水中歩行は陸上の歩行にまさるか 一水中トレッドミ …...2 ) Treadmill walking...

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水中歩行は陸上の歩行にまさるか 一水中トレッド ミノレによる歩行の運動強度についてー 国 學 院 大 學  (共同研究者)同 同         山  田  佳  弘 東 京 学 芸 大 学   柴  田  義  晴 Is Walking in Water Superior to Walking on Land ? ―Exercise Intensity of Treadmill Walking in Water by Ritsuko Nihei , Hideki Hara , Yoshihiro Yamada 尺ひkugakuinび7z 佃ぽsi眇 Yoshiharu Shibata Tokyo Gakugei IL /戒脚杤i印 ABSTRACT Intensity of exercise in water is not established, because it is difficult to measure in water. The purpose of this study was to eva 】uate the intensity of treadm Ⅲwalking in water , and to compare it with walking on land. Subjects were three healthy adult male and females . ’We measured oxygen consumption  (Vo2 )and heart rate (HR ) in water and on a dry treadmill walking at speeds of 3 .5 to 5 .5 km /h with in a stepwise increments of 0 .5 kmyh 。… …… Water and room temperatures were 29 ~30 で . The results were as follows  1) Standing in water showed a lower HR than on land , though デサントスポーツ科学VO 冂3 193-

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水中歩行は陸上の歩行にまさるか

一水中トレッドミノレによる歩行の運動強度についてー

国 學 院 大 學  仁 平 律

(共同研究者)同 原 英

同         山  田  佳  弘

東 京学 芸大学  柴  田  義  晴

Is Walking in Water Superior to Walking on Land ?

―Exercise Intensity of Treadmill Walking in Water―

by

Ritsuko Nihei, Hideki Hara, Yoshihiro Yamada

尺ひkugakuinび7z佃ぽsi眇

Yoshiharu Shibata

Tokyo Gakugei IL/戒脚杤i印

ABSTRACT

Intensity of exercise in water is not established, because it is

difficult to measure in water. The purpose of this study was to

eva 】uate the intensity of treadmⅢwalking in water , and to compare

it with walking on land. Subjects were three healthy adult male and

females .

’We measured oxygen consumption  (Vo2 )and heart rate (HR ) in

water and on a dry treadmill walking at speeds of 3.5 to 5.5 km/h with

in a stepwise increments of 0.5 kmyh。… … …

Water and room temperatures were 29 ~30 で.

The results were as follows :

1 ) Standing in water showed a lower HR than on land , though

デサントスポーツ科学VO 冂3

193-

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V02 in water showed a higher value than that on land.

2 ) Treadmill walking in water showed higher Vo2’ and HR than

walking on land through e χercise.

3 ) The intensity of treac!mill j ゛alking 111 water was ぞ卜`35 %Vt)2一一・

at 3.5 k・/h・ 3!`’46%Vo2 -,3t 4.0 klll/h・ 65 71 %V02 。3t 5・O k°/

h√76 ‾?5%Vo211 -at 5.5 km/h and that of walking on land was 24

29% V02 。at 3.5-5 .5㎞yhj

It was suggested that walking in water might be adequate for

improvement of aerobic work capacity .

要   旨

水 中運動 の運動強 度 につ いて は, 水中で の測定

が困難 で あ るこ となどか ら不確実 な点 が多 い. そ

こで 本研 究 では, ト レッド ミルによ る水中 歩行 の

運動 強 度 を 調 べ, 陸 上 の歩 行 と 比 較 す る こ と に

よ って, そ の特性を 明 らかにす るこ とを試 みた.

その結 果, 水中 の5 .0㎞/hの歩 行 におけ る運動

強 度ば65 ~71 %Vo2-

で あり・ 陸上歩 行 ではけ

24 ~29 %Vo2-

であ った. 陸上 の歩 行で同 ‾ の

‘運動 強度 を得 るた めに は,かな り速 い(9 .6 km/h)

