高圧ケーブルの絶縁測定...高圧ケーブルの絶縁測定 E 端子法とG...

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高圧ケーブルの絶縁測定 E 端子法と G 端子法、簡易絶縁診断の具体例 ※ 本稿は「漏電ブレーカ(ELB)の安全使用と漏電状況の調査(九州産業コンサルタント 協会・増永秀人)」の絶縁測定についての補足です。低圧の絶縁測定については九州産 業コンサルタント協会ホームページをご参照ください。 概要 1.G 端子を使用する高圧ケーブルの絶縁測定 1-1 G 端子の由来 1-2 E 端子測定法 1-3 G 端子測定法 1-4 E 端子法と G 端子法の測定値の違いと評価 2.復電前の受電可否判定(停電中の簡易絶縁診断) 2-1 電圧依存性(弱点比)試験 ・依存性がある場合 ・依存性がない場合 ・弱点比 2-2 漏れ電流試験 2-3 垂下特性の利用(受電直前の可否判断) 3.復電後の絶縁再確認(活線での簡易絶縁診断) 3-1 SOG の入力電圧測定 3-2 ケーブルシールド線の電流測定 2020/2/25

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高圧ケーブルの絶縁測定

E端子法と G端子法、簡易絶縁診断の具体例

※ 本稿は「漏電ブレーカ(ELB)の安全使用と漏電状況の調査(九州産業コンサルタント

協会・増永秀人)」の絶縁測定についての補足です。低圧の絶縁測定については九州産

業コンサルタント協会ホームページをご参照ください。

概要

1.G端子を使用する高圧ケーブルの絶縁測定

1-1 G端子の由来

1-2 E端子測定法

1-3 G端子測定法

1-4 E端子法と G端子法の測定値の違いと評価

2.復電前の受電可否判定(停電中の簡易絶縁診断)

2-1 電圧依存性(弱点比)試験

・依存性がある場合

・依存性がない場合

・弱点比

2-2 漏れ電流試験

2-3 垂下特性の利用(受電直前の可否判断)

3.復電後の絶縁再確認(活線での簡易絶縁診断)

3-1 SOGの入力電圧測定

3-2 ケーブルシールド線の電流測定

(2020/2/25)

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1.G端子を使用する高圧ケーブルの絶縁測定 topへ

1-1.G端子の由来

絶縁測定に使用される高圧専用メガ(1kV 以上)には G端子

があります。低圧用(または高低圧兼用)メガのとの違いです。

右図は古い 1kV の高圧専用メガの例です。ライン端子(赤)と

アース端子(黒)の他に、G端子(矢印部)がついています。

G端子は本来、高圧ケーブル絶縁測定時に、ケーブル端末に仮

設するガード電極を接続して、シース外皮に流れる沿面電流による測定誤差を防止するた

めに使用されていたものです。ムサ

シ DI05(06)取説のガード電極使用

例を示します。ガード電極はライン

コードを取りつけた芯線と、アース

間に流れる沿面電流を吸収する場所

に取りつけられます。

※ 絶縁体の抵抗分対地電流には、

劣化した絶縁物を抜けて流れる貫流

電流と、絶縁物の表面を流れる沿面

電流等の各種の漏洩電流がありま

す。高圧ケーブルの絶縁測定ではケ

ーブル CV 絶縁体の絶縁(Rc)が正

常であっても、端末部に沿面電流が生じると、心線と対地間の絶縁値は低く指示されます。

低圧の場合は貫流電流がほとんどです。沿面電流が問題になることはないため、低圧メガ

には G 端子はありません。1000V メガであっても、高圧専用メガには G 端子があります。

以降の本稿の記述では、私的に使用しているムサシ社製品を主体としています。

G端子測定は端末を施工されたシールド CVケーブルに適用されます。縁電線(KIP線)

にはシールドは無く、対地絶縁は絶縁サポート等により維持されます。絶縁被覆での負担分

は無いので G 測定には不適です。ケーブル外皮に触れても電撃は受けませんが、KIP 線被

覆に触れると高圧感電します。

1-2 E端子測定法

低圧と同様の測定です。アース(E)コードを接地極に接続し、ライン(L)コードでケ

ーブル芯線に試験電圧を印加して絶縁を測定します。接続されている高圧ケーブルと機器

全体の絶縁抵抗を測定する方法です。ガード電極を使用しない場合は、低圧と同様の測定に

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なります。前項の図はガード電極を使用した E測定の結線です。

