急性心筋梗塞,梗 塞切除時に於 ける血圧波形

による心機械効率の実験的考察

岡 山大 学 第2外 科教 室(主 任:寺 本 滋 教 授)

小 坂 田 和

(昭 和54年2月27日 受 稿)

Key words:心(筋)機 械 効率,心 筋梗 塞切 除 術,

心 機 能 指 標, Tension-Time Index.

第1章　 緒 言

心 筋 梗 塞 部 が心 室 瘤 を形 成 した り,不 協 調 運動

(asynergy)と な り,血 行動 態低 下,心 不 全 の 原 因 と

な る場 合 や,梗 塞 一 健 常 移 行 部(twilight zone)の

電気 生 理 的不 安 定 に よ る重 篤 な不 整 脈 発生 予 防 目的

な どに心 筋梗 塞切 除術 が 行 なわ れ効 果 を あげ て い る.

その効 果 に 関 して,術 後の 心 仕事 量 増加 に つ い て は

Heimbecker1)がSarnoffら2)の 心 室機 能 曲線 を用 い

て報 告 し,術 後 の心 室 細 動 閾 値 の 向上 につ いて は平

塚 ら3)が 電 気刺 戟 発生 装 置 を用 い て報 告 して い る.

著 者 は実 験 的 に心 筋梗 塞 部 の切 除 縫合 を行 な い,

Sarnoff, Braunwaldら4) 5) 6)の 述べ て い る “収縮 期

左 心 室圧 曲線 又 は 大動 脈圧 曲線 下 面積(Tension-

Time Index, TTI,張 力時 間 指数)は 心 拍 数,大 動

脈圧,心 拍 出量 の 調 節 下 に,心 筋酸 素 消 費 量(MVO2)

と相 関 を もつ ” とい う研 究 成 果 を基 礎 と して,切 除

縫 縮 され た心 臓 自身 の 生理 的影 響 をみ る ため 血 圧 波

形 よ り下 記 の如 き指 標 を構 成 した.

即 ち電磁 血 流計 か ら一 回心 拍 出 量(SV)を 求め,

一 回心 仕事 量 を計 算 し,収 縮 期 左 心 室圧 曲線 下(時

間)面 積(TTI)で 除 し た比 率(SW/TTI)を 効 率

指 標 と して計 算 した.更 にFrank-Staring機 構7) 8,a)

に よ り,循 環 量 の 影 響 を大 き く受 け る心 拍 出量(SV)

で除 してSW/(TTI-SV)や 更 に 駆 出期 大 動 脈圧 曲

線下(時 間)面 積 と収 縮期 左室 圧 曲 線下(時 間)面

積 の 対 比, ETCI・SW/(TTI・SV), (ETCI:駆 出 時 間

の補 正 値)な どに よ って心 機 械 効 率 の推 測 を試 み た.

第2章　 実 験 方 法

第1節　 実 験 装 置 と材 料

体 重7～20kgの 雑 種 成 犬23頭 を用 い, sodium pe

ntbarbital 25-30mg/kgを 静 脈麻 酔 し,気 管 内 挿 管

後,大 気 下 人工 呼 吸器 に接 続 して 左 第5肋 間 を で き

るだ け 少な く開 胸 し,心 臓 を 自然 の位 置 に保 ち,室

温22℃ 以 下 の と きは保 温パ ッ クを用 い て保 温 に つ と

め る よ うに し,図A-1の 装 置 を用 いて 実 験 した 。 大

動 脈起 始 部 を剥 離 して電 磁 血 流 計 プ ロー ブ を装 着 し,

上行 大 動 脈,左 室,右 房 内 に そ れ ぞ れ大 腿 動 脈,頸

動 脈,大 腿 静 脈 か ら圧 測定 用 の カ テー テル9)を 挿 入

し,ト ラ ン スデ ュー サ ー に 接 続 した.ま た左 室 前 壁

表 面虚 血 部 及 び 対 照部 に脚 距 離10mmの 変 位 型 心 筋 収

縮 力計 の ピ ッ クア ップ(strain gauge arch)を 縫 着

した10).こ れ らは 凡 て三 栄 測 器polygraph l42-8

に接 続 され, visigraph FR-102に よ りペ ー パー ス

ピー ド12.5cm/secに て感 光 記録 され た.

右房 圧 を一 定 に保 つ よ うに ラ ク トリン ゲル 液 に て

補 液 し乍 ら図A-2のa)か らg)の 順 に操 作 を行 ない

夫 々次 の如 く名付 け た.

(a)対 照 期(Control stage, Intact stage)

開 胸 し,諸 測 定装 置 の装 着 以 外 の侵 襲 は行 なわ ず,

各 種 測定 を行 ない,各 例 の その 後 の 測定 値 に対 す る

control値 と し て100で 表 わ した 。本 論 文 に 於 いて

この 期 の測 定 値 を術 前値 と称 す る.

(b)不 完 全 間 歇 的 閉塞 期(Incomplete & Inter

mittent occlusion stage, Constriction stage)

左冠 状動 脈 前 下 行枝 の 回旋 枝 との 分 岐 点 よ りma

rginal branchの1小 枝 を残 して(上 記 分 岐 点 よ り

4・5mm末 梢),左 前 下行 枝 基 部 近 くに 糸 をか け た .

数 秒 乃 至数 十 秒 糸 をか る く締 め,不 整 脈 が 出 は じめ

る と数 分 間解 放 した.こ の よ うな操 作 を段 階 的 に数

回繰 返 した 後,閉 塞 して か ら測定 し た.こ の期 に は

637

638 小 坂 田 和

急性心筋梗塞 ・梗塞切 除実験測定装置

図A-1

急性心筋梗塞・梗塞切 除.実験段階及 び手技

図A-2

閉 塞部 末梢 の 心 筋 にcyanosisを 認 め た り,心 筋 収

縮 力 計 に て収 縮 波 にasyneresis(非 協調 運 動)が と

き ど きみ られ た.

直 ちに 閉 塞 した場 合 の 一般 に 云 われ て い る 急性 致 死

率 約65%に 対 し,こ の方 法 を用 い た約40犬 に於 い て

は30分 以 内の 急性 致 死率 は 約47%と い う結 果 を示 し

た.

(c)周 囲結 紮 期(Circle ligation stage)

前 記 左 前下 行 枝 の 末梢 の 左室 前 壁 に,深 さ が 心 筋

中層 に充 分 糸 がか か る よ うな 周刺 結 紮 の列 を環 状 に

作 っ て無 血 流 野 を作 っ た.こ の部 はcyanosisを 呈

し,心 表 面 温 度 は対 照部 に 比べ て約0.5～2℃ 低 下 し

た.心 筋収 縮 力 計 に て収 縮 波 はasineresis, dyski

nesis(収 縮 期 に 局所 の 膨隆),又akinesis(無 収

縮)な ど実 験 例 に よ って 多様 性 を示 し,ま た そ

れ らが 混在 す る事 も あ った.

(d)多 数結 紮 期(Poly-ligation stage)

上 記circle ligationの 内 側 の 中 層 に 充分 達 す

る深 さに て十 個 乃 至 十 数 個 程 度 の 周 刺 結紮 を行

った.こ の結 果 無 収 縮 部 分(akinetic area)と

な り,心 筋収 縮 力計 の収 縮 波 は 減 高 した り平坦

に近 くな る こ と もあ っ た.こ れ は 臨 床 に於 け る

陳 旧性 心 筋梗 塞部 の線 維 組 織 化,瘢 痕 化 な ど に

対応 され る と考 え られ る.

(e)心 筋 梗 塞部 切 除期(Infarctectomy sta

ge)周 囲 結 紮 の 内側 に於 いて,心 筋 破 裂 を来 た さ

な い程 度 に深 く広 く切 除す る.心 筋収 縮 力 計 ピ

ッ クア ップ を取 りは ず し,再 び 縫 い つ け て 装

着 した.心 筋収 縮 力 計 の収 縮 波 はdyskinesisが

み られ た.

(f)心 筋梗 塞 部切 除縫 合期(Infarctectomy+

suture stage)

前段 階 に於 け る心 筋 の切 痕 を縫 合 後 の 適 合 が

よ い よ うに切 除 しなお し,縫 合 糸 を刺 入 して お

き,上 下 大 静 脈 を30秒 乃 至 最 大 限3分 間以 内 の

閉塞 に よ り,切 除部 を結 紮,縫 合 した11).

