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17 【優秀賞】 フレキシタンクを活用した12フィート汎用コンテナによる液体輸送の実現 三八五通運株式会社 山口 武夫

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【優秀賞】

フレキシタンクを活用した12フィート汎用コンテナによる液体輸送の実現

三八五通運株式会社

山口 武夫 様

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1章.はじめに

(1)当社の取り引先である釜石鉱山様の事業について

釜石鉱山様は、150 年を超える歴史を誇り、かつて日本最大の鉄鉱山として栄えたが、

現在では鉱泉水の製造及び販売が事業の中心となっております。

鉱山として操業していた当時から「美味しい」と坑内作業者が絶賛していた湧水は、

磁鉄鉱の鉱床をはじめ、中・古生代の堆積岩類、花崗岩など様々な厚い岩盤を数十年の

歳月をかけて湧き出していて、日本でも数少ない弱アルカリ性のミネラルウォーターで

ある。主な製品としては、湧き水の美味しさをそのままに非加熱充填したナチュラルミ

ネラルウォーター(以下、「天然水」という。)、加熱して長期保存を可能とした災害備蓄

用の保存があり、近年は清酒の仕込水、麺類、菓子類、化粧品原料水として使用される

など、用途の幅を拡げていて、販売量が増加しています。

当社は鉱泉水の生産開始以来、JR コンテナを利用して頂いております。

(2)製品輸送について

天然水や保存水(写真 1 参照)は、ペットボ

トルを段ボール箱に詰め、パレットに積載して

輸送している。

原料水は、ドラム缶(200 リットル入り)、マキ

シコンと呼ばれる(1,000 リットル入り)立方体の

容器に内袋を設置して充填し、輸送している。

原料水は、主に関西地区向けとなっており、輸

送については主に JR12 フィート汎用コンテナ(以

下、「JR コンテナ」という)を利用している。

(3)物流に関する課題について

天然水や保存水については、荷姿が段ボール/パレット積載で、輸送数量の単位があま

り大きくないことから、JR コンテナ主体の輸送で大きな問題は生じていない。一方、原

料水については、ドラム缶やマキシコンといった容器により輸送しているが、JR コンテ

ナの積載 5tという制約から、効率は良いとは言えず、輸送コスト増の要因となり、納

品先からも抜き取り効率が良くないことから、容器の大型化の要望が出ていた。

釜石鉱山様から『関西地区向けに関して原料水の販売数量が増える』とのことから、

原料水の効率的な輸送システムの構築に向けて取り組んできた内容を述べることとする。

【写真 1】 左 仙人秘水(天然水…非加熱鉱泉水)

右 岩手釜石の自然水(加熱鉱泉水)

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2章.国内の液体輸送の状況と釜石鉱山様の製品輸送について

(1)国内における液体輸送の状況について

国内における液体輸送は、少量の場合は 18 リットル(一斗)缶やペール缶(20 リッ

トルが主流)、200 リットル程度ではドラム缶、1,000 リットル程度になると IBC

(Intermediate Bulk Container:中容量コンテナ)を使用し、自動車やコンテナで行われて

いる。

容量が大きい場合、タンクローリー(トラック及びトレーラー)、タンクコンテナによ

る輸送が主流となっている。

また、最近では、飲料や動植物油などの輸送ににおいて、フレキシタンクを利用した

輸送が注目されつつある。フレキシタンクは、欧州にて国際海上コンテナを使用して液

体を運搬する容器として平成 12 年(2000 年)頃から使用され始め、現在では危険品を

除く液体の運搬において一般的に使用されている。

【写真 2】 IBC 【写真 3】 フレキシタンク 【写真 4】 タンクコンテナ

(2)釜石鉱山様の製品輸送について

① 天然水及び保存水

天然水及び保存水は、ペットボトルに充填し、段ボール箱詰めされ、パレットに

積載し、JR コンテナ又はトラック便で輸送している。

② 原料水

ドラム缶(200 リットル入り)、マキシ

コン(IBC の一種:1,000 リットル入り)

といった容器に充填し、輸送している。

JR コンテナを利用する際は、ドラム缶

23 本、マキシコンの場合は 4 基を 1 コン

テナに積載している。なお、マキシコン

については、納入先で空になった後、折り畳んだうえで、ある程度の数になった時

点で返送している。原料水の受注の増大に伴い、積載効率、荷役作業効率、抜き取

り効率の向上に向けた抜本的な改善策を講じることが必要となってきた。

以下、原料水輸送の改善に向けた取り組みを記載する。

ドラム缶 マキシコン

原料水 積載量 4,400ℓ 4,000ℓ

容器数 23 4

1 容器の重量 28kg 200kg

【表 1】 JR コンテナ 1 個あたりの積載重量

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3章.新たな輸送方策の検討

(1)現状の分析

原料水輸送について、現在、関

西方面向けに主に JR コンテナを

利用しているが、その内容を表 2

に記載した。

ドラム缶による輸送では、1 コ

ンテナ当たりの積載量が 4,400 リ

ットルとなり、積載率(JR コンテ

ナの積載重量 5,000kgを 100%とす

る)は 88%という結果になる。し

かしながら、1 回当りの納入数量単位が大きい場合は、ドラム缶への充填、JR コンテナ

への積載、取り降ろし、納入先におけるドラム缶からの抜き取り作業等、荷役作業に非

常に手間を要するという問題点がある。

マキシコンによる輸送では、1 容器当たり 1,000 リットル積載できるものの、納入数量

単位が大きい場合は、1 コンテナ当たり 4 回の荷役作業が生じてしまうため、依然とし

て荷役作業に手間を要することになる。また、1 容器当たりの重量が 200kg のため、1 コ

ンテナ当たりの積載量が 4,000 リットルとなり、積載率が 80%と低い値となる問題があ

る。その他、マキシコンのリース料、納入先からの返送料といった費用が生じている。

以上のことから、原料水の効率的な輸送システムの構築に際して、「積載率の向上」と

「荷役作業効率の改善」の 2 点を主題として検討を進めることとした。

(2)新たな輸送方策の検討

原料水の効率的な輸送システムの構築に向け、「積載率の向上」と「荷役作業効率の改

善」の 2 点を主題に、考えられる全ての方策について、以下のとおり、検討を行った。

①タンクローリーによる輸送の検討(平成 28年 1月~4月)

