情報工学基礎実験 - 福岡工業大学OSPF、EIGRP...

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情報工学基礎実験 【ネットワーク実験】 第2版 平成 26 年度 福岡工業大学 情報工学部 情報通信工学科

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情報工学基礎実験

【ネットワーク実験】

第2版

平成 26年度

福岡工業大学

情報工学部

情報通信工学科

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目次

実験1.Cisco ルータの操作 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1

実験2.IP・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 39

実験3.ルーティング・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 51

実験4.ルーティングプロトコル・・・・・・・・・・・・・・ 60

実験5.RIP・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 66

実験6.OSPF・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 76

実験7.EIGRP・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 87

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ルーティングにおけるコンバージェンス実験

はじめに

ネットワークにおいて、パケットの経路を決定する仕組みであるルーティングに関する実験を

行います。複雑なネットワークにおけるルーティングでは、ルーティングに必要な情報を自動的

に収集する仕組みを用いてルーティングは実現されます。そのためのプロトコルとしては RIP、

OSPF、EIGRPなどがあり、情報収集が収束する過程は各々異なります。ルーティングに必要な

情報収集が収束することをコンバージェンスといいます。

本実験では RIP、OSPF、EIGRPについての実験を行い、コンバージェンスの様子を確認しま

す。また、RIP、OSPF、EIGRPの特徴について考察します。

本実験を通して、CCNAにおけるルーティング関連の知識として以下に掲げる知識を習得する

ことを目指します。

1.IPアドレスとルーティングに関する知識。

2.ルーティングプロトコル、特に RIP、OSPF、EIGRPについての知識。

3.Cisco ルータにおける RIP、OSPF、EIGRP の設定方法、状態の確認方法。

本実験は7回のテーマから構成されています。各回のテーマとその概要は以下の通りです。

1.CLIと Ciscoルータ初期設定

Ciscoルータは、Console又はネットワーク経由でログインして CLIで操作する必要がありま

す。その前段階として、Windowsのコマンドプロンプトを用いたコマンド操作の学習、ケーブ

リングや各種設定による接続準備を行います。

また、Ciscoのルータは、操作内容に応じてモードを切り替える必要があります。モードには

ユーザモード、特権モード、グローバルコンフィグレーションモードなどがあり、各モードで使

用できるコマンドが異なりますので、それらについて確認します。

2.IP

IPはネットワーク同士の接続機能、即ちルーティングを実現します。IP ではネットワークに

接続した機器を識別するために IPアドレスを使います。したがって、ネットワークに接続する

機器には IPアドレスを設定する必要があります。

ルータや実験に使用する PCの IPアドレスを設定し、接続確認を行います。

3.ルーティング

ルーティングはルーティングテーブルという表に基づいて行われます。ルーティングテーブル

は手動で管理するスタティックルーティングと自動で管理するダイナミックルーティングとい

う方法があります。この回はスタティックルーティングの実験を行います。

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4.ルーティングプロトコル

ダイナミックルーティングではルーティングに必要な情報を収集するためのプロトコルが必

要です。ルーティングプロトコルを大別すると EGP と IGPがありますが、本実験で扱うのは IGP

です。IGPには RIP、OSPF、EIGRPなどがあり、小規模なネットワークで以前使われていたの

が RIPです。

ルータにおいてルーティングプロトコルのプロセスを起動しておけば、自動的にルーティング

テーブルが修正されます。この回は RIPを起動してそのことを確認します。

5.RIP

RIPはディスタンスベクタ型のルーティングプロトコルです。その考え方は比較的理解しやす

いのですが、コンバージェンスにある程度の時間が掛かるなど欠点もあります。特に以前はルー

ティングループが発生することもありましたが、現在では対策がとられて発生し難くなっていま

す。

この回は RIPではコンバージェンスにある程度時間が掛かることを確認します。また、RIPで

ルータ同士が情報をやり取りする様子を確認します。

6.OSPF

OSPFはリンクステート型のルーティングプロトコルです。小規模なネットワークからある程

度大規模なネットワークまで対応でき、SPFアルゴリズムにより素早くコンバージェンスに至り、

ルーティングループもほとんど発生しない優れたルーティングプロトコルです。

この回は OSPFで素早くコンバージェンスに至ることを確認します。また、OSPFルータがル

ーティングテーブル以外に保持する情報についても確認します。

7.EIGRP

EIGRPはハイブリッド型の Cisco 独自のルーティングプロトコルです。DUAL により非常に素

早くコンバージェンスに至り、ルーティングループが発生しない優れたルーティングプロトコル

です。

この回は EIGRPで素早くコンバージェンスに至ることを確認します。また、EIGRPルータが

ルーティングテーブル以外に保持する情報についても確認します。

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1.CLIと Ciscoルータ初期設定

1-1 CLI

Ciscoルータの操作には、Web ベースの管理ツールを利用した GUIペースの操作方法もありま

すが、これは設定の全てを行える訳ではないため、一般的に CLIを用います。本実験において

も、設定のすべてをCLIを用いて行います。CiscoルータのCLI操作に入る前段階として、Windows

のコマンドプロンプトを用いて、コマンド操作を学習します。

(1) GUIと CLI

マウス操作によりウィンドウやアイコンを指定しコンピュータを操作する方法を、GUI

(Graphical User Interface) と呼びます。一方、キーボード入力のみでコンピュータを操作する方

法を、CLI(Command Line Interface)または CUI(Character User Interface)と呼びます。

(2) 階層構造

現在の一般的な OSは階層構造として、木構造(ツリー構造)を持っています(図1-1)。

ツリー構造では、最上位をルートディレクトリと呼びます。

図1-1 Windowsの階層構造

fileA.txt の識別には「C:¥AAA¥BBB¥DDD¥fileA.txt」と記述します。このようにルートディレ

クトリからパス名を記述して表す方法を、絶対パス(フルパス)と呼びます。また、あるディレ

クトリからの相対的な位置関係により、ファイルを識別することも出来ます。これを相対パスと

呼びます。現在ユーザが作業を行っているディレクトリを、カレントディレクトリ(「.」で表す)

と呼び、相対パスの起点となります。また、1つ上のディレクトリは「..」で表します。つまり、

カレントディレクトリが「C:¥AAA¥BBB¥EEE」の場合、FileA.txt を相対パスで指定すると

「..¥DDD¥fileA.txt」となります。

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(3) コマンドプロンプトの起動

Windows でコマンド操作を行うには、「コマンドプロンプト」を使用します。

ウィンドウズキー

+ R

「ファイル名を指定して実行」

「cmd」と入力 「OK」

図1-2において「>」マーク

より左側

「C:¥Program Files¥Support Tools」

が現在の位置(カレントディレク

トリ)になります。

例えば、この状態でファイル、

フォルダを表示させた場合(下記

の dir など)、

図1-2

「C:¥Program Files¥Support Tools」以下の、ファイル、フォルダが表示されます。

(4) コマンドプロンプトの操作

(4-1) 履歴機能

カーソルの上下キーで

履歴を表示します。↑で

履歴を戻し、↓で一つ新

しい履歴を表示します。

また、F7キーで履歴内容

がポップアップします。

図1-3

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(3) コマンドプロンプトの起動 Windows でコマンド操作を行うには、「コマンドプロンプト」を使用します。

ウィンドウズキー

「ファイル名を指定して実行」

「 」と入力 「 」

図1-2において「>」マーク

より左側 「C:¥Program Files¥Support Tools」が現在の位置(カレントディレク

トリ)になります。 例えば、この状態でファイル、

フォルダを表示させた場合(下記の dir など)、

図1-2

「C:¥Program Files¥Support Tools」以下の、ファイル、フォルダが表示されます。

(4) コマンドプロンプトの操作

(4-1) 履歴機能

カーソルの上下キーで

履歴を表示します。↑で

履歴を戻し、↓で一つ新

しい履歴を表示します。

また、F7キーで履歴内容がポップアップします。

図1-3

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(4-2) 日本語の入力

コマンドプロンプトは「半

角/全角」キーのみでは、日本

語の入力が出来ない場合があ

ります。この場合は「Alt」+

「半角/全角」で切り替えま

す。

図1-4

(4-3) TAB補完

ファイル名、フォルダ名は TABキーで補完されます。図の例では、「cd 」と入力し TABキ

ーを押せば、そのサブフォルダが順番(アルファベット順)に補完されます。

「cd w」 と入力(先頭の頭文字のみ)した後に TABキーを押すと、それに続く文字(wか

ら始まるサブフォルダ名)が補完されます。

図1-5

(4-4) テキストのコピー

左上のアイコンをクリック

して、編集→範囲選択を選び、

コピーしたい部分を範囲選

択。

同じように、編集→コピー。

同様の操作(コピー)は、

マウスの右クリックからも可

能です。

また、コマンドプロンプト

のウィンドウ内に、ファイル

やフォルダをドラッグする

と、パスがコピーされます。

図1-6

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(5) 基本コマンド

MD(MKDIR) ディレクトリ (フォルダ)作成

構文

MKDIR [ドライブ:]パス

MD [ドライブ:]パス

mdコマンドは、ディレクトリ(フォルダ)の新規作成を行います。

C:¥>md sample

カレントに「sample」ディレクトリを作成

C:¥>md test1¥test2

カレントに「test1」ディレクトリが無ければ作成し、あれば、その下に「test2」を作成

RD(rmdir) ディレクトリ(フォルダ)削除

構文

RMDIR [/S] [/Q] [ドライブ:]パス

RD [/S] [/Q] [ドライブ:]パス

ディレクトリを削除します。

/S 指定されたディレクトリに加えて、そのディレクトリ内のすべての

ディレクトリとファイルを削除します。ディレクトリ ツリーを削除

するときに使用します。

/Q /S を指定してディレクトリ ツリーを削除するときに、確認の

メッセージを表示しません。(QUIET モード)

C:¥>rd sample

カレントの「sample」ディレクトリを削除

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CD(CHDIR) カレントディレクトリの移動

構文

CHDIR [/D] [ドライブ:][パス]

CHDIR [..]

CD [/D] [ドライブ:][パス]

CD [..]

コマンド操作を行う場合は、カレントディレクトリを意識する必要があります。このカ

レントディレクトリを切り替えるのが「cd」コマンドです。

ディレクトリを指定して切り替える。

C:\>cd sample

C:\sample>

1つ上のディレクトリに。

C:\sample>cd ..

C:\>

ルートに切り替える。

C:\Program Files\Microsoft Office\Office12>cd\

C:\>

DIR ディレクトリ中のファイルとサブディレクトリを一覧表示

構文

DIR [ドライブ:][パス][ファイル名] [/A[[:]属性]] [/B] [/C] [/D] [/L] [/N]

[/O[[:]ソート順]] [/P] [/Q] [/R] [/S] [/T[[:]タイムフィールド]] [/W] [/X] [/4]

図1-7

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オプション

/A 指定された属性のファイルを表示します。

:属性 D ディレクトリ

H 隠しファイル

S システム ファイル

R 読み取り専用

A アーカイブ

- その属性以外

/B ファイル名のみを表示します (見出しや要約が付きません)。

/C ファイル サイズを桁区切り表示します。これは既定の設定です。

/-C とすると桁区切り表示されません。

/D /W と同じですが、ファイルを列で並べ替えた一覧を表示します。

/L 小文字で表示します。

/N ファイル名を右端に表示する一覧形式を使用します。

/O ファイルを並べ替えて表示します。

:ソート順 N 名前順 (アルファベット)

E 拡張子順 (アルファベット)

G グループ (ディレクトリから)

S サイズ順 (小さいほうから)

D 日時順 (古いほうから)

- 降順

/P 1 画面ごとに停止して表示します。

/Q ファイルの所有者を表示します。

/S 指定されたディレクトリおよびそのサブディレクトリのすべてのフ

ァイルを表示します。

/T どのタイムフィールドを表示するか、または並べ替えに使用するかを

指定します。

:タイムフィールド C 作成 A 最終アクセス W 最終更新

/W ワイド一覧形式で表示します。

/X このオプションは MS-DOS 形式以外のファイル名に対する短い名

前を表示します。

長い名前の前に短い名前を表示する点を除けば、/N オプションと同

じです。

短い名前がない場合は、ブランクになります。

/4 4 つの数字で年を表示します。

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dir /a /s C:¥

dir /s /b *.txt

Cドライブ内の全てのファイルを表示

※アクセスできないファイルは表示されませ

カレントディレクトリ以下の「.txt」という文

字列を含む全ファイルを表示。

TREE フォルダ構造を図式表示する

構文

TREE [ドライブ:][パス] [/F] [/A]

/F 各フォルダーのファイル名を表示します。

/A 拡張文字ではなく、ASCII 文字で表示します。

D:¥tree

フォルダ パスの一覧

ボリューム シリアル番号は B8B2-E30E です

D:.

├─Intel

│ ├─ExtremeGraphics

│ │ └─CUI

│ │ └─Resource

│ └─Logs

COPY 1 つまたは複数のファイルを別の場所にコピーします

構文

COPY [/D] [/V] [/N] [/Y | /-Y] [/Z] [/L] [/A | /B] 送り側 [/A | /B]

[+ 送り側 [/A | /B] [+ ...]] [受け側 [/A | /B]]

送り側 コピーするファイル (複数可) を指定します。

/A ASCII テキスト ファイルとして扱います。

/B バイナリ ファイルとして扱います。

/D 受け側のファイルが暗号化が解除されて作成されるようにします。

受け側 新しいファイルのディレクトリまたはファイル名 (複数可) を指定し

ます。

/V 新しいファイルが正しく書き込まれたか検査します。

/N MS-DOS 形式以外の名前のファイルをコピーするときに、利用可能な

らば、短いファイル名を使用します。

/Y 受け側の既存のファイルを上書きする前に確認のメッセージを表示し

ません。

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/-Y 受け側の既存のファイルを上書きする前に確認のメッセージを表示し

ます。

/Z ネットワーク ファイルを再起動可能モードでコピーします。

/L 送り側がシンボリック リンクの場合は、送り側リンクが指し示す

実際のファイルではなく、リンクをターゲットにコピーします。

copy text1.txt text2.txt

copy *.txt sample

text1.txt を text2.txt という名前

でコピーする

カレントの全てのテキストファイルを sample フォル

ダ下にコピーする

XCOPY ファイルとディレクトリ ツリーをコピーします。

構文

XCOPY コピー元 [コピー先] [/A | /M] [/D[:日付]] [/P] [/S [/E]] [/V] [/W]

[/C] [/I] [/Q] [/F] [/L] [/G] [/H] [/R] [/T] [/U]

[/K] [/N] [/O] [/X] [/Y] [/-Y] [/Z] [/B] [/J]

[/EXCLUDE:ファイル 1[+ファイル 2][+ファイル 3]...]

コピー元 コピーするファイル (複数可) を指定します。

コピー先 新しいファイルの場所や名前を指定します。

/A アーカイブ属性が設定されているファイルのみをコピーし、

属性は変更しません。

/M アーカイブ属性が設定されているファイルのみをコピーし、

アーカイブ属性を解除します。

/D:月-日-年 指定された日付以降に変更されたファイルをコピーします。

日付が指定されなかったときは、コピー元の日付がコピー先の日付より

新しいファイルだけをコピーします。

/EXCLUDE:ファイル 1[+ファイル 2][+ファイル 3]...

コピーの除外対象を特定するための文字列を記述したファイルを指定

します (複数指定可)。文字列は、1 行に 1 つずつ記述します。

その文字列が、コピー対象ファイルの絶対パスの一部と一致した場合、

そのファイルはコピーから除外されます。たとえば、"¥obj¥" という

文字列を指定するとディレクトリ obj の下の全ファイルが除外 され

ます。".obj" という文字列を指定すると .obj という拡張子のファ

イルがすべて除外されます。

/P コピー先のファイルを作成する前に確認のメッセージを表示します。

/S 空の場合を除いて、ディレクトリとサブディレクトリをコピーします。

/E ディレクトリまたはサブディレクトリが空であってもコピーします。

"/S /E" と同じ意味です。/T の内容を変更する際にも使用できます。

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/V コピー先の各ファイルのサイズを検証します。

/W コピーを開始する際に、任意のキーを押すことを求めるメッセージを

表示します。

/C エラーが発生してもコピーを続けます。

/I 指定されたコピー先が存在せず、コピーするファイルが複数の場合、

コピー先をディレクトリとしてコピーします。

/Q コピー中にファイル名を表示しません。

/F コピー中にコピー元とコピー先の全ファイル名を表示します。

/L コピーされるファイル名を表示します。

/G 暗号化をサポートしないコピー先に、暗号化されたファイルをコピー

することを許可します。

/H 隠しファイルやシステム ファイルもコピーします。

/R 読み取り専用ファイルを上書きします。

/T ファイルはコピーせずにディレクトリ構造のみを作成します。空の

ディレクトリまたはサブディレクトリは除きます。"/T /E" と指定

すると空のディレクトリやサブディレクトリも作成されます。

/U コピー先に既に存在するファイルだけをコピーします。

/K 属性をコピーします。指定しない場合、読み取り専用属性はリセット

されます。

/N 生成された短い名前を使用してコピーします。

/O ファイルの所有権と ACL 情報をコピーします。

/X ファイルの監査設定をコピーします (/O を含む)。

/Y 既存のファイルを上書きする前に確認のメッセージを表示しません。

/-Y 既存のファイルを上書きする前に確認のメッセージを表示します。

/Z 再起動可能モードでネットワーク ファイルをコピーします。

/B シンボリック リンクのリンク先ではなく、シンボリック リンク自体を

コピーします。

/J バッファーされていない I/O を使ってコピーします。サイズが大き

いファイルに適しています。

XCOPY C:¥sample Z:¥sample

Cドライブから Zドライブにディレクトリごとコピーする

XCOPY C:¥sample F:¥sample /D:01/01/2014

2014年 1月 1日以降に更新されたディレクトリ/ファイルを Fドライブにコピーする

XCOPY ¥¥Server1¥Share¥* D:¥Backup /D /S /E /H /Y /R

上書き確認を行わずにディレクトリ/ファイルをコピーする

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FIND ファイルの中からテキスト文字列を検索する

構文

FIND [/V] [/C] [/N] [/I] [/OFF[LINE]] "文字列" [[ドライブ:][パス]ファイル名[...]]

/V 指定した文字列を含まない行をすべて表示します。

/C 指定した文字列を含む行の数だけを表示します。

/N 行番号を表示します。

/I 大文字と小文字の区別をしないで検索します。

/OFF[LINE] オフライン属性が設定されたファイルをスキップしません。

"文字列" 検索する文字列を指定します。

[ドライブ:][パス]ファイル名

検索するファイル (複数可) を指定します。

find “test” sample.txt sample.txt 内の文字列“test”を検索

※ FINDコマンドは、パイプ処理でよく利用されます。パイプ処理とは、あるコマンドの出力

結果を、次のコマンドに渡す機能です。パイプ(|)で以下の様に繋ぎます。

dir /a /s C:\|find “.xls”

dir コマンドの出力から、ファイル名に“.xls”を含むものを探して、表示します。

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(6) ネットワークコマンド

IPCONFIG Windowsのネットワーク設定を表示・操作する

アイピーコンフィグ

IPアドレス

サブネットマスク

デフォルトゲートウェイ

(オプションで)

MACアドレス

C:\>ipconfig ネットワーク設定の確認

Windows IP 構成

Wireless LAN adapter ワイヤレス ネットワーク接続:

メディアの状態. . . . . . . . . . : メディアは接続されていません

接続固有の DNS サフィックス . . . :

イーサネット アダプター ローカル エリア接続:

接続固有の DNS サフィックス . . . :

リンクローカル IPv6 アドレス. . . . : fe80::ac9b:1d2e:1f2c:37c8%10

IPv4 アドレス . . . . . . . . . . : 192.168.0.102

サブネット マスク . . . . . . . . : 255.255.255.0

デフォルト ゲートウェイ . . . . . : 192.168.0.1

Point

メディアの状態. .. : メディアは接続されていませ

ケーブルを確認してください。

IP Address. . . . . . . 0.0.0.0 IPアドレスをもらってません

IP Address. . . .. . . 169.254.X.Y IPアドレスをもらえず、自分自身で割り

当てました。

一部のマシンにしか繋がりません。

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(6-1) オプションを利用1 ~MACアドレスを表示したい

C:¥>ipconfig /all ネットワーク設定の 詳細な情報を表示します。

Windows IP 構成

ホスト名 . . . . . . . . . . . . : fom-pc002

プライマリ DNS サフィックス . . . :

ノード タイプ . . . . . . . . . . : ハイブリッド

IP ルーティング有効 . . . . . . . : いいえ

WINS プロキシ有効 . . . . . . . . : いいえ

Wireless LAN adapter ワイヤレス ネットワーク接続:

メディアの状態. . . . . . . . . . : メディアは接続されていません

接続固有の DNS サフィックス . . . :

説明. . . . . . . . . . . . . . . : Atheros AR928X Wireless Network Adapter

物理アドレス. . . . . . . . . . . : B4-82-FE-53-AD-D9

DHCP 有効 . . . . . . . . . . . . : はい

自動構成有効. . . . . . . . . . . : はい

イーサネット アダプター ローカル エリア接続:

接続固有の DNS サフィックス . . . :

説明. . . . . . . . . . . . . . . : Marvell Yukon 88E8057 PCI-E Gigabit Ethernet Controller

物理アドレス. . . . . . . . . . . : 8C-73-6E-03-A8-27

DHCP 有効 . . . . . . . . . . . . : はい

自動構成有効. . . . . . . . . . . : はい

リンクローカル IPv6 アドレス. . . : fe80::ac9b:1d3e:1a3c:37c8%10(優先)

IPv4 アドレス . . . . . . . . . . : 192.168.0.102(優先)

サブネット マスク . . . . . . . . : 255.255.255.0

リース取得. . . . . . . . . . . . : 2014年1月10日 14:53:32

リースの有効期限. . . . . . . . . : 2014年1月10日 15:05:03

デフォルト ゲートウェイ . . . . . : 192.168.0.1

DHCP サーバー . . . . . . . . . . : 192.168.0.1

DHCPv6 IAID . . . . . . . . . . . : 244085614

DHCPv6 クライアント DUID. . . . . : 00-01-00-01-14-6D-30-44-8C-73-6E-03-D8-27

DNS サーバー. . . . . . . . . . . : 192.168.0.1

NetBIOS over TCP/IP . . . . . . . : 有効

~以下 省略~

MAC アドレスは「物理アドレス」

の部分です。

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(6-2) オプションを利用2 ~DHCPサーバに対して IPアドレスを返却、更新したい

