アフリカ稲作農業普及研修 (第三国研修) 終了時...

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農 村 JR 18-008 アフリカ稲作農業普及研修 (第三国研修) 終了時評価報告書 平成30年12月 (2018年) 独立行政法人国際協力機構 農村開発部

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農 村

JR

18-008

アフリカ稲作農業普及研修

(第三国研修)

終了時評価報告書

平成30年12月

(2018年)

独立行政法人国際協力機構

農村開発部

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アフリカ稲作農業普及研修

(第三国研修)

終了時評価報告書

平成30年12月

(2018年)

独立行政法人国際協力機構

農村開発部

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序 文

2008年に立ち上げられた「アフリカ稲作振興のための共同体(Coalition for African Rice

Development:CARD)」では、2018年までにサブサハラアフリカの稲生産量を2,800万tに倍増させ

ることを目標に掲げています。

CARDに参加するアフリカ各国が目標を達成するための協力として、2011年5月から2015年3月

まで「アフリカ稲作農業普及研修」を国際稲研究所(International Rice Research Institute:IRRI)

及びフィリピン稲研究所(Philippine Rice Research Institute:PhilRice)と協力して実施してきまし

た。

プロジェクトの協力期間の終了へ向けこれまでの活動実績と成果を取りまとめるための調査

団を2014年8月にフィリピン共和国に派遣して関係機関と協議を行い、合同評価報告書(英語)を

作成しました。

この終了時評価報告書は、同調査団による評価結果全体を取りまとめたもので、今後、関連す

る国際協力の推進に活用されることを願っています。終わりに、この調査にご協力とご支援を頂

いた関係各位に対し、心から謝意を表します。

平成30年12月

独立行政法人国際協力機構

農村開発部長 宍戸 健一

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目 次

序 文

目 次

写 真

略語表

事業事前評価表

評価調査結果要約表

評価調査結果要約表(英文)

第1章 終了時評価調査の概要 ............................................................................................................. 1

1-1 調査団派遣の経緯 ................................................................................................................. 1

1-2 調査団の目的 ........................................................................................................................ 1

1-3 調査団の構成 ........................................................................................................................ 1

1-4 調査日程 ................................................................................................................................ 2

第2章 終了時評価の方法 ..................................................................................................................... 3

2-1 評価の手順 ............................................................................................................................ 4

2-2 評価5項目 .............................................................................................................................. 4

2-3 データ収集方法 ..................................................................................................................... 4

2-4 評価の制約 ............................................................................................................................ 4

第3章 プロジェクトの実績と実施プロセス ...................................................................................... 5

3-1 投入実績 ................................................................................................................................ 5

3-1-1 日本側 ........................................................................................................................ 5

3-1-2 RRI及びPhilRice ......................................................................................................... 5

3-2 活動実績 ................................................................................................................................ 5

3-3 アウトプットの達成状況 ..................................................................................................... 6

3-4 プロジェクト目標の達成状況 ............................................................................................. 8

3-5 プロジェクトの実施プロセス ........................................................................................... 11

第4章 評価結果 .................................................................................................................................. 13

4-1 妥当性 .................................................................................................................................. 13

4-2 有効性 .................................................................................................................................. 14

4-3 効率性 .................................................................................................................................. 14

4-4 インパクト .......................................................................................................................... 16

4-5 持続性 .................................................................................................................................. 22

4-6 結 論 .................................................................................................................................. 23

第5章 提言と教訓 .............................................................................................................................. 24

5-1 提 言 .................................................................................................................................. 24

5-2 教 訓 .................................................................................................................................. 24

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付属資料

合同評価報告書(英文) ................................................................................................................... 29

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写 真

国際稲研究所(IRRI)研修棟

フィリピン稲研究所(PhilRice)宿舎

ルワンダ研修員による圃場実習(PhilRice)

IRRI講師(右)から稲について説明を受ける

研修員(2014年研究助手コース)

PhilRice 試験場

タンザニア研修員と近隣農家の意見交換

(PhilRice)

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フェイスブックによる経験共有の好例 ウガンダ元普及員研修員(国家表彰を受賞)の

デモンストレーション

関係者集合写真

(2014年研究助手コース、IRRI職員、

JICA調査団)

フェイスブックによる経験共有の好例 モザンビーク元普及員研修員の収穫風景

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略 語 表

略 語 英 語 日本語

AGRA Alliance for Green Revolution in Africa アフリカ緑の革命のための同盟

CARD Coalition for African Rice Development アフリカ稲作振興のための共同体

CGIAR Consultative Group on International Agricultural Research

国際農業研究協議グループ

FFS Farmers Field School 農民学校

GAP Good Agricultural Practice 適正農業規範

GIK Gained Knowledge 習得度合い

GI General Information 研修に関する募集要項

GRiSP Global Rice Science Partnership 稲の科学のためのグローバル・パートナーシップ

IRRI International Rice Research Institute 国際稲研究所

JICA Japan International Cooperation Agency 独立行政法人国際協力機構

M&E Monitoring and Evaluation モニタリング・評価

NARES National Agricultural Research and Extension System

国家農業研究普及システム

NRDS National Rice Development Strategy 国家稲作開発戦略

ODA Official Development Assistance 政府開発援助

PDM Project Design Matrix プロジェクト・デザイン・マトリックス

PDMe Project Design Matrix for Evaluation 終了時評価フレームワーク

PhilRice Philippine Rice Research Institute フィリピン稲研究所

PVS Participatory Varietal Selection 農民参加型手法

PRiDe Promotion of Development Project ウガンダ コメ振興プロジェクト

R/D Record of Discussions 討議議事録

RKB Rice Knowledge Bank 稲データ情報バンク

SAT Self-Achievement Test 自己評価テスト

SLRT Season-Long Rice Farming Extension Training 通称「普及員コース」

TICAD Tokyo International Conference on African Development

アフリカ開発会議

ToT Training of Trainers 指導者養成研修

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事業事前評価表

1 案件名

アフリカ稲作農業普及研修(第三国研修)

2 協力概要

(1) プロジェクト目標とアウトプットを中心とした概要の記述

本事業は、2008年に日本国(以下、「日本」と記す)政府とアフリカ緑の革命のため

の同盟(Alliance for Green Revolution in Africa:AGRA)が中心となって立ち上げたイニシ

アティブである「アフリカ稲作振興のための共同体( Coalition for African Rice

Development:CARD)の一環として、アフリカにおいて稲作を推進するための核となる

研究者、研究助手、普及員の人材育成を行う研修事業(第三国研修)である。効果的な

研修を実施するため、1960年にフィリピン共和国(以下、「フィリピン」と記す)に設置

され、稲作研究に関する国際的な権威であり、CARDの運営委員会メンバーでもある国際

稲研究所(International Rice Research Institute:IRRI)を実施機関とするとともに、普及に

関する研修については日本政府が1990年から協力を行ってきたフィリピン稲研究所

(Philippine Rice Research Institute:PhilRice)を活用する。具体的には、CARDが対象とし

ている23カ国のうち、英語圏13カ国及び仏語圏10カ国の研究者/研究助手に対する3週間研

修を1回/年×3年、英語圏13カ国の普及員に対する17週間研修を1回/年×3年、実施すること

により人材の育成をめざすものである。

(2) 協力期間 2011年5月~2015年3月

(3) 協力総額(日本側)4億円

(4) 協力相手先機関 国際稲研究所(International Rice Research Institute:IRRI)

(5) 国内協力機関 なし

(6) 裨益対象者及び規模、等

CARD対象23カ国からの研修参加者合計157名、研究者:46名(英語圏・仏語圏23カ国×2

名)、研究助手:46名(英語圏・仏語圏23カ国×2名)、農業普及員:65名(英語圏13カ

国×5名)

*想定している定員が完全に満たされた場合の裨益対象者数

3 協力の必要性・位置づけ

(1) 現状及び問題点

サブサハラアフリカでは近年コメ需要が急速に増加している一方で、域内での供給が

増加しておらず、需要と供給のギャップは1990年に218万tだったものが、2007年には665

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万tまで拡大している状況にある(米国農務省)。このようななかで日本政府はAGRAと

協力し、2018年までの10年間でアフリカにおけるコメ生産の倍増(1,400万tを2,800万t)

を目標と掲げる「アフリカ稲作振興のための共同体( Coalition for African Rice

Development:CARD)」の立ち上げを2008年5月に開催された第4回アフリカ開発会議

(Tokyo International Conference on African Development:TICADⅣ)の場において発表し

た。CARDはコメ生産の倍増のために、各国政府やドナーが行っている稲作に関連した事

業の効果を最大化することを目的とし、①援助の調整・調和化、②追加的投資の呼びか

け、③情報共有を推進する枠組みであり事務局をナイロビに設置している。

CARD立ち上げの背景である需給ギャップの拡大要因のひとつに、サブサハラアフリカ

における稲作の土地生産性が1.78t/haであり、アジアの4.18t/haと比較しても著しく低いこ

とが挙げられる。土地生産性が低い理由は、①灌漑等の農業インフラの未整備、②適切

な栽培手法の開発がなされていない、③基礎的な技術の未普及等が挙げられる。特に②

については栽培手法の試験・研究を行う研究者、その作業を支援する研究助手の能力不

足が大きな課題となっている。また、③に関し圃場の均平化、条播といった基礎的な技

術についても、普及員の能力不足により農家に十分に活用されていない状況にある。

CARDの目標達成及びそのための土地生産性向上のためには、アフリカ各国において稲作を推

進するための核となり得る人材の育成が急務である。本協力は、稲作研究に関する国際的な権威

であるIRRI、これまで日本政府が協力を行ってきたPhilRiceを活用し、CARDが対象としている

サブサハラアフリカ23カ国の研究者、研究助手、普及員に対する研修を通じて人材育成を行うも

のである。

(2) 相手国政府国家政策上の位置づけ

本研修の対象はCARDが対象としているサブサハラアフリカの23カ国。これらの国は

CARD発足時及び運営の過程で、稲作の重要性や開発ポテンシャルに応じて選出されたも

のであり、CARD対象国となるにあたっては「稲委員会」等と呼ばれる公式な組織が設立

されている。また、23カ国すべてにおいて稲作を推進するための国家稲作開発戦略

(National Rice Development Strategy:NRDS)の作成がCARD事務局の技術的支援を受け

ながら稲委員会の下で進められている。研究・普及に関する人材育成は、NRDSにおける

共通のコンポーネントであり、23カ国すべてにおいて重要性が明確に位置づけられてい

る。

(3) わが国援助政策との関連、JICA国別事業実施計画上の位置づけ(プログラムにおける

位置づけ)

わが国は2008年5月に開催されたTICADⅣにおいてAGRAと共にCARDの立ち上げ・推

進を表明した。また、CARD事務局(在ナイロビ)に日本人専門家(企画調査員)を2名

派遣するなど、同イニシアティブを実質的に牽引している。また、CARD対象の23カ国は、

JICAとして稲作振興が適当と判断された国々であり、各国のJICA国別事業実施計画とも

整合している。

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4 協力の枠組み

〔主な項目〕

(1) 協力の目標(アウトカム)

<プロジェクト目標>

参加研修員の稲作研究、技術普及に関する能力が向上する。

<プロジェクト目標の指標>

・ 栽培手法、水管理手法、病害虫管理、収穫後処理について適切な研究計画が策定で

きる研究者向け研修参加者の割合XX%以上(IRRIによる評価)

・ 試験場内圃場において、適切な情報収集手法を選択・実施できる研究助手向け研修

参加者の割合XX%以上(IRRIによる評価)

・ 栽培手法、水管理手法、病害虫管理、収穫後処理について農家への指導ができるよ

うになる普及員向け研修参加者の割合XX%以上(IRRIによる評価)

・ 普及研修参加国で技術普及が実践される農家グループの数 2カ所以上

(2) 成果(アウトプット)

① 研修参加者が稲作研究に関する基礎知識を習得する。

② 研修参加者が稲作技術普及に関する基礎知識を習得する。

(3) 成果の指標

① 研究者・研究助手向け研修参加者のXX割が講義内容について適切な説明を行えるよ

うになる。

② 普及員向け研修参加者のXX割が講義内容について適切な説明を行えるようになる。

(4) 活 動

1-1 研修の詳細に関する研修に関する募集要項(General Information:GI)(カリキュラ

ムを含む)を作成する。

1-2 IRRI、JICAが協力して対象となる研修参加国の稲作状況調査を行う。

1-3 IRRI、JICAが協力して技術的な観点から応募書類の評価・選考を行う。

1-4 研究者・研究助手向けの研修教材を作成する。

1-5 IRRIにおいて研究に関する研修を行う。

1-6 研修参加国に調査団を派遣し研修効果測定に関する調査を行う。

1-7 上記調査団派遣にあわせて、帰国研修員に対する助言・指導を行う。

2 普及員向けの研修について、上記1-1~1-7のとおり実施する。

(5) 投入(インプット)

1) 日本側

研修実施に関する経費、研修指導に関する調査団派遣に関する経費、効果測定のた

めの調査実施に関する経費

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2) IRRI側

研究圃場、IRRIが有している稲作に関する研究情報

(6) 外部要因(満たされるべき外部条件)

<上位目標の外部条件>

① 帰国研修員が習得した技術を活用して活動ができる財政的支援を得られる。

② IRRIが研修手法に関する教訓、研修教材等を他機関と積極的に共有する。

5 評価5項目による評価結果

(1) 妥当性

以下の理由により妥当性は高いと見込まれる。

・ CARDはTICADⅣにおいて日本が立ち上げ・推進を発表した国際的なイニシアティブ

であり、2018年までにアフリカにおけるコメ生産量を2倍とすることを目標として掲

げている。本事業は、CARDが対象としている23カ国において、稲作振興の核となる

人材の育成を目標として行うものであり、CARDの目標達成の一環として位置づけら

れる。

・ 本事業の対象であり、かつ、CARDが対象としている23カ国は、稲作振興のポテンシャ

ル・重要性が高いことと各国政府のコミットメント(稲委員会の設立、NRDSの作成)

を前提に選定されている。政府として稲作振興の重要性を理解しており、人材育成

の必要性が強く認識されている国々といえる。

(2) 有効性

以下の理由により、有効性は高いと見込まれる。

・ プロジェクト目標である「研修員の能力向上」のため、「適切な候補者の選定(成

果1)」と「効果的な研修の実施(成果2、成果3)」を念頭に置くこととしている。

・ 適切な候補者の選定にあたっては、①稲作を推進するうえでの技術的な問題点、②

解決方法、③帰国後に活動を行ううえでの財政的資源の想定、についてのレポート

を応募書類として作成のうえ技術的な観点からIRRIが選定を行う。また、選定にあ

たっては各国の稲委員会からの了解を義務づける。これにより、技術的側面及び各

国での状況に応じた候補者の選定が可能となるとともに、政府としての関与を明確

にし、帰国後の活動が円滑に行える体制を整えることが可能となる。

・ 「効果的な研修の実施」にあたっては、講義を最小限とし、農家圃場における活動

を中心としており、実践的で、研修員が帰国後に容易に適用できる内容とする。ま

た、フィリピンで農家のための技術開発を担当しているPhilRiceの技術的な知見もあ

わせて活用することとしており、質の高い研修ができる。

・ また、稲作に関する深い知見を有するIRRIの研究者が各国に出張し、研修効果の測

定や研修実施後の指導を行うことを想定しており、研修内容の改善が期待できる。

・ IRRIは1960年に設立された国際的な稲作研究の権威であり、アジアでの稲作におけ

る緑の革命を推進した機関でもある。技術的な知見を有するIRRIを実施機関として

位置づけることにより効果的・効率的な研修の実施が期待できる。また、IRRIが有

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するアフリカ各国や国際機関とのネットワークを活用することで、本研修の知見が

