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国際エネルギー動向分析 1999 年 12 月号

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 1997 年秋にタイを震源地として発生した,アジア通貨危機の影響により各

国のエネルギー需要が低迷する中,潜在的な巨大エネルギー市場であるイン

ド,中国で LNG 輸入に向けた動きが活発化している。本稿では 1998 年夏以降,

複数の LNG 供給契約を締結しているインドに焦点を当て,国内エネルギー事

情や天然ガス(LNG)輸入プロジェクトについて紹介する。

1.エネルギー情勢

1-1. エネルギー政策

 インドのエネルギー政策は第 9 次 5 ヵ年計画の主旨に基づいて策定されて

おり,その柱となるものは以下の 3 つである。

① エネルギーインフラの整備(未開発地域の電化など)

② 輸入が急増する石油から他燃料への転換(再生可能エネルギーの有効利

用)

③ 増加するエネルギー需要の抑制(需要管理・エネルギーの効率的利用)

1-2. エネルギー行政機関

 インド連邦政府の下に計画委員会(Planning Commission),石油・天然ガス

省(Ministry of Petroleum & Natural Gas),電力省(Ministry of Power),

 国際動向分析グループ主任研究員 (�PDLO�DQGR#WN\� LHHM� RU� MS

ガスグループ研究員 (�PDLO�NRLGH#WN\� LHHM� RU� MS

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国際エネルギー動向分析 1999 年 12 月号

石炭省(Ministry of Coal),新エネルギー省(Ministry of Non-conventional

Energy Sources),原子力庁(Department of Atomic Energy)が位置し,各エ

ネルギー行政を担当している。また,各省庁の管理下に国営企業,局,州レ

ベルの行政組織が存在している(図 1-1)。

 エネルギー政策は計画委員会が各省庁より提出された計画案をもとに,5

ヵ年計画を策定している。計画委員会のエネルギー部門が,エネルギー供給

の確保,環境保護,その他エネルギーに関する政策を担当している。

図 1-1. エネルギー行政組織および産業構成

(出所)Tata Energy Research Institute

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国際エネルギー動向分析 1999 年 12 月号

1-3. エネルギー需給

1-3-1. 概  況

 1996 年における総エネルギー生産は約 2 億石油換算トン(TOE)であった。

そのうち 70%を石炭が占めている。石油生産は 3,500 万トン(全エネルギー

生産の 17%),天然ガスは 1,700 万 TOE(同 8.5%)であった(図 1-2 参照)。

 石油生産は沖合のボンベイ・ハイ(Bombay High)油・ガス田が主要生産地と

なっているが,1970 年代に生産を開始した同油・ガス田は老朽化により油/

ガス比率が上昇したため,しばしば生産抑制を実施している。その結果,生

産量が 1990 年代に入り乱高下している。天然ガスについてもボンベイ・ハイ

図 1-2. エネルギー供給の推移

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国際エネルギー動向分析 1999 年 12 月号

(出所)IEA,“Energy Statistics and Balances of Non-OECD Countries”1998 より作成

油・ガス田の随伴ガスが主となっているため,石油ほどではないが生産量に

ばらつきがみられる。

 輸入量は 4,000 万 TOE ほどあるが,その大半を石油が占めている。石油需

要の増加が著しく,国内供給では賄いきれなくなっている。

1-3-2. エネルギーの国内生産,輸出,輸入

 インドにおけるエネルギー自給率は 83%であった。石炭に関しては自給率

96%,天然ガスに関しても自給率 100%となっているが,石油は自給率 50%

と低くなっている(図 1-3 参照)。水力他で若干輸出入が行われているが,こ

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れは隣国との電力貿易に起因するものである。

図 1-3. エネルギー国内生産,輸入,輸出

(出所)IEA,“Energy Statistics and Balances of Non-OECD Countries” 1998 より作成

1-3-3. 最終エネルギー消費

 1996 年のインドにおける最終エネルギー消費は 1.56 億 TOE であった。そ

のうち 54.4%を産業用が占めており,次いで輸送用(25.6%),家庭用

(13.3%)となっている(表 2-1 参照)。1986-1996 年の 10 年間における最終エ

ネルギー消費の伸び率は,年平均で 5.3%であった。部門別に見ると商業用

の伸びが最も高く年率 11.8%,次いで農業用の 10.4%となっている。

