次世代情報処理のための超電導量子ビット - AIST...産総研TODAY Author...
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4 産総研 TODAY 2012-12 このページの記事に関する問い合わせ:計測標準研究部門 http://www.nmij.jp/info/lab/ このページの記事に関する問い合わせ:ナノエレクトロニクス研究部門 http://unit.aist.go.jp/neri/
量子コンピューター
量子コンピューター [1]は、重ね合わせの原理などの量子力学の原理を計算に用いるコンピューターです。現在私たちが用いている「古典的」なコンピューターは汎はん
用コンピューターですが、因数分解や離散対数問題などの特定の計算を苦手としており、これらの計算にとても長い時間を要することが知られています。量子コンピューターは「古典的」なコンピューターが苦手なこれらの計算を、効率の良い並列処理によりはるかに高速に計算することができると期待されています。また、量子シミュレーションを実行するコンピューターとしても期待されています。しかし残念ながら、現実的な問題を計算する量子コンピューターはまだ実現していません。量子コンピューターの実現を目指し、トラップされたイオンや半導体量子ドットなど各種の物理系を用いた実験が世界中で活発に行われています。なお、2012年度のノーベル物理学賞に選ばれた米仏の2名の研究者も、この研究分野で顕著な功績を残しています。
超電導量子ビット
量子力学は本来原子や電子のような微小な物理系に適用されます。しかし、人工的に作製した電子デバイスや回路のような大きな(巨視的な)物理系でも量子力学的なふるまいを示すものがあります。超電導体を用いたジョセフソン素子を含む回路もその一例です。私たちは、
このような超電導回路を量子コンピューターの基本的な構成要素である量子ビットに用いようと考えています。超電導量子ビット[2]をはじめとする固体素子量子ビットは、集積化や素子特性の制御が比較的簡単であることから、量子コンピューターを実現する上で大きな利点をもっているといえます。
超電導量子ビットの集積化を目指して
これまで超電導量子ビットに用いられるジョセフソン接合の作製には、作製の簡便さを重視した方法が用いられてきました。しかし超電導回路のより高い集積度を実現するためには、超電導体/トンネルバリアー /超電導体の三層からなる積層薄膜をもとにした積層型ジョセフソン接合を用いて量子ビットを作製す
る技術[3]の確立が望まれています。私たちはアルミニウムを材料に用いた積層型ジョセフソン接合作製プロセスの確立を目指し、電子線描画装置を用いた微小パターン形成、反応性イオンエッチング装置(塩素系ガス使用)を用いたエッチング、CMP(Chemical mechanical polishing: 化学機械研磨)を用いた接合コンタクト形成などの技術を産総研ナノエレクトロニクス研究部門および産総研ナノデバイスセンターと共同で開発しています。
謝辞この研究は、総合科学技術会議により
制度設計された最先端研究開発支援プログラムにより、日本学術振興会を通して助成されました。
電子線描画装置および反応性イオンエッチング装置(塩素系ガス使用)を用いて作製した微小ジョセフソン接合パターンの電子顕微鏡像
600 nm
次世代情報処理のための超電導量子ビット
参考文献[1] M. A. Nielsen and I. L. Chuang: Quantum Computation and Quantum Information (2000).[2] J. Clarke and F. K. Wilhelm: Nature, 453, 1031-1042 (2008).[3] T. Satoh et al. : IEEE Trans. Appl. Supercond., 19, 167-170 (2009).
(公財)国際超電導産業技術研究センター(産総研 ナノエレクトロニクス研究部門
産学官制度来所者)
佐さ と う
藤 哲てつろう
朗
http://unit.aist.go.jp/neri/