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ESGの潮流と今後の間接金融の課題 平成30615株式会社日本総合研究所 翁百合 資料1

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ESGの潮流と今後の間接金融の課題

平成30年6月15日

株式会社日本総合研究所

翁百合

資料1

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間接金融の領域における「環境と金融」の進化

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1990年代

2000年代

2015~

担保物件の環境デューディリジェンス

Environmental Finance概念の成立

環境責任に関する通達(1991、米国)

国連環境計画金融イニシアティブ(1992)

金融機関の環境マネジメント(1997、スイス)

エクエータ―原則採択(2003) バーゼルⅡで担保評価へ環境リスク統合(2004)

京都議定書発効(2005)

金融安定と気候変動

プロジェクトファイナンスにおける環境リスク審査の定着

カーボンファイナンスの誕生と縮小

国内では土壌汚染対策法施行

気候変動の影響の顕在化・深刻化の懸念拡大

G20、金融安定理事会が気候変動に着目

これからの視点

環境問題と金融システムとの接点は、「局所」から「本流」へ。2015年が節目の年。

資料 日本総合研究所

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間接金融とESGを巡る国際的な動き

• 2003年 赤道原則(金融機関が環境や社会に及ぼす影響を把握し、適

切な対策の実施を促すと同時に、融資後のモニタリングを求める。欧州を中心に92金融機関が採択)

• 2017年6月 FSB・TCFDによる最終報告書(次頁以降の参考参照)。気候

関連のリスク及び機会に関する情報開示が、金融市場で適切に評価、プライシングされるようにつとめる。日本のメガバンクを含む海外主要金融機関も支持表明。

• 2018年1月 欧州委員会 High Level Expert Groupの最終報告書⇒3月欧州委員会新たなアクションプラン公表(健全性規制への反映の提言)

• 2018年4月 金融システム・グリーン化に向けた中央銀行・金融監督者ネットワークによる会議の開催

• このとき、カーニーBOE総裁は、気候変動リスクに対して、銀行と保険会

社が情報開示をより積極的に行うべきと発言。「気候変動が金融システムの安定に影響を与えるチャネルは3つある。physical risk, liability risk,そして最も影響が大きいtransition risk (low carbon社会への移行に伴うリスク)である。」(2018年4月)

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(参考)気候関連財務開示タスクフォースについて-1

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金融安定理事会(FSB)は、2015年12月に気候関連財務開示タスクフォース(TCFD)を設立。TCFDは、 2017年6月に最終報告書を発表。

• タスクフォースは民間人により構成される。直近の参加メンバーは32人。

• 議長:マイケル・R・ブルームバーグ氏(国連事務総長の都市・気候変動担当特使、前NY市長)

• 副議長:ブラデスコ銀行(伯)、ユニリーバ(英蘭)、AXA(仏)、シンガポール証券取引所

• 参加者セクター(議長・副議長含む)

- 金融セクター(情報利用側) 16名- 非金融セクター(情報開示側) 8名(エネルギー、素材、自動車等)

- その他専門家 8名(会計監査法人、格付機関等)

① 企業による気候関連リスクの情報開示が進むことで、より高度な投融資等の判断・意思決定が可能となること

② 金融システムに内在する炭素関連資産への理解が深まること

TCFDの体制 TCFDの2つの目的

「Final Report: Recommendations of the Task Force on Climate-related Financial Disclosures」・・・報告書本編

「Implementing the Recommendations of the Task Force on

Climate-related Financial Disclosures 」・・・特定のセクター向け補助ガイダンス

「Technical Supplement: The Use of Scenario Analysis in Disclosure of Climate-related Risks and Opportunities」・・・シナリオ分析に関する補足

2017年6月発表の報告書類のうち主要3編

資料 日本総合研究所

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5

提言の主な特徴

提言の対象

開示のあり方

4つの基本要素

全ての組織体(企業から投資家まで)

