アメリカ合衆国 カーギル社のポートエレベーター(...

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2015年度 1学期号 地理・地図資料 アメリカ合衆国カーギル社のポートエレベーター(解説 p. 2)

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Page 1: アメリカ合衆国 カーギル社のポートエレベーター( …...表紙写真は,ニューオーリンズのミシシッピ川右岸に 立地するカーギル社のポートエレベーター(貯蔵施設)

  2015年度 1学期号

地理・地図資料アメリカ合衆国/カーギル社のポートエレベーター(解説 p.2)

Page 2: アメリカ合衆国 カーギル社のポートエレベーター( …...表紙写真は,ニューオーリンズのミシシッピ川右岸に 立地するカーギル社のポートエレベーター(貯蔵施設)

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写真はすべて2014年9月撮影/帝国書院

●①

アメリカ合衆国表紙写真でめぐる旅 �

2014年9月,アメリカ合衆国を訪ね,

各地で取材を行った。

今回はテキサス州のフィードロットと

ルイジアナ州のニューオーリンズの街

を紹介したい。

Page 3: アメリカ合衆国 カーギル社のポートエレベーター( …...表紙写真は,ニューオーリンズのミシシッピ川右岸に 立地するカーギル社のポートエレベーター(貯蔵施設)

 表紙写真は,ニューオーリンズのミシシッピ川右岸に立地するカーギル社のポートエレベーター(貯蔵施設)を,北北東から撮影したものである。写真右手には巨大なポートエレベーターがあり,そこからいくつものベルトコンベアが川岸にのびている。写真手前には艀

はしけ

(バージ),その奥には赤いばら積み貨物船がみえる。 ここニューオーリンズはルイジアナ州最大の都市であり,町を流れるミシシッピ川は歴史的にも南北の交通路として重要な役割を担ってきた。アメリカ国内で生産された穀物の輸出ルートはいくつかあるが,ニューオーリンズには穀物メジャーがもつ巨大なポートエレベーターが集積しており,ミシシッピ川の水運を生かしてアメリカ中西部からの穀物輸出の拠点となっている。内陸部で生産された穀物は,農家から近くのカントリーエレベーターに集められる。そして,各カントリーエレベーターからリバーエレベーターに穀物が集積され,艀で穀物輸出基地であるミシシッピ川河口まで運搬される。また,写真の建物奥には鉄道の私線がみえることから,鉄道によっても穀物が運ばれてくることがうかがえる。ミシシッピ川河口のポートエレベーターに集積された穀物は,品質を調整し,世界の需要に応じてベルトコンベアで貨物船に積み込まれ輸出されていく。日本や中国には,およそ30日かけてパナマ運河経由で太平洋を渡り運ばれて

いる。 ここで取り上げているカーギル社は,ADMとともに穀物メジャーの代表格の一つである。20世紀半ば以降,アメリカ合衆国の農業は急速に工業化し,伝統的な家族経営の農業が衰退する一方で,企業的で大規模な農業が行われるようになった。それとともに,アグリビジネスが台頭し,なかでも穀物メジャーとよばれる国際的な穀物商社によって,海外輸出向けの農業生産が進んだ。穀物メジャーは,生産地に多くのエレベーターを所有し,生産地と消費地を結ぶ船,鉄道,トラックといった圧倒的な流通網をもつ。これらを背景に,一年を通じて穀物の加工・流通・売買を大規模に行うため,価格や取引量において国際的な穀物市場への影響力が極めて大きい。また,穀物メジャーは穀物を軸に企業買収や合併を繰り返し,畜産業や搾油業など多角的な経営を進めており,その支配力を拡充している。 穀物メジャーによって安定的な穀物供給が行われる一方で,家族経営の零細農家は国際市場の中できびしい経営に立たされており,国の補助金に依存している。また,大規模な農業によって,塩害や土壌侵食など環境に影響が出ている地域もあり,大量生産のシステムの弊害が表面化している。

ニューオーリンズ カーギル社のポートエレベーター表紙写真解説

広島修道大学 教授 佐々木 緑

取材レポート帝国書院 取材班

フィードロット 9月5日,小雨のなかテキサス州ダルハート郊外のフィードロットを訪れた。ダルハートは標高が1,200mほどもあって涼しく,長袖でないと風邪をひきそうだった。 総支配人のライアンさん(写真②)に案内されて肥育場に出てみると,比較的黒毛の牛が多い。アメリカでは黒毛牛が一番人気なのだそうだ。牛のえさはコーンサイレージ(とうもろこしを発酵させたもの),ソルガム(穀物の一種),タンパク質などを混ぜたもので(写真③),それを給餌用トラックで1日に3回補充する(写真④)。牛6万8000頭に対してえさは1日20t余り必要で,コーンサイレージは5,000tも保管されているらしい。 後日,アマリロ周辺を空撮した際に別のフィードロットを見つけた(写真⑤)。肥

育場の土が黒いため黒毛牛はめだたないが,目を凝らすとなかなかの過密ぶりがうかがえる。白いシートの一画はスタックサイロと思われる。シートの下でとうもろこしを発酵させ,左手にある工場で加工してえさにしているのだ。それにしても,なんて巨大なサイロなのだろう。 ライアンさんの農場に行くまでの道路脇には,えんえんとセンターピボットのとうもろこし畑が続いていた。アマリロ周辺の空撮でも,作物の種類は定かではないが,センターピボットを多数目にした。フィードロット周辺に広がる大規模な農場が,大量の牛のえさをまかなっていることを実感した。ニューオーリンズ ニューオーリンズの街は,テキサスの高地とうって変わって真夏の暑さだった。連日35℃をこえ,夕方になると滝のような雨がやってくる。 われわれ取材班の滞在するホテルはフレ

ンチ・クオーターにあった。「フレンチ」とはいっても,今ある建物はスペイン統治時代のものが多い。カラフルな壁と装飾的なバルコニーが,青い空によく映えていた

(写真⑥)。 街並みを撮りながら歩いていると,セント・ルイス大聖堂の前でジャズバンドに出くわした(写真⑦)。昼間でも路上演奏に出会えるのはさすがニューオーリンズである。しかし,夜にバーボンストリートを歩いてみると,思いのほかジャズの店は少なかった。通りにはさまざまなジャンルの音楽が混ざり合って響き,音楽の街といった趣であった。

0 500km メキシコ湾

リオグランデ川

ミシシッピ川テキサス

ルイジアナ

アメリカ合衆国アメリカ合衆国

メキシコメキシコ

アマリロ⑤アマリロ⑤

ダルハート②③④ダルハート②③④

ニューオーリンズ①⑥⑦ニューオーリンズ①⑥⑦

ヒューストンヒューストン

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