低コストで高レジリエンスを...

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「止まったまま」にならないマイコンを実現する技術 ●高頻度で動作状態を保存・復帰して正常動作を継続する技術を開発 ●極短周期でマイコンをリセットすることにより誤動作から迅速確実に復帰 ●最小限のハードウェア機能を用いるOSカーネルにより汎用性を実現 研究のねらい 社会基盤であるコンピュータ機器の誤動作・機能停止は甚大な被害をもたらします。広範に普及する センサーなどの組み込みマイコンは、低価格・低処理能力であり、不十分なノイズ対策下での異常動作 を前提として実現することを求められます。本研究の技術は、ノイズ対策にための堅牢で高価な保護装 置に頼らず、発生した誤動作から迅速に復帰して、正常な動作を継続します。これにより、誤動作によ る機能の喪失・実際の被害が発現するに至る可能性を大幅に低減させます。 研究内容 通常のマイコンでは、誤動作から脱出する手段 としてリセット(再起動・初期化)が行われますが、 これにより実行中の状態が失われ、動作が不連続と なり、機能喪失も起こし得ます。本研究では、極短 周期のリセットにより誤動作からの迅速確実な復帰 を実現することと、リセット以前の正常動作状態を 回復して継続動作することで、見かけ上(実効的 に)連続動作している状態を実現します。この特異 な動作を実用的な性能で実現するOSの核部分 「MiRK」を開発しました。開発したOS核のレジリエ ンス特性を、実際の電気的ノイズやソフトウェアの 模擬暴走により評価しています。 MiRKの基本動作 連携可能な技術・知財 高レジリエンスOSマイクロカーネル MiRK-I プログラマブル電気ノイズ耐性評価システム EGI 関連技術分野:組み込みシステム 連携先業種:製造業(組み込みマイコン全般) スナップ ショット 作業状態 複写 タスク実行 保存 再開 周期リセット 誤動作 異常 サイクル 正常 サイクル 想定する「マイコン」の世界 CPU: 数十MHz RAM: 数Kバイト ROM: 数十Kバイト 消費電流: 数mA バッテリー長期駆動 屋外設置等 1サイクル / 5ms MiRKシステム要件 ROM使用: 10KB(カーネル) RAM使用: 2KB + ユーザデータ×2 CPU使用: 50% 機能: タイマー割込, 時限リセット源 低コストで高レジリエンスを 実現する超小型OS 「MiRK」 研究担当: 佐藤豊/諸藤力/辰野功/戸田賢二/大崎人士 : 情報技術研究部門 サイバーフィジカルセキュリティ研究グループ 連絡先[email protected](佐藤) 電気ノイズ試験 レジリエンス = 被ノイズ時の正常実行継続率 高電圧ノイズ(~15000V): 100% ソフトウェア暴走模擬ノイズ:95% 応用 高レジリエンス実現技術 マイクロカーネル「MiRK-I自然観測機器への実装 標準化 手動電気ノイズ / ソフトウェア模擬ノイズ レジリエンス評価技術 ノイズ耐性評価システム「EGIノイズ耐性指標 多様な組み込み機器への実装 高度化 OS機能・ユーティリティ整備 汎用化 今後の展開 ●研究拠点 つくばセンター

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「止まったまま」にならないマイコンを実現する技術

●高頻度で動作状態を保存・復帰して正常動作を継続する技術を開発●極短周期でマイコンをリセットすることにより誤動作から迅速確実に復帰●最小限のハードウェア機能を用いるOSカーネルにより汎用性を実現

研究のねらい

社会基盤であるコンピュータ機器の誤動作・機能停止は甚大な被害をもたらします。広範に普及するセンサーなどの組み込みマイコンは、低価格・低処理能力であり、不十分なノイズ対策下での異常動作を前提として実現することを求められます。本研究の技術は、ノイズ対策にための堅牢で高価な保護装置に頼らず、発生した誤動作から迅速に復帰して、正常な動作を継続します。これにより、誤動作による機能の喪失・実際の被害が発現するに至る可能性を大幅に低減させます。

