岡山醫學會雜誌第47年...

1

Transcript of 岡山醫學會雜誌第47年...

岡 山醫學會雜誌第47年 第12號(第551號)昭 和10年12月31日 發 行

OKAYAMA-IGAKKAI-ZASSHI

Jg. 47. Nr. 12. Dezember 1935.

166.

616. 71-002. 1-002. 3

所 謂"Gliedertyphus"ノ 數 例 ニ 就 テ

岡山醫科大學津田外科教室(主任津田教授)

葛 城 雷 次 郎

[昭和10年10月16日 受 稿]

Aus der Chirurgischen Klinik der Okayama Ned. Fakultiit

(Vorstand: Prof. Dr. Seiji Tsuda).

Uber einige Falle des sog. schwersten "Gliedertyphus".

Von

Raijiro Katsuragi.

Eingegangen am 16. Oktober 1935.

Ich traf 3 Falle von akuter eitriger

Osteomyelitis (schwere Markphlegmone)

an, die alle kurz nach der Operation den

todlichen Ausgang nahmen. Es handelte

sich hierbei um sog. "Typhus des mem

bres" (Gliedertyphus) nach den franzosi

schen Forschern, dessen foudroyante Er

scheinungen verliefen genau so wie bei

akuten Fieberkrankheiten. Alle meinen

Falle wurden von septischer Pyamie be

gleitet, und die Staphylokokkeu waren im Eiter nachweisbar, die manche Autoren

schon angaben. Die Kranken waren alle

Knaben unter dem 12. Lebensjahre. Obwohl nach Rontgenbefund noch keine

Veranderung des Knochens wahrgenommen wurde, stromte durch Knochen

aufmeisselung eine grosse Menge Eiter

1

3222 葛 城 雷 次 郎

heraus. Da hier die Fruhdiagnose sehr

schwierig ist, so ware die von Herrn

Matsubayashi empfohlene Nachweis

methode der Fettropfen im Blute zu

versuchen. (Autoreferat.)

内 容 目 次

第1章  緒 言

第2章  症 例

第3章  考案竝結論

主要文獻

第1章  緒 言

急 性 化 膿 性 骨髓 炎 ハ吾 人 ノ 日常屡 々遭 遇 ス

ル疾 患 ニ シテ,敢 テ奇 トスル ニ足 ラザ ル所 ナ

リ.然 レ ドモ本 庄 ガ特 ニ小 兒或 ハ少青 年 者 ヲ

犯 スニ當 リテ ハ,頗 ル重 篤 ナル全 身 症 状 ヲ招

來 シ,加 フル ニ其 ノ經 過極 メテ電 撃 性 ナル ガ

タ メ,往 々須 臾 ニ シテ生 命 ノ脅威 セ ラル ル ニ

至 ル コ トア リ.斯 ク ノ如 キ ハ蓋 シ比 較 的 稀 ニ

見 ル所 ニ シテ,佛 蘭 西 學徒 ノ所 謂"Typhus

des membres"(Glieder-od. Knachentyphus)

ト稱 スル所 ノ モ ノ ニ他 ナ ラ ズ,又 一般 ニ特 發

性 汎 發性 骨 髓 炎(Osteomyelitis diffusa spon

tanea)ト シテ知 ラル ル所 ノモ ノナ リ.之 ガ成

因 ニ關 シテ ハ一 般 骨髓 炎 ト異 ル コ トナ ク,外

傷 ニ依 リ誘 發 セ ラル ル コ ト多 ク,又Vitamin

C缺 乏 ハ之 ガ感 染 ヲ助 長 スル コ トア リ ト稱 セ

ラル.原 因菌 トシテ最 モ重要 ナ ル ハ黄 金 色葡

萄 状球 菌 ニ シテ,好 ンデ長 管 状 骨 ヲ犯 シテ 骨

髓 及 ビ骨膜 ニ多 發 性 ノ化 膿 性 炎症 ヲ惹 起 セ シ

メ,屡 々骨 壞 死,化 膿 性 關 節炎 等 ヲ併 發 シ,

且 遠隔 臟器 ニ轉 移 性 化 膿 竈 ヲ形 成 シ,遂 ニ敗

血 膿毒 症 等 ノ タ メ ニ死 ノ轉歸 ニ委 ネ ラル ル ニ

至 ル モ ノ トス.

余ハ最近極メテ重篤ナル本症ノ3例 ニ遭遇

セシガ,不 幸何 レモ術後幾何ナ ラズ シテ鬼籍

ニ入レリ.茲 ニ其ノ症状ノ起始竝經過ノ概要

ヲ報告 シ,一 般臨牀醫家 ノ批 判 ニ委 ネン ト

ス.

第2章  症 例

第1例  松○修○  12歳  〓 小學生

入院  昭和7年2月22日

退院  同  年3月6日(死 亡)

血族的關係

父系 ノ祖母ハ既ニ腦溢 血 ニテ死亡 セルモ,父

系祖父竝母系祖 父母 ハ共 ニ健 存 ス.父 母同胞3

名何 レモ健在,患 者ハ末子ナ リ.

既往症

出産正常,母 乳 榮養 ニ シテ麻疹 ハ既ニ經過 セ

リ.幼 時 ヨリ全 ク健康 ニシテ著 患ヲ識 ラズ.

現病歴

2月15日 學校 ニテ體操 中蹉跌 シテ右〓趾 ニ負

傷 セ シモ疼痛 ナキタメ放置 セ リ.然ルニ18日 夜

ニ入 リ,著 シク尿意頻 數 トナ リ且左大腿 ニ鈍痛

ヲ覺 ユルニ至 リ,逐 日増 惡セ リ.更 ニ2-3日 前

ヨリハ發熱 スル ニ至 リ,特 ニ昨日以來 左大腿 ニ

劇 甚ナル壓痛 ヲ訴 へ,且 該 部 ニ輕度 ノ腫 脹 ヲ認

ムル ニ至 レリ.約4日 前 ヨリ食思不振 及 ビ睡眠

障碍 アルモ.惡 寒戰慄 ヲ覺 エ タル コ トナ シ.

