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新たな観光地域づくりに係る調査 報告書 平成 30 年 4 月 千葉県商工労働部観光企画課

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新たな観光地域づくりに係る調査

報告書

平成 30年 4月

千葉県商工労働部観光企画課

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目次

1.検討の目的、検討の経緯 .................................................. 3

(1)今次検討の目的 ............................................... 3

(2)研究会の位置づけ、役割 ....................................... 3

2.千葉県の観光地域づくりに関する課題と意義 ................................ 5

(1)マクロデータ分析に基づく課題 ................................. 5

(2)観光地域の現状に関する課題 ................................... 6

(3)観光地域の(再)開発に関する課題 ............................. 7

(4)観光地域づくりが地域に与えるインパクト、チャンス ............. 8

3.千葉県における観光地域づくりのテーマ案 .................................. 9

(1)テーマ案の選定 ............................................... 9

(2)各テーマ案の概要 ............................................. 12

(3)テーマ案の実現へ向けた主な課題 ............................... 32

4.インセンティブ・施策の実施により見込まれる効果 .......................... 33

(1)各テーマ案の収支概算 ......................................... 33

(2)各テーマ案の採算性を確保するために必要な施策 ................. 37

5.観光地域づくりを進める上で必要なインセンティブ・施策 .................... 39

(1)国際的観光地の観光地域づくりに関連するインセンティブの体系 ... 39

(2)千葉県の観光地域づくりに必要なインセンティブ ................. 41

6.有識者の意見・先進事例の紹介 ............................................ 53

(1)有識者の意見 ................................................. 53

(2)観光地域づくりの事例 ......................................... 55

(3)インセンティブの事例 ......................................... 58

(4)医療ツーリズムに関する近況 ................................... 61

7.今後の取り組み(ロードマップ) .......................................... 63

(1)観光地域づくりのロードマップ ................................. 63

(2)各観光地域の段階的な開発イメージ ............................. 64

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【テーマ案別説明資料】

Ⅰ.テーマ案A

Ⅱ.テーマ案B

Ⅲ.テーマ案C

Ⅳ.テーマ案D

【参考資料】

Ⅰ.現状分析資料

Ⅱ.インタビュー記録

1.県内観光地域

2.外国の観光局等

3.事業者

4.有識者・行政担当者

Ⅲ.千葉県内のエリア区分と観光資源のマップ

Ⅳ.収支試算

Ⅴ.各国のインセンティブ

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1.検討の目的、検討の経緯

(1)今次検討の目的

・近年、海外から日本を訪れる外国人観光客(インバウンド)が急増している。観光客が国内で行

う消費は多額にのぼり、地域経済の振興にとって、観光業の果たす役割は大きく、ますます発展

することが期待されている。

・千葉県内には、東京ディズニーリゾート、神社仏閣、スポーツ・レジャー施設をはじめ、大規模

な観光地域を各地に抱えている。こうした観光地域は、多くの利用者に楽しんでもらうとともに、

地域の産業の基盤として地域を支えてきた。

・一方、観光客のニーズの多様化が指摘され、個人旅行の増加や体験型観光への期待の高まりが指

摘される昨今において、団体旅行や短期滞在型の旧来のスタイルの観光地域に対する改善の必要

性も言われるようになってきた。

・新たな観光のニーズを掘り起こし、また利用者の期待に応えるためには、民間資本の積極的な投

資を誘導し、新たな観光地域づくりや、既存の観光地域の活性化を行っていくことが必要である。

・そこで今回の検討では、現状の千葉県内における観光地域の課題を整理し、新たに観光地域づく

りを推進していく上でのテーマ(案)を設定し、それを推進していく上でのポイントを主に海外

の観光地域づくりの事例に学ぶ。とりわけ、民間資本に対する有効なインセンティブを設定し、

民間事業者にとって望ましい観光地域づくりの基礎のあり方を明らかにする。

・その上でいくつか県内における観光地域づくりのテーマと適地を選定し、地域の中核的役割を担

う関係者による研究会で議論の上、開発に向けたロードマップを作成する。

(2)研究会の位置づけ、役割

・実際の観光地域づくりを進めるにあたっては、民間事業者をはじめ、多くの関係者の協力が欠か

せない。新たな観光地域づくりにとって、今回の調査を発端とし、実際に事業を推進する際に、

中核的役割を担うべき千葉県内の事業者等の関係者が集まって議論を行うことで、千葉県内にお

ける観光地域の課題の共有や、今後目指していくべき観光地域づくりの方向性についての認識の

共有化を図る。

・研究会では、千葉県内全域における観光地域づくりのあり方を議論し、今後各市町村で取り組ん

でいく観光地域づくりのきっかけとなることを目指す。

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○全体の検討経緯

9月 10月

2017年

11月 12月 1月

2018年

2月 3月

1.千葉県現状分析・課題抽出

千葉県観光入込み客数分析

観光エリア毎の現状・課題認識

第1回研究会 第2回研究会

2.テーマ絞込み

今次観光地域づくりにおけるリゾートテーマを絞込み(リゾートの定義付け)

観光エリア毎の現状・課題認識

研究会組成準備

(海外事例調査先の特定)