現在、ガード電極を使用する測定を行うことはほとんどありません。G端子は次項の、ケ

ーブル単体での絶縁を推定する G 端子測定法で利用されます。沿面放電よりも、高圧機器

絶縁が測定値への影響は大きいと考えられるためです。ケーブル端末加工がプレハブ式と

なり安定し、清浄材も出回っており、キュービクル内部での端末部では清掃により沿面放電

を防止することがきます。汚染等による沿面電流発生の恐れが多い、1号柱の端末部でのガ

ード接地が実質的に不可能であることも要因と考えられます。

ケーブルに高圧機器が接続されていると、ケーブル CVの絶縁抵抗(Rc)と高圧機器の絶

縁抵抗(Rn)が並列で合成され、ケーブル単体よりも低い値になります。

1-3 G端子測定法

高圧ケーブルの心線とケーブルシールド間の絶縁抵抗(Rc)を、接続されたままの高圧機

器の絶縁抵抗の影響を減少させることで推定する方法です。E 端子法で全体を測定した後

に行います。DI-05での例を取説図で示します。ケーブルシールドの接地線を解線し、アー

ス(E)コードをシールドに取り付け、ガード(G)コードを追加してキュービクル等の接

地極に取りつけます。

取説に示される等価回路では、次のように考えることができます。

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・直流(印荷)電源と測定部(MΩ)の中間(L-E間)から引き出されている G端子は接

地されている。

・E端子から Rcへの電流 I1が流れる。

・Rnは接地されているため、電流 I3は直流電源から直接に流れ、測定部には流れない(Rn

も接地されている)。

・Rsには電流 I2が流れる。

・Rcには I1+I2が流れる。Rsが測定部内部抵抗より十分に大きければ、I1>>I2となる。

・Rcに流れる電流は、I1で近似できる。

・指示部(MΩ)で Rcが読み取れる。

DI-05、06、11 では測定部の内部抵抗が 10kΩであるため、シースの対地絶縁抵抗(Rs)

が 1MΩ以上あれば、実用上は満足する測定となることも説明されています。他メーカの機

種では内部抵抗 40kΩもあります。Rsが 1MΩは同じです。

DI-11 では E コードを接地極に取りつけたまま、E 測定と G 測定ができるように、E/G

切替スイッチが付けられています。ケーブルシールドを接地極から解線し、Gコードを取り

付ければ、スイッチ切り替で、Eコードはそのままで G測定を行うことができます。DI-11

の取説には切り替回路の記載がありませんが、測定器内部で Eと Gを振り替えていると考

えられえます。私が推測した等価回路を示します。

Rn

Rs

Rc

Rn

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※ DI-11 は G 測定位置にすると、G 測定に必要なシールドの対地絶縁(Rs)が 500V で

1MΩ以上であることの確認ができます。ケーブルの外装(シース)の健全性確認のために

は、通常の低圧メガで測定し、数値管理することが役立ちます。

1-4 E端子法と G端子法の測定値の違いと評価

① G端子法が E端子法より十分に大きい場合

一般的な状態です。G端子法では、E端子法で含まれる高圧機器の影響がなくなるため、

通常であれば E 端子法での結果よりも十分に大きな測定値が得られます。例えば E端子法

で 0.1G、G端子法では 50G等です。E端子法での測定値低下は DS、LBS等の高圧機器の

絶縁低下によるものあり、G端子法では測定範囲から除外され、ケーブルの絶縁は良好であ

ると判定できます。

※ キュービクル部の、高圧 CV ケーブル E 測定での絶縁低下の最も大きな要因は LBS

(DS)のサポート部であると考えています。クリーナでの清掃・ドライヤでの乾燥でも大

きく改善することがあります。九州では PASのみでなく VCT(PCT)が1号柱の屋外(高

所)取付けのため、ケーブル、VCT、PAS でのケーブルと絶縁電線、絶縁電線と絶縁電線

等の、測定時には清掃ができない接続部もあります。PAS付属の避雷器も同様です。

② G端子法と E端子法の差が少ない場合

雨天の場合等、G端子法でも低い値(GΩ以下)となることがあります。小雨、湿度 95%、

工事による 4時間停電後での絶縁測定結果を例①に示します。

測定例①

試験電圧 1kV 2kV 3kV 4kV 5kV 6kV

E測定 0.01GΩ 0.01GΩ 0.01GΩ 0.01GΩ 0.01GΩ 0.01GΩ

G測定 0.06GΩ 0.05GΩ 0.04GΩ 0.03GΩ 0.03GΩ 0.03GΩ

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G端子値>E測定値ですが、測定値は 1GΩ以下です。この場合は、ケーブルの絶縁が劣化