「積載率の向上」と「荷役作業効率の改善」を図るために、タンクローリーによる

輸送を検討した。

タンクローリーによる輸送では、2 点の主題は改善できるものの、以下の 2 点の事

由により、断念した。1 点目は、物理的な要件で、釜石鉱山様の製造工場に至る道路

が急峻で狭く、特に冬場は積雪と凍結によりトレーラーの通行が不可能であったこと

による。2 点目は、納入先まで遠距離輸送かつ片道輸送となるため、乗務員の勤務管

理及び費用面の観点から現実的ではなく、これらの事由によりタンクローリーによる

輸送は不可能と判断した。

項目 ドラム缶 マキシコン

積載量 4,400ℓ 4,000ℓ

積載率

(5,000ℓ:100%) 88% 80%

容器数 23 4

荷役作業 回数多い 回数少ない

その他 ・リース料の発生

・リース料の発生

・返送料の発生

・洗浄作業の発生

【表 2】 JR コンテナ輸送の現状分析

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②タンクコンテナによる輸送の検討(平成 28年 1月~4月)

タンクローリーによる輸送の検討と並行して、日本石油輸送株式会社と、タンクコ

ンテナ使用による鉄道貨物輸送の検討を行った。

まず、ISO タンクコンテナ(20,000 リットル)の利用を検討したが、タンクローリ

ー輸送と同様にトレーラーの釜石鉱山様製造工場への乗り入れが不可能なため、ISO

タンクコンテナによる輸送は不可と判断した。

次に、20ft タンクコンテナによる輸送を検討した。20ft タンクコンテナでは、JR コ

ンテナ 2 個積車両による集荷が可能なこと、約 10,000 リットルを一度に輸送でき「積

載率の向上」と「作業効率の改善」が図られることから、検討を進めた。しかしなが

ら、輸送面で、最寄り駅である水沢駅(距離…約 80km)では 20ft タンクコンテナの

取扱いができず、取扱い可能な盛岡貨物ターミナル駅迄運ぶとすると、集荷距離が更

に遠く(約 100km)なり、しかも JR 貨物による輸送距離も長くなることから、輸送

費用が増加する見込みとなった。また、使用するタンクコンテナについても、すぐに

使用できるものがなく、新造した場合のリース料、返送経費の他、洗浄、修繕等も考

慮すると、予算を超える金額となることが明らかとなった。

以上のことから、ISO タンクコンテナ(20kl)並びに 20ft タンクコンテナによる輸

送について、断念せざるを得ない結果となった。

③フレキシタンクによる輸送の検討(平成 28年 4月~28年 8月)

タンクローリー及びタンクコンテナによる輸送が不可となったため、その他の容器

による輸送の方策を検討し、近年、液体輸送で使用が定着しつつあるフレキシタンク

による輸送について検討を進めることとした。当社から釜石鉱山様にフレキシタンク

及びメーカーの情報などを提供し、フレキシシタンク自体について、様々なメーカー

や取扱い会社の情報を収集・検討して頂き、3 社目で技術面において対応可能なこと

が判明した1。そこで、トラック(12,000 リットル)と JR コンテナ(4,900 リットル)

によるフレキシタンク輸送を検討した。

最初に、JR コンテナ用の 4,900 リットル入りフレキシタンクを試作し、充填試験を

行ったところ、充填作業だけで 1 時間以上かかり、荷役作業時間が予想以上にかかる

ことが判明(製品抜き取りにも時間を要するものと推定)した。現行のマキシコンに

よる輸送と比較すると、荷役作業時間に約 3 倍の時間を要し、集荷・配達に関するコ

ストが上昇するため「荷役作業効率の改善」が図れないことが明らかとなった。

次に、釜石鉱山様の充填設備並びに納入先の受入設備を改造すれば、充填及び抜き

取り時間を短縮できるため、発着荷役設備の改造費用の試算と輸送コスト削減費用の

1 原料水については、製造ラインから輸送容器に直接充填しているが、加熱処理を行い製品温度が 70 度

のため、輸送容器にはかなりの耐熱性が求められる。

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比較を行って頂いた。その結果、設備を改造した方が総費用を低減できる見通しとな