3.海外事例調査

海外事例について、文献や研究者、公的機関等へのインタビュー調査を実施。

観光地域づくりにおけるインセンティブ設計について事例を研究する。

必要に応じて国内先進事例も調査する。

4.県内適地選定

現状分析及び海外事例調査から、新たな観光地域づくりとしての県内各地の選定を実施。

仕様書に基づく評価項目に従い、複数候補地から適地を選定する。

第3回研究会

5.インセンティブ設計

県内適地における観光地域づくりを行う際に必要となるインセンティブを設計。

インセンティブの類型・働きかけるべき機関・法律等について整理する。

6.経済界との共有

勉強会法式で、観光地域づくり及びビジネスチャンスについて共有。

※各月1回、観光企画課・日本経営システムにて進捗状況確認のための協議を実施。

7.ロードマップ作成

インセンティブの実現や実際の観光地域づくり開発におけるロードマップを、今次調査の報告書としてとりまとめる。

11/16 3/91/24

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2.千葉県の観光地域づくりに関する課題と意義

本格的な検討に入る前に、千葉県の観光の現状を概観した上で、どのような課題があるか、また、

観光地域づくりに取り組むことで地域にどのような意義(インパクト、チャンス)があるかを整理

した。

(1)マクロデータ分析に基づく課題

調査の冒頭で、1)千葉県の観光の概要を把握するともに、2)新たな観光地域づくりに生かせる

視点を得るために、マクロデータに基づく現状分析を行った(詳細は参考資料①を参照)。

○千葉県の観光地域の特徴

①特定地域への「集中」

~入込み客数や宿泊客数(特に外国人)については、東京ディズニーリゾートや幕張、成

田など特定の地域に集中している。

②特定「地点」への「集中」

~デーマパーク(TDR)や神社仏閣(成田山新勝寺)、ショッピングモール(木更津、酒々

井)等への入込み客の集中が見られる。

③消費単価の増加の余地あり

~消費単価は一般的に、国内日帰り観光客<国内宿泊観光客<外国人宿泊観光客の順とな

っており、上記特定地域や特定地点以外での宿泊及び外国人誘客は消費単価増加の余地

があることを示している。

④インバウンド誘客のさらなる取込み

~H23~H28の間に成田・羽田両空港の訪日外国人旅客数は 2~3倍(成田:282万人→682

万人、羽田 91万人→326万人)に増加しているのに対して、インバウンド客の千葉県内

への来訪は成田・幕張・浦安等の一部の地域に集中しており、他の地域でもまだ取り込

む余地が大きい。

⇒観光地域では「新たな観光地域づくり」が求められており、宿泊客やインバウンド

顧客拡大もその重要な観点であると考えられる。

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(2)観光地域の現状に関する課題

県内の自治体の観光部門の部長、観光協会、主なホテル事業者等を対象にインタビュー調査を

実施した(詳細は参考資料②を参照)。その結果に基づき、県内の観光地域における課題を整理し

た。

①追加・更新投資の誘引

~地元にあったホテルはバブル崩壊後に多くが経営破綻した。1)薄利多売型、2)高級ホテル、

3)合宿ニーズ対応等で生き残っているホテルもあるが、本格的な観光地域の再生には、ホ

テルを中心にした追加・更新投資が必要。投資家や事業者が魅力を感じるような環境を整

備し、投資を誘引する努力が必要。

②顧客ターゲットの再設定と事業の再構築

~旅行客のパターンが、従来の団体旅行や家族旅行が中心だったものから、個人の好みに合

わせて自由にプラン組み立てるのが主流に変わりつつある。高級化を図って富裕層や外国

人観光客を狙うなど、新たに顧客のターゲットを設定し、それにあわせた施設や事業構造

に変革していく必要がある。

③各事業の採算性の向上

~高い収益性が確保されることで追加投資が行われ、それにより地域としての魅力が維持・

向上され、さらに新たな集客を呼ぶという連鎖が作り出されることが重要。その連鎖を産

み出すためには、事業者が自由に創意工夫を発揮できる余地が確保されていることで、事

業者にとって魅力が感じられることが重要。

④地元経済界の協同の推進

~観光地域として苦境に陥り、個々の当事者には問題意識はあっても、地域全体としての合

意形成や協同での取り組みに結びつかず、現状を打破できていない状況の地域が多い。地

元自治体、観光協会、地元事業者、地域の金融機関等が問題意識を共有し、足並みを揃え

て観光地域づくりに取り組めるような環境づくりが必要。

⇒観光地域を活性化させるには、地域一体で取り組めるような環境を作り出すこと

が重要。

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(3)観光地域の(再)開発に関する課題

観光振興を図ろうという問題意識を持つ地域は多いが、様々な制約により思うように進まな

い状況もある。以下のような点が課題として認識されている。①については、特区の設定によ

る対応が必要ではないかという議論も行われている。

①規制の見直しによる(再)開発の促進

~観光施設の開発に関する規制や、自家用のヨットで来訪を希望する外国人観光客の入出国に

関する規制や体制の不備により、思うような観光地域の開発が進まない現状が指摘されてい

る。こうした規制の見直しにより、観光地域づくりを促進することが期待されている。(詳細

は、5.(2)で記載。)