CARDに参加する国際機関及び各国政府関係者と共有されることが期待できる。

(3) 効率性

以下の理由により、効率性は中程度と見込まれる。

・ これまで日本政府が支援してきたPhilRiceを活用し、そこで開発された圃場整備か

ら栽培、水管理、収穫後処理に至る稲作技術や普及のためのマニュアルを活用す

る。

・ また、IRRIの知見とともに、必要に応じてアフリカ・ライスセンターやアフリカ

農業研究フォーラム等のCARD運営委員会メンバーの国際的なネットワークと知

見を活用する。

・ 一方で、JICAとIRRIが協力を行う初めての取り組みであり、また、23カ国を対象

とするため、事業の効率的な実施のために事業の運営管理にあたっての投入が必

要となる。

(4) インパクト

正のインパクトが以下のとおり、見込まれる。

・ 上位目標のひとつである「研修員による継続的な活動と同僚への助言」にあたっ

ては、①各国政府の理解、②研修員による取り組み及びIRRIからの継続的な技術

的支援、が必要となる。①については研修員を選定する過程で稲委員会からの承

認を得ることで帰国後の活動が円滑に進むことが期待できる。②については、研

修員に対してIRRIが有する稲データベースへのインターネットを通じたアクセス

権を付与するとともに、電話や電子メール、TV会議システムを活用し継続的な技

術指導を行っていくことで、研修員自身の成長が期待でき、また、問題が生じた

際に同僚に対して最適な助言を行うことが可能となる。

・ もう一方の上位目標である「人材育成に関する他の国際機関や各国政府との連携

強化」については、年に一度開催されるCARD本会合や運営委員会等の場でJICA

とIRRIが連携して情報発信を行うことで、人材育成に関する課題や方法について

意識共有が可能となる。また、会合の場のみならず、各国際機関の事業において

研修から得られた教訓や研修教材が活用されることで、具体的な連携強化につな

がることが期待される。

・ これらについては、CARDイニシアティブの一環として、JICAとIRRIが協力し、継

続的なモニタリングを行うこととする。

(5) 自立発展性

以下の理由により、自立発展性は中程度と見込まれる。

・ 本事業はアフリカにおける稲作振興を目標とした国際的イニシアティブである

CARDの一環として位置づけられるものであり、各国政府や他ドナーの取り組みと

のリンケージが容易である。特に、候補者選定の過程で各国に設置されている稲

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委員会の承認を得ることで、NRDSに基づく活動のひとつとして明確に位置づける

ことが可能となる。

・ 各研修員は、応募の際に、財政的な見込みも含めた帰国後の活動計画の提出を求

められることから高い意識で研修に参加することとなる。また、必要に応じて、

研修員の帰国後の活動指導のためにIRRI研究者がアフリカ各国に出張し技術的な

助言を行うこととなる。

・ 一方で、研修参加者の帰国後の異動等により、効果発現が限定される可能性が考

えられる。

6 貧困・ジェンダー・環境等への配慮

・ 各国から複数名の研修員を選定することを想定していることから、選定の際には、ジェ

ンダー・バランスに留意する。

7 過去の類似案件からの教訓の活用

・ 2004年に実施された「農業・農村開発(普及:事例研究)フェーズ2」では、「普及対象

技術の選定にあたって、まず農民の現状、制約要因に十分に配慮し、そうした諸条件に

応じた技術を開発することが重要である」としており、本事業においてもアフリカの現

状に適した技術を選定することとする。また、同調査では、「分かりやすく実践的な研

修が高く評価される」としており、研修効果が適切に発現するように、実践的な内容を

中心としたカリキュラムを策定する。

8 今後の評価計画

以下の調査の実施を通じて、活動の達成度、計画の見直しを行う予定。

① 2013年前半 中間レビュー

② 2014年後半 終了時評価

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評価調査結果要約表

1 案件の概要

国名:フィリピン共和国 案件名:アフリカ稲作農業普及研修

分野:農林水産-農業 援助形態:第三国研修

所轄部署:

農村開発部畑作乾燥地帯課

協力金額(最終):2億6,400万円

協力期間 2011年5月~2015年3月

先方関係機関:国際稲研修所(IRRI)、フィリピン稲

研究所(PhilRice)

日本側協力機関:なし

他の関連協力:なし

1-1 協力の背景と概要

本事業は、2008年に日本政府とアフリカ緑の革命のための同盟(Alliance for Green Revolution

in Africa:AGRA)が中心となり立ち上げたイニシアティブ「アフリカ稲作振興のための共同体

(Coalition for African Rice Development:CARD)」を推進する協力の一環として、アフリカにお

いて稲作を推進するための核となる普及員、研究者、研究助手の人材育成を行う研修である。

質の高い研修を行うため、1960年にフィリピンに設置された稲作研究の国際的な権威であり、

CARDの運営委員会メンバーでもある国際稲研究所(International Rice Research Institute:IRRI)

を実施機関とし、普及に関する現場研修では、日本政府の1990年からの技術協力で十分な実力

を蓄えているフィリピン稲研究所(PhilRice)とも連携し、CARDが支援するサブサハラアフリ

カ23カ国の普及員、研究者、研究助手にフィリピンを現場とする第三国研修を行った。

1-2 協力内容

(1) 上位目標

1. フィリピンの研修を通じて習得した普及モデルや技術が、対象アフリカ諸国において

農民支援の活動に活用される。

2. 研修コースから習得した稲作栽培知識が各国内で活用される。

3. 「研究・普及の連携」をめざした稲生産のための、研修参加者・IRRI・JICA及びアフ

リカ諸国における稲作開発機関の間の人材開発ネットワークが構築される。

(2) プロジェクト目標

普及員、研究者、研究助手コースの研修参加者の稲作研究や技術普及に関する能力が向

上する。

(3) アウトプット

1. 研修参加者がPhilRiceで開催される普及員コースを修了する。(65名:英語圏13カ国×

5名)

2. 研修参加者が3週間の研究者コースを修了する。(46名:英・仏語圏23カ国×2名)

3. 研修参加者が3週間の研究助手コースを修了する。(46名:英・仏語圏23カ国×2名)

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(4) 投入(最終額)

日本側:総投入額 2億6,400万円(うち、IRRIへの支払額は、2億5,400万円)

IRRI及びPilRice:

・ プロジェクトは、IRRIとPhilRiceが形成する共同企業体(代表者はIRRI)に委託す

る形で実施され、IRRIから6名が主要実施メンバーとして配置された。

・ 普及員コースはIRRIとPhilRiceが共同で実施し、研究者コースと研究助手コースは

IRRIが実施した。

IRRI側負担:

・ IRRI総括者のアフリカへのインセプション訪問1回及びフォローアップ訪問1回分

の経費

・ アフリカ研修員5名(追加分)の参加費用(普及員コース及び研究助手コース1)

・ 2万4,000ドル(帰国後のアクションプラン実施支援のため、普及員コース研修員60

名に各400ドルを支給/本終了時評価の評価指標には含まれず)

2 評価調査団の概要

調査者

担 当 氏 名 所 属

総 括 鍋屋 史朗 JICA農村開発部 専任参事

評価分析 井関 ふみこ グローバルリンクマネージメント株式会社 研究員

- 小川 久美子 JICAフィリピン事務所 貧困削減班 人間の安全保障

グループ 企画調査員

- Judie Ann

G. Militar

JICAフィリピン事務所 貧困削減班 人間の安全保障

グループ シニアプログラムオフィサー

調査期間 2014年8月3日〜2014年8月15日 評価種類:終了時評価

3 評価結果の概要

3-1 実績の確認

(1) アウトプットの達成状況

アウトプット1:研修参加者がPhilRiceで開催される普及員コースを修了する。

ジェンダーバランスを除き、アウトプット1はほぼ達成している。アフリカ14カ国から

参加者数目標値の97%に相当する63名が普及員コースを修了した。参加国は、CARDメン

バーのうち、主に英語圏13カ国とした。また、IRRIの独自予算でIRRIブルンジ共和国(以

下、「ブルンジ」と記す)職員2名が参加し、ブルンジが加わったことにより、参加国数

は目標値13を超える14カ国を達成した。ジェンダーバランスについては、3年間の総平均

は32%であった2。

アウトプット2:研修参加者が3週間の研究者コースを修了する。

ジェンダーバランスを除き、アウトプット2はおおむね達成している。参加者数目標値

1 普及員コース ブルンジ2名;研究助手コース ケニア共和国(以下、「ケニア」と記す)2名、タンザニア連合共和国(以

下、「タンザニア」と記す)1名 2 女性参加割合の増減には、①各年GIの記載方法、②インセプション訪問時の説明方法、③送り元各国政府のジェンダー意識、

④IRRI/JICAによる選考時の配慮等、複数の要因が考えられるが、アフリカにおける女性研究者・普及員の不足が大きく影

響していると思われる。

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の83%に相当する38名のアフリカ研修員が研究者コースを修了した。普及員コースは主に

英語圏を対象としたが、3年次の研究者コースは仏語圏向けとされ、対象が23カ国となっ

た。参加国数は、諸事情により参加できなかったマダガスカル共和国、マリ共和国、中央

アフリカ共和国(以下、「マダガスカル」「マリ」「中央アフリカ」と記す)を除く20カ国とな

り、目標値の87%に達した。ジェンダーバランスについては、3年間の総平均は29%であっ

た。

アウトプット3:研修参加者が3週間の研究助手コースを修了する。

プロジェクト終了までに、アウトプット3はおおむね達成される見込みである。参加者

数目標値の89%に相当する41名のアフリカ人研修員が研修助手コースを修了する見込み

である。研究者コース同様、3年次は仏語圏が対象とされた。参加国数は、諸事情により

参加できなかった2国(マダガスカル、中央アフリカ)を除いた21カ国となり、目標値の

91%であった。ジェンダーバランスについては、3年間の総平均は32%であった。

(2) プロジェクト目標の達成状況

プロジェクト目標: 普及員、研究者、研究助手コースの研修参加者の稲作研究や技術普

及に関する能力が向上する。

IRRIの研修修了の定義に基づき、プロジェクト終了までに、プロジェクト目標はおおむ

ね達成される見込みである。IRRIによる「普及員、研究者、研究助手コースの研修参加者

の稲作研究や技術普及に関する能力」の定義は、「研修参加者が、稲作栽培や研究につい

て習得した知識や技術を現地状況に適合させながら、自信をもって説明し、活用すること

ができる」というものである。IRRIは、本プロジェクトにおいて、研修員が新たな知識や

技術に触れる機会を最大化することを焦点としており、どのレベルまで各研修員の能力向

上をめざすか、特定の基準は設定していない。

終了時評価調査時点までに、3分野の研修コース(普及員、研究者、研究助手)がおの

おの3回実施され、総計155名(アフリカ諸国から142名、フィリピンから13名3)が研修を

修了した。各コース別の参加者数は、普及員コース76名(アフリカ諸国から63名、フィリ

ピンから13名)、研究者コースにはアフリカ諸国から38名、研究助手コースはアフリカ諸

国から41名であった。

普及員コースにおいて、理論の学習は農民学校(Farmers Field School:FFS)を行うこ

とで実践に移された。研究者と研究助手コースにおいても、IRRIが研修参加者の関心事項

にできるだけ対応するよう心がけ、IRRIの研究者とつないで、理論と実践のバランスを保

つよう尽力した。

他方、研修終了までに研修参加者の知識・技術レベルをどのようにモニタリングするか

に関し、JICA-IRRI-PhilRiceの共通認識が十分でなかった。評価フレームワークの指標設

定に加え、報告フォーマットを明確にし、IRRIからのプログレスレポートに進捗の記載を

求める等の工夫が必要であった。

3 第1年次はフィリピン政府がフィリピンからの5名、第2年次及び第3年次はJICAがフィリピンからの8名の予算を負担した。

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3-2 評価結果の要約

(1) 妥当性

本プロジェクトは、CARDメンバーであるアフリカ諸国の政策とニーズ、日本の援助政

策との整合性を確保していることから、妥当性が高い。

1) CARDメンバーであるアフリカ諸国のニーズと政策との合致

サブサハラアフリカにおいては、コメの需要が急速に増加している一方、域内の供給

がニーズを満たしていない。需要と供給の拡大要因のひとつには、サブサハラアフリカ

の土地生産性がアジアに比べて著しく低いことが挙げられる。土地生産性が低い理由に

は、①灌漑等の農業インフラの未整備、②適切な栽培手法の開発がなされていない、③

基礎的な技術の未普及等が挙げられる。そのため、中核となる研究者、研究助手、普及

員の人材育成が急務である。

CARDメンバーである23カ国は、2018年までにコメ生産の倍増を目標に掲げている。

各国政府は、国家稲作開発戦略(National Rice Development Strategy:NRDS)を作成し、

人材開発を重要なコンポーネントに位置づけている。

2) 日本政府の政策及び日本の優位性

日本政府の援助政策は、弱者をターゲットとした「人間の安全保障」を重視しており、

本プロジェクトはこれと整合性がある。農業も、日本の対アフリカ援助政策の優先分野

として位置づけられている。日本政府は、2008年のTICAD IV において、AGRAと協力

し、2018年までの10年間でアフリカにおけるコメ生産の倍増(1,400万tを2,800万t)を

目標と掲げる「アフリカ稲作振興のための共同体(CARD)」の立ち上げを表明した。

3) 対象国の選定

プロジェクトはCARDメンバーである23カ国を対象とした。18週間の普及員コースに

関しては、フィリピン農家との実習言語が英語であることから、英語圏を中心とした13

カ国が優先された。他方、3週間の研究者と研究助手コースは、3年次が仏語圏とされ、

23カ国が対象とされた。

4) 協力手段としての適切性

JICAの農業農村開発分野の協力にとり本プロジェクトは、国際機関及びアジアでの

嘗ての協力相手を連携実施機関としてアフリカ支援する新機軸の事業であった。IRRI

は、国際農業研究協議グループ( Consultative Group on International Agricultural

Research:CGIAR)の機関であり、世界的な稲作研究推進プログラムである稲の科学の

ためのグローバル・パートナーシップ(Global Rice Science Partnership:GRiSP)を率いる

リーダーである。CARDメンバーでもあり、アフリカ・ライス・センターと連携してア

フリカ研究者との協力も進めている。PhilRiceは、1990年から日本政府の技術協力を受

けた実力ある機関である。JICAがPhilRiceの参画を求めた目的は、アジア-アフリカ間の

南南協力の促進であった。

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(2) 有効性

アウトプットはおおむね達成されたか、プロジェクト終了までに達成見込であり、プロ

ジェクト目標の発現に寄与した。

(3) 効率性

効率性は、中程度と考えられる。研究助手コース実施時期の延期、及び2年次普及員コー

スに必要な研修資材が一部購入されなかったことを除き、投入はおおむねアウトプットの

発現に対し、適切に活用されている。

1) 効率性を向上した要因

① 過去の日本政府による技術協力(対PhilRice)との連携

② アフリカにおけるJICAやIRRIのネットワーク

③ 普及員コースにフィリピンからの研修員を含めたこと

④ フィリピン農民の英語力

2) 効率性の制約となった要因

① 3機関で異なる会計規約/会計システム

② 契約締結の遅れに伴うPhilRiceへの活動資金配布の遅延

③ PhilRiceにおける要員配置

④ IRRIのモニタリング・評価(Monitoring and Evaluation:M&E)担当メンバーの変更

(4) インパクト

終了時評価時点において、上位目標は、部分的に達成されている。その他の正のインパ

クトも発現している。帰国研修員の活動による上位目標達成をめざして、元研修員に対す

る各国政府や所属機関の理解と支援が得られるよう、IRRI及びJICA現地事務所による継

続した働きかけが望まれる。

1) 上位目標1: フィリピンの研修を通じて習得した普及モデルや技術が、対象アフリカ

諸国において農民支援の活動に活用される。

終了時評価時点において、上位目標1は、部分的に達成されている。フォローアップ

調査質問票の回答やフォローアップ訪問の結果によると、約半数程度の帰国研修員が、

IRRIとPhilRiceで習得した普及モデルや技術を活発に活用している。3コースの帰国研修

員、特に4カ月の研修を受講した普及員は、多くの国で稲専門家と認知され、帰国研修

員が配置されている地域におけるFFSやデモンストレーションの実施を通して、変化が

みられていると報告されている。

ウガンダ、タンザニア、ザンビア共和国、エチオピア連邦民主共和国(以下、「ザン

ビア」「エチオピア」と記す)などの一部の研修員は、JICAプロジェクトや日本のNGO

と連携関係を構築している。また、稲栽培に熱心なウガンダ政府は、FFSの活用を主要

な普及手法として薦めている。これは、JICAによるウガンダコメ振興プロジェクト

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(Promotion of Development Project:PRiDe)と本プロジェクトの双方の相乗効果と推定