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国際エネルギー動向分析 1999 年 12 月号

表 1-1. 最終エネルギー消費の推移

(出所)IEA,“Energy Statistics and Balances of Non-OECD Countries”より作成

2.天然ガス事情

2-1. 天然ガス供給体制

 (1) 天然ガス関係の行政組織

 計画委員会が 5 ヵ年計画を作成する。石油・天然ガス省が天然ガスの開発

および生産,供給,市場監視に関する責任を負う。

 (2) 探鉱・開発・生産事業

 従来,インドの探鉱・開発事業は,国営企業の Oil and Natural Gas

Corporation(ONGC),Oil India Ltd.(OIL)が独占してきた。外資企業は,石

油・天然ガスの存在が確認されていない地域での探鉱活動に限られていたが,

政府の規制緩和策により,石油・天然ガスが既に発見された地域での探鉱が

認められるようになったほか,合弁企業の設立に際しても外資企業の 51%ま

での出資が認められるようになった。今後もインド政府は外資参入比率の上

限廃止や鉱区使用料の引き下げなど, New Exploration Licensing

Policy(NELP)を軸とする規制緩和を進めて行くとみられる。

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国際エネルギー動向分析 1999 年 12 月号

 (3) 輸送・販売事業

 ○ Gas Authority of India Ltd.(GAIL)

 インドにおけるガスの輸送・販売 を行うため,1984 年に設立された国営

会社である。インドにおける主要幹線パイプラインである HBJ(Hazira~

Bijapur~Jagdishpur)パイプラインなど多くのパイプラインを保有し,発電

所,工場などへの供給も行っている。

 同社が行っている業務は以下の通りである。

① ガス輸送・配送

② ガス販売

③ LPG

④ 石油化学

⑤ 合弁事業

GAIL が手がける事業はガス輸送~販売といった下流事業であり,ガス田開

発などの上流事業は行っていない。ガスは ONGC や OIL より購入している。ま

た,民間の合弁企業からも長期契約に基づきガス購入を行っている(Ravva ガ

ス田より 0.7MMSCMD,インド西側沖合の Panna-Mukta ガス田と Tapti ガス田

より,それぞれ 1.4MMSCMD,4.2MMSCMD)。

インドにおける天然ガス生産は,ボンベイ・ハイ油・ガス田をはじめとする

西岸側が主であるが,内陸でも多数のガス田が発見されており,グジャラー

ト州,アンドラ・プラデッシュ州,タミル・ナドゥ州,ラジャスタン州,ト

リプラ州で同社によるガス供給が行われている。

 ① ガス輸送・配送事業

GAIL は後述の HBJ パイプラインを含む3,800kmのパイプラインを所有して

おり,1996 年度の国内ガス総供給量 64MMCMD(23.4BCM/年)の 74%に相当する,

47.36MMCMD(17.3BCM/年)のガスを輸送している。

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国際エネルギー動向分析 1999 年 12 月号

1988 年の HBJ パイプライン完成承認後,GAIL は ONGC が建設・管理してい

た約 725km に及ぶパイプラインをインド政府より譲り受けている。また,需

要家が建設した 320km のパイプラインに関しても,同社が運営を担当してい

る。さらに上記以外でも,総延長 600km のパイプラインをインド各地で建設

している。これらのパイプラインは需要家のニーズに応じて敷設したもので,

延長は 0.5km から 75km までと様々である。

GAIL は HBJ パイプライン以外にも,小規模の輸送パイプラインネットワー

クを国土西部,北東部,南部のマハラシュトラ(ムンバイ),グジャラート,

ラジャスタン,アンドラ・プラデッシュ,タミル・ナドゥ,ポンディチェリー,

アッサム,トリプラ州に所有・運営している。パイプラインの延長は4km か

ら 90km まで,直径4インチから 18~24 インチと,その地域のガス供給(販売)

量により異なっている。

 ② ガス販売

 同社のガス販売量は設立時(1987 年度)の 0.54MMCMD(0.2BCM/年)から約

20BCM へと増加している。将来的な販売量としては,既に 230 の需要家と

32BCM/年の供給契約(コミットメント)を結んでいる。

産業用,発電用のガス供給が大半を占めるが,ムンバイでは民生用都市ガ

ス販売を British Gas との合弁事業として行っており,さらにデリー,

Agra/Ferozabad & Mathura でも合弁事業による都市ガス配給網の整備を行っ

ている。

 ②-2 ガス価格

 1997 年 7 月まで,天然ガス価格はインド政府により決定されていた。しか

し,経済自由化政策の一環として,低硫黄/高硫黄重油の国際市況に連動した

価格設定がなされている。

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 1997-98 年は重油価格の 55%,1998-99 年は 65%へ,さらに 1999-2000 年

