イネウンカ類の殺虫剤ピメトロジンに対する感受性検定法 · ber of ny m ph)...

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開発機関: 農研機構九州沖縄農業研究センター、シンジェンタジャパン株式会社、予算区分【委託プロジェクト研究】 殺虫効果は低いが産卵抑制効果を示す殺虫剤ピメトロジンの感受性を、微量局所施用法と次世代幼虫数から評価する新検定法 イネウンカ類の殺虫剤ピメトロジンに対する感受性検定法 ・水稲の害虫防除に、殺虫効果の高い薬剤が長年使用されてきたが、イネウンカ類はそれらの薬剤に抵抗性を発達させている。 このため、代替薬剤として、殺虫効果は低いが産卵抑制効果があるピメトロジンの需要がアジア地域で拡大している。 ・ピメトロジンに対する抵抗性の発達が懸念されているが、既存の検定法では本剤の感受性を正確に評価できなかった。 研究成果の内容 研究開発の背景 期待される効果 ・薬剤抵抗性の発達が懸念される殺虫剤ピメトロジンのモニタリングが可能。 ・抵抗性発達の状況を迅速に把握することで、イネウンカ類の大発生を防ぐ防除技術の開発に貢献。 微量局所施用法と幼虫数の計測によるピメトロジンの感受性検定法 1.微量局所施用法 マイクロアプリケーターで虫体に塗布する薬剤の量を制御。いつでも、何処でも、 誰でも、同じ基準で薬剤の効果を測定する技術。 2.次世代幼虫数抑制効果を計測 稲の茎から出てきたふ化幼虫を計測することで、抑制効果を容易に評価3.ED 50 値を算出 薬量-幼虫数の回帰式で薬量(ED 50 値)を算出1.マイクロアプリケーターによ る局所施用法 0 2 4 6 8 10 12 14 -2.5 -2 -1.5 -1 -0.5 Root (number of nymph) Log10 (Dose (μg/g)) 8.49 -1.29 3.薬量-幼虫数の直線回帰 ○異なる検定実験データの比較が可能 ○長距離移動するイネウンカ類の情報を活用 イネウンカ類の移動: ベトナム北部中国南部九州 各国の防除所等がピメトロジン感受性 をモニタリングし、情報を共有 日本での防除計画に反映 ○増殖を抑制する他の殺虫剤の感受性検定に応用可能 感受性データの比較が可能に ・他の薬剤に応用 ・作業や解析が簡便 ○既存の検定法(葉身浸漬法)と比較して、試験期間が短 く、特別な実験設備が不要 ○基礎的な統計解析手法のみでED 50 値を算出可能 アジア地域での普及が期待 2.イネ芽だしに産卵させ、 ふ化した幼虫を計測 導入をオススメする対象 西日本各地や東南アジア、東アジア各国 の農業研究機関・病害虫防除所等 8

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開発機関: 農研機構九州沖縄農業研究センター、シンジェンタジャパン株式会社、予算区分【委託プロジェクト研究】

殺虫効果は低いが産卵抑制効果を示す殺虫剤ピメトロジンの感受性を、微量局所施用法と次世代幼虫数から評価する新検定法

イネウンカ類の殺虫剤ピメトロジンに対する感受性検定法

・水稲の害虫防除に、殺虫効果の高い薬剤が長年使用されてきたが、イネウンカ類はそれらの薬剤に抵抗性を発達させている。このため、代替薬剤として、殺虫効果は低いが産卵抑制効果があるピメトロジンの需要がアジア地域で拡大している。・ピメトロジンに対する抵抗性の発達が懸念されているが、既存の検定法では本剤の感受性を正確に評価できなかった。

