南アフリカ自動車産業制度 設計支援調査 - METI · 2020. 4. 23. · 2...

61
����� ������� ����� �� ������������������ ������������ ������ ����� ��29�2�1� ���� �������

Transcript of 南アフリカ自動車産業制度 設計支援調査 - METI · 2020. 4. 23. · 2...

  • 経済産業省 貿易経済協力局 技術協力課 御中

    平成28年度アジア産業基盤強化等事業

    南アフリカ自動車産業制度設計支援調査

    <要約編>

    平成29年2月1日株式会社 現代文化研究所

  • 目 次

    はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1

    全体まとめ

    (1) 現状認識 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2

    (2) ポスト2020年に向けた提言のフレーム・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7

    (3) ポスト2020年に向けた具体的提言内容・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8

    (4) 政策のプライオリティ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9

    (5) 導入効果定量分析(CGEモデル分析)によるシナリオ検証・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10

    調査結果

    Ⅰ. 南アフリカの自動車産業の現況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 14

    Ⅱ. 南アフリカの自動車産業政策の法的整合性

    (1) APDPの制度設計内容と課題・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16

    (2) 前回調査での提言内容・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 18

    (3) WTOルールとの整合性の検証・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 21

  • 目 次(続き)

    Ⅲ. 南アフリカの自動車産業政策の導入効果分析

    (1) 政策シミュレーション分析の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 24

    (2) 南アフリカ自動車産業の経済波及効果分析・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 27

    (3) 現行のAPDPスキームの政策評価シミュレーション分析・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 29

    (4) PI、VAA政策の追加・代替支援策に関する政策シミュレーション分析・・・・・・・・ 33

    (5) AIS政策の追加・代替支援策に関する政策シミュレーション分析・・・・・・・・・・・・ 36

    (6) 人材育成と国産品の代替促進策に関する政策シミュレーション分析・・・・・・・・ 38

    (7) ポストAPDPに向けた自動車政策の政策効果シミュレーション分析・・・・・・・・・・ 40

    Ⅳ. 提言

    (1) 提言の基本的考え方・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 45

    (2) ポスト2020年に向けた提言のフレームワーク・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 46

    (3) ポストAPDPに向けた提言内容・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 47

  • 1

    はじめに■南アフリカは2012年以降、経済の牽引役である鉱物資源輸出の低迷を契機に、実質GDP

    成長率1~2%台の低成長が続き、失業率が20%半ばで高止まりするなど厳しい状況が

    続いている。

    ■この状況を打開するには、外部環境に左右される資源依存型の経済構造から、より内発的で

    雇用創出効果の大きい製造業に比重をおいた経済構造への転換が必要。

    なかでも同国GDPの7.2%を占め、極めて裾野の広い自動車産業は南アフリカの経済・社会の

    発展にとってキー・ファクターとなる。

    ■こうした問題意識から、「平成27年度南アフリカ自動車産業制度設計支援調査」(以下、前回

    調査という)では、2020年以降の同国の自動車産業調査を検討する上での課題を整理し、

    今後の政策の方向性についていくつかの提言を行った。

    ■「平成28年度南アフリカ自動車産業制度設計支援調査」(以下、今回調査という)では、前回

    調査の提言で示した支援制度を、①WTOルールとの法的整合性がとれているかという法的

    視点、②支援制度を実施した場合にどのような効果や影響があるかという定量分析の視点、

    から検証し、あらためて2020年以降の南アフリカの自動車政策についてのより具体的な提言

    を示すこととした。

  • 全体まとめー南アフリカ自動車産業の現状認識ー

    (1)現状認識

    ■これまでの南アフリカの自動車政策(MIDP及びAPDP)は自動車生産と輸出の拡大をもたら

    し、自動車産業は南アフリカ経済の発展に寄与してきた。

    ■しかし、同国自動車産業の現状をみた場合、以下の重要な課題を抱えている。

    ①国内市場が伸び悩み、輸出比率が55%と高く、国産車の国内市場向け量的拡大を制約(p3参照)

    ②グローバルな自動車産業における南アフリカの競争的ポジションが相対的に低下し、将来のグローバル市場の掌握力が脅かされている(p4,5)

    ③現行の自動車政策(APDP)は組立生産量の拡大には寄与しているが、現調化の実行度と連動した政策でなっていないため、雇用創出効果が他産業に比べ小さい(p6)

  • 全体まとめー南アフリカ自動車生産・販売の構造的推移ー

    ■ここ数年、南アフリカの自動車生産台数、輸出台数は順調に拡大。しかし、国内販売は2014、

    2015年と2年連続で前年割れを記録、60万台規模で低迷。

    ■しかも、リーマン・ショック後は輸入車の増大により、国産車販売は20万台後半の水準で低迷、

    ピーク時(2006年)の41万台に及ばない。

    ■ 南アフリカの自動車生産・販売・輸出・輸入・国産車販売の推移

    出典)NAAMSA

    万台

    0.0

    10.0

    20.0

    30.0

    40.0

    50.0

    60.0

    70.0

    80.0

    1980

    1985

    1990

    1991

    1992

    1993

    1994

    1995

    1996

    1997

    1998

    1999

    2000

    2001

    2002

    2003

    2004

    2005

    2006

    2007

    2008

    2009

    2010

    2011

    2012

    2013

    2014

    2015

    出典)NAAMSA

    国内販売

    国内生産

    国産車販売 輸入

    輸出

  • 4

    全体まとめー競合自動車新興国との比較(1/2)ー

    ■グローバルな自動車産業を概観すると、タイ、メキシコなど新興競合国が2000年代後半から

    自動車生産・販売を拡大してプレゼンスを高めている。

    ■一方、南アフリカの自動車生産・販売の伸びは緩慢で、競合国に差をつけられている。

    ■ 南アフリカと競合国の自動車生産台数の推移 ■ 南アフリカと競合国の自動車販売台数の推移

    万台

    出典)OICA、JAMA等

    万台

    出典)OICA、JAMA等

    0.0

    50.0

    100.0

    150.0

    200.0

    250.0

    300.0

    350.0

    400.0

    450.0

    199

    419

    95

    199

    619

    97

    199

    819

    99

    200

    020

    01

    200

    220

    03

    200

    420

    05

    200

    620

    07

    200

    820

    09

    201

    0

    201

    120

    12

    201

    320

    14

    201

    5

    インド

    メキシコ

    ブラジル

    タイ

    南アフリカ

    トルコ

    0.0

    50.0

    100.0

    150.0

    200.0

    250.0

    300.0

    350.0

    400.0

    1994

    1995

    1996

    1997

    1998

    1999

    2000

    2001

    2002

    2003

    2004

    2005

    2006

    2007

    2008

    2009

    2010

    2011

    2012

    2013

    2014

    2015

    インド

    ブラジル

    メキシコ

    トルコ

    タイ

    南アフリカ

  • 5

    全体まとめー競合自動車新興国との比較(2/2)ー

    ■自動車の輸出額でも、輸出主導型のメキシコ、タイに大きく差をつけられている。

    ■自動車部品の輸出額でも同様。競合国が自動車産業集積の厚みを増して、自動車部品貿易

    収支が黒字を記録しているのに対し、南アフリカは入超で、裾野産業の脆弱性がみてとれる。

    ■ 南アフリカと競合国の自動車輸出・輸入額比較(2015年)

    0

    10,000

    20,000

    30,000

    40,000

    50,000

    60,000

    輸出 輸入 輸出 輸入 輸出 輸入 輸出 輸入 輸出 輸入

    南アフリカ タイ インド メキシコ ブラジル

    100万USドル

    出典)Global Trade Atlas

    ■ 南アフリカと競合国の自動車部品輸出・輸入額比較(2015年)

    0

    5,000

    10,000

    15,000

    20,000

    25,000

    30,000

    35,000

    40,000

    45,000

    輸出 輸入 輸出 輸入 輸出 輸入 輸出 輸入 輸出 輸入

    南アフリカ タイ インド メキシコ ブラジル

    100万USドル

    出典)Global Trade Atlas

  • 6

    全体まとめー南アフリカの自動車産業の経済波及効果ー

    ■南アフリカ産業の経済波及効果の比較

    -20.0

    -10.0

    0.0

    10.0

    20.0

    30.0

    千人 雇用創出

    -20.0

    -15.0

    -10.0

    -5.0

    0.0

    5.0

    10.0

    10 億ランド 差分(=便益-費用)

    -5.0

    0.0

    5.0

    10.0

    15.0

    20.0

    10 億ランド 等価変分

    -0.10%

    -0.05%

    0.00%

    0.05%

    0.10%

    0.15%

    0.20%

    0.25%

    基準値から変化率 実質GDP

    -0.10%

    0.00%

    0.10%

    0.20%

    0.30%

    0.40%

    0.50%

    0.60%

    0.70%

    基準値からの変化率 総生産量

    ■現時点での南アフリカ自動車産業の経済波及効果をみると、実質GDPや総生産量は大きい

    が、雇用創出効果が小さい。

    ⇒南アフリカの自動車産業が輸出主導で発達し、かつ国内の部品産業が未発達であるため、自動車先進国のような国内に密接な産業リンケージを持っていない証左。本来は裾野の広い総合産業で雇用創出効果が期待できる自動車産業のポテンシャルを十分に開花させるには、現行の自動車産業政策の改善が必要。

  • 7

    全体まとめー2015年度と2016年度(今回)との提言項目の関連ー

    (2)ポスト2020年に向けた提言のフレーム

    ■今年度は、南アフリカの自動車産業の喫緊の課題である「国産車の量的拡大」、「雇用の拡大」、

    「産業競争力の強化」に絞ってより具体的な政策提言を行う。

    (A)国産車の生産拡大と国内販売の拡大を連動させる政策をとる (A)国産車の国内販売につながる量的規模の確保○ ① 国産車の国内販売につながる量的規模の確保 ① CBU輸入関税クレジットの見直し② 時機をとらえた販売刺激策の導入 ② 特定モデル/セグメントの保護育成

    (B)ターゲットを絞って国産車種の保護育成策を導入する (B)ローカルコンテント率の向上を通じた裾野産業の育成○ ① 国産メーカーの育成方針を明示 ① 戦略的な部品関税率の設定○ ② 育成モデルを戦略的にターゲットし、きめ細かな政策支援を提供 ② 現調化を促す生産インセンティブスキームの構築