現症

全身所見

體格榮養共 ニ中等度,顔 貌 正常 ナ リ.體 温

39.0℃,脉搏95至,整 實 ニシテ緊張良 好ナ リ.

2

所 謂"Gliedertyphus"ノ 數 例 ニ就 テ 3223

兩側頸部淋 巴腺數箇腫脹 セ リ.胸 腹部諸臟 器

ニ異常 ヲ認 メズ.食 思不振,睡 眠障碍 ア リ.

局所所見

右〓趾 ノ内側ハ紫赤色 ニ變色 シ,其 ノ部ニ

挫創 アルモ分 泌物竝壓痛 ヲ缺如 シ,創 面ハ殆

ド上皮 ヲ以テ被覆 セ ラル.左 大腿 ハ高度 ノ瀰

漫性腫脹 ヲ呈 セルモ,皮 膚 發赤及 ビ靜脉擴張

ヲ認 メズ.觸 診 スルニ甚 ダシク疼痛ア リ.特

ニ前面及 ビ後下面 ニ於 テ著明 ナ リ.局 所熱感

著 シキモ波動 ハ明瞭 ナラズ.左 股關節及ビ膝

關節 ノ自他動運動 ハ共 ニ正常 ナ リ.

左 大腿骨「レン トゲ ン」寫眞撮影 ヲ行 ヒシモ

變 化 ナ シ.

診斷 左大腿骨急性化膿 性骨髓炎

入院後經過

23/II 手術施行.

「アヴエルチン」麻醉 ノ下 ニ,左 大腿 ノ外側 ニ

於テ縱走セル約20cmノ 弓状 切開 ヲ加 ヘ,外 股

筋 ヲ上方 ニ壓排 シ,大 腿骨 ヲ露出 ス.大 腿骨 ノ

下1/2部ニ於 テハ骨膜ハ全 ク剥離 シ,其 ノ周圍 ニ

瀰漫性 ニ膿瘍 ヲ形成 シ,黒 褐色血性 ノ膿 汁 ヲ多

量 ニ排出ス.骨 膜 ノ剥離 セル部位 ニ於テ多數 ノ

骨瘻 ヲ設 クルニ,骨 髓腔 ヨ リモ多量 ノ膿 汁 ヲ排

出ス.膿 瘍 ハ骨 ノ後面 ノ ミナ ラズ,關 節腔 ノ後

方ニモ廣 ク波及 セル ガ故 ニ,此 部ニ 「ヨー ドフ

オルムガーゼ」竝 「ゴム」管 ヲ挿 入 シ,更 ニ骨 ノ

後方 ニモ同樣 ノ處置 ヲ施 セ リ.

膿 汁 ノ培養竝塗抹標本ニ依 リ葡萄状球菌 ヲ證

明セ リ.

24/II 體温依然下降 セザルモ疼痛 ハ稍 々輕 減

セ リ.

25/II 0.05%「 リヴア ノール」液持續 洗滌ヲ開

始 ス.

26/II 再手術 施行.

前囘 ノ手術 時 ニ設 ケタル皮膚竝筋膜縫 合絲 ヲ

拔 去 ス ル ニ,骨 ノ後 面 ニ尚 ホ多 量 ノ膿 汁 ノ潴 溜

セ ル ヲ認 ム.膿 瘍 ハ上 方 ニ モ廣 ク波 及 セル状 況

ニ在 リ.大 腿 骨 ノ外 側 ニ示指 頭 大 ノ瘻 孔3箇 ヲ

作 リ之 ヲ擴 大 シテ骨 窓 ヲ設 置 ス.更 ニ骨 ノ後 面

ヲ通 リ,大 腿 ノ内側 面 ニ モ2箇 ノ對 孔 ヲ設 ケ,

「ヨ ー ドフオ ル ム ガ ー ゼ」及 ビ 「ゴム」管 ヲ挿 入

ス.更 ニ後 方 ニ モ同 樣 ノ處 置 ヲ施 シ.大 腿 ノ外

側 ニ於 テ皮 膚 縫 合 ノ ミヲ施 行 ス.骨 窓 内 ニハ 「ヨ

ー ド フオ ル ム ガ ー ゼ」ヲ挿 入 セ リ.

27/II  體 温 下降 シ37.5℃ トナ レ リ.持 續 洗

滌.

29/II  體 温 再 ビ上 昇 シ39℃ ヲ下 ラザ ル モ,大

腿 ノ腫 脹 ハ 著 明 ニ減 退 セ リ.持 續 洗 滌.

2/III  著變 ナ キ モ 大 腿 ノ腫 脹 ハ著 明 ニ輕 減 セ

リ.食 思 稍 々恢 復 ス.尿 中糖(+), Insulin 0.3cc

皮 下 注 射.

4/III  體 温 依 然 トシテ39° 臺 ヲ下 ラズ.壞 死

ニ陷 レ ル筋 膜 及 ビ骨 膜 ヲ除 去 シ,持 續 洗 滌 ヲ繼

續 ス.

6/III  今 朝5時 頃 ヨ リ,突 如 一般 状 態 險 惡 ト

ナ リ,冷 汗淋 漓,脉 搏 頻 數 ニ シテ 意識 溷 濁 ス.

午後2時 ニ至 リ輸 血 ヲ施行 セ シモ,脉 搏 ハ 刻 々

細 小微 弱 トナ リ,遂 ニ強 心 劑 モ全 ク奏 功 セ ザ ル

ニ至 リ, 2時40分 鬼 籍 ニ入 ル.

第2例  水○良○  8歳  〓 小學生

入院  昭和7年11月2日

退院  同  年  同 日(死 亡)

血族的關係

父系 ノ祖 父母 共ニ健存,母 系 ノ祖 父ハ 既ニ死

亡セルモ祖母 ハ健在 ナ リ.父 母同胞4名 何 レモ

健康 ニ シテ患者 ハ末子 ナ リ.

既往症

出産 正常,母 乳榮養 ニシテ麻疹ハ 既ニ經過 セ

リ. 5歳 ノ時疫痢 ニテ約40日 間臥牀 セ シコ トア

3

3224 葛 城 雷 次 郎

リ.