には 75%へと段階的に引き上げられる予定であり,本価格スキーム導入後 4

~5 年での 100%重油国際市況リンク達成を視野に入れている。

 天然ガス価格(ランドフォールプライス:パイプライン入口価格)は下限価

格の 2,150 ルピー/1,000m3(10,000kcal/m3)から,上限価格の 2,850 ルピー

/1,000m3 の間で四半期毎に変動する。インド北東部での価格(Concessional

Price)は,下限価格 1,200 ルピー/1,000m3 から,上限価格 1,700 ルピー

/1,000m3の間で変動する。段階的移行によって,2000 年までに価格完全自由

化がおこなわれると考えられている。直近の天然ガス価格を表 2-1 に示した。

表 2-1. 天然ガス価格

四半期 ガス価格(ルピー/1,000m3)

HBJ/陸上 北東部

1999 年第 1 四半期 2,215 1,274

1998 年第 4 四半期 2,222 1,200

1998 年第 3 四半期 2,246 1,307

(注)天然ガスの熱量は 10,000kcal/m3

(出所)GAIL

 ○ Gujarat Gas Company Ltd.(GGCL)

同社は 1988 年に Arvind Mafatlal Group と Gujarat Industrial Investment

Corp.により設立され,ONGC のガス田から Gujarat 州の需要家にガスを供給

している。1989 年 9 月に供給を開始,Gujarat 州 Surat,Ankleshwar,Bharuch

などに約 1,200km のパイプラインと産業用・商業用・民生用需要家約 10 万件

を持つインド最大の民間ガス供給会社に 10 年間で急成長した。さらに,GAIL

の所有する HBJ パイプラインへの接続として,GGCL は 1999 年に Hazira から

Ankleshwar への 73km 輸送幹線の運転を開始した。

 1997 年,BG(British Gas)は Gujarat Gas の株式の 41.31%を総額 2,570

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国際エネルギー動向分析 1999 年 12 月号

万ポンド(約 50 億円)で取得した。

 ○ Mahanagar Gas

GAIL と BG の提携(50:50)により設立されたガス配給会社で,ムンバイ(イ

ンド最大の都市:旧ボンベイ)でガス供給を行っている。1999 年初における

同社の需要家数は約 1 万件であるが,2000 年までに需要家数を 10 万件に増

やす計画を持っている。

同社は圧縮天然ガス(CNG)自動車燃料の供給も行っており,現在 CNG 充填所

を 16 ヵ所に増設中である(1998 年 11 月時点の CNG 充填所数は 8 ヵ所)。また,

Bombay Electric Supply and Transport Ltd.社と 650 台の CNG バス運行に向

け,燃料供給を行うべく協力を行っている。既に 10 台の CNG バスを用いた実

地試験に成功している(軽油燃料を 90kg の CNG に転換することで,700km の

走行距離を達成)。

2-2. 天然ガス需給

 インドの確認埋蔵量は,665BCM(1998 年 1 月 1 日時点:Cedigaz)である。

1998 年における生産量は 19.99BCM(自家消費分含まず)で,およそ 73%がム

ンバイ沖合に位置するボンベイ・ハイ油・ガス田からの生産であった(表 2-2

参照)。また,生産の大半は国営石油・ガス企業の ONGC が担っている。

表 2-2. インドの地域別天然ガス生産量

(注) 資料原本には自家消費を除く天然ガス利用量と記載。通常インドの統計は毎年 4月

から翌 3 月までの年度ベースであるが,暦年ベースに直してある。A.P.は Andra Pradesh の略。

(出所)Government of India, Ministry of Oil and Gas

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 1996 年における天然ガス消費量は 19.2BCM であった。用途別では化学肥料

工業をはじめとする産業用が 9.7BCM で,全体の 56%を占めている。次いで

発電用の 38.5%となっている。民生用の利用は少なく,全体の1%である(表

2-3 参照)。過去 10 年間の消費伸び率は全体で 12.5%と高く,発電用の伸び

が 12.3%,産業用も 10.9%となっている。

表 2-3. 天然ガス用途別消費量の推移

(注)天然ガス消費量は 9,800kcal/m3に換算している。(出所)IEA, µEnergy Statistics and Balances of Non-OECD Countiresµより作成