(g)冠 状 動 脈 左前 下 行 枝 基 部 の 結紮

心 筋梗 塞 切 除術 と同時 に 冠 状 動 脈再 建 吻 合 術

を行 な っ た場 合 を想定 して,左 前 下 行枝 を再 閉

塞 して効 果 の テ ス トを行 な っ た.

第2節　 測 定項 目

測 定 項 目につ い て 若干 の 説明 を加 え る と,一

回心 拍 出 量(stroke volume, SV):電 磁 血 流計 日

本 光 電MF25型 に よ る 各波 形 を沖 野 ら12) 8-a,b)の

見解 に基 づ い て立 上 り水 準 線 を基 線 としてpla-

nimeter(面 積 計)に て計 測 し,電 磁 血 流計 の原 理に

基 づ く下 記の 式 で一 回心 拍 出量 を実 測 した.

SV=校正 巾に相当す る分時流量 目盛×波形面積

/校正 巾×ペーパー スピー ド(cm/sec)×60

更 に心 筋100g当 り として 計 算 し表 示 し た(SV100,特

に 区 別 す る必 要 の な い とき はSVと 表 示)

一 回 心仕 事 量(stroke work , SW)8-c): SVと 同 じ

く心 筋100g当 りで, SW100又 はSWと 表示,単 位 は

gram・Meter, g・M), SWは 次 の 計 算 式13)に よ り求

め る(図A-5参 照).

SW=SV・(MEAOP-LVEDP)

=SV・(APCI-m+AParN/ET-LVEDP)

急性心筋梗 塞,梗 塞切 除時に於け る血圧 波形 による心機械効率 の実験 的考察 639

MEAOP:駆 出期 平 均 大 動 脈 圧(=APCI-m+AParN/ET).

LVEDP:左 室 拡 張 末期 圧

APCI-m:大 動 脈 圧(AOP)曲 線 立 上 りか らnotch8-a,b) 14)

を結 ぶ 線 分(Cibulski線 分15),仮 称)の 中

点 に於 け る大動 脈圧 。

AParN:同 上 線 分 とAOP曲 線 で曲 まれ る 面積

にて 求 め られ る.

収 縮期 左 室 圧 曲 線下 面積,〔LVP Tension-Time

Index, TTI(LVP), g・M・sec・(cm-2 in LV)〕:著 者 は

心 電 図R棘 か ら, Cibulski線 分 と左 室 圧 曲 線 の 交

点 に 至 る迄 の期 間 の 左 室圧(LVP)曲 線下 の 面 積,

(図A-6),が 原理 が一 般 的 に適 用 し易 く,又AOP

曲線 下 面積 との 対 比 をす る と き理 論 的 に さ して無 理

もない の で 用 い た.

蔵 本16)が “心 筋 酸 素 消 費 量 が心 仕 事 量 よ りも心 筋 の

張 力 とよ く相 関 す る とい う事 は心 筋 の収 縮 要 素 の 消

費 す る エ ネ ル ギー が 血 液 の駆 出 とい う外 的仕 事 の な

され る前 の心 筋 張 力 を高 め る等 容 収 縮 期 に最 大 であ

る こ とに基 ず く” と述べ て い る よ うに,左 室TTI

を以 下 の等 容 収 縮 期 そ の 他 に分 け て 計 測 してみ た.

等 容収 縮 期 左 室 圧 曲 線 下 面積 〔Integral Isomet

ric Time Tension Index, IITα, g・M・sec・(Cm-2

in LV)〕 上 田17), Siegel & Sonnenblickら18)(図

A-3, A-4)の 如 く心電 図R棘 か らmax dp/dtに 達

す る迄(t)の1.5倍 の 時 点 迄 を計 測 範 囲 と して 採 用

す れ ば,そ の点 は図A-4のP点 とな り,左 室 圧 の

peakよ り も 後の 時 点 とな る事 が 時 々 み られ た.こ

れ はBurch19), Dodge20)ら の 左 室 圧 一 容 量 曲 線 で

は等 容 収 縮 期 の後 に左 室 圧peakが 来 る事 と矛 盾 し

た.そ こで カ テー テル の 圧伝 播 遅 れ(10～20ms)5)

の20msを 考 慮 し, (R～max dp/dt-20ms)×1.5

の 時点 を採 用す れ ば,そ の 点Qは,図A-4-2の 如 く

Inax dp/dtの 近 くか,図A-4-1の 如 くmax dp/dt

の前 方 に 来 る事 も時 々 起 こ り,結 果 が や は り先 述 の

Siegelら の理 論 に抵 触 す るの で, (R～max dp/dt)

×1.5-20msを 計 測 範 囲 と して採 用 す る と,そ の 時

点 αは大 部 分 に於 いて 大 動 脈弁 開放 か ら左 室圧peak

の期 間 内 に 来 て上 記 矛 盾 を示 さ なか った.

等 容 収 縮期 左 室 圧 曲 線 下大 動 脈 弁 開放 迄 の 面 積,

〔IITβ, g・M・sec・(cm-2 in LV)〕:同 上 で大 動 脈

弁 開 放 迄 の 面積,(図A-3)。

等 容 収 縮期 左 室 圧 曲 線 下面 積 と同 曲 線下 大 動 脈 弁

開放 迄 の 面積 の 差,〔IITα-β, g・M・sec・(cm-2 in

LV)〕:前2者 か らIITα-IITβ とし て求 め られ る.

駆 出期 左 室圧 曲線 下 面積,〔TTILVE, g・M・sec・

(cm-2 in LV)〕:前 述 のTTI-IITβ=TTILVEと し

て 求め られ る(図A-3, A-6).

駆 出期 左 室 圧 曲 線下 面積 と大 動 脈 圧 曲 線 下 面 積

(但 し左 室 拡 張 末期 圧 に相 当す る面積 を差 引 い た面

積)の 差,即 ち

TTILVs-TTIAE-L,〔g・M・sec・(cm-2 in LV)〕

TTIAE-L:駆 出 期 大 動 脈 圧 曲 線 下 面積-左 室 拡 張 末 ※

等 容 収 縮 期 左 心 室 圧 曲線 下 時 間 面 積(I. I. Tα)

同 上 大 動 脈 弁 が 開 く迄 の 面 積(I. I. Tβ)

上 記2面 積 間 の 差(I. I. Tα-β)

(一部上田, Sigelら 引用)α点: (ECGR棘-maxdp/dt)時 間 ×1.5

-20ms

β点: AO弁 開放

図A-3

図A-3, A-4の 説 明

IIT areaの 求 め方 として,上 田17), Siegel & So-

nnenblick18)ら の 如 く, ECGR棘 か らmax dp/dt

に 達 す る迄(t)の1.5倍 の 時 点 迄 を 計 測 範 囲 と し

て 採 用す れ ば,そ の 点 は 図A-4のP点 とな り,左 室

圧 のpeakよ りも後 の 時点 と な る事 が 時 々み ら れ,

Burch19), Dodge20ら のPressure-volume曲 線 な ど

と も矛盾 す る.ま た(t-20ms)×1.5の 時 点 を採 用

す れ ば,そ の点Qは,図A-4-2の 如 くmax dp/dt

の 近 くか,図A-4-1の 如 くmax dp/dtの 前 方 に 来

る事 も時 々起 こ り,結 果が や は り先 述 のSiegelら

の 理 論 に 抵触 す るの で, (R～max dp/dt)×1 .5

-20msを 計 測 範 囲 と して採 用 す る と,そ の 時 点 α

は 大 部分 に於 いて 大動 脈弁 開放 か ら左 室 圧peakの

期 間 内 に 来 て上 記 矛 盾 を示 さ なか っ た.

640 小 坂 田 和

図A-4

※ 期 圧 ×駆 出期 間,(図-A-3, A-6).

即 ち, TTIAE-L=ETCI・(MEAOP-LVEDP).

Vmax21) 22):田 宮,堀 ら23)の 方 法一 左室 圧Pとdp/

dt/Pの 高 速 度 並 列 記 録 か ら作 図 に よ りVmaxを 決

定 し た. Masonら24)の 心 筋収 縮 要 素 の 短縮 速 度

VCE=dp/dt/KP, (K=定 数32),単 位ML・sec-1,

(Musc1e Legth/sec)を 用 い た.

dp/dt/P5025)26-a,b):左 室 圧50mmHgに 於 けるdp/

dtを そ の左 室 圧 で 除 した数 値 で 単位 はML・sec-1を

用 いてVmaxと 統一 し たが ×32と す れ ば一 般 に よ

く用 い られ る単 位sec-1と な る.