エネルギー、運輸・自動車、素材・建築、農業・食品・林業および金融セクターには、「補助ガイダンス」により詳しく提言

各国の法制度・既存の義務的枠組みを活用した、自主的開示 財務情報に盛り込む

ガバナンス

リスク管理

戦略

指標と目標

開示の姿勢・考え方

経営におけるマテリアリティ(重要性)判断との一致

過去のトレンドに基づくのではなく、将来起こり得る変化への対応力を重視、気候関連のシナリオ分析の活用を提言

シナリオ分析に特化した「補助ガイダンス」も策定 特に低炭素経済・社会への変化対応に関する情報に力点

(参考)気候関連財務開示タスクフォースについて-2

資料 日本総合研究所

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(参考)気候関連財務開示タスクフォースについて-3

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銀行、保険、アセットオーナー(公民の年金基金、保険会社、基金、財団含む)および資産運用のサブセクター別に提言。

金融セクターに注目する背景

銀行貸出等による炭素関連資産のエクスポージャー(リスク度合い)気候関連リスクの、一般的なリスク分析における位置づけや分類

保険新たな保険商品や競争力温暖化が進展したシナリオの分析結果、事業への影響保険ポートフォリオにおける気候関連リスク評価および評価モデル

アセットオーナー

投資戦略、シナリオ分析、リスクと機会の評価手法、低炭素エネルギーへの移行に関するポートフォリオのポジショニング、エンゲージメントの実施状況、ポートフォリオの排出量

資産運用 ポジショニング以外はアセットオーナーと同様

金融システムとしての気候関連リスク対応度へのFSBの関心 金融セクターで開示が進むことにより、市場全体としての早期のリスク評価や市場規律の形成、データ蓄積に期待

主な追加提言(気候関連リスクと機会について、開示すべき情報)

資料 日本総合研究所

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(参考)座礁資産の定義と試算値:Carbon Tracker Initiative (CTI)の例

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座礁資産(Stranded Assets)は、英国の非営利シンクタンクであるCarbon Tracker Initiativeが命名したとされる。2011年から様々なレポートを発表し、座礁資産について2015年に発表したレポートでは約2兆ドルと試算。

概要 ポイント

定義

【定義】化石燃料向けの資産が、投資の意思決定時点で想定されていた経済的寿命終了前に、低炭素経済への移行に伴う市場と規制環境の変化の結果、経済的リターンを得られなくなる(IRRを達成できない)ことを指す。①規制強化、②経済的理由(コスト増・価格低下)、③物理的な理由(距離、洪水、干ばつなど)で発生。

試算では③は考慮されていない。

試算(2013)• 埋蔵量として把握されているうち20~40%のみ燃焼可能。• 上場200社により、2012年だけでも探索・開発投資6,740億ドルが投下されているが、こ

れが座礁しうる(単年度分)。

200社に対しカーボンバジェットを均等に配分。資料:“Unburnable Carbon 2013”

試算(2015)

• 石炭、石油、ガス別に、需給シナリオと経済性分析を行い、2035年時点での生産オプションに対し、2025年までの設備投資の必要性を試算。IEAの「450シナリオ」のもとでは総額2.2兆ドルの座礁資産化するとの内容。

• 内訳(単位:$bn):

• エクスポージャーは、民間部門と政府部門が同程度。• 国別には、米国412、カナダ220、中国179、ロシア147、豪州103($bn)。• 化石燃料関連20社の分析の結果、シェル、エクソン、ぺメックスがそれぞれ700億ドル以

上の潜在投資を回避すべき。• 機関投資家、企業、政府、アナリストらに「2℃ストレステスト」の実施を提言。

金額では石油が約2/3だが、削減できる排出量では約1/5。石炭は10%の金額で約半分の削減量を占める。資料:“The $2 trillion stranded assets danger zone: How fossil fuel firms risk destroying investor returns” (2015年11月)

