支援者が安心して退院支援に 取り組める体制づくり · 2017. 7. 10. · 市町...

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1 栃木県 県北障害保健福祉圏域 栃木県県北障害保健福祉圏域の県北地区では、H26年度に実施した調査で精神科 病院に1年以上入院している者のうち、条件が整えば退院可能な者は41名であった。 うち半数は「家族から反対がある」状態で、家族との関係調整や住まいの確保など、 退院する環境を整える働きかけが必要と考えた。また本人の「現実認識の乏しさ」 「退院意欲の乏しさ」が多く挙げられており、入院中に地域の支援者との接点を持つ ことにより現実認識が促され、退院意欲を引き出す余地のあることが伺えた。 一方で管内の相談支援事業所のほとんどは未だ精神障害者の退院支援の経験がない ことから、まずは管内の精神科病院から地域移行可能者を抽出し、病院・相談支援事 業所・市町がチームを組んで退院支援を行い「支援者が安心して退院支援に取り組め る体制づくり」をめざし、情報交換会等の充実に取り組んでいる。 支援者が安心して退院支援に 取り組める体制づくり 資料6-3 平成 29年度 第1回 精神障害に も対応した地域包括ケアシステム構築担当係長等会議「事前課題」シート

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栃木県 県北障害保健福祉圏域

栃木県県北障害保健福祉圏域の県北地区では、H26年度に実施した調査で精神科病院に1年以上入院している者のうち、条件が整えば退院可能な者は41名であった。うち半数は「家族から反対がある」状態で、家族との関係調整や住まいの確保など、退院する環境を整える働きかけが必要と考えた。また本人の「現実認識の乏しさ」「退院意欲の乏しさ」が多く挙げられており、入院中に地域の支援者との接点を持つことにより現実認識が促され、退院意欲を引き出す余地のあることが伺えた。

一方で管内の相談支援事業所のほとんどは未だ精神障害者の退院支援の経験がないことから、まずは管内の精神科病院から地域移行可能者を抽出し、病院・相談支援事業所・市町がチームを組んで退院支援を行い「支援者が安心して退院支援に取り組める体制づくり」をめざし、情報交換会等の充実に取り組んでいる。

支援者が安心して退院支援に取り組める体制づくり

資料6-3平成29年度 第1回精神障害にも対応した地域包括ケアシステム構築担当係長等会議「事前課題」シート

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2※H29年4月時点

市町村数 9市町〔3市町〕

人口 376,702人〔215,762人〕

精神科病院の数 5病院〔2病院〕

精神科病床数 1,094床〔519床〕

入院精神障害者数(H28年6月末)

3か月未満:93人(10.2%)〔44人(10.3%)〕

3か月以上1年未満:112人(12.3%)〔59人13.8%)〕

1年以上:707人(77.5%)〔324人(75.9%)〕

うち65歳未満:322人〔154人〕

うち65歳以上:385人〔170人〕

退院率(H28年6月末)

入院後3か月時点:45.8%〔46.1%〕

入院後6か月時点:79.2%〔84.2%〕

入院後1年時点:85.4%〔86.8%〕

相談支援事業所数

基幹相談支援センター:-〔-〕

一般相談事業所数:15〔7〕

特定相談事業所数:41〔26〕

障害福祉サービスの利用状況(H29年3月)

地域移行支援サービス:2人〔-〕

地域定着支援サービス:31人〔3〕

(自立支援)協議会の開催頻度(H28年度) 2回/年

保健・医療・福祉関係者による協議の場の有無と数

障害保健福祉圏域 有・無 1か所

市町村 有・無 9か所

基本情報

1 県北障害保健福祉圏域圏域の基礎情報

県北障害保健福祉圏域

〔 〕内は県北地区

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2 精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築に向けた取組概要(全体)

県北障害保健福祉圏域

県北圏域連絡会・県北地区(3市町)・矢板地区(4市町)・烏山地区(2市町)