    ③ AISスキームの拡充(C)中長期視点で裾野産業育成に取り組み、育成を主導する外資誘致を進める○ ① 官民一体でローカルコンテント率向上に向けた持続的取組みを実施 (C)スキルや技術の移転促進による競争力の向上○ ② 育成を主導する外資誘致のための環境整備の推進 ① 外資系企業の進出を促すビジネス・投資環境の整備

    ② 現地部品メーカーへの技術移転・人材育成イニシアティブの充実(D)輸出市場の確保・開拓に向け、地域経済圏形成・地域協定締結を戦略的に進める ③ 次世代技術の開発支援① 輸出市場の戦略的拡大

    ○ ② 先進国モデルの高度化③ サブサハラ地域経済圏の形成と地域モデルの開発

    (E)自動車産業の発展を支える人材育成に政労使が協調して取り組む環境をつくる① 労使協調路線の構築

    ○ ② 人材育成の仕組みづくり

    【昨年度提言(2015年度3月)】 【今年度提言(2016年度2月)】

  • 8

    全体まとめー次期自動車政策への具体的提言項目ー

    (3)ポストAPDPに向けた具体的提言内容

    ① CBU輸入関税クレジットの見直し(p47)・ 国産メーカー以外の企業への輸入関税クレジット転売禁止・ 中長期的に輸入関税クレジットを段階的に削減⇒ クレジット削減分を国産メーカーへの補助金に充当

    ② 特定モデル/セグメントの育成支援(p48)・ 「販売実績・競争力のあるモデル/セグメント」を育成対象として各種生産インセンティブを提供

    ・ 南アフリカでの有力候補:Bセグメント、PU、SUV

    ① 戦略的な部品関税率の設定(p49)・ 部品の輸入関税クレジットを段階的に見直し・ 現地化の状況をふまえ、CKD、部品の関税を細かく設定

    ② 現調化を促す生産インセンティブ・スキームの構築(p50)・ ローカルコンテント率に連動したインセンティブの提供・ 部品企業へのインセンティブ提供をより厚くする

    ③ AISスキームの拡充(p51)・ 部品企業への追加インセンティブの提供・ 新規進出企業への支援スキームの充実

    ① 外資系企業の進出を促すビジネス・投資環境整備(p52)・ SEZなどを軸にしたビジネスインフラの整備充実

    ② 現地部品企業への技術移転・人材育成(p53)・ 日本ASEANの人材育成スキーム、日本メキシコEPAなどの技術協力スキームを参考活用

    ③ 次世代技術の開発支援(p54)・ EV開発支援など次世代向けプログラムの拡充・ 次世代技術をにらんだ素材産業の育成支援

    (A)国産車の販売拡大につながる  量的規模の確保

    (B)ローカルコンテント率の向上を通じた   裾野産業の育成

    (C)スキルや技術の移転促進による   競争力の向上

  • 9

    全体まとめー短期で取り組む項目と中長期で取り組む項目ー

    ・CBU輸入関税相殺クレジットの転売の廃止・特定セグメント向けインセンティブの提供

    実質的な現地化を支援する自動車産業政策を通じた、雇用拡大と産業競争力の強化

    ポストAPDPの目標

    短期

    中期

    長期

    目標達成のために必要な政策

    ・部品輸入相殺クレジットの段階的見直し・部品の輸入関税率の見直し

    ・CBU輸入関税相殺クレジットの段階的廃止

    OEM支援 サプライヤー支援 投資環境改善

    ・先進国との二国間産業協力スキーム(RTA等)を通じた人材育成や技術移転

    ・既存の業界団体 (AIDC,ASCCI等)を通じたより充実した職業訓練・次世代技術・産業の開発支援(EV化、素材開発)

    ・RTAを通じた世界の主要市場へのアクセス

    ・外資誘致に向けたビジネス環境整備ー SEZへの投資インセンティブ強化ー 水や電力などの安定供給強化

    ・OEMや部品サプライヤーに対し、ローカルコンテント率に応じたインセンティブを提供

    ・サプライヤー向けAISの拡充・現調化向上に向けた部品の層別精査、CKDの設定要件の明確化

    (4)政策のプライオリティ

  • 10

    全体まとめー関税収入を補助金として分配するのが効果的(1/2)ー

    (5)導入効果定量分析(CGEモデル分析)によるシナリオ検証

    ■現行のAPDPは総生産量を0.19%増加、産業全体で1万人の雇用を創出した点で評価できる。しかし一方で、費用・便益がマイナス76.6億ランドで、政府の財政措置に見合った効果が得られていない。

    ■現行のAPDPの費用対便益を改善し、より大きな雇用を生むためには、APDPでの輸入インセンティブのような関税収入の放棄ではなく、インセンティブ政策に必要な財源を完成車やCKDなどの輸入関税から確保し、それを補助金として現地組立メーカーや部品サプライヤーに配分する政策(シナリオC)が効果的である。

    ■輸入関税率の引き上げに限界があるなら(シナリオD)、人材育成策や国産品への代替促進策(シナリオE)を別途行い、部品サプライヤーの生産性向上や国産品への代替によって、輸入関税率の引き上げ効果(シナリオD)と同等か、それ以上の効果(シナリオE)が得られる。

  • 11

    全体まとめー関税収入を補助金として分配するのが効果的(2/2)ー

    〇分析結果

    注1:シナリオA:現地組立メーカーが輸入する完成車の輸入関税率を15%、輸入業者が輸入する完成車を25%、CKDを0%、それ以外の部品を12%に設定注2:シナリオB:完成車の輸入関税率を15%、CKDを0%、それ以外の部品を12%に設定注3:シナリオC:完成車の輸入関税率を25%、CKDを5%、それ以外の部品を15%に設定注4:シナリオD:完成車の輸入関税率を30%、CKDを10%、それ以外の部品を20%に設定注5:シナリオE: 関税率と補助金比率はⅢーCと同じ、これに部品サプライヤーの生産性が現地組立メーカー並みに

    向上すること、輸入車から国産車、輸入部品から国内部品への代替えが促進されるという設定を追加※完成車の輸入関税率15%は南アフリカ・EU貿易協定の関税率を考慮、25%はMFN関税率、30%は現行の実質5%に25%を加えたシナリオ

  • 12

    全体まとめーローカルコンテント率に応じた比例配分が雇用効果大ー

    ■完成車やCKD等の輸入関税から得られる関税収入の増加分を、現地組立メーカーと部品サプライヤーに対して補助金という形で配分する場合、それを生産量に準じて均等に配分をするか、ローカルコンテント率に比例する形で配分するかについて、シミュレーション分析をしてみると、ローカルコンテント率に比例する形で配分した方が、便益(等価変分)と産業全体の雇用創出効果が大きくなる。

    ○分析結果

    26.7

    30.1

    5.4

    6.5

    3.0

    4.0

    5.0

    6.0

    7.0

    25.0

    26.0

    27.0

    28.0

    29.0

    30.0

    31.0

    均等配分 ローカルコンテント率で比例配分

    1000人億ランド 補助金配分シナリオX

    便益(等価変分)(左目盛)

    全産業の

    雇用創出

    (右目盛)

    73.8

    78.2

    6.1

    7.6

    3.0

    4.0

    5.0

    6.0

    7.0

    8.0

    71.0

    72.0

    73.0

    74.0

    75.0

    76.0

    77.0

    78.0

    79.0

    均等配分 ローカルコンテント率で比例配分

    1000人億ランド補助金配分シナリオY

    便益(等価変分)(左目盛)

    全産業の

    雇用創出

    (右目盛)

    注)補助金配分シナリオX:完成車輸入関税率25%、CKD5%、その他15%の関税の関税収入分を補助金として配分補助金配分シナリオY:完成車輸入関税率30%、CKD10%、その他20%の関税関税収入分を補助金として配分

  • 13

    全体まとめー高ローカルコンテント率メーカーへの厚めの分配が経済効果を増大ー

    ■ローカルコンテント率が40%未満の現地組立メーカー、ローカルコンテント率が40%以上の現地組立メーカーがそれぞれ各シナリオによって生産台数、国産化率、雇用者数がどう変化したかを、現地情報で得られた実績値をベースにシミュレーション分析をしてみると、各シナリオともローカルコンテント率40%以上の現地組立メーカーの変化値が大きくなっている。この全体的数値での変化から、ローカルコンテント率の高い現地組立メーカーにインセンティブをより厚く支給した方が大きな経済的効果が得られるといえる。

    ■ポストAPDPに向けた自動車政策による2つのタイプの現地組立メーカーの推移

    6.2 (1000 人) 6.7 (1000 人)

    7.4 (1000 人)

    24.8 (1000人)

    28.7(1000 人)

    31.0 (1000 人)

    20.0%

    25.0%

    30.0%

    35.0%

    40.0%

    45.0%

    50.0%

    55.0%

    60.0%

    0.0 100.0 200.0 300.0 400.0 500.0 600.0

    生産台数 (1000台)

    国産化率

    国産化率40%以上の現地組立メーカーのグループ

    国産化率40%未満の現地組立メーカーのグループ

    注)シナリオⅠ:完成車輸入関税率25%、CKD5%、その他15%、ローカルコンテント率に比例して補助金配分シナリオⅡ:関税率と補助金比率はⅢーCと同じ、これに部品サプライヤーの生産性が現地組立メーカー並みに向上すること、輸入車から国産車、