②政策対応等による(再)開発の促進

1)各種インセンティブの付与

~ある事業への投資を検討する際に、インセンティブの存在は重要。インセンティブには税

制の優遇や補助金の支給といった経済的なインセンティブや、各種規制の緩和や人材育成

といった間接的なインセンティブなどが考えられる。観光地域づくりに関するインセンテ

ィブは、これまであまり体系立って整理されてこなかったこともあり、大きな議論になる

ことはなかったが、積極的な投資を引き出すために、各種インセンティブのあり方を検討

し、有効と思われる施策を実施することは有意義であると思われる。

2)地元経済界における観光地域づくりの気運の醸成

~(2)④の内容とも関連するが、本格的に新たな観光地域づくりに取り組むには、その地

域の関係者が足並みを揃えて取り組む土壌が必要である。県内でも流山市や鴨川市などで、

地元の団体や事業者が中核になって積極的な観光地域づくりを行おうという気運が盛り

上がりつつある地域もある。県外では、例えば山口県長門市では特定の事業者(星野リゾ

ート)を招く形で温泉地の再開発に取り組む動きも出てきている。自治体や業界団体が中

心になり、観光地域づくりの動きのきっかけを与えることも有効ではないかと思われる。

⇒観光地域の(再)開発を進めるためには、規制の緩和やインセンティブの付与、観

光地域づくりの支援等、行政による後押しが有効と思われる。

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(4)観光地域づくりが地域に与えるインパクト、チャンス

・新たな観光地域づくりは、地域に対する波及効果も大きい。コアとなる中核宿泊施設や周

辺観光地、交通・輸送業者だけでなく、裾野の広い様々な産業への波及効果をもたらす。

・また、世界的な観光地では周辺産業に求める「水準」も相応に高くなることも想定され

る。新たな観光地域づくりは大きなビジネスチャンスを産む可能性があるが、相応の「準

備」をしないと、その利益を得ることは難しいとも言える。

中核宿泊施設

周辺産業(例)

周辺観光地-面としての開発-

新たな観光地域とその周辺産業のイメージ

交通・輸送業者

リネン・クリーニング 食品加工 農林水産

特産品生産 人材育成/派遣 通訳/ガイド

旅行代理店 清掃 設備維持・工事

周辺の地域におけるインパクト・チャンス例)観光客の地元商店街への立寄り需要、地元イベント開催、定住/居住の促進等々

新たな観光地域のコンセプトを満たせるか

ターゲット顧客が満足する品質のサービス提供ができるか。

地域として、受入れやチャンスに対する準備が必要

言語や表記対応などは共通課題となる

誰が周辺産業を担うか

既存事業者のレベルアップによる参入

新規創業による参入

【論点】

⇒新しい観光地域づくりを進めることは、課題も多いが、地域への様々な波及効果が

期待できるため、地域経済にとってはチャンスでもある。

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3.千葉県における観光地域づくりのテーマ案

(1)テーマ案の選定

①新たな観光地域づくりで目指すこと=「世界的観光地」

今回の検討では、千葉県内に「世界的観光地」を形成することを目指す。

世界的観光地とは、『その地域の観光資源を活かし、外国人をはじめ多くの人が訪れる風景、

気候、施設等を備えた、長期滞在が可能な地域』と定義する。

代表的な「世界的観光地」としては、ハワイ、グアム、ドバイ等のように、ホテルを中核に

して富裕層、外国人も多く集まる、長期滞在型の観光地である。

[ハワイ] [グアム]

[ドバイ]

②新たな観光地域づくりに求められる要件

これまでに行ったデータ分析や、インタビュー調査をもとに、新たな観光地域に求められる

要件を下記の通り整理した。

(ハワイ州観光局HPより) (グアム政府観光局HPより)

(ドバイ政府観光・商務局HPより)

[新たな観光地域づくりに求められる要件]

要件①宿泊施設の立地

・浦安、幕張、成田といったエリア以外の宿泊施設の立地として魅力度が高いこと。

要件②外国人観光客を誘致できる魅力度

・外国人観光客が訪れたいと思うような世界水準の観光資源があること。

要件③滞在時間・泊数の増加

・観光地域を面として開発し、時間・泊数を伸ばし、経済効果(消費単価向上)を増加させるこ

と。

要件④既存観光資源の活用

・海洋資源を中心に、既存の優れた観光資源をしっかりと活用すること。

要件⑤立地の優位性

・東京という巨大マーケットの近郊であり、羽田や成田といった国際的な玄関口からも至近で

ある。

・また三方を海に囲まれるといった立地特性も十分に活かす。

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※上記要件の他に、「食」も大きな要件ではあるが、県内各地は魅力的な食材の確保が全域で