現病歴

本年10月30日 夕 刻,認 ムベキ原因 ナク突如

發熱 シ同夜40℃ ニ達 セ リ.更 ニ同夜半 ニ及 ビ,

右膝關節部 ヨ リ大腿 ニ亙 リ劇甚 ナル疼痛 ヲ訴 へ

翌日 ニ至ル モ尚ホ發熱疼痛共 ニ輕減セ ズ.醫 師

ノ診 ヲ乞 ヒ,右 大腿 ニ冷罨法 ヲ施 セ リ.昨 朝來

體温38℃ 前後 ニ下降 セ シモ,疼痛ハ依然劇 甚ナ

リ.

現症

全身所見

年齡相應 ノ發育状態 ニ在 リ.體 温38℃,脉

搏甚 ダ頻數 ニシテ約170ヲ 算 シ,整 調 ナルモ

軟弱 ナ リ.胸 腹部諸臟器竝淋巴腺系統 ニ著變

ヲ見 ズ.

局所所見

右 大腿ハ高度 ノ瀰漫性腫脹 ヲ呈 セル モ皮膚

ノ發赤ヲ認 メズ.壓 痛極 メテ著 明ナ リ.

右 大腿骨「レン トゲ ン」寫眞撮影 ヲ行 ヒシモ

變化 ナシ.

診斷 右大腿 骨急性化膿 性骨髓炎

入院後經過

2/XI即 刻手術 ヲ施行 ス.右 大腿 ノ下内側部

ニ於 テ,縱 ニ約10cmノ 皮切 ヲ加 へ大腿骨 ヲ露

出スルニ.骨 膜ハ全 ク剥離 セラ レ其 ノ周 圍ニ血

性漿液性膿汁 ヲ證明ス.大 腿骨 ヲ約8cmニ 亙

リ開鑿 スル ニ,濃 厚 ナル膿汁 ノ多量 ニ湧出スル

ヲ認 ム.依 テ該部 ニ「ヨー ドフオルムガ ーゼ」ヲ

挿入 シ,更 ニ大腿 ノ中央外側部 ニ同 樣 ノ皮切 ヲ

加へ,其 ノ部 ニ於テ大腿骨 ヲ露出 シテ檢 スルニ,

骨膜剥離等 ハ認 ムル能ハザ リシモ,之 ヲ開鑿セ

シニ骨髓腔 ニハ既 ニ膿汁 ノ潴溜セル ヲ證明 シ得

タ リ.此 部ニモ「ヨー ドフオ ルムガーゼ」ヲ挿 入

シテ術 ヲ了ス.

膿 汁 ノ培 養及ビ塗抹標本 ニ依 リ,葡 萄 状球菌

ヲ證 明 セ リ.

術 後 一 般状 態 ニ著 變 ナ カ リシ モ,脉 搏 ハ次 第

ニ頻 數細 小 トナ リ,午 後9時,體 温39.5℃,脉

搏132至,極 メテ微 弱 ナ リ.依 テ輸 血(50g)ヲ

行 ヒ シ モ,一 般 状 態 刻 々險 惡 トナ リ,午 後11時

遂 ニ鬼 籍 ニ入 ル.

第3例  内○澄○  7歳  〓

入院  昭和8年11月4日

退院  同  年11月13日(死 亡)

血族的關 係

母系 ノ祖父ハ腦溢血 ニテ既 ニ死 亡セルモ,母

系祖 母竝父系 組父母ハ何 レモ健存 ス.父 母 健在,

同胞 ナシ.

既往症

出産正常,母 乳榮養 ニシテ麻疹 ハ既 ニ經過 セ

リ. 4歳 ノ時「ヂ フテ リー」及 ビ「パラチ フス」ニ

罹患 セシコ トア リ.

現病歴

本年10月25日 頃(約10日 前)右 足蹠 ニ存 在

セシ示指頭大 ノ鷄眼 ヲ除去 セン トテ,自 ラ針 ヲ

以テ突 キ刺 シタルコ トア リ.同月27日 醫 師 ヲ訪

ヒ,該 鷄眼 ノ剔 出ヲ受 ケシガ當時輕度 ノ化膿 ヲ

認 メタリ ト云 フ.然 ルニ翌 日午後 ニ至 リ,體 温

38℃ ニ上昇 シ,右 膝 關節部 ニ輕度 ノ腫 脹疼痛 ヲ

覺 エタ リ.最 近更 ニ右大腿外 側部ニモ疼痛 ヲ訴

フルニ依 リ,醫 師 ノ診 ヲ受 ケ濕布,「 トリパ フラ

ヴイ ン」注射 及 ビ穿刺 等 ヲ受 ケタルモ輕快 セズ

今 日ニ至 ル.

現症

全身所見

體 格中等度,榮 養稍々衰 へ,顔 貌苦悶 ノ状

ア リ.體 温39.6℃,脉 搏138至,頻 數ナル

モ緊 張良好ナ リ.胸 腹部諸臟 器ニ 著 變 ヲ見

ズ.

4

所 謂"Gliedertyphus"ノ 數 例 ニ就 テ 3225

局 所所見

右大腿 ノ上半部 ニ於テ其 ノ外,前 及 ビ内面

ニ亙 リ高度 ノ腫脹 ア リテ壓痛著明 ナ リ.股 淋

巴腺ハ腫脹 シ壓痛 ヲ訴 フルモ,股 關節運 動 ニ

著變 ナシ.右 下肢 ハ膝關節 ニ於テ中等度 ノ屈

曲位 ニ固定 セ ラレ,著 シク外旋 シ且外轉位 ヲ

取 レリ.

右大腿骨竝股關節 ノ「レン トゲ ン」寫 眞撮影

ヲ行 ヒシモ變化 ヲ認 メズ.

診斷  右大腿骨急性化膿性骨髓炎

入院後經過

4/XI  即時手術 ヲ施行ス.