ったため、フレキシタンクによる輸送2の検討を進めることにした。

なお、トラック輸送については、片道輸送となるタンクローリー並びにタンクコン

テナ(トレーラー)輸送と違い、往復実車輸送が可能となるものの、乗務員の運行管

理及びコスト面の問題から見送ることとし、結果として JR コンテナを利用したフレ

キシタンク輸送の検討を更に進めることとした。

④輸送方法の検討結果

原料水の効率的な輸送システムの構築に関し、「積載率の向上」と「荷役作業効率

の改善」の 2 点を主題に、これまで検討してきた方策の結果を表 3 にまとめた。

タンクローリーと ISO20ft コンテナによる輸送では、2 点の主題について改善できる

ものの、トレーラーの通行が不可という物理的制約条件により、実現は不可能であっ

た。また、20ft(10,000 リットル積載)タンクコンテナについては、最寄の貨物駅が

遠くなること、タンクコンテナに関する費用等を考慮すると実現は難しく、フレキシ

タンク(12,000 リットル積載)を利用したトラック輸送では、乗務員の運行管理等の

問題から実現は難しいと判断した。

結果として、発着荷役施設等への設備投資も抑えられることが判明したため、「積

載率の向上」と「荷役作業効率の改善」も図れるフレキシタンク(4,900 リットル積

載)を利用した JR コンテナ輸送の方策を採用し、実現に向けて取り組むこととした。

輸送方法

項目

タンクローリー

タンクコンテナ フレキシタンク

ISO20ft

(トレーラー・JR)

20ft(10,000ℓ)

(JR 輸送)

トラック

(12,000ℓ)

JR コンテナ

(4,900ℓ)

コスト面 - - △ △ ○

積載率向上 ◎ ◎ ○ ○ ○

荷役作業効率 ◎ ◎ ○ ○ ○

設備投資

発着荷役施設 大容量 大容量 中容量 中容量 小容量

その他 コンテナ コンテナ

車両走行 トレーラー不可 トレーラー不可 可 可 可

その他 乗務員運行管理 最寄取扱駅…遠 最寄取扱駅…遠 乗務員運行管理

実現可能性 無 無 低 低 高

⑤フレキシタンク専用の充填設備の設置

フレキシタンクへの原料水の充填は、製造設備からホースを延長して行う予定であ

ったが、実際に充填すると、ホースが 20m 程の長さのため圧損が大きく、口径が 25A

と小さいため、1 回の充填に 1 時間を要し、荷役作業効率の低下を招いた。

2 フレキシタンクによる輸送についいては、1 回限りの使用を前提として、検証している。

【表 3】 原料水の新たな輸送方策の検討結果

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このため、釜石鉱山様にて原料水倉庫にサービスタンクと配管、制御盤を設置し、

フレキシタンク専用充填設備を増設することにして頂いた。これにより、充填時間は

40 分となり大幅に短縮された。近い将来、加熱殺菌装置を増設し、2 基の加熱殺菌装

置から同時にサービスタンクに送水させることで、充填時間を 30 分迄短縮する計画

にして頂いた。

4章.フレキシタンクを活用したJRコンテナによる液体輸送の実現

フレキシタンクを活用した JR コンテナ輸送の実現に向け、平成 28 年 8 月から平成 29

年 3 月の間に、各種試験輸送を 6 回実施した。試験輸送により、フレキシタンク輸送にお

ける課題を抽出し、課題の解消策を検討・実現することがその目的である。本章では、各

種試験輸送における課題の抽出、課題の解消策の検討結果について記載し、最後に、フレ

キシタンクを活用した JR コンテナによる液体輸送の方策について、述べることとする。

なお、試験輸送の実施にあたっては、JR 貨物の協力を得て、様々な試験を行った。

(1)試験輸送1回目…輸送の全体の流れの確認(平成 28年 8月)

集荷から配達までの輸送に関する一連の流れを把握し、フレキシタンク輸送における

課題の把握を目的として、初回の試験輸送を行った。

まず、JR コンテナのサイズに適合したフレキシタンクを試作し、コンテナと接触する

床面・壁面に養生紙による養生を実施の上、試験輸送を行った。なお、鉄道輸送区間に

ついては、初回の試験輸送ということもあり、水沢駅から仙台貨物ターミナル駅迄の短

距離区間にて実施している。

試験輸送の結果、把握できた課題は 2 点となった。1 点目は、水の充填に 1 時間以上

を要し、現在行っている集荷作業の 3 倍以上の時間を要したことである。配達でも同様

のことが想定され、作業時間の長時間化により集荷・配達費用が増加するため、水の充

填・抜き取り作業時間の短縮が課題となった。2 点目は、フレキシタンクの構造である。

写真 5 のように、縫製箇所が妻側の横列 1 本となっているため、水の充填時に横方向に

膨らんでしまい、コンテナ壁面を圧迫するという欠点が露見した。

前者の課題に対しては、集荷・配達先の充填・抜き取り設備の増設を検討し、後者の

課題に対しては、水の充填時に立方体となるよう縫製箇所を変更し、膨らみを小さくし

て、コンテナ内壁面への圧力が小さくなるよう改良を加えた。

【写真 5】試作フレキシタンク(充填時) 【写真 3】(再掲)立方体となるよう縫製箇所を変更

縫製箇所 片側 横一列

⇒膨らみ 大

縫製箇所 片側 縦 2 列

⇒膨らみ 小

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(2)試験輸送2回目…長距離輸送にてフレキシタンクの状態を確認(平成 28年 11月)

フレキシタンクの仕様を変更したものを試作(写真 3 参照)し、実際の輸送区間であ

る水沢駅から関西地区に鉄道で輸送し、フレキシタンク及び輸送に問題がないかの確認

を行った(試験輸送時は、関西の着駅にて開封確認後、集荷先である釜石鉱山様迄返送

し、フレキシタンクの状態の確認を行った)。

課題の 1 つであったフレキシタンクの膨らみについては、水を充填した状態でもコン

テナ内壁を圧迫しておらず、課題の解消が確認できた。また、フレキシタンク自体にも

「擦れ」「破損」等の異常は認められず、鉄道輸送に耐えられると判断した。

【写真 6】フレキシタンク(仕様変更)(充填時) 【写真 7】着駅開封確認(扉面 圧迫せず)