可能で、また多くのゴルフ場で有名なシェフを雇っているように、人材の確保も概ね全域

で可能であることから、評価項目として取り上げていない

③テーマ案の選定

県内全域を見回して、観光地域づくりの可能性を検討するため、まず、県内の各エリアにど

のような観光資源が存在するか整理した(参考資料参照)。

これを元に、具体的にテーマとして設定できそうな案を整理し、②で整理した「新たな観光

地域づくりに求められる要件」に照らして、世界的観光地になる可能性が高いものを抽出した。

テーマ(地域)案 ① ② ③ ④ ⑤ グループ

(1)海:銚子 ○ ○ ○ ○ ○ 第1

鴨川・勝浦 ○ ○ ○ ○ ○ 第1

南房総 ○ ○ ○ ○ ○ 第1

(2)マリーナ・港:銚子 ○ ○ ○ ○ ○ 第1

木更津 ○ ○ ○ △ △ 第2

         館山 ○ ○ ○ ○ ○ 第1

その他漁港 ○ △ ○ △ ○ 第2

(3)医療:鴨川 ○ ○ ○ ○ ○ 第1

     成田 ○ ○ ○ ○ ○ 第1

(4)歴史・文化:印旛・香取 △ ○ ○ ○ ○ 第2

        東葛飾・山武等 △ △ △ ○ ○ 第3

(5)神社仏閣:印旛・香取 △ △ △ ○ ○ 第3

(6)農業:東葛飾(梨/葡萄) △ △ △ ○ ○ 第3

    印旛・海匝・山武・長生(苺) △ △ △ ○ ○ 第3

    印旛・君津(落花生) △ △ △ ○ ○ 第3

    南房総(果物) △ △ △ ○ ○ 第3

    香取 ○ △ ○ ○ ○ 第3

(7)産業:東葛飾・香取・海匝(醸造) △ △ △ ○ ○ 第3

    千葉(臨海工業地帯) △ △ △ ○ ○ 第3

(8)着地型観光・民泊:東葛飾 ○ ○ ○ △ ○ 第3

(9)交通:海匝・千葉・君津・夷隅 △ △ △ ○ ○ 第3

(10)スポーツ:長生・君津・夷隅等(ゴルフ) ○ ○ ○ ○ ○ 第3

      長生・夷隅・安房(サーフィン) ○ △ ○ ○ ○ 第3

      全域(サイクリング) ○ △ ○ ○ ○ 第3

(11)美容・健康:安房 ○ △ ○ △ △ 第3

(12)福祉施設:全域 ○ △ ○ △ △ 第3

(13)商業:印旛・君津 △ △ △ △ ○ 第3

(a)テーマパーク:千葉・君津・安房 ○ ○ ○ ○ ○ 別枠

(b)IR:印旛・千葉 ○ ○ ○ △ ○ 別枠

【新たな観光地域に求められる要件】 ①宿泊施設の立地 ②外国人観光客を誘客出来る魅力度 ③滞在時間・泊数の増加 ④既存観光資源の活用 ⑤立地の優位性

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前ページの分析に基づき、テーマの集約を一部行い、以下の4テーマ(地域)案を第1グル

ープとして検討することとする。

・要件に照らして評価した結果、全項目が「○」となり、世界的な観光地域になる可能性が高いものと判断。

・テーマとしては別立てとすることも考えられる「(2)マリーナ・港:銚子」と「(2)マリーナ・港:館山」、「(3)医療::鴨川」については、同一地域内で取り組んだ方が有効ではないかと考えられることから、再編して上記各案に含めることとした。

グループ区分は、以下のように定義した。

第1グループ(全て○):

世界的な観光地域に近づける要素を持つテーマ(地域)

第2グループ(△が1~2)

世界的な観光地域に近づくためには、要素の追加が必要

第3グループ

現在外国人も訪れているが、追加要素が複数必要

⇒4テーマ(地域)案を第1グループと位置づけて検討することとする。(濃い網掛

け部分を抽出・再編成)