情報交換会

検討会

矢板地区 烏山地区

市町自立支援協議会

障害保健福祉圏域会議

県北地区

情報交換会 情報交換会

・精神科病院、相談支援事業所、健康福祉センター・支援方法の検討・実施、支援状況の確認、問題点の抽出等

・精神科病院、委託相談支援事業所、市町(保健、福祉)、健康福祉センター・精神障害者の支援体制のあり方や、地区全体の活動方針の検討・整理

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関係機関の役割

市町村ごとの保健・医療・福祉関係者による協議の場

協議体の名称設置根拠

構成メンバー

協議の内容

協議の結果としての成果

障害保健福祉圏域ごとの保健・医療・福祉関係者による協議の場

協議体の名称設置根拠

県北圏域地域移行支援連絡会設置要綱

構成メンバー

協議の内容

協議の結果としての成果

3 精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築に向けた協議の場

県北障害保健福祉圏域

検討中

検討中

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4 圏域における取組の経緯

県北障害保健福祉圏域

事業内容 時期 H28年度行動計画 結果 H29年度 行動計画(案)

情報交換会6月

12月

H27年度に抽出した7事例の各々について、病院・事業所・行政がチームを組み退院支援を実施。情報交換会において支援の進捗状

況を確認し、工夫や課題を共有。

H28年9月をもって7事例すべてが退院。地域相談に初めて取り組む事業所が制度活用等について助言を得たり、各機関が退院支援のアイディアを共有する機会となった。

「事例から学ぶ」「実践を積む」⇒新たに退院支援事例を抽出し、退院支援の経過を情報交換会にて把握する。

「ピアサポートについて知り、支える」⇒ピアの視点を取り入れた試みを、引き続き導入していく。

「地域資源の理解と相互交流」⇒障害福祉サービス事業所見学(大田原市)を実施する。

「地域包括ケアシステムの構築」⇒市町の自立支援協議会相談支援部会における課題の共有、国の施策提言を意識した事業展開と評価の機会づくり

検討会7月3月

県北地区の地域課題をふまえた地域移行支援のあり方、退院支援の方向性の検討

病院(看護、ソーシャルワーク)、事業所(一般、委託)、行政(保健師、事務担当者)の各代表者により地域課題をふまえて方向性を検討した。「事例から学ぶ」「実践を積む」「ピアサポートについて知り、支える」活動の必要性について意見が出された。

ピアサポートの視点か

ら10月 当事者の体験から支援者が学ぶ機会

づくり長期入院を経て退院し就労生活を送る当事者に協力を得て、体験談のインタビューと自宅訪問を実施。

研修 9月 退院支援に必要な地域資源の理解(障害福祉サービス事業所見学)

那須町内の3事業所(入所、就労支援)、1病院を見学。併せて、病院で医師らと地域相談従事者との情報交換を実施。

連絡会 2月 地域相談や退院支援に関する広域的な情報交換の機会の確保

地域包括ケアシステム、精神保健福祉法改正、障害者差別解消法に基づく意思決定支援等をテーマとした話題提供と情報交換。

H24年度~「病院が送り出す力の強化」「地域が迎え入れる力の強化」H27年度 「地域移行支援の実績を5件積む」H28年度 「病院は病院全体に地域相談の取組が広まるように、委託相談支援事業所は一般相談支援事業所に

地域相談の仕組みを指導助言できるように、行政は病院と地域との橋渡しになれるように、それぞれ取組を進める」

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1.病院・事業所・行政がチームとなって退院支援に取り組んできた実績がある。2.退院支援における工夫や課題について地域の関係機関が協議する場(情報交換会、

検討会、連絡会)が既にある。

特徴(強み)

5 圏域の取組における強みと課題

1.退院支援に係る地域相談に対応できる指定一般相談支援事業所が少ない。2.地域定着支援の強化(地域でSOSをキャッチしたときのネットワークづくり、病

院だけで抱えない退院後支援のしくみ)が必要。3.病院・事業所・行政・当事者間で「ピアサポート」についての認識が多様。4.従来の圏域の取組を、国の提唱する施策の枠組みに位置づけさらに発展させるため