(3)試験輸送3回目…実輸送区間における試験輸送(平成 29 年 1 月)

これまでの 2 回の試験輸送の結果から、フレキシタンクを活用した JR コンテナ輸送

の実現可能性が高くなったことから、配達先における水の抜き取り作業まで含めて、実

輸送区間における試験輸送を行った。

配達先にて、フレキシタンクに「擦れ」「破損」等の異常は認められなかったほか、コ

ンテナ壁面への接触も認められず、フレキシタンク輸送に問題は認められなかった。ま

た、取り降ろした水のサンプリング調査を行ったところ、品質にも問題は認められなか

った。

なお、配達先において、水の抜き取り口のバルブについて、設置位置の改善要望があ

ったため、次回試験輸送に向けて、仕様を変更することとした。

【写真 8】抜き取り作業(抜き取りホース装着) 【写真 9】抜き取り作業(ほぼ終了)

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(4)試験輸送4・5回目…動揺防止に向けた養生方法の開発(平成 29 年 2 月)

3 回の試験輸送により、JR コンテナ輸送の目途はついたが、平成 26 年に、大阪から

和歌山県に向け配達に向かい国道を走行中の海上コンテナの中に積載していたフレキシ

タンクが損傷し、内容物が漏洩する事象が発生していることが分かった。

フレキシタンクが損傷した原因としては、当該トラクタ・コンテナセミトレーラの運

転手が急ブレーキをかけた際に、フレキシタンク内の米油が前方に移動してフレキシタ

ンク上面に大きな力がかかったことが原因である可能性が指摘されている。

そのため、同種の事故防止を目的として、フレキシタンク内の動揺の確認と振動加速

度を測定するために、以下の試験輸送を行った。

① 試験輸送の概要

コンテナ内部が見える試験用スケルトンコンテナにて、水を充填したフレキシタン

クを積載(写真 10)し、振動計を 6 箇所(図 1)に設置し、振動を測定した。

振動測定は、通常時の扱いとなる集荷及び貨物駅での荷役作業と、高い負荷をかけ

た状態(例.トラック積載時の急制動)にて行った。

また、固縛方法は、養生なし(図 1)、ラッシングベルト 2 本(コンテナ荷崩れ防止

金具使用)(図 2、写真 11)、ラッシングベルト 11 本(フレキシタンク 7 本、コンテナ

荷崩れ防止金具使用 4 本)(図 3、写真 12)による 3 種類とした。

以上、試験輸送概要のパターンをまとめると表 4 のとおりとなる。

【写真 10】試験輸送のコンテナ(後部積載) 【図 1】振動計設置箇所及びラッシング養生なし

【写真 11】ラッシングベルト 2 本による固縛 【図 2】ラッシングベルト 2 本による固縛

(積載状態) コンテナ荷崩れ防止金具使用

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【写真 12】ラッシングベルト 11 本による固縛 【図 3】ラッシングベルト 11 本による固縛

(積載状態) タンク 7 本、荷崩れ防止金具 4 本

【表 4】試験輸送のパターン

ラッシングベルト

(日付は実施日)

負荷測定内容

固縛なし

(2 月 7 日)

2 本使用

(2 月 7 日)

11 本使用

(2 月 15 日)

集荷時 - パターン 1 パターン 2

荷役作業時 パターン 3 - パターン 4

トラック急制動(10km 急ブレーキ) パターン 5 パターン 6 パターン 7

トラック急制動(20km でブレーキ強め) - パターン 8 パターン 9

リフト急制動(10km で急ブレーキ) パターン 10 パターン 11 パターン 12

リフト急旋回 パターン 13 パターン 14 パターン 15

強めにホームに置いた場合 - パターン 16 パターン 17

※1.表中「-」欄は、計測未実施。

※2.各パターンの結果については、次項の分析結果表を参照。

②試験輸送の結果及び分析

各作業時における加速度の最大値を記載し、結果を分析した。

なお、測定条件は、以下のとおりである。

・設定条件:0.0312 秒ごとにサンプリングし、20 秒間での最大値を記録した数値

・X 軸:列車進行方向に対して、左右の力

・Y 軸:列車進行方向に対して、前後の力

・Z 軸:上下の力(+が上方向、▲が下方向)

※重力の 1G を常に認識する為、静止状態では Z 軸に対して▲1G が計測記録される。

ⅰ.通常取扱い時の測定結果

ア.集荷時

【表 5 集荷時(通常)における加速度の測定結果】

作業時刻 設置箇所 X軸 Y軸 Z軸 合力 作業時刻 設置箇所 X軸 Y軸 Z軸 合力

① ▲ 2.6 ▲ 1.7 ▲ 5.5 6.3 15:32 ① 1.0 0.6 ▲ 3.8 4.0② 2.0 ▲ 0.8 4.6 5.1 15:41 ② 0.4 ▲ 0.6 ▲ 5.0 5.1③ 2.6 ▲ 1.0 ▲ 6.2 6.8 15:36 ③ 0.0 ▲ 1.4 ▲ 3.6 3.9

11:59 ④ 1.0 1.6 ▲ 9.6 ▲ 9.8 15:24 ④ 1.2 ▲ 0.8 ▲ 2.8 3.2⑤ ▲ 0.2 ▲ 0.4 ▲ 2.0 2.0 15:25 ⑤ 0.0 0.8 ▲ 2.6 2.7⑥ 0.0 0.4 ▲ 2.4 2.4 15:27 ⑥ ▲ 0.6 0.2 ▲ 2.0 2.1