第3節　 測定 時 間及 び 測 定値 の 表 わ し方

各期 操 作 後30分 の 測定 値 を統 計 に採 用 した27).こ

れ は蔵 本 ら28) 29)の云 う反応 性 充 血が 一 応 終 わ り,か

っBenjamin30)の 云 う心 室性 不 整 脈 のearly phase

が 一 応鎮 静 す る時 期 で あ り31),そ して 水谷32)の 云 う

心 表 面心 電 図の 急 激 な 変 化 の一 応 終 っ た時 期 で あ る.

ま たCaulfie1d33)は “血流 遮 断数 分 後に 心 筋 グ リ

コー ゲ ン顆 粒 が 消失 し, 10～20分 後 に ミ トコ ン ドリ

ヤ の 非可 逆 性 の 膨化 が お こ る.電 顕 的 に は これ よ り

は や く変 化 が お こ る” と述 べ て い る.

また 各種 測定 値 間 の比 較 の 便 宜 上,各 実験 犬の 術

前 測 定 値(intact値)を それ ぞれ のcontrol値 と し,

そ の後 の 操 作 を行 った 各 期 の 測定 値 を% scoreで 表

わ し,算 術 平均 ±標 準 誤 差(M±SEM)と して表 示

した.

第4節　 有 効群 無 効 群 別 判 定

心 筋切 除縫 合 後, 6時 間, 12時 間 で犠 死 し た もの

も あっ たが,心 筋切 除縫 合 後30分 の 左 室圧,大 動 脈

圧 に対 し,更 に1時 間, 2時 間後 の 測 定値 の低 下 し

な い の を有効 群(effective group, e. g.)と し,低 下

したの を無効 群(not effective group, n. e. g.)と し,

各 群5頭 つ つ を統 計 に採 用 した.

第5節　 統 計採 用 犬 の 解 剖

体重7.0～15.3kg,平 均10.9±0.7kg,心 重 量54～112

g,平 均85.6±5.6gで あ っ た.

急性心筋梗塞,梗 塞切 除時に於け る血圧波形による心機械効率の実験的考察 641

circle ligationの 面積 は左 室 自由 壁 の

13.7～25.2%平 均17.8±1.6%,但 し心 筋

切 除縫 合 時 は この5.6mm外 周 を囲む よ うに

止血 を兼 ね た縫 合 糸 をか け て い るの で,

左室 自由 壁 の約10%が 無 収縮 部 分 と して

残 った34) 35) 36) 37) 38)8-d).

Peak左 室 圧(LVP)はcontrol値 に対

して術 後 値 は,有 効 群88.4±5.9% (P<0.2),

(術 前 実 数155±8.6mmHg,術 後135±5.7

mmHg)を 示 した.無 効 群 の術 後値 は57.6

±4.2% (P<0.01),(術 後 実 数148±8.2

mmHg,術 後, 94.4±10.7mmHg)を 示 した.

両 群 の術 後 値 を比較 す る と無 効 群 が低 値

を示 した(P<0-01).

左室 拡 張 末 期 圧(LVEDP)43)はcont

rol値 に対 して有 効群 無 効 群 と も術 前 後 で

有意 差 は なか った.こ の 指標 は 左室 拡 張 末

期 張 力 を表 わ し,心 不 全 時 に上 昇す ると云

われてい るが,こ の場 合 左 室 圧 の 低下 も影

響 して い る ように 考 え られ たの で, LVE-

DP/peak LVPを 指 標 とす る と, control

値 に対 して術 後 値 は 有効 群 で は 差 が な く,

無 効群 で は少 し増加 傾 向 を示 した(P<

0.2).且 つ 両 群 の術 後値 間 に も有 意差 は

なか っ た.

左 室 壁 表 面 温度44)(健 常 部,空 気 接 触

面),は 術 前 実数 は平 均 約35℃ で,術 後 は

平均 約1℃ 位 の低 下 傾 向 が あ っ た.

右 房 圧(RAP)は 心 筋切 除 直後 の 無 効

群 を除 いて,全 経 過 を通 じて 殆ん ど変 化

しなか った.

脈 拍 数(HR)はcontrol値 に対 し術後

値 は,有 効群92.0±6.4%(N-S),(術 前

実数181±8.5回/分,術 後167±14回/分),

無効 群 の 術 後値 は94-3±11.5%(N-S),

(術 前実 数156±12.1回/分,術 後, 162±

12.3回/分 〉を示 した.両 群 の 術後 値 間 に

有意 差 は な か っ た.

ETCI(駆 出 時 間ET45)46)の 補 正 値)は 図B-15

に示 す よ うに 全経 過 を通 じて 有効 群 無 効群 ともcont

rol値 に対 し有 意差 の な い小 変動 を示 した.か つ両

群 間 に も殆 ん ど差 を示 さな か っ た.又ETCIとET

とは全 経 過 を通 じて よ く似 た数 値 を示 した.

第2節　 心 筋 短 縮 速 度(収 縮 力).(図B-3, B-4),

(表-1)

第3章　 実 験 結 果39) 40) 41) 42)

第1節　 一 般 的 心機 能(図B-1, B-2),(表-1)

急性 心筋 梗 塞 ・梗 塞切 除 各Stage別 心 機能-一 般 的 な もの

各例control値 を100と し,各 期 を%で 表示1

1:左 心童圧 〔LVP〕. 2:Haerl rate〔HR〕, 3:左 心室表面温度,(空 気接触面)実数値 ℃

図B-1

急性 心 筋 梗 塞 ・梗 塞 切 除 各Stage別 心 機 能-前 負荷 と関連するもの

各例control値 を100と し,各 期 を%で 表示

1:左 霊拡張末期圧 〔LVEDP〕, 2:LVEDP /左 室Peak Pressure,

3:右 房圧 〔RAP〕

図B-2

左室max dp/dt47)はcontrol値 に対 し術 後 値 は,

有効 群89.3±6.9%(P<0.3)を 示 した.無 効 群60.0

±8.5%(P<0.05)を 示 し た.両 群 の 術後 値 を比 較

す る と無 効群 が 低 い傾 向 を示 した(P<0.1).

dp/dt/P50,(表-2,表-3),はcontrol値 に 対

して 術 後値 は有 効群89.7±6.1%(N. S),〔 術前 実

数3.80±0.34 ML・sec-1(又 は ×32・sec-1),術 後,

642 小 坂 田 和

表-1

control (intact)期及び心筋梗塞切除後の心機能諸指標の実数値

3.46±0.42ML・sec-1〕,無 効 群 の 術

後値 は60.6±11.6%(P<0.05),(術

前 実 数3.50±0.21ML・sec-1,術 後,

2.15±0.53ML・sec-1),を 示 し た.

両群 の 術 後値 を比較 す る と無 効 群 が

低 値 を示 した.(P<0.05).

左 室Vmaxは カープ決 定や 接 線 作

図 の 困難 性 が あ っ た. control値 に

対 して 術 後値 は,有 効 群97.3±4.5%

(N-S),(術 前 実 数5.31±0-35ML・

sec-1,術 後, 5.12±0.31ML・sec-1),

無効 群 の術 後 値 は80.0±3.0%(P<

0.05),(術 前 実数5.34±0.47ML・

sec-1,術 後, 4.38±0.45ML・sec-1)

を示 した.両 群 の 術 後値 を比 較 す る

と無 効群 が 低 値 を示 した(P<0.05).

max dp/dt, dp/dt/P50, Vmaxは

全 経 過 を通 じて大 体 似 た傾 向 を示 し,

control値 に対す る術 後値 の% score

は有 効 群 で は 有意 差 は な か っ たが,

無効 群 では 有 意差 を以 って低 下 した.

ま た後 負荷 の 影響 の 最 も少な いVmax

が他 の2者 に 比 しや や 低 下 が 少 な い

傾 向が あ った.

dp/dt/IITα は 分母 のIITα 計 測上

の不 安 定 性 か らば らつ きの 多 い数 値

を示 した.