C:\>ipconfig /release IPアドレスを返却します

Windows IP 構成

イーサネット アダプター ローカル エリア接続:

接続固有の DNS サフィックス . . . :

リンクローカル IPv6 アドレス. . . . : fe80::ac9b:1d3e:1f3c:37c8%10

デフォルト ゲートウェイ . . . . . :

C:\>ipconfig /renew IPアドレスを更新します

Windows IP 構成

イーサネット アダプター ローカル エリア接続:

接続固有の DNS サフィックス . . . :

リンクローカル IPv6 アドレス. . . : fe80::ac9b:1d3e:1f3c:37a8%10

IPv4 アドレス . . . . . . . . . . : 192.168.0.102

サブネット マスク . . . . . . . . : 255.255.255.0

デフォルト ゲートウェイ . . . . . : 192.168.0.1

PING ネットワーク的に到達できるかを調べる

ピング

エコー要求

エコー応答

C:\>ping 192.168.0.1

192.168.0.1 に ping を送信しています 32 バイトのデータ:

192.168.0.1 からの応答: バイト数 =32 時間 <1ms TTL=255

192.168.0.1 からの応答: バイト数 =32 時間 <1ms TTL=255

192.168.0.1 からの応答: バイト数 =32 時間 <1ms TTL=255

192.168.0.1 からの応答: バイト数 =32 時間 <1ms TTL=255

192.168.0.1 の ping 統計:

パケット数: 送信 = 4、受信 = 4、損失 = 0 (0% の損失)、

ラウンド トリップの概算時間 (ミリ秒):

最小 = 0ms、最大 = 0ms、平均 = 0ms

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Point

●Ping の後にドメイン名でも可能 C:¥>ping www.yahoo.co.jp

●Pingの応答があれば、導通を確認できます。

応答がなかった場合「宛先ホストに到達できません」と表示されます。

ただし、セキュリティ上 Pingの通過を許さないネットワークであったり、セキュリティソフト

やファイヤウォールにより Pingの要求がブロックされている場合もあります。

NSLOOKUP DNSサーバに問い合わせを行う

C:\Users\jmatsuda>nslookup www.rakuten.co.jp

サーバー: ad02.bene.fit.ac.jp

Address: 150.43.169.31

権限のない回答:

名前: www.rakuten.co.jp

Address: 202.72.50.10

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17

TRACERT 相手に到達するまでに経由するルーターのアドレスを表示

E:\>tracert www.google.co.jp

www-cctld.l.google.com [74.125.235.159] へのルートをトレースしています

経由するホップ数は最大 30 です:

1 <1 ms <1 ms <1 ms setup.netvolante.jp [192.168.0.1]

2 1 ms <1 ms <1 ms 192.168.24.1

3 * * * 要求がタイムアウトしました。

4 4 ms 2 ms 2 ms 125.206.153.33

5 2 ms 2 ms 2 ms 118.23.133.133

6 8 ms 3 ms 4 ms 118.23.88.21

7 4 ms 2 ms 2 ms 221.184.19.17

8 14 ms 16 ms 14 ms 125.170.96.49

9 19 ms 20 ms 19 ms 122.1.245.17

10 20 ms 21 ms 20 ms 122.1.245.14

11 21 ms 21 ms 20 ms 60.37.27.150

12 21 ms 22 ms 20 ms 118.23.146.234

13 22 ms 25 ms 22 ms 61.126.89.38

14 23 ms 24 ms 22 ms 209.85.241.94

15 23 ms 24 ms 22 ms 209.85.241.129

16 22 ms 24 ms 22 ms nrt19s11-in-f31.1e100.net [74.125.235.159]

トレースを完了しました。

Point

●相手先までの経路は、状況によって変わる場合があります。

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1-2 Ciscoルータの初期設定

(1) はじめに

Ciscoルータに各種設定をいれるには、Consoleから、またはネットワーク経由でログインして

操作する必要があります。今後の実験を進める為に、ケーブリングや各種設定を行い、接続の準

備を行います。

(2) コンソール接続

ルータの背面を確認してください。

「Console」と書いているポートを利用します。こ

この形状は、RJ-45です。従って、イーサネットの

ポートと形状は同じです。

※間違えてイーサネット ポート コネクタに接続

しないように注意してください。破損の原因となり

ます。

図2-1

コンピュータ側のインターフェースの形状は DB-9 です。但し、現在のコンピュータには、DB-9

形状のインターフェースが付いていない事が多いため、USB to RS-232変換アダプターを使用し

て、USBで接続します。

※USB to RS-232変換アダプターのデバイスドライバをインストールして下さい。

接続が完了したら、端末ソフトを起動します。今回は Tera Termを使用します。

図2-2 Tera Term

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接続を確認し、Tera Termを起動したら、ルータの電源を入れて下さい(背面のスイッチ)。

Cisco Internetwork Operating System Software

IOS (tm) C2600 Software (C2600-I-M), Version 12.2(28), RELEASE SOFTWARE (fc5)

Technical Support: http://www.cisco.com/techsupport

Copyright (c) 1986-2005 by cisco Systems, Inc.

Compiled Wed 27-Apr-04 19:01 by miwang

cisco 2620 (MPC860) processor (revision 0x200) with 60416K/5120K bytes of memory

.

Processor board ID JAD05190MTZ (4292891495)

M860 processor: part number 0, mask 49

Bridging software.

X.25 software, Version 3.0.0.

1 FastEthernet/IEEE 802.3 interface(s)

1 Low-speed serial(sync/async) network interface(s)

32K bytes of non-volatile configuration memory.

16384K bytes of processor board System flash (Read/Write)

--- System Configuration Dialog ---

Continue with configuration dialog? [yes/no]:

Ciscoルータの起動例 1

「System Configuration Dialog 」という画面が出たら、「no」と入力して下さい。

これは、対話的に設定を行うモードですが、本実験では利用しません。

Press RETURN to get started!

Ciscoルータの起動例 2

ここで、エンターを入れると、以下の状態になります。

Router>

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(3) ホスト名の設定

「Router」はホスト名です。本実験では複数のルータを接続することになりますので、ホスト

名を変更します。

Router > ホスト名

各コマンドの詳細は次回以降の実験で説明しますので、今回はテキスト通りに設定を行って下

さい。下線の部分を入力し、エンター押下します。ホスト名の部分はルータに記載しております。

Router>en

Router#conf t

Enter configuration commands, one per line. End with CNTL/Z.

Router(config)#hostname ORANGE

ORANGE(config)#

ホスト名の変更

(4) IPアドレスの設定

次に「IPアドレス」の設定を行います。ルータがルーティングを行うには複数の IPアドレス

を設定する必要がありますが、今回は接続の準備ですので、その内の1つだけ設定します。本実

験では3台のルータを1セットとし、各自1台のルータを設定します。ご自身のルータの

FastEternet0/0の IPアドレスを確認して下さい。第3オクテットおよび、第 4オクテットの「X」

はルータにシールを張っています。

表3-1 各インターフェースの IPアドレス

ルータ インターフェース IPアドレス サブネットマスク

ルータ A Serial0/0 172.16.1.1 255.255.255.0

FastEternet0/0 192.168.10.X 255.255.255.0

ルータ B

Serial0/0 172.16.1.2 255.255.255.0

Serial0/1 172.16.2.1 255.255.255.0

FastEternet0/0 192.168.20.X 255.255.255.0

ルータ C Serial0/0 172.16.2.2 255.255.255.0

FastEternet0/0 192.168.30.X 255.255.255.0

ORANGE(config)#int f0/0

ORANGE(config-if)#ip address 192.168.Y.X 255.255.255.0

ORANGE(config-if)#no shutdown

ORANGE(config-if)#exit

ORANGE(config)#

IPアドレスの設定

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(5) Telnetの設定

ネットワークに接続された機器を遠隔操作するためには、Telnet や SSHを利用します。Telnet

は、全てのデータが平文で送信されますが、SSHの場合、全てのデータが暗号化されて送信さ

れます。現在、Telnetの利用はセキュリティ上の観点から推奨されておりませんが、本実験では

暗号化する必要はありませんので、Telnet を利用します。

下線部を入力してください。パスワードは「fit」に統一します。

ORANGE(config)#line vty 0 4

ORANGE(config-line)#password fit

ORANGE(config-line)#login

ORANGE(config-line)#exit

Telnet の設定

Telnet ですべての設定を行うためには、イネーブルパスワードと呼ばれる設定を入れる必要が

あります。パスワードは「fit」に統一です。

ORANGE(config)#enable password fit

ORANGE(config)#

イネーブルパスワードの設定

これで、ルータ側の Telnet 設定は完了しました。次にコンピュータ側の設定を行います。

(6) IPエイリアス

1つのインタフェースには、普通1つの IPアドレスが割り当てられます。但し、IPアドレス

は1つだけしか割り当てできない訳ではありません。本実験では、通常利用の IPアドレス

(150.43.Y.X)に加え、ルータ接続用の IPアドレスを追加します。この設定により、通常の使

用に影響する事無く、ルータへの接続が可能です。

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図2-3

IPエイリアス 1

コントロール パネル

ネットワークと

インターネット

ネットワークと

共有センター

アダプター設定の変更

図2-4 IPエイリアス 2

インターネットプロトコル

バージョン4を選択して

プロパティ

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図2-5 IPエイリアス 3

詳細設定

図2-6 IPエイリアス 4

IPアドレスの追加

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図2-7 IPエイリアス 5

設定する IPアドレスは、ルータの FastEternet0/0 に設定したアドレスの第 4オクテットに 100

を加えたアドレスにして下さい。サブネットマスクは 255.255.255.0 です。

つまり、FastEternet0/0 に「192.168.10.3」を設定した人は、ここで「192.168.10.103」です。

(7) 接続の確認

Telnet クライアントは Tera Termを利用します。

サービスに Telnet ホストの所に、FastEternet0/0の IPアドレスを入れて下さい

図2-8 Tera Term

無事に接続出来ることを確認してください。

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(8) 設定ファイルのバックアップと復元

ルータの設定ファイルは「running-config」として RAM 上に保存されています。この設定(フ

ァイル)を TFTPサーバに保存します。TFTPとは、UDPを使用したファイル転送プロトコルで

あり、認証機能を持ちません(ユーザ名、パスワード不要)。

今回は、TFTPサーバソフトとして「tftpd32」を使用します。

Settings

Global

TFTP Server にチェックが入っている

ことを確認して下さい。

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次にルータで以下のコマンドを入力します。

Router#copy running-config tftp

Address or name of remote host []? 192.168.1.1

TFTPサーバのアドレスを聞いてきますので、ご自身の IPアドレスを指定してください。

但し、設定した複数の IPアドレスの内、ルータと通信可能な IPアドレスです。

Destination filename [running-config]?.!!

417 bytes copied in 4.608 secs (104 bytes/sec)

ファイル名を聞いてきます。そのままでエンターを押してください。

以上で、バックアップ完了です。

次に、復元してみます。

Router#copy tftp running-config

Address or name of remote host []? 192.168.1.1

Destination filename [running-config]?.!!

417 bytes copied in 4.608 secs (104 bytes/sec)

上記の、バックアップと復元は、実験の前後で各自行って下さい。

※設定ファイルのコピーはマージです。

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1-3 Ciscoルータの操作

(1)Ciscoルータの操作環境

Ciscoのルータは Console から操作する必要があります。Consoleとは元々はコンピュータを操

作するために使う入出力装置のことだったのですが、現在では専用の入出力装置ではなくパソコ

ンが使用されます。パソコンをルータの Consoleとして使用するには、専用のシリアルケーブル

でルータの Consoleポートとパソコンのシリアルポートを接続し、パソコンで端末ソフトを起動

します。

最近のパソコンではシリアルインターフェースが搭載されていない機種も多いのですが、その

ような場合には USBとシリアルインターフェースとの変換器を使用します。

図3-1 ルータの Consoleポート

図3-2 Tera Term

また、Windowsで使用できる端末ソフトは様々ありますが、本実験では Tera Termを使用する

ことにします。

ルータにおいて適切な設定がされていればネットワーク経由でログインして操作することも

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できます。その場合も端末ソフトを使用します。

(2)Cisco IOSと CLI

ルータはネットワーク同士を接続するネットワーク装置の一種ですが、その内部では専用のコ

ンピュータが動作しています。Ciscoのルータではその OSとして Cisco Internetwork

Operating System、略して Cisco IOS と呼ばれる OSが動作しています。Cisco IOSでの操作は

独特なコマンドラインインターフェース(CLI)となっています。

CLIではキーボードからコマンドを入力することで操作します。コマンドの実行結果は端末の

画面にテキストで表示されます。Windows 等のグラフィカルユーザインターフェースのように

マウスによる直感的な操作はできません。ヘルプ機能のようなある程度の補助はありますが、基

本的には操作に必要なコマンドは覚えておく必要があります。

図3-3 Cisco IOS

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(2-1) コマンドの入力

コマンドは正しい綴りで入力する必要があります。正しくないコマンドを入力するとエラーに

なります。エラーの場合にはエラーメッセージが表示されます。エラーメッセージには以下の種

類があります。

・Invalid input detected at '^' marker.

コマンドが^の部分で間違っている

・Incomplete command.

コマンドがこの文字列だけでは完成しない。追加のオプション等が必要。

・Ambiguous command :

入力された文字列で始まるコマンドが複数あるため(後述の)補完機能で補完できない。

(2-2) コマンドの補完機能

コマンドは正しく入力する必要はありますが、必ずしも全て入力する必要はありません。例え

ば configureコマンドは confだけでも結構です。後述のモードによって使用できるコマンドは

異なりますが、使用できるコマンドの内のどのコマンドか特定できるだけの文字列を先頭から入

力すれば、残りは Cisco IOS が自動的に補完して解釈してくれます。コマンドのオプションも同

様です。

例えば後述の特権モードでは conで始まるコマンドは configureと connectionの 2種類あり

ますが、confまで入力すると configureであることが特定できます。conだけではエラーになり

ますが、confまで入力するとエラーになりません。また、configureコマンドはオプションを必

要としますが、terminalというオプションは tでも大丈夫です。つまり、configure terminal

と全て入力しなくても、conf tだけでも受け付けます。

(2-3) ヘルプ機能

プロンプトで?を押下すると、使用可能なコマンドの一覧が表示されます。コマンドの途中で?

を押下すると、その文字列から始まるコマンドの一覧を表示します。さらに、conf ?のようにコ

マンドとスペースに続けて?を押下すると、その後に指定できるオプションの一覧が表示されま

す。もしもオプション等が必要ない場合は<cr>と表示されます。

(2-4) コマンド履歴と編集機能

Cisco IOS では入力されたコマンドを記録しています。↑キー(または Ctrl+P)を押すことで1

つずつ前に入力したコマンドを遡ることができます。↓キー(または Ctrl+N)で1つずつ新しく

入力したコマンドに戻ります。

入力の途中で←キー(または Ctrl+B)を押すと1文字前へ移動します。→キー(または Ctrl+F)

で1文字前後ろへ移動します。Backspace キーで 1文字削除します。

Ctrl+Aで行頭へ移動します。Ctrl+Eで行末へ移動します。

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(2-5) 1画面で表示しきれない場合

コマンドの結果によっては 1画面で表示しきれない場合があります。その場合は画面の最下部

に'--more--'と表示されます。

この場合、space キーで 1画面スクロール、enterキーで 1行スクロールします。その他のキー

を押した場合、その時点で結果出力は中断されます。

(3) Cisco IOSのモード

Cisco IOS の CLIにはモードがあります。そして、操作内容に応じてモードを切り替える必要

があります。モードにはユーザモード、特権モード、グローバルコンフィグレーションモ

ードなどがあります。以下に代表的なモードについて解説します。

(3-1) ユーザモード

Ciscoルータにログインするとユーザモードになります。

CLIではコマンドの入力を促す文字列を表示することで、コマンドが入力可能であることを示

します。この文字列をプロンプトと呼びます。ユーザモードのプロンプトは'>'です。ルータの名

前が Routerならば Router>と表示されます。

ユーザモードでは入力できるコマンドが制限されています。機器のステータスを確認する程度

のことなら可能です。

図3-4 ユーザモード

(3-2) 特権モード

特権モードは様々なコマンドを入力できるモードです。機器の動作に影響を与えるようなコマ

ンドを入力するにはこのモードに移行する必要があります。

特権モードのプロンプトは'#'です。ルータの名前が Router ならば Router#と表示されます。

図3-5 特権モード

(3-3) グローバルコンフィグレーションモード

機器の設定を変更するにはコンフィグレーションモードと総称されるモードに移行する必要

があります。コンフィグレーションモードにもグローバルコンフィグレーションモードやインタ

ーフェースコンフィグレーションモード、ルータコンフィグレーションモードなどがあります。

特権モードから configureコマンドによりグローバルコンフィグレーションモードに移行す

ることができます。グローバルコンフィグレーションモードのプロンプトは'(config)#'です。ル

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ータの名前が Router ならば Router(config)#と表示されます。

グローバルコンフィグレーションモードでは機器全体に関わる設定を変更できます。また、コ

マンドによりインターフェースコンフィグレーションモードやルータコンフィグレーションモ

ードなど他のコンフィグレーションモードに移行することができます。

図3-6 グローバルコンフィグレーションモード

ユーザモード、特権モード、グローバルコンフィグレーションモードを切り替えるには、その

ためのコマンドを入力します。

ユーザモードから特権モードへ切り替えるには enableコマンド(オプションはありません)

を入力します。

図3-7 enable コマンド

特権モードからユーザモードへ切り替えるには disableコマンドを入力します。

図3-8 disable コマンド

ユーザモードか特権モードで exitコマンドを実行するとログアウトします。

グローバルコンフィグレーションモードへ切り替えるには、特権モードで configureコマンド

を実行します。configureコマンドはオプションを必要とします。オプションには数種類ありま

すが、端末(console)からログインしている場合は terminalを指定します。即ち、configure

terminalというコマンドでグローバルコンフィグレーションモードへ移行します。

図3-9 configureコマンド

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グローバルコンフィグレーションモードからは routerコマンドや interfaceコマンドでルー

タコンフィグレーションモードやインターフェースコンフィグレーションモードへ切り替える

ことができます。これらのモードからグローバルコンフィグレーションモードに戻るには exit

コマンドを実行します。

グローバルコンフィグレーションモードから特権モードへ戻る場合も exitコマンドを実行し

ます。

グローバルコンフィグレーションモードやその他のコンフィグレーションモードから特権モ

ードに戻るには endコマンドを実行します。

モードとその切り替えに使うコマンドの関係は少し複雑に思えますので、図3-10にまとめ

ておきます。

図3-10 モードを切り替えるコマンド

ルータの設定作業では特権モードとコンフィグレーションモードで作業します。特権モードか

らグローバルコンフィグレーションモードへは configure、グローバルコンフィグレーションモ

ードから各コンフィグレーションモードへは対応するコマンド、一つ前のモードへ戻るには

exitコマンドと覚えておくと良いでしょう。

なお、本実験では設定しませんが、ログインする際と特権モードへ移行する際には各々パスワ

ードを設定することができます。ログインパスワードが設定されている場合はログインする際に

パスワードの入力が必要となります。また、enable パスワードが設定されている場合は特権モー

ドへ移行する際にパスワードの入力が必要となります。

接続画面(ログアウト)

ユーザモード

特権モード

グローバルコンフィグレーションモード

インターフェースモードなど

Enterキー

enable

configure

interfaceなど

exit

disable

exit or end

exit

end

exit

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実験と考察

実験を始める前にパソコンの COM ポート(パソコンにシリアルインターフェースがない場合

は USBポートに USB⇔シリアルインターフェースの変換器を接続して、そのシリアルインター

フェース)からルータの Console へ専用ケーブルで接続しておいて下さい。

(1) ログイン

パソコンにおいて Tera Termを起動し、COM× Serial ポートからルータに接続し、ログインし

て下さい。×は使用するパソコンによって異なります。USB⇔シリアルインターフェースの変換

器を使用している場合は「COM4:ELECOM USB-SERIALConverter」などのように表示されるの

で、その COM ポートを選択します。ログインした状態がユーザモードです。

(1-1) Tera Termの起動

図3-11 Tera Termの起動

パソコンのシリアルポートとルータの Console を接続していることを確認して、TeraTrermを

起動します。

(1-2) シリアルポートを選択して接続

シリアルをチェックして COM×を選択し、OKボタンをクリックします。

図3-12 Tera Termの接続

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(1-3) ルータを起動する

ルータの電源を ONにします。するとすぐに図3-13のようなメッセージが表示されます。

図3-13 ルータの起動画面

もし、何も表示されないか文字化けして表示される場合はシリアルポートの設定が不適切であ

る可能性があります。「設定」メニューの「シリアルポート」を選択して、次の項目を確認して

下さい。異なっていた場合には設定を変更して下さい。(変更してもしばらく表示が変わらない

ことがありますが、それはメッセージが更新されていないためであり、しばらく待つと適切に表

示されます。)

・ボー・レート: 9600

・データ: 8 bit

・パリティ: none

・ストップ: 1 bit

・フロー制御: none

しばらくして図3-14のような表示に変わります。これは OS が起動中のメッセージです。

図3-14 起動中の画面

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さらに待つと Cisco IOSが起動します。新品の機器などのように設定情報が入っていない Cisco

製品はセットアップモードになります。

図3-15 セットアップモード

セットアップモードは基本的な初期設定を対話的に行うモードですが、ここでは no と入力

してセットアップモードを終了します。すると図3-16のようなメッセージが表示されるので

Enter キーを押すとログインできます。

図3-16 ログインを促す画面

ログインすると図3-17のようにプロンプトが表示されます。また、ログインしていなくて

もコンソールにはルータからメッセージが表示されることがあります。そのため、図3-16の

ように表示された後、図3-17のようなメッセージが表示される場合もあります。

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図3-17 ログインした状態

(2) CLIによる操作

(2-1) エラーメッセージの確認

誤ったコマンドを入力して、エラーメッセージを確認してみます。ユーザモードで次のコマン

ド①~④を入力して、エラーメッセージを確認して下さい。エラーメッセージを見てどのように

間違ったのか把握できるようになることは CLIによる操作では大事なことです。

①e

②ss

③show foo

④ene

図3-18 エラーメッセージの確認

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考察課題1

ここで確認したエラーメッセージは、各々何故そのようなメッセージが表示されたのか答えな

さい。

(2-2) コマンドの補完機能の確認

正しいコマンドの一部を入力してみて補完機能を確認します。次のコマンド①~②を入力して、

エラーメッセージではなくコマンドの実行結果が表示されることを確認して下さい。素早く操作

するには補完機能を使える方が有利です。

①h

②sh logi

図3-19 補完機能の確認

考察課題2

ここで入力したコマンドを省略せずに入力する場合の文字列を答えなさい。

(2-3) 1画面に入らない情報の表示

1画面に入らない情報を表示させた場合の操作を確認します。ユーザモードのプロンプトで?

