は間口 4m奥行 3mで、飼養していたが給

餌作業者の安全と作業性を考慮し、奥行きを約

1.5mの作業スペースを設け、単管パイプを格子

状に立てダチョウの首だけが出るようにして給餌

を行った。

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図2 親飼育場の外周柵模式図

3. 肥育場及び育成場の概要

生後 1ヶ月は自作飼育場で飼育し、その後 3ヶ

月まではコンクリー卜床の豚舎にもみ殻を敷いて

飼育した。その後、日中は山砂を敷いた放牧場、

夜間は豚舎で飼育し野外で、の飼育馴致を行った

(写真 3)。柵は簡単な親飼育場の仕切りと同じ

構造とし、 6ヶ月までは柵の聞から逃げ出さない

ように地面から高さ約 1mは豚放牧用の鉄線金網

(鹿除け金網)を巻いた。小屋は肥育場(写真

4) が単管パイプを柱とする波トタン葺きとし、

育成場が 4X4 mのパイプハウスに寒冷紗を取り

付けた。

生後 3ヶ月 (90日)齢から成鳥まで飼育する

場合はダチョウの成長を見越した高さや間隔(自

の大きさ)が必要である。やはり、 柵の高さは親

と同じく 2m位が必要で、ある。材料は単管パイプ

や材木、金網等が考えられるがダチョウがケガを

しないような工夫が必要である。

写真 3 豚舎と野外馴致用放牧場

傾斜地での飼育は実施してはないが、多少は傾

斜があっても飼育可能である。 しかし、雨による

糞尿の流出に注意が必要である。また、田固など

の排水の悪いところは糞尿が発酵して悪臭が出る

ことがあるので除糞作業を頻繁に行うか、 山砂等

を追加で投入するなど排水対策が必要である。

飼料について1 要点

基本的に草を食べるが長いものを与えると草を

円袋に詰めてしまう「食湘」を起こして死亡する

ので短く裁断(成鳥5cm以下、4ヶ月齢以前は1cm

未満)してから給与する ことけ。 また、牧草の一種

アノレブアノレファを乾燥して細かくしたもの (粉砕

へイキューブ、アルフアノレファミ ーノレ)やペレッ

ト状にしたものが市販されている。

また、野菜くずや食品工場からの副製産物等の

未利用資源が利用できるが、食?僚や異物混入等の

危険性も考えられるため注意が必要である。

2. 親の飼料

表 1に 1日および年間の給与量、年間の飼料費

(概算、飼料価格の変動等は考慮せず)を示した。

解卵を目的としていたため、産卵期のダチョ ウ専

表1 飼料給与量と飼料費試算

写真4 肥育場

用飼料を主体としている。体の維持の他に産卵す

るための栄養(特にタンパク質やカルシウム)を

補わなければならなし刊。

3.肥育飼料

試験方法は約 5ヶ月から飼料をダチョウ専用の

配合飼料を制限給与し、ノレーサンペレッ トを不断

給与する配合飼料区と 、アルフアノレファヘイキュ

ーブとノレーサンベ レッ トを不断給与する粗飼料と

分け、それぞれ 3羽ずつ調査した。体重増加 (図

3及び図 4)及び精肉量 (表 2) は粗飼料区より

配合飼料区が優れていたが、脂肪量の増加及び飼

料~!J:のコス ト が上昇 した(表 3 )。なお、粗飼料

区では 160日齢で 1羽死亡したが原因は不明で

あった。

1)粗飼料区の給餌方法

飼料はルーサンペレッ ト、粉砕アノレフアノレファ

ヘイ キューブ。給餌方法は豚用の不断給餌器を用

いた。

2)濃厚飼料区の給餌方法

飼料はダチョ ウ専用飼料、ルーサンベレッ ト。ダ

チョウ専用飼料は指示書に準じ毎朝 1回給与。ル

ーサンベレッ トは豚用不断給餌器を用いた。

年間飼料量Ckg) 年間飼料費(円71日当たり給与量g)

産卵期※休卵期※ダチョウ専用飼料 1000 0 成鶏用飼料 700 767 粉砕ヘイキューブ 833 2000 力キガラ 25 0

計

産卵期※休卵期※242.0 0.0 169.4 93.6 201.6 244.0 6.1 0.0

合計242.0 263.0 445.6 6.1

産卵期※休卵期※48.400 0 8，470 4，679 12，095 14，640

151 0 69，116 19，319

餅一仰向山間一山

※産卵期を2-9月、休卵期10-1月とした場合。

備考飼料費は平成13年6月現在。また購入先により価格が異なるので一つの目安としてください。

-28-

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84 114 144 174 204 234 264 294 324 354 384

日齢

図3 配合飼料窪の体重推移

表2 ダチョウ精肉調査結果 (単位kg)

濃揮飼料区 糧館料区

と殺E齢(臼) 395.3 393.0

生体重 99.1 71.7

枝肉 47.0 33.8

精肉 26.6 21.0

脂肪 4.0 1.2

心臓 0.9 0.7

筋胃・腺闇 3.6 4.3

肝臓 1.6 1.2

小腸 未漠IJ定 0.5

表 3 ダチョウ肥育の飼料費(1羽あたり)

配合濃厚館料区 (金額)

ゲチョウ育成飼料

ゲチョウ肥育飼料

2.6kg

280. 9kg

2.3kg

217.7kg

400円

42，416円

115円

8， 708円

ルーサンミー)~

ル…サンペレツト

ヘイキューブ

計 51，639円

※飼料の金額は購入先や棺場により変動あり。

必要器材

1.施設及び道具

1)小塵

ダチョウは関に濡れることがあまり苦にはなら

ないようであるが、夏場の直射日光や冬の積雪時

には小屋を利用する。また給餌場として利用し餌

が濡れないようにする為に必要である。

2)水場

小屋の中に併設する必要はないが揚除がしやす

い場所が良い。容器を清潔に保つため 2~313 に

1回は掃除して衛生的にする。餌にもよるが親 1

羽で夏場に 811くらいの水を飲むのでフロート

3

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臼齢

冨4 籾飼料箆の体重推移

粗鋼料区 (金額)

4.0kg 614内

25.8kg 3， 896内

10.2kg 510円

475.0kg 19，000円

65.0kg 3，250円

27守 270内

(水洗トイレ用)を取り付けて給水するなどの工

夫が必要である。

3)道具

温度計・ネコ主主・角スコップ-給餌桶・草を餌

として利用する場合は草を細かく切るための藁切

カッターなど。

参考文献

1)三浦泰忠ほか:鳥取県でのダチョウの飼育調査

(第 1報) ，鳥取県中小家畜試験場研究報告， 54，5

-8， 2002

1)産業としてのダチョウの銅い方・ふやし方:唐沢

豊，富民協会， 1997年

29

3)農業技術体系畜産編 6r中小家憲jダチョウ:奥村

純一他，農山漁村文化協会， 2000年

4)新特産シリーズfダチョウJ:日本オーストリッチ

協議会編著，農山漁村文化協会， 2001年