研究成果の内容

研究開発の背景

期待される効果

・薬剤抵抗性の発達が懸念される殺虫剤ピメトロジンのモニタリングが可能。・抵抗性発達の状況を迅速に把握することで、イネウンカ類の大発生を防ぐ防除技術の開発に貢献。

メリット

微量局所施用法と幼虫数の計測によるピメトロジンの感受性検定法

1.微量局所施用法

マイクロアプリケーターで虫体に塗布する薬剤の量を制御。いつでも、何処でも、誰でも、同じ基準で薬剤の効果を測定する技術。

2.次世代幼虫数抑制効果を計測稲の茎から出てきたふ化幼虫を計測することで、抑制効果を容易に評価。

3.ED50値を算出薬量-幼虫数の回帰式で薬量(ED50値)を算出。

1.マイクロアプリケーターによる局所施用法

0

2

4

6

8

10

12

14

-2.5 -2 -1.5 -1 -0.5

Roo

t(nu

mbe

rofn

ymph

)

Log10 (Dose (μg/g))

8.49

-1.29

3.薬量-幼虫数の直線回帰

○異なる検定実験データの比較が可能○長距離移動するイネウンカ類の情報を活用イネウンカ類の移動:

ベトナム北部⇒中国南部⇒九州

各国の防除所等がピメトロジン感受性をモニタリングし、情報を共有

日本での防除計画に反映

○増殖を抑制する他の殺虫剤の感受性検定に応用可能

感受性データの比較が可能に

・他の薬剤に応用

・作業や解析が簡便

○既存の検定法(葉身浸漬法)と比較して、試験期間が短く、特別な実験設備が不要

○基礎的な統計解析手法のみでED50値を算出可能

→ アジア地域での普及が期待

2.イネ芽だしに産卵させ、ふ化した幼虫を計測

導入をオススメする対象西日本各地や東南アジア、東アジア各国の農業研究機関・病害虫防除所等

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開発機関: 農研機構西日本農業研究センター、予算区分【委託プロジェクト研究】

日本めん用小麦と同様の栽培性で、「ニシノカオリ」より4割多収で、「ミナミノカオリ」以上の製パン性をもつ新品種

製パン性に優れ、多収のパン用小麦新品種「せときらら」

導入をオススメする対象温暖地・暖地の小麦生産地域

・日本めん用小麦に加えて、国産のパン用小麦に対する実需者や消費者からの要望がある。・現在西日本で栽培されているパン用小麦の「ニシノカオリ」や「ミナミノカオリ」は、従来の日本めん用小麦に比べて栽培性が不十分で、製パン性は輸入小麦に及ばない。

研究成果の内容

研究開発の背景

期待される効果

・「せときらら」の導入より反収が向上し、生産者の収益向上に寄与。・国産小麦を使用した商品開発や6次産業化に寄与、学校給食等への利用で地産地消や食育にも貢献。

メリット

日本めん用小麦と同様の栽培性で、多収で、製パン性に優れる新品種

めん用小麦と同等の栽培性、多収、優れた容積と外観品質穂発芽性や赤かび病抵抗性は日本めん用小麦と同等。成熟期は、「ニシノカオリ」と同程度の早生。収量は「ニシノカオリ」より4割、「ミナミノカオリ」より2割多い。容積重はやや高く、外観品質は優れる。

ニシノカオリより多収で、ミナミノカオリより高品質

標準的な強力粉と同等以上の品質(製パン業者による評価)

試験材料 せときらら ミナミノカオリ 1CW タンパク質含量(%) 11.5 12.2 12.3吸水率(%) 66.0 65.0 66.1

パン比容積 5.3 5.0 5.5

パン評価点 77.9 72.7 80.0

「せときらら」の製パン試験結果

高い製パン性製パン性の評価は「ミナミノカオリ」より高く、輸入小麦(1CW)に近い。

品種名成熟期(月.日)

子実重(kg/a)

ニシノカオリ対比(%)

容積重(g)

外観品質

せときらら 6.07 55.9 139 848 5.8

ニシノカオリ 6.07 40.4 100 831 5.3

ミナミノカオリ 6.09 46.1 114 830 4.7

+50% +54%

山口県奨励品種決定現地調査成績の2010年・2011年度平均

収量(kg/a)