○海:銚子 ⇒ テーマ案A

鴨川・勝浦 ⇒ テーマ案B

南房総 ⇒ テーマ案C

○医療:成田 ⇒ テーマ案D

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(2)各テーマ案の概要

①テーマ案設定の基本的考え方

1)高級ホテルの整備

「世界的観光地」に相応しい観光地域をつくりあげて行くには、核となる施設が重要である。

特に、多くの外国人が訪れるような、長期滞在型の観光地域を目指しているため、宿泊施設の

充実がポイントになる。

そこで、各テーマ案、特に「海」をテーマにした観光地域づくりの案においては、当該観光

地域のイメージをも左右する中核施設として、高級ホテルの整備を中心に考える。富裕層の誘

客が可能な施設ということで、4~5星クラスの高級ホテルを新築、もしくは既存の施設のリノ

ベーションで整備する。

2)関連施設の高級仕様を想定

富裕層が訪れ、長時間過ごし、多くの消費を行ってもらうことを期待しているので、関連施

設の充実も意識する。

飲食・物販施設等を想定するが、その仕様も高級ホテルに来訪する層を意識し、高級な飲食・

商品を扱うことを想定する。

3)規制緩和や関係者間の調整も前提にする

銚子や南房総では、既に施設が存在したり、転用可能な港があることから、メガヨットの寄

港が可能な施設の整備を考える。実現するには、ハードの追加投資や、関係者(地元自治体や

漁組等)間の調整、関係機関(入国管理、税関、検疫)の対応も必要になり、後述するように

それぞれ大きな課題があるが、それらもクリアできるということを想定して案を整理した。こ

うした規制を緩和することも、観光地域づくりに必要な大きなインセンティブとなる。

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②各テーマ案の概要

○テーマ案の比較

【景観や各種アクティビティなど「海」をテーマとした観光地域づくり】

テーマ案A 銚子 テーマ案B 鴨川・勝浦 テーマ案C 南房総

想定

エリア

①犬吠埼周辺

②漁港を中心とする銚子市街

③マリーナを中心とする地域

①鴨川・勝浦を中心とする地域 ③南房総・館山を中心とする地域

ターゲット ○海外及び国内のアッパーミドル~富裕層。

投資

内容

1)犬吠埼地域

ホテル・リノベーション 2棟

新規高級ホテル整備 1棟

灯台前(土産物店・水族館)の複合再開発1棟

2)市街地・卸売市場地域

第一市場前飲食・物販施設 10棟

メガヨット寄港対応(飲食・物販) 1棟

3)マリーナ・屏風ヶ浦地域

マリーナ・リノベーション 1棟

ホテル(新設) 1棟

1)鴨川地域

ホテル・リノベーション 2棟

新規高級ホテル整備 1棟

ヘルスケア施設 1棟

2)勝浦地域

ホテル・リノベーション 2棟

新規高級ホテル整備 1棟

ホテル・リノベーション 2棟

新規高級ホテル整備 1棟

メガヨット寄港対応(飲食・物販) 1棟

主な

課題

1)規制等の対応(自然公園法、ヨットでの寄港等)

2)アクセス、地域内の周遊性の確保

3)高い水準でのサービス提供体制整備、人材育成

1)規制等の対応(自然公園法等)

2)アクセス、地域内の周遊性の確保

3)高い水準でのサービス提供体制整備、人材育成

1)規制等の対応(ヨットでの寄港等)

2)アクセス、地域内の周遊性の確保

3)高い水準でのサービス提供体制整備、人材育成

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【「医療」「ヘルスケア」と「海」を組み合わせた観光地域づくり】

テーマ案D 成田

想定エリア ①成田空港近くの病院(国際医療福祉大学成田病院)建設予

定地とその周辺

ターゲット ○海外及び国内のアッパーミドル~富裕層。

投資内容 病院 1棟

~着工済み・642 床・2020 年 4 月開院予定

ヘルスケア施設 1棟

主な課題 1)アクセス、地域内の周遊性の確保

2)高い水準でのサービス提供体制整備、人材育成

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○各テーマ案の概要

【景観や各種アクティビティなど「海」をテーマとした観光地域づくり】

テーマ案A 銚子

選定理由 ①犬吠埼や屏風ヶ浦の景観、太平洋の眺望など、千葉県を囲む海を観光資源とし

て活かすことができる。

②旧市街の街なみが残っているのに

加えて、漁業、醤油醸造業をはじめとする伝統産業が根付いており、観光資源と

して活用できる。

③既存の宿泊施設やホテルも存在しており、観光地域づくりとして成功する下地

があり、また活性化することによる経済効果も大きい。

想定エリア ①犬吠埼周辺

②漁港を中心とする銚子市街

③マリーナを中心とする地域

エリアにおける

資源

[景観]

○犬吠埼や屏風ヶ浦、銚子ジオパーク、外房の海岸線など

○漁港や旧市街などの街並み

○利根川などの河川

[施設等]

○既存の観光施設

-犬吠埼灯台/地球の丸く見える丘展望館

-海水浴場/水族館 等

-漁港/灯台/景勝地 等

○地場産業(醤油醸造業等)

○マリーナ・港湾施設

○ローカル電鉄

○温泉

○テーマパーク(水族館、フラワーパーク等)

[食]

○海産物(加工品も含む)、農産物

ターゲット ○海外及び国内のアッパーミドル~富裕層。

投資内容

(1)犬吠埼地区

1.ホテルのリノベーション 2棟

・星野リゾート等へのリブランドを想定

・全室を高級ホテル仕様へ改装。

・高級レストラン、物販施設、結婚式場、宴会場等を併設

2.新規高級ホテルの建設 1棟

・四つ星ホテルの新規開設を想定(立地は、市有地(現在空き地)またはグラ

ンドホテル磯屋跡地の活用を想定)。

・高級レストラン、物販施設、結婚式場、リラクゼーション施設、宴会場等を

併設

・外国語対応を充実。案内、スタッフを揃える。

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【景観や各種アクティビティなど「海」をテーマとした観光地域づくり】

テーマ案A 銚子

[現地の状況]

(銚子市の市有地(旧国民宿舎) (グランドホテル磯屋跡)

[整備後の施設のイメージ]

(リッツカールトン沖縄の HPより) (フィリピン The Farmの HPより)

3.犬吠埼灯台前土産店街の再整備 1棟

・銚子港で水揚げされる新鮮な食材を日替わりメニューで提供する食堂を開設

[現地の状況] [整備後の施設のイメージ]

(犬吠埼灯台前) (サンフランシスコ フィッシャーマ

ンズワーフの HPより)

(リゾナーレ熱海(星野リゾート)HP より)

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【景観や各種アクティビティなど「海」をテーマとした観光地域づくり】

テーマ案A 銚子

4.水族館の改築 1棟

・大規模化

・イルカ、アシカ等のショーの開催

・地元の魚(サンマ、カツオ、熱帯魚)の展示

[現地の状況]

(犬吠埼マリンパークの HPより)

(2)銚子港地区

1.卸売市場の改装(見せる売り場へ)

