冷凍システムで用いる 磁気冷凍作業物質の開発 - JST...1...

21
1 冷凍システムで用いる 磁気冷凍作業物質の開発 金沢大学 理工研究域 環境デザイン学系 准教授 大橋 政司

Transcript of 冷凍システムで用いる 磁気冷凍作業物質の開発 - JST...1...

  • 1

    冷凍システムで用いる 磁気冷凍作業物質の開発

    金沢大学 理工研究域 環境デザイン学系

    准教授 大橋 政司

  • 2

    目 次

    • 序論

    強磁性体と強磁性の発現機構

    研究の目標

    • 本論

    技術開発の背景

    新技術の特性

    実験結果

    • まとめ

  • 3 http://www.space-park.jp/index.html

    鉄くぎを磁石にする

    分割すると 小さな磁石ができる

    磁石(強磁性体)

  • 4

    1個の電子が作る磁石

    実際の物質は多数の電子を持つ

    通常の釘

    磁石に着く釘

    磁石の原理

  • 5

    強磁性の発現機構

    J ri, j SiS ji, j

    常磁性 •熱振動大 (高温) •|H| 大

    強磁性 •熱振動小 (低温) •|H| 大

    r r r

    r r r

    強い強磁性の条件

    •大きなJ(ri,j) …原子間距離ri,jの最適化

    •大きなSi …磁気モーメントの大きな 元素を使用

    1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18

    1 H He

    2 Li Be B C N O F Ne

    3 Na Mg Al Si P S Cl Ar

    4 K Ca Sc Ti V Cr Mn Fe Co Ni Cu Zn Ga Ge As Se Br Kr

    5 Rb Sr Y Zr Nb Mo Tc Ru Rh Pd Ag Cd In Sn Sb Te I Xe

    6 Cs Ba L* Hf Ta W Re Os Ir Pt Au Hg Tl Pb Bi Po At Rn

    7 Fr Ra A*

    L* ランタノイド La Ce Pr Nd Pm Sm Eu Gd Tb Dy Ho Er Tm Yb Lu

    A* アクチノイ

    ド Ac Th Pa U Np Pu Am Cm Bk Cf Es Fm Md No Lr

  • 6

    本研究の目標

    • 磁気交換相互作用を決める関数Hを実験的に求める

    期待される成果

    • 磁気秩序を決定するユニバーサルな法則が得られる

    →物質の持つ各種物理量が、S, rのみで決定できる

    • この法則をベースとして、用途に応じた自在な物質設計が可能

    →自由度の高い物質探索(機能だけでなく、レアメタルフリー等コスト面においても自由度が効く)

  • 7

    ヒートポンプ 液体・気体転移時の気化熱により冷却する。 フロンガスを冷媒として用いる。

    技術開発の背景

    http://www10.ocn.ne.jp/~create/

  • 8

    液体

    圧力DOWN

    潜熱として吸収! Q2

    吸熱 気体(フロンガスなど)

    ヒートポンプの原理

    ガス膨張・圧縮

    磁場誘起・消磁

    置換え

    http://www.neomag.jp/mailmagazines/200803/letter200803.php

  • 9

    磁気冷凍システムにより、温室効果ガスを使用しない

    冷蔵庫やエアコンの開発が可能

    ⇒環境に優しい冷凍システム

    ヒートポンプでは冷媒ガスの膨張・圧縮用コンプレッ

    サーが必要

    ⇒冷蔵庫やエアコンの低雑音化・低振動化

    自動車エンジンの冷却、小型冷凍機が可能

    技術開発の背景

  • 10

    磁気冷凍システムでは冷媒となる磁

    性材料を熱サイクルさせる

    a)強磁性転移温度Tcで等温励磁

    (⊿S)

    b)断熱消磁により冷却(⊿T)

    c)ゼロ磁場で元に戻す

    a~cの循環過程で、1サイクルあたり

    Q1-Q2=Wの熱量を排熱する。

    熱効率を良くするにはWを大きくすればよい

    ゼロ 磁場

    磁気冷凍システム

    Tc

    DT

    磁場 印加

    S(エントロピー)

    DS

    Q2

    W

    Q1=W+Q2 T(温度)

    Tc

    S(エントロピー)