なお、2018年3月には「移行リスクに直面する資産」として1.6兆ドルという新たな試算も行っている。

新規 既存 計石油 1,303 124 1,427ガス 459 73 532石炭 177 42 219計 1,939 239 2,178

資料 表中に記載の報告書に基づき日本総合研究所作成

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日本のメガバンクの開示事例①みずほフィナンシャルグループ:カーボンアカウンティングへの取り組み

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*1概念図の青色部分に相当

*2概念図の薄緑色・緑色部分に相当

資料 みずほフィナンシャルグループのウェブサイトより日本総合研究所作成

8

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日本のメガバンクの開示事例②三菱UFJフィナンシャルグループ:海外の温暖化対策への取り組み

<CSR重点領域 3 持続可能な環境・社会の実現>

9資料 三菱UFJフィナンシャルグループのウェブサイトより日本総合研究所作成

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日本のメガバンクの開示事例③三井住友フィナンシャルグループ:気候変動への対応

10資料 三井住友フィナンシャルグループのウェブサイトより日本総合研究所作成

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銀行部門によるESGリスク評価への取り組みの現状

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担保評価

バーゼルⅡ(2004)において、対象債権の担保リ

スク評価の要件として「銀行は、担保から環境保護上の債務が発生するリスク(担保物件に有毒物質が含まれている場合等)をモニターおよび管理すべきである」との一文が盛り込まれる。

大型プロジェクト 日本では5機関がエクエーター(赤道)原則に署名

済。同原則が発電・インフラ等の事業融資に関する環境・社会リスク審査の業界スタンダードに

側面 現状

気候変動

詳細な融資取り組み方針策定への圧力は、国際環境NGOからにとどまらず、一部投資家にも拡大。銀行としてのレピュテ―ションリスクに発展

気候変動とマクロ経済指標(GDP、為替相場)等の

関係を分析し、それを統合的にみて、リスク評価を行うことも今後の課題と認識する動きもある。

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邦銀によるESG融資(商品)への取り組みの現状

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環境・社会関連

“格付”“診断”付融資

資金使途を限定しない

コーポレートとしてのESGに関する方針・取り組み・実績を評価する融資

企業にとっての取り組みPR機会にもなることから、裾野が広がりやすい

財務(信用)格付とは独立

資金使途を環境設備等に

限定

資金使途を環境保全のための設備等に限定する融資

政策金融とのマッチングで利子補給制度を活用し、融資契約でCO2削減目標を約束することもあり

財務(信用)格付とは独立

環境事業等のプロジェクトファイナンス

固定価格買取制度とともに国内でも定着

商品種類 特徴

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環境格付融資等の具体例

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銀行名 商品名 特徴

日本政策投資銀行 DBJ環境格付融資 2004年に世界で初めて導入。評価結果により金利優遇。外部有識者によるアドバイザリー委員会がある

みずほ銀行 みずほエコアシスト運転資金では独自の「環境チェックリスト」あり。設備資金は環境保全目的(省エネ、新エネ発電、屋上・壁面緑化等)に限定。別途、電力会社やメーカー、建設会社と提携し特定の商品購入費を「環境良化につながる設備投資としてエコ認定」する商品もある

三菱UFJ銀行 環境経営支援ローン環境省の環境配慮型融資促進事業利子補給制度を活用した商品で、環境格付の取得、CO2削減目標の誓約・達成を条件としている

三井住友銀行SMBC環境配慮評価融資/私募債

2008年に導入。日本総研が診断、結果を企業にフィードバックし、新日本監査法人が全体監査する。ツームストーン広告を毎年実施

三井住友信託銀行自然資本評価型環境格付融資

2013年導入。「自然資本宣言」に邦銀で唯一署名している同行のみ扱う商品。借入人のサプライチェーン上流での自然資本の利用状況がフィードバックされる

滋賀銀行 しがぎんPLB資金PLBとは「しがぎん琵琶湖原則」を指す。PLBに賛同する顧客企業がPLB格付を取得する仕組み(資金調達とセットではない)。結果に応じて金利設定