を押下し、使用可能なコマンドを表示させて下さい。この情報は1画面には入らないので、Enter

キーを押して1行ずつスクロール(2~3回)することと、スペースキーを押して、1画面スク

ロールすることを確認して下さい。(2画面分なので1度スペースキーを押すと終了します。)

図3-20 1画面に入らない情報

(3) モードの切替 enable, disable, exit, configure等のコマンドによりモードを切り替えて、モードにより

使用出来るコマンドの違いを確認します。最初にモードを切り替えるコマンドについて確認し、

次にモードにより使用出来るコマンド数を確認します。

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(3-1) モードの切り替え

ユーザモードから始めて次の①~⑥の順序でコマンドを入力した場合、どのようにモードが切

り替わるか確認して下さい。ただし、実行する前に予測を立てておいて、その通りに切り替わる

かどうか確認しながら実行して下さい。

①enable

②configure terminal

③end

④configure terminal

⑤exit

⑥exit

考察課題3

ユーザモードから始めて次の順序になるようにモードを切り替えるには、どのような順序でコ

マンドを実行すれば良いか答えなさい。

ユーザモード→特権モード→ユーザモード→特権モード→グローバルコンフィグレー

ションモード→特権モード→ログアウト

(3-2) 使用可能コマンドの確認

ユーザモードにおいて?を使って使用できるコマンドを確認すると約 2画面分ありました。同

様に特権モードとグローバルコンフィグレーションモードでは各々何画面分になるか確認して

下さい。

考察課題4

1画面に表示できる行数はデフォルトで 24行です。このことからユーザモードと特権モード、

グローバルコンフィグレーションモードでは使用できるコマンドが各々何種類あるか概算値を

答えなさい。

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2.IP

2-1 IPとは

インターネットでは TCP/IP というプロトコル群が使われています。これらはインターネット

層とトランスポート層のプロトコルです。インターネット層のプロトコルは Internet Protocol

(IP)です。IPはネットワーク同士を接続するための機能を提供します。

TCP/IPの下位の層でもネットワークを構成できます。例えばイーサネットで1つのネットワ

ークを構成することができます。しかし、そのネットワークに参加できるコンピュータの台数に

は制限があります。また、ネットワークを構成できる範囲(物理的な距離)にも制限があります。

そのため、小規模なネットワークであれば1つのネットワークとして実現できますが、中規模~

大規模なネットワークを単一のネットワークとして構成することはできません。中規模~大規模

なネットワークは小規模なネットワークを相互に接続することで構成されます。その相互に接続

するための機能を実現するプロトコルの1つが IP です。

複数のネットワークを接続して構成されたネットワークにおいて、パケットを正しい宛先まで

届けるためには、複数のネットワークをまたがって相手を選び出し、相手まで送り届ける必要が

あります。つまり、どのネットワークを経由してパケットを届けるのかを決める仕組みが必要に

なります。その仕組みをルーティング(経路制御)といいます。IPはこのルーティングを実現

するプロトコルです。

ネットワーク同士を接続し、ルーティングを行う装置をルータといいます。ルーティングがど

のように行われるのかを、簡単なイラストを用いて説明します。

図2-1 ネットワークをまたいだ通信

イラストではネットワークが A~Dの4つあり、ルータ 1が Aと Bを、ルータ 2が Bと C、

Dを接続しています。このネットワークにおいてネットワーク Aのホスト 1からネットワーク C

のホスト 2までパケットを届ける手順は次のようになります。なお、IPではネットワークに接

続した機器を識別するために IPアドレスを使います。したがって、ネットワークに接続する機

器には(インターフェース毎に)IPアドレスを設定する必要があります。また、IPのパケット

には送信元の IPアドレスと宛先の IPアドレスが含まれています。

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1) ホスト 1はホスト 2の IPアドレスを見て、相手が同じネットワークにいないことを知り、別

のネットワークへ転送してもらうようにルータ 1へパケットを送出します。

2) ルータ 1は受け取ったパケットの宛先の IPアドレスを見て、相手はネットワーク Cにいるこ

とを知ります。また、ネットワーク Cはルータ 2の先にあることを知っているのでルータ 2

へパケットを転送します。

3) ルータ 2は受け取ったパケットの宛先の IPアドレスを見て、相手はネットワーク Cにいるこ

とを知り、ネットワーク Cへ転送します。それによってホスト 2へパケットが届きます。

以上の説明で IPにおいては IPアドレスが重要な役割を果たしていることに気がつくことと思

います。IPアドレスを見ただけで、通信相手が同じネットワークにいないことや(ルータが知

っている範囲のネットワークにおいて)どのネットワークに通信相手がいるかを認識できていま

す。

2-2 IPアドレス

前述のように IPではネットワークに接続する機器(正確にはインターフェース)を識別する

のに IPアドレスを使います。現在使われている IP にはバージョン 4(IPv4)とバージョン 6(IPv6)

がありますが、それらに互換性はありません。IP アドレスも IPv4 では 32ビット、IPv6 では 128

ビットと異なりますが、共通している点が1つあります。どちらもルーティングのための構造を

持っているということです。

IPv6 では前半 64ビットがネットワークプレフィックスと呼ばれ、ネットワークを表す部分で

あり、後半 64ビットがインターフェース IDと呼ばれ、そのネットワーク内の機器を表す部分

となっています。

IPv4 でも IPアドレスの前半をネットワーク部と呼び、後半をホスト部と呼びます。ネットワ

ーク部がネットワークを表し、ホスト部がそのネットワーク内の機器を表します。ただし、IPv4

ではネットワーク部とホスト部の境界が一定ではありません。

ところで、本実験は CCNAにおけるルーティング関連の基本的な知識を習得することを目指

すものですが、IPv6 はその範囲外とします。(CCNAに出題されないわけではない。)よってこ

れ以降は、IPは IPv4、IP アドレスは IPv4 アドレスのことを指すこととします。

IPアドレスは 32ビットの番号ですが、2進数で表記すると煩わしいので、オクテット(8ビ

ット)ごとに区切り、各オクテットを 10進数で表し、それらを.で繋いで表記します。例えば

150.43.1.10のように表記します。

IPアドレスはインターネットで使用するアドレスですから、世界中で重複があってはいけま

せん。そのため、IPアドレスを管理する団体があります。その団体を ICANN といいます。イン

ターネットへ直接接続するネットワークに存在する機器には ICANNから割り当てられた IPア

ドレスを設定する必要があります。(インターネットへ接続しないネットワークへ接続している

機器には後述のプライベート IPアドレスと呼ばれる特別な IPアドレスを設定することができま

す。)

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ICANNやその下部組織からの IPアドレスの割り振り(アドレッシング)には 2種類の方法が

あります。クラスフルとクラスレスです。

(1) クラスフル

インターネットが現在のように普及する以前は、IPアドレスは組織に対してクラスの単位で

割り振られていました。クラスは A~Cがあり、ネットワーク部とホスト部の境界が異なります。

クラス Aではネットワーク部が 8ビットでホスト部が 24ビットであり、非常に多くの機器に

IPアドレスを割り振ることができます。そのため、大規模な組織に割り当てられます。クラス B

ではネットワーク部が 16 ビットでホスト部が 16 ビットであり、多くの機器に IPアドレスを割

り振ることができます。クラス Bはクラス Cでは不足するような組織に割り当てられます。ク

ラス Cではネットワーク部が 24ビットでホスト部が 8ビットであり、約 250 台の機器に割り振

ることができます。比較的小規模な組織に割り当てられます。

これらのクラスは IPアドレスの先頭部分の値で識別できます。クラス Aは先頭ビットの値が

0です。クラス Bは先頭 2ビットの値が 10 で、クラス Cは先頭 3ビットの値が 110となってい

ます。(マルチキャストアドレスとしてクラス D、実験用としてクラス Eもあります。)これを

図で表すと以下のようになります。

図2-2 クラスによる IPアドレスの分類

このようなクラスによるアドレスの割り振り方式をクラスフルアドレッシングといいます。し

かし、クラスフルでは IP アドレスの効率的な利用ができないため、ICANN では、現在はこの方

式は使っていません。

(2) クラスレス

現在、ICANNからの IP アドレスの割り振りはクラスを廃したクラスレスアドレッシングにな

っていて、組織の規模に合わせてネットワーク部とホスト部の境界が決められます。

クラスレスでは IP アドレスを見ただけではネットワーク部とホスト部の境界が分かりません。

それを表すための情報が必要になります。

また、ICANNからは組織の規模に応じて使用できる IP アドレスの範囲を割り振られますが、

クラスD

1 1 1 0 x x x x

アドレス範囲 224.0.0.0~239.255.255.255

x x x x x x x x x x x x x x x x x x x x x x x x

クラスE

1 1 1 1 x x x x

アドレス範囲 240.0.0.0~255.255.255.255

x x x x x x x x x x x x x x x x x x x x x x x x

マルチキャ

スト専用

実験用

(不使用)

x x x クラスA

0 x x x x x x x

アドレス範囲 0.0.0.0~127.255.255.255

x x x x x x x x x x x x x x x x x x x x x

クラスB

1 0 x x x x x x

アドレス範囲 128.0.0.0~191.255.255.255

x x x x x x x x x x x x x x x x x x x x x x x x

クラスC

1 1 0 x x x x x

アドレス範囲 192.0.0.0~223.255.255.255

x x x x x x x x x x x x x x x x x x x x x x x x

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組織の内部ではそのアドレス範囲を更に幾つかのグループに分割して、組織内の複数の小さなネ

ットワークに割り振ることも一般的に行われています。これは管理上の問題(例えば技術部門と

営業部門、人事部門は別々のネットワークとして管理した方が管理し易い等)や、冒頭の物理的

な制限のためです。このように 1つの大きなネットワークは複数の小さなネットワークから構成

されるわけですが、この小さなネットワークをサブネットと呼びます。サブネットも組織の内部

では 1つ 1つのネットワークですから、ネットワーク部は各サブネットで異なっている必要があ

ります。

例えば ICANNから組織に割り振られた IPアドレスの範囲が 192.123.45.0~192.123.45.255 で、

ネットワーク部の長さが 24ビットだとして、これを技術部門に 192.123.45.0~192.123.45.127の

範囲でネットワーク部の長さを 25ビットのサブネット、営業部門に 192.123.45.128~

192.123.45.191の範囲でネットワーク部の長さを 26 ビットのサブネット、人事部門に

192.123.45.192~192.123.45.255 の範囲でネットワーク部の長さを 26 ビットのサブネットとして

分割すると、技術部門のサブネットのネットワークは 192.123.45.0/25、営業部門のサブネットの

ネットワークは 192.123.45.128/26、人事部門のサブネットのネットワーク部は 192.123.45.192/26

となります。

このようなサブネットのネットワーク部とホスト部の境界も IPアドレスだけでは分かりませ

ん。ネットワーク部とホスト部の境界を表す情報としてサブネットマスクという値が使われます。

サブネットマスクも 32ビットの番号で、ネットワーク部が全て 1、ホスト部が全て 0の値とな

ります。例えばネットワーク部が 24ビットであれば 255.255.255.0 という値で、ネットワーク部

が 26 ビットであれば 255.255.255.192 という値になります。

サブネットマスクは IP アドレスの後に/に続けてネットワークのビット数を表記することで、

IPアドレスと一緒に表すこともあります。例えば 192.168.1.100 のネットワーク部が 24ビットな

ら 192.168.1.100/24のように表記することもあります。

2-3 ユニキャスト・ブロードキャスト・マルチキャスト

コンピュータの通信では1対1の通信が基本ですが、1対多の通信も必要になることがありま

す。IPでは1台のホストへデータを送信することをユニキャストと呼びます。

1対多の通信の内、同じサブネット内の全ての機器へ一斉に送信することをブロードキャスト

と呼びます。ブロードキャストには後述の特別な IPアドレスを使います。イーサネットにもブ

ロードキャストの機能がありますので、イーサネット上の IPでは、送信側がブロードキャスト

のアドレス宛に1つパケットを送出するだけで、同じセグメント内の全てのネットワークインタ

ーフェースへそのパケットが到達します。ただし、ルータがそのパケットを他のネットワークへ

転送することはありません。

IPにおける1対多の通信としては、ブロードキャストの他にマルチキャストがあります。マ

ルチキャストでは、送信対象となる機器はどのネットワークに存在していても構いません。送信

側が1回パケットを送出するだけで、中継するルータ等がそのパケットを受信すべき機器が存在

するネットワークへ転送してくれます。その際、複数のネットワークに受信すべき機器が存在す

るなら、パケットが複製されて転送されることになります。マルチキャストではクラス D(IP

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アドレスの先頭ビットが 1110)のマルチキャスト専用アドレスを使います。マルチキャストで

は、受信したい全ての機器に同じマルチキャストアドレスを(ユニキャスト用のアドレスとは別

に)割り当てます。送信側はそのアドレスにパケットを送るだけで全ての機器に届くことになる

わけですが、そのためにはルータが対応している必要があります。(本実験ではマルチキャスト

のルーティングは対象にしません。)

2-4 特別な IPアドレス

割り振られた IPアドレスの範囲の内、ネットワークインターフェースに割り当てることがで

きない特別な値があります。ホスト部が全て 0のアドレスはネットワークそのものを表すネット

ワークアドレスであり、特定のホストに割り当てることはできません。

また、ホスト部が全て 1のアドレスは前述のブロードキャストのためのアドレス、ブロードキ

ャストアドレスであり、特定のホストに割り当てることはできません。

また、0.0.0.0 は任意のアドレスを表すため、ICANNから割り振られることはありません。同

様に 127.0.0.0~127.255.255.255 は自分自身を表すループバックアドレスであり、ICANNから割

り振られることはありません。

インターネットに直接接続している機器には世界で唯一の IPアドレスを割り当てる必要があ

りますが、インターネットに接続していないネットワークであればその必要はありません。その

ようなネットワークへ割り当てるための IPアドレスの範囲も次のように用意されています。

・10.0.0.0~10.255.255.255(クラス A)

・172.16.0.0~172.31.255.255(クラス B)

・192.168.0.0~192.168.255.255(クラス C)

これらの IPアドレスはプライベート IPアドレスと呼ばれ、インターネットに直接接続してい

ないネットワークでは自由に使うことができます。現在では、NAT や NAPT(Ciscoの用語では

PAT)といった IPアドレスの変換技術により、内部のネットワークにはプライベート IPアドレ

スを使い、外部との通信には1つまたは少数のグローバル IPアドレス(ICANNから割り振られ

た世界で唯一の IPアドレス)を使うことも一般的になっています。

実験と考察

前回はルータの操作のみでしたが、今回からネットワークを使用した実験を行います。実験に

は各人が PC、ルータ、スイッチングハブを各1台使用します。そして、3名で1組として実験

を行います。つまり、ルータ3台を含むネットワークを構成して実験を行います。

ルータにはシリアルインターフェースを 2ポート備えたものが1台あり、その他の2台はシリ

アルインターフェースは 1ポートです。シリアルインターフェースを 2ポート備えたルータには

ルータ B、その他のルータにはルータ A、ルータ Cという名前を付けることにします。

既にパソコンのシリアルポートとルータの Console ポートは接続されているものと思います。

(接続されていないならば接続して下さい。)今回から更にルータの FastEthernet0/0のポートと

スイッチングハブのポート(どれでも可)をイーサネットケーブルで接続して下さい。

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また、パソコンのイーサネットインターフェースとスイッチングハブのポートをイーサネット

ケーブルで接続して下さい。

さらに、ルータ Aのシリアルインターフェース(Serial0/0)とルータ Bのインターフェースが

ある面に向かって右側のシリアルインターフェース(Serial0/0)をシリアルケーブルで接続して

下さい。ルータ間を接続するケーブルには DCE 側と DTE 側があります。ルータ Aを DCE 側、

ルータ Bを DTE側にして下さい。また、ルータ Cのシリアルインターフェース(Serial0/0)と

ルータ Bの左側のシリアルインターフェース(Serial 0/1)をシリアルケーブルで接続して下さ

い。これもルータ Cを DCE側、ルータ Bを DTE側にして下さい。今後は特別な指示がない限

りこのように接続されているものとします。

図2-3 実験用機器の接続

ところで、最近のパソコンでは通常、ファイアウォールがインストールされ、有効になってい

ますが、これは外部からの通信を遮断するものです。そのため、実験に使用するパソコンでファ

イアウォールが有効になっていると実験できません。本当は ICMPv4 のエコー要求だけ受信許可

すれば良いのですが、そのための設定方法は OSによって異なりますし、設定作業もかなり面倒

ですので、Windows 7でファイアウォールを無効にする方法だけ説明しておきます。

1.管理者権限でコントロールパネルを起動します。

2.「Windowsファイアウォール」を選択します。

3.左側の「Windowsファイアウォールの有効化または無効化」をクリックします。

4.「Windowsファイアウォールを無効にする」にチェック(2箇所とも)して、OK ボタン

をクリックします。

なお、実験に使用するパソコンを実験以外に使用する場合は必ず元の設定に戻して下さい。

ケーブル類の接続ができたら前回と同様に、パソコンで TeraTermを起動し、ルータのスイッ

チを ONにしてルータにログインして下さい。今後は以上の準備が済んでいるものとして説明し

ます。

イーサ シリアル

パソコン

スイッチングハブ

ルータ Serial0/0

Console FastEthernet0/0

イーサ シリアル

パソコン

スイッチングハブ

ルータ Serial0/0

Console FastEthernet0/0

イーサ シリアル

パソコン

スイッチングハブ

ルータ Serial0/0

Console FastEthernet0/0

ルータ C ルータ B ルータ A

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(1) ルータでの IPアドレスの設定

最初にインターフェースの状態を確認します。その上で、使用するインターフェースに IPア

ドレスを設定し、インターフェースを有効にします。これによって、直接接続されている機器と

の通信が可能になります。(もちろん、相手の機器も適切に設定されている必要はあります。)

設定する IPアドレスは次の表の通りとします。

表2-1 各インターフェースの IPアドレス

ルータ インターフェース IPアドレス サブネットマスク

ルータ A Serial0/0 172.16.1.1 255.255.255.0

FastEternet0/0 192.168.10.1 255.255.255.0

ルータ B

Serial0/0 172.16.1.2 255.255.255.0

Serial0/1 172.16.2.1 255.255.255.0

FastEternet0/0 192.168.20.1 255.255.255.0

ルータ C Serial0/0 172.16.2.2 255.255.255.0

FastEternet0/0 192.168.30.1 255.255.255.0

ルータに名前を付けたのと同様に各ルータに接続しているネットワークにも名前を付けたい

と思います。ルータ Aのイーサネットインターフェースに接続しているネットワーク

(192.168.10.0/24)にはネットワーク A、ルータ Bのイーサネットインターフェースに接続して

いるネットワーク(192.168.20.0/24)にはネットワーク B、ルータ Cのイーサネットインターフ

ェースに接続しているネットワーク(192.168.30.0/24)にはネットワーク C と名前を付けます。

今後は各ネットワークはこの名前かネットワークアドレスで表すことにします。

(1-1) インターフェースの状態の確認

インターフェースの状態を確認するには特権モードで、show interfacesコマンドを使います。

このコマンドではインターフェースタイプとポート番号をオプションとして指定することもで

きます。インターフェースタイプを指定しないと、その機器が持つ全てのインターフェースの状

態が表示されます。

今回、このコマンドにより表示される内容で特に重要なのは

インターフェース名 is xxx, line protocol is yyy

の行(インターフェース名は Serial0/0 や FastEthernet0/0など)と、その2行下の

Internet address is xxx.xx.x.x/xx

の行(この行は設定されていないと表示されません)です。インターフェース名の行は次の 4

つの状態になります。

・インターフェース名 is up, line protocol is up

このインターフェースは正常に稼動しています。

・インターフェース名 is up, line protocol is down

clock rate等のハードウェアの適切な設定がなされていない状態、カプセル化の不一致

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・インターフェース名 is administratively down, line protocol is down

手動で停止されている状態です。初期状態ではこの状態になります。

・インターフェース名 is up, line protocol is up

故障などハードウェアに問題がある状態や、IPアドレスの構成ミス

Internet Address の行は設定されている IPアドレス(サブネットマスク)を表示します。IPア

ドレスが設定されていない場合は表示されません。

このコマンドを使って使用しているルータの全てのインターフェースの状態を確認して下さ

い。どれだけのインターフェースがあり、各々稼動状態はどのようになっていて、IPアドレス

が設定されているか否か、設定されているならどのような値かを確認して下さい。

(1-2) IPアドレスの設定

インターフェースを設定するにはグローバルコンフィグレーションモードから interfaceコ

マンドでインターフェース設定モードに入ります。interfaceコマンドでは設定するインターフ

ェースのインターフェースタイプとポート番号を指定します。インターフェースタイプはシリア

ルインターフェースは Serial、100M イーサネットは FastEthernetです。ポート番号は複数あるこ

れらのインターフェースを識別する番号で、今回使用するルータでは 0/0や 0/1となります。し

たがって、FastEthernet0/0 を設定するには interface FastEthernet0/0というコマンドになりま

す。

グローバルコンフィグレーションモードではプロンプトが Router(config)#でしたが、インタ

ーフェース設定モードに入るとプロンプトが Router(config-if)#に変わります。しかし、どの

インターフェースを設定中なのかは表示されませんので注意が必要です。

IPアドレスを設定するには ip addressコマンドを使います。ip addressコマンドでは IPアド

レスとサブネットマスクを指定します。例えば 192.168.0.1/24に設定するには

ip address 192.168.0.1 255.255.255.0

というコマンドになります。

設定した IPアドレスを削除したい場合は no ip addressコマンドを使います。

シリアルインターフェースを使って通信する場合にはクロック信号が必要です。プロバイダと

接続する場合にはプロバイダ側が発信するので設定の必要はありませんが、本実験のようにルー

タ間をシリアルケーブルで接続した場合は DCE側が発信する必要があります。クロック信号を

発信させるにはインターフェース設定モードで clock rateコマンドによりクロックレートを設

定します。設定する値の単位は bps です。例えば 56kbps に設定するなら clock rate 56000とい

うコマンドになります。

インターフェースの帯域幅はイーサネットなどでは正しい値になっていますが、シリアルイン

ターフェースはクロックレートに応じた値ではなく、デフォルトで 1544kbps に設定されていま

す。そのため、Serial0/0(ルータ Bでは Serial0/1 も)の帯域幅を bandwidthコマンドで正しい値

に設定する必要があります。(設定しなくても通信自体には支障ありませんが、メトリックの計

算に影響します。)bandwidthコマンドで設定する値の単位は kbps です。例えば 56kbps に設定

するなら bandwidth 56というコマンドになります。

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各自、表2-1に示した IPアドレスを各インターフェースに設定して下さい。また、ルータ

Aとルータ Cでは Sireal0/0 の設定の際に、clock rateコマンドで 56kbpsに設定して下さい。さ

らに、Serial0/0(ルータ Bでは Serial0/1 も)には bandwidthコマンドで 56kbps に設定して下さ

い。

Router>en

Router#conf t

Enter configuration commands, one per line. End with CNTL/Z.