歩 行が必 要 であ る19)ことが わか った. ま た陸上歩

行 に比較 し て水中歩 行で は, 低 い心拍 数で 陸上 と

同量 の酸 素摂取 量 が得 られ ることが わか った.\

今後 の運動 処方 プロ グ ラム作成 に あた って, 水

中歩 行を 種目 のバ リエ ーシ ョンと して取り入 れ る

ため の指 針を 得 るこ とがで きた. .・.・.     ・.I

緒  言

近年,健康や体力への関心がますます高まり運

動の日常化を目指したライフスタイルの設定が考

えられるようになってきた.公共施設の運動指導

やスポーツクラブ等では,健康の維持増進を目的

とした運動処方が行われている.健康のためには

有酸素的運動か適していることはいうまでもなく

その運動強度は↓ 最大酸素摂取量の50 ~80 % が

有効であるという研究成果が数多くみられ,それ

に基づいた内容でジョギングやウォーキング等の

種目が運動処方に用いられているレ

一方,同じ有酸素的運動であっても水泳をはじ

め水中における運動プログラムについては,水中

での運動強度の測定が困難なことからその運動強

度については不確実である.水中運動は陸上運動

と比較すると,浮力があることにより下肢への負

担を軽減する,水圧により末梢から中枢部への静

脈血還流を助ける等,生体への負担を軽減しなが

ら運動が行える.そこで,水治療やリハビリテー

ションなどにも多く用いられている.また,室内

プールの充実により水泳はオールシーズン可能な

スポーツになり,地域スポーツとしても盛んに

なってきた.このような状況の中,水中リズムダ

ンスや水中歩行などを楽しむ光景がみられるよう

になった♪ しかし,それらの運動の効果や強度に

ついては,=まだ不確実な点が多いように思われ

る.               ご

そこで本研究では,水の特性を利用し,泳げな

くとも可能な水中運動としての,水中歩行中の心

電図および酸素摂取量の測定を行い,その運動強

度を明らかにすることを試みた.

1 .実験方法 十

被検者は,水泳を週1 ~3 回程度行っている成

デサントスポーツ科学Vol . 13

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人男女3 名で,プロフィールは表1 に示したとお

りであった.        十

実験1

歩行は,室内プールに付設した水中トレッドミ

ル(フローミル:ヤマハ・FM 1200 D : よこ幅1

m ,たて幅1 .7 m,深さ1 .28 m)を用いて行った.

水温,気温は,それぞれ29 ~.30°C,30°Cであっ

た.2 分間の立位安静後, 3.5 km/h から5.5 km/h

まで2 分ごとに0 .5 km/h ずつ加速させた10 分間

の歩行を行った. ECG は,心電図モニタ(日本光

電製:WEP - 7404)を介して記録され,酸素摂取

量は,呼吸代謝測定装置(センサメデクス製:

MMC 4400 tc)を用いて測定された.    \

実 験2         …… … …

室内においてトレッドミル(T .K.K.製)を用い

て,2 分間の立位安静後,実験1 と同じプロト

コールで10 分間の歩行を行い,同様の測定を

行った.            こ

またトレッドミル・ラン耳ングによる漸増負荷

法で最大酸素摂取量を測定した.

表1 Physiological characteristics of subjects .

subjectage

(yrs)

height

(cm)

weight

(kg)

%fat

(%)

H . H

M . T

R . N

39

23

27

172.0

164.0

156.0

56.0

54.5

57.0

9.05

14.11

18.37

150

20

1

ぶE

ぺ芯

心eJ

60

4 ‾‾‾H .TM二 諳 弧       二

二 二 ;?儲       。_ 。バ

‾‾‾R‘FM       。//マクバ‘

4.ごユ”てこΞごごニ

Zブでー一 /

匹 ≒

ぺ ご 犬づ

匸 ∠ 匸 ニ ー一一一一j天 一…… ………

2   4   6   8   10

mici

図I Changes of heart rate (HR ) during walking

on Treadmill (TM )and Flow mill (FM )

デサントスポーツ科学Vo 凵3

2

2 .1

結\ 果

-195 -

水中歩行と陸上歩行の心拍(HR )の関係

呼気は, ブレスバイブレスで採集さ れ,1 分ご

とに45 秒 から60 秒までの最終の15 秒値をもっ

てVO2 の1 分値として算出した,HR は,安静時

0  0

5  4

30  20

ぶEぺJぺl

0  0

1

図2 sub. R.N Changes of oxygen consumption

(VG  ) during walking on Treadmill (TM )

and Flowmill (FM )

0  0

Q

り  4

30  20

1

々j

迴日

0  0

1

min

図3 sl!b. M.T Changes of oχygen consumption

(V0  ) during walking on Treadmill (TM ) and

Flowmill (FM )