研究内容

通常のマイコンでは、誤動作から脱出する手段としてリセット(再起動・初期化)が行われますが、これにより実行中の状態が失われ、動作が不連続となり、機能喪失も起こし得ます。本研究では、極短周期のリセットにより誤動作からの迅速確実な復帰を実現することと、リセット以前の正常動作状態を回復して継続動作することで、見かけ上(実効的に)連続動作している状態を実現します。この特異な動作を実用的な性能で実現するOSの核部分「MiRK」を開発しました。開発したOS核のレジリエンス特性を、実際の電気的ノイズやソフトウェアの模擬暴走により評価しています。

MiRKの基本動作

連携可能な技術・知財

• 高レジリエンスOSマイクロカーネル MiRK-I• プログラマブル電気ノイズ耐性評価システム EGI

関連技術分野:組み込みシステム連携先業種:製造業(組み込みマイコン全般)

スナップショット

作業状態

複写

タスク実行

保存

再開

周期リセット

誤動作

異常サイクル

正常サイクル

想定する「マイコン」の世界CPU: 数十MHzRAM: 数KバイトROM: 数十Kバイト消費電流: 数mAバッテリー長期駆動屋外設置等

1サイクル

/ 5ms

MiRKシステム要件 ROM使用: 10KB(カーネル) RAM使用: 2KB + ユーザデータ×2 CPU使用: 50% 機能: タイマー割込, 時限リセット源

低コストで高レジリエンスを実現する超小型OS 「MiRK」

■研究担当: 佐藤豊/諸藤力/辰野功/戸田賢二/大崎人士■所 属: 情報技術研究部門 サイバーフィジカルセキュリティ研究グループ■連 絡 先: [email protected](佐藤)

電気ノイズ試験

レジリエンス = 被ノイズ時の正常実行継続率 高電圧ノイズ(~15000V): 100% ソフトウェア暴走模擬ノイズ:95%

応用

高レジリエンス実現技術

マイクロカーネル「MiRK-I」自然観測機器への実装

標準化

手動電気ノイズ / ソフトウェア模擬ノイズ

レジリエンス評価技術

ノイズ耐性評価システム「EGI」ノイズ耐性指標

多様な組み込み機器への実装

高度化

OS機能・ユーティリティ整備

汎用化

今後の展開

●研究拠点つくばセンター

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MiRKの基本動作確認試験 電気ノイズをマイコンボードに注入

事象の発生回数をモールス符号でLED表示

MiRK内蔵の有無での動作の違いを確認

初期化 正常実行

被ノイズ → リセット発生

電源投入

MiRK無しボードの動作

初期化電源投入

再開

定常リセット

MiRK有りボードの動作

MiRKレジリエンス評価試験実験環境

– 使用ボード: Freescale KL25Z, STMicro各種ボード, Cypress FM0+

評価基準:MiRK生存率=正常実行継続率– ノイズを受けリセットされてもMiRKが動作を続けること

– リセットをまたがる計算の結果が壊れていないこと

ハードウェアノイズ実験:MiRK生存率=100%– ボードの I/Oポートに電圧 2kV ~ 15kVを注入

– 現在まで 3000回以上試行、初期化発生せず

ソフトウェア模擬ノイズ実験:MiRK生存率=95%(*)

– 模擬的な暴走を注入(ランダム間隔でプログラムカウンタにランダム値を設定)

(*)ROMに内蔵するプログラムにより結果は大きく異なる

永続状態

作業状態

タスク実行

保存複写

リセット

暴走停止

開始再開

正常終了

タイマー割り込み・模擬ノイズ発生器

ESD試験機による試験 ソフトウェア模擬暴走による試験手動電気ノイズによる試験

ノイズ

●赤点滅:初期化発生

●青点滅:正常実行・計算成功回数を表示(計算=AES暗号化 / 復号化 / 一致検算)

●緑点滅:リセット後・実行継続成功回数を表示(確認用に長時間点滅するが実際には5ms以内に終了)

2枚のボードの正常処理速度がずれるのはMiRKのオーバヘッドのため

MiRK無しボード

ノイズ注入器

電源保護回路

正常実行

MiRK有りボード

●研究拠点つくばセンター

検出・診断

被ノイズ → 予期せぬリセット発生

電源瞬間遮断

電源保護回路の動作各社評価ボードでの試験

■研究担当: 佐藤豊/諸藤力/辰野功/戸田賢二/大崎人士■所 属: 情報技術研究部門 サイバーフィジカルセキュリティ研究グループ■連 絡 先: [email protected](担当者全員)

●研究拠点つくばセンター