パターン1:ラッシングベルト2本(2/7) パターン2:ラッシングベルト11本(2/15)

11:58

11:49

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イ.フォークリフトによる荷役作業時

【表 6 通常荷役時における加速度の測定結果】

ウ.通常取扱い時の測定結果(まとめ)

集荷時においては、合力の最大値が、パターン 1 における振動計④の▲9.8 と

なったが、ラッシングベルト 11 本による固縛(パターン 2)を行うことで加速度

の最大値が全体的に低い値となった(表 5 参照)。

水沢駅でのフォークリフトによる荷役作業時は、合力の最大値が、パターン 4

における振動計②の 4.9 となった。通常の荷役作業時においては、ラッシングベ

ルトによる固縛により合力の値に大きなが差が認められない結果が得られた(表

6 参照)。これは、荷役作業時に大きな動揺が発生していないことが、要因として

考えられる。

集荷時、荷役作業時とも、下向きの力が大きく働いていることがわかるが、ラ

ッシングベルト 11 本による固縛方法では、合力の値が最大 5.1G 以下となってい

て、輸送には問題がないものと考えられる。

ⅱ.高い負荷をかけた状態での測定結果

通常の取扱いでの発生は稀であるが、トラック積載時の急ブレーキ等、起こりう

る事柄を想定し、以下の事象にて、振動を測定した。

ア.トラック積載時の急制動(時速 10kmで急ブレーキ)

【表 7 トラック積載時 急ブレーキ(時速 10km)をかけた際の加速度】

イ.トラック積載時の急制動(時速 20kmで強めのブレーキ)

【表 8 トラック積載時 強めのブレーキ(時速 20km)をかけた際の加速度】

作業時刻 設置箇所 X軸 Y軸 Z軸 合力 作業時刻 設置箇所 X軸 Y軸 Z軸 合力

14:27 ① 0.1 0.1 ▲ 1.4 ▲ 1.4 16:48 ① ▲ 0.5 0.1 ▲ 1.4 1.514:26 ② ▲ 0.4 1.4 ▲ 3.4 3.7 ② 3.6 ▲ 1.8 2.8 4.914:25 ③ ▲ 0.8 0.0 ▲ 3.2 3.3 ③ 1.6 0.8 ▲ 2.6 3.2

④ 0.0 0.6 ▲ 1.6 1.7 ④ 0.6 ▲ 0.6 ▲ 1.8 2.014:26 ⑤ 0.0 ▲ 0.2 ▲ 1.4 1.4 16:49 ⑤ ▲ 0.2 0.2 ▲ 1.4 1.414:27 ⑥ 0.0 0.0 ▲ 1.8 ▲ 1.8 16:47 ⑥ 0.6 0.8 ▲ 2.0 2.2

パターン3:固縛なし(2/7) パターン4:ラッシングベルト11本(2/15)

16:47

作業時刻

設置箇所

X軸 Y軸 Z軸 合力作業時刻

設置箇所

X軸 Y軸 Z軸 合力作業時刻

設置箇所

X軸 Y軸 Z軸 合力

14:16 ① 12.0 ▲ 1.1 8.4 14.7 14:51 ① 5.6 6.7 ▲ 12.3 15.1 16:58 ① 0.8 0.7 ▲ 3.3 3.514:14 ② ▲ 5.0 3.0 ▲ 24.4 25.1 ② 2.6 ▲ 3.4 ▲ 11.6 12.4 ② ▲ 5.0 4.2 ▲ 10.4 12.314:18 ③ 5.4 12.6 ▲ 10.6 17.3 ③ 8.0 6.2 ▲ 9.6 14.0 ③ 3.4 8.8 ▲ 8.8 12.5

④ 17.0 ▲ 24.0 20.4 35.8 ④ 23.8 ▲ 8.8 25.4 35.9 ④ ▲ 19.4 ▲ 22.6 21.8 36.9⑤ ▲ 1.2 ▲ 1.2 0.2 1.7 ⑤ 0.0 0.0 ▲ 1.2 1.2 16:58 ⑤ ▲ 1.6 0.4 ▲ 0.2 1.7

14:18 ⑥ 1.2 0.6 ▲ 2.0 2.4 14:50 ⑥ 0.0 1.0 ▲ 1.8 2.1 16:59 ⑥ 1.0 ▲ 0.8 1.2 1.8

パターン5:固縛なし(2/7) パターン6:ラッシングベルト2本(2/7) パターン7:ラッシングベルト11本(2/15)

14:5016:59

14:14 14:51

作業時刻

設置箇所

X軸 Y軸 Z軸 合力作業時刻

設置箇所

X軸 Y軸 Z軸 合力

① ▲ 1.1 ▲ 1.2 ▲ 4.9 5.2 ① 2.3 ▲ 2.7 ▲ 0.6 3.6② ▲ 1.8 1.6 ▲ 7.2 7.6 ② ▲ 1.2 0.6 ▲ 4.6 4.8③ ▲ 1.2 ▲ 1.6 2.8 3.4 ③ ▲ 0.6 ▲ 1.0 1.2 1.7④ 3.0 1.6 ▲ 8.2 8.9 ④ 1.2 4.6 17.8 18.4⑤ 0.0 0.0 ▲ 1.0 1.0 ⑤ ▲ 1.0 0.0 ▲ 1.2 1.6⑥ 0.0 0.0 ▲ 1.0 1.0 ⑥ ▲ 0.2 0.0 ▲ 1.0 1.0

パターン8:ラッシングベルト2本(2/7) パターン9:ラッシングベルト11本(2/15)