    輸入部品から国内部品への代替えが促進さえるという設定を追加注)円は雇用者数を示す

  • 調査結果

  • 14

    Ⅰ.南アフリカの自動車産業の現況■2015年の南アフリカの自動車生産台数は前年比8.7%増の61.0万台、輸出台数はランド安の

    追い風もあり、同26.0%増の34.9万台と大きく伸びた。

    ■しかし、国内販売台数は同4.1%減の61.8万台、輸入台数も同5.4%減の33.6万台と、

    ともに2年連続で前年割れ。景気の低迷、ランド安による輸入車価格の上昇や金利引上げ

    による消費者マインドの冷え込みなどが影響し、 国内市場の伸び悩みが続き、国産車販売は

    20万台後半で低迷。

    ■ 図表1南アフリカの自動車生産・販売・輸出・輸入・国産車販売の推移

    万台

    出典)NAAMSA

    0.0

    10.0

    20.0

    30.0

    40.0

    50.0

    60.0

    70.0

    80.0

    生産

    国内販売

    輸出

    輸入

    国産車販売

  • 15

    Ⅰ.南アフリカの自動車産業の現況■一方、グローバルな自動車産業における南アフリカのポジションをみると、タイ、メキシコなど

    新興競合国が自動車産業集積の厚みを増して南アフリカに差をつけている。グローバル

    な競争環境が激化する中で、同国自動車産業の立場は楽観視できる状況ではない。

    ⇒今後の競争環境の変化に対応した、コスト競争力と技術力を向上させた自動車産業に発展

    させられるかどうかが鍵になっている。

    ■ 図表2南アフリカと競合国の自動車生産台数の推移

    ■ 図表3南アフリカと競合国の自動車販売台数の推移

    万台

    出典)OICA、JAMA等

    万台

    出典)OICA、JAMA等

    0.0

    50.0

    100.0

    150.0

    200.0

    250.0

    300.0

    350.0

    400.0

    19941996199820002002200420062008201020122014

    南アフリカ

    タイ

    インド

    メキシコ

    ブラジル

    トルコ

    ■ 図表4南アフリカと競合国の自動車輸出・輸入額比較(2015年)

    0

    10,000

    20,000

    30,000

    40,000

    50,000

    60,000

    輸出 輸入 輸出 輸入 輸出 輸入 輸出 輸入 輸出 輸入

    南アフリカ タイ インド メキシコ ブラジル

    100万USドル

    出典)Global Trade Atlas

    ■ 図表5南アフリカと競合国の自動車部品輸出・輸入額比較(2015年)

    0

    5,000

    10,000

    15,000

    20,000

    25,000

    30,000

    35,000

    40,000

    45,000

    輸出 輸入 輸出 輸入 輸出 輸入 輸出 輸入 輸出 輸入

    南アフリカ タイ インド メキシコ ブラジル

    100万USドル

    出典)Global Trade Atlas

    0.0

    50.0

    100.0

    150.0

    200.0

    250.0

    300.0

    350.0

    400.0

    450.0

    19941996199820002002200420062008201020122014

    南アフリカ

    タイ

    インド

    メキシコ

    ブラジル

    トルコ

  • 16

    Ⅱ.南アフリカの自動車産業政策の法的整合性(1)APDPの制度設計内容と課題

    ■APDPは、1995~2012年に実施した輸出促進を主眼にしていたMIDPにかえて、国内自動車

    生産振興に重点をおいて2013年から展開。その概要は下記の通り。

    ○輸入関税

    ・市場自由化転換した1995年以降のMFN税率引き下げ方針を維持。

    完成車は25%(譲許税率50%)、部品は20%(譲許税率30%)。国内調達が困難な原材料の大半とツーリングなどの生産設備は0%。構成部品でも、調達困難品目は0%(最低税率)か5~10%の低関税率、競争力のない品目は保護目的に譲許税率(最高税率)が適用される。

    ○VAA:VolumeAssemblyAllowance(部品の無税輸入枠)

    ・生産に不可欠な基幹部品の輸入関税を免除してメーカーの生産を支援するもの。

    ・年産1万台以上を要件に、車両価額ベースに無税輸入額を決め、部品の輸入関税と相殺する。・部品輸入関税と相殺後の余剰分は完成車輸入にも充当可。また輸出車用部品輸入は「再輸出免税」が適用。

    ○PI:ProductionIncentive(生産インセンティブ)

    ・生産工程での「ローカル」の付加価値を重視し評価することで生産を支援。

    ・FOB-調達費用(部品輸入費用)-原材料」を「生産付加価値」として評価し、その付加価値額に応じて部品/完成車の輸入関税と相殺する。・さらに政府指定(SACU域内 調達 or低競争力)の原材料は「サプライヤー付加価値」と見なし、インセンティブ付与の評価に含める。余剰分は他メーカーにキャッシュで売却することも可能。

    ○AIS:AutomotiveInvestmentSystem(投資インセンティブ)

    ・事業にかかる投資額に応じてキャッシュバックして支援し、現地R&D力、雇用、サプライチェーンの強化・拡大を図る。

    ・自動車メーカーは年産5万台規模、部品メーカーは1000万ランド以上の売上などが恩典享受の要件。

  • 17

    Ⅱ. 南アフリカの自動車産業政策の法的整合性

    ■しかし、APDPが2013~20年の目標として掲げた、①2020年に自動車生産台数120万に拡大、②ローカルコンテント率の向上、③自動車貿易バランスの改善、④雇用創出、は現時点で捗々しい進展がみられない。■この要因を生み出す主な問題点として、前回調査では以下の点を指摘。

    ○輸入関税

    ・競合国と比べ、CBU関税率が低く、国内市場が十分に保護される水準にない。

    ・競合国に比べ、CBU、CKD、構成部品の税率格差が小さく、国内産業育成を意図した設定になっていない。

    ○VAA:VolumeAssemblyAllowance(部品の無税輸入枠)

    ・部品のみならず完成車も輸入関税相殺が可能で、国産メーカーの国産車販売拡大を制約。

    ・インセンティブの要件が単純に「生産量」であり、現地調達努力抜きの振興策になっている。

    ○PI:ProductionIncentive(生産インセンティブ)

    ・完成車輸入関税相殺で輸入車が流入しやすく、国産メーカーの国産車販売拡大を制約。また、インセンティブ

    余剰分を他社に売却可能であることが、この傾向を助長。・インセンティブの要件が自動車メーカーの生産工程内の「付加価値」を基準にしているため、部品メーカーレベルでのローカルコンテント率に直接的にはリンクしていない。・指定原材料分、特にVulnerable材をSVA算入がインセンティブ額を押し上げている。

    ○AIS:AutomotiveInvestmentSystem(投資インセンティブ)

    ・キャッシュ・インセンティブの分配が自動車メーカーの方に手厚く、部品メーカーには不十分。

    ・参入条件が部品メーカーにとって厳しく、新規進出が難しい。

  • 18

    Ⅱ.南アフリカの自動車産業の法的整合性

    (2)前回調査での提言内容

    ■以上の課題認識と他の自動車新興国の成功・失敗事例を踏まえて、前回調査では以下

    の提言を行った。

    ① 国産車の国内販売拡大につながる量的規模の確保

    ・ 生産インセンティブを国産車の国内販売拡大につながる形に変更

    (A)国産車の生産拡大と国内販売 ・ 特に国内生産していないメーカーに輸入クレジットの余剰分を売却

    拡大とが連動する政策をとる する措置を是正、余剰分は雇用/研究開発補助金や法人税減免に活用

    ② 時機を捉えた販売刺激策の導入

    ・ 販売拡大が期待できる国産車種をターゲットに税制上の優遇措置を導入

    ・ 低所得者層の中間層化を図るマクロ経済政策と連動させ、新規需要を掘り起こす

    ① 国産メーカーの育成方針を明示

    ・ 高関税や国内税制差別化など、国産メーカー優遇の方針を明確に示す

    ② 育成すべき車種を戦略的にターゲットし、きめ細かな政策支援を提供

    (B)国産メーカー支援に向け、 ・ 南アフリカの市場特性に適合し、今後の販売拡大が期待できる国産車種

    ターゲットを絞って国産車 を支援するため、高めの関税設定、国内税制での優遇、生産・投資インセンティブの

    車種の保護育成策を導入する 提供などを行う

    ・ ただし、輸出の比重も大きい南アフリカの自動車生産の現状も考慮し、国内向けか

    輸出向けかの投入市場先の特性も勘案して戦略車種を明確化し、各戦略車種に

    応じた支援内容を精査

    提言内容 政策内容

  • 19

    Ⅱ.南アフリカの自動車産業の法的整合性

    (続き)

    ① 官民一体で現地調達率向上に向けた持続的取組みを実施

    ・ 部品のコストペナルティを精査し、育成すべき部品や現調化を促す部品を特定し、

    細かく税率を設定

    (C)中長期視点で裾野産業育成に ・ 現調率向上を条件に、自動車メーカーや部品メーカーにも等しくインセンテイブを提供

    取り組み、育成を主導する ・ 2013年に着手したASCCIは2017年以降も粘り強く続ける

    外資の誘致を進める ② 育成を主導する外資誘致のための環境整備の推進

    ・ 新興国が自動車産業の競争力を強化するには外資の自動車メーカー、部品メーカー

    の存在が鍵。

    ・ 競合にひけをとらない誘致内容、誘致方法を精査することが必要

    ① 輸出市場の戦略的拡大

    ・ 国内生産でスケール・メリットを確保するにはFTAや経済圏作りで輸出市場を開拓する

    ことが必須(ただし、自由化は両刃の剣であり、他国との競争力を勘案した関税率設定

    などが必要)

    (D)輸出市場の確保・開拓に向け ・ 輸出振興の観点で、南アフリカの物流・加工拠点としての位置づけを高める

    地域経済圏形成・地域協定 ② 先進国モデルの高度化

    締結を戦略的に進める ・ 主要な先進輸出市場での競争激化、環境・安全規制の高まりを受け、こうした流れに

    対応した先進的な製品(エコカーなど)生産へのインセンティブの提供等の支援策を導入

    ③ サブサハラ地域経済圏の形成と地域モデルの開発

    ・ 近隣諸国の中長期的な発展を視野に入れ、地域経済圏の形成に取り組む

    ・ 南アフリカ向けモデルと連動させて、サブサハラ地域の需要に適合したアフリカ専用車の

    開発・投入を促す政策措置をとる

    提言内容 政策内容

  • 20

    Ⅱ.南アフリカの自動車産業の法的整合性

    (続き)