2-3. パイプライン

 パイプラインのうち海底パイプラインは ONGC の所有で,陸上のパイプライ

ンは GAIL の所有となっている。 主要なパイプラインとしては,HBJ パイプ

ラインがある。全長で約 1,900km のパイプラインは Hazira(Gujarat 州)か

ら Bijaipur(Madhya Pradesh 州),Jagdishpur(Utter Pradesh 州)まで延

びており,6.6BCM/年のガス輸送能力を持っている(図 2-1)。パイプラインで

輸送されたガスは主に電力,化学肥料,石油化学用で使用されている。

HBJ パイプラインは拡張が計画されている。この拡張計画はガス輸送能力

を 12BCM/年まで増やすとともに,パイプラインを Bijaipur から Dadri の発

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国際エネルギー動向分析 1999 年 12 月号

電所などへ 505km 延長するものである。

後述の LNG 輸入に関するパイプライン建設として,BG/Gujarat Gas による

Gujarat 州 Pipavav LNG 受入基地から Maharashtra/Gujarat 州境界に沿って

延びる,Pipavav~Surat~Ankleshwar~Bharuch~Baroda パイプライン計画

がある(Ankelshwar~Baroda 間は既存:表 2-4)。また,Ankelshwar と HBJ パ

イプラインの接続工事(延長 73km)を現在行っている。

図 2-1. HBJ パイプライン

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国際エネルギー動向分析 1999 年 12 月号

(出所)Gerald B. Greenwald Ed., ´Liquefied Natural Gas: Developing and Financing

International Projectsµ

表 3-4. インドの主要パイプライン

西部海洋 所有者 延長(km)

Bombay High~Hazira

Bombay High~Uran

Heera~Uran

South Bassein~Hazira

ONGC

ONGC

ONGC

ONGC

216

220

81

243

(計画中)

Heera~Uran

South Bassein~Hazira

Bombay High~Heera

Pipavav~Surat

ONGC

ONGC

ONGC

BG/Gujarat Gas

85

250

142

N.A.

HBJ パイプライン(Hazira~Bijaipur~Jagdishopur)

GAIL 1,891陸上

(計画中)

HBJ パイプライン拡張Surat~Ankeleshwar

GAIL

BG/Gujarat Gas

505

N.A.

(注)Pipavav~HBJ パイプライン接続の計画で総延長 120km,投資額 1.5 億ドルを要する。(出所)各種資料より作成

2-4. 天然ガス需要見通し

 1990 年代,インドの天然ガス需要の伸び率は一次エネルギーでは最も高い

年率 22%を記録しており,今後もこの傾向は続くものと考えられている。

GAIL の見通しでは,天然ガス需要は 2004-2005 年に 188MMSCMD,2009-2010

年に 284MMSCMD に達するが,国内の天然ガス生産量は現状レベル 70MMSCMD

からあまり増加しないと考えられている(LNG Express Jan-1999)。

 インドの発電能力の現状は 80,000-90,000MW でピーク時発電量において

35,000MW 不足しており,現在の 5 ヵ年計画では 45,744MW の増強を目指して

いる(実現可能な能力は 40,000MW 程度)。なかでも天然ガス火力発電へのシフ

トが顕著で,今後のインドで天然ガス需要は発電用を中心に伸びて行くと考

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国際エネルギー動向分析 1999 年 12 月号

えられている。用途別見通しでは 1999-2000 年の総供給量のうち,電力:

30MMSCMD (34%),肥料用:28MMSCMD(31.5%),2004-2005 年では電力:

72MMSCMD(38%),肥料用:30MMSCMD(16%),2009-2010 年では,電力は

156MMSCMD(55%)に達するとしている。

 また,Petronet LNG も同様な見通しであり,インドの天然需要は 1995 年

の 18BCM から,2010 年には 103.7BCM へと達する見込みである。部門別需要

では,発電部門が需要増分の 60%を占める見通しとなっている(図 2-2)。

 天然ガスの需要急増に対し,国際石油・ガスコンサルタントの

WoodMackenzie 等の見通しによれば,国内生産はさほど伸びないことから,

需給ギャップは 70-90BCM に達すると考えられる。

図 2-2. インドの天然ガス生産/需要見通し

(出所)Petronet(Petrostrategies)