Router(config)#int s0/0

Router(config-if)#ip address 192.168.10.1 255.255.255.0

Router(config-if)#clock rate 56000

Router(config-if)#bandwidth 56

Router(config-if)#

(1-3) インターフェースを有効にする

IPアドレス(やシリアルの DCE側ではクロックレートの)を設定しただけでは administrative

down の状態のままです。通信を行うにはインターフェースを有効にする必要があります。しか

し、IOSには無効にするコマンドはありますが有効にするというコマンドはありません。無効に

するには、インターフェース設定モードで shutdownコマンドを実行します。有効にするにはこ

のコマンドの逆ですから、前に noを付けて no shutdownというコマンドを実行します。

各自、IPアドレスを設定したインターフェースを全て有効にして下さい。全員がインターフ

ェースを有効にしたら、show interfacesコマンドでインターフェースの状態を確認して下さい。

(シリアルインターフェースは片方が有効にしてもう片方が有効にしていない場合は、有効にし

た側は downの状態になります。両方とも有効にした時点で upの状態になります。そのためイ

ンターフェースの状態の確認は全員が必要なインターフェースを有効な状態にしてから行って

下さい。)

考察課題1

IPアドレスを設定してインターフェースを有効にした結果、最初に実行した show interfaces

コマンドと次に実行したshow interfacesコマンドの結果にどのような変化があったか答えなさ

い。

Router(config-if)#int s0/0

Router(config-if)#no shutdown

%LINK-5-CHANGED: Interface Serial0/0, changed state to up

Router(config-if)#end

%SYS-5-CONFIG_I: Configured from console by console

Router#show int

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(2) pingによる接続確認

IPによる相手との通信が可能かどうか調べるコマンド(IPによってパケットのやり取りがで

きるかどうか調べるコマンド)として pingコマンドがあります。pingコマンドは Unix系 OSや

Windowsなど様々な OSで利用できます。pingコマンドは「ping 宛先 IP アドレス」という形式

で使用します。(他の使い方のありますが省略します。)

Ciscoルータではユーザモードか特権モードで使用します。例えば、172.16.100.200宛にパケッ

トが届くか確認するには ping 172.16.100.200というコマンドを実行します。パケットのやり取

りが可能なら"Success rate is 100 % (5/5),..."と表示され、不可能なら"Success rate is 0 %"

と表示されます。ping コマンドはユーザモードでも特権モードでも使えます。

(2-1) ネットワーク上のホストとの接続確認

ルータ Aは 192.168.10.100 宛、ルータ Bは 192.168.20.100宛、ルータ Cは 192.168.30.100 宛(各

ルータが直接接続しているネットワーク上のホスト宛)へ pingコマンドにより接続確認を行っ

て下さい。(パケットは届かないはずです。)

Router>ping 192.168.10.100

Type escape sequence to abort.

Sending 5, 100-byte ICMP Echos to 192.168.10.100, timeout is 2 seconds:

.....

Success rate is 0 percent (0/5)

Router>

考察課題2

(2-1)ではパケットが届きません。それは何故か答えなさい。

(2-2) ルータ間の接続確認

各自、pingコマンドにより他の 2台のルータとの接続確認を行って下さい。ルータ Aとルー

タ C間の接続だけが失敗するはずです(図2-4)。各自の結果を持ち寄って確認して下さい。

もし、そのようになっていない場合は宛先 IPアドレスに間違いはないか、インターフェースの

設定に間違いはないか確認して、正しい結果が得られるまで修正して下さい。

図2-4 ルータ間の接続確認

ルータ C ルータ B ルータ A

成功 成功

失敗

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考察課題3

ルータ Aとルータ C間は通信ができません。それは何故か答えなさい。

(3) PCでの IPアドレスの設定

(3-1) パソコンの IPアドレスの設定

ネットワークへ接続する機器には適切な IPアドレスを設定する必要があります。各自の実験

用パソコンの IPアドレスを、ネットワーク部は各自のパソコンが参加するネットワークにおい

て適切な値、ホスト部は 100とした値を設定しなさい。

IPアドレスの設定方法は OSによって異なりますが、Windows 7 の場合、次のようにして設定

できます。

1.管理者権限でコントロールパネルから「ネットワークと共有センター」を表示して、「ロ

ーカルエリア接続」をクリックして、ローカルエリア接続の状態を表示します。

2.その中の「プロパティ」ボタンをクリックしてローカルエリア接続のプロパティを表示し

ます。

3.その中のインターネットプロトコルバージョン 4 (TCP/IPv4) を選択してプロパティボタ

ンをクリックします。

4.3によって表示されるダイアログの中で、「次の IPアドレスを使う」にチェックを付ける

と、IPアドレス、サブネットマスク、デフォルトゲートウェイの欄が入力可能になります。

これらの欄に適切な値を入力して OK ボタンをクリックします。

また、無線 LANなど他のネットワークインターフェースが有効になっている場合、イーサネ

ットのデフォルトゲートウェイが無効になる場合があります。その場合も実験が失敗しますので、

実験中は他のネットワークインターフェースは無効にして下さい。ネットワークインターフェー

スを無効にするには、Windows 7 の場合、「ネットワークと共有センター」から「アダプターの

設定変更」をクリックして、無効にしたいローカルエリア接続を右クリックして「無効にする」

を選択します。

なお、実験用パソコンとして通常業務に使用しているパソコンを使用する場合は、変更前に元

の設定をメモしておき、実験後は元の設定に戻して下さい。(次に実験に使用する際は再度変更

して下さい。)

なお、サブネットマスクは 255.255.255.0、デフォルトゲートウェイは各自のルータの

FastEthernet0/0 の IPアドレスを指定して下さい。デフォルトゲートウェイとはパソコンが自分の

知らないネットワーク宛のパケットを転送してもらうように依頼するルータのことです。例えば

図2-1のホスト 1にとってはルータ 1がデフォルトゲートウェイになります。

その上でパソコンでコマンドプロンプトを起動して、ルータ宛(FastEthernet0/0 の IPアドレス

宛)に pingコマンドを実行して、通信が可能なことを確認して下さい。pingが失敗する場合は

設定を確認して下さい。

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(3-2) ネットワーク部の変更

パソコンの IPアドレスの 3オクテット目に 100を加えた値(例えば 192.168.10.100 なら

192.168.110.100)に変更して、(3-1)と同様にルータ宛に pingコマンドを実行して、今度は通信で

きないことを確認して下さい。確認できたら(3-1)の設定に戻しておいて下さい。

考察課題4

(3-2)では何故 pingが失敗するのか、できるだけ詳しく答えなさい。(IPアドレスが間違ってい

るからだけでは不十分です。)

(3-3) 他のネットワークへの通信

パソコンから他のネットワークのパソコンへ pingコマンドを実行し、通信できないことを確

認して下さい。

考察課題5

(3-3)では何故 pingが失敗するのか答えなさい。

(4) 設定の保存

Ciscoルータでは設定変更した内容は show running-configコマンドで確認できます。Cisco

ルータは起動中の設定変更はメモリ(RAM)上に保存されるため、NVRAM(不揮発性メモリ)に

保存しない限り、再起動後には変更内容が消えてしまいます。保存された設定内容は show

startup-configコマンドで確認できます。設定内容を保存したい場合、特権モードで copy

running-config startup-configコマンドを実行します。copyコマンドを間違えると場合によっ

ては IOSが消えてしまうことがあるようなので、十分に注意して下さい。(IOSが消えてしまう

と、バックアップが取ってあるなら復旧できますが、取ってない場合は復旧できません。)

各自、特権モードで copy running-config startup-configコマンドを実行して設定を保存し

て下さい。

Router#copy run start

Destination filename [startup-config]?

Building configuration...

[OK]

Router#

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3.ルーティング

3-1 ルーティングの仕組み

2.IPの冒頭で IPによるルーティングがどのように行われるかを簡単に説明しましたが、今

回はより詳細にルーティングの仕組みについて説明します。今回も同じイラストを使って説明し

ますが、各ネットワークやホストの IPアドレスが下表のように設定されているものとします。

表3-1 図2-1の IPアドレス

ネットワーク A 192.168.1.0/24

ネットワーク B 192.168.2.0/24

ネットワーク C 192.168.3.0/25

ネットワーク D 192.168.3.128/25

ホスト 1 192.168.1.10/24

ホスト 2 192.168.3.10/25

ルータ 1 ネットワーク A側 192.168.1.254/24

ネットワーク B側 192.168.2.254/24

ルータ 2 ネットワーク B側 192.168.2.253/24

ネットワーク C側 192.168.3.126/25

ネットワーク D側 192.168.3.254/25

ホスト 1からホスト 2へパケットを送る場合、最初にホスト 1はホスト 2の IPアドレスが

192.168.3.10/25であり、ネットワーク A(IPアドレスは 192.168.1.0/24)にはないことを知り

ます。そのため、他のネットワークへ転送してもらうためルータ 1へパケットを送ります。その

際、ホスト 1は他のネットワークへパケットを転送してもらうためにはルータ 1に送れば良いこ

とを知っている必要があります。

次に、ルータ 1は受け取ったパケットの IPアドレスを見て、宛先はネットワーク C(IPアド

レスは 192.168.3.0/25)であることを知り、ルータ 2へパケットを転送します。その際、ルー

タ 1はネットワーク Cはルータ 2の先にあることを知っているか、少なくともルータ 2に転送す

れば目的のネットワークへ転送してくれることを知っている必要があります。

ルータ 2は受け取ったパケットの IPアドレスを見てネットワーク Cのホスト 2宛であること

を知り、ネットワーク C側のインターフェースからパケットを転送します。それによってパケッ

トはホスト 2へ届きます。その際、ルータ 2はネットワーク Cがネットワーク C側インターフェ

ースに接続していることを知っている必要があります。

このように適切なルーティングを行うためには、そのために必要な情報をネットワークに接続

している機器は各々知っている必要があります。ルータはルーティングに必要な情報はルーティ

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ングテーブルと呼ばれる表として持っています。ルーティングテーブルはルータだけでなく、

ネットワークに接続している機器(IPアドレスが設定される機器)は全て持っています。

ホスト 1がホスト 2へパケットを送ろうとした際には、自分が持っているルーティングテーブル

を参照して、ルータ 1へ送出すれば良いことを知るわけです。ルータ 1がルータ 2へ転送する際

もルータ 1が持っているルーティングテーブルを参照して転送しますし、ルータ 2がホスト 2

へ転送する際もルータ 2が持っているルーティングテーブルを参照して転送します。

3-2 ルーティングテーブル

OSによって多少は異なりますが、ルーティングテーブルには宛先、サブネットマスク、ゲー

トウェイ、インターフェース、メトリックといった欄があります。

(1) 宛先とサブネットマスク

宛先にはネットワークアドレスでネットワークを指定します。また、ネットワークアドレスの

サブネットマスクも指定します。(クラスフルアドレッシングにしか対応していない機器ではサ

ブネットマスクはありません。)

(2) ゲートウェイ(ネクストホップ)

宛先に届けるために転送を依頼するゲートウェイを指定します。ゲートウェイとは、本来はプ

ロトコルが異なるネットワークを相互に接続するための装置のことだったのですが、ルータ(IP

のレベルではプロトコルは同じ)もゲートウェイと呼ばれるようになっています。ここではパケ

ットを適切に転送してくれる装置と思っておいて良いでしょう。実際にはルータを指定します。

また、宛先が直接接続しているネットワークの場合はゲートウェイは必要ないので空欄になり

ます。

IPにおけるルーティングでは、ゲートウェイ(ルータ)はバケツリレー的にパケットを転送

していきます。ゲートウェイ(ルータ)が次に転送すべきゲートウェイ(ルータ)のことをネク

ストホップと呼びます。そのためこの欄はゲートウェイと表記されることもありますが、ネクス

トホップと表記されることもあります。

(3) インターフェース

パケットを送出するネットワークインターフェースを指定します。

(4) メトリック

ネットワークにおける距離のような概念で、同じ宛先へのルートが複数存在する場合に、どの

ルートを優先するかを決めるために使われる値です。値が小さいほど優先度が高くなります。

パソコンでは、ネットワークの設定をする際に通常はルーティングテーブルを入力するような

ことはありませんが、Windowsであれば IPの設定をする際に IPアドレスとサブネットマスク、

デフォルトゲートウェイを入力します。(自動的に取得する場合はそれらの値を DHCPサーバか

ら取得して設定します。)これらの情報から自動的に生成できます。例えば IPアドレスが

192.168.1.10、サブネットマスクが 255.255.255.0、デフォルトゲートウェイが 192.168.1.1の

場合、ルーティングテーブルには次のような2行のエントリが生成されます。(行や欄の順序、

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インターフェースの表現、メトリックの値などは OSによって異なります。)

表3-2 自動生成されるルーティングテーブル

宛先アドレス サブネットマスク ゲートウェイ

192.168.1.0 255.255.255.0

0.0.0.0 0.0.0.0 192.168.1.1

1行目はそのパソコンが直接接続しているネットワーク宛のエントリであり、ゲートウェイの

欄は空欄で、直接ネットワークインターフェースから送出すれば到達できることを表しています。

2行目は任意の宛先(1行目のエントリにマッチしない場合)へは、デフォルトゲートウェイで

ある 192.168.1.1宛に送出して転送してもらうことを表しています。(ゲートウェイに転送して

もらう場合でも、IPパケットの宛先 IPアドレスはゲートウェイではなく本来の宛先のアドレス

になります。IPパケットをイーサネットで送る場合、その IPパケットを運ぶイーサネットのパ

ケットの MACアドレスがゲートウェイのアドレスになります。)

なお、Windowsではこれらのエントリの他にも複数行のエントリが生成されているようです。

Windowsでルーティングテーブルを編集/表示するには routeコマンドが使えます。

表3-1に示した IPアドレスの場合、ルータ 1のルーティングテーブルは表3-3のように

なります。

表3-3 ホスト 1のルーティングテーブル

宛先 サブネットマスク ネクストホップ インターフェース

192.168.1.0 255.255.255.0 ネットワーク A側

192.168.2.0 255.255.255.0 ネットワーク B側

192.168.3.0 255.255.255.128 192.168.2.253 ネットワーク B側

192.168.3.128 255.255.255.128 192.168.2.253 ネットワーク B側

また、ルータ 2のルーティングテーブルは表3-4のようになります。

表3-4 ホスト 2のルーティングテーブル

宛先 サブネットマスク ネクストホップ インターフェース

192.168.2.0 255.255.255.0 ネットワーク B側

192.168.3.0 255.255.255.128 ネットワーク C側

192.168.3.128 255.255.255.128 ネットワーク D側

192.168.1.0 255.255.255.0 192.168.2.254 ネットワーク B側

これらのルーティングテーブルを参照しながら、前述のホスト 1からホスト 2へのパケットを

転送する際のルータ 1とルータ 2の動作を説明すると、次のようになります。

ホスト 1からホスト 2宛のパケット(宛先 IPアドレスは 192.168.3.10)を受け取ったルータ

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1は、宛先アドレスがルーティングテーブルの 3行目にマッチするのでルータ 2にネットワーク

B側からパケットを転送します。

ルータ 1からパケットを受け取ったルータ 2は、パケットの宛先がルーティングテーブルの 2

行目にマッチするのでネットワーク C側からパケットを転送します。それによってネットワーク

Cにあるホスト 2にパケットが到達します。

ここでは簡単なネットワークを例に、ルーティングテーブルとルーティングの動作について説

明しましたが、複雑なネットワークについても(ルーティングテーブルのエントリは増えますが)

動作は変わりません。

ルーティングテーブルを参照する際に、マッチする行が複数存在する場合は最長一致(ロンゲ

ストマッチ)という法則にのっとり参照が行われます。例えば前記のルータ 2のルーティングテ

ーブル(表3-4)において、3行目が

192.168.3.0 255.255.255.0 ネットワーク D側

となっていた場合、192.168.3.10は 2行目にも 3行目にもマッチしますが、2行目はネットワー

ク部が 25ビットに対し、3行目はネットワーク部が 24ビットなので、2行目が参照されること

になります。

もし、ルーティングテーブルが間違っているとどうなるでしょうか。例えば前記のルータ 2

のルーティングテーブル(表3-4)の 2行目が

192.168.3.0 255.255.255.128 ネットワーク D側

となっていた場合、ルータ 1からホスト 2宛のパケットを受け取ったルータ 2は間違ったインタ

ーフェースからパケットを送出しようとするので、ホスト 2にパケットは届きません。あるいは、

ルータ 2のルーティングテーブルの 2行目が

192.168.3.0 255.255.255.128 192.168.2.254 ネットワーク B側

となっていた場合、ルータ 2はルータ 1から受け取ったネットワーク C宛のパケットをルータ 1

に送り返してしまいます。すると、ルータ 1は再度ルータ 2に転送するので、ピンポン動作を繰

り返すことになってしまいます。このように、ルーティングテーブルが間違っていると、パケッ

トを正しく届けることができなくなります。したがって、ネットワークにおいてルーティングテ

ーブルの管理は非常に重要であるといえます。

ところで、ルータ 1のルーティングテーブル(表3-3)の 3行目と 4行目を比較すると、違

いは宛先アドレスの 25ビット目の値が 0であるか 1であるかだけです。どちらの場合もルータ

2に転送すれば目的のネットワークへ到達します。このような場合は 3行目と 4行目を次の図3

-1に示すように1行にまとめることができます。

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192.168.3.0 255.255.255.128 192.168.2.253 ネットワーク B側

192.168.3.128 255.255.255.128 192.168.2.253 ネットワーク B側

192.168.3.0 255.255.255.0 192.168.2.253 ネットワーク B側

図3-1 経路集約の例

このように、実際には異なるネットワーク宛であっても、途中のルータではそれを区別する必

要がないこともあります。そのような場合にはそれらをまとめることでルーティングテーブルの

量を減らすことができます。(そのためには IPアドレスの割り振りの仕方も重要です。)このよ

うにルーティングテーブルの複数のエントリを1つにまとめることを経路集約(スーパーネッ

ティング)といいます。

なお、ここで解説したルーティングはクラスレスアドレッシングに対応したルーティングであ

り、クラスフルにしか対応していないルーティングではここで述べたような経路集約はできませ

ん。

3-3 ルーティングテーブルの管理

前述のようにルータにおけるルーティングテーブルの管理は重要ですが、その管理方法には大

きく2つの手法があります。その1つは、管理者がルータに手作業でルーティングテーブルを記

述する方法で、スタティックルーティングと呼ばれます。もう1つは、ルータがルーティング

に必要な情報を自動的に収集し、随時ルーティングテーブルを更新する方法でダイナミックル

ーティングと呼ばれます。

スタティックルーティングは、ルータ自身の負荷やネットワークへの負荷はほとんどなく、小

規模なネットワークでは有効な方法です。しかし、ルータの台数やサブネットの数が増えると、

管理者の作業量が増えて現実的な方法ではなくなります。

ダイナミックルーティングでは、新たにサブネットが追加された場合には自動的にルーティン

グテーブルへ追加されますし、一定期間通信が途絶えたりエラーが発生した経路の情報は破棄さ

れ、別の経路が(もしあれば)選択されるようになります。ルータはそのような処理を行うため、

ある程度の負荷がかかりますし、ルータが情報をやり取りするため、ネットワークの帯域も使い

ます。

ダイナミックルーティングでは、ルータが情報をやり取りするためのプロトコルが必要になり

ます。そのプロトコルをルーティングプロトコルと呼びます。ルーティングプロトコルについ

は次のテーマで学習することとし、今回はスタティックルーティングの実験を行います。

実験と考察

(1) ルータ Aとルータ Cでのルーティングテーブルの操作 スタティックルーティングを実現するには各ルータでルーティングテーブルにエントリを追

加する必要がありますが、ルーティングへの理解を深めるために最初はルータ Aとルータ Cだ

けでルーティングテーブルを操作し、ルータ Bでは何もせずにおきます。そして(2)で接続確認

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を行い、その動作を確認した後、(3)でルータ Bでもルーティングテーブルを操作します。