    ① 労使協調路線の構築

    (E)自動車産業の発展を支える ・ 政労使の高次レベルで労使関係の枠組みを改善することが必要

    人材の育成に政労使が協調 ② 人材育成の仕組みづくり

    して取り組む環境をつくる ・ BEE政策と人材育成をセットにした政策を展開することで労働力の質を向上させる

    ・ 人材育成を投資インセンティブに組み込み、自動車先進国からの技術移転を加速

    させる制度づくりを進める

    提言内容 政策内容

  • 21

    Ⅱ.南アフリカの自動車産業の法的整合性

    (3)WTOルールとの整合性の検証

    ■この提言内容の実現可能性を検討するため、現行のAPDPと合わせてWTOルールとの

    整合性について検討をおこなった。まず、関連するWTOルールは下記の通り。

    最恵国待遇 GATT1条 ・ 関税、輸出入規制、輸入品に関する内国税及び内国規則について、WTO加盟国が

    他の加盟国の同種の産品に最恵国待遇を供与すること。

    関税 GATT2条 ・ 加盟国に対して関税の譲許税率を超えない関税の適用率を義務付ける。譲許関税

    率の範囲内の税率の引き上げや非譲許品目の税率の引き上げはWTO法上問題に

    ならない。

    GATT28条 ・ ただし、譲許税率の引き上げや撤回を行うには、譲許について直接交渉した加盟国

    や主要供給国との交渉・合意と、その譲許の変更に実質的利害を有する当該産品

    の主供給国等との協議を行うことが求められる。

    内国民待遇の原則とその例外 GATT3条 ・ 加盟国は他の加盟国に内国民待遇を付与すること。

     同条2項 ・ 内国税等を、同種の産品、または直接的に競争し、もしくは代替可能な産品の間で

    国内産品以上の水準を輸入産品に課すことは禁止。

     同条4項 ・ 国内規則について、同種の産品の間で、輸入品に国内産品より不利でない待遇を

    付与すること。

     同条5項 ・ 数量規制について、産品の特定の割合を国内の供給源から供給すべきことを直接

    または間接に供給するものを設定し、維持することを禁止。

     同条8項(b) ・ 国内生産者に対してのみ補助金を付与することは内国民待遇の例外として認める。

    数量制限 GATT11条 ・ 輸出入数量制限のみならず、数量制限効果を発揮する輸出入許可制などを一般的

    に禁止。

    一般的例外 GATT20条 ・ GATTに対する義務違反が正当化される例外を定める。自動車産業政策に関連が

    想定される規定は、「人、動物または植物の生命または健康の保護のために必要な

    措置(b項)」、「有限天然資源の保存に関する措置(g項)」が例示。

    同協定3条1項(b) ・ 「レッド補助金」として、輸入物品よりも国産物品を優先することに基づいて公布される

    補助金を禁止。

    ・ 「イエロー補助金」として、「レッド補助金」に該当しないものでも、「特定性」があり、他国

    に悪影響を及ぼす補助金は廃止や悪影響の是正が勧告される。

    TRIMs協定 ・ GATT3条、GATT11条に反する貿易関連投資措置を列挙して禁止。ローカルコンテント

    要求や輸出入均衡要求は、「貿易投資効果の強い投資措置」として禁止。

    条項 条項内容

    GATT

    補助金協定

    貿易投資関連措置

  • 22

    Ⅱ.南アフリカの自動車産業の法的整合性

    ■上記のWTOルールとの整合性を、APDP及び前回調査の提言内容(A)~(E)を、「国内生産

    者の行為」、「政府施策(インセンティブ付与、関税変更、RTA)」の2つの軸で整理し、検証。

    インセンティブ付与関税変更

    RTA輸入関税減免

    内国間接税減免

    所得税・法人税減免

    企業への補助金供与

    購入者への補助金供与

    国内生産者・消費者の行為

    OEM/サプライヤーの国内生産全般

    特定車種生産(国産車種のみ)

    特定車種販売(国産/輸入問わず)

    現地調達率

    設備投資

    雇用/研究開発

    条件なし

    VAA/PI A

    A

    B

    B

    C

    AIS

    B

    A

    E

    B

    CD

  • 23

    Ⅱ.南アフリカの自動車産業の法的整合性

    ○APDP及び前回調査の提言内容の検証結果

    ・ WTO上は関税ではなく内国税減免と想定される可能性が高い。そこで、国内生産をおこなっていないメーカーや部品メーカーは

    不利な立場におかれるとしてGATT3条違反として指摘される可能性がある。

    ・ また、関税相殺クレジットを利用できない企業にとってVAA/PIは輸入制限効果があるととらえられ、GATT11条違反として指摘

    される可能性がある。

    ・ PIの余剰クレジットの転売については数量制限の無差別適用を求めるGATT13条違反と指摘される可能性がある。

    ・ 投資についてはGATTは規制を設けておらず、TRIMs協定と補助金協定の対象。

    輸出補助金やローカルコンテント要求に該当しないため、TRIMs協定には違反しない。ただし、貿易歪曲効果があると

    された場合は、補助金協定違反の対象とされる。

    ・ インセンティブの付与が内国税直接税(法人税、所得税等)の減免や補助金交付の形式であればGATT3条に適合。

    国内生産全般/特定車種 ・ しかし、国内生産している産品のみに内国間接税(物品税など)を減免することはGATT3条違反となる可能性がある。

    に対するインセンティブ付与 ただし、国産車/輸入車の区別なしに特定車販売に内国間接税を減免する場合はGATT3条違反には問われない。

    ・ 上記内国税直接税減免や補助金交付の形式でも、補助金協定で貿易歪曲効果があるとされた場合は協定違反と

    される可能性があるので、留意が必要。

    ・ 国内生産している産品のみに内国間接税(物品税など)を減免することはGATT3条違反となる可能性がある。

    特定車種の販売に対する 国産車/輸入車の区別なしに特定車販売に内国間接税を減免する場合はGATT3条違反には問われない。

    インセンティブ付与 ・ しかし、インセンティブの対象外となった産品が対象産品と「同種の産品」、「競争関係にある産品」と認定され、

    差別的措置としてGATT3条違反とされる可能性もあるので、関税のHSコードで産品を分けておくことが必要。

    ・ 国産部品を輸入部品より有利に扱うという点で、TRIMs協定2条、GATT3条第2項、4項、補助金協定3条に違反する

    ローカルコンテント率にもとづく 可能性が高い。

    インセンティブ付与 ・ ただし、ローカルコンテント率を明示的で強制的な要件としてではなく、現地調達を奨励し、結果として達成された

    ローカルコンテント率に対して事後的にインセンティブを付与するなどの様態をとれば違反として問われなくなる可能性が

    高まる。

    設備投資/雇用/研究開発に ・ TRIMs協定上は禁止されておらず、個別の投資協定で可否が決められている。幅広い産業に供与され、「特定性」が

    対するインセンティブ付与 認められなければ、補助金協定違反には問われない。

    関税率の変更 ・ 譲許税率の範囲内であれば法的には問題はない。

    ・ 地域貿易協定を締結する場合には、GATT24条により、対外的貿易要件として関税率を協定締結前の域内各国の

    関税率の加重平均を低くすること、対内的貿易要件として可能な限り「実質上全ての貿易を自由化」する必要が

    あるとされている。

    政策措置 検討結果

    APDP

    前回提案

    地域貿易協定

    VAA/PI

    AIS

  • 24

    Ⅲ.南アフリカの自動車産業政策の導入効果分析(1)政策シミュレーション分析の概要

    ■APDP及び前回提言の内容が実施された場合の費用対効果分析を行うことで、各政策を評価。・ ある政策を実施することによって発生する「費用」 を「政府歳入」 の減少分とし、その政策による「効果」を「等価変分」とすることで、歳入減少を上回る等価変分があれば、その政策は「望ましい政策」であると評価。あわせて、自動車産業の生産・輸出入の生産活動指標、実質GDPや製造業の生産量等でも評価。

    ■シミュレーション分析のステップは、①南アフリカの2011年SAM(Statistical AccountingMatrix)を自動車産業政策評価用SAMに拡張→②麗澤大国際地域開発研究センターが開発した途上国CGE(Computable General Equilibrium)モデルを南アフリカ仕様に改良→③南アフリカのCGEモデルを用いた政策シミュレーションを実行

      第Ⅲステップ

     CGEモデル  によるシミュレーション

    麗澤大が作成した2011年SAMは45×45次元から構成されている。①16部門の産業②16部門の商品③5つ生産要素部門(2タイプの労働と3タイプの資本)④4つの制度部門(2タイプの家計、企業、政府)⑤4つのその他部門(貯蓄/投資部門、直接税関税税、海外部門)

    <第Ⅰステップ>

    ■輸送機器部門の分割化

    ・ 輸送機器部門を①国内重視型自動車製造②輸出重視型自動車製造③自動車部品製造④その他輸送機器製造に分割した自動車産業分析のためのSAMに改良し、CGEモデルのデータベースとする

    <第Ⅱステップ>

    ■麗澤大が開発した途上国CGEモデルを南アフリカ仕様に改良

    ・南アフリカにおける①労働と資本の代替弾力性の推計②国産財と輸入財の代替弾力性の推計③国産財と輸出財の代替弾力性の推計

    ■各政策シミュレ-ション

    を実施するための

    操作変数・パラメータ

    ①各製品の関税率

    ②各産業の補助金比率

    ③各産業の間接税率

    ④家計所得税率・法人税率

    ⑤政府の貯蓄率

    ⑥各産業の生産関数

    の効率パラメータ

    ⑦国産財と輸入財の代替

    弾力性

    ⑧国産財と輸出財の代替

    弾力性

    ⑨海外からの資本供給量

    ⑩輸入財と輸出財の国際

    商品価格

    ■各政策シミュレ-ション

    から得られるアウトプット

    ・GDP

    ・等価変分

    ・政府歳入

    ・それ以外として

    CGEモデルの内生変数

    ①各産業の生産量

    ②各産業の国内市場向け

    供給量

    ③各産業の輸出量と輸入量

    ④各産業の労働・資本の需要量

    ⑤家計賃金率、資本収益

    ⑥失業者数

    ⑦家計所得

    ⑧為替レート

    など

    ・南アフリカの時系列な

    マクロ経済統計やSUT

    をデータベースとして

    非線形システム推定法を用いて推計

    ・ 南アフリカのB&M Analyst

    に自動車関連統計の収集

    委託。

    ・2005年のSUTの活用(産業区分が小分類)

