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ゼミ卒業論文 「うつ病患者とどのように接するのが最適か」 2009年度 高千穂大学 商学部 商学科 長谷川ゼミナール C06A270 高橋 佑太

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ゼミ卒業論文

「うつ病患者とどのように接するのが最適か」

2009年度

高千穂大学

商学部 商学科 長谷川ゼミナール

C06A270 高橋 佑太

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目次

はじめに

第1章 うつ病とは

1. うつ病の定義

2. うつ病患者増加の背景

3. うつ病の症状

4. うつ病の原因

第2章 うつ病患者の接し方の重要性

第3章 うつ病患者の最適な接し方

1. 医師が考える接し方

2. 私が考える接し方

3. 医師と私が考える接し方の共通点

考察

結論

おわりに

引用文献・URL

参考文献・URL

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はじめに

厚生労働省の調査によると現在日本では、国民の 6 割以上がうつ病患者もしくは予備軍

と考えられている 1)。日本の社会文化が欧米化の影響を受け、実力社会になるにつれて、う

つ病は年々増加している。この点から、私たち達もうつ病になる可能性はあるし、この先

うつ病患者と接する事があってもおかしくない。それは、家族かもしれないし、友達かも

しれない。これは、私の知人から聞いたことなのだが、うつ病患者と接するにあたって、

注意が必要なのは、家族や友達、外部の人に普段行っているような接し方とは全く違い、

間違った接し方をすると自殺に追い込んだり、症状を悪化させたりする可能性があると言

うのだ。

実際に、私の彼女がうつ病になり苦しんでいる。私は、彼女と長く付き合っているが、

どのように、接すればよいか理解に苦しみ悩んだ。というのも、見た目は、健康な人と変

わらず、普通に日常生活を送っていて、どこも悪いようには見えないのだが、内面は、す

ごく暗く、マイナス思考で、弱音や自分の批判ばかりを言う。また、嫌なこと、つらい事

から、言い訳をして逃げる傾向があり、常に何かに怯えているようなのだ。それは、健康

な人から見れば、精神的に弱い、自分に甘い、等と厳しい目で捉え、怒ったり、頑張って

ほしいがために応援したりする。しかし、うつ病患者にとっては、それらが余計負担にな

り、先ほど知人が言っていた最悪の事態を招いてしまう。

病気の辛さは本人自身しかわからない。しかし、私たちにとってもうつ病が、どのよう

な病気か分からない。そのため、周りの人と同じような接し方をしてしまい、彼女たち自

身を苦しませてしまう。私たちも、どのように接すればよいか分からず思い悩み、突き放

してしまったり、つい当たってしまったりする。このギャップが、病状を悪化させたり、

うつ病を増加させたりする問題の一つであると私は考えている。では、どうすればよいの

か。

これを、少しでも解決するためには、私たち自身が、ある程度うつ病について理解する

こと、彼女らにとって負担にならない接し方を行うこと、これらの二点が重要であると私

は考える。私は、自分が考える解決策を立証するため、第 1 章で、うつ病の定義、増加の

背景、症状、原因、について書き、問題の重要性を理解してもらう。第 2 章で、うつ病患

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者への接し方を行うことが、うつ病の増加・悪化にどの程度、解決策としてつながるのか、

実例をあげ説明する。第 3 章では、私の経験から考える接し方と医師の考える接し方を比

べ共通点をまとめ、考察し、私なりの結論を出したい。なお、情報は各文献やインターネ

ットから得ることにする。

第1章 うつ病とは

まず、この章ではうつ病のことについて理解を深めたい。私は、うつ病患者に適した接

し方をするためには、うつ病について理解する必要があると考える。

うつ病にかかると、どうしようもない無気力感のせいで、自分では生活をコントロール

し難い毎日を送ることになり、周囲から見れば怠け者に思われてしまう。しかし、それは、

症状の表れであり、本人が好きでそのようになっている訳ではなく、本人自身も悩んでい

る。だが、私たちにとって精神的な問題は理解し難く、どうしても怠けたように見える姿

が目に入り、つい叱咤激高するか引き離してしまう。

そうならないためにも、うつ病患者と接するにあたって、私たちがうつ病のことを理解

することが第一歩であると私は考える。

1.うつ病の定義

ここでは、うつ病とはどのような病気か基本的な知識を説明する。

人は、誰でも日常生活の中で様々な出来事によって憂鬱な気分になる。しかし、それは一

時的なものであり、その憂鬱にさせる原因が解決したり、気分転換したり、時間が過ぎる

ことにより、自然に回復する。ところが、原因が解決しても、憂鬱な気分が続き、普段通

りの生活を送ることが難しくなったり、思い当たることがなかったりするのに、気分が晴

れない状態が続く。これをうつ病という 2)。

例えば、私を含め、普通の人でも嫌なことがあると、落ち込んだり、悩みがあれば不安

な気持ちになったりすることはある。しかし、落ち込んだとしても、飲みにいったり、お

いしい物を食べたりするなどの気分転換をすることで、元気になるし、嫌なことはその時

だけでも忘れる。悩みは解決することによって不安は消える。

一方で、うつ病になると、嫌なことが頭から離れず、落ち込んだ状態が続く。気分転換

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をしても心が晴れることはない。悩みが解決しても、不安は消えず、本人自身も何が不安