される。

フォローアップ訪問中、多くの国々が、帰国研修員を中核トレーナーとして活用する

「国内指導者養成研修(Training of Trainers:ToT)の展開に関心を表明しており、IRRI、

PhilRice及びJICAからの支援を求めていた。

2) 上位目標2:研修コースから習得した稲作栽培知識が各国の国内で活用される。

終了時評価時点において、上位目標2は部分的に達成されている。指標2-1については、

フォローアップ調査質問票が必ずしも全国あるいは国家レベルについて直接問うもの

ではないものの、75 %の普及員及び53%の研究者が教育資料を配布している。ただし、

稲作栽培知識の文書化データは入手されていない。指標2-2については、フォローアッ

プ調査質問票が必ずしも国家計画レベルについて回答されているか明確でないものの、

14カ国中9カ国(64%)において、国家稲作開発プログラム計画に寄与する、少なくと

も1事例を導入したと回答している。

稲情報データバンク(Rice Knowledge Bank:RKB)については、数カ国がIRRIにそ

の開発を要請している。ルワンダ共和国(以下、「ルワンダ」と記す)とブルンジにお

いては、2012年5月のフォローアップ訪問時の終盤に、IRRIチームが各国でRKB啓発ワー

クショップを開催し、各国の農業省からの指示を得ることに成功している。

3) 上位目標3: 「研究-普及連携」をめざした稲生産のための、研修参加者・IRRI・JICA

及びアフリカ諸国における稲開発機関間の人材開発ネットワークが構築

される。

終了時評価時点において、上位目標3は部分的に達成されている。普及員研修員間の

ネットワークは、フェイスブック等を通じて構築され、情報交換が活発になされている

が、研究者や研究助手コースでは同様の報告はない。研究者-普及員の連携、及び他の

関連機関や国際機関とのネットワーキングは、十分ではなかった。

他方、「研究者-普及員の連携」のための努力は一部なされた。当初フォローアップ訪

問は普及員コースだけを対象としていたが、プロジェクトの途中から3コース全研修員

を訪問時に招集するようになった。これは、3コースの研修員が交流する機会提供にも

つながった4。在アフリカJICA現地事務所や専門家との連携は、上位目標1で前述のよう

に、いくつかの好事例がある。

4) その他の正のインパクト

① 南南協力を通じたPhilRiceの能力向上

② 帰国研修員の国家表彰及び上層部からの認知

③ フィリピン農家及び研修員との国際文化交流

4 仏語圏については、普及員コースが開催されていないため、3コースの研修員による「研究者-普及員の連携」は実現されて

いない。

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(5) 持続性5

政策面の持続性は高い。CARDメンバーは、各国で作成したNRDSに基づいて稲作栽培

の増加に尽力しており、フォローアップ訪問時に、多くの政府が、本プロジェクトは時機

を得たものであると回答している。

技術面では、大半の研修員が、受講前と比較して倍以上の技術や知識を習得し、稲作栽

培において自信をもって業務を遂行することができるようになった。しかし、研修員は更

に能力向上の余地があり、特に習得した技術を自国の現状に適応させ、個人の能力から地

域や組織的能力へのアップグレードに寄与することが期待されている。その際に助けのひ

とつとなるのが訓練マニュアルであり、プロジェクト終了までにその最終化が待たれる。

また、各国政府や所属機関による支援が、アクションプラン実施の促進要因である。既に、

帰国研修員が習得したモデルや技術が十分に普及・活用され、組織レベルのインパクトを

発現しているケースもあり、これらの好事例が研修員間の交流を通じて、他国に普及され

ることが期待される。

3-3 効果発現に貢献した要因

(1) 計画内容に関すること

① 日本が支援してきたPhilRiceとの技術協力(長年の研修実施経験に基づく細かい工夫

や、FFSによる理論の実践化)

② アフリカにおけるJICAやIRRIネットワークの活用

(2) 実施プロセスに関すること

① フィリピン人ファシリテーターの強固なコミットメント及びホスピタリティー

② PhilRiceのTICAD IV及びCARD会合への参加

3-4 問題点及び問題を惹起した要因

(1) 計画内容に関すること

研修参加者の知識・技術レベルをどのようにモニタリングするか、JICA-IRRI-PhilRice

間の共通認識が十分でなかったこと

(2) 実施プロセスに関すること

① 各国研修員にとり短い応募締切までの期間設定

② 各国政府による研修員の帰国後の活用計画や位置づけが十分でなかったこと

3-5 結 論

全般的に、本プロジェクトは、計画数に近い研修員育成に成功している。JICAの農業農村開

発分野にとり新機軸となる、国際機関(IRRI)及び嘗ての技術協力相手機関と3者連携したアフ

リカ支援事業であった。プロジェクトはPhilRiceに南南協力を開始する機会を提供し、PhilRice

の専門性と自信を一層高めた。国際機関(IRRI)との連携による南南協力の試みを通じ、さま

5 本プロジェクトは、IRRI-PhilRiceへの委託という側面があるため、IRRIやPhilRiceの組織的側面及び財政的側面の持続性につ

いては言及しない。

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ざまな教訓が得られた。

妥当性に関しては、CARDメンバーであるアフリカ諸国及び日本政府の政策に合致しており、

各研修員の個人能力向上というプロジェクト目標はある程度達成する見込みである。効率性は

中程度である。さまざまな正のインパクトも発現しているが、帰国研修員が更に活用され、上

位目標が達成されることが期待される。持続性は、技術面強化のために訓練マニュアルの完成

が待たれている。

3-6 提 言

<IRRIに対して>

1. 訓練マニュアルの完成と研修員への配布

2. フォローアップ調査票を取りまとめた報告書の作成

3. 研修員名簿の配布

4. 研修員に対する習得した知識の積極的活用の継続的な奨励

<JICAに対して>

5. 各国研修員と関係機関(NRDSタスクフォース、JICAプロジェクト/専門家等)の連携促

3-7 教 訓

1. 関係機関間でのプロジェクト目標の共通認識及びモニタリング体制の事前構築の重要性

2. 会計手続きを含めた全体スケジュール設定(プロジェクト開始時期を考慮した契約締結)

3. 研修員の適切な選定プロセス(特に受益国からの推薦取得)

4. 研修員による、アクションプラン実施のための予算確保を念頭においた事前準備

5. 研究と普及の連携をめざした3コースの同時期実施

6. フォローアップ訪問時の有効活用

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評価調査結果要約表(英文)

1. Outline of the Project

Country: The Republic of the Philippines

Project title: Season-Long Rice Farming Extension Training

Sector: Agriculture/Agriculture and Fisheries

Cooperation scheme:The Third Country Training Program

Division in charge: Arid and Semi-Arid Farming Area Division, Rural Development Department

Total cost (final figure): 264 million Japanese Yen

Period of cooperation

2011.5~2015.3

Implementing agency: IRRI (International Rice Research Institute) with PhilRice (Philippine Rice Research Institute)

Supporting organization in Japan: N.A.

Other related cooperation: CARD (see below)

1-1. Background of the Project

The Project is the capacity development of extension officers, junior researchers and research technicians,

who are the core promoters of rice production in Africa; it also is a part of the Coalition for African Rice

Development (CARD) initiatives launched in 2008 by the commitment of JICA and the Alliance for Green

Revolution in Africa (AGRA). JICA entrusted implementation of the training to IRRI, the worldwide

authority of rice research located in the Philippines and a member of the CARD Steering Committee. As for

implementation of the extension officer course, IRRI collaborated with PhilRice, a long-term development

partner of JICA since 1990 and has the capacity for a season-long training. The Project aimed to build the

capacity of extension officers, junior researchers and research technicians in the 23 CARD partner countries

through JICA’s third country training scheme.

1-2. Project Overview

(1) Overall Goal

1. The model of extension and the techniques learnt in the Philippines are being utilized in farmer

support activities in the target African countries.

2. Production knowledge from the courses is available nationally in each country.

3. Networks on the human resource development on rice production, aiming at bridging

research-extension, have been created among participants as well as among IRRI, JICA and Africa based

rice development agencies.

(2) Project Purpose

Capacity of extension officer, young researcher and research technician participants to develop and extend

rice production is improved.

(3) Outputs

1. Participants successfully complete the season-long extension training course (SLRT) at PhilRice.

2. Participants successfully complete the 3-week young researcher course.

3. Participants successfully complete the 3-week researcher technician course.

(4) Inputs (final figures)

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Japanese side:

The total amount of financial inputs was 264 million yen; out of which 254 million yen was the cost paid

to IRRI.

IRRI and PhilRice:

The Project was implemented by IRRI, where a total of six persons were assigned as main Project

implementers. The training courses for young researchers and research technician were separately conducted

by IRRI, and SLRT for extension agronomists was planned and implemented by IRRI and PhilRice.

Cost covered by IRRI:

All costs were covered by the Japanese side except for the followings:

- The traveling costs of the IRRI Project leader for one inception visit and one follow-up visit both to

Africa

- The costs of five African trainees for the SLRT and the technician course1

- A total of US$ 24,000 to provide $400 each to 60 extension officer ex-trainees for the implementation

of their action plans.

2. Evaluation Team

JICA team

members

Mr. Shiro NABEYA Senior Assistant Director, Rural Development Department, JICA (Leader)

Ms. Fumiko Iseki Researcher, Global Link Management (Evaluation Analysis)

Ms. Kumiko OGAWA

Project Formulation Advisor, Poverty Reduction Section

Human Security Group, JICA Philippines Office Ms. Judie Ann G. Militar

Senior Program Officer Human Security Group, JICA Philippines Office

Timing of evaluation Aug. 3 ~ Aug. 15, 2014 Type of evaluation:Terminal evaluation

3. Result of Evaluation

3-1. Project Performance

(1) Outputs

Output-1: Participants successfully complete the season-long extension training course at PhilRice.

The Output 1 was mostly achieved except for the gender balance. 63 Africans from 14 countries

participated in SLRT, which is equivalent to 97% of the target number. As for the countries, JICA’s target

was 13 mainly Anglophone CARD countries. On top of that, two trainees from IRRI Burundi participated

with IRRI funding. With the addition of Burundi, the number of countries became 14, exceeding the targeted.

As for the gender balance, the overall average over the three years was 32%2.

Output-2: Participants successfully complete the 3-week young researcher course.

The Output 2 was mostly achieved except for the gender balance. 38 African trainees participated in the

young researcher course, equivalent to 83% of the target number. While SLRT was mainly for Anglophone

countries, as the young researcher course in 2013 was catered for Francophone countries, the total number of

1 Two from Burundi in the SLRT, two from Kenyan and one from Tanzanian in the technician course. 2 The factors which could affect the gender balance are : 1) the indication in GI (general information) in respective year, 2) the

explanation at the time of inception visits, 3) the awareness of respective government which dispatch trainees and 4) the selection by

IRRI/JICA etc. However it is assumed that the shortage of women extension workers and researchers are the largest factor.

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countries that participated in the course during the entire Project period is 20, out of all the 23 eligible

countries, equivalents to 87% of the target (23). Three countries (i.e. Madagascar, Mali and Central Africa),

however, could not participate due to security uncertainties. Regarding the gender balance, the overall

average over the three years was 29%.

Output-3: Participants successfully complete the 3-week, researcher technician course.

By the end of the Project, Output 3 is expected to be mostly achieved except for the gender balance. A

total of 41 African trainees are expected to complete the research technician course, equivalent to 89% of

the target. Likewise the young researcher course, the 3rd batch was catered for Francophone countries, and

the total number of countries participated is 21 out of 23, equivalents to 91% of the targeted. Two countries

(i.e. Madagascar and Central Africa) could not participate due to security uncertainties. Regarding the

gender balance, the overall average over the three years was 32%.

(2) Project Purpose

Capacity of extension officer, young researcher and research technician participants to develop and extend

rice production is improved.

Project purpose is most likely expected to be achieved by the end of the Project, based on the definition

taken by IRRI where the capacity of extension officer, young researcher and technician is defined as being

able to confidently explain and apply acquired knowledge and skills in rice production and research by

localizing them to their own situations. The Project did not set specific standards as to the minimum level of

competency trainees should develop. But rather the emphasis was on maximizing trainees’ exposure to new

knowledge and skills.

By the time of Terminal Evaluation, each of three courses (for extension officers, young researchers and

research technicians) were conducted three times, and a total of 155 (142 Africans and 13 Filipinos3)

participants were trained. The number of participants by course was 76 (63 African and 13 Filipino) for

SLRT, 38 Africans for young researcher course, and 41 Africans for research technician course.

In SLRT, the theoretical learning was put into practice by test-conducting FFS (Farmers Field School). In

young researcher and research technician courses, IRRI made efforts to adequately balance theory and

practice, accommodating participant’s interests by linking them up with IRRI researchers.

However, it was found that no common understanding had been formed among JICA, IRRI and PhilRice

on how to monitor the development of trainees’ skills in the course. The Project, at the onset, should have

developed a common understanding on definition of the Project Goal, indicators for Evaluation Framework

and the monitoring format for regular reporting in the Progress Report.

3 In the 1st year, the Government of Philippine funded 5 extension workers. In the 2nd and 3rd year, JICA funded 8 Filipinos participants.