の評価と整理が必要。

課題

県北障害保健福祉圏域

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6 精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築に向けた指標の推移

NO 指 標 平成26年度 平成27年度 平成28年度

①1年以上の精神科病院在院患者数(人)(各年6月30日現在)

790〔347〕

730〔344〕

707〔324〕

② 各年度 地域移行支援利用者数(実人数)(人)11〔2〕

14〔10〕

16〔16〕

③ ②のうち、退院した者の数(実人数)(人)2〔1〕

④ ピアサポーターの養成者数(実人数)(人)

⑤ ④のうち、活動している者の数(実人数)(人) 1【記入上の留意点】③について ※利用年度の翌年度以降に退院した者については、利用年度に計上して下さい。

※退院後に再入院となった者については、退院した者(1人)として計上して下さい。⑤について ※養成年度以降に、実際の活動を開始した者については、養成年度へ計上して下さい。

県北障害保健福祉圏域

〔 〕内は県北地区

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7 精神障害者の地域移行推進のための平成29年度の取組スケジュール

病院は病院全体に地域相談の取組みが広まるように、委託相談支援事業所は一般相談支援事業所に地域相談の仕組みを指導・助言できるように、行政は病院と地域の橋渡しになれるように、それぞれ取組みを進める。

平成29年度の目標

県北障害保健福祉圏域

事業内容 時期 H29年度 行動計画

構築推進事業実施要綱

(1)

協議(2)

住居(3)

ピア

(4)地域移

(5)評価

(6)研修

(7)

措置(8)

家族(9)

検討会

5月県北地区の地域課題をふまえた地域包括ケアシステム構築の検討(29年度の活動計画案作成)

○ ○

3月県北地区の地域課題をふまえた地域包括ケアシステム構築の検討(活動評価と30年度への提言)

情報交換会6月 新たに退院支援事例を抽出し、病院・事業所・行政のマッチングを図る。

○ ○

10月 支援の進捗状況を確認しつつ、工夫や課題を共有する。

ピアサポートの視点から

9月当事者の体験から家族・支援者が学ぶ

複数の当事者に協力を得て、当事者の立場から「回復」「仲間」「役割」等について話してもらう。

○ ○

1月当事者の体験から支援者が学ぶ

長期入院を経て退院し、就労している当事者に協力を得、体験談のインタビューと自宅訪問を実施

措置入院者の退院支援

毎月随時

受理会議ケア会議

措置入院者及び緊急措置入院者の退院後の医療等の継続支援について検討

○ ○ ○

事業所見学 9月退院支援に必要な地域資源の理解

障害福祉サービス事業所等の見学大田原内の事業所(生活支援、就労支援)及び病院訪問を予定

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精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築推進事業について

(1)圏域連絡会におけるアドバイス「地域包括ケアシステムの構築に関する課題と取組み」について、圏域のこれまでの取組を評価し発展させていくための講話に協力いただきたい。

(2)「評価」の視点からの助言平成30年度に向け、県の医療計画や市町の障害福祉計画と整合性をとりながら、住ま

いやサービスの質・量、地域の互助のあり方等を客観的に把握し、基盤整備の上で特に力を入れていくべき取組みは何か、市町とともに明らかにしたい。その進め方や方向性について助言いただきたい。

広域ADに期待していること

(1)情報交換会におけるコンサルテーション(当事者の力を引き出す関わり等)退院支援に初めて取り組む相談支援事業所が助言を得たり、多様な視点から退院支

援のアイディアを得たりする機会となるよう、県内他圏域の取組み等をふまえた助言をお願いしたい。特に当事者の力を引き出す取組みについて情報提供いただきたい。

(2)随時、市町の力を引き出す支援についての助言市町自立支援協議会等において、地域移行支援の現状を地域課題として取り上げる

よう働きかけたいと考えているが、地域移行に係る基盤整備について、市町主体の取組を促進し、社会資源の充実を図れるような支援について助言いただきたい。

密着ADに期待していること