ルーティングテーブルにエントリを追加する手順としては、先ずルータのルーティングテーブ

ルを確認します。次に他のルータが接続しているネットワークのエントリを追加します。そして、

再度ルーティングテーブルを確認して、正しく追加されていることを確認します。

(1-1) ルーティングテーブルの確認

Ciscoルータではルーティングテーブルを確認するには show ip routeコマンドを使います。

このコマンドを実行すると、先頭にコードの説明が表示され、その後にルーティングテーブルが

表示されます。

ルーティングテーブルの各行は

コード 宛先 [AD/メトリック] via ネクストホップ, 経過時間, インターフェース

という形式で表示されます。ただし、直接接続しているネットワークの場合、

C 宛先 is directly connected, インターフェース

という形式になります。ここでコードはエントリの情報源を表します。Cは接続しているという

意味です。手動で追加したエントリのことをスタティックルートといいますが、スタティック

ルートの場合は Sです。ADはアドミニストレーティブディスタンスという値ですが、これは次

回説明します。経過時間は情報を入手してから経過した時間です。

全員各自のルータで show ip routeコマンドによりルーティングテーブルを確認して下さい。

Router#sh ip route

Codes: C - connected, S - static, I - IGRP, R - RIP, M - mobile, B - BGP

D - EIGRP, EX - EIGRP external, O - OSPF, IA - OSPF inter area

N1 - OSPF NSSA external type 1, N2 - OSPF NSSA external type 2

E1 - OSPF external type 1, E2 - OSPF external type 2, E - EGP

i - IS-IS, L1 - IS-IS level-1, L2 - IS-IS level-2, ia - IS-IS inter area

* - candidate default, U - per-user static route, o - ODR

P - periodic downloaded static route

Gateway of last resort is not set

172.16.0.0/24 is subnetted, 1 subnets

C 172.16.1.0 is directly connected, Serial0/0

C 192.168.10.0/24 is directly connected, FastEthernet0/0

Router#

考察課題1

スタティックルートを追加する前に、どのような内容のエントリを追加しなければならないか

述べなさい。この解答が正しくなければこの実験は成功しません。(2)や(3)で成功すべき ping

コマンドが失敗する場合は、ここに立ち返って検討し直して下さい。

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(1-2) ルーティングテーブルの操作と確認

スタティックルートを追加するにはグローバルコンフィグレーションモードで ip routeコマ

ンドを使います。ip routeコマンドは次の形式です。

ip route 宛先 サブネットマスク インタフェース orネクストホップ [AD] [permanent]

宛先は宛先のネットワークアドレスで、サブネットマスクはそのサブネットマスクです。次は

その宛先へ送信する際のインターフェースかネクストホップの IPアドレスを指定します。ここ

ではネクストホップの IPアドレスを指定して下さい。ADと permanentは省略可能です。本実験

では省略します。したがって例えば 192.168.0.0/24のネットワークをネクストホップの IPアド

レスが 172.16.10.254なら、ip route 192.168.0.0 255.255.255.0 172.16.10.254というコマ

ンドになります。

ルータ Aとルータ Cの使用者は ip routeコマンドで他のネットワークへのスタティックルー

ト(ルータ Aはネットワーク Bとネットワーク Cへのルート、ルータ CはネットワークAとネ

ットワーク Bへのルート)を追加して下さい。

追加したら show ip routeコマンドによりルーティングテーブルを再確認して正しく追加され

ていることを確かめて下さい。間違っていた場合は一旦削除してから追加し直します。

ルーティングテーブルからエントリを削除するには追加に使ったコマンド(ip route ...)の

前に noを付けて、no ip route 宛先 サブネットマスク ネクストホップ というコマンドにな

ります。

下線部は各自の内容

Router(config)#ip route 192.168.20.0 255.255.255.0 172.16.1.2

Router(config)#end

%SYS-5-CONFIG_I: Configured from console by console

Router#sh ip route

Codes: C - connected, S - static, I - IGRP, R - RIP, M - mobile, B - BGP

D - EIGRP, EX - EIGRP external, O - OSPF, IA - OSPF inter area

N1 - OSPF NSSA external type 1, N2 - OSPF NSSA external type 2

E1 - OSPF external type 1, E2 - OSPF external type 2, E - EGP

i - IS-IS, L1 - IS-IS level-1, L2 - IS-IS level-2, ia - IS-IS inter area

* - candidate default, U - per-user static route, o - ODR

P - periodic downloaded static route

Gateway of last resort is not set

172.16.0.0/24 is subnetted, 1 subnets

C 172.16.1.0 is directly connected, Serial0/0

C 192.168.10.0/24 is directly connected, FastEthernet0/0

S 192.168.20.0/24 [1/0] via 172.16.1.2

Router#

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(2) ルータ A、ルータ Cとネットワーク B 間の接続確認 ルータ Aとルータ Cからネットワーク Bのパソコン(192.168.20.100)への pingを実行して

下さい。また、次にネットワーク B、ネットワーク Cのパソコンから、ネットワーク Bのパソ

コンに ping を実行して下さい。

各 pingの結果は全員で確認して下さい。

図3-2 ルータ Bが設定されていない状態の ping

考察課題2

・ルータ Aとルータ Cからネットワーク Bのパソコン(192.168.20.100)への ping

・ネットワーク A、ネットワーク Cのパソコンから、ネットワーク Bのパソコン(192.168.20.100)

への ping

上記の2つの pingの結果について、何故そのようになるのか説明しなさい。

補足:pingコマンドは、あるパケットを宛先へ送ってみて、同じパケットを宛先から送り返し

てもらうことでパケットが到達可能なことを確認します。

(3) ルータ B でのルーティングテーブルの操作と接続確認

(3-1) ルータ Bでのルートの追加

ルータ Bの使用者は(1-2)と同様にしてネットワーク Aとネットワーク C宛のスタティックル

ートを追加した後、正しく追加されていることを確認して下さい。

(3-2) 接続確認

全員で他の2つのネットワークのパソコン宛にパソコンから pingコマンドを実行して通信が

可能なことを確認して下さい。

スイッチングハブ

ルータ C

パソコン

ネットワーク C

スイッチングハブ

ルータ B

パソコン

ネットワーク B

スイッチングハブ

ルータ A

パソコン

ネットワーク A

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(4) エントリの削除 次回はダイナミックルーティングの実験を行います。その際、今回追加したスタティックルー

トがあると新たなエントリは必要ないので実験の意味がありません。その為、各ルータのルーテ

ィングテーブルから追加したエントリを削除しておいて下さい。エントリの削除の仕方は(1-2)

で説明しています。実験が終わる度にルータの電源を OFFにする場合は本当はこの作業は必要あ

りませんが練習のために行って下さい。

Router(config)#no ip route 192.168.20.0 255.255.255.0 172.16.1.2

考察課題3

(4)が必要ないのは何故なのか説明しなさい。

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4.ルーティングプロトコル

4-1 ダイナミックルーティング

ルータがルーティングに必要な情報を自動的に収集してルーティングテーブルを管理するこ

とでルーティングを行うことをダイナミックルーティングといいます。ダイナミックルーティン

グを実現するためには、ルーティングに必要な情報をどのように収集するのか、収集した情報か

らどのようにルーティングテーブルを生成するのかを決めておく必要があります。ルーティング

に必要な情報は、当然、隣接するルータ間でネットワークを介してやり取りすることになります。

そのためのプロトコルをルーティングプロトコルといいます。

一般に同じ宛先への経路が複数存在する場合があります。スタティックルーティングでは管理

者がどの経路を選択するか決めてルーティングテーブルを記述しますが、ダイナミックルーティ

ングではルータが決める必要があります。ルーティングプロトコルには数種類ありますが、最適

な経路(ベストパスといいます)を選択する基準はルーティングプロトコルによって異なります。

ただし、どのルーティングプロトコルもメトリックを利用するという点は共通しています。

メトリックとはネットワークにおける距離のような概念で、小さな値ほど優先されるものです

が、具体的な値はルーティングプロトコルによって異なります。例えば RIPというルーティング

プロトコルではホップ数(中継するルータ数)をメトリックとして使用します。しかし、ルータ

間の転送速度の違いによりホップ数が大きな経路の方が性能が良い場合もあり得ます。そのため、

ネットワークの帯域幅を考慮したメトリックを使うルーティングプロトコルもあります。

ダイナミックルーティングでは、あるルータと接続するネットワークの構成に変化があると、

その情報は隣接するルータへと伝わっていきます。それによって各ルータのルーティングテーブ

ルが新しいネットワーク構成に対応するように変更されます。全てのルータでその情報が反映さ

れると、適切なルーティングが行えるようになるわけですが、それにはある程度のタイムラグが

あります。ネットワークの構成に変化があってから全てのルータでその情報が反映されるまでの

間は、一部のルータは古い情報に基づいてルーティングを行うため、パケットが到達しない可能

性があります。したがって、このタイムラグは短いほど良いということになります。

ネットワーク上の全てのルータのルーティングテーブルが更新され、変更する必要がない状態

のことをコンバージェンス(収束)状態といいます。コンバージェンスに至るまでの時間はル

ーティングプロトコルによって異なります。本実験のメインのテーマは RIP、OSPF、EIGRPとい

う3種類のルーティングプロトコルで、コンバージェンスに至る様子を確認することですが、そ

の実験は次回から行います。

4-2 ルーティングプロトコル

ルーティングプロトコルは数種類ありますが、大きく EGP (Exterior Gateway Protocol)と

IGP (Interior Gateway Protocol)の2つに分類できます。EGPは自律システム間のルーティン

グプロトコルで、IGPは自律システム内のルーティングプロトコルです。

自律システム(Autonomous System)略して ASとは、単一のルーティングポリシーを共有するネ

ットワークのことで、インターネットサービスプロバイダのネットワークや企業などが保有・運

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用するネットワークを指します。インターネットはそれらの自律システムが相互に結合したネッ

トワークということになります。自律システムには ICANNから AS番号(自律システムを識別す

るための番号)が割り当てられます。

図4-1 EGPと IGP

(1) EGP EGPは自律システム同士を接続するルータにおいて、ルーティングに必要な情報をやり取りす

るためのルーティングプロトコルです。自律システム内で到達可能なネットワークの情報や、そ

れぞれのルータがどの自律システムに到達可能であるかといった情報を伝えます。EGPには初期

のインターネットで使われていた EGPというプロトコルと、現在のインターネットで使われてい

る BGPというプロトコルの2種類があります。BGPはクラスレスドメイン間ルーティング (CIDR)

をサポートして、ルート集約を行うことでルーティングテーブルのサイズを削減することができ

るようになっています。

EGPが必要になるのはインターネットサービスプロバイダ等の事業者か、自前で AS番号を取

得してインターネットサービスプロバイダを利用せずにインターネットに接続する組織だけで

あり、ほとんどのユーザには無縁のプロトコルです。また、EGPは自律システム間を接続するた

めのプロトコルですから、簡単に実験することはできません。本実験では EGPは扱いません。

(2) IGP IGPは自律システム内でのルーティングプロトコルですから、一般の組織が複数のルータを設

置してネットワークを構成する場合にはIGPを使うことになります。本実験で扱うのはIGPです。

IGPにも幾つかの種類があります。RIP、IGRP、OSPF、IS-IS、EIGRPなどです。これらのプロト

コルはアルゴリズムの違いによって次の3種類に分類できます。

・ディスタンスベクタ型

距離と方向(例えばホップ数)でベストパスを決定する方式。

ルータ

ルータ

ルータ

ルータ

ルータ ルータ

ルータ

ルータ

ルータ

AS

AS

AS

IGP

IGP

IGP IGP

IGP

EGP

EGP EGP

EGP

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・リンクステート型

各ルータのインターフェースのリンク状態を収集してベストパスを計算する方式。

・ハイブリッド型

ディスタンスベクタ型の利点とリンクステート型の利点を組み合わせた方式。

またルーティングプロトコルには、クラスフルアドレッシングに対応しているもの(通知する

情報にサブネットマスクを含めるもの)と対応していないものがあります。

ルーティングテーブルのサイズは経路集約が行える場合には小さくすることができます。ルー

ティングプロトコルによっては、経路集約を自動的に行うことができるものもあります。

本実験では、次回以降にディスタンスベクタ型として RIP、リンクステート型として OSPF、ハ

イブリッド型として EIGRPを使用する実験を行います。各プロトコルの詳細・特徴については、

その際に学習して下さい。今回はルーティングプロトコルの例として、RIPを起動してコンバー

ジェンスに至ることを確認する実験を行いますが、動作の詳細については省略します。

4-3 複数のルーティングプロトコル

ところで、1つのネットワークにおいて、複数のルーティングプロトコルを使いたいというこ

とがあるかも知れません。例えば、基本的には OSPFを使いたいが、古いルータが RIPにしか対

応していないため RIPも使いたいという場合や、EIGRPを使っていたが、新しく導入したルータ

は Cisco製ではないため EIGRPに対応しておらず、OSPFも使う必要がある場合などが考えられ

ます。

このように、1つのネットワークで複数のルーティングプロトコルを併用することは可能でし

ょうか。複数のルーティングプロトコルを併用するためには、それらのプロトコルを用いている

ルータにおいて、受信した情報のうちどれを採用するかを決める必要があります。例えば、ある

ルータで2つのルーティングプロトコルが動作している場合、同じ宛先への経路情報が2つのプ

ロトコルによって食い違うことがあり得ます。その場合、どちらの情報を採用するか決める必要

があります。

基本的には信頼度の高いルーティングプロトコルの情報を優先させれば良いわけですが、

Cisco製のルータではその優先度をアドミニストレーティブディスタンスという値で決定しま

す。アドミニストレーティブディスタンス値略して AD値が小さいルーティングプロトコルの情

報を優先してルーティングテーブルに記載します。

ルータに直接接続しているネットワーク宛の場合、信頼度は最高のはずですから AD値は 0で

す。管理者による入力(スタティックルート)はデフォルトでは 1です。EIGRPは 90、OSPFは

110、RIPは 120となっています。これらの値は設定によって変更することができます。

これまでに経路選択の基準が複数出てきましたので少し整理しておきたいと思います。

まず、1つのルーティングプロトコルの中で、到達可能な複数の経路の中からベストパスとし

てどの経路情報をルーティングテーブルに記載するか決める値がメトリックという値です。

同じ宛先について、複数のルーティングプロトコルから得られた情報のうちどの情報を採用す

るか決める値がアドミニストレーティブディスタンスです。AD値が最小の経路だけがルーティ

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ングテーブルに記載されます。

ある宛先について、ルーティングテーブルの複数のリストにマッチする場合、ロンゲストマッ

チという法則に則って経路が選択されます。

これらの決まりはルーティングの動作にとって重要ですから正確に理解しておく必要があり

ます。

実験と考察

以前は比較的小規模なネットワークではルーティングプロトコルとして RIPが使われていま

した。現在では RIPを使うメリットが殆どないためあまり使われなくなりましたが、今回は RIP

を使ってダイナミックルーティングが実現できることを確認してみます。

ルータにおいてルーティングプロトコルのプロセスを起動しておけば、自動的にルーティング

テーブルが修正されます。

(1) RIPを起動してみる(ルータ Aとルータ Bのみ)

予め全てのルータでルーティングテーブルを確認しておきます。その上で、ルータ Aとルー

タ Bで RIPを起動します。その後、ルーティングテーブルを確認して、ルータ Aとルータ Bで

はエントリが追加されていることを確認します。

(1-1) ルーティングテーブルの確認

全員が各自のルータで show ip routeコマンドを使ってルーティングテーブルを確認して下さ

い。

Router#sh ip route

Codes: C - connected, S - static, I - IGRP, R - RIP, M - mobile, B - BGP

D - EIGRP, EX - EIGRP external, O - OSPF, IA - OSPF inter area

N1 - OSPF NSSA external type 1, N2 - OSPF NSSA external type 2

E1 - OSPF external type 1, E2 - OSPF external type 2, E - EGP

i - IS-IS, L1 - IS-IS level-1, L2 - IS-IS level-2, ia - IS-IS inter area

* - candidate default, U - per-user static route, o - ODR

P - periodic downloaded static route

Gateway of last resort is not set

172.16.0.0/24 is subnetted, 1 subnets

C 172.16.1.0 is directly connected, Serial0/0

C 192.168.10.0/24 is directly connected, FastEthernet0/0

Router#

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(1-2) RIPの起動

ルータ Aとルータ Bで RIPのプロセスを起動して下さい。

RIPのプロセスを起動するにはグローバルコンフィグレーションモードから router ripコマ

ンドで RIPプロセスを起動して、RIP設定モードに入ります。

RIP設定モードではRIPを有効にするネットワークを networkコマンドで指定します。network

コマンドは network アドレス という形式で、アドレスは RIPを有効にするネットワークの

IPアドレスになります。有効な全てのインターフェースの IPアドレスのネットワークアドレス

を指定します。また RIP ではクラスフルアドレスで指定する必要があります。つまり、ルータ A

なら 192.168.10.0と 172.16.0.0 で、ルータ Bなら 192.168.20.0と 172.16.0.0 で、ルータ Cなら

192.168.30.0と 172.16.0.0 です。注意点としては、ここではサブネットマスクは指定しないこと

(出来ません)です。

例 下線は各ルータの値 ※ここで設定を入れるのは、ルータ Aとルータ Bのみ

Router#conf t

Enter configuration commands, one per line. End with CNTL/Z.

Router(config)#router rip

Router(config-router)#netw

Router(config-router)#network 192.168.10.0

Router(config-router)#network 172.16.0.0

(1-3) ルーティングプロトコルの確認

ルータ Aとルータ Bで RIPの動作を確認します。RIPの動作を確認するには、特権モードで

show ip protocolsコマンドを使います。このコマンドは起動しているルーティングプロトコル

に関する情報を表示します。

RIPに関しても様々な情報を表示しますが、今回は先頭行と Routing for networks:の情報を

確認して下さい。先頭行に Routing Protocol is "rip" と表示されているはずです。また、

Routing for networks:以降の行に networkコマンドで設定したアドレスが含まれているはずで

す。そのようになっていない場合は設定作業にミスがあるのでやり直して下さい。

(1-4) ルーティングテーブルの再確認

全員が各自のルータでルーティングテーブルを確認して下さい。ルータ Aとルータ Bではエ

ントリが追加されているはずです。ルータ Cでは変化はないはずです。

考察課題1

(2)に進む前にルータ Cでも RIPを起動すると、各自のルーティングテーブルがどのように変

化するか予測を立てて下さい。

そして(2)の後に予測が正しかったか否か評価し、正しかった場合はそのように予測した理由

を、正しくなかった場合はどうして間違ったのかを説明しなさい。

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(2) コンバージェンスの確認

ルータ Cでも RIPを起動します。その後、全てのルータでルーティングテーブルを確認して、

コンバージェンスに至ることを確認します。

(2-1) ルータ Cでの RIPの起動

(1-2)と同様にしてルータ Cでも RIPを起動して下さい。続けて(1-3)と同様にしてルータ Cで

もルーティングプロトコルを確認して下さい。

(2-2) コンバージェンスの確認

全てのルータでネットワーク A、B,C宛のエントリがあればコンバージェンスに達した状態

です。全員、再度各自のルータでルーティングテーブルを確認して、コンバージェンスに到達し

ていることを確認して下さい。もし、コンバージェンスに達していなければ、30 秒以上待って

から再度確認して下さい。

考察課題2

ルーティングプロトコルのプロセスが動作しているルータでは、ルータ Aとルータ Bやルー

タ Bとルータ Cのように直接接続しているルータが接続しているネットワークの情報は勿論で

すが、ルータ Aとルータ Cのように直接は接続していないルータが接続しているネットワーク

の情報も取得してルーティングを行います。各ルータはこれらの情報をどのようにして得ている

と考えられますか。独自に考察してその仕組みを説明しなさい。(具体的なルーティングプロト

コルの仕組みについては次回以降に解説しますので、それらについて調べて説明するのではなく、

大雑把で良いのでどのような仕組みが考えられるか考察して説明して下さい。)

(3) アドミニストレーティブディスタンスの確認

全員各自のルータでサイドルーティングプロトコルを確認して下さい。show ip protocolsコ

マンドで表示される内容の最後に Distance: という行があります。これがそのルーティングプ

ロトコルのアドミニストレーティブディスタンスの値です。この値を確認して下さい。

考察課題3

RIPのアドミニストレーティブディスタンスの値は OSPFや EIGRPよりも大きな値になって

いますが、その理由を説明しなさい。(推測で構いません。)

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5.RIP

5-1 RIPの基本

RIP (Routing Information Protocol) はディスタンスベクタ型のルーティングプロトコルです。

ディスタンスベクタ型とは、距離と方向から最適な経路を決定する方法です。具体的にはホッ

プ数から最適な経路を決定します。ホップ数とは宛先に到達するまでに経由するルータの数です。

RIPでは、隣接するルータ同士が定期的にルーティングに必要な情報を交換し合うことでネッ

トワーク全体の経路を知るようになっています。RIP ではルータ同士が交換する情報をルーティ

ングアップデートと呼びます。ルーティングアップデートの内容は、そのルータが持っている

ルーティングテーブルそのものです。

RIPにはバージョン 1 とバージョン 2 があります。RIP はそもそも古いプロトコルですので、

バージョン 1ではクラスレスに対応していません。バージョン 2ではクラスレスに対応していま

す。そのため、ルーティングアップデートに含まれる情報も少し異なります。(これ以降 RIPの

バージョン 1を RIPv1、バージョン 2を RIPv2 と表記します。)

RIPv1 では宛先アドレスとメトリックの組だけがルーティングテーブルの情報としてルーテ

ィングアップデートに含まれます。

RIPv2 では宛先アドレスに対応するサブネットマスクも含みます。さらに、ネクストホップの

アドレスも含むようになり、エントリごとにネクストホップを指定できるようになっています。

RIPではパケットの転送に UDP(IPの上位のプロトコル)を使っていて、ルーティングアッ

プデートの送信はブロードキャストで行っています。(RIPv2 ではマルチキャストに対応してい

ます。)