0  0

3  0乙

1

々J

ぺ、S

図4 su り.H.H Changes of oxygen consumption

(Vo2 ) during walking on Treadmill (TM )

and Flowmill (FM )

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―  196 ―

2 分間 と歩 行終了 まで を記録 し た. 図1 ~4 は,

Vo ,お よびHR を示 し た もので あ る・

安静時 のHR は, 水 中立位 時が 陸上 と比 較 して

13 beats /min ±5 .0低 い 値 を 示 し た. 水 中歩 行

(FM ) I陸 上歩 行(TM )を比 較す ると,歩 行 開始

3 分後 には,FM の方 がTM より高 い値 を示 した.

ま た, 5.5 km/h 歩 行時 のHR は,3 .5 km/h 歩 行

時 のHR に比 較 し て,TM で は13 beats /min 士

10 .5, FM で は64 beats / mint±17 .3とそ れぞ れ

増加 した. ま た, スピ ードが漸墫 さ れる ほどFM

とTM のHR 差 は大 きくなり, 歩 行終了10 秒前

で は両 者 の差 は66 .3 beats/min ±4 .5に逹 した.

FM の運 動強 度 は, Peak Heart Rate 時が82

~86 %HR _ で あ り,TM で はPeak Heart

Rate で47 ~51 %HRnlax と なり, 同 一 スピ ー ド

にお け る運 動 強度 は√FM の方 が32 ~35 % 程度

高 い 値を示 した.

2. 2 水中歩 行と 陸上歩 行の酸 素摂取 量(Vo2 )

の関 係

歩 行開始2 分 後 か ら10 分 間終了 まで のVo2 の

増加量 は,TM で は6 .2 ml± 2.1, FM で は22 .1

ml ±4j で あ っ た. その時 の運動 強度 を最大酸 素

摂 取 のど れ くらい に相当す るか (%Vo2-

) であ

らわす と・FM で は76 ~84 % V02 で ありTM

で は26 ゛ 33%V02 - あ9 だ・        ト

スピ ード の漸増 にと もな うVo2 増 加率 は・TM

に比 較してFM の方 が大 きく・5 .5 km/h 時 のVo2

の差 は,TM よ りFM の方 が23 .4 mZ±2 .8多 く

増 加 した.                     ・

3 .考  察

得られた水中のHR を考え る際に,まず考慮し

ておかなければならない点 は√いわゆる徐脈の問

題であろう。 本研究においては, 立位安静時HR

について水中と陸上を比較すると,水中の方が16

~24 % の減少がみられた。先行研究 においても

同様の結果がみられ4・5),その要因としては,水圧

により静脈血の還流が促進され1 回拍出量が多 く

なり,HR が減少するという考え方 や6), 環境温

度,水圧による呼吸の制限によるものがあげられ

つぎに,TM 時とFM 時の歩行によって,生理

的反応がどのように異なるのか,あるいはまたそ

の要因は何かを考えていく必要があるレ    :

し そこでまず,歩行を開始すると図1 に示したよ

うにTM でHR の定常状態または減少が,被検者

H .Hでは4 .0 km/h~4 .5 km/h (歩行開始3 分~6

分) M.Tでは3 .5 km/h~5 .0km/h前半(3 分~7

分),R .Nでは3 .5 lan/h 後半~4 .0 km/h 前半(2

分~3 分)でみられた.その スピード時のVo2 を

みると被検者H .H4 .5 km/h においで, M .Tおよ

びR .Nは4 .0 km/h においてVo2 の減少もみられ

た.斎藤らによると19)歩行のoptimal speed (距

離あたりのエネルギー消費量が最小値を示 すス

ピード)は,60 ~70 m /min (3.6~4 .9 kra/h)で

あり,本実験の被検者についても同様の結果が得

られたことから3 .5 kra/h~5 .0㎞/hの陸上歩行

スピードは,最もエネルギー消費量の少ない経済

スピードであることが示唆された.  \

一方,FM については,1 名のみ4 .5 km/h 後半

(6 分~7 分)においてHR の減少がみられたが,

Vo2 の減少はみられなかった・ 他の1 名は4 .0 km/ ’

h でのVo2 の減少 はみられたが前後の値を みて

もこれを定常状態とはみなしがたく,またnR の

減少 はみられなかったことから,少 なくとも水中

歩 行 で のoptima 卜speed は 陸 上 のoptimal

speed とは異なり, それは3 .5 km/h より遅 い ス

ピードと考えられる.