・ガイドの充実

・見学コースの改善

・取引時間の変更

2.第 1市場付近の場外市場の再整備(買い物/飲食施設)

・無料駐車場の整備

・各種優遇措置によるリノベーション、新規出店の促進

[現地の状況]

(第1市場)

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【景観や各種アクティビティなど「海」をテーマとした観光地域づくり】

テーマ案A 銚子

(3)マリーナ地区

1.マリーナのリノベーション(大型ヨットの寄港を可能にする)

・20m クラスのヨットの寄港が可能となるように、大規模な改修を行う。

2.ホテル・レストランの整備

・マリーナの後背地及び、大学キャンパス内での整備を想定

[現地の状況]

(銚子マリーナの HPより) (銚子マリーナ クラブハウス)

(4)共通

1.地域内交通の改善(巡回バスの運行)

・路線バスの充実、もしくはホテル等の観光施設の費用負担による共同運行バ

ス(銚子電鉄と連携したルート設定を想定)

2.空港、他の観光地域とのアクセスの改善

・成田空港の他、県内の他の観光地域との連絡

・広域で乗り降り自由なパスの設定

3.高級リゾートで働く人材の育成、紹介

・地元での人材育成(大学の誘致、観光学科の設置等)

・高級リゾートで働く人材のデータベースの整備

・外国人留学生の活用の工夫

・外国から水産業等の就業研修に来る人材の活用 等

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【景観や各種アクティビティなど「海」をテーマとした観光地域づくり】

テーマ案A 銚子

開発の具体的イ

メージ

(1)全体観

・市内の観光地は、概ね以下の 3つに区分できる。

1)犬吠埼地域

2)市街地・卸売市場地域

3)マリーナ・屏風ヶ浦地域

(2)犬吠埼地域

・犬吠埼に灯台、マリンパーク(水族館)があり、その周辺に大小のホテル等

の宿泊施設が集中している。

2)市街地・卸売市場地域

1)犬吠埼地域

3)マリーナ・屏風ヶ浦地域

+:公共・交通施設

■:卸売市場

■:ホテル

■:観光施設

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【景観や各種アクティビティなど「海」をテーマとした観光地域づくり】

テーマ案A 銚子

・このうち、以下のような再開発、開発を想定。

ⅰ)ホテルのリノベーション 2棟

ⅱ)新規高級ホテルの建設 1棟

ⅲ)灯台前土産店街の再整備 1棟

ⅳ)マリンパークの改築 1棟

ⅰ)これらのホテルのリノベーション

ⅱ)新規高級ホテルの建設候補地(市有地)

ⅲ)灯台前土産店街の再整備

ⅳ)マリンパークの改築

● ⅱ)新規高級ホテルの建設候補地(磯屋跡地)

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【景観や各種アクティビティなど「海」をテーマとした観光地域づくり】

テーマ案A 銚子

(3)市街地・卸売市場地域

(3市場の位置関係)

(第一市場周辺)

ⅰ)第一市場の見せる売り場づくり

・ガイドの充実

・見学コースの改善

ⅱ)買い物・飲食施設の整備 10棟

ⅰ)第一市場の見せる売り場づくり

ⅱ)買い物・飲食施設の整備(この周辺)

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【景観や各種アクティビティなど「海」をテーマとした観光地域づくり】

テーマ案A 銚子

(第二・三市場)

ⅰ)メガヨットの寄港対応(飲食・物販) 1棟

(4)マリーナ・屏風ヶ浦地域

ⅰ)マリーナ・リノベーション 1棟

ⅱ)新規高級ホテルの建設 1棟

ⅲ)メガヨットの接岸(候補地)~飲食・物販施設の整備を想定

ⅰ)マリーナのリノベーション

ⅱ)ホテルの整備

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【景観や各種アクティビティなど「海」をテーマとした観光地域づくり】

テーマ案B 鴨川・勝浦

選定理由 ①太平洋や海岸線の景勝地など、千葉県を囲む海を観光資源として活かすことが

できる。

②既存の宿泊施設やホテルも存在しており、観光地域づくりとして成功する下地

があり、また活性化することによる経済効果も大きい。

③医療ツーリズムやヘルスツーリズム、収穫体験等、新たな観光資源の開発も進

んでおり、こうした観光資源と宿泊施設を広域で結んだ「面」としての開発を

行うことで観光地域としての活性化が有望な地域である。

想定エリア ①鴨川・勝浦を中心とする地域

エリアにおける

資源

[景観]

○外房の海岸線(鵜原理想郷、仁右衛門島、鯛ノ浦)など

○勝浦をはじめとする漁港やその周辺の街並み

○内陸の景勝地

-大山千枚田、養老渓谷等

[施設等]

○既存の観光施設

-海水浴場/漁港/灯台/景勝地 等

○ローカル電鉄(いすみ鉄道)

○温泉

○病院(亀田総合病院)

○タラソテラピー(テルムラマンパシフィーク)

○その他関連施設

-道の駅

-スポーツ関連施設(ゴルフ、テニス、ダイビング等) 等

[食]