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3-2. Summary of Evaluation Results

(1) Relevance

Relevance of the Project is high in terms of the policies and the needs of the Governments of

CARD-member African countries and Japan (GoJ), while there were certain limitations in the strategy of the

Project.

The needs and policies of CARD-member African countries.

In sub-Saharan Africa, while the demand for rice has been rapidly growing, regional supply has not met

the needs. A reason of increasing demand-supply gap is lower yields in sub-Saharan Africa than in Asia. The

underlying causes are considered to be: a) insufficient agricultural infrastructure such as irrigation, b)

underdevelopment of appropriate production methods, and c) non-dissemination of basic technologies.

Therefore, there is an urgent need in the capacity development of researchers, research technicians and

extension workers.

The 23 CARD member countries aim at doubling rice production by 2018. Each government is committed

to formulate National Rice Development Strategies (NRDS), in which the human resource development is

regarded as an important component.

The policy of GoJ.

The Project is relevant to Japan’s ODA policy that emphasizes “human security” and targets vulnerable

populations. Agriculture is a priority area of Japan’s development assistance policy for Africa. At TICAD IV

in 2008, GoJ announced launching of the CARD initiatives with AGRA, aiming at increasing rice production

in sub-Saharan Africa to 28 million MT by 2018.

Selection of target counties.

The Project selected all 23 CARD member countries as target. As for SLRT, 13 mainly Anglophone countries

are prioritized, as this course requires direct and close interaction of participants with Filipino farmers. The

shorter 3-week training courses for the young researcher and research technician target all 23 countries, by

allocating the third year for Francophone countries.

Appropriateness of Project design.

IRRI is the lead implementing agency of the Project and on-farm activities of SLRT are taken care of by

PhilRice which JICA has long assisted. As IRRI, a CGIAR center, is the leading institution of GRiSP (Global

Rice Science Partnership), partnering with Africa Rice Center, its comparative advantage is without question.

While the Project is a new experience for JICA to partner with a CG center and a national research institute

at once, the existing relationships between JICA and PhilRice, and IRRI and PhilRice are clearly an

advantage; the design of the Project is also considered appropriate.

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(2) Effectiveness

Most expected Outputs have been achieved or will be achieved by the end of the Project, where each

Output is contributing to the materialization of the Project Purpose. Accordingly, based on IRRI’s definition,

the Project Purpose will be achieved to a significant extent by the end of the Project period.

(3) Efficiency

The efficiency of the Project was moderate. Major portion of inputs were properly utilized to produce the

Outputs, except for delay in the procurement of some training materials for SLTP in the second year.

The factors improved the efficiency:

・ Synergy with the past assistance of JICA

・ Network of JICA and IRRI in Africa

・ Inclusion of Filipino participants in SLRT

・ English proficiency of Filipino farmers

Constraints on the efficiency:

・ Different financial systems among three institutions (JICA, IRRI and PhilRice)

・ Delay in transfer of operational funds to PhilRice due to delay in the processing of contracts

・ The assignment of tasks at PhilRice (concentration on limited number of staff)

・ Change of IRRI member in charge of M&E

(4) Impact

At the time of Terminal Evaluation (TE), the Overall Goals were partially achieved together with other

positive impacts. To achieve the Overall Goals by utilizing ex-trainees, IRRI and JICA country offices are

expected to encourage partner governments to actively engage ex-trainees in their work.

Overall Goal 1: The model of extension and the techniques learnt in the Philippines are being utilized in

farmer support activities in the target African countries.

The Overall Goal 1 is partially achieved at the time of TE. Based on the response to follow-up survey

questionnaires and IRRI’s reports on follow-up visits in Africa, about half of trainees are actively utilizing

the model of extension and the techniques learned at IRRI and PhilRice. Upon return, trainees of three

courses, especially those who underwent the 4-month SLRT, are regarded as rice expert in many countries.

Changes, attributable to FFS and demonstration, are reported in the areas where ex-trainees are assigned.

Ex-trainees in Uganda, Tanzania, Zambia and Ethiopia are reported to have developed linkages with

projects supported by JICA or a Japanese NGO. In addition, FFS is being promoted as a lead extension

method by the Ugandan government which is committed to rice development; this is considered a combined

effect of the ex-trainee’s initiative and a project supported by JICA (“PRIDE” Project).

During the follow-up visits, many governments showed interests in rolling out TOT by in-country training

engaging ex-trainees as core trainers and requested for assistance of IRRI, PhilRice and JICA.

Overall Goal 2: Production knowledge from the courses is available nationally in each country.

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The Overall Goal 2 was partially achieved at the time of TE, although the extent of nationwide coverage is

not known. Regarding indicator 3-1, while the response of the follow-up survey questionnaire does not

directly address the documentation of the nationwide and/or to the national level, 75 % of extension workers

and 53% of young scientists distributed educational materials. As to indicator 3-2, while the question was not

specifically for national level planning, a few ex-trainees responded in suggestion of contribution at the

national level: 1) Insect Pest Control Strategies in Burkina Faso, 2) the Rice Hub Strategy in Gambia and 3)

NRDS and the Implementation Framework in Kenya.

Regarding RKB (Rice Knowledge Bank), some countries requested IRRI for its development. As for

Rwanda and Burundi, IRRI team, at the end of the follow-up visit in May 2012, conducted the RKB

development workshop in each country and succeeded in gaining support from the relevant Ministries.

Overall Goal 3: Networks on the human resource development on rice production, aiming at bridging

research-extension, have been created among participants as well as among IRRI, JICA and African based

rice development agencies.

The Overall Goal 3 is partially achieved at the time of TE. Network within SLRT graduates was

established through Facebook and information actively exchanged. However, the same was not reported for

young researcher and research technician courses. The bridging research and extension, and the networking

with other relevant agencies and international organization were not sufficiently made.

Some efforts were being made to bridge research and extension. Although follow-up visits to Africa were

originally planned only for SLRT, the Project later changed the approach and called all ex-trainees of three

courses to the meeting. This provided an occasion for all ex-trainees to interact and link up4. As to the

networking with JICA’s country offices and experts, some positive cases were found as mentioned under

Overall Goal 1.

Other positive effects produced by the Project are as follows:

・ Promotion of South-South cooperation and strengthening of PhilRice’s capacity therein.

・ National award/recognitions of the work by ex-trainees.

・ Opportunity for international cultural exchange for Filipino farmers and Filipino participants.

(5) Sustainability

As regards the policy environment, the sustainability is high. During follow-up visits, a majority of the

governments indicated that the Project came at the right timing, when each CARD member country had

started efforts to increase rice production as a country priority based on their newly developed NRDS.

In terms of technical aspects, a majority of ex-trainees more than doubled the skills and knowledge, and

become confident in pursuing their tasks in the field of rice. Nevertheless, there are still rooms for

ex-trainees to develop their capacity, especially in localizing acquired skills and to upgrade the capacity from

individual to the institutional level. One of the assisting tools for this will be the training manual, whose

4 As for the Francophone countries, the SLRT was not provided; therefore, the realization of bridging gap between extension-research

among three courses was not yet in place.

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completion is awaited. Furthermore, the assistance of respective governments and/or institutions where

ex-trainees belong holds key to the implementation of action plans. There are cases in some countries where

the ex-trainees were tapped into disseminating the model at the institutional level. It is expected that these

good practices will be disseminated to other countries through ex-trainees’ networks.

3-3. Factors promoting realization of effects

(1) Factors concerning planning

・ Participation of PhilRice which JICA has long assisted (it has rich experience in providing training

including those bringing theories into practice by FFS).

・ Networks of JICA and IRRI in Africa.

(1) Factors concerning implementation processes

・ Strong commitment and good hospitality of Filipino facilitators.

・ Participation of PhilRice in TICAD-IV and CARD meetings to know African partners.

3-4. Factors inhibiting realization of effects

(1) Factors concerning planning

・ Lack of common understanding among JICA, IRRI and PhilRice on M&E indicators.

(2) Factors concerning implementation processes

・ Insufficient time for potential candidates to prepare for application.

・ Weak dialog with partner governments in defining how best they would utilize ex-trainees upon

return.

3-5. Conclusions

Overall the Project has been successful in training close-to planned number of participants. It was also the

first time for JICA’s rural development sector to fully partner with both an international agricultural research

organization (IRRI) and a national research institution (PhilRice) at once and support African agricultural

research and extension systems, through which various lessons were learnt.

As regards the relevance, the policy-based needs of CARD member countries and GoJ have been

adequately addressed. The Project Purpose of developing the capacity at individual level is considered

attainable to a satisfactory level before the Project’s close. Efficiency is considered moderate. As to the

impacts, it is noteworthy that the Project produced various positive impacts, while the capacity the

ex-trainees gained should be better utilized to achieve the Overall Goals. In terms of sustainability, a minor

concern remains on the technical aspect in terms of delay in the printing and distribution of the training

materials used during training courses.

4. Recommendations and Lessons learned

4-1. Recommendations

To IRRI

1. Complete training manuals and distribute them to participants/ex-participants.

2. Compile the report on follow-up survey questionnaires.

3. Share participants’ contacts with relevant stakeholders in each country.

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4. Continuously provide consultation to each participant and encourage application of acquired

capacities.

To JICA

5. Support ex-participants to link up with relevant stakeholders in each country (including other

ex-participants, NRDS taskforce members, project experts and other rice experts).

4-2. Lessons Learned

1. M&E indicators should be agreed upon by relevant stakeholders at an early stage of the project.

2. In scheduling project activities, the time for financial procedures should not be overlooked.

3. Weak dialogue with partner governments at selection stage causes under-utilization of gained

capacities of ex-participants.

4. Prospective participants should know, prior to the training, how they can apply for funding to

realize their action plans.

5. Overlapping the timing of 3 training courses would be an option to enhance linkages between

research and extension.

6. A carefully planned follow-up visit would be a useful opportunity to generate positive effects.

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第1章 終了時評価調査の概要

1-1 調査団派遣の経緯

サブサハラアフリカでは近年コメ需要が急速に増加している一方、域内の供給が十分増加して

おらず、需給ギャップは拡大している(米国農務省)。このようななかで日本政府は他ドナーと協

力し、2018年までの10年でアフリカにおけるコメ生産の倍増(1,400万tを2,800万t)を目標に掲げ

る「アフリカ稲作振興のための共同体(Coalition for African Rice Development:CARD)」の立ち上

げを2008年5月に開催された第4回アフリカ開発会議(TICAD IV)の場で発表した。CARDはコメ

生産倍増のために、各国政府やドナーが行う稲作関連事業の効果を最大化することを目的とし、

①援助の調整・調和化、②追加的投資の呼びかけ、③情報の共有を推進する枠組みであり、事務

局をナイロビに置いている。

CARD立ち上げの背景である需給ギャップ拡大の要因のひとつに、サブサハラアフリカにおけ

る稲作の土地生産性が1.78t/haとアジアの4.18t/haに比較して著しく低いことがある。土地生産性

が低い理由は、①灌漑等の農業インフラの未整備、②適切な栽培手法が未開発、③基礎的な技術

の未普及等が挙げられる。特に②については、栽培手法の試験・研究を行う研究者、その作業を

支援する研究助手の不足が大きな課題である。また、③に関して、普及員の能力不足等により、

技術が農家によって十分活用されていない状況である。

本協力は、アフリカ各国で稲作振興の核となる人材の育成を目的とし、稲作研究の国際的権威

である国際稲研究所(International Rice Research Institute:IRRI)、日本政府が長年技術協力してき

たフィリピン稲研究所(通称PhilRice)と連携し、CARDが対象とするサブサハラアフリカ23カ国

の研究者、研究助手、普及員への研修を行うもの(第三国研修)である。日本政府とIRRIによる

口上書の交換(2010年7月)に引き続きJICA とIRRI(PhilRiceは立会人)が事業実施にかかる討議

議事録(Record of Discussions:R/D)に署名(2011年5月)のうえ、3者連携でのアフリカ支援を

開始した。

今回実施した終了時評価調査は、2015年3月のプロジェクト終了を控え、プロジェクト活動の

実績、成果を評価・確認するとともに、今後のプロジェクト活動に対する提言及び今後の類似事

業の実施にあたっての教訓を導くことを目的とした。

1-2 調査団の目的

本調査は調査時点までの実績、研修目標とアウトプットの達成度を確認し、さらに評価5項目

の観点から研修の評価を行うとともに、プロジェクト終了前後のプロジェクト活動に関する提言

と後継案件のための教訓を得ることを目的とした。なお、本事業スキームは第三国研修であるが、

本報告書の中では特別な理由のない限り、「プロジェクト」と記載している。

1-3 調査団の構成

終了時評価調査は、IRRIとの協力により実施された。調査団がインタビューを実施した関係者

については、付属資料:合同評価報告書Annex 1を参照されたい。

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(1) IRRI側

氏 名 所 属

Eugenio Castro Jr. 研修センター シニア研究マネジャー/農業エンジニア

Zenaida Huelgas 社会科学部門 準研究員

Madel Pua 研修センター オフィサー/研修コーディネーター

(2) 日本側

担 当 氏 名 所 属

総 括 鍋屋 史朗 JICA農村開発部 専任参事

評価分析 井関 ふみこ グローバルリンクマネージメント株式会社 研究員

- 小川 久美子 JICAフィリピン事務所 貧困削減班 人間の安全保障グループ 企画調査員

- Judie Ann G. Militar JICAフィリピン事務所 貧困削減班 人間の安全保障グループ シニアプログラムオフィサー

1-4 調査日程

2014年8月3日~8月15日(日程詳細は付属資料:合同評価報告書Annex 2を参照のこと)