14:52

17:00

16:59

Page 13: フレキシタンクを活用した12フィート汎用コンテナ …...17 【優秀賞】 フレキシタンクを活用した12フィート汎用コンテナによる液体輸送の実現

29

ウ.フォークリフト急制動(時速 10kmで急ブレーキ)

【表 9 フォークリフト積載時 急ブレーキ(時速 10km)をかけた際の加速度】

エ.フォークリフト急旋回

【表 10 フォークリフト積載時 急旋回をかけた際の加速度】

オ.駅ホームに強めに置いた場合(貨車に強めに積載を想定)

【表 11 フォークリフト積載時 駅ホームに強めに置いた際の加速度】

カ.高い負荷をかけた状態での測定結果(まとめ)

ラッシングベルトによる固縛なし、2 本で固縛、11 本で固縛した 3 パターンを

比較すると、11 本で固縛したものが、加速度の最大値が全体的に最も低い値を示

す結果が得られた。

A.コンテナ内壁への圧力(トラック積載時の急制動)について

一番大きな値を示したトラック積載時の急制動(時速 10km で急ブレーキ)

(表 7 参照)をみると、パターン 7(ラッシングベルト 11 本で固縛)において、

設置箇所①の値の X 軸の最大値がパターン 5(固縛なし)、6(ラッシングベル

ト 2 本で固縛)と比較して 0.8 という低い値を示した。これは、固縛によりフ

レキシタンクの動揺が押さえられたことを現すと考えられる。

実際の立会い時においても、パターン 5、6 においては、コンパネ(厚いベニ

ヤ板)とコンテナとの接触により大きな音が発生したが、パターン 7 において

は大きな音は発生せず、映像を確認してもコンテナ後部に接触が発生していな

いことが確認できる。

これらのことから、ラッシングベルト 11 本の固縛を行うことにより、コンテ

作業時刻

設置箇所

X軸 Y軸 Z軸 合力作業時刻

設置箇所

X軸 Y軸 Z軸 合力作業時刻

設置箇所

X軸 Y軸 Z軸 合力

① ▲ 3.5 ▲ 1.9 6.3 7.5 ① 0.4 0.8 ▲ 2.5 2.7 ① ▲ 1.0 2.4 2.1 3.3② ▲ 1.6 1.0 ▲ 5.4 5.7 ② ▲ 0.8 ▲ 3.2 ▲ 5.2 6.2 ② ▲ 1.6 ▲ 2.4 2.2 3.6③ 1.2 1.2 ▲ 2.4 2.9 ③ ▲ 3.6 ▲ 0.8 ▲ 3.4 5.0 ③ 1.2 0.8 ▲ 1.8 2.3④ ▲ 2.2 ▲ 0.2 10.8 11.0 ④ 1.2 0.6 ▲ 2.0 2.4 ④ ▲ 1.0 3.2 2.0 3.9

14:30 ⑤ 0.0 1.4 ▲ 1.8 2.3 ⑤ 0.4 0.2 ▲ 1.8 1.9 ⑤ 0.2 1.0 ▲ 0.8 1.314:28 ⑥ ▲ 0.2 0.2 ▲ 2.0 2.0 ⑥ ▲ 1.0 0.6 ▲ 2.2 2.5 ⑥ 0.4 0.2 ▲ 5.0 5.0

14:29

14:40 16:51

パターン10:固縛なし(2/7) パターン11:ラッシングベルト2本(2/7) パターン12:ラッシングベルト11本(2/15)

作業時刻

設置箇所

X軸 Y軸 Z軸 合力作業時刻

設置箇所

X軸 Y軸 Z軸 合力作業時刻

設置箇所

X軸 Y軸 Z軸 合力

① 0.1 ▲ 0.7 ▲ 2.2 2.3 14:42 ① ▲ 2.1 4.4 ▲ 7.4 8.9 16:54 ① ▲ 0.6 ▲ 0.4 ▲ 1.5 1.7② ▲ 2.4 4.2 6.4 8.0 14:41 ② ▲ 1.2 2.6 ▲ 4.4 5.3 16:53 ② ▲ 0.2 0.0 ▲ 1.8 1.8③ 1.2 0.4 ▲ 2.0 2.4 ③ 2.2 1.0 ▲ 4.2 4.8 ③ 1.6 0.4 ▲ 1.6 2.3④ ▲ 0.8 ▲ 0.2 ▲ 2.4 2.5 ④ 5.2 4.0 6.8 9.4 ④ ▲ 0.2 ▲ 0.4 ▲ 1.6 1.7⑤ ▲ 0.2 0.6 ▲ 1.6 1.7 ⑤ 0.6 ▲ 3.4 ▲ 2.4 4.2 ⑤ 0.0 0.0 ▲ 1.4 1.4⑥ ▲ 0.4 ▲ 1.2 ▲ 0.2 1.3 ⑥ ▲ 1.4 ▲ 1.8 ▲ 2.8 3.6 ⑥ ▲ 0.4 0.2 ▲ 1.2 1.3

パターン10:固縛なし(2/7) パターン11:ラッシングベルト2本(2/7) パターン12:ラッシングベルト11本(2/15)