していると直ちに判断するのではなく、G端子法でも判断困難として、各種の調査を行いま

す。次節に、私が個人的に使用している判定方法を、ご参考として示します。

※ 要因としては高圧ケーブル端末処理

部の水濡れ・テーピング劣化による内部へ

の水侵入等による沿面放電、接地が異なる

高圧機器が 1 号柱にあること等の各種の

ものが考えられます。

1号柱端末での沿面放電が生じると、沿

面放電による抵抗を RLとすれば、右図の

ようになります。Rc と並列になるため、

G 測定でも補正することができません。

VCT等の高圧機器Rn2の接地が異なる場

合は、G端子法による補正が不完全になる場合が考えられます。

2.復電前の受電可否判定(停電中の簡易絶縁診断) topへ

E 測定または G 測定でも良好の結果が得られなかった場合に、可変電圧高圧メガを活用

して復電の可能性を考える、私が行っている試験方法です。通常は E 端子法で行います。

ケーブル単独ではなく、VCT等の付帯設備も接続のままです。

2-1 電圧依存性(弱点比)試験

試験電圧を変化させて、それぞれの電圧での絶縁抵抗値を測定します。縦軸を試験電圧

kV、横軸が絶縁抵抗値 GΩでグラフ化することで絶縁値の電圧依存性を調べます。

※ 試験電圧を 1kV 単位で、通常での対地電圧の波高値以上である DC6kV まで変動さ

せることで、1 線地絡時の 10kV での健全性を推測することができます。線間電圧 6600V

では、通常の対地電圧は 3810V、1線完全地絡時は線間電圧の 6600Vになります。それぞ

れの波高値は√2倍となるため、5390V、9330Vです。低圧での絶縁測定を、AC100V系統

では DC125V、AC200V系統では DC250V で行うことと同様の考え方です。

・測定例① 依存性がない場合

絶縁抵抗値は 0.01GΩですが、全ての試験電圧で

変化せずに安定しています。グラフを延長して考え

ても、1 線地絡時の波高値である 10kV でも同様の

絶縁は保たれると考えられます。継続使用可能とは

考えられますが、原因の特定はできないため、経過

観察が必要です。

試験電圧が、設定電圧に対して大きく下がる場合

0

2

4

6

8

0 0.005 0.01 0.015

電圧依存例①

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は、後述する試験電圧の垂下特性にかかると考えられるので、要注意となります。この例で

は認められませんでした。

・測定例② 依存性がある場合

試験電圧 6kVで 5GΩですが、グラフは 3kV以上

で大きく曲がって(変曲して)います。曲線を延長

して考えると、通常の使用では問題ありませんが、

10kV(1線地絡時の波高値)では絶縁不良となる恐

れがあります。①同様に要注意です。

この測定例のケーブルでは漏れ電流試験でも異

常と考えられる現象が認められています。次項に測

定結果を示します。絶縁劣化が始まっていると考え

られます。

※ 弱点比

ケーブル絶縁体に異常がある場合には、3kV 前後に依存例②のような測定値に大きな変

動がある変曲点が現れるとされています。ケーブル単体の絶縁としては、①の例よりも②の

例の危険性が高いと考えています。1kV 測定のみでは、絶縁管理には不安があるといわれ

る理由の一つです。

二つの電圧で測定した絶縁抵抗値の比は、弱点比と呼ばれます。かつては電圧可変メガが

手軽に使用できなかったため、電圧依存性の有無を、単圧メガ 2台(例えば 2.5kVと 5kV)