急性心筋梗塞 ・梗塞切 除 各Stage別 心機能-心 協短縮速度(収 縮力)を

評価する指標 各例control値 を100とし,各期を%で 表示

1: LV max-dp/dt〔dp/dt〕, 2: ECGR韓 よ りmax-dp/dtに 至 る 時 間 〔T-max dp/dt〕,

3: LVP 50mmHgに 於 け るdp/dtをLVPで 除 し た値 〔dp/dt/P50〕

図B-3

急性心筋梗塞・梗塞切除 各Stage別 心機能-心 筋短縮速度〔収縮力)を評価する指標

各例control値 を100と し,各 期を%で 表示

1: LVP 50mmHgに 於けるdp/dtをLVPで 除した値 〔dp/dt/P50〕. 2: dp/dt/PのLVP=0の ときを仮定した理論値.〔Vmax〕

3: dp/dt/Isomotric Time-Tension Index〔dp/dt/I. I. T〕

図B-4

急性心筋梗 塞,梗 塞切 除時に於け る血圧波形に よる心機械効率の実験的考察 643

第3節　 心 臓 ポ ンプ機 能(図B-5,

B-6),(表-2,表-3)

一 回心 拍 出量 はcontrol値 に対 し

て術 後 値 は,有 効 群70.3±10.2%(P

<0.1),(術 前 実 数4.78±0.46,術 後,

3.12±0.54ml)を 示 した.無 効 群 の

術後 値 は41.1±5.4%(P<0.01),

(術 前 実数4.31±0.42ml,術 後1.48

±0.32ml)を 示 した.両 群 の 術 後 値

を比 較 す る と,無 効 群 が 低 い傾 向 を

示 した(P<0.1).

一 回心 仕事 量, control値 に 対 し術

後値 は,有 効 群59.4±9.8%(P<

0.05),(術 前実 数6.96±0.57g・M,

術 後, 4.0±0.6g・M),を 示 した.無

効群 の 術 後値 は21.5±5.5%(P<

0.01),(術 前実 数5.95±0.65g・M,

術 後1-37±0.37g・M),を 示 した.

両群 の 術 後値 を比 較 す る と無効 群 が

低値 を示 した(P<0.05).

SVとSWの 術 後 値(control値 に

対す る% score)を 比較 す る と,有 効

群 で はSWが やや 低 め で あ るが 有意

差 は なか った(N-S).無 効 群 では,

SV>SW(P<0.1)を 示 した.

毎 分 心拍 出量(CO100又 はCo)と

毎分 心 仕事 量(CW100又 はCw)と

は それ ぞれSV, SWに 対 応 して よ く

似 た変 化 を示 した.こ れ ば心 拍 数 が

全経 過 を通 じて変 動 が 僅か で あ っ た

事 に よ る もの で あ ろ う.

急性心筋梗塞 ・梗塞切除 各Stage別 心機能一ポンプ機能を評価する指標

各例control値を100と し,各期を%で 表示

1: Stroke Volume〔SV〕, 2: Stroke Work〔SW〕

図B-5

急 性 心筋 梗 塞 ・梗塞 切 除 各Stage別 心 機 能 一ポンプ機能 を評価 するもの

各例control値 を100と し,各 期 を%で 衰示

1: Csrdiec Work〔CW〕2: Cardiac Out Put〔CO〕

図B-6

Control値(100)に 対 す る心筋 梗 塞切 除後 の% Score及 びT検 定

表-2

644 小 坂 田 和

表-3

control (intact)期及び心筋梗塞切除後の心機能諸指標の実数値 心筋100g当 リ

第4節　 心筋 張力 を表 わ す(心 筋energy

消費 を大 き く反 映 す る)指 標

(図B-7, B-8, B-9),(表-2,表-3).

TTI48), IITα, IITβ,以 上 の3者 は 全経

過 を通 じて ほぼ 同様 の 経過 を示 した. con

trol値 に 対す る 術後 値 の% scoreは,有

効 群 で は 何 れ も有意 差 の な い 減 少傾 向 を

示 す の み だ っ た が,無 効群 で はTTI57.4

±6.8%(P<0.0l), IITα=54.8±7.1%

(P<0.01), IITβ=40.3±9.3%(P<

0.01)を 示 した.か つ 有 効,無 効 群 の 術

後値 を比 較 す る とTTIはP<0.1, IITα

はP<0.1, IITβ はP<0.05で 何 れ も無

効 群 が 有効 群 よ り も低 値 を示 した.

IITα-β はcontrol値 に 対 して術 後 値 は,

有効 群93.6±10.6%(N. S),無 効 群72.4

±13.9%(P<0.1)を 示 し,両 群 の 術 後値

の 間 に 有意 差 は な か っ た.

TTILVEはcontrol値 に 対 して術 後 値

は,有 効 群85.3±8.3%(P<0.2),無 効

群60.4±7.9%(P<0.01)を 示 し,両 群 の

術 後値 を比 較 す る と無効 群 が 少 し低 い傾

向 を示 した(P<0.2).全 経 過 中TTILVP

と似 た経 過 を示 した.

TTILVE-TTIAE-Lはcontrol値 に対 し

て 術 後値 は,有 効群55.6±5.6%(P<

0.05),無 効 群46.4±12.2%(P<0.05)を

示 し,両 群 の 術 後値 間 に有 意 差 は み られ

なか っ た.こ れ らの指 標 の 比 率 をみ る と,

IITα/TTILVPはcontrol値 に 対 して術 後

急性心筋梗塞・梗塞切 除 各Stage別 心機能・心筋energy消 費 を反映すると

みな され るもの 各例control値 を100と し,各期を%で 表示

1: Tension-Time Inde.〔T. T. I〕, 2: Isometric Time-Tensian Index〔I. I. Tα 〕,

3: AO弁open迄 のI. I. T〔I. I. Tβ 〕, 4: I. I. Tα-I . I. Tβ 〔I. I. Tα-β 〕

図B-7

急 性 心 筋 梗 塞 ・梗 塞 切 除 各Stage別 心 機 能-Tension-Time Index

各 区分 の 比 率 各例control値 を100と し,各期を 錫で表示

1: I. I. Tα/T . T. I. 2: I. I. Tβ/T. T. I.

図B-8

急性心 筋梗塞,梗 塞切 除時に於け る血圧波形に よる心機械効率の実験的考察 645

値 は,有 効 群102±3.6%(N. S),無 効 群

98.0±12.5%(N. S),を 示 し,両 群 の 術

後 値 間 に 有意 差 は なか っ た.

IITα-β/TTIはcontrol値 に対 して 術 後

値 は,有 効 群113±10.7%(N. S),無 効 群

139.4±14.5%(P<0.1),を 示 し,両 群

の術 後 値 を比較 す る と無 効 群 がや や 高 い

傾 向 を示 した(P<0.2).

IITαβ(=IITα/IITβ)はcontrol値 に対 し

術 後 値 は,有 効111±5.9%(N. S),無 効

群132.9±16.9%(P<0.2),を 示 し,両

群 の 術 後値 間 に 有 意 差 は なか っ た.

第5節　 心 機 械 効 率 の推 測

(図B-10, B-11),(表-2,表-3)

一 回心 仕事 量/収 縮 期 左 室 圧 曲線 下 面

積, (SW/TTI),はcontrol値 に対 して

術 後値 は,有 効 群61.0±3.4%(P<0.01),

無効 群38.6±8.5(P<0.01)を 示 し,両

群 の術 後値 を比 較 せ る と無効 群 が 低 い 傾

向 を示 した(P<0.1).さ らに これ をSV

で除 したSW/(TTI・SV)は, control値

に 対 して術 後値 は 有効 群101±6 .4%(N. S),

無効 群68.9±12.0%(P<0 .1)を 示 し,両

群 の術 後 値 を比 較 す る と無効 群 が低 値 を

示 した(P<0.1).

一 回心 仕 事 量/左 室 拡 張 末 期 圧, (SW/

LVEDP),はcontrol値 に 対 して術 後 値

は,有 効 群55.9±6.5%(P<0.01),無

効群26.0±7.4(P<0.01)を 示 し,両 群

の 術後 値 を比較 す る と無 効群 が低 値 を示

した(P<0.05).さ らに これ をSVで 除

した, SW/(LVEDP-SV)はcontrol値

に対 して術 後値 は,有 効 群87.9±11.5%

(P<0.01),無 効群57.7±12.6%(P<

0.05)を 示 し,両 群 の術 後 値 を比 較す る

と無効 群 が 少 し低 い傾 向 が み られ た(P

<0.2).

急 性心筋 梗 塞 ・梗塞 切除 各Stage別 心 機能-Tension-Time Index

各区 分の比 率 各例control値 を100と し,各期を%で 表示

1: I. I. Tα/I. I. Tβ, 2: I. I. Tα-β/T. T. I.