右大腿 ノ前外側部 ニ於テ縱走 スル約6cmノ

皮切 ヲ加ヘ,脂 肪組織及 ビ筋膜 ヲ切離スルニ漿

液性滲出液多量ニ湧 出ス.炎 症性浮腫 ノ存在ス

ルガ タメナ リ.筋 肉束 ヲ左右 ニ壓排 シテ大腿骨

ヲ露出スルニ,該 骨周圍 ヨ リ汚穢ナル色 調 ヲ有

スル溷濁セル膿 汁 ノ多量 ニ湧出 スル ヲ認 ム.大

腿骨 々膜 ノ變色剥離等 ハ認 メラレザルモ,骨 ノ

内,外 及 ビ前面ハ膿汁 ヲ以テ包圍セ ラルル ニ依

リ,此 部ニ「ヨー ドフオルムガ ーゼ」ヲ挿 入ス.

一般状態不良 ニシテ,骨 ノ開鑿 ヲ施 行スル コ ト

ナク術 ヲ了 ス.膿 汁 ノ培 養及 ビ塗抹標本 ニ依 リ,

葡萄状球菌 ヲ證 明セ リ.

6/XI  中等度 ニ膿汁瀦溜 セ リ.「ヨー ドフオル

ムガーゼ」 ヲ挿入 シ,且1日4囘,葡 萄状球菌

「アンチヴイールス」ニ依 ル洗滌 ヲ施行ス.

7/XI  體温依然39℃ ヲ下 ラズ.創 ノ上 内方 ニ

多量 ノ膿汁潴溜ア リ. 0.05%「 リヴアノール」液

ニ依ル持續 洗滌ヲ開始 シ,且 輸 血(100g)ヲ 行

フ.

8/XI  症状著變 ナシ.持 續洗滌 ヲ繼續 ス.

檢尿 所晃:脂 肪球(-),糖(-),蛋 白質

(+)

9/XI  左手背 ニ腫脹 ヲ生 ジ波動 ヲ觸知 ス.體

温40.7℃ ニ上 昇 シ,且 腦 膜 刺 戟 症 状 ア リ.左 手背

及 ビ腦 膜 ニ轉 移 ヲ形 成 セ ル モ ノ ト思 惟 セ ラル.

本 朝來 血 便 ヲ排 泄 シ,一 般 状 態 甚 ダ險 惡 ナ リ.

10/XI  膿 汁 ノ潴 溜 輕 度 ニ シ テ創 ノ状 況 良 好 ト

ナ リ,一 般 状 態 モ亦 稍 々輕 快 セ リ.依 然 「リ ヴア

ノ ール」液 持 續 洗 滌 ヲ繼 續 シ,且 輸 血(150g)ヲ

行 フ.午 後10時 半,體 温39.6℃ ニ シテ 脉 搏 頻

數細 小,意 識 稍 々溷 濁 セ リ.

11/XI  體 温39.9℃,脉 搏 甚 ダ シク頻 數 ニ シテ

且 極 メテ 微弱 ナ リ.創 底 ニ於 ケ ル濃 汁 ノ潴 溜 ハ

著 シク 減退 セ シ ガ故 ニ持 續 洗 滌 ヲ中 止 ス.依 然

血 便 ヲ排 泄 ス.輸 血(100g)施 行.

12/XI  膿 汁 ノ排 出 少 量 ニ シ テ,創 ノ状 况 著 變

ナ シ.葡 萄 状 球 菌 「ア ノチ ヴ イ ー ル ス」ニ依 ル創

ノ洗 滌 ヲ行 フ.體 温38℃ 臺 ニ下 降 セ シ モ,脉 搏

殆 ド160ヲ 算 シ極 メテ細 小,時 ニ觸 知 シ得 ザ ル

コ トア リ.四 肢 末 端 厥 冷 ニ シ テ「チ ア ノ ーゼ」ヲ

呈 ス.午 前中 輸 血100g,午 後6時 更 ニ80gノ

輸 血 ヲ施 行 セ シモ,一 般 状 態 毫 モ恢 復 ノ兆 ナ ク,

夜 ニ入 リテ脉 搏 ハ極 メテ頻 數 トナ リ,遂 ニ算 シ

得 ザ ル ニ 至 ル.

13/XI  午 前1時 遂 ニ鬼 籍 ニ人 ル.

第3章  考案竝結論

1)成 因

本症ハ病理解剖學的ニ之ヲ急性化膿性骨髓

炎,急 性化膿性骨膜炎及ビ急性化膿性骨炎 ノ

3型 ニ分 ツコトヲ得ベシ.然 レドモ之等3者

ガ各々單獨ニ發現 スルコトハ稀ニシテ,最 モ

屡 々急性化膿性骨髓骨膜炎 ノ形ニ於テ發現 ス

ルモノニ シテ,就 中骨髓或ハ骨膜ニ原發 スル

コト多ク(特ニ原發竈骨髓ナル コト最モ多 シ)

骨炎(骨皮質ノ炎症)ハ 第二次的變化 トシテ續

發性ニ惹起セラルルヲ常 トス.而 シテ之ガ成

5

3226 葛 城 雷 次 郎

因 ニ關 シテ ハRosenbach, Kocher氏 等 ノ實

驗 的 研 究 ニ端 ヲ發 シ,古 來 種 々論 議 セ ラ レ シ

所 ニ シテ,其 ノ傳 染 徑 路 トシテ現 今 一般 ニ信

ゼ ラル ル モ ノ次 ノ如 シ.

a)外 傷性感染

骨 ノ外傷 ニ際 シ外部 ヨリ病 原菌 ガ直接骨髓 ニ

感染 スルモノニシテ,開 放性骨 折或 ハ四肢切斷

等 ノ後 ニ見 ラルルコ トア リ.

b)隣 接性感染

隣接 セル臟器特 ニ骨,筋 肉等 ノ化膿,蜂 〓織

炎,〓 疽或ハ齒根部化膿性炎症等ニ續 發ス.

c)轉 移性(血 行性)感 染

身體何 レ カ ノ部 位 ニ化膿竈 或 ハ傳染性疾 患

〔皮膚 皸裂,創 傷,口 腔 内化膿,咽 頭部疾 患(扁

桃腺炎,齲 齒等),肺 臟,腸 管等 ノ疾患〕 ノ存在

スル際 ニ,血 管内ニ病 原菌 ノ侵入 スルガタメ血

行 ニ依 リ骨髓 ニ轉移 ヲ生ズルモ ノニ シテ,日 常

屡々認 メラ ル ル モ ノナ リ,之 即 チ所謂原發性

(特發性)感染 ト稱 セラルルモ ノニ シテ,時 トシ

テ身體 内ノ原發病竈 ノ不明 ニシテ,却 テ骨髓 ニ

於 ケル轉移 ノ ミ著明 ナルガタメ,恰 モ骨 ニ原發

セル カノ觀 ヲ呈 スルモ ノトス.