兵庫県パン協同組合の10社において、各社が使用している標準的なパン用粉を対照にした製パンでの「せときらら」の評価結果

山口県の小麦栽培面積は「せときらら」導入前の2012年度857(559)haから、2015年度には1,203(926)haに拡大。( )はパン用小麦の面積

タンパク

質含量(%)

作業性

膨らみ

表皮質

内相キメ

内相色

柔らかさ

食感

味総合

2013年産 12.2 0.0 0.2 0.3 -0.2 0.0   0.0  0.3 0.4 0.4

2014年産 12.6 0.5 0.6 0.1 0.4 0.0   1.1**  0.7* 0.3 0.5

標準小麦粉の評価を0として、せときららを-3~3で評価。*:5%水準で有意、**:1%水準で有意

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開発機関:長野県農業試験場、予算区分【競争的資金】

β-グルカン含量と精麦白度が高く、硝子率が低く、精麦品質が優れる六条もち性大麦

六条もち性大麦新品種「東山皮糯109号(ホワイトファイバー)」

研究成果の内容

研究開発の背景

期待される効果

・もち性大麦は機能性成分のβ-グルカン含量が高く、麦ご飯の食感が優れるなど、実需者からの要望が高い。・もち性大麦の大半が海外から輸入されており、準高冷地で栽培可能な高品質もち性大麦の開発が求められている。

実需者(消費者)ニーズに合った大麦を供給

・健康機能性が高い(β-グルカン含量が高い)・精麦白度が高く、硝子率が低い

品質の高位安定により所得が安定化

・硝子率の低下と精麦白度の向上により品質ランク区分が高評価となり、生産者の収益向上につながる。

「東山皮糯109号(ホワイトファイバー)」の55%搗精粒

「東山皮糯109号(ホワイトファイバー)」(左)と市販のもち大麦(右)の麦ご飯(大麦10%混合)

健康機能性および精麦品質に優れる六条もち性大麦品種

左「東山皮糯109号(ホワイトファイバー)」

右「シュンライ」

βグルカン含有率の品種間の差 硝子率の品種間の差

導入をオススメする対象積雪が少ない標高800m以下の地域の大麦生産者

品種名出穂期

(月日)

成熟期

(月日)

桿長

(cm)

穂長

(cm)

穂数

(本/m2)

子実重

(kg/a)

千粒重

(g)

倒伏の

多少

精麦

白度

東山皮糯109号

(ホワイトファイバー)5/2 6/8 90 5.0 501 72.8 36.3 極微 48.0

シュンライ 5/2 6/8 86 4.5 512 72.1 38.3 無 45.9

生育・収量・品質の比較

・β-グルカン含有量が高く健康機能性および精麦品質に優れるため、実需者と生産者双方にメリットがあり、生産拡大と生産者の収益性向上が期待される。

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開発機関: 栃木県農業試験場、予算区分【競争的資金】

原麦リポキシゲナーゼ(LOX-1)が欠失し、鮮度劣化しにくいビールを製造できる大麦新品種

鮮度劣化しにくいビール製造が可能な大麦新品種「ニューサチホゴールデン」

導入をオススメする対象サチホゴールデンが既に普及している温暖平坦地

・サチホゴールデンは高品質・多収性のため、全国のビール大麦作付の6割強を占める。・実需者からビール鮮度が劣化しにくい香味安定性の改良を求められている。

研究成果の内容

研究開発の背景

期待される効果

・国産原料を使用した商品開発や、これに伴う国産ビール大麦の需要拡大や作付け増に寄与することが期待される。

メリット

LOX-1を欠失したサチホゴールデン準同質遺伝子系統の新品種

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○全LOX活性が低いため、ビール製造中の酸化分解が起きにくく、ビール劣化臭の原因物質が低減する。鮮度⻑持ちの美味しいビールが製造できる。○栽培特性がサチホゴールデンに類似するため、品種転換が進みやすく、サチホゴールデンと同等の⾼い収益性が期待される。