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第2章 終了時評価の方法

2-1 評価の手順

本評価調査は、『新JICA事業評価ガイドライン第1版(2010年6月)』に基づいた評価手法に沿っ

て、以下のとおり実施した。

<ステップ1> 終了時評価フレームワーク6〔簡易版評価用プロジェクト・デザイン・マトリッ

クス(Project Design Matrix for Evaluation:PDMe)〕に基づいて評価をデザインした。プロジェ

クトの達成度合いは、主にPDMe指標を基に評価した。

当初の評価フレームワークについては、付属資料:合同評価報告書Annex3、終了時評価フ

レームワーク(PDMe)はAnnex 4を参照されたい。

<ステップ2> プロジェクトの実績を中心とした情報を収集し、プロジェクトデザイン及び

実施プロセスを検証するとともに、プロジェクトの目標達成度合いに貢献した要因・阻害し

た要因を分析した。

<ステップ3> 評価5項目(「妥当性」「有効性」「効率性」「インパクト」「持続性」)の観点か

ら、プロジェクトを評価した。

<ステップ4> プロジェクト残存期間の活動に対しての提言、及び類似案件に対する教訓を

抽出した。

(1) 終了時評価フレームワーク(PDMe)の各項目概要

PDMeの各項目概要は以下の表2-1のとおりである。

表2-1 終了時評価フレームワーク(PDMe)の各項目

上位目標 プロジェクトを実施することによって期待される長期的な効果

本プロジェクトでは、研修員帰国後に期待される効果

プロジェクト目標 第三国研修実施によって達成が期待されるターゲット・グループ(人、組

織を含む)や対象社会に対する直接的な効果

アウトプット 「プロジェクト目標」達成のためにプロジェクトが生み出す財やサービス

活 動 「投入」を使って「アウトプット」を産出するために必要な一連の行為

指 標 プロジェクトの業績やプロジェクト実施による変化を測るための定量

的・定性的な変数

6 当初の評価フレームワークは、2012年9月JICA調査団訪問の際に作成された。しかし、プロジェクト目標及び上位目標の指

標が同じレベルに設定されていたことや、その他の指標を整理するために、終了時評価フレームワークを作成した。改訂し

た要約や指標は、当初の評価フレームワークや当初のフォローアップ調査質問票を可能な限り活用した。ただし、終了時評

価調査時点で、IRRI側が実施した質問票によるフォローアップ調査で上位目標の指標の一部に収集されていないものもあっ

た。詳細については、4-4インパクトの上位目標を参照されたい。

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2-2 評価5項目

本評価調査における評価5項目の定義は以下の表2-2のとおりである。

表2-2 評価5項目

妥当性 評価時点においても、プロジェクトが妥当であるかどうかを裨益者のニーズ、日

本の援助政策との整合性の観点から検討する。

有効性 プロジェクトのアウトプットの達成の度合い、及びアウトプットがプロジェクト

目標の達成度にどの程度結びついているかを検討する。

効率性 プロジェクトの投入から生み出される成果の程度は、タイミング、質、量の観点

から妥当であったかどうかを分析する。

インパクト プロジェクトが実施されたことにより生じる波及効果の正・負の効果を、当初予

期しなかった効果も含め検討する。

持続性

協力終了後、プロジェクトによってもたらされた成果や効果が持続されるか、あ

るいは拡大されていく可能性があるかどうかを予想するために、政策的側面、技

術的側面からプロジェクトの持続性の見込みを考察する7。

2-3 データ収集方法

本調査では、評価分析のために定性的・定量的データを以下の方法で収集した。

・ 既存資料レビュー

・ アンケート調査(IRRI、PhilRice)8

・ インタビュー(IRRI、PhilRice、研修助手コース受講中研修員)

調査対象者の詳細は、付属資料:合同評価報告書Annex1を参照されたい。

2-4 評価の制約

本終了時評価調査中、アフリカへのインセプション訪問及びフォローアップ訪問を実施した主

要メンバーにインタビューすることができなかった9。そのため、アフリカ訪問に関する情報は、

①IRRIによる報告書、②回答質問票、③IRRIメンバー1名、並びに、2013年11月のフォローアップ

訪問に参加したPhilRiceメンバー2名とのインタビューから得た。

7 本研修は、CARD推進の一環として国際機関であるIRRI(PhilRice連携)と契約を結んで実施したアフリカ支援事業であり、

IRRIやPhilRiceの組織的側面及び財政的側面の持続性については言及しない。 8 合計5名(IRRI2名、PhilRice3名) 9 ①IRRI総括は休暇のため不在、②M&E担当のIRRIコンサルタントは、病気による2013年12月ごろの離職のため面談できな

かった(後任はZenaida Huelgas女史で、本調査に参加)。

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第3章 プロジェクトの実績と実施プロセス

3-1 投入実績

3-1-1 日本側

2015年7月時点で、日本側による4年間の総支出金額として約2億6,400万円(215万ドル相当10)

が実行されている。うち、約2億5,400万円(207万ドル相当)は、IRRIへの支払額である。

2011年(実績) (千円)

2012年(実績) (千円)

2013年(実績) (千円)

2014年(計画) (千円)

円建合計 (千円)

ドル建合計 (千ドル)

IRRI契約の 支払額 73,678 55,225 84,786 40,598 254,287 2,072

調査団等 405 2,801 3,645 2,752 9,603 78 全 体 74,083 58,026 88,431 43,350 263,890 2,150

3-1-2 IRRI及びPhilRice11

(1) プロジェクトメンバーの配置

本プロジェクトはIRRIに委託する形で実施され、IRRIから6名がプロジェクトの主要実

施メンバーとして配置されている。普及員コースはIRRIとPhilRiceが共同で実施し、研究

者コースと研究助手コースはIRRIが実施した。

(2) IRRI側による現地費用負担

以下をIRRI側が負担し、それ以外は全額日本側が負担している。

・ IRRI総括のアフリカにおけるインセプション訪問1回及びフォローアップ訪問1回

分の旅費

・ アフリカ研修員5名の奨学金(普及員コース及び研究助手コース12)

・ 2万4,000ドル(帰国後のアクションプラン実施支援のため、普及員コース研修員60

名に各人400ドルを支給/本終了時評価の評価指標には含まれず)

3-2 活動実績

研修助手コースの実施がJICAとIRRIの契約のタイミングから約1年うしろ倒しとなったが、そ

の他の活動はおおむね予定どおり実施されている。

実施された活動は、①カリキュラムを含む、研修に関する募集要項(General Information:GI)

の作成、②対象国訪問による、先方政府へのプロジェクトについての説明(インセプション訪問)、

③JICA在外事務所との連携による候補者の選定、④研修教材の開発、⑤研修コースの実施、⑥研

修参加国を訪問し、研修員帰国後の研修効果について調査(フォローアップ訪問)、⑦フォローアッ

プ訪問時の帰国研修員への助言・指導、である。

表3-1は、3分野の研修コース、アフリカのインセプション訪問、フォローアップ訪問の実施時

期を示す。

10 2015年7月JICA統制レートで計算:USD=¥122.74 11 PhilRiceは、普及員コース開始前に、独自の予算で、寮の改装を行っている。 12 普及員コース ブルンジ2名;研究助手コース ケニア2名、タンザニア1名

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表3-1 4年間の主な活動

年度 普及員コース 研究者コース 研究助手コース インセプション訪問 フォローアップ訪問

2011 2011年6~10月 2011年10月 - 2011年3~4月

2011年11月 -

2012 2012年6~10月 2012年10月 2012年8月 2012年11月 2012年4~5月

2013 2013年6~10月 2013年9月 2013年8月 - 2013年8月 2013年11月

2014 - - 2014年7~8月 - 2014年6月

7回のアフリカ訪問のうち、インセプション(次期研修の参加者募集などの準備が主)では9カ

国、フォローアップ(帰国後研修員の支援が主)では13カ国を訪問した。これら訪問はすべてIRRI

が実施したが、2013年11月のフォローアップ訪問にはPhilRiceメンバーも参加した。

表3-2 インセプション訪問及びフォローアップ訪問のアフリカ訪問国

活 動 実施時期 訪問国

インセプション訪問

2011年3~4月 Mozambique, Tanzania, Uganda, Rwanda, Kenya

2011年11月 Ethiopia13

2012年11月 Zambia, Cameroon, Liberia, Gambia

フォローアップ訪問 /M&E 訪問

2012年4~5月14 Mozambique, Tanzania, Uganda, Kenya

2013年8月 Sierra Leone, Ghana, Nigeria, Ethiopia, Kenya

2013年11月 Ghana, Uganda, Tanzania,

2014年6月 Gambia, Liberia, Cameroon, Zambia, Rwanda

3-3 アウトプットの達成状況

各アウトプットの達成状況は以下のとおりである。

(1) アウトプット1:研修参加者がPhilRiceで開催される普及員コースを修了する。

ジェンダーバランスを除いて、アウトプット1はほぼ達成している。

表3-3 アウトプット1の指標の達成状況

指 標 達成状況

1-1. 13カ国から参加した65名の研修員(各国から 5 名)が

PhilRiceで実施される普及員コー

スを修了する。うち33名(50%)

は女性である。

参加者数 参加国数 女性の参加者数(%) 目標値 65 13 33(50%) 達成状況 6315,16 14 20(32%)

上記に加え、フィリピン研修員13名(男性9名、女性4名)が参

加した。したがって、総計76名(男性 52名、女性24名)の研修員

が普及員コースを受講した。

アフリカ14カ国から63名17が普及員コースを修了した。これは参加者数目標値の97%相当

13 エチオピアは、予定されたもう1名のIRRIメンバーがビザ習得に時間を要したため、1名のIRRIメンバーのみが訪問した。ナ

イジェリア訪問は、安全上の理由で中止された。 14 フォローアップ訪問の終盤に、IRRIチームがルワンダとブルンジを訪問し、各国で稲情報データバンク(Rice Knowledge

Bank:RKB)普及のためのワークショップを開催した。 15 63名のうち、JICAが61名、IRRIが2名の研修派遣費用を負担した。 16 63名には、最後まで研修を完了できなかったエチオピア人1名を含んでいる。同研修員はほとんどのコースに参加していた

ため、IRRIは修了証を授与している。

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である。脚注に説明した予定3名が参加していれば、目標値を達成していた。参加国につい

ては、農家とのやり取りが英語であることから、JICAはCARDメンバーのうち、主に英語圏

13カ国を対象とした。さらに、IRRIの独自予算で、IRRIブルンジ職員2名が参加した。ブル

ンジが加わったことにより、参加国数は目標値13を超える14カ国を達成した。ジェンダーバ

ランスについては、2013年の47%は目標値目前であったが、3年間の総平均は32%にとどまっ

た18。

表3-4 3年間におけるアフリカ研修員の女性割合

年 男性 女性 合計数 女性割合(%) 2011 16 9 25 36% 2012 18 3 21 14% 2013 9 8 17 47%

総計/平均 43 20 63 32%

アフリカ諸国からの研修員のほかに、フィリピン人13名も研修員として迎え入れられた。

フィリピン研修員は、4カ月の訓練期間中、フィリピン文化/状況についてファシリテーター

の役割を果たし、農民学校(Farmer Field School:FFS)の際には通訳やツアーガイドとして

活躍した。初年度のフィリピン研修員の予算はフィリピン政府が負担したが、2年次以降は、

フィリピン人研修員の貢献を認め、JICAが予算を支給するようになった。

普及員コースの研修期間は当初17週間(PhilRiceで16週間、IRRIで1週間のプロポーザル作

成方法を習得する計画立案コース)であった。2年次以降は、初年度の研修員のフィードバッ

クに応える形で1週間の機械化・コースが追加され、18週間に延長された。

(2) アウトプット2:研修参加者が3週間の研究者コースを修了する。

ジェンダーバランスを除いて、アウトプット2はおおむね達成している。

表3-5 アウトプット2の指標の達成状況

指 標 達成状況

2-1. 23カ国から46名の研修員

(各国から2名)が3週間の研究者

コースを修了する。うち、23名(50%)が女性である。

参加者数 参加国数 女性参加者数(%)

目標値 46 23 23(50%) 達成状況 38 20 11(29%)

38名のアフリカ研修員が研究者コースを修了した。これは目標の83%に相当する。100%

に到達しなかった理由は、CARDメンバーである3カ国、(マダガスカル、マリ、中央アフ

リカ)が諸事情(国内政情混乱による見合わせ)により含まれなかったことに加え、カメルー

ン共和国(以下、「カメルーン」と記す)とリベリア共和国(以下、「リベリア」と記す)

17 2013年普及員コースの候補者3名が参加しなかった。ザンビア人1名はパスポート取得事情、もう1名のザンビア人は出発日

に現れず、1名のザンビア人は転職。 18 女性参加割合の増減には、①各年GIの記載方法、②インセプション訪問時の説明方法、③送り元各国政府のジェンダー意識、

④IRRI/JICAによる選考時の配慮等、複数の要因が考えられるが、アフリカにおける女性研究者・普及員の不足が大きく影

響していると思われる。

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からは参加者が1名にとどまったためである。普及員コースは主に英語圏に限定されたが、

2013年の研究者コースは仏語圏が対象とされ対象国数が増加した。その結果、上記の3カ国

を除いた参加国数は20カ国となり、目標値の87%相当に達した。ジェンダーバランスについ

ては、普及員コース同様2年次に減少したが、3年次は40%に改善された。3年間の総平均は

29%であった。

表3-6 3年間におけるアフリカ研修員の女性割合

年 男性 女性 合計数 女性割合(%) 2011 9 3 12 25% 2012 9 2 11 18% 2013 9 6 15 40%

総計/平均 27 11 38 29%

(3) アウトプット3:研修参加者が3週間の研究助手コースを修了する。

プロジェクト終了までに、ジェンダーバランスを除いて、アウトプット3はおおむね達成

される見込みである。

表3-7 アウトプット3の指標の達成状況

指 標 達成状況

3-1. 23カ国から46名の研修員

(各国から2名)が3週間の研究助

手コースを修了する。うち、23名(50%)が女性である。

参加者数 参加国数 女性参加者数(%)

目標値 46 23 23(50%) 達成状況 41 21 13(32%)

終了時評価時点において、15名の研修員が研修を受講中であった。15名の修了をもって、

合計41名のアフリカ研修員が研修助手コースを完了する見込みである。これは、目標値の

89%相当である。100%に到達しなかった理由は、CARDメンバー2カ国(マダガスカル、中

央アフリカ)が諸事情(国内政情の混乱による見合わせ)により参加できなかったこと、カ

メルーンとコートジボワール共和国(以下、「コートジボワール」と記す)からの参加者が

1名にとどまったことである19。研究者コース同様、3年次は仏語圏が対象とされ、上述2国

を除いた参加国は21となり、目標値の91%相当である。ジェンダーバランスについては、2012

年と2013年は40%前後であり、3年間の総平均は32%となった。

表3-8 3年間におけるアフリカ研修員の女性割合

年 男性 女性 合計数 女性割合(%) 2012 7 4 11 36% 2013 9 6 15 40% 2014 12 3 15 20%

総計/平均 28 13 41 32%

19 ケニアからの参加者2名(2012年1名、2014年1名)はIRRIによる予算負担であり、JICA派遣該当者は0名であった。タンザニ

アからの参加者3名のうち、2012年2名はJICA負担、2014年1名はIRRI負担であった。

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3-4 プロジェクト目標の達成状況

プロジェクト目標:普及員、研究者、研究助手コースの研修参加者の稲作研究や技術普及に関

する能力が向上する。

IRRIの研修修了の定義に基づくと、プロジェクト終了までに、プロジェクト目標はある程度達

成される見込みである。IRRIによる「普及員、研究者、研究助手コースの研修参加者の稲作研究

や技術普及に関する能力」の定義は、「研修参加者が、稲作栽培や研究について習得した知識や技

術を現地状況に適合させながら、自信をもって説明し、活用することができる」というものであ

る。本プロジェクトにおいては、研修員が新たな知識や技術に触れる機会を最大化することに焦

点を置き、最低限どのレベルまで各研修員の能力向上をめざすかの基準は設定していなかった。

表3-9 プロジェクト目標の指標の達成状況

指 標 達成状況

研修コース終了時点において、

1. 少なくとも80%の普及員が、Rice Checkシステム、農家への普及手

法、FFSの実施方法等を含む種子か

ら市場までの稲作栽培に関する講

義と実習の内容について、説明す

ることができる。

研修評価によると、大半の研修参加者が多くの知識を習得し、身に着けた新たな技術を説明することができた。このことは、理論テストと実践テストの習得度合い(Gained Knowledge:GIK20)の結果が証明している。アフリカからの研修員は、コース受講前に比べて理解度が倍以上に向上している。 他方、アフリカからの研修員が毎週実施した自己評価テスト(Self-Achievement Test:SAT)の平均は62.67%であった21。本プロジェクトでは、どの水準を目標とするか明確になされていなかったものの、以下は参考情報である。 PhilRiceが通常フィリピン人普及員の合格水準とする70%を該当した場合、アフリカからの研修員の合格率は27%(63名中17名)、フィリピン人研修員は67%(12名中8名)相当となる。他方、フィリピンの大学で通常合格水準とされる50%を該当した場合、アフリカからの研修員の合格率は86%〈63名中54名〉、フィリピン人研修員92%(12名中11名)となる。 テスト結果の要約は以下のとおり、国別の詳細については付属資料:合同評価報告書Annex 5を参照のこと。