 国内での石油・天然ガス需給ギャップ拡大に鑑み,将来的な石油・天然ガ

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国際エネルギー動向分析 1999 年 12 月号

ス産業のあり方について,首相直轄の委員会により“India Hydro Carbon

Vision 2020”と称するレポートが提出されている。レポートには将来的な石

油・天然ガス資源開発や需要開拓,石油下流部門の体制などに関する構想が

記されており,2020 年までの各時点における目標(マイルストーン)が設定さ

れている。

 レポートには天然ガス需要拡大と LNG 輸入も記されており,以下ではこれ

らの展望について記す。

 (1) 天然ガス需要急増への対応策

 本レポートでは,天然ガスは 21 世紀の燃料と位置付けられており,その需

要は供給を大幅に上回ると考えられている。不足分の天然ガス調達手段とし

て,下記のオプションが考えられている。

・ New Exploration & Licensing Policy(NELP)に基づく,国産天然ガスの増

産。

・ 天然ガス輸入:国際パイプラインあるいは LNG。

・ 炭層メタンの開発・生産。

国際天然ガスパイプライン敷設による,ガス輸入のオプションとして,

・ 東インド(バングラデシュより)-インド

・ 中東-インド

・ 中央アジア-インド

の 3 ルートが存在する。

 LNG輸入に関しては,2004-2005年までに潜在需要は2,000万トン/年,2009

-2010 年までには 4,000 万トン/年に達するというシナリオである。用途は

主に発電,化学肥料,その他産業向けである。後述の如く,ダホール(Dabhol)

をはじめとして多数の LNG 輸入プロジェクトが承認されている。

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国際エネルギー動向分析 1999 年 12 月号

 (2) 国際ガスパイプラインによる輸入

 国際ガスパイプラインによる天然ガス輸入については,下記のプロジェク

トが挙がっている。しかし,インド-パキスタン間の関係が良好でないこと

から陸上パイプラインによる輸入は困難。一方,海底パイプラインは経済的,

技術的に困難でとの判断から,インド政府は LNG による天然ガス輸入を薦め

ている。

 以下に検討されているパイプライン・ガス輸入プロジェクトを記す。

 ① バングラデシュ-インドパイプライン(東インド-インドルート)

 バングラデシュでは近年巨大ガス田の発見が相次いでおりインドは東海岸

および Andhra Pradesh 州へのガス輸入を望んでいる。しかしながら,バング

ラデシュ政府はガス開発計画を明らかにしておらず,ガス田開発が進んでい

ない状況にある。またガスや水といった天然資源をインドに輸出することに

ついては反対する政党などにより国民世論的な感情問題となっており,1999

年 3 月の Hasina 首相の声明において,国内のガス利用は第一に現在電気を使

っていない大半の国民のために発電用に使用し,当分の間インドへの輸出は

検討しないと述べられている。

 反対派である Bangradesh Nationalist Party(BNP)がインドとのガス契約

反対キャンペーンを掲げるだけに留まらず,新たなガスブロックを外国石油

会社に Profit Sharing Contracts で提供する政策審議が滞っている状況にあ

る。このため PetroBangla も資源の欠乏に見舞われていると伝えられる。

バングラデシュ国内の状況が近い将来変化する見通しは現状見られないが,

バングラデシュが自国のガス開発を本格的に進めるためには,巨大市場イン

ドへの天然ガス輸出を避けて通れないと言われている。外国資本はバングラ

デシュがいずれガスの輸出を認めると見ているが,2001 年総選挙以前に

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Sheikh Hasina 首相が決断するとは見ていない。

 GAIL と Brown & Root Inc(米)が行ったバングラデシュから 28MMCMD の

天然ガス輸入可能性に関する初期調査では,インド東部の West Bengal 州か

ら南東部の Orissa 州までパイプラインを敷設し,将来的にはガス供給源をバ

ングラデシュからミャンマーへ延長することも視野に入れている。

 ② オマーン-インドパイプライン(中東-インドルート)