図B-9

急性 心筋 梗塞 ・梗 塞切 除 各Stage別 心 機能-心 機械 効率

各例control値 を100と し,各 期 を%で 表示

1: Stroke Work/Tension-Time index〔SW/T. T. I〕. 2: Stroke Work/(T. T. I. Stroke Volume)〔SW/(T. T. I.-SV)〕

図B-10

急性心筋 梗塞 ・梗 塞切 除 各Stage別 心機能-心 機械 効率

各例control値 を100と し,各期を%で 表示

1: Stroke Work/Left Ventricle Enddiastolic Pressure〔SW/LVEDP〕, 2: SW/(LVEDP-Stroke Volumn)〔SW/(LVEDP・SV)〕

図B-11

646 小 坂 田 和

心 機 械 効 率 を 推 定 す る 指 標 の 血 圧 波 形 上 の 説 明

(i) SW/T. T. I.

(ii) SW/(T. T. I.-SV)=(MEAOP-LVEDP)/T. T. I.

(iii) SW/(LVEDP-SV)=(MEAOP-LVEDP)/LVEDP

(iv) SW・ETCIT, T. I.=ETCI・(MEAOP-LVEDP)/T. T. I.(ETCIの代りにETにても可)

MEAOP: 駆 出期平均

大動脈圧

LVEDP: 左室拡張

末期圧

T. T .ILVP: 収縮期

左心室圧曲

線下時間面積

ETCI: 左心室駆出

時間(補正)

ET: 駆出時間

図A-5,図A-6

一 回心 仕事 量: SW=SV・(MEAOP -LVEDP)

=SV・(APCI -m+AParN/ET-LVEDP)

APCI-m: 大動 脈 圧(AOP)曲 線 立 上 りか ら

notch8),14)を 結 ぶ 線 分(Cibulski線 分15),仮

称)の 中 点 に於 け る大動 脈 圧,

AParN: 同上 線分 とAOP曲 線 で囲 まれ る面積 ,

ETCI: Cibulski線 分の開始点 と,同 線分

と左室 圧 曲線 との交点か ら基線にお ろし

た両垂線間に相当する時間 として求め る.

APCI-m+AParN/ET=MEAOP

図A-7-1

control期 に於 け る 各波 形

図A-7-2

Infarctectomyの み に於 け る各 波 形 の計

測 に 基 ず く測 定値 のcontrol値 に対 す る

% score, peak LVP 77 .2%, SV71.5%,

SW57.9%, SW/TTI81 .6%, SW/(T

TI・SV)82.1%, SW/LVEDP69.0%,

SW/(LVEDP・SV)78.4%, ETCI・SW/

(TTI・SV)77.0%を 示 す.

図A-7-3

Infarctectomy+suture期 に於 け る各 波

形 面積 の 計 測 に 基ず く測定 値 のcontrol

値 に対 す る% score, peak LVP 66.3%,

SV 50.1%, SW 32.0%, SW/TTI60.0

%, SW/(TTI・SV)56.9%, SW/LVEDP

47-8%, SW/(LVEDP・SV)93.2%,

ETCI・SW/(TTI・SV)65.3%を 示 す .

図A-7

急性心 筋梗塞,梗 塞切除時に於 ける血圧波形に よる心機械効率の実験的考察 647

駆 出 期 大動 脈 圧 曲 線 下 面積/収 縮

期 左 室 圧 曲線 下 面 積,〔ETCI-SW/

(TTI-SV)〕,は 図B-16に み られ る如

く,全 経 過 に わ た って あ ま り変動 が

み られ な か っ た. control値 に対 して

術 後値 は,有 効 群 は101±3.4%(N.

S),で 差 を示 さ なか った.無 効 群 は,

78.9±5.0(P<0.05)に 低 下 した.両

群 の術 後 値 を比較 す る と,有 効 群 に

対 して無 効群 は低 値 を示 した.(P<

0.05).

ETCI(駆 出時 間の 補 正 値),(図A-5,

A-6)の 代 わ りにET(駆 出 時 間)を

用 い た指 標.

ET-SW/(TTI-SV),〔=ET・(M

EAOP-LVEDP)/TTI〕,は 図B-15

に示 す よ うに 全 経過 を通 じて 有効,

無効群 ともcontrol値 に 対 し有 意 差

の な い小 変 動 を示 した.か つ 両群 間 に も殆 ん ど差 を

示 さな か っ た.

ETとETCIと は 全 経過 を通 じて近 接 した数 値 を示

した.

先 にSW/TTIを 計 算 したが, TTI群 に対 す る

SVの 比 率 関係 をみ れ ば(図B-12),

SV/TTIはcontrol値 に 対 して 術 後値 は,有 効

群84.3±10.8%(P<0.3),無 効 群84.7±6.6%(P

急性 心 筋 梗 塞 ・梗 塞 切 除 各Stage別 心 機 能-PumP効 率

各例control値 を100と し,各 期 を%で 表示

1: Stroke Volume

/I. I. TとAO弁 開(迄のI. I. Tの差 〔S.V/I. I. Tα-β〕

2: S. V/くIsometric Time-

Tension index〔S. V/I. I. Tα 〕

3: 5.V/T. T. I.

図B-12

<0.1),を 示 し,両 群 の術 後 値 間 に有 意 差 は な か っ た.

SV/IITα はcontrol値 に 対 して術 後 値 は,有 効

群84.1±11.8%(P<0.3),無 効群74.9±5.6%(N.

S),を 示 し,両 群 の 術後 値 間 に 有 意差 は なか っ た.

SV/IITα-β はcontrol値 に 対 して術 後 値 は,有

効 群78.1±12.8%(P<0.3),無 効 群75.6±8.5(P

<0.2),を 示 し,両 群 の 術 後値 間 に有 意差 は なか っ

た.

表-4

Control期 から心筋梗塞・梗塞切除後を通じての心機能諸指標間の相関係数

各N=25

648 小 坂 田 和

第6節　 各 種 指標 と一 回 心 拍 出 量,

一 回 心仕 事量 との 相 関 関 係

(表-4)に 示 され る よ うに, control

期 か ら心 筋梗 塞,梗 塞切 除 後 を通 じての

心 機能 諸 指 標 間,特 にSW, SVと の 間 の

相 関 関 係 をみ る と, SWとSV間 の 相 関

性 は,有 効 群,相 関 係 数r=0.916,無 効

群r=0.909,(何 れ もN=25, P<0.001)

で,当 然 の事 乍 ら高 い相 関性 を示 した.

(以 下N=25).

SW/TTIとSV間 の相 関 性 は,有 効 群

r=0.809,無 効 群r=0.893を 示 した.

SWと の 間 で は,有 効 群r=0.724,無 効

群r=0.970,(何 れ もP<0.001)を 示 し

た.

SW/(TTI・SV)とSV間 の 相 関性 は,

有 効群r=0.495(P<0.01),無 効 群r

=0 .266(P>0.1)を 示 した.

SW/LVEDPとSV間 の相 関 性 は,有

効 群r=0.672(P<0.001),無 効 群r

=0 .930(P<0.001)を 示 した.

SW/(LVEDP-SV)とSV間 の相 関性

は,有 効 群r=-0.0652(P>0.1),無

効 群r=0.699(P<0.001)を 示 した.

ETCI・SW/(TTI-SV)とSV間 の相 関

性 は,有 効 群r=0.371(P<0.1),無 効

群r=0.311(P>0.1)を 示 した. ETCI・

SW/(TTI-SV)とSW間 の相 関 性 は,有

効群r=-0.0119(P>0.1),無 効 群r=

0.279(P>0.1)を 示 した.有 効群 も無効

群 も, SVと の 間 に もSWと の 間 に も相

関性 は なか っ た.

LVEDPとSV間 の相 関 性 は,有 効 群

r=0.206(P>0.1),無 効 群r=-0.0663

(P>0.1)を 示 した.

dp/dt/P50とSV間 の 相 関 性 は,有 効 群r=0.364

(P<0.1),無 効群r=0.589(P<0.01)を 示 した.

TTIとSV間 の 相 関性 は 有 効群r=0 .0903(P

>0.1),無 効 群r=0.805(P<0.001)を 示 した.

TTIとdp/dt/P50間 の 相 関 性 は,有 効群r=-0.

203(P>0.1),無 効 群r=0.534(P<0.01)を 示 し

た.

IITα とSV間 の相 関 性 は,有 効 群r=0.113(P>

0.1),無 効群r=0.471(P<0.05)を 示 した.