参加者 理論テスト 実践テスト SAT

GIK GIK 達成率%22

アフリカ23 74.58 53.23 62.67

フィリピン 51.32 33.69 72.57

2. 少なくとも80%の研究者が、講義と実習から、自国の状況に最も関係する内容を識別し、習得した内容がどのように自国の状況に関係しているか説明することができ

研究者コースにおいては、小テストや試験が実施されていなかったため、定量的データは入手不可能であった。

IRRIの研修評価によると、大半の研修参加者は研修コースに満足し、多くの知識を習得した。好評であったトピックは、

20 GIKは、同じ質問に対するプレテストとポストテストの点数の比較に基づいて算出されている。計算式=(ポストテストの点

数-プレテストの点数)/ポストテストの点数×100 21 SATは、前週の研修内容に関する確認テストである。 22 第1年次のモザンビーク(ポルトガル語)とルワンダ(フランス語)研修員のSAT平均達成率は、同年次の他国平均に比べて

低くなっている。英語が必須条件と設定されていたうえ、フィリピン人講師もゆっくりと話す努力をしたものの、研修員か

ら「通訳の配置が望ましかった」とコメントがあったように、授業の使用言語が理解度の差に影響していると推定される。 23 エチオピア人1名及びフィリピン人1名は、計算から除外している。エチオピア人は、本人の体調により最後まで研修コース

に出席することができなかった。フィリピン人普及員は、町で本人しかできない業務遂行のため、一部のクラスやSATを欠

席せざるを得なかった。

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る。

農家との交流、農民参加型手法( Participatory Varietal Selection:PVS)、稲情報データバンク(Rice Knowledge Bank:RKB)、作物カレンダー、水管理、雑草管理、耐塩性、トラクターや機械を活用した作付準備(耕耘等)等であった。

3. 少なくとも80%の研究助手が、講義と実習から、自国の状況に最も関係する内容を識別し、習得した内容がどのように自国の状況に関係しているか説明することができる。

終了時評価時点において、主に仏語圏からの15名が研修受講中であった。 研究助手コースにおいては、小テストや試験が実施されていなかったため、定量的データは入手不可能であった。 IRRIの研修評価によると、大半の研修参加者はコースに満足し、多くの知識を習得した。好評であったトピックは病害虫管理、トラクターや機械を活用した作付準備(耕耘等)、ポストハーベスト、RKB等であった。

4. 少なくとも80%の参加研修員が、自国の稲作栽培改善に必要となる優先項目を識別し、習得した内容を適用するためのアクションプランを作成し、説明することができる。

研修終了前に、研修参加者全員が、帰国後に実施予定のアクションプランを作成し、発表した。 普及員コース研修員については、アクションプランの実施支援として、帰国後400ドルが各研修員の口座に送金された24。

終了時評価調査時点までに、3分野の研修コース(普及員、研究者、研究助手)がおのおの3回

実施され、総計155名(アフリカ諸国から142名25、フィリピンから13名26)が修了した。各コース

別の参加数は、普及員コース76名(アフリカ諸国から63名、フィリピン13名)、研究者コースには

アフリカ諸国から38名、研究助手コースはアフリカ諸国から41名であった。国別の詳細は付属資

料:合同評価報告書Annex 6、コース及び予算負担先別の詳細は付属資料:合同評価報告書Annex

7を参照されたい。

普及員コースにおいて、理論的な学習は農民学校(Farmers Field School:FFS)を行うことで実

践に移された。1年次は、理論的側面の習得度が実践面を上回り、かなりの差が生じていた。この

結果に基づき、PhilRiceが実践面をより重視する改善策を取った結果、2年次と3年次では、理論面

と実践面のGIKの差は、3年次のフィリピン参加者を除き、縮小している。平均GIKの推移につい

ては、付属資料:合同評価報告書Annex 5を参照されたい。

研究者と研究助手コースにおいても、IRRIが研修参加者の関心にできるだけ対応するよう心が

け、IRRI研究者との意見交換を増やす等、理論と実践のバランスを保つよう尽力した。

他方、参加者の知識・技術レベルの研修中のモニタリング方法に関し、JICA-IRRI-PhilRiceの共

通認識が不十分であった。基本的なプロジェクトフレームワークはプロジェクト開始前に合意さ

れ、研修開始時及び終了時に能力テストを実施する等とされていた。しかし、そのようなテスト

は研究者及び研究助手コースでは実施されなかった。このことは、①国際機関であるIRRIとJICA

の間でのモニタリング方法や期待値の理解に差異があること、②JICA専門家を配置していないこ

とにより、大枠合意を実施に移す部分でコミュニケーションが不足したと推定される。このよう

な状況では、評価フレームワークの指標設定に加え、報告フォーマットを明確にし、IRRIからの

プログレスレポートに進捗の記載を求める等の工夫が必要であった。

24 2011年の第1年次普及員コースでは、フォローアップ訪問時に400ドル供与の説明が帰国研修員になされ、簡易なプロポーザ

ルの提出をもって400ドルが支払われた。 25 JICAが137名、IRRIが5名(ブルンジ2名、ケニア2名、タンザニア1名)の研修派遣予算を支給した。 26 第1年次はフィリピン政府がフィリピン5名、第2年次及び第3年次はJICAがフィリピン8名の予算を負担した。

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3-5 プロジェクトの実施プロセス

(1) JICA調査団との合意事項の実施状況

終了時評価時点における、2013年1月に派遣されたJICA調査団との合意事項の実施状況は

以下のとおりであった。

合意事項 実施状況

1 PhilRiceをアフリカのフォローアップ訪問メンバーに含める。

PhilRiceの2名が、2013年11月のフォローアップ訪問に参加した。

2 IRRI及び/あるいはPhilRIceが研修マニュアルを、3年次の普及員コースで活用できるように、また1年次及び2年次の研修参加者に配布するために、2013年6月までに完成させる。

・ IRRIが2014年2月に研修マニュアル(案)を作成したが27、3年次の普及員コースまでの活最終化には間に合わなかった。

・ IRRIは、本体を2014年11月末までに、パワーポイント用資料を2014年12月末までに、ファクトシートをプロジェクト終了前に完成させ、研修マニュアルパッケージを過去の研修参加者にIRRIがプロジェクト終了までに配布する。(終了時評価調査の合意事項)

3 IRRIが評価計画を2013年2月15日までに、自己評価レポートを2013年12月までに提出する。

評価担当者の病気による不在が影響し、IRRIは自己評価レポートを作成していない。

(2) 運営体制

討議議事録(Record of Discussion:R/D)には、JICA、IRRI、PhilRice及び必要に応じてそ

の他関係者から構成される運営委員会の設置が明記されていたものの、実際には設置されな

かった。その代り、終了時評価調査までに、日本からJICA調査団を2011年5月、2012年9月、

2013年1月の3回派遣し、IRRI及びPhilRiceと進捗状況を確認した。そのほか、2012年11月と

2014年3月にはJICA本部とIRRIがTV会議を開催した。

3機関は良好な関係を維持し、IRRIとは上記コミュニケーションで特に問題はなかった。

一方、PhilRiceからは十分ではなかったとの声も聞かれた。本プロジェクトは、3機関による

初めての試みであり、おのおのの組織によるプロジェクトマネジメント方式が異なるうえ、

PhilRice28による初めてのアフリカ支援であることを考慮に入れると、通常のプロジェクト

以上に調整が必要となることを理解のうえ、運営委員会の定期開催等の取り組みが図られる

ことが望ましかった。

(3) 貢献要因

1) フィリピン人ファシリテーターの強固なコミットメント及びホスピタリティー

全3研修コースにおいて、ファシリテーター/講師と研修員が良好な関係を構築したと報

告されている。特に18週間と長期に及ぶ普及員コースでは、フィリピン人ファシリテー

ターが研修員を親身になってもてなし、ファシリテーター/講師と研修員の間で強い絆が

27 研修マニュアルのアフリカ状況への適応化は、当初IRRIから普及員コースを主担当とするPhilRiceへ委託されていた。しか

し、PhilRice既存の研修マニュアルをアフリカ状況に適応するために十分な技術的支援をIRRIから得られなかったため、最

終的にIRRIが作成することになった。 28 PhilRiceファシリテーターは、「アフリカからの研修員に毎回質問しながら、研修内容を調整していった」と報告しており試

行錯誤の様子がうかがえる。PhilRiceによるアフリカ訪問が実現したのは、3年間の普及員コース完了後のフォローアップ訪

問時であり、本来ならば、普及員コース開始前が望ましかった。

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生まれた。この絆が、研修員帰国後もPhilRiceと関係を維持している要因と考えられる。

フェイスブックによる日常的なコミュニケーションについては、4-4インパクトの上位目

標3指標3-1を参照されたい。

2) TICAD IV及びCARD会合へのPhilRiceの参加

PhilRiceのプロジェクトコーディネーター兼研修コーディネーターが、2012年5月モロッ

コ王国(以下、「モロッコ」と記す)で開催されたTICAD IVのフォローアップ会合のサイ

ドイベントにおいて、本プロジェクトについて発表し、他諸国の関心喚起に寄与した。

さらに、CARD事務局が2013年2月セネガル共和国(以下、「セネガル」と記す)で開催し

た第5回CARD総会にPhilRiceを招待した際、PhilRice代表の委任を受け、本プロジェクト

の研修コーディネーターが総会に出席した。

(4) 阻害要因

1) 各国研修員にとり短い応募締切までの期間設定

初年度の2011年は、アフリカインセプション訪問による応募勧奨から実際の研修コース

開始までの間2カ月しかなく、IRRIにとって多忙を来した29。2012年には、シエラレオネ

共和国(以下、「シエラレオネ」と記す)からの研究者コース候補者はビザ発行に時間を

要したため、同年度に参加することができなかった。アフリカにおけるメールや携帯電

話等の難しいコミュニケーション事情や、各省庁が、帰国後に研修員をどのように活用

するか想定したうえで選定に必要となるプロセスも考慮し、応募勧奨から募集締切日ま

で余裕をもった期間設定が望ましかった。これらの経験を経て、事務的手続きについて

は後半には改善がみられた。

2) 帰国後の研修員をどのように活用するか、各国政府による計画不足

本プロジェクトは、研修員の選定の際に各国政府機関を通じて募ること、各国のNRDS

タスクフォースからの推薦を得ることなど、帰国後の研修員の活用を念頭に選定するこ

とが想定されている。しかし、フォローアップ訪問によると、研修員が所属する政府や

機関は、研修員に対して好意的ではあるものの、どのように研修員を活用するか計画を

有していない場合が大半であった。したがって、帰国研修員が所属機関に活動プロポー

ザルを提出したものの、会計年度が閉められており、アクションプラン実施の予算確保

には遅すぎたケースが多くの国で報告されている。

29 2011年5月中旬までJICA-IRRIの契約は署名されなかったものの、応募者の選定やビザ取得を含め研修員の渡航準備を開始す

るため、IRRIは契約開始前の4月にインセプション訪問を実施した。さらに、早急なビザ発給のために、IRRIはフィリピン

外務省に協力を求めた。

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第4章 評価結果

4-1 妥当性

本プロジェクトは、CARDメンバーであるアフリカ諸国の政策とニーズ、日本の援助政策との

整合性を確保していることから、妥当性が高い。ただし、JICAの知見に加え、国際機関であるIRRI

とフィリピン機関であるPhilRice両方の強みを生かすことをめざし、JICA-IRRI-PhilRiceの3者連携

でアフリカを支援するという新機軸の協力(3機関連携の第三国研修)であったため、手続き面の

困難を経験した。

(1) CARDメンバーであるアフリカ諸国のニーズと政策との合致

サブサハラアフリカにおいては、コメの需要が急速に増加している一方、域内での供給

がニーズを満たしていない。需要と供給の拡大要因のひとつには、サブサハラアフリカの土

地生産性がアジアに比べて著しく低いことが挙げられる。土地生産性が低い理由には、①灌

漑等の農業インフラの未整備、②適切な栽培手法の開発がなされていない、③基礎的技術の

未普及等が挙げられる。そのため、中核となる研究者、研究助手、普及員の人材育成が急務

である。

CARDメンバーである23カ国は、2018年までにコメ生産の倍増を目標に掲げている。各国

政府は、国家稲作開発戦略(National Rice Development Strategy:NRDS)を作成し、人材開

発を重要なコンポーネントとして位置づけている。

(2) 日本政府の政策との合致

日本政府の援助政策は、弱者をターゲットとした「人間の安全保障」を重視しており、

プロジェクトはこれに整合している。農業も、日本の対アフリカ援助政策の優先分野として

位置づけられている。日本政府は、2008年のTICAD IVにおいて、アフリカ緑の革命のための

同盟(Alliance for Green Revolution in Africa:AGRA)と協力して、2018年までの10年間でア

フリカにおけるコメ生産の倍増(1,400万tを2,800万t)を目標と掲げる「アフリカ稲作振興

のための共同体(CARD)」の立ち上げを表明した。

(3) 対象国の選定

プロジェクトはCARDメンバーである23カ国を対象とした。18週間の普及員コースに関し

ては、PhilRiceにとって初めてのアフリカ支援であり、フィリピンが英語圏であることから、

英語圏を中心とした13カ国が優先された。他方、3週間の研究者と研究助手コースは、3年次

が仏語圏とされ、23カ国が対象とされた。

(4) 協力手段としての適切性

JICAの農業農村開発事業にとり、本プロジェクトは、国際機関及びアジアでの嘗ての協力

相手を連携実施機関としてアフリカ支援する、新機軸の事業であり、手続きとして、IRRI

(PhilRiceを含む共同体)と契約を締結して実施する形態を取った。IRRIは、国際農業研究

協議グループ(CGIAR)の機関であり、稲作研究推進プログラムであるGRiSP30を率いる稲

30 CGIAR(Consultative Group on International Agricultural Research)、GRiSP(Global Rice Science Partnership)

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研究の世界的権威である。また、CARDメンバーであり、Africa Rice Centerと連携し、アフ