    ・上記の①から⑥までの

    操作変数・パラメータは、

    2011年SAMから

    キャリブレーションによって得られる

    ・ 16部門の産業

    ①農業 ⑩電力・水道

    ②鉱業 ⑪建設業

    ③飲食料品 ⑫商業④繊維・履物 ⑬輸送サービス

    ⑤石油化学 ⑭金融・保険⑥基礎金属・ 不動産

    一般機械 ⑮公務・公共サービス⑦電気機械 ⑯その他サービス・家電産業

    ⑧輸送機器⑨その他製造業

    調査・分析のフロー図調査・分析のフロー図

  • 25

    Ⅲ.南アフリカの自動車産業政策の導入効果分析○CGEモデルの概要

    ■本分析における政策評価の分析ツールとして、マクロ計量経済モデルではなく、CGEモデル(応用一般均

    衡モデル)を選択した理由は、

    ・マクロ計量経済モデルは、①公共投資や民間投資の増加による経済波及効果、②外国為替を含めた金融政策の効果、③

    一国の経済予測などを目的とした計量分析において最適なツールであると言われている。

    ・それに対して、CGEモデルは本分析の目的である税制変更や補助金といった財政政策を分析するのに最適なツールであり、

    税制変更によって産業、政府、家計、企業などの経済主体や、生産要素である労働、資本、さらに貯蓄や投資、海外部門への

    波及効果を計量的に提示することができるモデルである。

    ・加えて、確率論に基礎をおくマクロ計量経済モデルでは、統計調査によって得られる各種の経済統計データから成る時系列

    なデータセットが不可欠である。それに対して、CGEモデルでは一時点の社会会計表(SAM)があれば、SAMの内容に沿って

    CGEモデルを構築することができるというメリットを持つ。

    ■CGEモデル(応用一般均衡モデル)は、価格メカニズム(需要が上がれば価格が上がり、価格が上がることで需要が下がる)基づいて経済の一般均衡構造を表現したもの。・与えられた経済の中で、①家計や企業といった経済主体がどのように行動し、②おのおの行動の均衡が市場においてどのように達成されるかを表現(その場合、家計の行動は与えられた予算のもとで効用最大化を目指し、企業は与えられた技術のもとで利潤最大化を目指すとする)。

    ■CGEモデルは、ある政策を実施した場合に当該経済システムのどの産業、どの所得階層にどの程度の影響がでるかといった経済政策の策定や評価に活用される主要な数量分析モデルである。・例えば、内閣府等日本の政府機関もTPP交渉入り前にTPP影響分析に活用するなど国際貿易、消費税や物品税の引き上げ効果などの財政政策、公共支出削減の影響といったマクロ経済問題、環境税の導入の影響など環境政策、電力事業自由化の影響など産業政策といった幅広い分野で活用されている。・また、時系列データが整備されていない途上国において政策分析ツールとして幅広く利用されている

  • 26

    Ⅲ.南アフリカの自動車産業政策の導入効果分析■CGEモデルによる政策シミュレーションの概観図

    政府支出

    輸入量

    ・賃金率

    ・資本収益

    ・農業、鉱業・製造業(自動車除き)・建設業、・第三次

    産業の一部の生産量 公共サービス等の

    産業の労働量他産業の労働量

    他産業の資本量

    輸出量

    公共サービス等産業の資本量

    公務・公共

    サービス

    の生産量

    国産車の

    輸出量

    関税率の引き下げ措置

    輸入車の

    国内価格輸入車に対する

    国産車の相対価格国内の自動車消費量

    家計の経済厚生

    (等価変分:効果)

    為替レート

    政府の関税収入

    国産車の

    生産量政府歳入

    (費用)

    ・直接税

    ・間接税

    ・家計の所得

    ・企業の所得

    輸入車の輸入量

    国産車の国内供給量

    自動車産業の資本量

    自動車産業の労働量

    失業者

  • 27

    Ⅲ.南アフリカの自動車産業政策の導入効果分析(2)南アフリカ自動車産業の経済波及効果分析

    ■南アフリカの自動車政策の評価をする前に、現時点での自動車産業の経済波及効果を他産業と比較して評価。16産業からなるCGEモデルを用いて、各産業ごとに定額の補助金を支給することを与件にシミュレーションを実施。

    〇分析結果

    ①雇用創出効果:輸送機器は16産業中12番目。最も雇用創出効果が大きいのは食料品②費用/便益:輸送機器は16産業中11番目でマイナス。最もプラスが大きいのは、食料品③実質GDP:輸送機器は16産業中5番目。トップは食料品④総生産量:輸送機器は16産業中5番目。トップは基礎金属・一般機械

    ⇒実質GDPや総生産量で高い数値を示すのに対して雇用創出が低い。これは、南アフリカの自動車産業が輸出主導で発達し、かつ国内の部品産業が未発達であるため、自動車先進国のような国内に密接な産業リンケージを持っていないことを示す。

    ⇒本来は裾野の広い総合産業で雇用創出効果が期待できる自動車産業の潜在的可能性を十分に開花させるには、現在の自動車産業政策を見直し、適切な産業支援策を現地自動車メーカーや部品メーカーに提供する必要がある。

  • 28

    Ⅲ.南アフリカの自動車産業政策の導入効果分析■図表6南アフリカ産業の経済波及効果の比較

    -20.0

    -10.0

    0.0

    10.0

    20.0

    30.0

    千人 雇用創出

    -20.0

    -15.0

    -10.0

    -5.0

    0.0

    5.0

    10.0

    10 億ランド 差分(=便益-費用)

    -5.0

    0.0

    5.0

    10.0

    15.0

    20.0

    10 億ランド 等価変分

    -0.10%

    -0.05%

    0.00%

    0.05%

    0.10%

    0.15%

    0.20%

    0.25%

    基準値から変化率 実質GDP

    -0.10%

    0.00%

    0.10%

    0.20%

    0.30%

    0.40%

    0.50%

    0.60%

    0.70%

    基準値からの変化率 総生産量

  • 29

    Ⅲ.南アフリカの自動車産業政策の導入効果分析(3)現行のAPDPスキームの政策評価シミュレーション分析

    ■APDPの政策評価を行うため、APDPの各プログラムが実施されなかった場合の「なかりせばケース」でCGEモデルを用いてシミュレーション分析を行い、「現状」(ベース値)からの変化量で比較評価する。・今回調査で利用するデータベ-スは現在入手可能な最新版の2011年に基づいているため、基準年は2011年。そこで「なかりせばケース」

    では輸入関税率は2011年の本来水準に戻して設定。AISについては2014年に支払われた金額を2011年も同額支払われたとの想定をおいた。

    ■図表7「なかりせば」ケースでのCGEモデルの設定値

    OEMが輸入している完成車

    (CBU)

    輸入業者が輸入している完成車(CBU)

    部品サプライヤーが輸入している構成部品(CKD)

    部品サプライヤーが輸入している部品

    現地組立メーカー

    部品サプライヤー

    5% 5% 0% 12% 1.0% 0.6%

    26% 26% 21% 21% 1.0% 0.6%

    5% 5% 0% 12% 0.2% 0.2%

    26% 26% 21% 21% 0.2% 0.2%

    「AIS 政策がなかりせば」

    関税率の設定 補助金比率の設定

    「現状」(2011年SAMのベース値)

    「PI と VAA 政策がなかりせば」

    「APDPスキームがなかりせば」

  • 30

    Ⅲ.南アフリカの自動車産業政策の導入効果分析〇分析結果

    ■APDPスキームは費用が便益を76.6億ランドほど大きく上回り、同政策は政府の財政措置に見合った政策効果は得られていない。

    ■しかし、経済指標・自動車関連指標からみると、GDPを0.11%押し上げ、総生産量を0.19%増加させ、産業全体で1万人を上回る雇用を創出しており、一定の効果をもたらしていると評価できる。

    ■国産部品供給に占める国産部品供給率は、PIとVAAは実質的な関税率引き下げをもたらしたため、比率を1.2%ポイント低下させたが、AISは0.1%ポイント上昇させる効果が認められた。

    ■図表8各政策シミュレーションの費用・便益効果結果

    費用(=A)(実質政府歳入の減少分))(億ランド)

    便益(=B)(等価変分)(億ランド)

    差分(=B-A)

    GDP(%)

    総生産量(%)

    全産業の雇用創出(1000人)

    現地組立メーカー

    生産量(%)

    部品サプラヤー生産量(%)

    国内部品供給に占める国産部品比率(%)

    137.9 60.2 -77.8 0.10% 0.17% 9.5 6.00% 0.33% -1.2%

    4.9 5.8 0.9 0.01% 0.03% 1.0 1.23% 0.68% 0.1%

    142.5 65.9 -76.6 0.11% 0.19% 10.6 7.10% 0.97% -1.1%

    主な経済・自動車関連指標

    「PI と VAA 政策がなかりせば」

    「AIS 政策がなかりせば」

    「APDPスキームがなかりせば」

    「現状」(ベース値)から各「なかりせば」ケースのシミュレーション結果を差し引いた変化量(率)

    費用・便益分析

  • 31

    Ⅲ.南アフリカの自動車産業政策の導入効果分析

    〇分析結果(続き)

    ■現地組立メーカーと部品サプライヤーをローカルコンテント率の高低で2グループで分けてみた場合(現地組立メーカーは現地調査で得た情報をもとにローカルコンテント率40%で分類。ビジネスモデルの上では40%未満のメーカー

    は輸出比率が8割以上の輸出主導のメーカーが該当)、PIとVAAはローカルコンテント率の低い現地組立メーカーや部品サプライヤーが有利であることが明示。

    ・例えば、「PIとVAA政策のなかりせば」ケースをみると、40%未満の現地組立メーカーの生産量の増加率が8.63%と、40%以上の現地組立メーカーの4.78%より倍近い伸び率を示す。国内供給量も輸出量でも、ローカルコンテント率の低いメーカーの方が高いメーカーよりも変化量が大きい。これは部品サプライヤーでも同様である。

    ・この結果、PIとVAAは国内部品供給に占める国産部品比率を1%ポイント低下させるが、輸入部品と輸入車も割安となるため、国内自動車市場を6~8%拡大させる効果は認められる。