鮮度劣化に影響を及ぼすLOX-1活性が無い。他の特性はサチホゴールデンとほぼ同等でオオムギ縞萎縮病Ⅰ〜Ⅲ型に強く、早⽣多収で⻨芽品質(エキス等)が優れる。

ニューサチホゴールデン

成熟期

穂数

(本/㎡)

1穂粒数

千粒重(g)

整粒重

(kg/a)

エキス(%)

サチホコ ールテ ンスカイゴールデン

27

25

45

4164

56

85

81 740

660

5/30

6/01

ニューサチホゴールデンサチホゴールデンスカイゴールデン

鮮度が長持ちする美味しいビールに

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開発機関:滋賀県農業技術振興センター、予算区分【県単独予算】

複数のシートを重ねた底面給水床への自動給水により、省力的でかん水ムラの生じにくいキャベツセル成型苗の育苗技術

容易に設置可能で省力的なキャベツセル成型苗の底面給水育苗技術

導入をオススメする対象キャベツを育苗するJA、個別経営体、集落営農組織

・秋冬野菜の夏季高温条件下でのセル成型苗育苗では、従来の手かん水は労力を要する上、生育ムラが生じやすい。・生育ムラの原因となるかん水ムラが少なく、省力的な給水が可能で、かつ設置が容易な育苗技術の開発が求められていた。

研究成果の内容

研究開発の背景

期待される効果

・水田野菜に取り組む初心者でも、機械移植可能な苗質のキャベツセル成型苗を育苗できる。・安定した苗生産が可能となることで経営が安定し、水田野菜の規模拡大に寄与する。

底面からセルトレイへの自動給水によるセル成形苗の育苗技術

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水稲育苗箱等を足場にした育苗架台の上に防草シート、吸水マット、防根シートを重ね、その上面に点滴チューブを設置する。キャベツを播種したセルトレイを直置きしてタイマーで自動給水することで、機械移植が可能なセル成型苗を安定して生産できる。

メリット

セルトレイの設置 底面給水床で育苗中の様子 キャベツセル成型苗

・育苗のかん水にかかる時間が減少し、労働時間が減少。育苗関連費は資材費等・労働費と合わせて手かん水と同等。

余剰の水分は防草シートを通って自然排水

点滴チューブ セルトレイ

防根シート

吸水マット

防草シート

水の動き

キャベツセル成型苗の苗質と収穫時品質

葉数 草丈 胚軸長収穫時球重

(枚) (mm) (mm) (g)

底面給水 2.8 93 25 2,124

手かん水 3.3 88 24 2,187

育苗の省力化が可能で、かん水ムラが少ない

・従来の手かん水と同等の苗質を得ることができる。また、かん水ムラが少なく育苗の失敗が回避できる。

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開発機関: 農研機構北海道農業研究センター、株式会社渡辺採種場、予算区分【委託プロジェクト研究、競争的資金】