リカの稲作研究者とも協力している、本分野で高い比較優位性を有する機関である。PhilRice

は、日本政府が1990年から長年支援した結果、実力を備えた稲作の研究普及機関である。今

回PhilRiceを活用した目的は、アジア-アフリカ間の南南協力の促進であった。

4-2 有効性

アウトプットはおおむね既に達成されたか、プロジェクト終了までに達成見込であり、プロ

ジェクト目標の発現に寄与した。そのなかでも、研修期間が一番長く、研修参加者数も一番多い

アウトプット1による寄与率が、他の二つのアウトプットよりも、相対的に大きい。プロジェクト

目標は、IRRIの研修修了の定義に基づくと、達成する見込みであるが、プロジェクト目標で前述

したとおり、プロジェクト開始当初に評価フレームワーク及び指標の共通理解を構築し、設定さ

れた指標を定期的に入手し、その進捗をモニタリングする体制の構築が必須であった。

また、以下の手段により、研修員帰国後の効果発現に対する有効性を更に向上することが可能

であったと考えられる。

第1に、CARD対象のアフリカ各国のJICA事務所や稲作関連プロジェクトのJICA専門家のかかわ

りをより一層強める。IRRIインセプションチームとの連携により、候補者選定前にJICA現地事務

所や日本人専門家が各国政府をファシリテートし、NRDSタスクフォースにもつなげ、帰国研修

員の活用予定やアクションプラン実施のために何らかの予算措置が織り込まれることを支援する31。

国によっては事業展開計画への明記も検討することが望ましい。

第2に、各研修コースにふさわしい候補者の選定がなされることが必須である。研修応募の必

要条件、研修の内容をGIに可能な限り明記し、各国政府に要請することで、技術的側面から適正

な候補者を選定することが可能となる。

第3に、「研究と普及の連携」のため、同じ国から研修員が参加する3分野の研修コースの一部

分が重なるように同時期に実施し、3コース間の交流を促進する。同年度実施により、フォローアッ

プ訪問時に3コースの帰国研修員の連携状況をより効果的にモニタリングすることが可能となる。

第4に、各国のフォローアップ訪問期間を少なくとも1日以上延ばす。本プロジェクトでは、各

国2日間とされ、帰国研修員、農業省、1~2カ所程度の現地サイト訪問のみが可能であった。より

多くのサイトで技術的フォローが可能なように、また、研究者-普及員連携状況の確認、関連国際

機関訪問等のために、少なくとも3日間以上の滞在期間が望まれる。供与された技術的指導は、次

回の研修コースに反映できるよう毎回報告書に明記することを徹底する。さらに、フォローアッ

プ訪問の明確な目的、収集する情報や指標、サイト訪問の基準を設定することによって、フォロー

アップ訪問の有効性及び効率性の向上を図る。

4-3 効率性

効率性は、中程度である。研究助手コース実施の延期及び、2年次普及員コースに必要な研修

資材が一部購入されなかったことを除いて、投入はおおむねアウトプットの発現に対し、適切に

活用されている。

31 研修員派遣前に、政府がNRDSの位置づけとして研修員の重要性を認識している国において、帰国研修員が習得技術の普及

に積極的であることと関連性がある。政府や組織からの支援が、アクションプラン実施、習得したモデルや技術普及の鍵と

なることがフォローアップ訪問調査において確認されている。

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(1) 効率性を向上した要因

1) 過去の日本政府によるPhilRice支援との連携

長年日本政府が技術協力してきたPhilRiceが有する、稲作技術や普及のための研修教材、

講師、寮等のインフラを活用した。

2) アフリカにおけるJICAやIRRIのネットワーク32

アフリカにおけるJICAやIRRIのネットワークを活用することによって、対象国関連機

関との連絡が容易となった。JICA本部は在アフリカJICA現地事務所とIRRIチームの面談

を調整することにより、IRRIチームの事前調査を促進した。また、当初のIRRI Mozambique

がアフリカの現状をプロジェクトに取り込む際に寄与し、IRRI Tanzaniaが募集プロセス・

インセプション訪問・フォローアップ訪問のコーディネーションの中核となった。さら

に、IRRI Burundiが、仏語圏向け研究助手コースの通訳を務めた。

3) 普及員コースにフィリピン研修員を含めたこと

アウトプット1で前述のように、フィリピン研修員が普及員コースに参加し、フィリピ

ン農民やフィリピン文化の通訳を果たし、研修活動の潤滑油となった。また、同期生の

フィリピン研修員を通して、フィリピンにおいてどのように普及活動がなされているか、

アジアとアフリカの稲作事情の情報交換がされる機会提供にもなった。

4) フィリピン農民の英語力

フィリピン農民が英語を話せるため、FFSの円滑な実施が可能であった。研修コーディ

ネーターによると、アフリカ人研修員はフィリピン農家との交流を非常に楽しみ、講義

よりも農場での実習を好んだと報告されている。

(2) 効率性の制約となった要因

1) 会計管理

IRRI及びPhilRiceにとり、自身の会計規定及びJICAの会計規定の双方に対応することは、

労力を要する点であった。JICA規約に適切に適合するため、JICAフィリピン事務所が細

かい支援を行う必要があった。3年次には会計ガイドラインが策定され改善された。

2) PhilRiceへの活動資金の支払い遅延

3年間とも、普及員コースのための研修資材調達を円滑に開始できるようなタイミング

に、PhilRiceに活動資金が支払われておらず、PhilRice側での対応が必要となった。主な理

由はJICA-IRRI間の契約締結及びIRRI-PhilRice間の調整の遅延である。

3) PhilRiceにおける要員配置

プロジェクトコーディネーター及び研修コーディネーターが、同一人物(Eugen氏)に

課された。管理業務と技術的業務は性質が異なるうえ、双方のコーディネーター業務と

もに労力を要するため、別々の人員を配置することが望まれた。さらに、管理アシスタ

32 終了時評価時点におけるIRRIの在アフリカ支所は、IRRI TanzaniaとIRRI Burundiの2カ国である。

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ント及び技術アシスタントを継続して雇用することが難しく、毎年スタッフの変更を余

儀なくされた。スタッフの雇用継続を確保し、経験の蓄積が可能となるような調整が望

ましかった。

4) M & E担当IRRIメンバーの変更

IRRIコンサルタントが、IRRIの自己評価レポート及びフォローアップ調査質問レポー

トの作成等、M&E関連業務を担当すべく配置された。しかし、病気のため、同コンサル

タントは2013年12月ごろに離職した。2014年5月に、IRRI社会科学部門においてインパク

ト調査を主に担当する準研究員が交代要員となり、約2週間でフォローアップ調査質問票

が作成され、プロジェクト全体を十分に把握していない状態での難しい業務となった。

4-4 インパクト

終了時評価時点において、上位目標は部分的に達成されている。その他の正のインパクトも発

現している。帰国研修員の活用による上位目標達成をめざして、研修員に対する各国政府や所属

機関による理解・支援が得られるよう、IRRI及びJICA現地事務所による継続した働きかけが望ま

れる。

通常のJICA技術協力プロジェクトにおける上位目標は、プロジェクト終了から3~5年後に達成

される効果を指すが、本プロジェクトは研修事業であり、帰国後のフォローアップ訪問も1カ国2

日程度と限られていることから、上位目標を「研修員の帰国後に期待される効果」と定義した。

(1) 上位目標 1: フィリピンの研修を通じて習得した普及モデルや技術が、対象アフリカ諸

国において農民支援の活動に活用される。

終了時評価時点において、上位目標1は、部分的に達成されている。フォローアップ調査

質問票の回答やフォローアップ訪問によると、約半分程度の帰国研修員が、IRRIとPhilRice

で習得した普及モデルや技術を活発に活用している。

表4-1 上位目標1の指標の達成状況

指 標 達成状況

1-1. フィリピンの研修コースを受講した各研修員が、同僚に対して技術的助言をする。

指標1-1に関する質問は、フォローアップ調査質問票33に含まれていなかったため、どの程度実際に助言がなされたかに関するデータは入手されていない。他方、95%(40名の回答者のうち38名)の普及員が、「稲作に関する問題に答え、解決策を助言できる」と回答している。

フォローアップ訪問によると、研修員の大半が、研修コースで習得した知識を同僚と共有しているうえ、普及員コースの多くが、同僚に研修している。また、研修を受けた同僚が、帰国研修員が農民に対する研修実施時のアシスタントとなっている場合も数多く報告されている。

33 帰国研修生124名のうち、70名が回答した。普及員、研究員、研究助手コースおのおののフォローアップ調査質問票の回答

率は、66%(61名中40名)、45%(38名中17名)、52%(25名中13名)であった。

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1-2. 各研修員が、国家レベルの普及リーダーから少なくとも1回は助言を求められる。

47.5%(40名のうち19名)の普及員及び47.0%(17名のうち8名)の研究者が国家普及員/研究員のリーダーシップに助言したと回答している。

フォローアップ訪問によると、タンザニアのAfrica Rice及びウガンダのNAADS(National Agricultural Advisory Services)が普及員コースの帰国研修員に技術的助言を求めている。

1-3. 普及員コースの各研修員が、農家への普及手法について、少なくとも1種類の改善を行う。

フォローアップ調査質問票によると、普及員のうち、45%(40名中18名)が普及手法を、20%(40名中8名)が稲生産普及教材を、23%(40名中9名)が普及手法及び稲生産普及教材の双方を、改善している。

1-4. 各研修員が所属する組織に、コメ作物管理、研究プロトコール(データ収集、データ管理、分析関連)について、少なくとも1種類の革新的な改善が導入される。

フォローアップ調査質問票によると、47%(17名中8名)の研究者及び54%(13名中7名)の研究助手が、稲作物管理あるいは研究プロトコールを改善したと回答している。

フォローアップ調査質問票に寄せられた研究者が導入した稲生産技術や研究手法は、以下のとおりである。

国 事例数 導入された稲生産あるいは研究技術

ベナン (Benin) 4

苗床の設立 適正農業規範(Good Agricultural Practice:GAP) 研究データ収集穀物倉庫

エチオピア (Ethiopia) 2 コメ医者(rice doctor)あるいはRKB

データ収集時にタブレット活用 ガンビア (Gambia) 2 栄養素管理

GAP ケニア (Kenya) 1 正確なデータ収集

モザンビーク (Mozambique) 1 アゾラ(アカウキクサ)、緑肥、雑草管理等の

有機肥料による安価な稲栽培技術 ナイジェリア (Nigeria) 1 最善の病害虫管理

トーゴ (Togo) 3 伝統的な交配実験及びレイアウトの新手法、研

究データ収集

1-5. 各国において、少なくとも三つの研修が、帰国研修員によって実施される、または研修員が寄与する。関係する研究者、普及員、農民の数。

フォローアップ調査質問票によると、47.5%(40名中19名)の普及員が3件以上のFFSを実施したと回答している。

FFSの回数 回答数 % 無回答 6 15.0

1 10 25.0 2 5 12.5

3件以上 19 47.5

1回以上FFSを実施したと回答した上記34名の普及員によって、総計69回のFFSが実施された。農民、普及員、研究者の参加者数は、おのおの2,784名、445名、32名であった。その要約は以下のとおりであり、国別の詳細については、付属資料:合同評価報告書Annex8を参照されたい。

FFSの開催頻度及び参加者数 数 34名の帰国研修員によって開催されたFFS 69 単発研修 64 定期研修 34 4 ラジオ放送(30,000農民リスナー) 1 農民参加者数(単発及び定期研修) 2,784 普及員参加者数 445 研究者参加者数 32

34 定期的な研修は、週3回、季節ごと、2週間ごとに実施された。

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13カ国におけるフォローアップ訪問によると、聞き取り対象となった研修員の大半は、何らかの研修イベント及びデモンストレーションを実施していた。参加した農民数は少数から大規模までさまざまであり、各国のハイライトは付属資料:合同評価報告書の上位目標1指標1-5の表を参照されたい。

上位目標1の大半の指標達成度合いは、約50%である。3コースの帰国研修員は、特に4カ

月の研修を受講した普及員は、多くの国で稲専門家と認知され、帰国研修員が配置されてい

る地域におけるFFSやデモンストレーションの実施を通して、変化がみられていると報告さ

れている。

フォローアップ訪問によると、一部の研修員はJICAプロジェクトや日本NGOと連携関係

を構築している。ウガンダでは、2名の普及員研修員がJICAプロジェクトのファシリテー

ターを努めている。タンザニアでは、1名の普及員研修員がJICA Projectと協力して、南部高

地ゾーンにおける10の小規模灌漑スキームにおける農民及び普及員の研修に携わっている。

ザンビアでは、1名の普及員研修員が、日本人ボランティア61名と連携して農民に研修を行

い、農民と一緒に働く日本人の学生15名を受けて入れている。もう1名の普及員研修員は、

稲生産を啓発する日本のNGOと協力している。さらにもう1名は、現在JICAの稲研究プロ

ジェクトに配置されている。

また、普及員研修員がプロポーザル作成の技術を活用しているケースもあった。ウガン

ダでは、JICAプロジェクトに関与している上記普及員1名が、JICAプロジェクト内の2地域

にFFSを導入するため地方政府にプロポーザルを提出し、Rice Checkを導入するための予算

確保のためにNAADSにも応募している。

さらに、稲栽培に熱心なウガンダ政府は、FFSの活用を主要な普及手法として薦めている。

これは、JICAプロジェクトと本プロジェクトの双方の相乗効果と推定される。

フォローアップ訪問中、多くの国々が、帰国研修員を中核トレーナーとして活用する「国

内指導者養成研修(Training of Trainers:ToT)の展開に関心を表明しており、IRRI、PhilRice

及びJICAからの支援を求めていた。

(2) 上位目標 2:研修コースから習得した稲作栽培知識が各国内で活用される。

全国規模や国家レベルの程度は明確ではないが、終了時評価時点において、上位目標2は

部分的に達成されている。

表4-2 上位目標2の指標の達成状況

指 標 達成状況

2-1. 各国において、普及員、研究者、研究助手が導入した技術の少なくとも2事例が文書化される。

フォローアップ調査質問票によると、全国スケールかどうか明確でないものの、75%(40名中30名)の普及員、53%(17名中9名)の研究者が、稲作栽培に関する教育教材(リーフレット、会報、ガイドライン等)をさまざまな者に配布している35。

35 受取人に、農民、農協、農業機関、非政府機関を含む。

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普及員 研究者

配布教育教材数 回答数 % 回答数 % 0あるいは無回答 10 25 8 47

1 10 25 2 12 2~5 9 22 6 35

5以上 11 27 1 6

他方、全国レベル、国家レベルの「文書化」に関する質問は、フォローアップ調査質問票には含まれていなかったため、データが入手されていない。

2-2. 各国において、国家稲作開発プログラム計画に、少なくとも1事例は帰国研修員が寄与する。

フォローアップ調査質問票によると、14カ国中9カ国(64%)以上において、「国家稲作開発プログラム計画に寄与する、少なくとも1事例を導入した」と回答しているものの、国家レベルの計画かどうかは定かでない。