を使用して測定していました。変曲点が無ければ絶縁抵抗値は電圧に比例する、有れば比例

しないという判断です。現在は電圧可変メガが出回っているので、1kV毎に測定を行えば、

より詳細に電圧依存性を確認することができます。測定時間の増加もわずかであり、高圧メ

ガの有効活用になります。

2-2 漏れ電流試験

一定の DC電圧を連続して印加した場合の、漏れ

(充電)電流の変動により CVケーブルの健全性を

推測します。ケーブルの異常の有無により、漏れ電

流の変動には右図のような特性があるとされてい

ます(日本電気技術者協会ホームページ)。

記録計出力端子がある高圧メガ(DI-11等)では

記録計を接続すれば作成することができます。メー

カ推奨ではアナログ記録計ですが、市販の廉価版デ

ジタルロガーでも、ある程度は可能です。小型のデ

0

2

4

6

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0 5 10

電圧依存例②

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ジタルロガーを使用して測

定している例と、前項の電

圧依存性②のケーブル(電

圧依存性あり)で、3kV印

加で作成したグラフを図に

示します。

サンプル周期は 2ms で

す。わずかですが、漏れ電流グラフに変動があることが分かります。ケーブル絶縁に何らか

の異常が生じていると考えられます。特性例にあるような、明確なデータが取れたことはあ

りませんが、図示できる記録があれば、ケーブル更新を提案する場合の説明資料として効果

があります。

記録計を準備していない場合、メガ指示値を、例えば 10秒毎に読み取ることでも電流の

増加傾向の簡易的なグラフ化が可能です。二人一組で、一人が読み取り、他の一人が記録を

行います。メガ値は漏れ電流の逆数なので、漏れ電流グラフの逆の形になります。キック現

象はメガ値の急な振れにより確認できます。より簡単な判断基準としては、メガの指示値が

数分間安定していることになります。

※ 使用中の高圧 CV ケーブルで内部に水トリーの発生傾向がある場合は、5kV 以上では

急速に進展するとの見解(IEEE・2012年)があります。数分は連続して電圧をかけるため、

試験は 5kV 未満で行います。絶縁破壊試験にならないような注意が必要です。電圧依存性

の確認試験でも同様です。竣工検査等での新品 CVケーブルは、製造方法の改良により、製

造時の水トリーは無いとされています。

2-3 垂下特性の利用(受電直前の可否判断)

停電中の E 測定、G 測定共に測定値が小さい場合に、受電が可能かどうかの判定をメガ

の試験電圧が安定にかかるかで判定します。DI-11では電圧表示器の窓(矢印)の数値で確

認できます。図は雨天での長時間停電で、E測定 0.01G、G測定 0.03Gであった設備での、

受電設備一括測定の例です。設定電圧 6kV で、電圧表示は

5.95kV(常用対地電圧の波高値以上)で安定していたため、

雨天による影響と判断し、受電しました。受電後は次節の受

電中の測定を行い、いずれも異常は認められませんでした。

私の経験では、6kV 設定で 4kV 以上が安定に表示される

場合は、絶縁抵抗値が低くとも受電可能です。3kVに設定し

た電圧が、測定時に下がる(ほぼ印荷と同時に発生します)状態では、再度の GR 動作でト

リップする場合が多発します。

この方法は台風などの原因不明した設備で、早期復電を必要とする場合の判断にも利用

できます。

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※ 垂下特性

高圧メガには被試験物の絶縁破壊を防止するために、絶縁抵

抗値が低い場合、試験電圧が垂下する(自動的に低くなる)特

性があります。DI-11の特性図(取説)を右図に示します。絶

縁抵抗値 0.003GΩでは、3kVに設定すると 2.5kVまで低下、

設定電圧を 3kV以上にしても試験電圧は 3kVに低下すること

を示しています。前項の例、設定電圧 6kV、0.01GΩでの試験

電圧 5.95kVは垂下特性から外れている現象です。

垂下特性は現状での絶縁値低下には対応できますが、「絶縁

低下傾向?」には対応していないと考えることもできます。CV

の水トリーでは、トリー貫通して絶縁が破壊する直前まで、絶

縁値が正常のような状態を示すなど、絶縁測定が不安定である

ことがあります。垂下特性のみに頼って、常用対地電圧以上を使用することは、水トリーの

急速進行等による絶縁損傷の危険があると考えています。2-1の電圧依存性も考えて、試験

電圧を選定することが必要です。

3.復電後の絶縁再確認(簡易高圧活線絶縁診断) topへ

E 測定、G 測定ともに指示が低い状態で、何とか受電できた場合の再確認を行う方法で

す。受電状態での測定で高圧部全体と CV ケーブル部の絶縁が受電継続に支障が無いであ

ろうことの推測ができます。

原因不明の地絡リレー動作後に復電した場合の受電継続の判断、運用状態での簡易的な

活線絶縁測定としても応用できます。

3-1 SOG入力電圧測定

E 測定と同様に、高圧部全体の絶縁を推測します。PAS 内部には低圧用 ELB と同様に、

高圧三相一括の ZCT があり、地絡電流 Io 成分を測定しています。図・左が PAS 内部の結

線図、図・右は分解状態です。

測定値は電圧(mV)信号として SOG の Z1-Z2 端子に入力されます。受電中の Z1-Z2

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信号で、ZCT 以降の高圧部全体の絶縁状態を推測できます。測定は普通のデジタルテスタ