なのか分らないようだ。これは、私の彼女自身がこのように話している。

うつ病は、脳の中の神経伝達の機能の異常によって起きる病気である 2)。そのため、精神

的な弱さやその人の性格や考え方の問題ではなく、このようになってしまう病気なのであ

る。

2.うつ病患者増加の背景

ここでは、うつ病の増加の現状を説明する。うつ病の背景としては、主に職場での「心

の病」が急増し、大きな社会問題になっていることがあげられている。以下は、インター

ネットから引用したうつ病に関する調査の結果である。

(1)『産業人メンタルヘルス自書 2002 年版』(社会経済生産性本部メンタルヘルス研究所)

この調査は、上場企業 282 社を対象に行われた。そのうち、48.9%は「最近 3年間の『心

の病』は増加傾向にある」と回答、減少傾向はわずか 3.6%という調査結果が報告されてい

る 3)。

(2)『患者調査』(厚生労働省)

この調査は、3 年ごとに全国の医療施設に対して行っている。1996(平成 8)年には 43.3

万人だったうつ病総患者(調査日には通院しなかったが前後に通院している者を含む)は

1999(平成 11)年は 44.1 万人とほぼ横ばいだったが、その後、増加を続け、2008(平成 20)

年には 104.1 万人と 9年間で 2.4 倍に増加した。これらの数字は「気分障害」(うつ病、躁

うつ病、気分変調症等)の総患者数であり、医療機関に看てもらわない患者は含まれない

4)。

(3)自殺防止に取り組む特定非営利活動法人(NPO法人)「自殺対策支援センター ライ

フリンク」(東京)(自殺した 305 人の遺族からの聞き取りや警察庁のデータを分析した「自

殺実態白書2008」(2008 年 7 月 4 日)の調査)

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この調査は、自殺の要因を 68 に分け、自殺者 305 人の遺族から聞き取りを実施した。分

析の結果、会社員なら「配置転換の後、過労と職場の人間関係の悩みが重なり、うつ病を

発症」というケースが多い事がわかったという。

また、自殺の原因で、最も多かった要因は「うつ病」の 139 件であった 5)。

この 3 つの調査結果を見ると、うつ病は増加傾向にある。私たち自身が、この先、うつ

病に関わる可能性も高い。また、うつ病が自殺と大きく関係していることも分かる。もは

や、うつ病は社会問題である。このことからも、いち早くうつ病増加、悪化を防ぐ必要が

ある。次は、うつ病の症状について説明する。

3.うつ病の症状

ここでは、うつ病の症状について説明する。なお、うつ病は、心の病気というイメージ

が強いが、身体にもさまざまな症状が起こってくる。以下では、身体症状、精神症状にわ

けて説明する。

(1)身体症状

身体の症状で特に多いのが、不眠である。寝つきが悪くなり、夜中に何度も目が覚め、

熟睡できなくなる。朝方早く目が覚めてしまい眠れないといった症状は、うつ病にとって

特徴的である。

また、うつ病で、過眠になる場合もある。これは、寝ても疲れがとれないような睡眠が

だらだら続くのである。

次に多いのが、食欲の減退である。全く食べたいものが思い浮かばない。何か食べたと

しても、おいしい、まずいという味覚が鈍ってしまう。ひどい場合は、何を食べても砂を

噛んでいるような感じがする。食欲のない状態が続くので、体重が減少してしまう。逆に、

過食になる場合もあり、食べては吐くといったような事を繰り返す人もおり、体重の変動

が激しい。また、ほとんど例外なく性欲も減退する。そのほかには、頭痛、首や肩のこり、

口の乾き、胃のむかつき、便秘、身体のだるさ、脱力感、といったさまざまな身体の症状

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が起こる。

(2)精神症状

以下では、精神症状を思考、感情、意欲に分けて説明する。

①思考

物事に対して、考えるテンポが遅くなる。例えば、本を読んでいても、考えが先にいか

ず、スムーズに読むことができず頭に入ってこない。また、考え方がマイナス面にしか考

えられず、悲しくなったり、自分を責めたりする。ものごとには、客観的に見ると、プラ

ス面とマイナス面、明るい面と暗い面があるが、プラス面と明るい面を考えなくなり、ひ

どい場合は死にたくなり自殺する場合もある。

妄想が起こる場合もある。特に、うつ病の人に起こりやすい妄想は、心気、貧困、罪業

妄想と 3 つあり、三大妄想と呼ばれている 6)。心気妄想というのは、実際には健康なのに、

深刻な身体の病気になり、もう治らないと思い込む妄想。貧困妄想は、普通の経済状態で

あるのに、貧困状態に陥っていると思い込む妄想。罪業妄想は、たいした事をしていない

のに、自分が取り返しのつかない事を犯してしまったと思い込む妄想である。

②感情

気分が病的に変化するという症状が中心となる。憂うつ感、抑うつ感といわれるもので、

このような気分は状況が変わっても、すぐに気分が変わらないのが特徴である。今まで気

晴らしになっていたものが、気晴らしにならなくなる。

例えば、悩みや嫌なことがあっても、旅行にいったり、飲みにいったりして、気分転換

ができていたのが、できなくなり、ずっと暗い気分のままの状態になる。また、理由もな

く悲しくなったり、涙もろくなったりする。自分は無力であるという絶望的な感情が湧い

たり、漠然とした不安が襲ったりする。

③意欲

何かをするのがとてもおっくうになり、ただ単に気分が憂うつになるのではなく、何か

をする意欲やエネルギーが乏しくなり、活動的ではなくなってしまう。病状が進むにつれ

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て、気力が減退し、何もしたくなくなり、自発性が減退する。他人に言われれば、何とか