急 性 心 筋 梗 塞 ・梗 塞 切 除 後 の 心 機 械 効 率

各例control値を100と し, OP後 を%で 表示

1: Sdroke Work/Tension-Time Index〔SW/T . T. I〕, 2: Stroke Work/(T. T. I・Stroke Volume)〔SW/(T. T. I・SV)〕

3: Stroke Work/Left Vbntricle Enddiastolic Pressure〔SW/LVEDP}, 4: SW/(LVEDP-Stroke Volume)〔SW/(LVEDP-SV)〕

図B-13

梗塞切除後の心機能-各 種指標間の差名例control値 を100と し. op後 を%で 表 示

1: Stroke Volume (SV), 2: Stroke Work (SW)

3: LV-dp/dt/P5ommHg, 4: Tension-Time Index (LVP) (T. T. I)

図B-14

第7節　 各 指 標 間 の 差 と心 機 械 効 率

表5,表6の 如 く各指 標 のcontrol値 に対 す る

術 後 値 の% scoreを 比 較 す る と, SVとSW間 の 相

関 性 は 先 述の 如 く高 か っ たが, control値 に に 対 し

てSV, SWの(特 にSWの)術 後 値 は減 少 し,特

に 無効 群 ではSV>SW(P<0.1)を 示 して いた .

同 じ くcontrol値 に対 す る術 後 値 の% scoreを 比 較

す る とTTI>SW,(有 効 群P<0.2,無 効 群P<

0.01)を 示 した,こ の よ うにcontrol値 に 対 す る

急性心筋梗塞,梗 塞切 除時に於ける血圧波形に よる心機械 効率 の実験的考察 649

術後 値 の% scoreを

比較 す る と, SVや

SWな ど心 臓 ポ ン プ

機能 を あ らわ す 指標

と心筋 酸 素 消 費 と相

関 す る と認 め られ て

いるTTIやdp/dt/

P50な どの 指 標 との

間 に差 を生 じた(図

B-13).

先 述 の如 く, con

trol値 に 対 す る術 後

値 の% scoreは,

無効 群 の 場 合 特 に

SV>SWを 示 した

事 はSW=SV

(MEAOP-LVEDP)

急 性 心 筋 梗 塞,梗 塞 切 除 後 の 心 機 能

各例control値 を100と し,各期 を%で 表示

1: ETCI〔 駆出時 間(ET)の 補 正値 〕,

2: ET・(MEAOP-LVEDP)/T. T. I

図B-15

表-5

心筋 梗 塞切 除後 の 諸指 標 の 比較-各 例control値を100として%で 表示M±SEM

e: 有 効群5

n. (e): 無 効群5

で あ るか らこ の よ うなpreshockの 場合, SVの み

な らずMEAOP-LVEDPも 減少 して い る こ と を

示 して いた,

一 方 図B-14に 示 した 如 く, control値 に対 す る

術後 値 の% scoreを 比較 す る と, SW/TTIや, SW

/LVEDPがSV, SWと よ く似 た 数値,経 過 を示 す

のに 対 し,そ れ ら をSVで 除 した. SW/(TTI-SV),

〔=(MEAOP-LVEDP)/TTI〕,やSW/(LVEDP-

SV),〔=(MEAOP-LVEDP)/LVEDP〕,な どの

諸 指 標 間 のcontrol値 に 対 す る 術 後値 の% scoreを

比 較 す る と, SW/TTI<SW/(TTI・SV),(有 効 群P

<0.01,無 効 群P<0.1)を 示 し た(表5).即 ちME-

AOP-LVEDPと の 比 の 形 とな った 指 標 は 術 後 の減

少 が な い か(有 効 群),少 なか っ た(無 効 群).

ETCI-SW/(TTI-SV)も こ れ ら効 率 指 標 と同 じ傾

向 を示 した(図B-16).

650 小 坂 田 和

表-6

心 筋 梗 塞 切 除 後 の 諸 指 標 の 比 較

各例control値 を100として%で 表示M±SEM

e: 有効群5

n. (e): 無効群5

図A-8に 示す ように心 筋切 除(の み)に よって切

除痕部 はdyskinesisと なっている.

表-7に 示す ように心 筋梗塞切 除期 と切除縫合期の両

期 に於け る諸指 標を比較す る と,無 効群 ではSV,

SWを は じめ,効 率指標群 とも,切 除期に対 して切

除縫合期の方が低 い数値 を示す傾向の ものが多か っ

た. TTIは 両 期 の間で差 が み られ な かった. dp/

dt/P50は 切除期に対 して切 除縫合期 に低値 を示す傾

向はあったが有意差はみ られなかった.

即 ち指標TTI, dp/dt/P50な どのcontrol値 に

対す る術後値 の% scoreは, SV, SWと 上記効率指

標のそれの中間にあ る事 を示 した(図B-13).

第8節　 心筋梗塞切 除期 と切除縫合期の間の諸指

標の比較

図A-8

図A-8 Infarctectectomy

の み に於 い て,そ の 部 分

に再 縫 着 され たstrain ga

uge archに よる心 筋収 縮

波Bは,対 照 部 に於 け る

収 縮 波Aの 逆 の 波 形 を え

が いた.

急 性 心 筋 梗 塞 ・梗 塞 切 除 後 の 心 機 械 効 率

1各 例control値を100と し,各期を%で 表示

図B-161: (MEAOP-LVEDP)/LVEDP, 2: (MEAOP-LVEDP)/T.T. I

3: ETa (MEAOP-LVEDP)/T. T. I

有効群 では切除のみのstageを 測定

したのは2頭 だったので,両 期間の差

の有意性 は求め られなかったが,切 除

縫合後に於け るこれ ら2頭 の数値 とそ

れ らを含む5頭 の数値 を比較す る とT

TIが2頭 に於いて少 し低 い数値 を示 し

てい るほか は, SV, SWを は じめ,.効

率指標 など も2頭 とそれ らを含む5頭

間に統計上差 を示 さなかったので,有

効群 では,切 除 と切 除縫合 の両期間で

は諸指標 とも差はなかった よ うに考 え

られた.

急性心 筋梗塞,梗 塞切除時に於ける血圧 波形 による心機械効率 の実験的考察 651

表-7

心 筋 梗 塞 切 除 期 と切 除 縫 合 期 に 於 け る諸 指 標 の 比 較

各例control値(intact値)100に 対する%　 M±SAM

第4章　 考 按

松 田,眞 島ら8-e)は “心臓の仕事効率Eは,遊 離

総エ ネル ギー とな した仕事の比で表わ される.総 エ

ネルギーの一部 は,機 械的仕事Wに なるが,他 の一

部は熱エ ネルギーHと して放散 され る.ゆ えに, E

=W/(W+H)で ある.… …酸素消費量か ら求め る

場合 は,

E=機 械的仕事(g・cm/分)/酸 素消費総量(g・Cm/

分)” と述べている.

その他効率 指標 的なもの として, Corday, Swan

ら26)は急性心筋梗塞 に際 し,左 室ポンプ機能の評価

に於いて,一 回心 拍出量 又は左室の一 回仕事量一 左

室充満圧 との間の相関を調べ る事が最 も簡単で実用

的である と述べてい る.そ して左室 コンプライアン

ス=左 室拡張終期圧/左 室拡張終期容量,も 重要な

意味 をもつ と述べている.又Braunwald, Sarnoff

ら49)は一回心拍出量の増加が大動脈圧の低下 と共に

起 こるときは心機械効率 が上昇す る事を示 してい る

と述べている50).遠 藤 ら51)は更に簡便に,

これ らのX, Y軸 相関指標の うちの単独の指標の有

効性 をみるために,左 室平均駆 出率=SV/駆 出時間

や,駆 血率(ejection fraction)=(左 室拡張 終期容

量.左 室収縮終期容量)/左 室拡 張終期容量,な ど多

くの指標 を検討 したうえで, SW/LVEDPが 最 も患

者の臨床的心不全状態 と椙関 したが,病 状分析 、治

療指針のためには,左 室平均駆出率,左 室円周平均

短縮率 など併 わせ検討す る必要 を述べて いる52).

非観 血 的 方 法 と して は,沢 山 ら53)は心 機 図(meca-

nocardiography)に 於 け る駆 出 時 間/前 駆 出時 間

(ET/PEP)は 駆 血率(ejection fraction)と よ く

相 関 す る と して い るが,心 尖 拍動 図 のA波 率 と共 に

急 性 心 筋梗 塞 に 際 して は, ET/PEPは 低 下 し, A

波率 は上 昇 して 左心 機 能 低 下 や,左 心 不 全 の 程 度 を

よ く表 現 す る と述 べ て い る.