而 シテ本 症 ハ最 モ屡 々長 管 状 骨 ニ發 生 シ,

短 骨,扁 平骨 ニ ハ稀 ニ シ テ 管 状 骨 關 節 部 ニ

モ尠 ナ シ. Trendelハ1110例 ノ長 管 状 骨 骨

髓 炎 中,大 腿 骨508例(45.8%),脛 骨386例

(34.8%),上 膊 骨102例(9.2%),橈 骨43例

(3.9%),腓 骨36例(3.2%)及 ビ尺 骨35例

(32%)ヲ 認 メタ リ.長 管状 骨 ニ於 ケ ル好 發 部

位 ハ專 ラDiaphyseノ 先 端 或 ハMetaphyse

ニ限 局 セ リ.蓋 シLanger , Lexer氏 等 ニ依 レ

バ,此 部 ニ於 ケル血 管 ハ終 末 動 脉 ヲ形 成 シ,

且 毛 細 血 管網 極 メ テ豊 富 ニ シテ,生 理 的 ニ著

シク鬱 血 状 態 ニ在 リ,加 フル ニ血 管徑 比較 的

大 ナル ガ タ メ血 流 緩 漫 トナ リ,容 易 ニ細 菌 ノ

停 滯 ヲ招 來 シ遂 ニ栓 塞 ヲ惹 起 スル ニ至 ル モ ノ

ニ シテ,發 育最 モ旺 盛 ナ ル若 年 者 ニ於 テ本 症

ノ頻 發 ヲ見 ル ハ此 理 ニ基 ク モ ノ トス.而 シテ

骨 髓 ハ 一 ノ淋 巴性 組織 ニ シテ腺 組織 ニ於 ケル

ガ 如 キ定 型 的疾 病 像 ヲ呈 示 ス.之 ガ特 徴 トモ

稱 スベ キハ 組織 自體 甚 ダ シク 白血球 ニ富 ム事

實 ニ シテ,從 テ骨髓 ニ於 ケル 病 型 ハ著 明 ナル

浸 潤 性 乃至 増殖 性 炎 症 ナ リ トス.然 レ ドモ

Buchner氏 等 ニ依 レバ,骨 髓 ハ諸 種 ノ抗 菌 體

ノ主 要 産 地 ト目 セ ラ レ,炎 症(感 染)ノ 發 現 ニ

對 シテ ハ比 較 的 大 ナ ル抵 抗 力 ヲ具 有 ス ル ガ故

ニ,抵 抗 力弱 キ少數 病 原 體 ノ侵 入 ス ル コ トア

ル モ發 病 ニ至 ル コ トナ キ ヲ常 トス.故 ニ骨 髓

炎 ノ完 成 ニ對 シテ ハ,吾 人 ハ何 等 カ ノ誘 因 的

動 機 ノ存 在 ヲ假 想 セザ ル ヲ得 ズ.即 チ桑 波 田

氏 ハ實驗 的Barlow氏 病 「モ ル モ ツ ト」ニ於 テ,

骨 髓 炎 ノ完 成 ニ成 功 シ,從 テVitamin Cノ

缺 乏 ハ本 症 ヲ誘 發 ス トナ セル モ,齋 藤,關 口

兩 氏 ハVitamin C缺 乏 時 本症 ノ發 現 スル ハ,

全 身 抵 抗 減 弱 ニ依 ル全 身 感 染 ノ1部 分 現 象 ニ

過 ギ ズ トナ シ,香 川 氏 ハ實 驗 的急 性 化 膿 性 骨

髓 炎 ニ於 テ,本 症 ハ 内 在 的後 天 的 獲 得 性血 液

「ア チ ドー ジス」ニ依 テ誘 發 セ ラ レ,内 在 的 後

天 的獲 得性 「アル カ ロ ー ジス」ニ依 テ 治 癒機 轉

ヲ營 ム トナ セ リ.然 レ ドモ古 來 本 症 ノ誘 因 ト

シテ最 モ 重要 視 セ ラ レシハ外 傷 ニ シテ, Lexer

氏 ハ外 傷 ニ依 ル 骨髓 炎 ノ發 生 機 轉 ニ關 シ次 ノ

如 キ見 解 ヲ抱 懷 ス.

1)血 行 ニ侵 入 セ ル 病 原體 ハ 外傷 部 位 ニ移 行

ス(Locus minoris resistentiaeノ 形 成).

2)骨 髓 内 ニ保 留 セ ラ レ タル 病 原 體 ハ 外 力 作

用 ニ依 リ活動 力 ヲ獲 得 ス ル ニ至 ル.

6

所 謂"Gliedertyphus"ノ 數 例 ニ就 テ 3227

3)包 埋 セ ラ レ タ ル陳 舊 病竈 ガ再 ビanfri

schenセ ラル(Ruhende Infektion).

而 シテ外 傷 ト本 症 發 現 ニ至 ル時 間 的 關 係 ハ

極 メテ愼 重 ニ判 斷 セ ラ ル ベ キ モ ノニ シテ,即

チ潜 伏期 ニ關 シテ ハ諸 家 ノ見 解區 々タ リ.或

ハ2-3日 トナ シ,或 ハ最 大8日 トナ ス モ ノ ア

リ.獨 逸 國 立保 險 局 ニ於 テ ハ10週 間 ヲ以 テ

最 大限 度 トナ セル モ,此 際 必 ズ明 瞭 ナル所 謂

Bruckensymptomeノ 存 在 ヲ必 要 トナ セ リ.

余 ノ例 ニ在 リテハ,第1例 ハ發 病約7日 前,

右 〓 趾 ニ受傷 シ,第3例 ニ於 テ モ約10日 前 右

足蹠 ニ小 創 ヲ得 タ ル既 往 症 ア リ.然 ル ニ第2

例 ニ在 リテ ハ何 等誘 因 ト認 ム ベ キモ ノ ナ ク,

又 前2者 ニ於 テ モ所 謂 骨 髓 ノ震 盪 ヲ起 サ シム

ル ニ足 ルベ キ鈍 的外 傷 ノ既往 ヲ證 明 セズ.