八十二銀行八十二ビジネスローン「エコウェーブ」等

環境に配慮した経営を行う企業向け資金には、使途を一般向けと環境関連設備投資向けの両方がある。DBJの実施する「環境関連協調融資」(シンジケートローン)に参画

百五銀行百五環境格付融資「エコ・フロンティア」

2010年に導入。環境格付に応じて金利優遇

千葉銀行 ちばぎんエコ・ステップ 2012年に導入。環境格付に応じて金利優遇。1回格付を取得すれば1年間何度でも使える

栃木銀行とちぎん環境格付認定企業サポート資金

環境格付に応じて金利優遇。実施後のモニタリングによりリレーション強化に活かす

資料 各銀行のウェブサイトで得られた情報に基づき日本総合研究所作成

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再生可能エネルギー・ファイナンスの具体例2011年の固定価格買取制度導入後、国内のメガソーラー案件は、比較的容易に取り組めるプロジェクトファイナンスとして地銀にも広がった。他の電源は一部に限定。

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融資 岩手 太陽光宮古太陽光発電事業へのシンジゲートローン(DBJとの共同組成)、滝沢市メガソーラープロジェクトファイナンスへのアレンジャー(東北6行案件)

山形 太陽光、風力、水力、バイオマスメガソーラー、風力、水力、バイオマスに融資平成28年度末には197 件/ 27,024 百万円(残高)

北陸 太陽光、小水力 固定価格買取制度導入後、太陽光と小水力で100件以上の案件を組成支援

東邦 太陽光、風力、水力、バイオマス新産業金融推進室で環境・再エネ分野を支援。累計386件、876億円の実績(平成29年3月)

百五 バイオマス津バイオマス発電事業に対し、プロジェクトファイナンスのアレンジャーとして取り組み三井住友信託とDBJとの共同組成

西日本シティ 太陽光、バイオマス 太陽光発電事業向けのシンジケートローンを組成(九州の他5行が参加)

出資 北洋 「環境ビジネス支援ファンド」(3億円)を設立し、環境関連企業に投資

山形 「やまがた地域成長ファンド投資事業有限責任組合」を通じた環境ビジネスへの投資

北都 フィディアグループとして風力に出資。3生協と風力発電事業を行うなど多様

中国 「ちゅうぎん晴れの国インフラファンド」を設立し、バイオマス、メガソーラーなど再エネ企業等に投資

大分 「おおいた自然エネルギーファンド」(17.5億円)を大分県や他の地域金融機関と設立。 温泉源による発電事業に投融資

鹿児島 「かごしま再生可能エネルギーファンド」に参画

資料 各銀行のウェブサイトで得られた情報に基づき日本総合研究所作成

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資料)日本銀行「資金循環統計」、内閣府「国民経済計算」(注)1.国鉄清算事業団・国有林野事業特別会計の債務承継要因の調整を実施(98年度)。

2.財政融資資金特別会計・財政融資資金勘定(公的金融機関に分類)から中央政府部門への積立金繰入れ要因の調整を実施 (06年度12兆円、08年度11.3兆円、09年度7.3兆円)。

3.中央政府による日本郵政への出資金増加要因の調整を実施(07年度)。

日本の銀行部門の現状(1)

資料)日本銀行「資金循環統計」(注)1.「国内銀行」の金融資産負債残高表により作成。預金額は

「流動性預金」「定期性預金」「譲渡性預金」「外貨預金」の合計。貸出額は「民間金融機関貸出」。

2.2012年度は2012年12月末の数値。

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日本の銀行部門の現状(2)

国内銀行の新規貸出約定金利は大きく低下 金融機関の国内貸出は近年は漸増傾向

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資料 日本銀行「金融システムレポート」

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地銀に求められる融資取り組み姿勢

• 地域においては人口減少と高齢化が進行し、地方銀行が地域経済活性化の役割を十分に果たすことが求められている。

• 生産年齢人口の減少に伴う人手不足やマーケット縮小は、企業の生産性向上、新たな収益源の模索や企業間連携の強化といった事業の将来のあり方を企業とともに考える必要性を突きつけている。