行動できるが、自分から進んで動こうという気力が湧いてこない。

また、口数も少なくなり、表情も乏しくなり、常に沈んでいる状態になる。ひどい場合

だと、話しかけても応答せず、自分からしゃべらなくなるし行動もしなくなってしまう。

以上が、うつ病の症状である。次は、うつ病の原因について説明する。

4.うつ病の原因

ここでは、うつ病の原因について説明する。実は、うつ病になる原因は、はっきりと解

明できていない。今一番考えられている事は、うつ病になりやすい性質がある事と環境的

な要因によるストレス、特に外部からのストレスにより、脳に情報を与える神経物質が減

少し、脳に異常が生じ起こる 2)という説である。

環境的な要因とは自分の周りの環境の変化の事、うつ病になりやすい性質とは、考え方

の傾向や性格により、なりやすい人となりにくい人がいるという事である。以下では、な

りやすい性格のタイプとなりやすい環境を説明する。

(1)性格のタイプ

以下では、主になりやすいと言われる代表的な二つをあげ、説明する。

①きまじめな性格

几帳面で、正義感があり、責任感が強い、また仕事熱心で、自分が決めたことは徹底的

に行う。いわゆる完璧主義な人である。周りから、見れば信頼が厚い、適応力がある等、

良い部分があるのだが、このようなタイプは過労を招きやすく、疲れていても自分に厳し

く、休むことができないのである。そのため、うつ病になる信号があったとしても、無視

して働き続けたりするため、どんどん悪化してしまう。

②社交的で他者思いである反面、少し気が弱い性格

自分の意見を主張するより人の意見を、尊重し、自分の事より他人の事を思いやり、非

常に気配りができて、すごく良い印象だが、悪く言えば自分というものがなく、優柔不断

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な人である。このような人は、悩みやすく、また人の何気ない発言や行動にたいして、す

ごく敏感で傷つきやすく、自分の行動や発言にも自信がないため、自分を責める傾向があ

る。そのため、自分を責めすぎたり、人とのコミュニケーションを取ったりする中で、う

つ病になってしまう。

ただし、必ずしもこのような性格の持ち主がなるというわけではなく、ただ発祥する傾

向が高いということである。私の中で、うつ病は精神的に弱い人がなるという考えがあっ

た。以下の例を見てもらいたい。

自信過剰な上司に困っています。「うつ病は気が弱い人がなるものだ」と思っている上司

がいます。自分は絶対にならないと信じ込んでいます。うつ病の部下を「あほ」呼ばわり

します。過去の自分の経験からの知識だけで物を言います。どう説得したら分かってもら

えるでしょうか(yahoo 知恵袋 うつ病の相談)。

この例を、見ても私のような考え方をしている人が少なからずいるということが分かる。

しかし、①の性格の傾向を見てみると、気の弱い性格とは思えない。

うつ病は誰にでもなる可能性があるのだ。次は、環境的な要因について説明する。

(2)環境的なストレスによる発症

これは、男性と女性で異なる。以下は二つにわけて説明する。

①男性

転勤、リストラ、仕事での失敗、退職など社会における環境の変化での発祥が多い。特

に、リストラされてうつ病になる人が多く、理由としては、リストラされて、自分の事を

責め、また、リストラされた後の周囲からの目を気にして、マイナスの事しか考えられな

くなり、うつ病を発症するというのが流れである。

②女性

結婚生活、育児ノイローゼ、子どもの独立など家庭環境の変化によって発祥する。特に、

新しい結婚生活、子どもの独立によって起こる人が多い。結婚生活では、自分が理想して

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いた物と違い、その理想と現実のギャップに耐えられず起こる。子どもの独立では、家族