2)病 原 菌

本症 ノ催 炎 菌 ニ關 シテハRosenbach, Ko

cher氏 等 ノ 實 驗 的 研 究 ニ 端 ヲ發 シ,遂 ニ

Becker氏(1883)ハ 黄金 色葡 萄状 球菌 ガ最 モ

重 要 ナル原 因 菌 ナ ル コ トヲ確 定 セ リ.從 來 之

ガ催 炎菌 ト稱 セ ラ レシモ ノ甚 ダ多 ク,黄 金 色

或 ハ 白色葡 萄 状球 菌,溶 血 性 連 鎖 状 球 菌,肺

炎双 球菌,肺 炎 桿 菌,大 腸 菌,緑 膿 菌,「プ ロ

テ ウス」桿 菌, Friedlander氏 桿 菌,「 イ ンフ

ル エ ンザ」菌,「 チ フス」菌,「 パ ラ チ フ ス」菌,

淋菌 及 ビMicrococcus militens等 ア リ.最

近痘 瘡,麻 疹,猩 紅 熱 等 ノ急 性 傳 染 性熱 性病

ニ際 シテ骨髓 炎 ノ發 生 スル コ トア リ ト主 張 セ

ル モノ ア リ.而 シテ之 等 ノ細 菌 中最 モ多 キ ハ

黄 金色 葡 萄 状 球 菌 ノ單 純 感 染 ニ シテ,板 澤 及

ビ須 田 氏 ハ80%,齋 藤 關 口兩 氏 ハ75.9%ニ 於

テ之 ヲ證 明 シ,余 ノ3例 ニ於 テ モ何 レモ葡 萄

状 球 菌 ヲ認 メタ リ.之 ニ依 テ見 ル モ,特 ニ發

育 旺 盛 ナ ル幼若 者 ニ在 リテハ,血 行 内 ニ侵 入

セ ル葡 萄 状 球 菌 ハ好 ンデ骨髓 ヲ侵 襲 スル傾 向

ヲ有 ス トナ ス見 解 ハ否 定 スル 能 ハザ ル モ ノ ノ

如 シ.而 シテ連 鎖 状 球菌 或 ハ 白色葡 萄 状球 菌

ノ單 獨 感 染 ハ遙 ニ稀 ニ シテ,共 ニ3.5%(齋 藤,

關 口)ヲ 示 ス ニ過 ギ ズ.然 レ ドモ連鎖 状球 菌

性 ノモ ノハ特 ニ症 状 劇 甚 ニ シテ,所 謂 惡 性 骨

髓 骨膜 炎 ト稱 セ ラル ル モ ノノ大 部 ハ本 菌 ニ 依

ル モ ノ トス.又Hublerニ 依 レバ 白色 葡 萄 状

球 菌 ハ 黄金 色葡 萄 状 球 菌 ニ變 化 シ得 ル モ ノ ナ

ル ガ 故 ニ,本 菌 モ亦 重 要 ナ ル意 義 ヲ有 ス トナ

ス ヲ至 當 トスベ シ.其 ノ他 ノ細 菌 ハ何 レモ 混

合 感 染 ニ際 シテ證 明 セ ラル ル ニ過 ギ ズ,所 謂

病 原 菌 ト稱 スベ キ モ ノ ニ非 ズ.然 レ ドモ 「チ

フス」菌 ニ在 リテ ハ稍 々趣 ヲ異 ニ シ,腸 「チ フ

ス」發病 後4-6週 ニ シテ發 現 ス ル コ ト最 モ多

ク,其 ノ好 發 部 位 ハ肋 骨 及 ビ肋 軟 骨 接 合 部 ニ

シテ,稀 ニ脛 骨,骨 盤,胸 骨及 ビ脊 椎 骨等 ノ

侵 サ ル ル コ トア リ.

3)年 齡竝 性 別

急 性 化 膿性 骨 髓 炎 ハ 一般 ニ幼 若 者 ニ多 發 ス

ル ヲ常 トス. Garre氏 ハ8-17歳 ニ96%ヲ 認

メ, Lexer氏 モ亦 同 一年 代 ニ最 モ多 シ トナ シ,

Muller氏 ハ春 機 發動 期(18歳 マ デ)ニ 頻 發 ス

トナ セ リ. Barrie, Lucke氏 等 ハ若 年 者 ニ特

有 ナ リ トシ, Frank氏 ハ21歳 以 下 ニ多 シ ト

ナ シ, Johansson, Klemm, Haaga, Schmidt,

Panomarew氏 等 何 レモ之 ニ賛 同 セ リ.松 林 氏

ハ445例 ノ化 膿 性 骨髓 炎 ヲ統 計 的 ニ觀 察 シ,

7-17歳 ニ於 テ ハ63.4%ヲ 占 ム ル ニ 反 シ, 22

歳 以 上 ノ成 人 ニ在 リテ ハ 僅 ニ5.6%ヲ 示 ス ニ

過 ギ ズ ト云 ヘ リ.齋 藤 關 口兩 氏 モ亦477例 ニ

就 テ觀 察 シ, 11-15歳 ノ間 ニ最 モ多 ク63.5%

7

3228 葛 城 雷 次 郎

ヲ示 シ, 21歳 以 上 ニ ハ僅 ニ15.1%ヲ 見 ル ニ

過 ギズ トナ セ リ.而 シテ所 謂Gliedertyphus

ト稱 スベ キ重 症 骨 髓 蜂 〓 織 炎 〓關 シテ ハ,齋

藤 關 口兩 氏 ハ 僅 ニ5%ニ 於 テ ノ ミ之 ヲ認 メ,

年 齡 ハ5-15歳 ノ間 ニ最 モ 多 ク79.2%ヲ 占

メ, 6-8歳 之 ニ次 ギ, 5歳 以下 ニハ僅 ニ4.2%

ヲ 見 ル ニ過 ギズ.性 別 ハ男 子 ニ多 ク, 〓:♀=

3:1ニ 相 當 ス ト報 告 セ リ.余 ノ3例 ニ於 テ モ

總 ベ テ男 兒 ニ シテ,年 齡 ハ12歳, 8歳 及 ビ7

歳 ヲ示 シ諸 家 ノ報 告 ニ 一致 セ リ.