14:43

14:42

16:5414:44

14:41

作業時刻

設置箇所

X軸 Y軸 Z軸 合力作業時刻

設置箇所

X軸 Y軸 Z軸 合力

① ▲ 3.6 ▲ 4.4 ▲ 5.1 7.6 ① ▲ 2.8 ▲ 4.2 4.2 6.7② ▲ 5.4 ▲ 5.0 ▲ 5.2 9.0 ② ▲ 1.8 2.2 4.4 5.2③ 9.4 5.4 ▲ 12.6 16.6 ③ ▲ 3.0 0.8 5.0 5.9④ 3.6 ▲ 5.8 4.6 8.2 ④ 3.6 1.4 ▲ 6.2 7.3⑤ ▲ 1.2 ▲ 1.6 2.0 2.8 ⑤ 1.2 2.2 ▲ 3.4 4.2⑥ 0.2 ▲ 4.2 ▲ 17.2 17.7 ⑥ 1.0 ▲ 1.0 ▲ 9.6 9.7

パターン16:ラッシングベルト2本(2/7) パターン17:ラッシングベルト11本(2/15)

14:46 16:55

Page 14: フレキシタンクを活用した12フィート汎用コンテナ …...17 【優秀賞】 フレキシタンクを活用した12フィート汎用コンテナによる液体輸送の実現

30

ナの内壁面への接触が抑えられ、強い負荷が内壁面に発生していないことが推

定される。

設置箇所④の値が大きくなることについては、ラッシングベルトによる固縛

方法により差異は見られなかったが、急制動をかけることにより 1 度前方に移

動した水が後方に戻ってきた際に発生することが推定される。この場合、進行

方向左右に関するバランス、内壁面への接触、フレキシタンク袋の強度が問題

となるが、いずれも問題は認められなかった。

B.コンテナ内壁への圧力(フォークリフトによる急旋回)について

コンテナ内壁への圧力について、フォークリフトで急旋回した際(パターン

12)の値をみると、低い値を示していることから、問題は生じないものと推定

される。なお、ラッシングベルト 11 本による固縛を行うことにより、フレキ

シタンクの動揺はすぐに収まっており、共振による動揺の継続の可能性は低く

なるものと考えられる。

C.フレキシタンクの強度について

ラッシングベルト 11 本による固縛を行った試験の終了後、コンテナを開扉し

てフレキシタンクとラッシングベルトの接触面を確認したが、擦れ等は確認さ

れず、フレキシタンクの強度も問題がないものと推定される。

ⅲ.固縛方法の決定

今回の試験輸送では、フレキシタンクの損傷による内容物の漏洩事故を防ぐこと

が課題であり、具体的には、フレキシタンクの動揺(コンテナ内壁への圧力と偏積)

の抑制とフレキシタンクの強度の確認を行った。

試験輸送の結果をみると、通常扱い時においては、養生等を行わなくても問題が

発生しないものと推定されるが、集荷・配達・荷役作業等において急ブレーキ等を

かける事態の発生は想定される。そのため、4 回目の試験輸送で「固縛なし」と「ラ

ッシングベルト 2 本による固縛」により、動揺の確認と振動加速度を測定した。そ

の結果、トラックの急ブレーキテスト(パターン 5・6・8)では、想定以上にフレ

キシタンクに動揺が生じ、ラッシングベルト 2 本で固縛した程度では、フレキシタ

ンクの動揺は抑えられないという結論に至った。

結果としては、ラッシングベルト 11 本による固縛を実施することで、フレキシタ

ンクの動揺が抑えられ、コンテナの内壁面への接触やフォークリフトによる急旋回

時の偏りは抑えられるとともに、動揺の継続も認められず、フレキシタンクにも損

傷が認められなかった。そのため、ラッシングベルト 11 本による固縛により、JR

コンテナ輸送の検証を進めることとした。

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31

(5)試験輸送6回目…新養生方法の検証(平成 29 年 3 月)