オマーンからインド西海岸へ至る全長 1,150km,供給能力 20BCM/年の海底

ガスパイプライン構想は,深海部にパイプラインを敷設する技術的困難さ,

高コスト,パイプラインプロジェクトの経済性に見合う十分なガス埋蔵量が

確認されていない,といった問題があり,構想段階の域を出ていない。現状

では LNG による輸入が先行している。

 ③ イラン-インドパイプライン

イランからパキスタンを通過しインド西岸へ至る全長 2,200km,供給能力

18~20BCM/年の海底パイプライン構想は 1993 年に発表された。サウス・パー

スガス田から供給され,Shell とイラン国営石油会社(NIOC)がプロジェク

トを主導していた。しかし,イランからパキスタンの経済水域である大陸棚

にパイプラインを敷設することにパキスタンが同意しないため,話は進展し

ていない。パキスタンとインドの間では 3度の戦争と 1998 年の原子爆弾実験

に対する非難など長期間政治的緊張が続いている。1999 年 2 月にインド首相

Atal Bihari Vajpayee がイランからの海底パイプライン計画にパキスタンの

相乗りを勧めたことから一時緊張が緩和したが,最近のカシミール空爆を巡

る動きで両国関係が緊張したことや,パキスタン国内で巨大なガス埋蔵量が

確認されたことなどもあり,パイプラインプロジェクトの進展は難しい状況

にある。

代替案としてGAILはイランのガス当局とLNGによる取引の可能性について

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検討を行っており,British Gas はイランの Kish 島にインド向け LNG 供給を

行う 10 億ドルの基地建設を提案している。

 1999 年 7 月,イラン副首相 Mehdi Hashemi(ガス事業担当,石油相)は,イ

ランからインド西岸へパキスタン領海を迂回するパイプラインで LNG より

10%安い価格でガス供給を行えるとインド産業界の主催する会合で述べてい

る。イランは今日では技術的問題は解決し水深1km の深海にパイプライン敷

設は可能としており,パキスタン領海を通過しないことからパキスタンの敷

設許可を必要としなくなった。延長 1,000km のパイプライン敷設コストは 30

~40 億ドルで工期は 2 年間としている(The Hindu Business Line July 14,

1999)。

 パイプラインルートに関しては Gazprom,Iranian National Gas Co.,GAIL

の共同調査が検討されている。初期調査では 2 本の 24 インチ径パイプライン

(各パイプラインの輸送能力は 10 億立方フィート)を建設することで経済性

は確保されるとしている。

 中央アジア-インドルートに関しては,トルクメニスタン~アフガニスタ

ン~パキスタン(CentGas パイプライン)~インドというルートが考えられる

が,1998 年 12 月に CentGas プロジェクトリーダーのユノカル(Unocal:米国)

がコンソーシアムから脱退したこと,インドとパキスタンの両国関係が良好

でないことから,敷設に当たり解決すべき課題が多い。

3.LNG 輸入プロジェクト

 インドの LNG 輸入計画は,構想段階から基地建設に着手したものまで十数

件を数える(表 3-1)。これほど多くの LNG プロジェクトがインドで計画され

る背景には,今後電力分野を中心に急増するガス需要に国産の天然ガス生産

量だけでは対応できず輸入量拡大を図る必要がある一方で,近隣諸国からの

パイプライン輸入は政治的,技術的理由から近い将来における実現は困難と

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判断され,LNG による輸入をインド政府が奨励したためといわれている。

表 3-1. インドにおける LNG 輸入基地建設計画

事業者 地名 州名 当初能力(百万トン/年)

Enron Dabhol Maharashtra 5.0

Petronet Dahej Gujarat 5.0

〃 Cochin Kerala 2.5

CMS Energy 等 Ennore Tamil-Nadu 2.5

BG/Pipavav port Pipavav Gujarat 2.5

Total/Tata/GAIL Trombay Maharashtra 3.0

Shell/Essar Hazira Gujarat 2.5

Reliance/Elf

/Tractebel

Hazira Gujarat 2.5

〃 Jamnagar Gujarat 5.0

Petronet Gopalpur Orissa 5.0

〃 Karnataka Mangalore 2.5

GAIL Kakinada Andra Pradesh 2.5-3.0

NFC/Hardy Oil Kakinada Andra Pradesh 2.0

Total/HPCL Vizag Andra Pradesh 2.5

Core Group 未定 Orissa 7.5

Finolex Karnataka Mangalore 2.5(中止)