に献身的にしてきた母親がなりやすく、今まで、苦労して育てた子どもが親離れすること

で、肩の荷がおり、一気に気が抜けてしまいうつ病になるというケースが多い。

以上が環境の変化によって起こる要因である。ただ、必ずしもこのような悪い変化ではな

く、良い変化や些細なことでも起こる可能性がある。また、①、②を見ると男性なら仕事、

女性なら家庭と社会的な要因が多く、子どもや年配者などは関係がないように思われるが、

そんなことはない。年配者では、独り身になった孤独感、生きがいの損失によるうつ病の

発症が多い。子どもでは、いじめ、家庭環境などで発症することが多い。また、環境だけ

ではなく、他の疾病によって引き起こされる場合もある。

特にインフルエンザの後に、うつ状態が起こりやすいといわれており、インフルエンザ

感染が気分に何らかの影響をもたらすのではないかという説もある 7)。

このように、うつ病は年齢を問わず発症し、原因もはっきりとわかっていないため、誰

しもがなる可能性がある。その分、うつ病患者と関わることが多くなることは言うまでも

ない。関わる上で、うつ病の知識を全く知らないのと知っているのとでは、見方が違い接

し方も大きく変わるはずである。では、うつ病患者に接し方がどれほど重要であるのか。

第 2章では、接し方の重要点を確認していきたい。

第2章 うつ病患者との接し方の重要点

第 1 章では、うつ病とはどのような病気かを追求してきた。第 2 章では、うつ病患者へ

の接し方としてどのような点が重要か、またそれがうつ病患者にどのような影響を及ぼす

かを、実例を挙げて、説明したい。

1.間違った接し方の影響

間違った接し方を行うと、うつ病患者はどのようになってしまうのか。以下の例を見て

もらいたい。

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<事例1>

私の知り合いで、20 代前半の女性がいる。初めてあった頃には何ら健康な人と変わりな

く感じられた。まだ知り合って半年経つかといった期間だが、ここ最近一緒にいることが

多くなり、私に心を開いてくれたのか精神病である事を打ち明けてくれた。

しかし病院には前に行ったきりで通院しておらず薬だけは処方して貰っているようであ

る。私自身、精神病と言われても何も付き合いが変わるものではないと思っているし話を

聞いてからも何も気を使わず接している。しかしここ一月の間で2回倒れ、つい最近は救

急車を呼ばざるを得ない状況になってしまった 8)。

この事例のように、接し方が分からず、間違った接し方を行うと、うつ病をもっと悪化

させることが分かる。最悪の場合、自殺に追い込んでしまう。

<事例2>

35 歳の娘がうつ病になってしまった。だらだらしているように見えるのは病気だから仕

方ないとは思いつつ、日々、向きあっているとイライラして辛く当たりたくなることもあ

る。そんなときは、ぐっと我慢しているが、ストレスがたまり、自分までうつ病になりそ

うだ。うつ病の家族へは、どう接したらよいのだろうか 9)。

この例のように、うつ病患者を支える側(家族、友人)等も、うつ病患者にどのように

接すればよいか分からず、思い悩み苦しんでしまう。

この二つの事例を見ても、うつ病患者への接し方を理解し、行うことが、支える側、支

えられる側、双方にとって重要になってくることが分かる。

2.治療の上での接し方の重要性

うつ病の治療は、主に薬物療法や医師のカウセリングで治療するのだが、それと同じく

らい周囲の人の支えが重要となってくる。特に、最も身近にいる家族の支えが必要である。

うつ病は、必ず治せる病気であり、治療後は良好。人格を崩壊してしまうことはない。

だから、早い時期に適切な対策さえとれば後遺症を心配する必要は全くない 10)。家族や身

近な人々の存在は、治療段階においても症状の悪化を防ぎ、病状が回復するために欠かせ

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ない。

医師は、うつ病によって起こる身体や心の症状に対処し、再発しないようにする。しか

し、うつ病は、風邪と同じように通院治療が基本となるため、医師と接する回数よりも、

家族や友達と接する回数が多くなる。さらに、病院に行くにあたり、うつ病患者本人の気

分によって行く回数は変わってくる。

もちろん早くうつ病の症状に気づき、病院に通わせ、早く治療に当たらせれば、その分

回復は早く、症状の軽減にもなるため大切なことである。しかし、うつ病患者の多くが、

自分自身をうつ病と認めたくない、病院に行きたくないと思っている。

そのため、うつ病患者自身が症状に気づくのが遅れ、うつ病になっていたとしても、自

分のマイナスな考え方を病気の症状と認識できず、自分自身を責め、どんどん悪化してし

まうことが多い。

それならば、病院に連れていけば良いと考えるかもしれないが、無理やり連れて行くこ

とは余計負担を負わせてしまう。いかに、患者を傷つけずに説得するか。また、身近な人

がうつ病を理解し、本人の異常に気づいてあげ、負担をかけないように接し、支えてあげ

ることが望まれる。これらが、治療の上で大切になってくる。その意味でもうつ病患者へ

の接し方が重要になると私は考えている。

3.良い接し方による患者の心の変化

うつ病患者の負担にならない接し方を行うことは、患者を精神的に楽にし、心に余裕を

持たせる可能性がある。それによって、ネガティブな考え方が少しでも、ポジティブな考

え方になる。場合によっては、死にたいと思う自殺願望を止め、生きる希望を持たせるこ

ともできる。以下はその実例である。

<事例3>

うつ病と診断され 2 年が経つ、小学生 2 人の男児の母です。必ず治るからと皆に励まさ

れる中、全然良くならない自分自身に幻滅し、支えてくれている周りの家族や友人に対し

て申し訳なくて、こんなに迷惑をかけてただ生きているだけの自分なんていっそ消えてし

まった方がいいのではないかというのが、正直な気持ちです。

それでも、主人がとても病気のことを理解してくれ、以前、「死にたい」といった時、「一

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生そばにいるから、俺の為に生きてくれ」と言ってくれた言葉が頭から離れません。うれ