RIPではルーティングアップデートを定期的に交換します。その間隔はデフォルトで 30秒で

す。ルータは隣接しているルータからルーティングアップデートを受け取ると、自身のルーティ

ングテーブルと比較してルーティングテーブルを更新します。更新の手順はベルマンフォードア

ルゴリズムによります。

ルーティングアップデートに含まれる各エントリについて、自身のルーティングテーブルに既

にエントリが存在するか調べます。存在しない場合はエントリを追加します。

ルーティングアップデートのエントリが自身のルーティングテーブルに存在する場合は、ルー

ティングアップデートを送ってきたルータとルーティングテーブル中のエントリのネクストホ

ップが同じ場合はルーティングテーブルを更新します。

異なる場合はメトリックの値を比較して、アップデートの方が小さい場合はルーティングテー

ブルを更新し、そうでなければ無視します。RIP ではメトリックの値はホップ数そのものになっ

ています。自身が直接接続しているネットワークのメトリックは 0であり、ネクストホップが直

接接続しているネットワークのメトリックは 1になります。ルーティングアップデートを送る際

に、メトリックの値は自身のルーティングテーブルの値より 1増やした値にして送ります。

以上の手順によりルーティングテーブルを更新します。隣接していないルータの情報は隣接し

ているルータを介して伝言ゲームのように受け取ることになるので、全ての情報を受け取るには

ある程度時間が必要なこともあります。

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RIPによるルーティングテーブルの更新の様子を図を用いて説明します。ただし、RIPv1 でク

ラスフルとして説明します。

図5-1 ルーティングテーブルの更新(1)

図5-1のように 4つのネットワークを 3台のルータが接続しています。ルータ Bからルー

タ Aとルータ Cへ{(20.0.0.0, 1), (30.0.0.0, 1)}というルーティングアップデートが送られます。

ここで、ルーティングアップデートは{(宛先, メトリック), ...}という形式で表記しています。そ

れを受け取ったルータ Aとルータ Cはルーティングテーブルを図5-2のように更新します。

図5-2 ルーティングテーブルの更新(2)

今度はルータ Aがルータ Bへ{(10.0.0.0, 1), (20.0.0.0, 1), (30.0.0.0, 2)}というルーティングアッ

プデートを送ります。(実際にはルーティングアップデートを送る順番はルータの起動した順序

等によって変わります。)それを受け取ったルータ Bは各々ルーティングテーブルを図5-3の

ように更新します。

ルータ A ルータ B ルータ C ネットワーク

10.0.0.0

ネットワーク

20.0.0.0

ネットワーク

30.0.0.0

ネットワーク

40.0.0.0

宛先 ネクスト メト インター

ホップ リック フェース

10.0.0.0 0 10.0.0.0側

20.0.0.0 0 20.0.0.0側

30.0.0.0 ルータ B 1 20.0.0.0側

宛先 ネクスト メト インター

ホップ リック フェース

30.0.0.0 0 30.0.0.0側

40.0.0.0 0 40.0.0.0側

20.0.0.0 ルータ B 1 30.0.0.0側

宛先 ネクスト メト インター

ホップ リック フェース

20.0.0.0 0 20.0.0.0側

30.0.0.0 0 30.0.0.0側

ルータ A ルータ B ルータ C ネットワーク

10.0.0.0

ネットワーク

20.0.0.0

ネットワーク

30.0.0.0

ネットワーク

40.0.0.0

宛先 ネクスト メト インター

ホップ リック フェース

10.0.0.0 0 10.0.0.0側

20.0.0.0 0 20.0.0.0側

宛先 ネクスト メト インター

ホップ リック フェース

30.0.0.0 0 30.0.0.0側

40.0.0.0 0 40.0.0.0側

宛先 ネクスト メト インター

ホップ リック フェース

20.0.0.0 0 20.0.0.0側

30.0.0.0 0 30.0.0.0側

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図5-3 ルーティングテーブルの更新(3)

更にルータCがルータBへ{(30.0.0.0, 1), (40.0.0.0, 1), (20.0.0.0, 2)}というルーティングアップデ

ートを送ります。それを受け取ったルータBはルーティングテーブルを図のように更新します。

これでルータ Bは全ての経路情報を得ることができていますが、ルータ Aとルータ Cは未だで

す。

図5-4 ルーティングテーブルの更新(4)

前回のルーティングアップデートの送信から30秒後にルータAはルータBに今度は{(20.0.0.0,

1), (30.0.0.0, 1), (10.0.0.0, 2), (40.0.0.0, 2)}というルーティングアップデートを送ります。それを受

け取ったルータ Aとルータ Cはルーティングテーブルを図5-5のように更新します。これに

よって全てのルータは全ての経路情報を得ることができ、コンバージェンスに達しました。

ルータ A ルータ B ルータ C ネットワーク

10.0.0.0

ネットワーク

20.0.0.0

ネットワーク

30.0.0.0

ネットワーク

40.0.0.0

宛先 ネクスト メト インター

ホップ リック フェース

10.0.0.0 0 10.0.0.0側

20.0.0.0 0 20.0.0.0側

30.0.0.0 ルータ B 1 20.0.0.0側

宛先 ネクスト メト インター

ホップ リック フェース

30.0.0.0 0 30.0.0.0側

40.0.0.0 0 40.0.0.0側

20.0.0.0 ルータ B 1 30.0.0.0側

宛先 ネクスト メト インター

ホップ リック フェース

20.0.0.0 0 20.0.0.0側

30.0.0.0 0 30.0.0.0側

10.0.0.0 ルータ A 1 20.0.0.0側

40.0.0.0 ルータ C 1 30.0.0.0側

ルータ A ルータ B ルータ C ネットワーク

10.0.0.0

ネットワーク

20.0.0.0

ネットワーク

30.0.0.0

ネットワーク

40.0.0.0

宛先 ネクスト メト インター

ホップ リック フェース

10.0.0.0 0 10.0.0.0側

20.0.0.0 0 20.0.0.0側

30.0.0.0 ルータ B 1 20.0.0.0側

宛先 ネクスト メト インター

ホップ リック フェース

30.0.0.0 0 30.0.0.0側

40.0.0.0 0 40.0.0.0側

20.0.0.0 ルータ B 1 30.0.0.0側

宛先 ネクスト メト インター

ホップ リック フェース

20.0.0.0 0 20.0.0.0側

30.0.0.0 0 30.0.0.0側

10.0.0.0 ルータ A 1 20.0.0.0側

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図5-5 ルーティングテーブルの更新(5)

このように、RIPは基本的な考え方が比較的簡単ですが、コンバージェンスに時間が掛かるな

どの欠点もあります。

5-2 ルーティングループとその対策

RIPにはルーティングループが発生する可能性があるという問題もあります。ルーティングル

ープとは、ルーティングテーブルのミスにより、パケットが幾つかのルータ間を回り続ける状態

のことです。その状態では IPパケットの TTL値(ルータを経由する毎に 1 値が減る)が 0にな

るまで転送され続け、TTL が 0になった時点で破棄されます。

RIPでルーティングループが発生する様子を図を用いて説明します。図5-6では 3つのネッ

トワークが 2台のルータで接続されています。また、各ルータのルーティングテーブルは図中に

示したようにコンバージェンス状態になっているものとします。

図5-6 ルーティングループの発生(1)

ルータ A ルータ B ネットワーク

10.0.0.0

ネットワーク

20.0.0.0

ネットワーク

30.0.0.0

宛先 ネクスト メト インター

ホップ リック フェース

10.0.0.0 0 10.0.0.0側

20.0.0.0 0 20.0.0.0側

30.0.0.0 ルータ B 1 20.0.0.0側

宛先 ネクスト メト インター

ホップ リック フェース

20.0.0.0 0 20.0.0.0側

30.0.0.0 0 30.0.0.0側

10.0.0.0 ルータ A 1 20.0.0.0側

ルータ A ルータ B ルータ C ネットワーク

10.0.0.0

ネットワーク

20.0.0.0

ネットワーク

30.0.0.0

ネットワーク

40.0.0.0

宛先 ネクスト メト インター

ホップ リック フェース

10.0.0.0 0 10.0.0.0側

20.0.0.0 0 20.0.0.0側

30.0.0.0 ルータ B 1 20.0.0.0側

40.0.0.0 ルータ B 2 20.0.0.0側

宛先 ネクスト メト インター

ホップ リック フェース

30.0.0.0 0 30.0.0.0側

40.0.0.0 0 40.0.0.0側

20.0.0.0 ルータ B 1 30.0.0.0側

10.0.0.0 ルータ B 2 30.0.0.0側

宛先 ネクスト メト インター

ホップ リック フェース

20.0.0.0 0 20.0.0.0側

30.0.0.0 0 30.0.0.0側

10.0.0.0 ルータ A 1 20.0.0.0側

40.0.0.0 ルータ C 1 30.0.0.0側

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この状態でルータ Bのネットワーク 30.0.0.0が何らかの原因でダウンしたとします。するとル

ータ Bのルーティングテーブルからは 30.0.0.0宛のエントリが削除されます。

図5-7 ルーティングループの発生(2)

しかし、ルータ Aはルータ Bからルーティングアップデートを受け取るまではそのことを知

りません。そして、ルータ Aがルータ Bからのルーティングアップデートを受け取るより早く、

定期的に送るルーティングアップデート{(10.0.0.0, 1), (20.0.0.0, 1), (30.0.0.0, 2)}をルータ Bへ送

ったとします。すると、それを受け取ったルータ Bは、実際には経路がダウンしているにもか

かわらず(ルータ A経由の)別の経路があるものとしてルーティングテーブルに追加します。

図5-8 ルーティングループの発生(3)

この状態で 10.0.0.0 のネットワークから 30.0.0.0のネットワーク宛のパケットが届くと、ルー

タ Aはルータ Bに転送し、ルータ Bはそれをルータ Aへ転送するということを繰り返すことに

なります。

このようにネットワークがダウンするのと、ルーティングアップデートの定期更新のタイミン

グ次第ではルーティングループが発生する可能性があります。

また、この状態でルータ Bからルーティングアップデートが送られると、その内容は{(20.0.0.0,

1), (10.0.0.0, 2), (30.0.0.0, 3)}となっています。ルータ Aのルーティングテーブルの 30.0.0.0 宛の

エントリは、もともとルータ Bから受け取ったものですから、ルータ Aは新しい情報で 30.0.0.0

宛のエントリを更新します。

ルータ A ルータ B ネットワーク

10.0.0.0

ネットワーク

20.0.0.0

ネットワーク

30.0.0.0

宛先 ネクスト メト インター

ホップ リック フェース

10.0.0.0 0 10.0.0.0側

20.0.0.0 0 20.0.0.0側

30.0.0.0 ルータ B 1 20.0.0.0側

宛先 ネクスト メト インター

ホップ リック フェース

20.0.0.0 0 20.0.0.0側

10.0.0.0 ルータ A 1 20.0.0.0側

30.0.0.0 ルータ A 2 20.0.0.0側

ルータ A ルータ B ネットワーク

10.0.0.0

ネットワーク

20.0.0.0

ネットワーク

30.0.0.0

宛先 ネクスト メト インター

ホップ リック フェース

10.0.0.0 0 10.0.0.0側

20.0.0.0 0 20.0.0.0側

30.0.0.0 ルータ B 1 20.0.0.0側

宛先 ネクスト メト インター

ホップ リック フェース

20.0.0.0 0 20.0.0.0側

30.0.0.0 0 30.0.0.0側

10.0.0.0 ルータ A 1 20.0.0.0側

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図5-9 無限カウント(1)

更に、ルータ Aは次のルーティングアップデート{(10.0.0.0, 1), (20.0.0.0, 1), (30.0.0.0, 4)}をルー

タ Bに送り、それによってルータ Bは 30.0.0.0宛のエントリを更新します。

図5-10 無限カウント(2)

この動作を繰り返して、各ルータの 30.0.0.0 宛のエントリのメトリックはどんどん大きくなっ

ていきます。これを無限カウントと呼びます。しかし、実際には RIPのメトリックには上限値

として 15が設定されていて無限に大きくなることはありません。メトリックが 15の次は 16で

すが、これは無限のメトリックつまり到達不能とみなされます。

メトリックが 16のエントリは到達不能ですから、ルーティングアップデートでそのようなエ

ントリを受け取った場合、ホールドダウンタイマ(後述)を起動させ、やがてルーティングテー

ブルからそのエントリは削除されます。それによってルーティングループも解消されるでしょう

が、それにはずいぶん時間が掛かります。そのため、そもそもルーティングループにならないよ

うな対策が必要です。

ルーティングループが発生する原因は、前述の例ではルータ Aがルータ Bから受け取った経路

に関するエントリ(30.0.0.0 宛のエントリ)をルータ Bに送っているためです。したがって、ル

ータ Aがルータ Bに送るルーティングアップデートにはルータ Bから教わった情報を含めない

ようにすればルーティングループは発生しないはずです。

ルータ A ルータ B ネットワーク

10.0.0.0

ネットワーク

20.0.0.0

ネットワーク

30.0.0.0

宛先 ネクスト メト インター

ホップ リック フェース

10.0.0.0 0 10.0.0.0側

20.0.0.0 0 20.0.0.0側

30.0.0.0 ルータ B 3 20.0.0.0側

宛先 ネクスト メト インター

ホップ リック フェース

20.0.0.0 0 20.0.0.0側

10.0.0.0 ルータ A 1 20.0.0.0側

30.0.0.0 ルータ A 4 20.0.0.0側

ルータ A ルータ B ネットワーク

10.0.0.0

ネットワーク

20.0.0.0

ネットワーク

30.0.0.0

宛先 ネクスト メト インター

ホップ リック フェース

10.0.0.0 0 10.0.0.0側

20.0.0.0 0 20.0.0.0側

30.0.0.0 ルータ B 3 20.0.0.0側

宛先 ネクスト メト インター

ホップ リック フェース

20.0.0.0 0 20.0.0.0側

10.0.0.0 ルータ A 1 20.0.0.0側

30.0.0.0 ルータ A 2 20.0.0.0側

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このように、あるエントリを学習した(ルーティングテーブルに追加/更新した)インターフ

ェースから送信するルーティングアップデートの中には、そのエントリを含めないようにするこ

とをスプリットホライズンといいます。

図5-7に戻ってスプリットホライズンを有効にすると、ルータ Aがルータ Bへ送るルーテ

ィングアップデートは{(10.0.0.0, 1), (20.0.0.0, 1)}となるので、ルーティングループは発生せず、

やがてルータ Aのルーティングテーブルからも 30.0.0.0 のエントリは削除されます。

ルーティングループへの対策は他にもあります。

・ルートポイズニング

ネットワークがダウンしたことを知らせるために、メトリック 16のエントリをルーティング

アップデートに含めることです。(前の例ではルータ Bからのルーティングアップデートに

(30.0.0.0, 16)のエントリを含めるということになります。)

・トリガードアップデート

経路情報に変化があった際に、定期的なルーティングアップデートのタイミングを待たずにル

ーティングアップデートを送信します。

・ポイズンリバース

スプリットホライズンではエントリを含めないだけでしたが、ポイズンリバースではメトリッ

クを 16にして送り返します。ポイズンリバース付きスプリットホライズンと呼ばれることも

あります。

RIPでもこれらの対策を実施することで、ルーティングループが発生し難くなっています。

ところで、RIPではルーティングアップデートを定期的に送信しますが、その時間間隔を計る

ためにタイマが使われます。これをアップデートタイマ (Update Timer) といいます。RIPではそ

の他に幾つかのタイマを使います。

・無効タイマ (Invalid Timer)

このタイマがタイムアウトするまでにルーティングアップデートを受信しなければ、そのル

ートに何らかの異常が発生している可能性があるとみなして、ホールドダウンタイマを起動し

ます。無効タイマのデフォルトは 180秒です。ルーティングアップデートを受信する度に 0

にリセットされます。

・フラッシュタイマ (Flush Timer)

ガーベージコレクションタイマ (Garbage Collection Timer) とも呼ばれます。無効タイマと同

時に起動して、RIPではデフォルトで 240 秒でタイムアウトします。このタイマがタイムアウ

トするまでにアップデートを受信できなかったエントリはルーティングテーブルから削除さ

れます。無効タイマと同様、ルーティングアップデートを受信する度に 0にリセットされます。

・ホールドダウンタイマ (Hold down Timer)

RIPv1 の規格にはありませんが、Cisco 製ルータにはホールドダウンタイマがあります。こ

れはダウンしている経路を復活させないためのタイマです。(前述のルーティングループへの

対策の1つといえます。)

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このタイマはメトリックが 16のアップデートを受け取ったり、無効タイマがタイムアウト

した時点で起動されます。タイムアウトまでの時間はデフォルトで 180秒です。ホールドダウ

ンタイマの期間内では、その経路がホールドダウン状態(多分ダウンしているだろうと思われ

る状態)として、アップデートによりその宛先へのエントリを受け取っても、メトリックが等

しいか大きい場合は無視します。メトリックが小さいものを受信した場合は、新たな経路が見

つかったものとみなして、ホールドダウンタイマをリセットします。ホールドダウンタイマが

タイムアウトした時もリセットされます。

実験と考察

(1) RIPの起動とルーティングプロトコルの確認

前回と同様に RIPを起動した後にルーティングプロトコルを確認します。ただし、今回は全ル

ータで一斉に行います。

なお、Ciscoルータでは RIPを起動するとデフォルトで version 1 として動作します。ただし、

バージョン 2のパケットも受信できて、適切に解釈します。

(1-1) RIPの起動

前回と同様にして RIP を起動して下さい。ただし、今回は全ルータで一斉に RIPを起動して

下さい。

Router(config)#router rip

Router(config-router)#netw

Router(config-router)#netw

Router(config-router)#network 192.168.30.0

(1-2) ルーティングプロトコルの確認

前回と同様にしてルーティングプロトコルを確認して下さい。

Router#sh ip protocols

考察課題1

show ip protocolsコマンドで確認できる情報には各種タイマ(アップデートタイマ、無効タイ

マ、ホールドダウンタイマ、フラッシュタイマ)の値や RIPのバージョン(インターフェース

ごと、送信と受信の別にバージョンが設定されている)があります。(1-2)の結果からこれらの情

報を読み取って答えなさい。

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(2) コンバージェンスに至る過程の観察

1台のルータで LANケーブルを抜いて一時的にネットワークの構成を変更し、全てのルータ

でルーティングテーブルが変化する様子を観察し、コンバージェンスに至る様子を観察します。

また、抜いたケーブルを挿しなおしてネットワークの構成を元に戻し、デバッグコマンドを用

いて再度コンバージェンスに至る過程におけるルーティングアップデートをやり取りする様子

を観察します。

どれか 1台だけで抜き挿ししても観察できる内容はルータによって異なるので、これらの作業

を 1台ずつ交代で全てのルータで行います。ルータ A、ルータ B、ルータ Cの順に LANケーブ

ルを抜く/挿しなおすルータを変えて、以下の(2-2)~(2-6)を繰り返して下さい。

(2-1) ルーティングテーブルの確認

Router#sh ip route

(1)が完了して十分な時間が経過したらコンバージェンスに達しているはずですので、全ルー

タでルーティングテーブルを確認して、そのことを確かめます。以降の(2-2)~(2-6)はこの状態を

出発点とします。

(2-2) ケーブルを抜く

全てのルータで、Enterキーを押すだけでルーティングテーブルを表示できるように、(2-3)の

準備をして、1台のルータの LANケーブルを抜きます。

(2-3) 繰り返しルーティングテーブルを確認

LANケーブルが抜かれた直後からルーティングテーブルを数秒間隔で表示し、変化する様子

を確認します。これをコンバージェンスに達するまで繰り返し行います。

(2-4) デバッグモードの開始

ルータをデバッグモードにしておくと、ルータが送受信しているルーティングプロトコルのパ

ケットをリアルタイムで確認することができます。ただし、デバッグモードはルータに高い負荷

をかけるので、デバッグの際にだけ使用し、通常は使用しません。

今回は(2-2)で抜いたケーブルを挿しなおした際に再度コンバージェンスに至る過程における

パケットのやり取りを確認するためにデバッグモードを使います。

RIPのデバッグモードに入るにはグローバルコンフィグレーションモードで debug ip ripを

実行します。

Router#debug ip rip

RIP protocol debugging is on

Router#

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(2-5) ケーブルを挿しなおす

(2-2)で抜いたケーブルを挿しなおします。

(2-6) デバッグモードの終了

再度コンバージェンスに達したらデバッグモードを終了します。デバッグモードを終了するに

は no debug ip ripを実行します。(または undebug allでも可)

Router#no debug ip rip

RIP protocol debugging is off

Router#

考察課題2

デバッグモードで得られた情報の中から、どういう順序でルーティングアップデート(何処か

ら受け取ったか、アップデートの内容は)を受け取ったか整理し、それらのルーティングアップ

デートでルーティングテーブルがどのように変化したと考えられるか答えなさい。(3回の実験

について全て答えること。何も変化しないということもあり得ます。)

考察課題3

RIPルータがルーティングアップデートを受け取った際のルーティングテーブルの更新手順

において、ルーティングアップデートのエントリが自身のルーティングテーブルに存在する場合

は、ルーティングアップデートを送ってきたルータとルーティングテーブル中のエントリのネク

ストホップが同じ場合はルーティングテーブルを更新します。それは何故でしょうか。説明しな

さい。

答え 機器の障害等でホップ数が増えるように到達可能な経路が変化することもあるので更新

する必要がある

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6.OSPF

6-1 OSPFの概要

OSPF (Open Shortest Path First) は、リンクステート型のルーティングプロトコルです。Cisco

独自のルーティングプロトコルである EIGRPとは異なり、IETFで提唱され、様々な機器でサポ

ートされています。リンクステート型とは、ルータ同士が交換する情報がリンクステートつま

り接続の状態だということです。

OSPFではルーティングテーブルを生成する際に、全てのネットワークの構成を調べ、その情

報から各ネットワークへの最短経路を計算し、その経路を元にルーティングテーブルを生成しま

す。

OSPFでは隣接するルータをネイバーと呼びます。ルータは最初に Helloパケットを送信しあ

い、隣接ルータとネイバー関係を確立し、ネイバーテーブル(隣接ルータの一覧表)を作成し

ます。

次に、全体のネットワーク構成を知るために、全てのルータのリンク状態の情報を収集します。

ルータが送信するリンク状態の情報は LSA (Link State Advertisement)と呼ばれます。LSAには

そのルータが持つインタフェースの種類、インタフェースの IPアドレス、インタフェースのコ

ストなどが含まれます。

ルータは収集した LSAをトポロジテーブルに格納します。トポロジテーブルは LSDB (Link

State Database) とも呼ばれます。この情報からトポロジマップ(ネットワーク全体の構成図の

ような物)を作ります。

そのトポロジマップから、SPF (Shortest Path First) アルゴリズムにより、SPFツリーを作り

ます。SPFアルゴリズムはダイクストラのアルゴリズムとも呼ばれ、グラフ理論における最短経

路問題を解くためのアルゴリズムです。OSPFだけでなくカーナビの経路探索などにも利用され

ています。SPFツリーとは、そのルータを起点とした各宛先までの最短経路を表すものです。

図6-1 トポロジマップと SPFツリー

さらに SPFツリーから各宛先へのベストパスが判るので、それをルーティングテーブルに登

録します。OFPFでは、SPFツリーを元にルーティングテーブルを作成しますので、ルーティン

グループが起こり難いという特徴があります。

トポロジマップ SPFツリー

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OSPFでは基本的に全てのルータがネットワークの構成を把握しています。それに何らかの変