○海産物(加工品も含む)、農産物

ターゲット ○海外及び国内のアッパーミドル~富裕層。

投資内容 (1)鴨川地域

1.ホテルのリノベーション 2棟

・星野リゾート等へのリブランドを想定

・大規模クラスのホテルを想定

・全室を高級ホテル仕様へ改装。

・高級レストラン、物販施設、結婚式場、宴会場等を併設

2.新規高級ホテルの建設 1棟

・四つ星ホテルの新規開設を想定(立地は鵜原理想郷等の、高台の地域の開発

を想定)。

・高級レストラン、物販施設、結婚式場、宴会場等を併設

・外国語対応を充実。案内、スタッフを揃える。

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【景観や各種アクティビティなど「海」をテーマとした観光地域づくり】

テーマ案B 鴨川・勝浦

3.ヘルスケア施設 1棟

・鍼灸、タラソテラピー等を導入。有名事業者を導入して、「評判」で客が来る

ようにする。

・外国語対応を充実。案内、スタッフを揃える

[現地の状況]

(鵜原理想郷からの眺め) (勝浦漁港からの眺め)

[整備後の施設のイメージ]

(Danubius Hotel Group の HPより)

(2)勝浦地域

1.ホテルのリノベーション 2棟

・星野リゾート等へのリブランドを想定

・旧来型の中~大規模クラスのホテルを想定

・全室を高級ホテル仕様へ改装。

・高級レストラン、物販施設、結婚式場、宴会場等を併設

2.新規高級ホテルの建設 1棟

・四~五つ星ホテルの新規開設を想定(立地は仁右衛門島や鯛ノ浦周辺等の、

高台の地域の開発を想定)。

・高級レストラン、物販施設、結婚式場、宴会場等を併設

・鍼灸、タラソテラピー等を導入。有名事業者を導入して、「評判」で客が来る

ようにする。

・外国語対応を充実。案内、スタッフを揃える。

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【景観や各種アクティビティなど「海」をテーマとした観光地域づくり】

テーマ案B 鴨川・勝浦

[現地の状況]

(仁右衛門島の HPより) (鯛ノ浦 鴨川市観光協会の HPより)

(テルムラマンパシフィーク)

開発の具体的イ

メージ

(1)全体観

・海岸線に、観光地や宿泊施設の集積がある。大きく勝浦地域と鴨川地域に集

約される。

・この他に、養老渓谷や大山千枚田等、内陸にもいくつかの観光地が散在する。

1)勝浦地域

2)鴨川地域

+:公共・交通施設

■:卸売市場

■:ホテル

■:観光施設

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【景観や各種アクティビティなど「海」をテーマとした観光地域づくり】

テーマ案B 鴨川・勝浦

(2)鴨川地域

・以下のような再開発、開発を想定。

ⅰ)ホテルのリノベーション 2棟

ⅱ)新規高級ホテルの建設 1棟

ⅲ)ヘルスケア施設 1棟

(3)勝浦地域

・海岸線では、勝浦漁港とその周辺に宿泊施設が集中。その他には、かつうら

海中公園、鵜原理想郷、テルムラマンパシフィーク等の観光地がある。

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【景観や各種アクティビティなど「海」をテーマとした観光地域づくり】

テーマ案B 鴨川・勝浦

・以下のような再開発、開発を想定。

ⅰ)ホテルのリノベーション 2棟

ⅱ)新規高級ホテルの建設 1棟

ⅰ)この周辺のホテルのリノベーション

ⅱ)新規高級ホテルの建設(この周辺が候補)

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【景観や各種アクティビティなど「海」をテーマとした観光地域づくり】

テーマ案C 南房総

選定理由 ①太平洋や海岸線の景勝地など、千葉県を囲む海を観光資源として活かすことが

できる。

②既存の宿泊施設やホテルも存在しており、観光地域づくりとして成功する下地

があり、また活性化することによる経済効果も大きい。

③ダイビング、果物の収穫体験等の観光資源もあり、これらを組み合わせて各施

設を広域で結んだ「面」としての開発を行うことで観光地域としての活性化が

有望な地域である。

想定エリア ①南房総・館山を中心とする地域

エリアにおける

資源

[景観]

○南房総の海岸線(外房/内房)

○漁港やその周辺の街並み

○灯台(野島崎、洲崎)

[施設等]

○既存の観光施設

-海水浴場/漁港/灯台/景勝地 等

○温泉

○その他関連施設

-道の駅

-スポーツ関連施設(ゴルフ、テニス、ダイビング等) 等

[食]

○海産物(加工品も含む)、農産物

ターゲット ○海外及び国内のアッパーミドル~富裕層。

投資内容 (1)ホテルの集積地域(千倉、白浜、館山、富浦等の全体)

1.ホテルのリノベーション 2棟

・星野リゾート等へのリブランドを想定

・100 室程度の大規模クラスのホテルを想定

・全室を高級ホテル仕様へ改装。

・高級レストラン、物販施設、結婚式場、宴会場等を併設

2.新規高級ホテルの建設 1棟

・四~五つ星ホテルの新規開設を想定(立地は高台の地域の開発を想定)。

・高級レストラン、物販施設、結婚式場、宴会場等を併設

・外国語対応を充実。案内、スタッフを揃える。

Page 30: 新たな観光地域づくりに係る調査 報告書 · 民間事業者にとって望ましい観光地域づくりの基礎のあり方を明らかにする。 ... 人観光

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【景観や各種アクティビティなど「海」をテーマとした観光地域づくり】