しくて涙が止まりませんでした。

こんな私でも生きていていいのかなって思わせてくれました。必ず治るけれど、いつ治

るかわからない、暗い、暗いトンネルの中をさまよい続けている段階ですが。支えてくれ

る皆、主人、まだ幼い子ども達の為にも、あきらめず生きていかなきゃと思っています 11)。

この例のように接し方次第で、患者を前向きな気持ちに変えさせることができるのであ

る。うつ病の悪化、自殺の防止を防ぐためには、身近な人達の接し方次第ということも考

えられる。

以上の 3 つの観点を見ると接し方がうつ病患者の症状を左右し、負担にならない接し方

が私たちとうつ病患者にとって重要であることが分かった。では、どのように接すること

が最適なのだろうか。第 3 章では、私の経験から、理想と考える接し方を示し、医師や体

験者の考える接し方と照らしあわせ、最適な接し方を検討したい。

第3章 うつ病患者への最適な接し方

前章では、うつ病の現状とうつ病の定義等を理解し、うつ病患者への接し方がいかに重

要であるかを確認した。では、うつ病患者にはどのように接することが大切なのだろうか。

この章では、私の経験から学んだ接し方、うつ病の体験者が語る望ましい接し方、医師が

アドバイスする接し方の 3 種類を比べて共通点を見つけ、最適な接し方を私なりに結論づ

けたい。

1. 医師が考える接し方

医師がアドバイスする接し方を説明したい。なお情報源は、2009 年 4 月 28 日(火)に放

送された、テレビ朝日、『学べる!!ニュースショー!』という番組である。この番組のゲス

トで登場した銀座泰明クリニックの茅野分医師のアドバイスを基に説明する。

(1)適度な距離をとる

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うつ病患者は、一日中ボーッと過ごすことが多い。そのため、気を使って話しかけたり、

元気にさせるために外出を誘そったりする方が良いと考えるかもしれない。しかし、これ

は逆効果である。患者の多くは、放っておいてほしいと思っており、気を使われると逆に

プレッシャーを感じてしまう。

だが、単に放っておくのではなく、温かく見守ってあげることが良いと言う。

(2)「頑張れ」は禁句、極力休ませる

うつ病は、生真面目で完璧主義の人がなる傾向が多く、今まで頑張りすぎて力尽きて発

症した病気である。そのため、頑張れと言われると、うつ病患者はこれ以上何を頑張れば

良いのか分からず、精神的に負担になってしまう。

また、そのような性格のため、何もしない自分に対して嫌気がさし、気分が良い状態に

なると、無理して学校や職場に行こうとしたり、家事をしようとする場合もある。

しかし、ここで無理をさせると病状を悪化させてしまう可能性があるので、接している

身近な人から見れば、頑張れと応援したくなると思うが、休ませることが重要である。

(3)本人の苦しみを理解してあげる

うつ病の苦しみは、発症した本人しか分からない。また、うつ病の影響で孤独感が常に

あり、自分の苦しみは誰にも理解してもらえないと思っている。そのため、身近な人が本

人の苦しみを理解していると口に出すことが良い。

(4)本人がしたいことをさせる

無理なく、本人がしたいと望むことをさせる。そうすることで、本人が達成感や満足感

を得ることができる。それにより、いろいろなものに興味が湧き、自ら行動することが増

え、自立していき、徐徐にうつ病になる前の自分を取り戻すことができる。

(5)ネガティブな発言に対しポジティブな発言をする

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うつ病患者は自分の否定や死にたい等のマイナスな発言をよく言う。それに対し、希望

を持たせられるような言葉やうつ病患者自身への具体的な誉め言葉等のプラスな発言を言

う。それにより、うつ病患者の否定的な考え方を変えることができる。

また、自殺願望の強い患者には、生きる希望を持たせることができる。

以上が医師の考える接し方である。

2. 私が考える接し方

私が親しいうつ病の友人 Sさんと付き合う中で、学んだ接し方を述べたい。

(1)叱咤はなるべく避ける

うつ病になると、「はじめに」でも述べたが、弱音を吐いたり、自分にとって嫌なことは、

何かしら言い訳をつけてしないという症状が起こる。また、日常生活も何もしようとせず、

ほぼ一日中寝ていたりするため、周囲からみればいい加減な人にしか思えないだろう。こ

のような状態をみると、怒りたくなると思うが、怒ることはしてはならない。

私も S さんに対して、怒ったことは何度もある。その度に、私が恐い、誰も自分の事を

わかってくれないと言い、怯えていた。私としては、人として当たり前の事に対して怒っ

たつもりでいたし、そこまで強く怒ったつもりではなかったのだが、異常な怯えとこの言

動に困惑し、何度か自問自答した。

彼女いわく、怒り方は関係なく、怒られることに対して異常に恐く、怒られると自分は

嫌われた、自分の気持ちは理解してもらえないと思い、最悪の時では死にたいと思うよう

だ。

第 1 章 3 節の「うつ病の症状」でも説明した通り、ひどい無気力感が襲うためにこのよ

うになってしまうので、仕方がないのだ。しかし、Sさんも、自分がこのような状態でいる

のが情けないと思っていて、すごくつらいけど、身体が思うように動いてくれないし、思

っていてもどうしても心がついていかない、そんな自分がすごく嫌だけど、どうしようも

できないと言って悩んでいた。

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そのような、心の状態の時に怒ると、心がさらに傷つき、自分を責め、余計に状態を悪