化(ネットワークのダウンやネットワークの追加)があった場合、影響があった差分だけトリガ

ードアップデートします。即ち、リンク状態の変化を検出した OSPFルータは LSAを更新して

即座にネイバールータへ通知します。(自身の LSDBを更新して、SPFツリーを再計算し、ルー

ティングテーブルを更新も当然行います。)

新しい LSAを受け取ったルータは LSDBを更新して、SPFツリーを再計算し、ルーティング

テーブルを更新します。このように、OSPFでは、一旦全てのルータがネットワークの構成情報

を共有した後は、差分だけをトリガーアップデートするのでネットワークの負荷が少なく、素早

くコンバージェンスに達するという特徴もあります。

RIPではメトリックとしてホップ数を使用していましたが、ホップ数だけでは必ずしも最適な

経路が選択されるとは限りません。例えば、ネットワーク Aからネットワーク Bへの到達可能

な経路として、ルータ 1~ルータ 2を経由する経路とルータ 1~ルータ 3~ルータ 2を経由する

経路があったとします。ホップ数だけで考えればルータ 1~ルータ 2を経由する経路が最適と考

えられますが、ルータ 1とルータ 2の帯域幅が 128kbps で、ルータ 1とルータ 3間およびルータ

3とルータ 2間の帯域がどちらも 10Mbps の場合、ルータ 1~ルータ 3~ルータ 2を経由する経

路の方が性能は良いはずです。OSPFではメトリックとしてコストを使用することで、インター

フェースの帯域幅を考慮するようになっています。

図6-2 帯域幅が異なるルート

コストはインターフェースの帯域幅を元に次のように自動的に算出されます。

コスト = 100Mbps / インターフェースの帯域幅(bps)

つまり、10Mbps のインターフェースのコストは 10、100Mbps なら 1、128kbps なら 781 にな

ります。(1Gbpsなら計算上は 0.1 ですが、実際には 1になります。)また、各インターフェース

ごとに手動で設定することもできます。

このコストを SPFツリーの計算ではノード間の距離として使います。前述の例ですとルータ 1

~ルータ 2のコストは 781 で、ルータ 1~ルータ 3とルータ 3~ルータ 2のコストはどちらも 10

なので、ルータ 1~ルータ 3~ルータ 2のコストは合わせて 20 ということになります。

このように OSPFではコストをメトリックとして使うことで、より最適な経路が選択されると

考えられます。

OSPFには以上のような特徴の他、エリアを採用して大規模なネットワークに対応できるよう

に工夫されています。

ネットワーク A ネットワーク B

128kbps

10Mbps 10Mbps

ルータ 1 ルータ 2

ルータ 3

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6-2 ルータ ID

OSPFではネットワーク上のルータを識別する必要があります。そのため、ルータにはルータ

IDを割り当てる必要があります。Hello パケットなどの OSPFのパケットにはルータ IDが含ま

れています。ルータ IDは 32ビットの値で、IPアドレスと同様に表記します。当然、ルータ ID

は重複しないように割り当てる必要があります。

ルータ IDは Cisco のルータでは、

1.router-idコマンドで設定した値(手動設定)

2.ループバックインターフェースの中で最も大きい IPアドレス

3.アクティブなインターフェースの中でで最も大きい IPアドレス

の優先順位で設定されます。(ループバックインターフェースとは自分自身宛の特別な論理イン

ターフェースです。)もしも、手動で設定せず、ループバックインターフェースがなかった場合、

3が選択されますが、何らかの原因でそのインターフェースがダウンするとルータ IDが変化し

てしまうことになり、不都合が生じます。手動で設定するか、ループバックインターフェースを

作成しておくべきでしょう。

6-3 ネイバー関係の確立

OSPFルータを起動してインターフェースが UPすると、Hello パケットを送信します。なお、

RIPでは UDPを使っていましたが、OSPFは IPを直接使用しています。

ルータ Aとルータ Bがネイバー関係を確立する手順は次のようになります。

ルータ Aは Hello パケットはマルチキャストアドレス(224.0.0.5)宛に送信します。そのパケッ

トは同じセグメント内に存在するルータ Bに到達します。

ルータ Bはルータ Aからの Hello パケットを受信すると、その情報をチェックしてネイバー

関係の条件を満たしてれば、ネイバーテーブルにルータ Aを追加します。

同様に、ルータ Bはマルチキャストアドレス(224.0.0.5)宛に送信します。そのパケットはルー

タ Aに到達するので、ルータ Aはルータ Bからの Hello パケットの情報をチェックしてネイバ

ー関係の条件を満たしてれば、ネイバーテーブルにルータ Bを追加します。

これによって双方向のネイバー関係が確立します。

ネイバー関係の条件は、認証情報が一致していること(OSPFにはネットワークに参加するル

ータを認証する機能があります。)、Hello 間隔と Dead 間隔が一致していること、エリア ID(後

述)が一致していることなどです。

Helloパケットはネイバー関係の確立だけでなく、生存確認にも使用されます。定期的に Hello

パケットを送受信することで、ネイバーがダウンしていないことを確認します。逆に一定期間

Helloを受信しなかったら相手がダウンしたとみなします。その期間を計るタイマを Deadタイ

マといいます。Hello間隔(生存確認のための Hello パケットを送信する間隔)と Dead タイマの

値は次で述べるネットワークタイムによって異なりますが、Deadタイマは Hello 間隔の 4倍で

す。(Hello間隔が 10 秒なら Deadタイマは 40秒。)

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6-4 ネットワークタイプと DR/BDR

OSPFではデータリンク層(IPより下の層、イーサネットや PPPなど)の種類によってネット

ワークタイプを定義しています。ネットワークタイプが異なると、若干動作が異なります。主要

なネットワークタイプは次の通りです。

(1) ブロードキャストマルチアクセス

イーサネットのように、同一のネットワーク(セグメント)に複数台のルータが接続でき、ブ

ロードキャストが可能なネットワーク。

(2) ポイントツーポイント

PPPのように 2台のルータだけで接続されるネットワーク。

(3) NBMA (Non Broadcast Multi Access) フレームリレーや ATM接続などのように、同一のセグメント上に複数台のルータが接続でき

ますが、ブロードキャストの機能がないネットワーク。

これらのタイプの違いにより、幾つか動作が異なります。ブロードキャストマルチアクセスや

ポイントツーポイントのネットワークではネイバーは自動的に検出されますが、NBMAでは手

動で設定する必要があります。

また、Hello間隔はブロードキャストマルチアクセスとポイントツーポイントでは 10秒、

NBMAでは 30秒となっています。

もう1つの違いは DR/BDR の有無です。ポイントツーポイントのネットワークではネイバー

関係を確立するのは 2台だけであり、LSAを交換するのはその 2台に限られます。それに対し

てブロードキャストマルチアクセスや NBMAでは、ネイバー関係を確立するのは複数台になり、

それらが互いに全てのネイバーと LSAを交換するのは効率的ではありません。そこで、マルチ

アクセスなネットワークでは代表となるルータを指定して、各ルータは指定されたルータとだけ

LSAの交換を行うことが考えられます。

図6-3 DR/BDRの必要性

OSPFではその指定されたルータを DR (Designated Router) と呼びます。また、DRが1台だ

けですと、そのルータがダウンすると LSAの交換ができなくなりますから予備も1台指定しま

全てのルータが LSAを交換する場合 DR/BDR と LSAを交換する場合

DR BDR

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す。これを BDR (Backup Designated Router) と呼びます。各ルータは LSAの交換を DRと BDR

とだけ行います。

DR/BDRの選出には OSFPプライオリティ値が使用されます。これは Hello パケットに含まれ

ています。OSFPプライオリティ値が最も大きいルータが DRになり、2番目に大きいルータが

BDRになります。OSFP プライオリティ値が同じ場合はルータ IDが使用されます。OSFPプラ

イオリティ値のデフォルトは 1です。OSFPプライオリティ値が 0のルータは DR/BDRに選出さ

れません。

Router(config)#int f0/0

Router(config-if)#ip ospf priority 1

Router(config-if)#

6-5 エリア

OSPFはある程度大規模なネットワークに対応できますが、何の工夫もしなければ、各ルータ

が持つ LSDBのサイズが大きくなり、ルータの負荷が大きくなります。OSPF ではそれに対処す

るためにエリアという考え方を導入しています。

エリアとは LSAを交換する論理的なグループのことです。エリアが1つの場合はシングルエ

リア OSPFと呼ばれます。複数のエリアを使う場合はマルチエリア OSPFと呼ばれます。

マルチエリアでは、ネットワークを複数のエリアに分割します。エリアは、必ず1つのエリア

がルータを境界として他のエリアと接するように分割する必要があります。

エリア内での LSAの交換はシングルエリアと同じです。エリアをまたぐ LSAの交換は、エリ

アの境界にあるルータが集約して行います。エリアの境界にあるルータを ABR (Area Border

Router)またはエリア境界ルータと呼びます。

図6-4 マルチエリア OSPF

他のすべてのエリアと接するエリアをバックボーンエリアと呼びます。エリア間の通信は必ず

バックボーンエリアを通過することになります。

OSPFのエリアにはバックボーンエリア以外にも標準エリア(標準的なエリア)やスタブエリ

アなど幾つか種類がありますがここでは省略します。

エリア 0

(バックボーンエリア) エリア 1 エリア 2

ABR ABR

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マルチエリアではルータの役割に幾つかの種類があります。

・内部ルータ

全てのインターフェースが同じエリアに接続しているルータ、つまり、完全に1つのエリア

の内部に存在するルータです。

・バックボーンルータ

バックボーンエリアに所属するインターフェースを少なくとも1つ持つルータです。次の

ABRはバックボーンルータでもあります。全てのインターフェースがバックボーンエリアに

所属するルータはバックボーンルータであり、内部ルータでもあります。

・ABR

前述のエリアの境界にあるルータです。ABRはエリアの出入り口になります。ルータを ABR

にするにはインターフェースを複数のエリアに所属されます。

・AS境界ルータ(ASBR)

OSPF以外のルーティングプロトコルのネットワークとの境界にあるルータです。(ASは自

律システム((Autonomous System)のことです。OSPF でいう ASとは同じルーティングプロトコ

ルを使用するルータのグループのことです。)

エリアにはエリアを識別するための IDを割り当てます。これをエリア IDと呼びます。バッ

クボーンエリアのエリア IDには 0を割り当てます。シングルエリアの場合もエリア IDは 0と

します。

6-6 隣接関係 (Adjacency)

ネイバー関係を確立したルータは LSAを交換してネットワークの構成情報を収集しますが、

全てのルータと情報を交換し合うわけではありません。マルチアクセスネットワークでは

DR/BDRとその他のルータが交換しますし、異なるエリアの情報は ABRから受け取ります。LSA

を交換し合うネイバー同士の関係を Adjacency(隣接関係)といいます。

双方向のネイバー関係を確立し、DR/BDRの選出か完了すると、Adjacencyに至るルータ間で

は、LSAを交換して LSDBを同期する処理に移行します。

その処理の最初にどちらのルータから LSAに関するデータを送信するか決定します。

そして、DBD (Database Description) パケットを交換します。DBDパケットには送信したルー

タの LSDBに格納されている LSAの一覧が含まれています。

DBDパケットを受け取ったルータは、自身の LSDBと比較して不足分の LSAについて情報を

要求します。LSAを要求するパケットは LSR (Link State Request) パケットです。

LSRを受け取ったルータは LSU (Link State Update) パケットで、要求された LSAをまとめて

渡します。

DBDやLSUを受け取ったルータは返事としてLSAck (Link State Acknowledgement) パケット

を返します。このようにして隣接ルータと LSDBを同期させます。

以上のように OSPFでやり取りされるパケットは Hello パケットを含めて 5種類です。

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実験と考察

(1) OSPFの起動

全てのルータで OSPFを起動し、ルーティングテーブルを確認してコンバージェンスに至って

いることを確認します。また、アドミニストレーティブディスタンスの値など OSPFの設定も確

認します。

(1-1) ルーティングテーブルの確認

最初に全てのルータでルーティングテーブルを確認し、自身が直接接続しているネットワーク

以外のルートのエントリがないことを確認します。

Router#sh ip route

Codes: C - connected, S - static, I - IGRP, R - RIP, M - mobile, B - BGP

D - EIGRP, EX - EIGRP external, O - OSPF, IA - OSPF inter area

N1 - OSPF NSSA external type 1, N2 - OSPF NSSA external type 2

E1 - OSPF external type 1, E2 - OSPF external type 2, E - EGP

i - IS-IS, L1 - IS-IS level-1, L2 - IS-IS level-2, ia - IS-IS inter area

* - candidate default, U - per-user static route, o - ODR

P - periodic downloaded static route

Gateway of last resort is not set

C 192.168.30.0/24 is directly connected, FastEthernet0/0

Router#

(1-2) OSPFの起動

全てのルータで OSPFを起動します。OSPFを起動するにはグローバルコンフィグレーション

モードから router ospfコマンドを実行してルータ設定モードに入ります。ruoter ospfコマン

ドは router ripコマンドと異なり、オプションを1つ必要とします。必要とするオプションは

プロセス IDです。

プロセス IDとは、そのルータの中で起動する OSPFプロセスを識別する番号で、1~65,535

の任意の値です。プロセス IDは他のルータと無関係に決めて構いません。1台のルータでルー

ティングポリシーが異なる複数の OSPFプロセスを動作させることが可能ですが、その場合にプ

ロセスを区別するのにプロセス IDが必須です。

例えばプロセス IDを 10とすると、router ospf 10というコマンドでルータ設定モードに入

ります。

OSPFではルータをルータ IDで識別する必要があります。ルータ IDは IP アドレス等から自

動的に設定可能ですが、本実験では手動で設定することにします。ルータ IDを設定するにはル

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ータ設定モードで router-idコマンドを実行します。router-idコマンドはオプションとして設

定したいルータ IDを取ります。例えばルータ IDに 192.168.1.1 という値を設定したい場合、

router-id 192.168.1.1というコマンドになります。本実験ではルータ IDとして FastEthernet0/0

の IPアドレスの4オクテット目を 200に変えた値を使用することにします。例えばルータ Aな

ら 192.168.10.200とします。

ルータ IDの設定はルータ設定モードに入って最初に行います。後述の networkコマンドでネ

ットワークを有効にすると、他のルータと情報交換を行います。他のルータはそのときのルータ

IDでそのルータを認識しますので、途中からルータ IDを変えることはできません。そのため、

他のルータと情報交換した後では router-idコマンドにより変更しようとしても反映されませ

ん。それを反映させるにはルータを再起動するか clear ip ospf processコマンドを使う必要が

あります。(Reload or use "clear ip ospf process" ...というその旨のメッセージが表示され

ます。)このコマンドは OSPFのプロセスを再起動するものです。OSPFのプロセスを再起動す

るということは、一旦 OSPF プロセスをシャットダウンしますので、情報を共有していたルータ

からはそのルータがダウンしたように見え、そのルータの情報は削除されます。その後で新しい

ルータ IDで起動することになります。clear ip ospf processコマンドは特権モードで実行し

ます。

ルータ IDを設定したら、networkコマンドで OSPFを有効にするネットワークを指定します。

RIPでも同様に networkコマンドを使いましたが、OSPFではコマンドのオプションが異なりま

す。OSPFでは、network ネットワークアドレス ワイルドカードマスク area エリア ID という

形式になります。ここでネットワークアドレスは OSPFを有効にするネットワークのアドレスで

す。

ワイルドカードマスクとはネットワークの範囲を決めるための値であり、サブネットマスクの

0と 1を反転した値になります。例えばネットワーク部が 24ビットなら 0.0.0.255という値に

なります。ただし、あるネットワークに接続する1つのインターフェースだけを指定したい場合

はワイルドカードマスクは 0.0.0.0になります。その場合、アドレスはインターフェースの IP

アドレスになります。

エリアについては本実験ではシングルエリアとしますので、エリア IDは 0です。したがって、

例えば 192.168.1.0/24というネットワークを有効にしたいなら、network 192.168.1.0

0.0.0.255 area 0というコマンドになります。(本実験ではアドレスはインターフェースの IP

アドレス、ワイルドカードマスクは 0.0.0.0としても構いません。)

OSPFではプライオリティ値やコスト、Hello 間隔等の設定もできますが、本実験では省略し

ます。

Router(config)#router ospf 10

Router(config-router)#router-id 192.168.10.200

Router(config-router)#network 192.168.30.0 0.0.0.255 area 0

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(1-3) ルーティングプロトコルの確認

show ip protocolsコマンドでルーティングプロトコルを確認します。最初の行の"ospf n"の

nがプロセス IDになります。最後の行の Distance: の値がアドミニストレーティブディスタン

スです。これらの値を確認して下さい。

Router#sh ip protocols

考察課題1

(1-3)で表示される情報にはエリア IDに関する情報も含まれています。何処に表示されている

か答えなさい。

(1-4) ルーティングテーブルの再確認

全てのルータでルーティングテーブルを再度確認し、コンバージェンスに至っていることを確

かめて下さい。

Router#sh ip route

(2) 状態の確認 show ip ospfコマンドを使うとOSPFの様々な状態を確認できます。ここではネイバーとLSDB

の要約情報も確認してみます。

Router#sh ip ospf

(2-1) ネイバーの確認

show ip ospfコマンドでは OSPFの全体的な状態を確認できますが、詳細は確認できません。

ネイバーについて調べるには neighborを追加して、show ip ospf neighborとします。さらに

詳細を調べる場合には show ip ospf neighbor detailとします。両方実行してみて下さい。

Router#sh ip ospf neighbor

Router#sh ip ospf neighbor detail

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考察課題2

ネイバーの詳細情報を確認すると DR/BDRについても表示されます。(2-1)で DR/BDRについて

確認して、何故そのようになっているか答えなさい。

(2-2) LSDBの確認

LSDBの内容を確認するには show ip ospf databaseコマンドを使います。このコマンドを実

行して LSDBの内容を確認して下さい。

Router#sh ip ospf database

(3) コンバージェンスに至る過程の観察

5.RIPの実験の(2)と同様にしてコンバージェンスに至る過程を観察します。しかし、OSPF

は素早くコンバージェンスに至るので、どのようにコンバージェンスに至ったかを観察すること

はできないと思われます。今回は素早くコンバージェンスに至ることとコンバージェンスに至る

過程で行われる通信内容の確認を行います。

ルータ A、ルータ B、ルータ Cの順に LANケーブルを抜く/挿しなおすルータを変えて、以

下の(3-1)~(3-5)を繰り返して下さい。

(3-1) ケーブルを抜く

全てのルータで、Enterキーを押すだけでルーティングテーブルを表示できるように、(3-2)の

準備をして、1台のルータの LANケーブルを抜きます。

(3-2) 繰り返しルーティングテーブルを確認

LANケーブルが抜かれた直後からルーティングテーブルを数秒間隔で表示し、変化する様子

を確認します。これをコンバージェンスに達するまで繰り返し行います。

Router#sh ip route

(3-3) デバッグモードの開始

OSPFでは Adjacencyに至る様子を確認するデバッグコマンドやパケットを確認するコマンド

などデバッグコマンドにも幾つかありますが、ここではイベントを確認するコマンドを使うこと

にします。

イベントを確認するコマンドは debug ip ospf eventsです。このコマンドによりネットワー

クインターフェースがダウンしたり OSPFのパケットの送受信の様子などを観察することがで

きます。debug ip ospf eventsコマンドを実行してデバッグ状態にします。

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Router#debug ip ospf events

OSPF events debugging is on

Router#

(3-4) ケーブルを挿しなおす

(3-1)で抜いたケーブルを挿しなおします。

(3-5) デバッグモードの終了

再度コンバージェンスに達したらデバッグモードを終了します。デバッグモードを終了するに

は no debug ip ospf events(または undebug allでも可)を実行します。

Router#no debug ip ospf events

OSPF events debugging is off

Router#

考察課題3

(3-3)~(3-5)で得た情報を整理して、どのような手順を踏んでコンバージェンスに至っているか

説明しなさい。(詳しい情報は得られないので大雑把で構いません。3回の実験について全て答

えること。)

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7.EIGRP

7-1 EIGRPとは

EIGRP (Enhanced Interior Gateway Routing Protocol) は Cisco独自のルーティングプロトコ

ルで、IGRPの改良版です。CCNAの試験問題には、IGRPは使われなくなったため出題されな

くなりましたが、EIGRP は良く出題されるようです。

EIGRPはディスタンスベクタ型とリンクステート型の長所を取り入れたハイブリッド型のル

ーティングプロトコルと言われています。あるいは基本的にはディスタンスベクタ型を拡張した

ものなので、拡張ディスタンスベクタ型とも言われています。つまり、ディスタンスベクタ型

を基本にリンクステート型の良いところを加えたプロトコルと考えられます。

EIGRPではルーティングテーブルの他にネイバーテーブルとトポロジテーブルの2つのテー

ブルを持ちます。ネイバーテーブルは隣接関係にあるルータの一覧表です。EIGRPのトポロジ

テーブルは OSPFの LSDBとは全く異なるもので、ネットワーク全体の構成情報を保持している

ものではありません。EIGRP のトポロジテーブルは隣接ルータから受け取った情報を保持し、

ルーティングテーブルを更新するための元情報になります。

EIGRPルータがネットワークに参加する際は次のような動作をします。

1) EIGRPルータは起動すると、Hello パケットをマルチキャスト(宛先は 224.0.0.10)で送りま

す。(ブロードキャストと違ってパケットは EIGRP ルータだけが受け取ります。)

2) Helloパケットを受け取ったルータは自分が保持しているルート情報(ルーティングテーブル)