• 地銀等は、自前の人材の育成とともに、外部ネットワークの人材や情報をフル活用して、取引先にソリューションの提供を心がける必要。オープンAPIも進む中、どういうフィンテック企業と組んでソリューションサービスを提供していくかといった、「オープンバンキング」のビジョンも重要。

• その際、金融機関が地元の地域の将来をどう考えるかの視点は不可欠であり、融資といったカネのサポートだけでなく、経営者とよくコミュニケーションをとり包括的支援が求められる。まさにESGの地域のSocietyを考えた取り組みが求められている。

• 当然のことながら、Sを考えるときには、Eの取り組みにより、地域の持続可能性を考えていくことは不可欠。

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(参考)地銀に市場規律は必ずしも働いていない

PBRの低い銀行の取締役選任決議結果

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選任数 可否賛成割合(%)

(最低)賛成割合(%)(最高)

解任数 可否反対割合(%)

(最低)反対割合(%)(最高)

株式会社高知銀行 0.25 8名 可決 95.39 98.57 7名 否決 88.51 92.41

株式会社大光銀行 0.26 7名 可決 86.11 98.06 - - - -

株式会社宮崎太陽銀行 0.27 9名 可決 99.5 99.6 - - - -

株式会社愛知銀行 0.30 11名 可決 84 98.22 - - - -

株式会社長野銀行 0.32 8名 可決 95.76 99.75 - - - -

株式会社鳥取銀行 0.33 8名 可決 88.27 93.13 - - - -

株式会社百五銀行 0.33 14名 可決 81.27 89.76 - - - -

株式会社栃木銀行 0.34 5名 可決 96.32 97.93 - - - -

株式会社名古屋銀行 0.34 1名 可決 - - - -

株式会社西日本フィナンシャルホールディングス

0.36 9名 可決 92.1 95.1 - - - -

96.37

(参考)株主総会(2017/6)における取締役解任決議の結果PBR

(2017/3月期)

株主総会(2017/6)における取締役選任決議の結果

資料 取締役選任決議の結果:各行銀行・臨時報告書(2017/6~7)、PBR トムソンロイター

A銀行

B銀行

C銀行

D銀行

E銀行

F銀行

G銀行

H銀行

I銀行

J銀行

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まとめ:今後の間接金融に求められる視点

• グローバルには、間接金融分野でも、将来世代のために気候変動リスクへの配慮は不可欠であり、そうした姿勢を市場に情報開示して、評価を受ける方向に大きく変化。また、そうした姿勢は将来の当該銀行にとってのtransition riskを小さくする結果、企業価値の維持に資する。

• 銀行は、新たな金融商品により企業にEへの取り組みを促すことは効果

的と考えられるほか、銀行融資の企業経営者とのリレーションシップを大事にし、継続的にモニタリングを実施する金融手法を生かし、企業経営者との対話によりEやSへの取り組みを促す必要。

• こうした銀行等の取り組みを、株主がより積極的に銀行経営者に働きかけることが重要。こうしたリンケージが形作られれば、直接金融と間接金融がともにESGへの取り組みを広げ、持続可能な経済、社会につながる。

• 顧客の経営者の方が環境・社会課題に詳しく、銀行員が知らない、では済まされない。経営者と対話できる銀行内の人材育成・EとSについてのリテラシーの向上およびそれを評価する人事評価システムが必要。

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銀 行 等

間接金融・直接金融とESG促進のメカニズム

アセットオーナー

機 関 投 資 家

企 業

環境や社会を意識した持続可能なビジネスモデルへ

EやSの取組みの開示

ガバナンス(エンゲージメント、議決権行使、売却)

EやSの取組みを促す働きかけ

(金融商品・提案等)

対話・選別EやSの取組みの開示

ガバナンス(エンゲージメント、議決権行使、売却)

資料 日本総合研究所20