性 別 ニ關 シテハ,一 般 ニ男 子 ニ多 シ トナ ス

ハ諸 家 ノ見解 ノ一致 セル所 ニ シテ齋藤 關 口兩

氏 ハ 〓:♀=2.8:1,松 林 氏 ハ4.4=1ト 報

告 セ リ.之 ヲ既往 ニ於 ケ ル 文 獻 ニ 徴 ス ル モ

Hubler氏 ハ1.58:1, Lucke氏 ハ2.4:1,

Muller氏 ハ2.5:1, Haaga, Schmidt氏 等 ハ

何 レモ3.4:1, Demme氏 ハ4.7:1ヲ 示 シ男

子 ニ頻 發 ス トナ セ リ.之 恐 ラ ク本 症 ガ外傷 ニ

依 テ誘 發 セ ラル ル コ ト多 キヲ示 ス モ ノ ニ シ

テ,男 子 ハ女 子 ニ比 シ一般 ニ外 傷 ニ曝 露 セ ラ

ル ル コ ト多 キガ 故 ナ ル ベ シ.

4)診 斷

定 型 的 骨 髓 炎 ノ診 斷 ハ一般 ニ決 シテ難 事 ニ

非 ズ.然 レ ドモ余 ノ例 ニ於 ケル ガ如 ク,極 メ

テ重 症 ナ ル所 謂Gliedertyphusニ 在 リテ ハ,

經 過 極 メ テ迅 速 ナ ル ガ タ メ,早 期 診 斷 ノ適 否,

從 テ治 療 方針 ノ當 否 ハ 其 ノ豫 後 ニ至 大 ノ影 響

ヲ及 ボ ス ベ キ ヤ論 ナ シ.然 ルニ發 病 ノ初 期 ニ

在 リテ ハ,何 等 本症 特 有 ノ症 状 ナ ク,「 レン ト

ゲ ン」所 見 モ亦 陰 性 ニ終 ル ヲ常 トシ,少 ク ト

モ發 病 後8-14日 ニ非 ザ レバ 骨髓 炎 特 有 ノ所

見 ヲ現 ハ サザ ル ヲ常 トス.從 テ屡 々急 性 化 膿

性 筋 炎,皮 下 蜂 〓織 炎,急 性 熱 性 傳 染 病,淋

巴 管炎,關 節 「レウマチ ス」等 ト誤 認 セ ラ レ,

遂 ニ敗 血 膿 毒症 等 ヲ併 發 シ,空 シク不 幸 ノ轉

歸 ヲ取 ラ シム ル ニ至 ル コ ト稀 ナ ラズ.

松 林 氏 ハ本 症 ノ早 期 診 斷法 トシテ,蓚 酸 加

里 「ニー ル ブ ラウ ズル フア ー ト」ニ依 ル 血 液 中

脂 肪 滴 證 明法 ヲ考 案 シ之 ヲ推 獎 セ リ.即 チ氏

ハ23例 ノ急 性 化 膿 性 骨髓 炎患 者 ニ就 キ,本 法

ヲ試 ミタ ル ニ其 ノ20例(87%)ニ 於 テ 血 液 中

ニ脂 肪 球 ヲ證 明 シ得 タ リ.而 シテ20例 中,發

病 後14日 以 内 ノ モ ノ ハ15例 ニ シテ,其 ノ 中

13例(87%)ニ 於 テ 本法 陽 性 ナ リシ ニ拘 ハ ラ

ズ,「 レ ン トゲ ン」所 見上,既 ニ 骨 ノ變 化 ヲ認

メ得 タ ル ハ 僅 ニ2例(13%)ニ 過 ギザ リキ ト云

フ.茲 ニ於 テ氏 ハ更 ニ急 性 化 膿 性 筋炎,皮 下

蜂 〓織 炎 等 ノ軟 部 化 膿 性 疾 患 ニ就 キ本 法 ヲ試

ミタ ル モ血 中脂 肪 滴 ノ證 明 ハ陰 性 ニ終 ル ヲ常

トセ リ.故 ニ本 法 ハ,未 ダ「レン トゲ ン」所 見

陰 性 ナ ル ニ拘 ハ ラズ,既 ニ敗血 膿 毒症 等 ノ重

篤 ナル合 併症 ヲ併發 セル電 撃 性 骨髓 蜂 〓織 炎

ノ早期 診 斷 ニ際 シテ ハ 一 應試 ム ベ キ價 値 ア リ

ト思惟 ス.

5)療 法

吾 人 ハ急 性 化 膿 性 骨髓 炎 ヲ其 ノ臨 牀 的 症 状

ニ依 リ輕 症,中 等症 及 ビ重 症 ノ3型 ニ區 別 ス.