化させてしまう。そうならないためにも、うつ病患者と接するときは、怒るのではなく、

患者の心の状態をくみ取り、そっとしてあげることが大切である。また、つい怒ってしま

った時は自分が悪くなくても、まずこちらから謝る。そうすることで、相手側からも謝り、

お互いに少しでも気持ちが楽になる。

(2)励まし方に注意する

私は励ますことは、悪いことではないと考える。それは、私自身が S さんに対して励ま

しの言葉を口にし、前向きにさせられたことがあるからである。しかし、ここで注意しな

ければならない点は、抽象的な励ましは逆効果になるということである。抽象的な励まし

とは、「頑張れ」、「ファイト」等の励まし方である。

私が、抽象的な励まし方をしたときに、Sさんは何を頑張ればいいのかわからず、そんな

に応援されても期待に応えられないとよく言われ、余計沈ませてしまった。抽象的な励ま

し方をされると、逆に頭が混乱してしまったり、プレッシャーになったり、励ましてくれ

ているのにネガティブに考えてしまう自分が嫌になって自分自身を責めてしまうようであ

る。

私の考える良い励まし方は、うつ病患者が日常の些細なことでも、自らやろうとした時

に、強く薦めるのではなく、それとなく薦めてあげること。たとえば、自ら料理を作ろう

と言いながらも、迷っている時に、「手づくり料理食べてみたいな」、「一緒に作ってみよう

か」、など言い切らないあいまいな薦め方である。

また、それが出来なかったり、失敗しても、やろうとした意志を尊重し、誉めてあげる

ことである。私がこのような励まし方を行うことで、徐徐に S さんが自らやろうとするこ

とが増え、少しでも前向きな考え方になってくれた。これは、私が S さんに行った例であ

るので、相手によって励まし方は違ってくるが、抽象的な励まし方には注意するべきであ

ろう。

(3)話を聞き、なるべく共感してあげること

話す内容がつまらなかったとしても、耳を傾けることが大切である。そして、ここで重

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要なのは、反応を示すことである。話を聞いて、その内容に共感してあげる。それにより、

Sさんいわく自分の考えが間違っていないこと、私の話を聞いてくれる人がいることに喜び

を感じ、安心するという。

うなずくだけでも良い。実際に、話している内容がよく分からず、どう反応してよいか

分からない時に、うなずくだけになってしまったことがあるが、それだけで少しでも明る

くなっていた。

ここで、絶対避けてほしいのは、頭から否定することである。彼女との会話では、うつ

病の影響もあり、人の愚痴、自分の否定、被害妄想的な話(周囲の人が悪くみている等)

といったような話で、聞いていて正直共感できない内容がほとんどであった。そのため、

つい頭から否定をしてひどく落ち込ませてしまい、もっとネガティブな考え方をさせてし

まった。また、泣かせてしまったこともある。

しかし、どうしても共感できないときは、相手の話を最後まで聞き、違う意見をぶつけ

るのではなく、気持ちを尊重したうえで、意見を投げかけるように伝えてあげると良い。

そうすることで、ひどく落ち込ないし、その意見を受け入れてくれるはずである。

(4)メールの返信は必ずする

メールは、長文でなくても良い。短文でも、返すことが重要である。返さないと、うつ

病患者は被害妄想的な考え方になってしまう。

実際私の携帯電話の充電が切れ、Sさんにメールを長い時間返せなかったことがある。そ

の時、彼女は自分が駄目な人間だから愛想をつかされ、メールの返信をしなくなってしま

ったと思い込み、ひどく沈んだと言っていた。また、彼女の友達にメールを送って、返事

が返ってこなかった時も、自分は見捨てられたと、私に話していた。うつ病患者を安心さ

せるためにも、一言でも良いので、返してあげることが大切である。

また、私のように長い時間返えせなかった場合でも、メールに気づいたらすぐ返信し、

その際に軽い謝罪の文と遅れた理由を書けば納得してくれるし、気持ちも少し落ち着かせ

ることができるであろう。電話でも良いと思うが、電話だと気持ちが沈んでいて、出ない

可能性の方が高いので、メールの方が良いだろう。

(5)電話がかかってきたら、必ず出てあげる

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うつ病患者は、症状が悪化していくにつれ口数が減る。きわめて重症なうつ病の場合に