を Update パケットとして(ユニキャストで)送り返します。

3) Update パケットを受け取ったルータは、トポロジテーブルを更新して、相手をネイバーとし

て認識し、ネイバーテーブルへ追加します。

4) そして、Updateを受け取ったことに対する確認応答(Ackパケット)を送り返します。さら

に、自身の持つルート情報を Update として送ります。ただし、その際に相手から受け取った

情報は含めません。

5) その Update を受け取った相手ルータは、同様にトポロジテーブルとネイバーテーブルを更新

します。

6) そして、Update に対する Ackパケットを返送します。これで相互にネイバーとして認識する

ようになります。

以上のようにして最初の情報交換は行われます。誤解のないように述べておきますが、マルチ

アクセスのネットワークでセグメント内に複数のルータがある場合、2)で Helloパケットを受け

取り、Updateパケットを送り返すルータは、Hello パケットを送信したルータを除くセグメント

内の全ルータです。

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上記の説明で EIGRPで使われるパケットが 3種類出てきましたが、EIGRP では全部で 5種類

使われます。

・Hello パケット

ネイバーを検出するためのパケットです。ネイバー関係を確立した後も、生存確認のために

定期的にマルチキャストで送信されます。Helloパケットを送信する時間間隔を Hello間隔と

いいます。そして、Hello 間隔の 3倍の時間待っても Hello が届かない場合には相手がダウン

していると判断するのですが、この時間のことをホールドダウンタイムといいます。RIPのホ

ールドダウンタイムとは意味が違いますので注意が必要です。(EIGRPのホールドダウンタイ

ムは OSPFの Dead タイマと同様です。)

・Update パケット

ルーティングアップデートを送信するためのパケットです。EIGRPの開始時は Hello を受け

取った相手へ全ての情報をユニキャストで送信しますが、ネットワークの構成が変化した際は

差分だけをマルチキャストで送信します。

・Query パケット

ルート情報をネイバー宛に問い合わせる際に使用します。(アクティブ状態で説明します。)

・Reply パケット

Queryに対する応答を返すパケットです。

・Ackパケット

Update、Query、Replyパケットを受け取ったことに対する確認応答としてユニキャストされ

るパケットです。

このように最初は RIP のようなディスタンスベクタ型と同様にルーティング情報として隣接

ルータとルーティングテーブルをやり取りしますが、その後は定期的な情報交換は行いません。

ネットワークの構成が変化した時に差分だけ、つまり、トリガードで差分アップデートを送るよ

うになっています。そのため、使用する通信帯域は少なくてすみます。

また、Helloは定期的に交換するので Ackの必要はありませんが、それ以外のパケットには

Ackを送るようになっていて、ネットワークの信頼性に配慮されています。

EIGRPではトポロジテーブルを参照してルーティングテーブルを更新します。その計算には

DUAL (Diffusing Update ALgorithm) と呼ばれるアルゴリズムを使用します。このアルゴリズム

に従えば、非常に高速なコンバージェンスが可能で、ルーティングループは発生しません。

7-2 DUAL

EIGRPのトポロジテーブルには、宛先とネクストホップ、Advertised Distance (AD)、Feasible

Distance (FD)が記録されています。ネクストホップはその経路を通知してきた隣接ルータです。

ADはネクストホップから宛先までの距離です。隣接ルータは Updateでルーティングテーブル

(そのものか差分)を送ってきますが、それには宛先ごとにメトリックが含まれています。AD

は隣接ルータが送ってきた Update 中のメトリックです。FDは自ルータからネクストホップを経

由した場合の宛先までの距離、即ち ADにネクストホップまでの距離を足した値になります。

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EIGRPではメトリックは次の式で計算します。

メ ト リ ッ ク ={K1×帯域幅+K2×帯域幅256−負荷

+K3× 遅延}× K5

信頼度+ K4× 256

ここで、K1~K5 のデフォルト値は K1 と K3が 1で他は 0となっています。なお、K5=0 の場

合、K5 ÷ (信頼度 + K4)は 1として計算されます。したがってデフォルトでは

メトリック = (帯域幅 + 遅延) × 256

です。最後の 256 倍は IGRP との後方互換性のために設けられているものです。

ここで、帯域幅と遅延は次のように計算します。

帯域幅 = 10000Mbps / インタフェースの帯域幅

遅延 = インタフェースの遅延 / 10

遅延はマイクロ秒単位の値です。このように複数のパラメータを元に計算されるメトリックを

複合メトリックといいます。

トポロジテーブルにおいて、1つの宛先の中で FDが最小のパスがその宛先へのベストパスと

いうことになります。これをサクセサ(Successor)と呼びます。サクセサをルーティングテーブル

に載せることになります。

トポロジテーブルにおいて、1つの宛先へのパスが複数存在する場合、サクセサを除いて次の

条件を満たすパスで FDが最小のパスをフィージブルサクセサ (Feasible Successor) と呼びます。

サクセサの FD > フィージブルサクセサ(候補)の AD

この条件を Feasible Condition といいます。フィージブルサクセサはサクセサがダウンした際の

代替パスです。DUALでは予めフィージブルサクセサを計算しておくことで、非常に高速なコ

ンバージェンスを達成できます。ただし、サクセサからフィージブルサクセサに切り替わったこ

とによってルーティングループが発生しては困ります。そうならないための十分条件が Feasible

Conditionです。この条件を満たすパスしかフィージブルサクセサになれないため、ルーティン

グループは発生しません。

トポロジテーブルと AD、FD、ルーティングテーブルの関係を図を使って説明します。次のよ

うなトポロジテーブルがあったとします。

トポロジテーブル ルーティングテーブル

宛先 ネイバー FD AD 宛先 ネクストホップ メトリック

10.0.0.0 192.168.0.1 15 10 S 10.0.0.0 192.168.0.1 15

192.168.1.1 25 20 172.16.0.0 192.168.2.1 17

172.16.0.0 192.168.0.1 23 18

192.168.2.1 17 12 S

192.168.3.1 25 15 FS

S:サクセサ、FS:フィージブルサクセサ

図7-1 トポロジテーブルとルーティングテーブル

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図の左側がトポロジテーブルで右側がルーティングテーブルです。10.0.0.0宛では 1行目の FD

が最小なのでサクセサとなり、ルーティングテーブルに記載されます。172.16.0.0 宛では 4行目

の FDが最小なのでサクセサとなり、ルーティングテーブルに記載されます。トポロジテーブル

の 2行目のエントリは ADがサクセサの FDより大きいのでフィージブルサクセサにはなりませ

ん。したがって、10.0.0.0 宛のフィージブルサクセサは存在しないことになります。172.16.0.0

宛についてみると、3行目のエントリは FDはサクセサに次いで小さいのですが、ADがサクセ

サの FDより大きいのでフィージブルサクセサにはなりません。しかし、5行目のエントリは AD

がサクセサの FDより小さいのでフィージブルサクセサになります。

この状態で 192.168.2.1がダウンするとトポロジテーブルから 4行目が削除され、5行目がサク

セサになります。すると今度は 3行目の ADはサクセサの FDより小さいのでフィージブルサク

セサになります。

トポロジテーブル ルーティングテーブル

宛先 ネイバー FD AD 宛先 ネクストホップ メトリック

10.0.0.0 192.168.0.1 15 10 S 10.0.0.0 192.168.0.1 15

192.168.1.1 25 20 172.16.0.0 192.168.3.1 25

172.16.0.0 192.168.0.1 23 18 FS

192.168.2.1 17 12 S

192.168.3.1 25 15 S

S:サクセサ、FS:フィージブルサクセサ

図7-2 トポロジが変化した場合

7-3 アクティブ状態

フィージブルサクセサがない状態でサクセサに障害が発生すると、その宛先に対するエントリ

はアクティブ(Active)になります。アクティブになると、その宛先へのルーティングは保留され、

トポロジテーブルからエントリは削除されます。そして、ネイバーに対して Queryパケットでそ

の宛先に対する別ルートが存在しないか問い合わせます。

Queryパケットを送信するということは、その宛先へ Queryを送ったルータを経由したルート

が無くなったことを意味しますから、Queryパケットを受け取ったネイバーは、トポロジテーブ

ルからそのエントリを削除します。その結果、もともと別ルートがサクセサだったかフィージブ

ルサクセサがあった場合は別ルートがあるので Replyパケットでそのルートを通知します。別ル

ートが無くなった場合、やはりそのエントリをアクティブにして、ネイバーへ Queryパケットで

問合せを行います。このようにアクティブな状態はネイバーに連鎖することがあります。

アクティブになった場合、全てのネイバーに Queryを送信します。Queryを送った全てのネイ

バーがら Replyが返ってこない間はアクティブを解除しません。全てのネイバーがら Replyが返

ってきたら、トポロジテーブルとルーティングテーブルを更新してアクティブ状態を解除します。

このように Queryと Replyを使用することで、(ループになるような)誤ったルートを回避す

ることができます。

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例えば、図7-1の状態で、192.168.0.1がダウンした場合、トポロジテーブルには別のルート

(2行目)がありますが、そのルートはループしている可能性がありますので、そのまま採用せ

ずに、アクティブにします。そして、Queryでネイバーに問合せることになります。(その結果、

2行目がサクセサになることはありえます。)

ところで、図7-3に示すネットワークにおいてルータ Aから 172.16.0.0へのリンクがダウン

したとします。すると、ルータ Aはアクティブになり、ルータ Bへ Queryを送信します。それ

を受け取ったルータ Bもアクティブになり Queryをルータ Cへ送信します。それを受け取った

ルータ Cは 172.16.0.0 へのパスを削除して、172.16.0.0 へのパスは知らないという内容の Reply

をルータ Bへ返します。ルータ Cからの Replyを受け取ったルータ Bはルータ Cと同様に

172.16.0.0へのパスを削除してアクティブ状態を解除し、ルータ Aへ Replyを返します。それに

よってルータ Aもアクティブ状態を解除します。

図7-3 アクティブが伝播するネットワーク

しかし、ルータ Cからの Replyが何らかの理由でルータ Bへ届かなかった場合はどうなるで

しょうか。その場合、ルータ Bはアクティブ状態を解除できません。ルータ Aも同様です。そ

のような状態を SIA (Stuck In Active) といいます。この場合はルータ A、ルータ Bから 172.16.0.0

へのパスは失われているので SIAになってもさほど問題は無いかもしれませんが、次の図7-

4の場合はどうでしょうか。ただし、この図においてルータ Bにはフィージブルサクセサがな

かったものとします。

図7-4 SIAの弊害があるネットワーク

図7-3と同様にルータ Bからの Queryを受け取ったルータ Cは、ルータ D経由のルートを

サクセサにして、ルートを Replyでルータ Bに通知します。その Replyがルータ Bに届けば問

題ないのですが、何らかの理由で Replyが届かなかった場合、SIAになります。この場合は到達

可能なルートが存在するにもかかわらず SIAに陥ってルーティングできなくなってしまうこと

になります。

ただし、永遠にそのような状態が継続することを防ぐために EIGRPにはアクティブタイマ(3

分間)が設定されていて、Queryパケットを送ったネイバーから 3分以内に Replyが返ってこな

かった場合は、そのネイバーはダウンしたものとみなし、隣接関係をリセットします。

172.16.0.0

ルータ A ルータ C ルータ B

ルータ D

172.16.0.0

ルータ A ルータ C ルータ B

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したがって、図7-4の場合、ルータ Bはルータ Cがダウンしたとみなすわけですが、実際

にはルータ Cはダウンしていません。そのため、定期的な Helloパケットにより、再度隣接関係

になることができます。それによって、ルータ Bとルータ Aも 172.16.0.0 への経路を知ること

ができます。とはいえネットワークが不安定になる可能性は否定できません。

7-4 その他の機能等

以上のように、EIGRP にはルーティングループが発生しない、高速なコンバージェンス、複

合メトリックを採用しているなどの特徴がありますが、それだけではありません。EIGRPは複

数のネットワーク層プロトコルに対応しています。具体的には IP、IPX、AppleTalkです。(この

うち IP以外は現在ではほとんど使われていません。)また、自動経路集約, やロードバランシン

グなどの機能も有しています。

自動経路集約とは経路集約を自動的に行う機能です。EIGRPはクラスフルのネットワーク境

界で経路集約を自動的に行います。例えば、あるルータが 172.16.1.0/24と 172.16.2.0/24 と

172.16.3.0/24の到達可能なルートを知っていて、172.16.0.0/16ではそれ以外に宛先を知らない場

合、172.16.0.0/16 に集約して(172.16.0.0に含まれない)別のルータに通知します。経路集約は

大規模なネットワークにとっては重要ですが、自動経路集約は場合によっては問題を引き起こす

こともあるので注意が必要です。

ロードバランシングとは別の言葉で言えば負荷分散です。FDの値が最小なエントリが 2つあ

った場合、どちらもルーティングテーブルに載せてトラフィックが等しくなるようにパケットを

転送することができます。この場合は同じコストの負荷分散なので、等コストロードバランシン

グといいます。また、ベストパスのコストの何倍のコストのパスまで負荷分散に使うかという倍

率を指定すると、ベストパスの指定倍率までのパスを負荷分散に使うことができます。ただし、

使用できるパスは Feasible Condition を満たしている必要があります。この場合の負荷分散はコ

ストが等しくないので不等コストロードバランシングといいます。RIPや OSPF の等コストロー

ドバランシングだけでなく EIGRPは等コストロードバランシングと不等コストロードバランシ

ングのどちらにも対応しています。

実験と考察

(1) EIGRPの起動

全てのルータで EIGRP を起動して、ルーティングプロトコルの確認を行った後、ルーティン

グテーブルを確認してコンバージェンスに至っていることを確認します。

(1-1) ルーティングテーブルの確認

最初に全てのルータでルーティングテーブルを確認し、自身が直接接続しているネットワーク

以外のルートのエントリがないことを確認します。

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(1-2) EIGRPの起動

全てのルータで EIGRP を起動します。EIGRPを起動するにはグローバルコンフィグレーショ

ンモードから router eigrpコマンドを実行してルータ設定モードに入ります。ruoter eigrpコ

マンドもオプションを1つ取りますが、OSPFとは異なります。EIGRPでは AS番号を router

eigrpコマンドのオプションとして指定する必要があります。

AS番号はネットワークで共通の値にします。(異なる AS番号のルータとは経路情報を共有し

ません。)AS番号は 1~65,535の範囲の値にします。本実験では 100 としておきます。したがっ

て、router eigrp 100でルータ設定モードに入ります。

ルータ設定モードに入ったら networkコマンドで EIGRPを有効にするネットワークを指定し

ます。EIGRPの networkコマンドの形式は、network アドレス ワイルドカードマスク です。

ワイルドカードマスクは OSPFで説明したものと同じですが、ここでは省略することもできます。

省略するとクラスフルのアドレスとして解釈されます。networkコマンドでネットワークを指定

して下さい。

OSPFや EIGRPでは帯域幅をメトリックの計算に使用しますが、実際に計算に使用される値は

インターフェースの実際の値ではなくデフォルト値です。イーサネット等の場合は問題ありませ

んが、シリアルインターフェースの場合は実際の帯域幅とデフォルト値で桁違いの差があること

もあります。そのような場合にはインターフェース設定モードで bandwidth コマンドにより実際

の帯域幅を設定します。(本実験では2回目のインターフェースの設定の際に適正な値に設定し

ています。)

(1-3) ルーティングプロトコルの確認

show ip protocolsコマンドでルーティングプロトコルを確認します。最初の行の"eigrp n"

の nが AS番号になります。最後の行の Distance: の値がアドミニストレーティブディスタン

スです。これらの値を確認して下さい。

Router#sh ip protocols

考察課題1

(1-3)表示される情報には自動経路集約に関する情報も含まれています。何処にどのように表示

されているか答えなさい。

(1-4) ルーティングテーブルの再確認

全てのルータでルーティングテーブルを再度確認し、コンバージェンスに至っていることを確

かめて下さい。

Router#sh ip route

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(2) 状態の確認

show ip eigrp で始まるコマンドで EIGRPの様々な状態を確認することができます。ここでは

ネイバーテーブルとトポロジーテーブルを確認します。

(2-1) ネイバーテーブルの確認

ネイバーテーブルを表示するには show ip eigrp neighborsコマンドを実行します。実行して

ネイバーテーブルを確認して下さい。

Router#sh ip eigrp neighbors

(2-2) トポロジーテーブルの確認

トポロジーテーブルを表示するには show ip eigrp topologyコマンドを実行します。ただし、

このコマンドではサクセサのエントリしか表示されません。全てのエントリを表示させるには

all-linksオプションを付けて show ip eigrp topology all-linksとします。両方実行してみ

て下さい。

Router#sh ip eigrp topology

Router#sh ip eigrp topology all-links

考察課題2

(2-2)で all-linksオプションを付けなかった場合と付けた場合を比較してエントリの内容に

違いがあるか否か述べなさい。また、どうしてそのようになるか説明しなさい。

(3) コンバージェンスに至る過程の観察

6.OSPFの実験の(3)と同様にしてコンバージェンスに至る過程を観察します。しかし、EIGRP

も素早くコンバージェンスに至るので、どのようにコンバージェンスに至ったかを観察すること

はできないと思われます。今回も素早くコンバージェンスに至ることとコンバージェンスに至る

過程で行われる通信内容の確認を行います。

ルータ A、ルータ B、ルータ Cの順に LANケーブルを抜く/挿しなおすルータを変えて、以

下の(3-1)~(3-6)を繰り返して下さい。

(3-1) ケーブルを抜く

全てのルータで、Enterキーを押すだけでルーティングテーブルを表示できるように、(3-2)の

準備をして、1台のルータの LANケーブルを抜きます。

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(3-2) 繰り返しルーティングテーブルを確認

LANケーブルが抜かれた直後からルーティングテーブルを数秒間隔で表示し、変化する様子

を確認します。これをコンバージェンスに達するまで繰り返し行います。

コンバージェンスに達したら抜いたケーブルを挿しなおします。

Router#sh ip route

(3-3) デバッグモードの開始

EIGRPにもデバッグモードは幾つかあります。そのルータで何が行われているかを観察する

には debug ip eigrpコマンドが使えます。debug ip eigrpコマンドを実行してデバッグ状態に

して下さい。

Router# debug ip eigrp

(3-4) 再度ケーブルを抜く

再度ケーブルを抜きます。そして、全てのルータでメッセージが表示され終わるのを待ちます。

(10 秒前後)メッセージが表示されたら、Enter キーを数回押下して、(3-5)によるメッセージと

区別がつくようにしておきます。

(3-5) ケーブルを挿しなおす

(3-4)で抜いたケーブルを挿しなおします。

(3-6) デバッグモードの終了

全てのルータでメッセージが表示され終わるのを待ちます。(10秒前後)その後、デバッグモ

ードを終了します。デバッグモードを終了するには no debug ip eigrp(または undebug allで

も可)を実行します。

考察課題3

(3-3)~(3-6)で得た情報を整理して、どのような手順を踏んでコンバージェンスに至っているか

説明しなさい。(3回の実験について全て答えること。)

(4) 設定の初期化

今回の実験が最後のテーマとなっています。同じ機材を使用して後日実験を行う人のために、

この実験で設定した内容を消去して、初期状態に戻しておく必要があります。NVRAM に保存し

た内容のみが電源を OFF にしても保持されているので、その内容を消去することになります。

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NVRAM に保存した内容を消去するには、 eraseコマンドで startup 設定を消去します。具体

的には、特権モードで erase startup-configを実行します。すると Erasing the nvram filesystem

will remove all configuration files! Continue? [confirm]のように確認メッセージが表示されますので

Enter キーを押下します。これで NVRAMの内容が消去されます。

続いて reloadコマンドで再起動します。やはり確認メッセージが表示されますので Enterキ

ーを押下します。

Router#erase startup-config

Erasing the nvram filesystem will remove all configuration files! Continue? [confirm]

[OK]

Erase of nvram: complete

%SYS-7-NV_BLOCK_INIT: Initialized the geometry of nvram

Router#

Router#

Router#

Router#reload

Proceed with reload? [confirm]

%SYS-5-RELOAD: Reload requested by console. Reload Reason: Reload Command.

System Bootstrap, Version 1

NVRAM を初期化して再起動すると何も設定されていない状態で起動するので、セットアップ

モードで起動します。以上で全ての実験は終了です。

考察課題4

RIP、OSPF、EIGRPの長所/短所を比較して表にまとめなさい。

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2.IP

2-1 IPとは インターネットでは TCP/IP というプロトコル群が使われています。これらはインターネット

層とトランスポート層のプロトコルです。インターネット層のプロトコルは Internet Protocol (IP)です。IPはネットワーク同士を接続するための機能を提供します。

TCP/IPの下位の層でもネットワークを構成できます。例えばイーサネットで1つのネットワークを構成することができます。しかし、そのネットワークに参加できるコンピュータの台数に

は制限があります。また、ネットワークを構成できる範囲(物理的な距離)にも制限があります。

そのため、小規模なネットワークであれば1つのネットワークとして実現できますが、中規模~

大規模なネットワークを単一のネットワークとして構成することはできません。中規模~大規模

なネットワークは小規模なネットワークを相互に接続することで構成されます。その相互に接続

するための機能を実現するプロトコルの1つが IPです。 複数のネットワークを接続して構成されたネットワークにおいて、パケットを正しい宛先まで

届けるためには、複数のネットワークをまたがって相手を選び出し、相手まで送り届ける必要が

あります。つまり、どのネットワークを経由してパケットを届けるのかを決める仕組みが必要に

なります。その仕組みをルーティング(経路制御)といいます。IPはこのルーティングを実現するプロトコルです。 ネットワーク同士を接続し、ルーティングを行う装置をルータといいます。ルーティングがど

のように行われるのかを、簡単なイラストを用いて説明します。

図2-1 ネットワークをまたいだ通信

イラストではネットワークが A~Dの4つあり、ルータ 1が Aと Bを、ルータ 2が Bと C、Dを接続しています。このネットワークにおいてネットワーク Aのホスト 1からネットワーク Cのホスト 2までパケットを届ける手順は次のようになります。なお、IPではネットワークに接続した機器を識別するために IPアドレスを使います。したがって、ネットワークに接続する機器には(インターフェース毎に)IPアドレスを設定する必要があります。また、IPのパケットには送信元の IPアドレスと宛先の IPアドレスが含まれています。