効率 に 関す る もの と して, Langley, J. O.ら54)は

測定 され た(一 回心 拍 出 量 ×収 縮 期 平均 大動 脈 圧)

=useful work73)に 対 す る(total stroke volume×

収 縮 期 平均 左 室圧)=ejection workや, wasted

work(胸 郭 上 のlifting weight×distance)な ど

との 比 か ら左心 不 全 や,心 筋梗 塞 の 非 協 調 運動 に よ

る非 効 率 性 を推 測 し, cardiac performance(圧 ×

流量)よ りも臨床 症 状 と よ く並行 し,そ の 機 能 的 状

態 の完 全 な評 価 に とって 必 須 的 な ものが 実 現 した と

述 べ て い る.

安 田 ら55)は,“Laplaceの 法 則 を適 用す れば 壁 圧

が 半 径 に 比 して薄 い と き,壁 張力: T=P・Ri/2h,

P:内 圧, Ri:内 径, h:壁 厚 ” と述べ,更 に左 心 室 の

壁厚 を考 慮 した 回転 楕 円 体 とみ なせ ば, Falsettiら56)

は,“壁 張 力: T=(Pb/4h)〔(2a2-b2)/(a2+bh)〕,

a:長 径, b:短 径,の 如 く,左 室 壁 張力Tは 左 室 内

径Pで 代 行 で きる ” と述 べ て い る,そ して遠 藤 ら51)

は “左心 内圧 変 化率(dp/dt)は 次 式 で 表 わ さ れ る.

K: 個体 に よ る係 数, r: 球 体 の半径, l: 筋 線維 の

652 小 坂 田 和

長 さ, lse:直 列弾 性 線 維 の 長 さ, Kが 一 定 で あ れ ば

dp/dtか ら収 縮 要 素CEの 短縮 速 度dlce/dtが 計 算

され る” と述 べ てお り,こ の 最大 短 縮 速 度 お よび,

張 力 発 生TTIは 心 筋 酸素 消 費量 を大 き く反 映す る

57) 58)と云 え る59) 60) 61).

前 述 の 著 者 の効 率 指 標 は これ らの心 血 行 力 学 の 基

礎 的 研 究 成 果 を前提 として 構 成 され た.そ の 際 用 い

た駆 出期 大動 脈圧 曲 線下 面 積 は 勿 論,収 縮 期 左 室 圧

曲線 下 面積 の 前 負荷 や 後 負荷62) 63)の影響64) 52) 65)な ど

につ い て篠 山66) 67)の い う “前 負 荷 の 予備 力(preload

reserve)と 後 負荷 の不 釣 合(afterload mismatch)”

の 問題 と関 連 して,“駆 出期 の 指 標 は 後 負荷 の レベ ル

に対 して正 常 の収 縮性 を維 持 出 来 るか 否か を確 実 に

反 映 し得 る事 に あ る” と云 い,更 に “駆 出期 の 指 標

が 基礎 状 態 に於 け るinotropic stateの 低 下 を検 出

す る上 に等 容 収 縮 期 の指 標 よ り信 頼 が お け る” と述

べ て い る.こ の よ うに心 拍 出量 は 後 負 荷 の レベ ル に

対 す る心 臓 の収 縮 性 に よ っ て拍 出 され る の で先 述 の

如 く心 臓 ポ ン プ機 能 の 実 用 的 な指 標 と考 え られ る.

心 筋 酸素 消 費(energy消 費)とTTIな ど との 関

係 に つ い て,伊 藤8-f)は,心 筋酸 素 消 費 量(MOC)

とTTI間 の 相 関 性 はr=0.64(P<0.02), MOC

と心 筋 張 力 間 の相 関 性 はr=0.68(P<0-02), TTI

と心 筋張 力 問 の相 関 性 はr=0.81(P<0.001),と

述 べ て い る. Nelson, Ri. R68)はMOCとTTI間

の 相 関 性 はr=0.65と 述べ て い る. Charles, R. Jor-

gensen69)はMOCとheart rate問 の 相 関性 はr

=0 .87(P<0.004), MOCとTTI間 の 相 関性 はr

=0 .63(P<0.004), MOCとHR×BP間 の 相 関

性 はr=0.87(P<0.004)と 述 べ て い る70).

そ して 中 村13)は “心 臓 の 外部 仕 事 はpressure en

ergyとkinetic energyと に分 れ,後 者 は前 者 の5

%に も達 しな い の で無 視 され る ” と述 べ て い る.又

Burch19), Dodge20)ら のcardiac pressure-volume

カー プ の面 積 に代 表 され る心 臓 の機 械 的 仕 事 量 は,

左 室 の1拍 動 当 りのenergy消 費 の うち外 部 仕事 に

費 や され る 量 は犬 で5～25%7)と 云 わ れ て い る71).

前 述 の 著 者 の効 率 指 標 につ いて 理 論 的考 察 をす る

と,鈴 木,熊 田 ら7)も 述べ て い る如 く,心 臓のPre-

ssure energyはWp=∫P(t)・ ρ・Q(t)・dt-1),〔P

(t):圧 力 系, Q(t):容 量 系 〕と表 わ され,血 液 の 比

重: ρ=1の と きWp=∫P(t)・Q(t)・dt-1´)と な

る 。 中村 ら13)がSW=SV・(MEAOP=LVEDP)と

代 用 計 算 した事 を述べ て い る如 く,今 もし,一 心 拍

間 の平 均 拍 出量 速 度Q(t)=△QAを 仮 定 して1´)式

に 代 入す れ ば,大 動 脈 圧 側 に於 い て は, WPA=φP

(t)・△QA・dt=△QA・ φP(t)・dt:△QA・TTIAOP-2)

とな る.同 じ く,一 心 拍 間 の平 均 左室 容 量72)△QVを

仮 定 して, 1´)式 に 代 入 す れ ば,左 室 圧 側 に 於 いて

は, WPV=φP(t)・ △Qv・dt=△Qv・ φP(t)・dt=△Qv・

TTILVP-3)と な る. 2)式 と3)式 の 比 をつ くれ ば,

WPA/WPV=(△QA/△Qv)・(TTIAOP/TTILVP)-4)

とな る. △QA/△Qv=K,(Kは 生 理 的 条 件 に よ り,

そ の個 体 に特 有 な数 値)と 仮定 す れば, WPA/WPV

=K・TTIAOP/TTILVP=K・ETCI・(MEAOP-LVED・の

P)-5)/TTIと な る .こ れ は先 述 の 心 機 械効 率 指 標

ETCI・(MEAOP-LVEDP)/TTIに 於 い て, LVEDP

/MEAOPが 充 分 小 さ く,生 理 的 条 件 に よ り)その個 体

に 特 有 な数 値: Kを 分子 に乗 じた 場 合 に 相 当す る.

換 言 す れ ば, ETCI・(MEAOP-LVEDP)/TTIは

上 述 のKの 条件 下 に 於 い て,即 ち あ る生 理 的 条件 下

の 同一 個 体 に 於 け る相 対 値 を表 わ す ものとして は(実

験 で は心 筋100g当 りと して 計算 した), energyの 対

比 を表 わ す.“ あ る生 理 的 条 件 ”は駆 血 率,左 室 平均

駆 出率 や 左 室 円 周平 均 短 縮 率 な どが変 化 す る よ うな

場 合 には 変 化 す る事 が 考 え られ る.ま た この 式 は 先

述 のLangleyら のleft ventricular efficiencyの 式

に対 比 され よ う.

第5章　 結 論

〔1〕control値 に 対 す る術 後値 の% scoreで み る

と,心 筋梗 塞 切 除 縫 合 後, SV, SW(殊 にSW)が

有 意 に(P<0.05)減 少 し,有 効群 よ り)も無 効 群 が

よ り低値 を示 した(P<0.01).

一 方心 筋酸 素 消 費 と相 関す る と認 め られ て い る指

標TTIやdp/dt/P50のcontrol値 に対 す る術 後 値

の% scoreをSV, SWの それ と比 較 す る と,有 効

群, SW=59.4±9.8%<TTI=84.5±8.2%, (P<

0.2),無 効 群, SW=21.5±5.5%<TTI=57.4±6-8

%, (P<0.01),を 示 し た. dp/dt/P50のcontrol

値 に 対 す る術 後 値 の% scoreもTTIと ほぼ 同様 の

数 値 及 び傾 向 を示 した.

この よ うにcontrol値 に対 す る術 後値 の% score

を比 較 す る と,心 臓 ポ ン プ機 能 を表 わ す 指標 一 回心

拍 出量,一 回心 仕 事 量 な ど と,心 筋 酸 素 消 費 と相 関

す る指 標TTI, dp/dt/P50な ど との 間 に 差 が 出 来 た

こ とは,何 等 か の 効率 に 差 を生 じた事 を表 わ す もの

と考 え られ た.