  • 32

    Ⅲ.南アフリカの自動車産業政策の導入効果分析

    ■図表9グループごとにみた「なかりせば」ケースでの各政策シミュレーション結果

    40%未満 40%以上 低い 高い 40%未満 40%以上 低い 高い

    8.63% 4.78% 0.97% 0.03% 6.61% 3.88% -0.18% -0.29%

    1.33% 1.18% 0.77% 0.64% 0.82% 0.87% 0.49% 0.50%

    9.75% 5.87% 1.67% 0.65% 7.35% 4.69% 0.28% 0.20%

    40%未満 40%以上 低い 高い 40%未満 40%以上 低い 高い

    15.96% 10.21% 3.63% 1.42% 13.84% 12.14% 4.20% 4.65%

    3.14% 3.07% 1.38% 1.26% 0.23% 0.31% 0.26% 0.30%

    18.52% 12.93% 4.93% 2.63% 14.03% 12.40% 4.41% 4.92%

    低い 高い 40%未満 40%以上 低い 高い

    -1.02% -1.23% 6.56% 8.48% 8.75% 4.84% 1.00% 0.05%

    0.05% 0.05% 0.72% 0.65% 1.29% 1.17% 0.80% 0.65%

    -0.97% -1.18% 7.22% 9.05% 9.84% 5.93% 1.69% 0.67%

    国内供給量

    「PI と VAA 政策がなかりせば」

    輸出量 輸入量

    現地組立メーカー部品

    サプライヤー

    「現状」(ベース値)から各「なかりせば」ケースのシミュレーション結果を差し引いた変化率

    ローカルコンテント率

    現地組立メーカー

    ローカルコンテント率

    部品サプライヤー

    ローカルコンテント率

    ローカルコンテント率

    現地組立メーカー

    ローカルコンテント率

    「PI と VAA 政策がなかりせば」

    「AIS 政策がなかりせば」

    「APDPスキームがなかりせば」

    国内部品供給に占める国産部品比率

    「現状」(ベース値)から各「なかりせば」ケースのシミュレーション結果を差し引いた変化率

    「AIS 政策がなかりせば」

    「APDPスキームがなかりせば」

    生産量

    自動車市場

    現地組立メーカー

    ローカルコンテント率

    部品サプライヤー

    ローカルコンテント率

    ローカルコンテント率

    部品サプライヤー

    労働需要

    「PI と VAA 政策がなかりせば」

    「AIS 政策がなかりせば」

    「APDPスキームがなかりせば」

    部品サプライヤー

    ローカルコンテント率

    現地組立メーカー部品

    サプライヤー

    ローカルコンテント率 ローカルコンテント率

    「現状」(ベース値)から各「なかりせば」ケースのシミュレーション結果を差し引いた変化率

    個人需要法人需要・設備投資需要

  • 33

    Ⅲ.南アフリカの自動車産業政策の導入効果分析(4)PI、VAA政策の追加・代替支援策に関する政策シミュレーション分析

    ■PI、VAAは経済・自動車指標で一定の成果をもたらしている。しかし、費用が便益を大きく上回り、効果的な政策とはいえない。そこで、より大きな費用対効果をもたらす政策へと見直すべく、インセンティブ政策に必要な財源を自動車産業の中で確保し、それを補助金として誰にどう配分するかでシナリオ設定し、追加・代替支援策に関するシミュレーション分析を行った。

    ■図表10PIとVAA政策の追加・代替支援策の設定

    OEMが輸入している完成車

    輸入業者が輸入している完成車

    部品サプライヤーが輸入して

    いる構成部品

    部品サプライヤーが輸入して

    いる部品

    現地組立メーカー

    部品サプライヤー

    5% 5% 0% 12% 1.0% 0.6%

    シナリオ I-A 5% 25% 0% 12% 1.5% 0.6%

    シナリオ I-B 5% 25% 0% 12% 3.9% 0.6%

    シナリオ I-C 15% 25% 0% 12% 1.0% 0.6%

    シナリオ I-C1,C2 15% 25% 0% 12% 5.4% 0.6%

    シナリオ I-D 15% 15% 0% 12% 1.0% 0.6%

    シナリオ I-D1,D2 15% 15% 0% 12% 4.3% 0.6%

    シナリオ I-D3 15% 15% 0% 12% 1.0% 5.2%

    シナリオ I-E 25% 25% 5% 15% 1.0% 0.6%

    シナリオ I-E1,E2,E3 25% 25% 5% 15% 7.8% 4.8%

    シナリオ I-F 30% 30% 10% 20% 1.0% 0.6%

    シナリオ I-F1,F2,F3 30% 30% 10% 20% 8.8% 8.1%

    関税率の設定 補助金比率の設定

    「現状」(2011年SAMのベース値)

    追加支援・代替支援策

    注)シナリオⅠ-C~Fのうち、1は補助金を均等配分、2はローカルコンテント率に比例する形で配分、3は反比例の形で配分をそれぞれ想定

  • 34

    Ⅲ.南アフリカの自動車産業政策の導入効果分析〇分析結果

    ■いずれのシナリオでも便益が費用を上回る。・PI、VAAの生産インセンティブを抜本的に見直すことで関税率が本来のMFN関税率25%に近い水準に戻されることで得られる関税収入分を政府が補助金に回しても政府歳入は減少せず、むしろ補助金支給で自動車産業が成長し、経済全体を活性化して等価変分が増加するため。

    ■ただし、単に関税を本来の水準も戻すだけのシナリオ(ⅠーD、E、F)では、GDP、総生産量を押し下げ、失業者を増加させる。それに対して、増加した関税収入を補助金という形で自動車産業に還元させるシナリオ(ⅠーA、B)はGDPを押し上げ、現地組立メーカーや部品サプライヤーの生産量を増加させ、全産業の雇用を創出する。

    ■雇用創出効果という点では、ローカルコンテント比率に比例する形で補助金を配分したシナリオ(ⅠーC2、D2、E2、F2)の方が均等配分したシナリオ(ⅠーC1、D1、E1、F1)よりも効果が大きい。また、関税引き上げ幅が大きいほど、その効果は大きくなる。

    ⇒南アフリカが自動車産業を基幹産業として発展させるのであれば、同産業へのインセンティブ政策のために歳入放棄や税収の一部を援用する財政措置よりも、インセンティブ政策に必要な財源を自動車産業の中で確保する必要がある。

    ⇒そしてその財源をローカルコンテント率に比例する形で現地組立メーカーや部品サプライヤーに補助金の形で配分した方が効果的である。

  • 35

    Ⅲ.南アフリカの自動車産業政策の導入効果分析

    ■図表11グループごとにみた「なかりせば」ケースでの各政策シミュレーション結果

    費用(=A)(実質政府歳入の減少分))(億ランド)

    便益(=B)(等価変分)(億ランド)

    差分(=B-A)

    GDP(%)

    総生産量(%)

    全産業の雇用創出(1000人)

    現地組立メーカー

    生産量(%)

    部品サプラヤー生産量(%)

    国内部品供給に占める国産部品比率(%)

    シナリオ I-A -22.6 -0.9 21.7 -0.01% -0.01% 1.0 -0.03% -0.06% 0.0%

    シナリオ I-B -12.3 11.9 24.2 0.02% 0.06% 3.1 3.53% 0.97% 0.0%

    シナリオ I-C -38.9 -9.5 29.4 -0.02% -0.04% -0.5 -1.38% -0.44% 0.0%

    シナリオ I-C1 -19.6 12.2 31.7 0.02% 0.08% 3.0 5.45% 1.47% 0.0%

    シナリオ I-C2 -19.7 12.9 32.6 0.02% 0.08% 3.2 5.36% 1.47% 0.0%

    シナリオ I-D -27.7 -8.6 19.2 -0.02% -0.03% -1.0 -1.01% -0.33% 0.0%

    シナリオ I-D1 -13.6 8.6 22.2 0.02% 0.06% 2.0 3.84% 1.07% 0.0%

    シナリオ I-D2 -13.7 10.1 23.8 0.02% 0.06% 2.5 3.75% 1.09% 0.0%

    シナリオ I-D3 -8.2 12.1 20.3 0.01% 0.04% 2.6 0.61% 4.11% 0.6%

    シナリオ I-E -74.0 -28.1 45.9 -0.05% -0.09% -4.0 -3.02% -0.55% 0.3%

    シナリオ I-E1 -26.2 26.7 52.9 0.04% 0.18% 5.4 9.06% 6.83% 0.9%

    シナリオ I-E2 -26.3 30.1 56.4 0.04% 0.18% 6.5 8.87% 6.64% 1.0%

    シナリオ I-E3 -25.6 22.6 48.1 0.04% 0.18% 4.0 9.52% 7.16% 0.8%

    シナリオ I-F -111.4 -45.7 65.7 -0.08% -0.14% -6.9 -4.71% -0.59% 0.7%

    シナリオ I-F1 -43.7 30.1 73.8 0.04% 0.23% 6.1 10.17% 11.26% 1.8%

    シナリオ I-F2 -43.2 35.0 78.2 0.04% 0.23% 7.6 10.14% 10.98% 1.8%

    シナリオ I-F3 -42.6 25.4 68.0 0.03% 0.24% 4.4 10.76% 12.08% 1.7%

    各シナリオの「シミュレーション結果」から「ベース値」を差し引いた変化量(率)

    費用・便益分析 主な経済・自動車関連指標

    追加支援・代替支援策

  • 36

    Ⅲ.南アフリカの自動車産業政策の導入効果分析(5)AIS政策の追加・代替支援策に関する政策シミュレーション分析

    ■現行のAIS政策は便益が費用を上回っている。そこで、AIS政策をより充実させることによってどの程度の効果が導き出せるかについてシミュレーション分析を行った。

    ■図表12AIS政策の追加・代替支援策の設定

    注)シナリオⅡ-Cのうち、1は補助金を均等配分、2はローカルコンテント率に比例する形で配分、3は反比例の形で配分をそれぞれ想定

    40%未満 40%以上 低い 高い

    1.0% 0.6% 1.0% 1.0% 0.6% 0.6%

    シナリオ II-A 1.0% 1.0% 1.0% 1.0% 1.0% 1.0%

    シナリオ II-B 1.8% 1.8% 1.8% 1.8% 1.8% 1.8%

    シナリオ II-C1 2.6% 2.6% 2.6% 2.6% 2.6% 2.6%

    シナリオ II-C2 2.6% 2.6% 2.2% 2.8% 2.2% 2.8%

    シナリオ II-C3 2.6% 2.6% 3.1% 2.4% 3.1% 2.4%

    「現状」(2011年SAMのベース値)