でも可能ですが、0.1mV 以下のレンジが使用できるテスタであれば、より安心です。地絡

電流 Ioがなければ、Z1-Z2端子間は 0mVが原則です。トリップ動作を行う 200mA での信

号電圧は SOGメーカ毎に異なります。SOG試験時に、Kt-Lt間の試験電流(地絡電流)を

変化させると、Z1-Z2端子間電圧が比例して変化します。

右図は Z1-Z2 電圧が 0mV でなかった(浮

いていた)ために測定を行った例です。PAS

及び SOGの新品更新で 0mVになりました。

更新推奨時期に達していたことと、P1-P2の

極性が逆のまま使用されていたことが原因

であったと考えられます。

※ 低圧の絶縁監視装置と同様のものとし

て、Z1-Z2 電圧の連続監視を付帯し、高圧絶

縁監視機能付き SOGとして販売しているメーカがあります。

地絡による零相電圧(Vo)を Y1-Z2(E)で推測することもできます。Vo は配電線の捻

架状態で発生するため、配電系統の切替えで変動することに注意が必要です。Z1-Z2と Y1-

Z2の電圧は、SOG誤動作がある場合は運用中の測定をメーカから推奨される測定です。メ

ーカ毎に異なる価です。下図に戸上社取説の数値を示します。測定作業による PAS 誤動作

はないと説明されています。

3-2 ケーブルシールド線の電流測定

G測定と同様に、高圧ケーブルのみの絶縁を推測します。高圧ケ

ーブルでの CV不良での地絡電流が生じた場合、シールドが断線し

ていなければ、全ての電流はシールド線に流れます。シールド線の

三相一括測定で本体絶縁の不良を検出ができます。1 相毎では、芯

線とシールド(接地)間の静電容量による常時電流 Icがある(相毎

の位相差があります)ため、5~10mA 程度以上の電流が測定され

ます。一括測定では三相の Ic がベクトル的に合成されることでキ

ャンセルされ、故障電流のみが表示されます。

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シールド線ではなく、高圧ケーブル(シールド部を含む)の一括測定では、ケーブル以降

の負荷設備(キュービクルなどを含む)の地絡電流が測定されます。前項の Z1-Z2 電圧測

定での測定と同じ範囲の推定になります。

・測定方法

検電器でシールド線の無電圧を確認後、高圧部近接作業として高圧用クランプメータを

使用して測定します。誘導と考えられる指示が表示されることがある場合は、クランプを移

動すると指示値が変化します。通常は最も少なくなる値を読みます。

シールド線には、芯線からの静電容量で高電圧が発生する危険があります。取り付けが緩

むと、接触部からは火花と放電音が発生します。接地線であるため無電圧である、高圧部に

触れなければ良いとの考えでの低圧クランプメータの使用は危険です。雨天中の測定も避

けるべきです。日を改めての、再確認としての測定が安全です。通常の配置では一相毎の測

定よりも三相一括の測定が容易です。停電中に、受電中の測定を考えての、可能な範囲での

整形を行っておけば安全です。

・運用中の測定値の検討例

38sq、概 50m の CVT ケーブルでの測定値を、耐圧試験結果との比較で示します。この

例は計算値と実測値が極めてよく合う例です。

R相 14mA、S相 16mA、T相 15mA、一括 1mA

このケーブルの耐圧試験では、3相一括 10350Vでの全電流 133mAでした。

運用時の対地電圧を 3750V と考えると、1相当たりの電流は

133×3750/10350×1/3 ≒ 16mA

耐圧試験及び運用中ともに静電容量による電流と考えれば、納得できる値になります。三相

の個別のシールド線電流は大きな差がある場合があります。

・運用中の健全性確認

運用中に継続した測定を行うと、シールドの健全性確認ができま

す。誘導などの機器配置に特徴的な測定誤差を考えて、絶対値のみ

でなく、同じ測定点での経時変動を見つけることが必要です。ケー

ブル一括測定でも同様です。運用中にも端子緩み、シースの損傷に

よるシールド腐食、二重接地状態の発生等の各種の劣化が生じる恐

れがあります。図は極端な例ですが、運用中に除草中で傷ついた

CVTケーブルシースです。

停電点検の間隔が延長され、ケーブルを切り離しての高圧絶縁測定ができない場合は、活

線でもできる高圧部管理とも考えられます。

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※ 盤用地絡リレーの ZCTでのシールド線処理も、ケーブル絶縁劣化による電流がシール

ド線に流れるという発想で行われます。電源側でシー

ルド接地を行う場合は、右図のようにシールド線の

ZCT内部への引き戻しを行う(ZCTに奇数回の地絡電

流を通す)とケーブルを含む ZCT以降の地絡保護がで

きます。行わないとケーブルを含まない負荷設備の保

護となります。

電源側の ZCTであってもシールド線を引き戻していない場合もあります。シールド線に

流れる電流の意味と、処理でのリレー動作の違いを知っておくことが必要です。

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