〔2〕 この よ うな効率 を表 わ す指 標 として,

(i) SW/TTI

急性心 筋梗塞,梗 塞切 除時に於 ける血圧波形に よる心機械効率の実験的考察 653

(ii) (MEAOP-LVEDP)/TTI

〔=SW/(TTI・SV)〕

駆 出時 間(ET)と 収 縮 時間 との 比 が 変動 しな

い とき適 用 され る.

(iii) (MEAOP-LVEDP)/LVEDP

〔=SW/(LVEDP・SV)〕

(iv) ETCI・(MEAOP-LVEDP)/TTI

〔=ETcI・SW/(TTI・SV)〕

ETCIはETの 補 正 値 であ り,何 れ を用 いて

も著 差 は な い.

な ど を構 成 して計 算 した. control値 に対 す る術 後

値 の% scoreで み る と, SWと 効 率 指標(i)の 術 後 値

の比 較 で は,有 効 群, SW=59.4±9.8%〓SW/TTI

=61 .0±3.4%, (N. S),無 効 群, SW=21.5±5.5%

<SW/TTI=38.6±8.5%, (P<0.2)を 示 し, SW

と指 標SW/LVEDPのcontrol値 に 対 す る術 後 値 の

比較 に 於 い て もほぼ 同様 の数 値,傾 向 を示 した.

又指 標(i)と(ii)のcontrol値 に対 す る術 後値 の% score

を比 較 す る と,有 効 群, SW/TTI=61.0±3.4%<

SW/(TTI-SV)=101±6.4%, (P<0.01),無 効群,

SW/TTI=38.6±8.5%<SW/(TTI-SV)=68.9±

12.0%, (P<0.1)の 如 く指 標(ii)は指 標(i)よ りも術 後

の低 下 が 少 なか っ た.指 標(iii)も(ii)とほぼ 同 様 の数 値,

傾 向 を示 した.

指 標(iv)のcontrol値 に 対 す る術 後 値 の% scoreも 指

標(ii)とほ ぼ 同様 の 数 値,傾 向 を示 した.即 ちcontrol

値 に対 して 術 後値 は, 101±3.4%(N. S)で 有 意 差

を示 さな か っ たが,無 効群 は78.9±5.0%(P<0.05)

を示 した.両 群 の 術 後 値 を比 較す る と,無 効 群 が 低

値 を示 した(P<0.05).

この よ うにcontrol値 に対 す る術 後値 の% score

を比 較 す る と, TTI, dp/dt/P50な どの 術 後値 は,

SWやSVの そ れ よ りは 高 値 を示 し,上 記効 率 指 標

の そ れ と同様 か,や や低 い傾 向 を示 し た.

〔3〕 こ れ らの指 標,効 率 指 標 の数 値 か ら実 験 結 果

をみ る と,有 効 群 で も切 除 に よ る心 筋 減 少,心 筋 緊

張 増加 な ど に よ ってover workし,無 効 群 で は 非

代 償性 に 陥 い り,あ る時 点か らは 効 率 も低 下 して い

る と考 え られ た.そ して こ の よ うに 相 対 的 に で は あ

るが 心仕 事 量 が 増 大 し,心 機 械 効 率 の 向 上 が必 要 と

され て い る ときに 心 機械 効 率 の 低 下 を来 た す よ うな

場 合 に は予 後 が 不 良 で あ る事 を示 した.

〔4〕 指 標(iv)式は 分母 子 共,そ れ ぞれ の 容 量 系 に於

け る力積(Impulse=force×time)を 示 す の で あ る

が,先 述の 如 く,一 心 拍 間 の平 均 拍 出 量速 度: △QA,

平均 左 室容 量: △QVを 仮 定 し, △QA/△QV=Kが 成

立 す るよ うな あ る生理 的 条件 下 の 同一 個 体 に於 い て,

相対 値 を表 わす もの と して, (iv)式は 分母 子 がenergy

の対 比 を表 わ す.

〔5〕 先 述 の 効率 指 標, (i), (ii), (iv)は,上 記 条 件 下

で,二 次 的 乍 ら心 機 械 効 率 を表 わ す と考 え られ る.

Sarnoff, Braunwald, Sonnenblickら の 云 うTTIが

心 筋酸 素 消 費 と相 関す る範 囲 が適 用 と して妥 当 で あ

ろ う.

(稿 を終るに臨み,年 余 に わたって直接 御校閲 を戴 き

ました寺 本滋教授,前 教授 砂 田輝武先生 をは じめ,教 室

一同 及び実験室 関係,保 健 所,各 位に厚 く御 礼申上 げま

す.)

(尚本論文 の要 旨は第37回 日本胸部外科学 会総 会,日

本循 環器学会 中 ・四国地方会 第33回 総会 などにて発表 し

た.)

654 小 坂 田 和

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急性心筋梗塞,梗 塞切除時に於け る血圧 波形による心機械効率 の実験的考案 657

An experimental study of the cardiac mechanical efficiency

by blood pressure curves in acute myocardial infarctectomy

Yamato OSAKADA

The 2nd Department of Surgery, Okayama University Medical School,

Okayama 700, Japan

(Director: Prof. S. Teramoto)

key words: Efficiency, Cardiac efficiency, Myocardial infarctectomy, Tension-Time Index,

Cardiac function's parameter.

Twenty-three dogs were used for this study of cardiac mecanical efficiency. Seventeen point

eight % (mean) of the artificially infarcted myocardium of the left ventricle were resected

and sutured. The dogs were classified into two groups (5 effective, 5 noneffective). It was

designated that the effective group showed no remarkable changes in left ventricular pressure

(LVP), three hours after the infarctectomy in comparison with 30 minutes after infarctectomy,

while the noneffective group showed a marked decrease. The datum in each experimental

and operative stage was scored with the ratio to 100% in control stage (intact stage). After

infarctectomy, percentages to control values of stroke volume and stroke work were significant

ly lower than those of TTI and dp/dt/P50, which are generally admitted to be correlative to

the myocardial oxygen consumption volume. This phenomenon was especially noted in the

noneffective group. These facts would show that cardiac mechanical efficiencies differed in

the two groups. Several parameters of the cardiac mechanical efficiency has been provided

by the author.

i) SW/TTI, ii) SW/(TTI-SV), [=(MEAOP-LVEDP)/TTI], (MEAOP: mean aortic pressure in

ejection time, LVEDP: left ventricular enddiastolic pressure), iii) SW/(LVEDP-SV), [=(MEAOP

LVEDP)/LVEDP], iv) ETCI-SW/(TTI-SV), [=ETCI•E(MEAOP-LVEDP)/TTI, (ETci: ejection

time)].

The iv) parameter represents the ratio of impulse (force•~time), which was calculated by using

the cardiovascular formula of energy: WP=P(t)-Q(t)dt in both the numerator and the de

nominator. SW=fP(t)•EAQAdt=AQA•EƒÓP(t)dt=AQA-TTIAOP, fP(t)•Eƒ¢Qvdt=AQv•E

ƒÓ P(t)dt=AQv-TTILVP, ƒÓP(t)•Eƒ¢QAdt/fP(t)•Eƒ¢Qvdt=(AQA/AQv)(TTIA OP/TTILVP),

(ĢQA: mean ejection volume, ĢQV: mean LV volume, during one beat).

Therefore, assuming that AQA/ĢQV=K(constant): if an individual and physiological con

dition of heart, for instance, as the value of ejection fraction is constant, then, the iv) parameter

represents the ratio of energy-the cardiac mechanical efficiency.

Circulating blood volume had less influence upon these parameters of efficiency than upon

SV and SW. When SV and SW showed significant depression after infarctectomy also in the

effective group, these parameters of efficiency showed no remarkable change in the effective

group, but these parameters of efficiency showed significant difference between the effective

group and the noneffective group.

Judging the results of the various data of parameters, it was considered that the hearts were

overworking also in the effective group, and these cardiac mechanical efficiencies decreased

in the noneffective group, moreover, the hearts of those group fell into decompensation.

The prognosis was poor in the case in which cardiac mechanical efficiency decreased when

cardiac work was relatively increased by infarctectomy, and suture; and the improvement of

the efficiency for the heart would be necessary.

Therefore parameter i), ii), iii) and iv) may be valuable indicators of the cardiac mechanical

efficiency, as far as TTI correlates with myocardial oxygen consumption volume.