は昏睡状態といって、話しかけても応答せず、自分からはしゃべらないし、行動もしない

といった状態になることがある 12)。

S さんは、重症ではないため、昏睡状態のような状態にはならなかったが、気分が良くない

状態の時は口数が減っていた。

そのため、うつ病患者が電話をかけてくることは滅多にない。だが、珍しく電話がかか

ってくるということは、どうしても聞いて欲しいことがあるか、孤独感と不安でいっぱい

になり信頼できる人の声を聞いて、気持ちを落ち着かせようとしているのである。

電話の内容は、自分の気持ちの辛さを、ずっと話すことが多いが、嫌がらずに穏やかに

聞いてあげること。話し終わった後は、気持ちがだいぶ落ち着いているのが本人の声から

も分かるので、うつ病患者の気持ちをかなり楽にすることができるはずである。電話がか

かってきたら、相手が助け舟を求めていると思い、必ず出てあげることが大切である。

以上の 5つが、私が Sさんと接する中で、最適であると考えた接し方である。

2. 医師と私の考える接し方の共通点

以下では、医師と私が考える接し方の相方に共通する部分をまとめる。

(1)気にかけすぎず、見守る

うつ病患者は、私たちの何気ない一言や行動に対して敏感である。気にかけすぎると、

逆に気を使わせていると負担になり、怒られることに対してすごく恐がる。また、逆に私

たちも気を使いすぎて疲れてしまったり、うつ病患者の行動や発言に対して考えすぎると、

悩みや怒りが湧き起こってしまう。

そうならないためにも、うつ病患者をそっとしてあげることが大切である。それは放っ

ておくのではなく、体調が悪くなったら看病してあげたり、何かしようとしている時に手

伝ってあげたりと、いつでも助けの手を差し伸べられるように影で見守ることである。

(2)頼ってきたら、見捨てずに助けてあげる

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電話やメールは、助けを求めているサインである。時には、面倒に思ったり、電話での