FM 歩行中,特にHR の増加が大 きかったとこ

ろが2 ヵ所あり,初めが歩行開始後1 分~3 分の

間であり, 23.7 beats/min±6 .0の増加で, つ ぎ

が6 分~8 分であり18 beats/min の増加であっ

た.まず,1 分~3 分についてみると, H.H は歩

行 スピ ードが4 .0 km/h に上がった時点 でHR も

デサントスポーツ科学Vo 口3

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増加している. M .TとR .N は3 .5 km/h の2 分目

でHR の増加を示している.また, R.Nは歩行開

始から4 分目までの毎分あたりのHR の増加も,

15.5 beats/min と大きな値を示している.  =

運動開始からその運動に適応するまでは, HR

をはじめVo2 ,換気量などの心肺機能がその運動

に適応するために急激な変化を示す.運動強度の

増加にともなってHR を増加することから, H.H

は3 .5 km/h から4 .0 km/h への歩行に適応するた

めに,HR の増加率が大きくなった. M .T も3 .5

km/hの歩行2 分目でHR 増加させることによっ

てFM 歩行への適応を示したと考えられる.

このように考えると, R.Nは3 .5 km/h, 4.0 km/

h ではHR が十分適応できず,HR を増加し続け

歩行開始4 分目にして適応したとみることもでき

る. そして, 各被検者ともHR の増加率が大 き

かった次91 分間でVo2 も増加し,その後は小さ

い増加率にとどまったことから,これらによって

生理的な定常状態が成り立ち气 身体の水中歩行

運動への最初 の適応がなざ れ, この後 は歩 行ス

ピ ー=ドが上 がるごとに, 運動強 度の増加にとも

なったHR およびVo ,の増加を示した.   \

そして1 分~3 分ほどではないが,HR の増加

率の大きかった6 分~8 分についてみると,各被

検者 とも歩行 スピードが5 .0 km/h に上がった時

点 であ った.被検者M .T は歩行 スピー△ドが5 .0

km /hに上がった段階で同時に 耳R とV 。2が急 に

増加し,H.HとR .Nは,速度の増加と同時にVo2

が増加を示し,亅 分後にHR も急激に増加した.

その後・M .TとR .NめHR とVo2 の増加率は再

び下がrつたが,H .H は以後5 .5 km/h 歩行終了 ま

でVo2 の増加率が大 きかった.これは1 分~3 分

の時と同様叫その運動強度(スピード)に適応す

るためと考えられるが,この時はHR の増大のみ

で適応したが,6 分~8 分では,歩行スピードが

5・O km/h に上 がった段階で同時 にVo2 も急に増

加した.