多収で果実品質が良く、大規模栽培にも適した、栽培の省力化が図られる短節間性カボチャ品種

栽培の省力化に向けた短節間性カボチャ品種

導入をオススメする対象全国のカボチャ生産者、規模拡大を目指す地域

・カボチャは栽培管理に比較的手間のかからない作物であるが、大規模栽培では整枝、誘引、収穫作業の労力負担が大きい。

・生産者の高齢化、労力不足、大規模化などの面から一層の栽培の省力化、労働生産性の向上が強く望まれている。

研究成果の内容

研究開発の背景

期待される効果

・作付面積の規模拡大、経営改善に寄与。・消費者ニーズ、国産カボチャの周年供給、加工・業務用の需要に貢献。

メリット

果実品質が高く、栽培の省力・軽作業化を実現する品種

• 生育初期は節間が詰まる短節間性を示し、側枝数が少ない。摘心、整枝、誘引は不要。

• 果実が株もと近くに着くため、収穫が容易。

• 「TC2A」(商品名:ほっとけ栗たん)は、高粉質・高糖度で、ホクホクと良食感・良食味の品種。外観は尻が凸となる特徴がある。

• 「ジェジェJ」は、高粉質・高糖度で、貯蔵後も高品質を維持する端境期向け品種。

• 「くりひかり」は、粉質から粘質との中間で、ペーストや茹でなどの加工・業務用に適した品種。皮の色が黒緑で光沢がある。

短節間性品種「TC2A」、普通品種「えびす」を用いて、定植後の作業(摘心、整枝、誘引、収穫の合計)を100として比較。

定植後の作業時間が約2割削減

・普通品種の半分程度の畝幅で栽培が可能。・親づる1本仕立てにより着果時期が揃うため、品質が安定し、一斉収穫が可能。

・定植後は、手をかけない放任栽培が可能。

*情報:2009年、 2010年の(公財)道央農業振興公社調査データより短節間性カボチャ品種(株式会社渡辺採種場との共同育成)

「ジェジェJ」 「くりひかり」

短節間性品種

短節間性品種と普通品種の植物体

「TC2A」

普通品種

単収の向上、省力栽培、一斉収穫が可能

*栽培上の留意点葉が枯れ上がりしやすいので、果実の日焼けに注意する。

株間 畝幅

普通品種 60cm300cm

(56株/a)

短節間品種 60cm150cm

(111株/a)

栽培条件

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開発機関:農研機構北海道農業研究センター、予算区分【運営費交付金】

線虫の専門的な知識が無くても、畑に発生している有害線虫の多種を同時に判定できる技術

ネグサレセンチュウ及びネコブセンチュウの多種同時診断技術

・同じ作物を頻繁に栽培すると有害線虫が増殖して大きな被害をもたらす。

・非寄主作物などを活用した総合的な線虫防除を図るには、発生した線虫の種類を明確にする必要がある。しかし、線虫種の判定は高度な知識や技術を要するため、専門的な知識が十分でなくても容易に種判定が可能な技術が求められている。

研究成果の内容

研究開発の背景

期待される効果

メリット

専門的な知識が無くてもマニュアルに従った操作で有害線虫の種を判定する技術

・防除法の選択肢を農薬以外にも大きく拡げることができるようになる。

・防除後の線虫密度回復を防止する対策等が可能となり、線虫防除における農薬使用量の抑制を総合的に図ることが可能になる。

各種線虫のPCR産物の電気泳動のバンドパターンに基づいて種を判定

多種を同時に判定できる土壌から分離した線虫群集から1回のPCRと電気泳動を行うだけで、10種についてバンドの位置によって種を判定できる。

シンプルな診断工程診断工程に顕微鏡観察は不要であり、マニュアルに沿って操作するだけで、およそ9時間で線虫種の判定ができる。

診断工程の概要

多種同時診断技術マニュアルhttp://www.naro.affrc.go.jp/harc/contents/files/harc20160614nematode.pdf

種がわかると

導入をオススメする対象有害線虫の診断を実施する地域の農業試験場、病害虫防除所等

・線虫の診断が誰でも容易に実施できるため、被害に対する早期かつ確実な対策の実施に寄与できる。・線虫を防除する手法の選択肢が拡がり、総合的な対策が可能となる。

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開発機関:鹿児島県農業開発総合センター 予算区分【県単独予算】