    追加支援・代替支援策

    補助金比率の設定

    現地組立メーカー部品

    サプライヤー

    ローカルコンテント率 ローカルコンテント率現地組立メーカー

    部品サプライヤ-

    CGEモデルでの設定

  • 37

    Ⅲ.南アフリカの自動車産業政策の導入効果分析〇分析結果

    ■キャッシュバックを増加することで費用も増加するが、その増加に見合った便益は得られない。産業全体の雇用創出効果も、キャッシュバック増に見合った効果は得られない(ⅡーA、B、C1)。

    ⇒キャッシュバック額をローカルコンテント率に関係なく均等配分している限り、効果は限定的。■しかし、ローカルコンテント率に比例してキャッシュバック額を配分(ⅡーC2)すると、均等配分(ⅡーC1)や逆比例での配分(ⅡーC3)よりも費用・便益や雇用創出の点で効果的。

    ⇒キャッシュバック額の財源に上限があるならば、ローカルコンテント率に比例した形で現地メーカーや部品メーカーに配分することが最適。

    ■図表13AIS政策の追加・代替支援策の費用・便益分析結果

    費用(=A)(実質政府歳入の減少分))(億ランド)

    便益(=B)(等価変分)(億ランド)

    差分(=B-A)

    GDP(%)

    総生産量(%)

    全産業の雇用創出(1000人)

    現地組立メーカー

    生産量(%)

    部品サプラヤー生産量(%)

    国内部品供給に占める国産部品比率(%)

    シナリオ II-A 1.6 1.7 0.1 0.00% 0.01% 0.3 0.14% 0.37% 0.1%

    シナリオ II-B 8.3 9.3 1.0 0.02% 0.04% 1.6 1.55% 1.47% 0.2%

    シナリオ II-C1 15.1 16.9 1.8 0.03% 0.08% 2.8 3.02% 2.61% 0.3%

    シナリオ II-C2 15.2 17.9 2.6 0.03% 0.08% 3.1 3.01% 2.58% 0.3%

    シナリオ II-C3 15.3 16.2 0.8 0.03% 0.08% 2.6 3.09% 2.72% 0.3%

    6.5 7.5 1.0 0.01% 0.03% 1.3 1.38% 0.96% 0.1%

    6.7 7.6 0.9 0.01% 0.03% 1.3 1.41% 1.10% 0.1%

    6.8 7.7 0.8 0.01% 0.04% 1.3 1.47% 1.14% 0.1%

    各シナリオの「シミュレーション結果」から「ベース値」を差し引いた変化量(率)

    費用・便益分析 主な経済・自動車関連指標

    追加支援・代替支援策

    「AIS政策がなかりせば」ケース+シナリオ II-A

    「シナリオⅡ-B」-「シナリオ

    II-A」

    「シナリオⅡ-C1」-「シナリオII-B」

  • 38

    Ⅲ.南アフリカの自動車産業政策の導入効果分析(6)人材育成と国産品の代替促進策に関する政策シミュレーション分析

    ■ここでは、政府が主体となって人材育成策や国産品の代替促進策を図った場合のシミュレーションを行う。活用するのはシナリオⅠーD(関税が15%に設定することによって増加する関税収入を政府予算に回す設定)。この政府予算に回す設定を自動車産業振興のために人材育成に向けた教育支出や国産品の品質向上の研究開発などの公的サービスに回すと想定。次の3つのシナリオを分析した。・シナリオⅠーD3:増加した関税収入を部品サプライヤーに支給シナリオⅠーD4:ⅠーDに部品サプライヤーの生産性が現地組立メーカー並みに向上すると設定シナリオⅠーD5:ⅠーD4に加え、輸入品から国産品への代替が促進すると設定

    ■図表14人材育成策と国内市場活性策の費用・便益分析結果

    費用(=A)(実質政府歳入の減少分))(億ランド)

    便益(=B)(等価変分)(億ランド)

    差分(=B-A)

    GDP(%)

    総生産量(%)

    全産業の雇用創出(1000人)

    現地組立メーカー

    生産量(%)

    部品サプラヤー生産量(%)

    国内部品供給に占める国産部品比率(%)

    シナリオ I-D -27.7 -8.6 19.2 -0.02% -0.03% -1.0 -1.01% -0.33% 0.0%

    シナリオ I-D3 -8.2 12.1 20.3 0.01% 0.04% 2.6 0.61% 4.11% 0.6%

    シナリオ I-D4 -40.7 6.3 47.0 0.11% 0.14% 3.2 0.60% 4.03% 0.6%

    シナリオ I-D5 -40.9 11.7 52.5 0.12% 0.20% 3.9 3.10% 7.17% 1.6%

    各シナリオの「シミュレーション結果」から「ベース値」を差し引いた変化量(率)

    費用・便益分析 主な経済・自動車関連指標

    人材育成策・国産品の代替促進策

  • 39

    Ⅲ.南アフリカの自動車産業政策の導入効果分析〇分析結果

    ■シナリオⅠーD4、D5ともにⅠーDよりも費用が大きく減少し、便益から費用を差し引いた差分は倍以上となる。・経済全体が活性化して、関税増収に加え、間接税や直接税も増加したことで政府歳入が増加。

    ■ⅠーD3に比べⅠーD4はGDP、総生産量、雇用創出の伸びも上回る。・部品サプライヤーの生産性が向上したことで労働需要量が減少し、その分が他産業の労働供給に回ることで総生産量が押し上げられた。

    ■ⅠーD3とⅠーD4は現地組立メーカーや部品サプライヤーの生産量、国内部品供給に占める国産部品比率はほぼ同じ増加率。

    ⇒部品サプライヤーの生産性が現地組立メーカー並みに上昇すれば、15%に引き上げて増加した関税収入を部品サプライヤーに補助金として支給することによって得られるのと同程度の効果がある。

    ⇒さらに、ⅠーD5のように、政府が輸入品から国産品の代替を促進させれば、さらに大きな効果が得られる。

  • 40

    Ⅲ.南アフリカの自動車産業政策の導入効果分析(7)ポストAPDPに向けた自動車政策の政策効果シミュレーション分析

    ■以上のPI、VAA、AIS政策に関する追加・代替支援策とシミュレーション結果を踏まえ、以下のシナリオ設定を行い、ポストAPDPに向けた政策シミュレーション分析を行った。

    ■図表15ポストAPDPに向けた自動車政策の設定

    OEMが輸入している完成車

    輸入業者が輸入している完成車

    部品サプライヤーが輸入している構成部品

    部品サプライヤーが輸入している部品

    現地組立メーカー

    部品サプライヤー

    5% 5% 0% 12% 1.0% 0.6%

    シナリオ III-A 15% 25% 0% 12% 7.2% 2.4%

    シナリオ III-B 15% 15% 0% 12% 6.1% 2.4%

    シナリオ III-C 25% 25% 5% 15% 10.4% 7.4%

    シナリオ III-D 30% 30% 10% 20% 11.4% 10.7%

    関税率の設定 補助金比率の設定

    「現状」(2011年SAMのベース値)

    ポストAPDPに向けた自動車産業政策

    シナリオⅢーA:ⅠーC+ⅡーBシナリオⅢーB:ⅠーD2シナリオⅢーC:ⅠーE2+ⅡーC2シナリオⅢーD:ⅠーF2+ⅡーC2※上記図表にはないが、シナリオⅣを設定シナリオⅣ: 関税率と補助金比率はⅢーCと同じ、これに部品サプライヤーの生産性が現地組立メーカー並みに

    向上すること、輸入車から国産車、輸入部品から国内部品への代替えが促進されるという設定を追加

  • 41

    Ⅲ.南アフリカの自動車産業政策の導入効果分析〇分析結果

    ■いずれのシナリオでも便益が費用を上回る。ただし、現行のAPDPの制度で現地組立メーカーや部品サプライヤーのビジネスモデルが構築されている事実を考慮し、政策の実現可能性から判断すると、当面はシナリオⅢーAまたはBが選択されよう。

    ⇒ただし、この選択の場合、現地組立メーカーや部品サプライヤーの生産量、産業全体の雇用は増大するが、部品輸入関税枠が維持されることから国産部品供給率に占める国産部品比率はわずかしか上昇しない。

    ■その一方、南アフリカ政府が自動車産業を中長期的に基幹産業に発展させようとするなら、シナリオⅢーC、Dのように完成車やCKDなどの部品の輸入関税率を本来の水準に戻すなど、APDPの抜本的見直しが必要となる。

    ⇒こうした選択の場合、シナリオⅢーA、Bよりも倍以上の費用便益効果が得られ、またGDPの押し上げ効果、現地組立メーカーや部品サプライヤーの生産量、国産部品比率、雇用創出でもより大きな効果が得られる。

    ■また、シナリオⅣはいずれも指標も他のシナリオを大きく上回った。

    ⇒南アフリカ・EUの地域貿易協定などにより、完成車やCKDなど部品の輸入関税率の上限が事実上設定されている状況において、南アフリカが輸入関税率引き上げで増加する関税収入を自動車産業に補助金として還元するのと同等の政策効果を得るためには、同産業の生産性向上に向けて裾野産業の振興策や人材育成策、輸入品からの代替を促進させる施策などを積極的に講じる必要がある。

  • 42

    Ⅲ.南アフリカの自動車産業政策の導入効果分析

    ■図表16ポストAPDPに向けた自動車産業政策のシミュレーション結果

    費用(=A)(実質政府歳入の減少分))(億ランド)

    便益(=B)(等価変分)(億ランド)

    差分(=B-A)

    GDP(%)

    総生産量(%)

    全産業の雇用創出(1000人)

    現地組立メーカー

    生産量(%)

    部品サプラヤー生産量(%)

    国内部品供給に占める国産部品比率(%)

    シナリオ III-A -10.9 22.5 33.4 0.04% 0.13% 4.8 7.17% 3.03% 0.2%

    シナリオ III-B -5.0 19.7 24.7 0.04% 0.10% 4.1 5.48% 2.62% 0.2%

    シナリオ III-C -8.4 49.7 58.1 0.07% 0.27% 9.7 12.79% 9.89% 1.3%

    シナリオ III-D -24.0 55.3 79.3 0.07% 0.33% 10.8 14.26% 14.69% 2.2%

    シナリオ IV -10.6 83.7 94.3 0.23% 0.68% 16.0 23.13% 26.83% 5.1%

    各シナリオの「シミュレーション結果」から「ベース値」を差し引いた変化量(率)