デサントスポーツ科学Vol .13

.                  -197 -

5.5 km/h ではM .TとR .N は,歩行 が追いつか

ず,時々走 る運動がみられたことを 考えると5 .0

km/hの スピードは, この2 名にとっ ては水中歩

行を持続する限界のスピードであったともいえる。

歩行は, 低速度のときはエネルギー消費量 は少

ないが,高速度で歩くときはジョギ ングや走行時

に近づきそれ以上のエネルギー消費量 になること

もある1气

水の密度は空気の800 倍といわれ, しかも水抵

抗 はスピードの2 乗 に比例する8j气 水 泳の場合 は

流線型 とい うなるべく水抵抗の少な い姿勢を と

り,続けて長く泳ぐことによって心肺 機能を高め

るという運動の効果を高めるが,同 じ水中運動で

も水中歩行は,逆にこの水の抵抗を利用して先の

運動の効果を高めることを目的のひとつとしている。

身長,体重をはじめ心肺能力などの異なった3

名の被検者がみな,歩行スピード5 .0 ian/h におい

てVo2 の急激な増加を示 したという ことを考え

ると,水中歩行において5 .0km/hスピ ードは,生

体に何らかの生理的負担度に影響を与 えるのでは

ないかと示唆される。

゛s)ぎにFM とTM のVo2 を%Vo2 .。であらわ

すと,3.5 km/h では28 `35 %Vo2 .。前後・4.0 km

/hでは35 `46 %Vo2 .。・4 .5 k・/h で は45 `

52%Vo2 .。で あり・5 .0㎞/hで は65 ~71 %

Vo2 .。となり・5 .5 k・/h では76  ~ 85% V02。。で

あった.TM においては,3 .5 km/h~5 .5 km/h で

10 ~31 %Vo2 - の範囲であった・

酸素摂取能力を高めるにはどのくらいの運動強

度が必要であるかについては,多くの研究がされ

ており,対象者,運動の種類,時間, 頻度などの

条件によ って異なるが・50 %V92 .。以上であれ

ば明らかに有効であるとされている.  y

また,健康な人が安全に運動を行うには・,一般

的にanaerobic threshold (AT )を安全限界とし

て考え・ それは70 %Vo2 - と考え られる气

本実験では,FM での4 .5 km/h~5 .0km/hの水

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-198 -

0  0  0  0  0

0  8  

βり  4  n

1

c%

 %

%HRma χ

図5 sub . H. H Relationsip between %HR -and %

aEぶ冫

V02max

゛Treadm Ⅲ(TM )and Flowmill (FM )

゛0   20   40   60   80   100

%HRma χ

図6  ?b . M.T Relationsip between %HR 。。and %

Vo2 .。・Treadmill (TM ) and Flow゚ ill (FM )

j

0

% HRn       ’

図 了 sub . R. N Relationsip between %HR -and %

Vo2 .。・Treadmil 】(TM ) and Flo゙ ゜ill (FM )

中歩行がそれに相当する.先にも述べたようにこ

のスピードの範囲においてVo2 の増加率が著し

かったことからも,酸素摂取能力を高める効果は

十分に期待される.一方,陸上歩行では,このス

ピード範囲は, optimal speedであり,少なくと

も5.5 km/h 以下では酸素摂取能力を高める効果

は期待できない.  ノ

体育専攻男子大学生が競歩を試みた場合,普通

歩行よりは速いスピードの160 m /min まで の歩

行が限界のスピードであった15). そしてこれは,

77,5%Vo2 - の強度に相当した,すなわち,水中

歩行で得られた運動強度を陸上の歩行で得るため

には,2 倍の速さでの歩行が必要であることにな

る.

%Vo2 - とHR の関係をみると・ 安静時の水中

HR は,16 4 24% 低い値を示したものの, 図に

示したように水中歩行 は低 いHR で陸上の歩行

よりも多くの酸素を取り入れることができる.す

なわち,陸上歩行と比べて小さい生体負担度で酸

素摂取能力を高めるような運動強度 が得 られるこ

とが示唆された.

これは大畠 らの研究17)と一致するところであり

水中と陸上で同 じHR の歩行 では水 中の方があ

まり きつさを感じないで,運動の効果としても高

いものが得られるということになる.しかしこれ

は,この運動を続け るには少ないHR で多 くの酸

素を取り込まなければならないという考え方もで

きる.今後の課題としてこれらのことは明らかに

する必要があると思われる.

4 . ま と  め

本研究は,水中運動を日常化したライフスタイ

ルを目指し,水中運動処方プログラム作成の指針

となる基礎的資料を得ることを目的とした. その

ため水中歩行の運動強度を調べ,陸上のそれと比

較することによってその特性を明らかにすること

を試 みた.その結果つぎのことが明らかになった.

L 水中歩行では4 .5~5 ,5 km/h 時の運動強度

は・45 `71 %Vo2 - であった, すなわちこの範

囲 においては酸素摂取能力を高める効果が期待さ

れる.ししかし,陸上の歩行では, 5.5 km/h におい

て も運動強度が26 `31 %Vo2 - であり有酸素

能力を高める効果は期待されない.

デサントスポーツ科学Vol .13

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2.5.0 km/h の水中歩行時の酸素摂取量は,陸

上歩行の同じスピード時に比べて著しい増加がみ

られたことにより,5.0 km/h 時の水中歩行は,何

らかの生理的負担が大きいと考えられる.

3.水中歩行は低いHR で,睦上の歩行よりも

多くの酸素摂取量が得られる.

謝  辞

終わりに,本実験を行うにあたりまして川崎医

療福祉大学の小野寺昇先生,宮地元彦先生,木村

一彦先生,米谷正造先生,広島大学の人澤雅典先

生,東京学芸大学大学院生の遠山美貴さんにご助

力を賜りました.ここに心より感謝の意を申し上

げます.

文   献

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