従来設置法と生育・収量は同等で、燃油使用量の2割削減と、設置作業時間の4割削減を実現する株元加温の簡易設置法

促成ピーマンにおける株元加温による設置作業の省力化技術

・促成ピーマン栽培は、燃料費が高額のため、低コストの暖房技術の開発が求められている。

・促成ナス等で開発された株元加温技術は、低コストの暖房技術であるが、設置に多くの労力を要しており、簡易な設置法の開発が求められている。

研究成果の内容

研究開発の背景

期待される効果

メリット

簡易設置法の概要 ・株元加温を導入し、暖房温度を2℃下げることで

燃油使用量 約2割削減燃料費 約40万円/10a削減収量 同等

設置労力が少なく、燃料費を低減できるピーマンの枝元加温の簡易設置法

1.枝ダクト、持ち上げ用ひも、かん水チューブを設置

2.マルチを被覆3.穴をあけて植える4.マルチは束ねる

5.加温時にバインダーひもを持ち上げてマルチを三角テント状に張る

1 2 3 4 5

従来の設置法はトンネルフィルムをホッチキスで貼り合わせるのが大変

茎にテープナーで固定することでトンネル支柱不要

収量は同等で、燃料費を削減

従来の株元加温で課題であった設置労力を大幅削減

・10a当たりの設置時間は約4割削減従来の設置法 62時間簡易設置法 37時間

導入をオススメする対象ピーマン生産者および株元加温を用いる施設果菜類生産者

・商品収量はそのままに燃料費を削減することで、所得向上が期待できる。

・低コストで容易に設置できるため、燃油高騰時など緊急時にも迅速に対策ができる。

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○収穫作業

・収穫機を利用した作業体系 2.0hr/10a

○搬出作業・フロントローダ等利用 1.2hr/10a

暖地のタマネギ青切り出荷体系に適合し、既開発の調製機(根葉切り機)と組み合わせて利用する収穫機と収納容器

暖地タマネギの収穫・運搬作業を省力化する高能率収穫機と収納容器

・暖地のタマネギ産地では、小型のプラスチックコンテナを使った人力による運搬、搬出作業が行われており、生産者の大きな負担となっているため、省力化技術の開発が求められている。・収穫後の根葉切り作業に対応した調製機が既に開発されており、これを利用した効率的な作業体系の確立が求められている。

研究成果の内容

研究開発の背景

期待される効果

メリット

1.タマネギを根葉付きのまま掘取、容器への収納、畝上への荷降ろしが可能なトラクタ装着式の収穫機。

2.収穫したタマネギの収納、運搬、排出に対応した大型の収納容器。

荷降ろしの状況

底面からの排出

1畝まとめて収穫するため、作業速度は0.13~0.26m/sと能率が高い。

軽量(2.3kg)で取扱が容易で、吊り上げ運搬と底面からの迅速な排出が可能。

取り扱いが容易な大型収納容器

タマネギ用の収穫機

収穫・搬出の作業時間が短縮

収穫~調製に至る労力が大幅に削減

○調製機を組み合わせた新たな作業体系により、労力が大幅に削減

平成28年度から販売。適応トラクタは24~32馬力。

平成28年度から販売。10a当たり30~40袋必要。

・現在の作業体系 51人・時/10a・新たな作業体系 26人・時/10a

・タマネギの収穫・運搬作業が大幅に省力化され、作付面積の拡大や経営改善に有効。

・暖地のタマネギ生産量が拡大し、国産タマネギによる周年供給体制の維持に貢献。

導入をオススメする対象タマネギを青切りで出荷する経営体、野菜の導入を目指す経営体

開発機関:香川県農業試験場、(株)ニシザワ、(株)和田オートマチックス、香川県中讃農業改良普及センター、予算区分【予算区分:攻めの農林水産業の実現に向けた革新的技術緊急展開事業】

タマネギを根葉付きで掘り取る収穫機と、効率的な作業を可能にする収納容器

既開発の調製機と組み合わせると労力が大幅に削減

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0

5

10

15

20

技術導入前 技術導入後

使用成分回数

1/4以下に

開発機関: 高知県農業技術センター、農研機構中央農業総合研究センター、農研機構近畿中国四国農業研究センター、近畿大学、(株)アグリ総研、 静岡県、岡山県、予算区分【競争的資金、県単独予算】

天敵と天敵温存植物を組み合わせることで施設栽培キュウリの難防除害虫類を効率的に防除できる技術

施設キュウリにおけるミナミキイロアザミウマ、タバココナジラミの総合的管理技術

導入をオススメする対象特定農薬としてタバコカスミカメを確保可能な施設栽培キュウリの生産者

・施設栽培キュウリでは、ミナミキイロアザミウマ、タバココナジラミの発生が問題となっているが、薬剤抵抗性の発達により防除が困難となっている。

研究成果の内容

研究開発の背景

期待される効果

・施設栽培キュウリの収量の向上・安定化による、生産者の所得増加に寄与する。・化学農薬に依存しない総合的害虫防除技術の推進に貢献できる。

メリット

効率的に害虫類を防除

農研機構のホームページにおいて、「タバコカスミカメ利用技術マニュアル」として公開(2015年12月)