    技術開発の目標

  • 11

    主な先行技術の特性と問題点

    •ガドリニウム単体金属 : レアアースのため高コスト

    •Mn(As1-xSb x) 【特開2003-28532】: As, Sbの毒性のため冷媒交換や廃棄時の減価償却コストが増大。

    •La(Fe1-xSix)13Hy 【特開2006-89839】: 水素(H)抜けによる劣化あり。減価償却コストが増大。

  • 12

    • 強磁性転移温度Tc~室温付近

    →J(r)の制御: 磁性材料のサイズ効果

    ・DS, DTが大きい

    →Si, Sjの制御: 遷移金属・希土類金属の使用

    • 広く普及させるには材料コスト・製造コストが安い事が望ましい

    • 維持管理コスト軽減のため、無毒・不揮発性・長寿命

    家庭用冷凍機としての磁気冷凍システム実用化に向けて

    J ri, j SiS ji, j

    ゼロ 磁場

    磁気冷凍システム

    Tc

    DT

    磁場 印加

    S(エントロピー)

    DS

    Q2

    W

    Q1=W+Q2 T(温度)

    Tc

    S(エントロピー)

  • 13

    新技術の元となる研究成果・技術 RXy (希土類強磁性体)へのホウ素(B)添加

    Tcが高くなるほど⊿Sが小さい

    →大きな⊿SとTcの上昇は

    相反する

    RX2化合物のTcとDSの関係(N.H.Duc et al., 2002) ホウ素添加により結晶サイズ増加と試料硬化を同時に達成 →結晶体積によりTc増加、試料硬化により⊿S増加が期待できる。

  • 14

    ErCo2

    0

    200

    400

    600

    800

    1000

    1200

    1400

    1600

    1800

    5 25 45 65 85

    強度(cps)

    0

    50

    100

    150

    200

    250

    300

    350

    400

    450

    5 25 45 65 85

    強度(cps)

    0

    200

    400

    600

    800

    1000

    1200

    5 25 45 65 85

    強度(cps)

    ErCo2B0.07

    0

    200

    400

    600

    800

    1000

    1200

    5 25 45 65 85

    強度(cps)

    ErCo2B0.1

    実験結果: X線結晶構造解析

    ホウ素添加による結晶構造変化なし →結晶サイズ変化のみ

    ErCo2B0.02

  • 15

    実験結果: 格子定数と転移温度

    0

    10

    20

    30

    40

    50

    60

    70

    7.11 7.12 7.13 7.14 7.15 7.16

    格子定数a(Å)

    転移温度

    Tc X=0

    X=0.02

    X=0.04

    X=0.07

    X=0.10

    X=0.20

    ErCo2Bx

    ホウ素添加により結晶サイズ増加→Tcが変化

    B

    Er

    Co

    B a

  • 16

    想定される用途 • 回転型AMR方式を採用した磁気冷凍システムにおいて、

    COP~15(実験室系), COP~3(試作品)程度の高い成績係数が得られている。

    →システムの軽量化と材料コスト・製造コストが低減できれば実用化・普及可能である。

    • カーエアコンのCOP~3は、現時点での磁気冷凍システムの能力と遜色が無い

    →自動車の回転駆動機構を利用した回転型AMR式磁気サイクルを構築できれば、カーエアコンへの置換えが容易になると思われる。

  • 17

    想定される業界 • 利用者・対象

    カーエアコン、冷蔵庫など小型化が必要な冷凍システムへの適用

    家電メーカ・自動車・パソコンメーカなど

    • 市場規模

  • 18

    磁気冷凍システム普及の妨げになっている、

    材料コスト・製造コストの低減が可能。

    現在はアイディア・実験レベル。

    ホウ素添加によるTcの変化量は物質によって

    差がある。最適な物質の探索が今後の課題。

    実用化に向けた課題

  • 19

    企業への期待

    • 磁気冷凍システムは①磁気冷媒②励磁用の磁石③冷凍サイクルから成る。本研究はまず、①の開発を念頭に置いている。

    • ②については、①の物質探索技術の活用により克服できると考えている。

    • ③の技術を持つ、企業との共同研究を希望。

  • 20

    本技術に関する知的財産権

    • 発明の名称 : 磁気冷凍システム用希土類磁気冷媒

    • 出願番号 :特願2010-210623

    • 出願人 :金沢大学

    • 発明者 :大橋 政司

  • 21

    お問い合わせ先

    (有)金沢大学ティ・エル・オー(KUTLO/キュトロ) ライセンシング・アソシエイト 山田 光俊

    TEL: 076-264-6114 FAX: 076-234-4018 e-mail: [email protected]