而 シテ前2者 ニ對 スル 治 療 方 針 ニ關 シテ ハ 今

日 ニ至 ル モ尚 ホ諸 家 ノ見 解 ヲ異 ニ シ, (1)膿

瘍 ノ形 成 セ ラ レ炎症 ノ限 局 ス ル ヲ待 チ テ,單

純 切 開(軟 部)ヲ 加 フル ニ止 ム ベ シ トナ ス モ ノ

(Sauerbruch, Payr, Bier u. a.), (2)先 ヅ

單 ニ骨 膜 下 膿 瘍 ノ切 開 排 膿 ノ ミニ止 メ數 日後

ニ至 ル モ體 温 下 降 セズ 一般 状 態 依 然 不 良 ナ ル

場 合 ニ於 テ二 次 的 ニ穿 骨 術 ヲ行 フベ シ トナ ス

モ ノ(Muller, Glaser, Narath u. a.)及 ビ

8

所 謂"Gliedertyphus"ノ 數 例 ニ就 テ 3229

(3)苟 モ急 性 化膿 性 骨髓 炎 ノ診 斷 確 定 セバ,

躊躇 スル所 ナ ク可 及 的 早期 ニ穿 骨或 ハ鑿 骨 ヲ

敢 行 シ,根 本的 ニ化 膿 竈 ヲ除 去 スベ シ トナ ス

モ ノ(Garre, Lexer, Kirschner, Enderlen,

Oelecker u. a.)ニ 分 ツ コ トヲ得 ベ シ.然 レ ド

モ重 症 骨髓 炎 即 チ"Gliedertyphus"ト 稱 セ

ラルル モ ノニ在 リテハ,極 メテ早 期 ニ敗 血膿

毒 症 ヲ併 發 シ速 ニ死 ニ至 ルガ 故 ニ,之 ガ 治療

方 針 樹立 ニ際 シテ ハ徒 ラニ狐 疑 逡 巡 スル ヲ許

サ ズ.從 テ(1)及 ビ(2)ノ 不 適 當 ナル ハ 自 明

ノ理 ニ シテ,宜 シク(3)ニ 述 ベ タル所 ニ據 リ

最 モ迅速 ニ診 斷 ヲ確 定 シ,可 及 的早 期 ニ病 竈

ノ開放 排 膿 ヲ策 ス ベ キ モノ ト確 信 ス.蓋 シ余

ノ例 ニ在 リテハ,比 較 的早 期 ニ切開 排 膿 ヲ試

ミタル ニ モ拘 ハ ラズ,遂 ニ不 幸 ニ シテ何 レモ

死 ノ轉 歸 ヲ免 レシムル 能 ハ ザ リキ.之 既 ニ敗

血 膿毒 症 ヲ併 發 セ シガ タ メ ニ シ テ,早 期 排 膿

(骨 開鑿)ノ 緊 要 不 可缺 ナル 所 以 ノモ ノ實 ニ茲

ニ存 ス.

結 論

(1)余 ハ所 謂Gliedertyphusト 稱 スベ キ

重 篤 ナル敗 血 症 性 骨髓 蜂〓 織 炎 ノ3例 ヲ報 告

セ リ.

(2)患 者 ハ 總 ベ テ 男 兒 ニ シテ,年 齡 ハ12

歳, 8歳 及 ビ7歳 ナ リキ.

(3)比 較的 早期 ニ切 開排 膿 ヲ企 テ シモ,何

レモ不 幸 ノ轉歸 ヲ免 レ シム ル能 ハ ザ リキ.術

前 既 ニ敗 血 膿 毒症 ノ存 在 セ シガ タ メ ニ他 ナ ラ

ズ.

(4)膿 汁 ノ鏡 檢 及 ビ培養 ニ依 リ何 レモ葡 萄

状 球 菌 ヲ認 メ得 タ リ.

(5)骨 「レン トゲ ン」所 見 ハ何 レモ陰 性 ナ リ

キ.斯 カル例 ニ在 リテ ハ,松 林 氏 ノ血 液 中脂

肪 滴 證 明 法 ハ特 ニ早期 診 斷上 有 意 義 ナ ル モ ノ

ト思惟 ス.

(6)可 及的 早期 ニ切 開 排 膿 ヲ策 ス ベ シ.然

ラザ レバ豫 後 常 ニ不 良 ナ リ.

擱筆 スルニ臨 ミ,終 始御懇篤 ナル御指導 ト

御校閲 ノ勞 ヲ賜 ハ リシ恩師津田教授 ニ深謝 ス.

主 要 文 獻

1) 赤 井 貞 一,北 越 醫 學 會雜 誌,第39年,第1

號,大 正13年4月. 2) Bockenheimer, Ph., All

gemeine Chirurgie, 1914. 3) Garre, Bruns' Beitr. z. klin. Chir., Bd. 10, 1893. 4) Haaga,

Bruns' Beitr. z. klin. Chir., Bd. 5, 1889.

5) 濱 田 虎 之 助,關 西 レ ン トゲ ン協 會 會誌,第3卷,

第2號,昭 和5年4月. 6) 平野 重 藏,日 本 外 科 學

會 雜誌,第34囘,第2號.昭 和8年5月. 7) 板 澤

庄 五 郎,須 田 春 夫, Mitteil. uber allg. Path. u.

path. Anat., Bd. 6, Nr. 2.昭 和5年6月. 8) 香 川

弘 毅,大 阪 醫 學 會 雜 誌,第31卷,第11號,昭 和7年

11月. 9) 桑 波 田 秀 枝,日 本 外 科 學 會 雜 誌,

第29囘,第30囘,昭 和3年3月,昭 和4年3月,臨 時 號.

10) Lexer, Allgemeine Ghirurgie, 17. Anfl.,

Bd. 1. 11) 松 林 清 廣,北 越 醫 學 會雜 誌,第43年,

第4號,昭 和3年8月. 12) 松 林 清廣,日 本 外 科

學 會雜 誌.第30囘,第1號,昭 和5年1月. 13) 松 林

清 廣,北 越醫 學 會雜 誌,第45年,第8號,昭 和5年8月.

14) 松尾 信 吉,實 地 醫 家 ト臨 床,第7卷,第8號,

昭 和5年8月. 15) 中 山茂 樹,順 天堂 醫 事研 究 會

雜 誌,昭 和7年12月;抄 録,醫 學 中 央 雜誌,第37卷,

昭 和8年. 16) Oelecker, Bruns' Beitr. z. klin.

Chir., Bd. 132, 1925. 17) 大 池豐 三 郎,千 葉

醫 學 會雜 誌,第4卷,第3號.大 正15年5月. 18)

大 池 豐 三 郎,千 葉 醫 學 會雜 誌,第4卷,第6號,大 正

15年11月. 19) Rosenbach, Deut, Zschr . f.

Chir., Nr. 10, 1878. 20) 齊 藤 堅 治,關 口利 一,

東 北醫 學雜 誌,第15卷,昭 和7年7月. 21) 高 橋

了 介,日 本 外 科 學 會 雜 誌,臨 時 號, 7,昭 和8年3月.

22) 柳 壯 一,實 驗 醫報,第191號,昭 和5年9月.

23) 矢 島 忠 久,日 本 外 科寳 凾,第10卷,第4號,

昭 和8年7月.

9