0

25

50

10/1 11/1 12/1 1/1 2/1 3/1 4/1 5/1 6/1 7/1

アザミウマ虫数/葉

対照区(化学的防除法を主体とした体系)

総合体系区

・天敵類の温存植物としてスカエボラ、バーべナ「タピアン」(各50株/10a)を植栽後、栽培初期に天敵のタバコカスミカメ(3千頭/10a×2回)、スワルスキーカブリダニ(5万頭/10a)を放飼する。

・ハウス開口部に防虫ネット(0.4mm白色または0.6mm赤

色)を展張

化学農薬の延べ使用成分回数(アザミウマ類対象、実証農家の事例)

17回

4回

ミナミキイロアザミウマ タバココナジラミ

・物理的防除法

タバコカスミカメ

天敵、天敵温存植物及び防虫ネットによる施設キュウリの総合的防除技術

・生物的防除法(天敵と天敵温存植物)

スワルスキーカブリダニ

スカエボラ バーベナ「タピアン」

・化学的防除法

天敵類に影響の小さい選択性剤(他の害虫・病害対策も含めて)

対象とする害虫

総合的に防除

ハウス開口部に防虫ネットを展張

化学農薬の使用回数が大幅に減少

薬剤抵抗性が発達した害虫類を防除

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Page 11: イネウンカ類の殺虫剤ピメトロジンに対する感受性検定法 · ber of ny m ph) Log10 (Dose (μg/g)) 8.49-1.29 3.薬量-幼虫数の直線回帰 異なる検定実験データの比較が可能

開発機関: 群馬県農業技術センター、旧国立研究開発法人農業環境技術研究所、予算区分【競争的資金】

圃場の診断に基づいて発病のしやすさを評価し、適切な対策を選ぶことでキャベツ病害の発生を軽減

キャベツバーティシリウム萎凋病の診断・対策支援マニュアル

導入をオススメする対象全国のキャベツ生産者・生産団体

・夏秋キャベツ産地において、キャベツバーティシリウム萎凋病が問題となっており、生産者が自ら実施できる防除技術の開発が求められている。

研究成果の内容

研究開発の背景

期待される効果

・生産者自らによる診断・評価が可能であり、適切な防除によって持続的生産に貢献。・過剰な防除を回避でき、労力やコストが削減できることで、経営安定に寄与。

メリット

圃場の診断、発病の確認及び適切な防除技術の決定を支援するマニュアル

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収穫時に圃場全体の発病を確認。発病のしやすさを3段階で評価し、次年度の対策が必要かどうか判断

圃場の評価に応じた防除技術の導入を決定し、対策を実施

・生産者自らが、現場で診断・評価を行い、適切な防除が可能に

後作でのエンバク野生種導入

1.診断

2.評価

3.対策

マニュアル

レベル 圃場の外観収穫時の結球部切り口の褐変

レベル1 異常なし 褐変なし

レベル2 黄化・萎凋した株がある褐変した株あり(5%未満)

レベル3 黄化・萎凋した株がある褐変した株あり(5%以上)

レベルエンバク野生種

作型の変更

抵抗性品種

殺線虫剤

土壌くん蒸剤

レベル1 ○現在の品種

レベル2 ○ ○ 中~強 ○※

レベル3 ○ ○ 強 ○※

※可能であれば、実施することをお勧めします。

マニュアルの支援に対して

平成27年5%以上の被害

平成27年5%未満の被害

推奨する方法で栽培した場合

4事例(6%) 60事例(94%)

推奨する方法で栽培しなかった場合

6事例(17%) 30事例(83%)

・マニュアルの支援による対策技術の導入は、被害を軽減するのに有効

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ピーマン青枯病抵抗性台木の接ぎ木を、茎部上位(約12cm)で行うことにより、発病抑制の効果を高める栽培技術