話を聞きたくないと思うこともあるだろう。

しかし、それは信頼されている証であり、患者を安心させることができる。また、本人

がしたいことや自らやろうとすることに、1人でいきづまっていたら、一緒に手伝ってあ

げる。その途中で、失敗したり、あきらめてしまうかもしれないが、失望してはいけない。

このように、思うことは、症状が回復に向かっているのだ。

(3)病気の苦しみを理解し、話を聞いてあげる

病気により、偏った考え方や発言をしてしまう。聞いている方にしてみれば、否定した

くなったり、敬遠したい気持ちになる。

しかし、本人もそのような状態である自分自身が嫌であり、悩み苦しんでいる。このこ

とを理解すれば、話を聞き共感してあげることができる。また、病気のせいでこのように

考えてしまうのだと思うことができ、違った見方ができるはずである。

(4)悩みや不安を聞いて、前向きな言葉をかける

うつ病患者は、病気の影響で前向きに考えることができず常に悩みや不安を抱えている。

しかし、口数が減るため自ら悩みや不安を打ち明けることが少なく、1人で抱え込み自分

を追い詰めてしまうこともある。

そのため、浮かない顔をしていることが多い。そのような時に、こちらから悩みや不安を

聞いてあげ、それに対して前向きな言葉をかける。前向きな言葉をかけてあげることで、

うつ病患者に生きる希望を与えたり、考え方を良い方向に軌道修正させることができる。

また、悩みや不安を聞き出すことで、少しでも心の負担を和らげることができる。しか

し、頑張れという言葉はうつ病患者にとって大変心に負担を負わせる言葉であるので注意

しなければならない。

以上が、私の経験から考える接し方と医師の考える接し方の共通点を、私なりにまとめ

た接し方である。

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考察

1.第 1章を通して

うつ病は気力が減退し、堕落したように見える生活を送らざるをえない状況になること

がわかった。また、うつ病患者が年々増加しており、私たちにも他人事ではないと言える

だろう。

うつ病になりやすい環境、性格を見ると、環境要因は、私たちの誰しもが経験すること

である。性格では、精神的に弱い人がうつ病になると考えている人もいるが、実は、完全

主義的な傾向があり、周囲からみれば尊敬される人が多い。

これらの点から、怠けて見えるのは、病気の症状であり、うつ病になることに精神的な

弱さは関係なく、誰しもが日常生活を送る上で発症する可能性があることがわかった。

うつ病は風邪とは違い、目には見えない。病気のせいで、考え方が変わってしまい、生

活もだらけてしまうように見える。それを見て、健康である私たちは単に怠けていると勘

違いしてしまう。それが、うつ病患者自身を嫌ったり、避けたりすることに繋がり、さら

に追い込む形になる。しかし、知識があれば本人の苦しみを理解でき、このようなことは

起こりにくいはずである。

このことから、私は改めてうつ病患者に接する上で病気の知識が必要であると考える。

2.第 2章を通して

うつ病患者への間違った接し方は、症状を悪化させ、最悪の場合自殺を招いてしまう。

しかし、接し方次第で、症状を良くさせることができ、接する身近な人にとっても、メリ

ットがあることがわかった。

最適な接し方を行うことで、症状を軽くできる可能性は高く、うつ病での自殺も、周り

の支え方によって防ぐことができる。それは、私たちの接し方一つで、患者自身の精神的

な負担を減らせ、前向きな考え方に変えられ、生きる希望を与えられるということである。

また、うつ病患者自身の心情の変化を細やかに捉えられるのは、医師や専門家よりも身

近な私たちだからである。このことから、私はうつ病患者への接し方は患者に大きな影響

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を与える重要なことであると考える。

3.第 3章を通して

医師が考える接し方と私が考える接し方を比べてみると、多くの共通する部分があるこ

とがわかった。

私がこの作業を通して気づかされた点は、うつ病患者に対して接するにあたり、理解を

示すことが何より重要であるということだ。医師と私の考え方が同じような形になったの

は、うつ病患者に理解を示しているからでもある。

医師は多くの患者を診るために理解を示めし、私は S さんのことを理解することに努め

ている。このことから私は、うつ病患者と接する上で患者に理解を示すことが最も重要で

あると考える。

以上の 3 つの章を通して、私はうつ病がどのような物か、身近な私たちの接し方でどれ

ほど影響するかがわかり、うつ病患者への理解の重要性に気づかされた。大切なことは、

うつ病という病気に対し偏見を持つのではなく、うつ病とはどういう病気なのかを知り、

周囲の人がうつ病患者を受け入れてあげることである。それによって、うつ病患者が心か

ら信頼できる人が一人でも多くなり、支える私たちも一人で抱え込まずにすむだろう。そ

して、それによりうつ病患者を減少させ、うつ病による自殺を防ぐことに繋がると私は考

えている。

結論

不況が続き、企業同士の競争が増す中で、リストラ、給与の減額、サービス残業の増加

等で職場の環境は厳しくなっている。また、いじめはいつまでもなくならないし、自殺も

年々増えている。私たちの周りの社会環境は、精神的にダメージを与えるストレスの要因

が多くあり、うつ病がいつ発症してもおかしくない環境だ。

そのような状況の中で、うつ病患者と関わる可能性は高い。その時に、その患者を支え

てくれる人がいれば立ち直らせることができるはずである。私が導き出した接し方が最適

であるとは言い切れない。しかし、私の経験上 S さんが最悪の事態に至らず、お互いの関

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係も壊れず、支えることができ、何人もの患者を診てきた医師が薦める接し方と合致して

いることから、効果を期待して良いと考える。この私なりに導き出した接し方が、今後う

つ病患者と接する人に少しでも役立てれば幸いである。

おわりに

私が卒論でうつ病について調べる以前は「自分はうつ病には絶対にならない、うつ病は

精神的に弱いからなるのだ」と何の根拠もない偏った考えを持っていた。卒論執筆を通し

て、うつ病患者数が現状に至るまで増加していることに驚かされ、うつ病が大変苦しく、

場合によっては自殺を招くこともあり、発症原因が未だに解明されていない未知なもので、

精神的な弱さとは関係のない病気であることがわかった。

以前の私の考え方は、非常に偏っている間違ったものであることを痛感したと同時に、

そのように考えていた自分自身を恥ずかしく思った。一方で、この研究により私のうつ病

患者に対する見方が大きく変わり、卒論執筆を通じてうつ病の研究に少しでも触れたられ

たことに感謝している。

「結論」でも述べたが、私がまとめに至った接し方が最適である根拠はない。それは、

うつ病の症状は個人によっても違ってくるであろうし、本来の性格によっても変わってく

るからだ。しかし、うつ病患者の気持ちを理解しようと努めれば、その患者に一人ひとり

に合った接し方が分かるはずである。また、私たちは患者と接することで、患者から学ぶ

ことが多くあるだろう。私は多くの人に対して、今後うつ病患者と接する機会が生じたら、

突き放さず支えてあげて欲しいと願っている。

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引用文献・URL

1)『うつ病を治して元気になる本』,税所弘,p66,三五館,2000 年

2) アステラス製薬 なるほど病気ガイド,http://www.astellas.com/jp/

3) 心の病、精神の病をケアする資格、就職する方法,

http://mind-caring.y-ads.jp/work_field_of_mind/0904252120.html

4) Yahooニュース,

http://dailynews.yahoo.co.jp/fc%2Fdomestic%2Fdepressive_disorders%2F#backToP

agetop

5) 銀座泰明だより,http://ginzataimei.jugem.jp/?eid=39

6)『森田療法で読む本』,北西憲二・中村敬,p30,白揚社,2005 年

7)『森田療法で読む本』,北西憲二・中村敬,p26,白揚社,2005 年

8) 精神科Q&A,http://kokoro.squares.net/psyqa1584.html

9) アスクドクターズ 医師Q&A ,http://www.askdoctors.jp/public/showTopPage.do

10)『うつ病を治して元気になる本』,税所弘,p77,三五館,2000 年

11) NHKうつサポート相談室,http://www.nhk.or.jp/fukushi/utsu/experiences/09.html

12)『森田療法で読む本』,北西憲二・中村敬,p32,白揚社,2005 年

参考文献・URL

1)『うつ病を治して元気になる本』,税所弘,三五館,2000 年

2)『「うつ」のとってもとっても基本ガイド』,越野好文・志野靖史,講談社,2005 年

3)『森田療法で読む本』,北西憲二・中村敬,白揚社,2005 年

4)『うつ病の人の気持ちがわかる本』,保崎秀雄、主婦の友社,2008 年

5)アステラス製薬 なるほど病気ガイド,http://www.astellas.com/jp/

6)唐木心療内科クリニック,http://www.karacli.com/depression01.html