前節で得た結果を基に、ラッシングベルト 11 本による固縛を行い、釜石鉱山様で集荷

し、水沢駅から関西まで鉄道で輸送し、着駅到着後、開封確認を行い、盛岡貨物ターミ

ナル駅まで鉄道で返送する試験輸送を行った。

振動加速度の結果を見ると、配達時に 11.5G(合力)を計測したものの、列車輸送時、

フォークリフト荷役時とも 10G 以下の値となった。ラッシングベルト 11 本による固縛

により、フレキシタンクの動揺を抑えることができ、かつ、フレキシタンク自体に傷等

も発生していないことが確認できた。

(6)試験輸送のまとめ

フレキシタンクを活用した JR コンテナによる液体輸送の課題としては、いかにして

フレキシタンクの動揺を抑え、フレキシタンクの損傷による漏洩事故を発生させないか

ということである。これまでの 6 回に亘る試験輸送の結果、ラッシングベルト 11 本に

よる固縛によりフレキシタンクの動揺は抑えられ、最大振動加速度 36.9G を記録した場

合を含め、フレキシタンクに損傷等は認められなかった。

また、最大の振動加速度は、過去の試験輸送からも、集荷、配達時の発生が推定され

るが、集荷時には水沢駅持込時にコンテナを開扉して、フレキシタンクコンテナの状態

を確認するため、列車輸送時における破袋等による水の漏洩リスクは低く、フレキシタ

ンクを活用した JR コンテナによる輸送は可能と判断した。

(7)動揺防止に向けた養生方法の開発について

話は前後するが、ラッシングベルト 11 本による固縛方法をなぜ考案したかここで述べ

ることとする。

JR コンテナの荷崩れ防止金具を使用した「ラッシングベルト 2 本による固縛」では、

動揺を抑えられなかったことが起点となったが、まず、液体の輸送特性、液体輸送にお

ける輸送方法を分析、考察し、ラッシングベルト 11 本による固縛という結論に至った経

緯を述べたい。

① 液体及びフレキシタンクの特性

今回輸送する原料水は「液体」=「流体」であり「フレキシタンク」に充填しても、

その状態は固体ではないため、輸送中の様々な力で「流体に近いためにフレキシタン

クが大きな変形を伴う」状態にあった。輸送中に「フレキシタンク」が変形を起こし

た場合、ある一部分に過大な荷重がかかることにより、容器破損の危険性が増すもの

と考えられた。

そのため、安全に輸送するためには「より固体に近い状態にすること」が必要条件

であると仮説をたて、検証を進めることとした。

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32

② 液体の輸送方法について

「液体」は「流体」であるため、トラック輸送中の発進・停止・カーブ走行時など

で様々な力が働き、容器内で揺れが生じている。

タンクローリーやタンクコンテナの場合、容器自体は固体であり、かつ「液体」の

揺れの力を抑えるために、容器内に間仕切りを設け、小さい部屋を設けることにより、

「液体」の揺れを小さくしている。この場合においても「液体」は動揺するため、停

車時に制動距離が延びたり、カーブ走行時には外側に遠心力が働くなど、トラック走

行時には安全確保に細心の配慮を行っている。

③ フレキシタンクの動揺防止対策(ラッシングベルト 11本による養生)

液体を充填したフレキシタンクを「如何にしてより固体に近い状態にできるか」と

いう観点により検討を進めることとした。

JR 汎用コンテナ床面の荷崩れ防止金具(片側 4 箇所)を使用した養生(ラッシング

ベルト 4 本使用)では、ラッシングベルト 2 本を使用した試験輸送から、あまり効果

が出ないことが想定された。

フレキシタンクの動揺を抑制するためには「上部からの押さえ」が必須となるが、

JR コンテナでは既存の治具による養生では「上部からの押さえ」が弱いため、専用の

養生方法を開発しない限り、輸送は不可能であると考えた。

そこで、フレキシタンク自体を「より固体に近くするため」にラッシングベルトで

「縦・横方向双方にぐるぐる巻き」にする方法(図 4 参照)を考えた。そして、固縛

して流動性を抑制し「ある程度固体に近い状態にしたフレキシタンク」を、JR コンテ

ナ床面の荷崩れ防止金具を使用してラッシングベルトを横や斜めにかけ、床面に押さ

えつける形で固縛(図 5 参照)し、より固体に近づける方策を講じた。

【図 4 フレキシタンク自体を事前に固縛】 【図 5 固縛したフレキシタンクをコンテナに固縛】

ラッシングベルト 7(4+3)本使用 図 4 のものにラッシングベルト 4 本追加

以上により、試験輸送を実施したところ、先にみたようにフレキシタンクの動揺を

抑えることに成功した。

なお、試験輸送後、フレキシタンク自体を固縛するラッシングベルト 7 本について

は、フレキシタンクの下部にあたる部分を「予め編み込んでネット状」にしたもの(写

真 13、14 参照)を作成し、荷役時間の短縮を図っている。

Page 17: フレキシタンクを活用した12フィート汎用コンテナ …...17 【優秀賞】 フレキシタンクを活用した12フィート汎用コンテナによる液体輸送の実現

33

【写真 13 改良型ラッシングベルト】 【写真 14 改良型ラッシングベルトによる固縛状況】

8 月 21 日撮影予定

5章.おわりに

原料水輸送は、今後、従来のマキシコンとフレキシタンクによる JR コンテナ輸送を併

用して行う予定である。 コスト的には、フレキシタンク輸送がやや有利であるが、納入

先の原料水保管容量や在庫数量調整を考慮した場合、マキシコンの使用(輸送)にも多く

の利点があり、2 つの輸送方式を併用することにした。なお、フレキシタンクに使用する

固縛資材については、折り畳んで容積が小さくなることから、空マキシコンの返送時に積

み合わせて返送することで費用を圧縮している。 今後の輸送量の見込みは、従来、関西

地区向けに月間で製品重量 120 トン程度であったが、現在ではフレキシタンク輸送が月間

30~40 個に増え、全体数量でも大幅に増えている。フレキシタンクは製品重量で 4,900 リ

ットル積載となり、マキシコンよりも積載数量が 20 パーセント程度増えることから、「積

載率の向上」が可能となった。また、充填設備や納入設備の改修を行ったこともあり、「荷

役作業効率の改善」も図られたことから、全体としてはコスト低減が実現でき、原料水の

効率的な輸送システムが構築できたと考えている。

実際の輸送の際にはコンテナに車票使用(製品名・製品番号・化学記号を表示)コンテナ

内の製品安全データシート(成分表)を携行しております。

フレキシタンクによる輸送については、危険物輸送で問題点も指摘されているが、輸送

に関係する事業者が共にフレキシタンク輸送時の事故防止策を構築し、安全輸送に努めて

いかなければならないと考えており、様々な場面において更に改良していくことで、更に

進化した輸送方式が確立されるものと考えている。今回、フレキシタンクを活用した JR

コンテナによる液体輸送に取り組み、このような形で「新たな輸送方法」を確立すること

ができた。鉄道輸送はコスト的に有利で、環境への配慮面からも利点があるため、今後も

鉄道貨物輸送を活用した製品出荷の可能性を追求していきたいと考えております。

なお、このフレキシタンク固縛方法について特許申請中であります。

【参考文献】

「事業用自動車事故調査報告書〔重要調査対象事故〕トラクタ・コンテナセミトレーラの

漏洩事故」事業用自動車事故調査委員会、2015 年

予め縫製 12 箇所(3×4 列)

※写真は前の 1 列が未撮影

ラッシングベルトに充填口、

取出口がかからないよう縫製