    費用・便益分析 主な経済・自動車関連指標

    ポストAPDPに向けた自動車産業政策

  • 43

    Ⅲ.南アフリカの自動車産業政策の導入効果分析■最後に、ローカルコンテント率が40%未満の現地組立メーカー、ローカルコンテント率が40%以上の現地組立メーカーがそれぞれ各シナリオによって生産台数、国産化率、雇用者数がどう変化したかを、現地情報で得られた実績値をベースにシミュレーション分析をしてみると、各シナリオともローカルコンテント率40%以上の現地組立メーカーの変化値が大きくなっている。この全体的数値での変化から、ローカルコンテント率の高い現地組立メーカーにインセンティブをより厚く支給した方が大きな経済的効果が得られるといえる。

    ■図表17ポストAPDPに向けた自動車政策による2つのタイプの現地組立メーカーの推移

    6.2 (1000 人) 6.7 (1000 人)

    7.4 (1000 人)

    24.8 (1000人)

    28.7(1000 人)

    31.0 (1000 人)

    20.0%

    25.0%

    30.0%

    35.0%

    40.0%

    45.0%

    50.0%

    55.0%

    60.0%

    0.0 100.0 200.0 300.0 400.0 500.0 600.0

    生産台数 (1000台)

    国産化率

    国産化率40%以上の現地組立メーカーのグループ

    国産化率40%未満の現地組立メーカーのグループ

    注)円は雇用者数を示す

  • 44

    Ⅲ.南アフリカの自動車産業政策の導入効果分析

    ■シナリオ設定一覧

    40%未満 40%以上 低い 高い 40%未満 40%以上 低い 高い5.0% 5.0% 5.1% 5.1% 1.0% 1.0% 0.6% 0.6%

    シナリオ I-A 20.4% 5.0% 5.1% 5.1% 2.5% 1.0% 0.6% 0.6% × ×シナリオ I-B 20.4% 5.0% 5.1% 5.1% 4.9% 3.4% 0.6% 0.6% × ×シナリオ I-C 22.7% 15.0% 5.1% 5.1% 1.0% 1.0% 0.6% 0.6% × ×シナリオ I-C1 22.7% 15.0% 5.1% 5.1% 6.5% 5.0% 0.6% 0.6% × ×シナリオ I-C2 22.7% 15.0% 5.1% 5.1% 6.0% 5.2% 0.6% 0.6% × ×シナリオ I-D 15.0% 15.0% 5.1% 5.1% 1.0% 1.0% 0.6% 0.6% × ×シナリオ I-D1 15.0% 15.0% 5.1% 5.1% 4.3% 4.3% 0.6% 0.6% × ×シナリオ I-D2 15.0% 15.0% 5.1% 5.1% 3.4% 4.7% 0.6% 0.6% × ×シナリオ I-D3 15.0% 15.0% 5.1% 5.1% 1.0% 1.0% 3.9% 5.8% × ×シナリオ I-D4 15.0% 15.0% 5.1% 5.1% 1.0% 1.0% 0.6% 0.6% ○ ×シナリオ I-D5 15.0% 15.0% 5.1% 5.1% 1.0% 1.0% 0.6% 0.6% ○ ○シナリオ I-E 25.0% 25.0% 9.2% 9.2% 1.0% 1.0% 0.6% 0.6% × ×シナリオ I-E1 25.0% 25.0% 9.2% 9.2% 7.8% 7.8% 4.8% 4.8% × ×シナリオ I-E2 25.0% 25.0% 9.2% 9.2% 5.9% 8.6% 3.6% 5.3% × ×シナリオ I-E3 25.0% 25.0% 9.2% 9.2% 10.1% 6.8% 6.2% 4.2% × ×シナリオ I-F 30.0% 30.0% 14.2% 14.2% 1.0% 1.0% 0.6% 0.6% × ×シナリオ I-F1 30.0% 30.0% 14.2% 14.2% 8.8% 8.8% 8.1% 8.1% × ×シナリオ I-F2 30.0% 30.0% 14.2% 14.2% 6.6% 9.8% 6.0% 9.1% × ×シナリオ I-F3 30.0% 30.0% 14.2% 14.2% 11.4% 7.7% 10.6% 7.0% × ×シナリオ II-A 5.0% 5.0% 5.1% 5.1% 1.0% 1.0% 1.0% 1.0% × ×シナリオ II-B 5.0% 5.0% 5.1% 5.1% 1.8% 1.8% 1.8% 1.8% × ×シナリオ II-C1 5.0% 5.0% 5.1% 5.1% 2.6% 2.6% 2.6% 2.6% × ×シナリオ II-C2 5.0% 5.0% 5.1% 5.1% 2.2% 2.8% 2.2% 2.8% × ×シナリオ II-C3 5.0% 5.0% 5.1% 5.1% 3.1% 2.4% 3.1% 2.4% × ×シナリオ Ⅲ-A 22.7% 15.0% 5.1% 5.1% 6.8% 6.0% 1.8% 1.8% × ×シナリオ Ⅲ-B 15.0% 15.0% 5.1% 5.1% 4.2% 5.5% 1.8% 1.8% × ×シナリオ Ⅲ-C 25.0% 25.0% 9.2% 9.2% 7.1% 10.4% 5.2% 7.5% × ×シナリオ Ⅲ-D 30.0% 30.0% 14.2% 14.2% 7.8% 11.6% 7.6% 11.3% × ×シナリオ Ⅳ 25.0% 25.0% 9.2% 9.2% 7.1% 10.4% 5.2% 7.5% ○ ○

    ローカルコンテント率

    「現状」(2011年SAMのベース値)

    追加支援・代替支援策

    CGEモデルでの設定

    関税率の設定 補助金比率の設定

    現地組立メーカー部品

    サプライヤー 現地組立メーカー部品

    サプライヤー

    ローカルコンテント率 ローカルコンテント率 ローカルコンテント率

    その他の設定

    サプライヤーの生産性向上

    国産品と輸入品との代替促進

  • 45

    Ⅳ.提言(1)提言の基本的考え方

    ■南アフリカの現行の自動車産業政策であるAPDPは、上記のCGEモデルによるシミュレーション

    分析によればGDPを0.11%押し上げ、産業全体で1万人を上回る雇用を創出させるなど一定

    の経済波及効果が認められる。しかし、国民全体の実質所得を増加させたかという観点では

    APDPは政府が関税収入の放棄や財政支出といった財政措置を積極的に行うほどの最適

    なスキームとは言い難い。

    ■また、南アフリカの自動車産業の現状をみると、国内市場は国内外経済の低迷で60万台水準

    で伸び悩み、グローバルな自動車産業でのポジションもタイ、メキシコなど他の新興競合国の

    急速な発展により楽観視できる状況にない。

    ■こうした状況を考慮すると、これまでの発展を牽引してきた自動車生産促進策は最低限継続

    しつつも、南アフリカ自動車産業の喫緊の課題である「国産車の量的規模の確保」、「雇用創出

    効果の拡大」、「産業競争力の強化」という3つの観点から、同国自動車産業をさらにステップ

    アップさせる制度設計が必要である。

  • 46

    全体まとめー2015年度と2016年度(今回)との提言項目の関連ー

    (2)ポスト2020年に向けた提言のフレーム

    ■今年度は、南アフリカの自動車産業の喫緊の課題である「国産車の量的拡大」、「雇用の拡大」、

    「産業競争力の強化」に絞ってより具体的な政策提言を行う。

    (A)国産車の生産拡大と国内販売の拡大を連動させる政策をとる (A)国産車の国内販売につながる量的規模の確保○ ① 国産車の国内販売につながる量的規模の確保 ① CBU輸入関税クレジットの見直し② 時機をとらえた販売刺激策の導入 ② 特定モデル/セグメントの保護育成

    (B)ターゲットを絞って国産車種の保護育成策を導入する (B)ローカルコンテント率の向上を通じた裾野産業の育成○ ① 国産メーカーの育成方針を明示 ① 戦略的な部品関税率の設定○ ② 育成モデルを戦略的にターゲットし、きめ細かな政策支援を提供 ② 現調化を促す生産インセンティブスキームの構築

    ③ AISスキームの拡充(C)中長期視点で裾野産業育成に取り組み、育成を主導する外資誘致を進める○ ① 官民一体でローカルコンテント率向上に向けた持続的取組みを実施 (C)スキルや技術の移転促進による競争力の向上○ ② 育成を主導する外資誘致のための環境整備の推進 ① 外資系企業の進出を促すビジネス・投資環境の整備

    ② 現地部品メーカーへの技術移転・人材育成イニシアティブの充実(D)輸出市場の確保・開拓に向け、地域経済圏形成・地域協定締結を戦略的に進める ③ 次世代技術の開発支援① 輸出市場の戦略的拡大

    ○ ② 先進国モデルの高度化③ サブサハラ地域経済圏の形成と地域モデルの開発

    (E)自動車産業の発展を支える人材育成に政労使が協調して取り組む環境をつくる① 労使協調路線の構築

    ○ ② 人材育成の仕組みづくり

    【昨年度提言(2015年度3月)】 【今年度提言(2016年度2月)】

  • 47

    Ⅳ.提言

    (3)ポストAPDPに向けた提言内容

    ① CBU輸入関税クレジットの見直し(p46)・ 国産メーカー以外の企業への輸入関税クレジット転売禁止・ 中長期的に輸入関税クレジットを段階的に削減⇒ クレジット削減分を国産メーカーへの補助金に充当

    ② 特定モデル/セグメントの育成支援(p47)・ 「販売実績・競争力のあるモデル/セグメント」を育成対象として各種生産インセンティブを提供

    ・ 南アフリカでの有力候補:Bセグメント、PU、SUV

    ① 戦略的な部品関税率の設定(p48)・ 部品の輸入関税クレジットを段階的に見直し・ 現地化の状況をふまえ、CKD、部品の関税を細かく設定

    ② 現調化を促す生産インセンティブ・スキームの構築(p49)・ ローカルコンテント率に連動したインセンティブの提供・ 部品企業へのインセンティブ提供をより厚くする

    ③ AISスキームの拡充(p50)・ 部品企業への追加インセンティブの提供・ 新規進出企業への支援スキームの充実

    ① 外資系企業の進出を促すビジネス・投資環境整備(p51)・ SEZなどを軸にしたビジネスインフラの整備充実

    ② 現地部品企業への技術移転・