ピーマン青枯病抵抗性台木への高接ぎ木による発病抑制技術

・夏秋作型のピーマン栽培では、青枯病が発生し、問題となっている。・青枯病の防除技術として、主に抵抗性台木が利用されているが、その防除効果は十分ではないため、青枯病の防除技術の開発が求められている。

研究成果の内容

研究開発の背景

メリット

・接ぎ木を、茎の上位部(約12cm)で行うことで、慣行の位置(約3cm)に比べて青枯病の抑制効果が向上し、自根及び慣行接ぎ木と比べ、青枯病が発病しにくい。

・夏秋作型の高接ぎ木栽培は、慣行接ぎ木と比べ、生育収量及び品質が同等。

・青枯病に対する抑制効果は、台木品種に「台助」、「台パワー」、「バギー」などの中~強抵抗性品種を利用した場合に得ることができる。

【8月下旬時点の発病株率】

慣行接ぎ木 :30%高接ぎ木 :15%

山口県の夏秋作型では10a当たり約1,200株を定植しており、収量の増加を30%、高接ぎ木苗の苗代が慣行の

1.2倍と仮定すると、13万円程度の増益になる(2011年試算)。

高接ぎ木栽培による青枯病発病抑制効果

夏秋作型ピーマンの接ぎ木を茎の上位部で行う、青枯病の発病抑制技術

低い発病率

慣行接ぎ木

高接ぎ木

自根

約12cm約3cm

導入をオススメする対象夏秋型ピーマン栽培で青枯病が問題となっている地域

期待される効果

・土壌くん蒸剤などの化学農薬の使用量の減少により、安心、安全な生産物を供給することができる。・農産物の安定生産、農家所得の向上、国内外の産地に対する競争力の強化に大きく貢献する。

開発機関:山口県農林総合技術センター、農研機構中央農研センター、ベルグアース(株) 予算区分【競争的資金】

青枯病の発病率を半減

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開発機関: 農研機構西日本農業研究センター、予算区分【競争的資金】

段差のある圃場において、散水設備の既存配管を使うことで低コストで導入可能な自動点滴灌水システム

・散水設備を使用している段差のある圃場では、区画ごとにバルブの開閉で順次灌水を行う必要があり、この労力の軽減が求められている。・従来の散水管による灌水では畝間のぬかるみが生じる場合がある。

研究成果の内容

研究開発の背景

期待される効果

・灌水作業の自動化により省力化が図られる。特に、夏期の繁忙期の労力分散が図られ、管理作業の徹底による品質・収量の向上が期待できる。

メリット

段差のある圃場の散水設備を活かした、自動点滴かんがいシステム

1.散水管を点滴チューブに置き換え、既存の配管はそのまま利用する。

2.最上段は、拍動タンクから灌水する。二段目以降は1つ上の段の水位調整タンクから灌水する。

3.水位調節タンクは灌水する段の圃場面から1.5m程度の高さにする。

4.各段の電磁弁の開閉は、拍動灌水装置の制御装置で一体的に行う。

低コストで自動の点滴灌水を導入可能

拍動灌水システム導入の効果が期待できる段差のある圃場の例

・4段、18a規模での導入費用は約60万円で、ランニングコストは不要。

・18a規模では、灌水作業の労働時間を年間約50時間削減できる。

・畝間のぬかるみが解消され、収穫・管理作業が容易になる。

散水設備を持つ段差のある圃場への拍動灌水システムの導入方法

:電磁弁最上段は拍動タンクの水位に応じて開閉。2段目以下は、拍動灌水装置の制御装置に接続し、同じタイミングで開閉する。

点滴チューブ

水位調整タンクは、ボールタップにより入水量を調整

高さ:1.5m

高さ:1.5m

高さ:1.5m

高さ:1.5m

標準的な拍動灌水装置

やぐらの上に拍動タンクを設置

導入をオススメする対象圃場面が水平な棚田跡地など段差のある圃場で、散水設備を持つ野菜農家

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