(注)NFC は Nagarjuna Fertilizer and Chemical Ltd.の略。HPCL は Hindustan PetroleumCorporation Ltd.の略。Core Group は the Indian Farmers Fertilisers Cooperativeと Tata Chemicals,GAIL,インド火力発電公社からなる。Finolex の計画は 1999 年 4月上旬に中止が発表された(The Hindu Business Line 1999 年 4 月 5 日)。上記表以外にも候補地,能力未定の計画が数件存在する。

(出所)各種資料より作成

3-2. インド LNG 輸入における問題点

1998 年から 1999 年にかけてインドの LNG 輸入プロジェクトは動きが活発

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化し,特に LNG 供給国との購入契約を締結させるなど大きな進展を見せた。

Enron (Dabhol),Petronet(Dahej,Cochin)は売買契約(SPA)を締結,

DBEC(Ennore)は意思確認書(HoA)を締結し売買契約締結間近とされている。

BG(Pipavav),Trombay(TotalFina-Tata-GAIL)などのプロジェクトでも供給ソ

ース確保に向けた活動が行われていると言われる。

輸入 LNG の供給先として発電所を中心に考えているプロジェクトが多いが,

各プロジェクトとも発電用だけでは輸入量を消化しきれないため肥料用,産

業用等需要家向けパイプライン供給について,パイプライン建設の準備,需

要家の獲得交渉を進めている段階にある。

 このように幾多の LNG プロジェクトの進展が伝えられる中で,LNG プロジ

ェクトの進捗を阻害する問題点が指摘されている。

 (1) 州電力庁の財政赤字問題への対応

現在進展が伝えられる LNG プロジェクトの多くは LNG 基地と発電プラント

をセットにしており,発電した電力を当該州の電力庁に長期電力購入契約に

基づいて供給する方式を想定している。その際,農業用分野における電力料

金補填(Subsidy)制度などに起因する巨額の負債を抱え破産寸前にある州電

力庁の財政状態に対する保証を取り付けておかない限りプロジェクトの進展

は望めない。

 (2) 支払能力のある需要家の確保

 ほとんどのプロジェクトでは LNG 契約量の大半を発電用途のみで消費でき

ず,肥料用,工業用などガス供給用途での需要家獲得を必要としている。化

学肥料工場や石油化学企業が多数存在する Gujarat 州では,既に Petronet

の Dahej 基地と British Gas の Pipavav 基地の間で需要家の争奪戦が行われ

ている状況にあり,支払能力のある優良な顧客を見つけることはプロジェク

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トの死活問題と言われる。

 (3) LNG 輸送船の調達問題

 インド政府は輸送船に関しては FOB を奨励しているが,現行の法律では外

国船籍の輸送船を 1 年以上長期傭船することは認められていない。LNG 輸送

船は長期傭船が一般的であり,プロジェクトコンソーシアムや電力会社から

改正の要望が上がっている。インド輸送船業界団体(Indian National

Shippers' Association)はこの動きに反発して,インドの船会社が LNG 船を

所有し LNG 輸送を行えるよう政府に働きかけている。今後インドで LNG 船は

5~7 年で 15 隻程度必要と言われているが,全ての LNG プロジェクトで LNG

船建造・運用に関わるコストを計上していない模様で資金確保等今後の対応

が必要とされる。

 (4) 不安定な政治状況

 LNG プロジェクトに関して中央政府は無関心を装っている状況で州政府と

中央政府の連携がうまくいっていない。中央政府,州政府とも安定多数の政

治勢力が無く,特に地元の利権に直接からむ州議会での政治勢力が入れ替わ

るとダホールの例のようにプロジェクトの進展に大きな影響を及ぼしかねな

い。

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図 3-1. LNG 基地の地図

(出所)FT Asia Gas Report

 以下では,主要な LNG プロジェクトの概況およびパイプラインプロジェク

トの状況について記す。

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 (1) ダホールプロジェクト

ダホール(Dabhol)プロジェクトは,インド西岸ムンバイ(旧ボンベイ)