国 名 事例数 国家稲作開発プログラム計画に寄与した内容 ベナン (Benin) 0 なし

ブルキナファソ (Burkina Faso) 1 病害虫コントロール戦略

カメルーン (Cameroon) - 回答読めず

コンゴ民主共和国 (Congo) NA 無回答

コートジボワール (Cote d’ Ivoire) 1 農学者及び農家への正確な技術情報の提供

エチオピア (Ethiopia) 1 稲の交配改善

ガンビア (Gambia) 1 コメ・ハブ戦略文書の作成

ガーナ (Ghana) 1 稲交配プログラム

ケニア (Kenya) 2 国家稲作開発戦略及び実施フレームワーク

モザンビーク (Mozambique) ? 研究結果が国に採択された。

ナイジェリア (Nigeria) 2 コメに関する農民指導において、農薬削減啓発

ルワンダ (Rwanda) 2

・ 種子ロードマップシステムを活用した認証種

子の啓発 ・ 異なる種類を交代することによる病虫害管理

トーゴ (Togo) NA 無回答

ウガンダ (Uganda) 1 稲種子生産

指標2-1については、フォローアップ調査質問票が必ずしも全国あるいは国家レベルにつ

いて直接問うものではないものの、75 %の普及員及び53%の研究者が教育資料を配布してい

る。普及員と研究員による配布率の差は、普及員の方が農民に資料を配布する必要性が頻繁

に起きるからと考えられる。ただし、稲作栽培知識の文書化のデータは入手されていない。

指標2-2については、フォローアップ調査質問票が国家計画レベルについて回答されてい

るか必ずしも明確でないものの、研修員の回答事例から国家レベルに相当するであろうとい

うケースが読み取れる。例えば、①ブルキナファソの病害虫コントロール戦略、②ガンビア

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共和国(以下、「ガンビア」と記す)のコメ・ハブ戦略文書の作成、③ケニアの国家稲作開

発戦略及び実施フレームワークが挙げられる。さらに、エチオピアのフォローアップ訪問時

に、1名の普及員研修員が、JICAプロジェクトの支援によるアムハラ語(公用語)の稲生産

マニュアル作成に参加しているケースが報告されている。

稲情報データバンク(RKB)については、数カ国がIRRIにその開発を要請している。タ

ンザニアにおいては、普及員研修員がタンザニアのRKBに情報を共有しようとしたものの、

成功せず、そのような連携機会をつくるように農業省に要求している。ルワンダとブルンジ

においては、2012年5月のフォローアップ訪問時の終盤に、IRRIチームが各国でRKB啓発

ワークショップを開催し、各国の農業省からの指示を得ることに成功している。

(3) 上位目標 3: 「研究-普及の連携」をめざした稲生産のための、研修参加者・IRRI・JICA

及びアフリカ諸国における稲作開発機関間の人材開発ネットワークが構

築される。

終了時評価時点において、上位目標3は部分的に達成されている。普及員研修員間のネッ

トワークは、フェイスブックを通じて構築されている。他方、研究者-普及員の連携、及び

他の関連機関や国際機関とのネットワーキングは、十分ではなかった。

表4-3 上位目標3の指標の達成状況

指 標 達成状況

3-1. 各国において、少なくとも50%の研修参加者が、研修参加者、IRRI/PhilRice、JICA事務所 /専門家と継続して連絡を取っている。

PhilRiceのインタビューによると、国を越えた情報交換促進のために、普及員向け研修コースでは、同じ国内に加え異なる国からの研修員でペアを組んでいる。さらに、普及員コースはフェイスブックを立ち上げ、現在でも情報交換が活発になされている。

フォローアップ調査質問票の回答によると、29%(17名中5名)の研

究者及び23%(13名中3名)の研究助手が日常的なコミュニケーションを維持している36。上記を含め、100%(17名)の研究者及び92%(13名中12名)の研究助手が少なくとも1回はIRRI、PhilRice、JICAあるいは同期生のいずれかと連絡を取っている。そのうち、半数の話題が研修についてである。他方、普及員への質問は、フォローアップ調査質問票には含まれていなかったため、データが入手されていない。 表4-4 研修参加者、IRRI、JICA事務所/専門家とのe-mailや他の方法による

コミュニケーション

普及員 研究者 研究助手 なし

データなし

- 8% 1回 12% 23% 2回以上 59% 46% 常に 29% 23%

表4-5 コミュニケーション時の話題

普及員 研究者 研究助手 なし 10% - 23% プライベート 30% 29% 8% 研修コース 57.5% 47% 54% その他 2.5% 24% 15%

36 どの機関や誰(IRRI、PhilRice、JICA、同期生)と連絡を取っているかについての質問は、フォローアップ調査質問票に含

まれていなかったため、データが入手されていない。

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3-2. 各国においてフォローアップ訪問が実施された際に、国家農業研究普及システム(National Agricultural Research and Extension System:NARES)の人材育成強化をめざして、IRRIがプロジェクトの好事例や教訓をアフリカ諸国の関係機関に伝達する。

IRRIがフォローアップ訪問実施国において、大半の農業省局長レベルと面会し、プロジェクトについて説明及び研修員の有効活用を各国政府に啓発した。しかし、会合へのNRDSメンバーの同席が報告されているのは、数カ国のみにとどまった。

さらに、さまざまな国家農業研究機関を訪問した。 他方、CARDメンバーである他の稲開発機関や国際機関の訪問は、ほ

とんどなされていない。

フォローアップ調査質問票に含まれていなかったため、普及員研修員間のコミュニケー

ションの頻度に関するデータは入手されていないものの、インタビューによると、普及員研

修員間の絆は強い。これは、4カ月に及ぶ長い研修期間が要因であると想定される。他方、

本プロジェクトがめざす「研究・普及の連携」の面では、更なる改善が求められる。例えば、

普及員研修員間ではフェイスブック上で活発な情報交換がなされている一方、研究者や研究

助手コースの参加者は個人ベースでIRRIの研究者に連絡がある場合以外は、活発な情報交換

は報告されていない。ウガンダ、ケニア37、ルワンダ38では、研修参加者と他のコース参加

者の協力が報告されているが、公式な連携は構築されていない。

「研究者・普及員の連携」のための努力も一部なされた。当初フォローアップ訪問は普

及員コースだけを対象としていたが、プロジェクトの途中から3コース全研修員を訪問時に

招集するようになった。これは、3コースの研修員が交流する機会提供にもつながった39。

このような、3コースの帰国研修員間の恒常的なコミュニケーションを体系的に促進する措

置が望まれており、各国内で組織化されることが可能となれば最適であろう。情報共有や

チームとしての活動実施、RKB改善を目的とした「研究者・普及員間の連携」構築のため

に、帰国研修員を一同に会する場を開催することを、帰国研修員が農業省局長に依頼してい

るケースが報告されている。

参加研修員間でのネットワーク構築のほかに、2014年6月のフォローアップ訪問時には、

招集された帰国研修員ほぼ全員が、各国の農業省局長との会合に同席しており、上層部との

関係づくりのよい機会となった。

在アフリカJICA現地事務所や専門家との連携は、上位目標1で前述のように、いくつかの

好事例がある。

将来的には、CARDメンバーであるほかの関連機関や国際機関にプロジェクトのモデルや

教訓が普及されることが期待されている。これらの機関の研修教材や研修プログラムに取り

入れられた場合、更なる効果発現が可能となると考えられる。

(4) 上位目標を達成するための外部条件40

1) 帰国研修員の異動

帰国研修員の総異動数は把握されていないが、ウガンダのケースでは、5名中4名の普

37 普及員1名が習得した技術を自国の状況に適応させる際、研究員1名が支援した。 38 普及員2名と研究者1名の連携 39 仏語圏については、普及員コースが開催されていないため、3コースの研修員による「研究-普及の連携」は実現されていな

い。 40 外部条件とは、「プロジェクトではコントロールできないが、プロジェクトの成否に影響を与える外部要因」

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及員の異動が報告されている41。大半は稲分野にとどまっているものの、帰国研修員が

CARD支援策の稲生産に貢献するように、ある一定期間現職にとどまる契約の導入を

PhilRiceメンバーが提案している。

2) アフリカにおける地方分権化された普及体制

アフリカで進められている地方分権化が普及サービスの提供に支障を及ぼす場合があ

る。ガーナ共和国(以下、「ガーナ」と記す)のケースでは、普及員研修員は県事務所の

農業部門(地方政府)に配属されており、農業省の普及部門が研修員を直接管理や指導

する権限をもたない。他方、ウガンダのケースでは、県レベルに予算があると報告され

ている。したがって、将来同様のプロジェクトが実施される際には、JICAやIRRIによる

地方政府と農業省の連携促進が望まれる。

また、次のようなその他の正のインパクトが認められる。

3) 南南協力を通じたPhilRiceの能力向上

PhilRiceは、独自の専門性をアフリカの状況に適応する形で、知識と技術の向上に挑戦

する機会となった。アジアの経験をアフリカからの研修員に共有することで南南協力を

実施し、従事したメンバーたちは、自信をつけると同時に、達成感を得ることができた。

4) 帰国研修員の国家表彰及び上層部からの認知

研修員が所属する政府や組織は、FFS等の帰国研修員の功績を認めた。例えば、ウガン

ダの女性普及員は、国家表彰を受賞した。

5) フィリピン人農家及び研修員との国際文化交流

PhilRiceによると、アフリカの人々がフィリピンにはほとんど存在しないため、アフリ

カに対して偏見を抱いていたフィリピン農民にとって、プロジェクトは好影響を及ぼし

た。FFSやフィールド活動を通じて、フィリピン農民はアフリカ研修員と触れ合い、個人

的な関係を築き、帰国後も研修員が農民とコミュニケーションを継続しているケースが

報告されている。同じコースに参加したフィリピン研修員も同様に、アジアとアフリカ

の情報交換の機会を得た。

4-5 持続性42

(1) 政策的側面

CARDメンバーは、各国で作成したNRDSに基づいて稲作栽培の増加に尽力している。フォ

ローアップ訪問時に、多くの政府が「本プロジェクトの登場は、まさに時機を得たものであっ

た」と回答しており、政策的な持続性は高い。

41 1名は肥料企業(International Fertilizer Development Center:IFDC)に転職し、国家表彰を受賞した1名はSasagawa Global 2000

の正職員として14県における稲作普及を担当している。1名は海外で就学中であり、もう1名はコメ作物管理の研究者として

National Agricultural Research Organization(NARO)に移った。 42 2-2. 5項目の脚注のとおり、本プロジェクトは研修委託事業という側面が強く、IRRIやPhilRiceの組織的側面及び財政的側面

の持続性については言及しない。

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(2) 技術的側面

大半の研修員が、受講前と比較して倍以上の技術や知識を習得し、稲作栽培において自

信をもって業務を遂行することができるようになった。しかし、SATの理解度はフィリピン

普及員レベルにはまだ到達していない。もちろん、フィリピン研修員は稲作栽培を既に実践

し精通している一方、アフリカ研修員には新たな取り組みであることが多いうえ、アフリカ

の内戦の影響を受けた国では人材の基礎力自体も異なるため、一概には比較できない。他方、

アフリカからの研修員は更に能力向上の余地があり、特に習得した技術を自国の現状に適応

し、個人の能力から地域や組織的能力へのアップグレードへの寄与が期待されている。その

際に助けのひとつとなるのが訓練マニュアルであり、プロジェクト終了までにその最終化が

待たれている。また、各国政府や所属機関による支援が、アクションプラン実施の促進要因

である。既に、帰国研修員が習得したモデルや技術が普及に十分活用され、組織レベルのイ

ンパクトを発現しているケースもあり、これらの好事例が研修員間のネットワークを通じ、

他国に普及されることが期待される。

4-6 結 論

全般的に、本プロジェクトは、計画数に近い研修員育成に成功している。JICA農業農村開発関

連事業にとり、初めての国際機関(IRRI)及び嘗ての技術協力相手機関と連携したアフリカ支援

であった。プロジェクトはPhilRiceに南南協力を開始する機会を提供し、PhilRiceの専門性と自信

をより一層高めた。国際機関との連携による南南協力の試みを通じ、さまざまな教訓が得られた。

妥当性に関しては、CARDメンバーであるアフリカ諸国及び日本政府の政策と基本的ニーズに

合致しており、個人能力向上というプロジェクト目標はある程度達成する見込みである。効率性

は中程度である。さまざまな正のインパクトも発現している一方、帰国研修員が更に活用され、

上位目標が達成されることが期待される。持続性は、技術面強化のために訓練マニュアルの完成

が待たれている。

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第5章 提言と教訓

5-1 提 言

1. 訓練マニュアルの完成と研修員への配布

IRRIはプロジェクト終了までに研修マニュアルを取りまとめ、IRRIの経費で研修参加者に

配布する。

2. フォローアップ調査票を取りまとめた報告書の作成

IRRIは最新の優良事例を含むフォローアップ調査の結果を9月末までに取りまとめる。

3. 研修員名簿の配布

IRRIは研修員名簿を、研修員、研修員所属先機関、JICA在外事務所に送付する。

4. 研修員に対する習得した知識の積極的活用の継続的な奨励

IRRIは研修参加者に対して、研修で得られた知見の実践での活用のためにメールなどを活

用したコンサルテーションを継続する。例えば、最新の研究成果の共有等も期待される。

5. JICAは各国の研修参加者と、NRDSタスクフォースメンバーやJICA専門家とのリンケージ

強化を行う。

5-2 教 訓

1. プロジェクト目標の共通認識及びモニタリング体制の構築

モニタリングと報告について、関係者間で明確な理解が得られていなかった。通常研修事

業でプロジェクト・デザイン・マトリックス(Project Design Matrix:PDM)やモニタリング

シート等を作成はしないが、研修成果の持続性を考えれば、プロジェクト開始段階で、明確

な指標とともにこのようなツールを設定することが、より効率的であった。より頻繁にIRRI

とJICAの間でTV会議などの機会をもつことができれば、より円滑な実施につながったと思わ

れる。

2. 会計手続きを含めた全体スケジュール設定

研修実施のためには、それに係る準備が重要になる。しかしながら、研修に必要な資材の

購入が契約のタイミングが影響して遅れるなどの事例がみられた。会計手続き(契約手続き

を含む)を見据えた余裕のあるスケジュール設定が必要である。

3. 研修員の適切な選定プロセス

研修の持続性向上には、コース内容が適切であり、研修で得られた知見の実践が期待でき

る研修員を選定することが必要不可欠である。この点から、研修員の応募資資格はGIに明確

に記載することが望まれる。また、選定の段階でJICA各国在外事務所からの支援が必要不可

欠となる。これにより、JICA専門家による帰国後のフォロー等も期待ができる。選定プロセ

スは少なくとも研修開始の3カ月前には開始されるべきである。

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4. 研修員による、アクションプラン実施のための予算確保を念頭においた事前準備

参加者が帰国後に持続的に活動を行うためには、IRRIがJICA在外事務所の支援も得ながら、

各参加国の農業省と参加者の位置づけを明確にしておく必要がある。加えて、研修参加者は

参加前に利用可能な予算について十分な情報を準備しておくべきである。これが整えば、研

修帰国後すぐに活動予算を予算関係部署やドナープロジェクトに申請できる。これは、研修

員にとってもよい訓練となり得る。

5. 研究と普及の連携をめざした3コースの同時期実施

個々の研修の実施タイミングを調整し、同じ国の研究員、普及員が同時期にフィリピンで

研修を受けることができれば、研究と普及の連携強化の一助となる。このような、インパク

トを広める調整も事前に検討することが望ましい。

6. フォローアップ訪問時の有効活用

IRRIによるフォローアップが4回実施され効果的であったが、滞在期間が長ければよりよい

活動ができたと思われる。例えば、最新の研究内容についての小規模セミナー開催等も可能

となる。また、フォローアップ訪問時、各省庁高官に会う際に研修参加者が同席することで、

研修参加者と政府高官とのリンケージ強化に寄与することとになる。

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付 属 資 料

合同評価報告書(英文)

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