から南方へ 250km,マハラシュトラ(Maharashtra)州南部ダホールにおいて

LNG 輸入基地および発電所の建設・運用,都市ガス供給を行うプロジェクト

で Enron International(米)が主体となって推進している。

 ① プロジェクトの経緯

1992年にインド政府から招請を受け外資として初めてインド発電部門への

投資に参入した Enron は,インドの不安定な政治・経済情勢から生じる困難

な問題を克服しつつプロジェクトを進めている。最大の難関はダホール発電

プラントの建設を開始した 1995 年 3 月の直後に訪れ,プロジェクトは一時ス

クラップの危機に瀕した。

1995 年 5 月の選挙で州政府の政権がダホールプロジェクト推進派である国

民会議派(Congress Party)から,ダホールプロジェクト廃止を政策に掲げた

BJP-Shiv Sena 連立政権に移ったことで同年 8 月に州政府はプロジェクトの

スクラップを発表した。BJP-Shiv Sena 連合政権は,Enron と州電力庁が締結

した電力購入契約の内容で

・発電コストが高いこと

・州電力庁債務不履行(Default)時の州政府保証(インド初のケース)

によって州財政が圧迫されることや環境問題を主な理由としてプロジェクト

のスクラップ,および債務不履行時の州保証契約の撤回を行っているが,敵

対政治勢力(国民会議派)が進めていたプロジェクトであること,反アメリカ

イズムといった政治的要因,民族的要因が強く影響したとも言われている。

 このマハラシュトラ州政府によるダホールプロジェクトのスクラップはイ

ンドの国際信用を著しく低下させ,外国資本投資を躊躇させる結果となり,

インドにとっても大きな打撃となった。Enron は契約不履行に対する訴訟手

続きを進めながらもマハラシュトラ州政府と交渉を重ね,同年 12 月には

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・州電力庁への売電価格の引下げ

・発電能力の拡大(2,015MW から 2,450MW)

・マハラシュトラ州電力庁のプロジェクトへの出資参加

などの内容を含む新契約内容の合意に至った。1996 年には,州政府,中央政

府の関係諸機関の許可を取得し,1996 年 12 月にフェーズ1の建設を再開し,

インド参入後7年目の 1999 年 5 月,ダホール発電プラントの第 1 フェーズ

740MW(ナフサ燃料による発電)の運転が開始された。

 インドにおける LNG プロジェクト推進が最近になっても難しい逸話として,

以下の報道が伝えられている。

 1999年9月のインド総選挙と平行して行われているマハラシュトラ州議会

の選挙戦で,他ならぬ Enron をマハラシュトラ州に招いた国民会議派はダホ

ールプロジェクト差し止めを掲げていた。結果的には,プロジェクトの推進

を阻害するものではなかったが,マハラシュトラ州国民会議派のリーダーは,

選挙で勝利した場合,プロジェクト第 2フェーズの建設差し止め,既にフェ

ーズ1稼動でマハラシュトラ州電力庁が支払を開始している電力購入価格

(平均 7¢/kwh)の見直しを行うことを公約として掲げていた。このマハラシ

ュトラ州の動きに対してニューデリーの国民会議派中央組織は距離を置いて

「本件に関して国民会議派中央組織との連絡は無く,マハラシュトラ州の特

定人物の考えを反映している」としており,外国人投資家の不安解消に努め

ていた。(Wall Street Journal Sept.8,1999)

表 3-2. ダホールプロジェクトの経緯

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1992 年

1993 年1994 年

1995 年

   

1996 年

1999 年

12 月

3 月

5 月8 月12 月

1 月

12 月5 月

インド政府の招請を受け Enron はインドにおける発電事業に参入Enron はマハラシュトラ州ダホールに 2,015MW 発電所の建設を計画Enron とマハラシュトラ州電力庁はダホール発電プラントの電力購入契約を締結インド中央政府,Enron のダホール発電プラント建設を承認

インド中央政府の Counter-guarantee 承認(ダホール発電プラント含むプ

ロジェクト7件)プロジェクトファイナンスをクローズ,ダホール発電プラントの建設を開始マハラシュトラ州は国民会議派政権からBJP-Shiv Senaの連合政権に移行Enron はマハラシュトラ州政府とプロジェクト再開に関する交渉を開始Enron とマハラシュトラ州政府の間で,マハラシュトラ州電力庁への売電価格の引下げ,発電能力の拡大などを含む新契約の合意新たな契約内容合意マハラシュトラ州政府・議会,ダホールプロジェクトの再開を承認その後,州および中央政府の関係諸機関の承認を取得Enron,プロジェクト(フェーズ1)の建設を再開ダホール発電プラントフェーズ1運転開始

(出所)Enron 社パンフレット等各種資料より作成

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