テーマ案C 南房総

[現地の状況]

(野島崎周辺のホテル)

[整備後の施設のイメージ]

開発の具体的イ

メージ

(1)全体観

・海岸線に、観光地や宿泊施設の集積がある。大きく千倉地域、白浜地域、館

山地域、富浦地域に集約される。

・以下のような再開発、開発を想定。

ⅰ)ホテルのリノベーション 2棟

ⅱ)新規高級ホテルの建設 1棟

ⅲ)メガヨットの寄港対応(飲食・物販) 1棟

1)千倉地域

2)白浜地域

3)館山地域

館山港

千倉港

(リゾナーレ熱海(星野リゾート)HP より)

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【「医療」「ヘルスケア」と「海」を組み合わせた観光地域づくり】

テーマ案D 成田

選定理由 ①成田空港は多くの訪日旅行者が利用するので、外国人を対象とした観光施設の

成立可能性は潜在的に高い。成田空港の近くに、国際医療福祉大学が病院を新

設予定。これと、周囲の観光資源との連携を図ることで考えられる。

②今後のマクロ的な傾向(高齢化、アジア諸国の所得向上等)やマーケットを見

据えるとチャンスが大きい。

想定エリア ①成田空港近くの病院建設予定地とその周辺

エリアにおける

資源

[施設等]

○成田空港

○空港周辺のホテル

○既存の観光施設

-日本遺産(佐倉/成田/佐原)

○商業施設(アウトレット)

○集客施設(房総のむら、THE FARM)

[食]

○海産物(加工品も含む)、農産物

ターゲット ○海外及び国内のアッパーミドル~富裕層。

投資内容 (1)国際医療福祉大学成田病院(2020年 4月開院予定)

※国際医療福祉大学資料より

・642 床、診療科 39科

・敷地面積 159.6千㎡。建築面積 23.8千㎡、延床面積 123.8千㎡。

・総事業費約 700億円

[整備後の施設のイメージ]

(国際医療福祉大学の HPより)

(2)ヘルスケア施設 1棟

・鍼灸、タラソテラピー等を導入。有名事業者を導入して、「評判」で客が来る

ようにする。

・外国語対応を充実。案内、スタッフを揃える

[整備後の施設のイメージ]

(Danubius Hotel Groupの HPより)(フィリピン The Farmの HPより)

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【「医療」「ヘルスケア」と「海」を組み合わせた観光地域づくり】

テーマ案D 成田

開発の具体的イ

メージ

(1)全体観

・成田市内には、成田山新勝寺等の観光施設やホテルが多数ある他、車で 30

分圏内に佐倉、酒々井、佐原等の観光施設の集積がある

(2)成田周辺

・国際医療福祉大学成田病院の予定地は成田空港の至近。空港周辺や成田市

内には多数のホテルや観光施設が集積しており、これらとの連携がとりや

すい立地にある。

成田空港

佐原・香取

佐倉・酒々井

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(3)テーマ案の実現へ向けた主な課題

各テーマ案を実施する上で、以下のような課題が考えられる。

これらの課題へ対応するために、インセンティブを付与することが考えられる。インセンテ

ィブについては、この後に詳しく検討する。

【各テーマ案の実現に向けた主な課題】

①施設整備に対する規制への対応

・自然公園法の規定により、国定公園内の施設は建ぺい率、高さの規制を受ける。採算性を確保

する上で十分な規模の施設整備ができないことで、再開発に踏み切れていない。

・(既に犬吠埼周辺で展開している施設はあるが)より開発と採算性確保が容易となるよう規制

を緩和することで、地域全体の宿泊者数キャパの拡大と観光収入の増大を図ることが可能と

なる。

②空港からのアクセスの改善

③エリア内及びエリア間の周遊性の確保

・エリア内のバス、鉄道サービスの充実

・銚子~香取地域及び勝浦~館山のバス、鉄道サービスの充実、利根川などにおいては船舶チ

ャーターなどによる河川交通網の整備

④高い水準のサービスを提供できる施設・体制の整備、スタッフの育成

⑤既存施設の拡大・規制緩和

・メガヨットが寄港できるような施設・設備の整備

・ガボタージュ規制の緩和、周辺漁業者との調整

⑥漁港・卸売市場及び食品工場等の施設、運営の改善

・運営時間

・「見せる」運営(水揚げ/セリ/加工、等)

⑦外国人観光客の利便性向上(表示、通訳等)

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4.各テーマ案の収支概算と採算確保のための対応

(1)各テーマ案の収支概算

①各テーマ案の概要

各テーマ案で整備することを想定している施設を整理すると、以下の通りである。

テーマ案 内容

テーマ案A 銚子 1)犬吠埼地域

ホテル・リノベーション 2棟

新規高級ホテル整備 1棟

灯台前(土産物店・水族館)の複合再開発 1棟

2)市街地・卸売市場地域

第一市場前飲食・物販施設 10棟

メガヨット寄港対応(飲食・物販) 1棟

3)マリーナ・屏風ヶ浦地域

マリーナ・リノベーション 1棟

ホテル(新設) 1棟

テーマ案B 鴨川・

勝浦

1)鴨川地域

ホテル・リノベーション 2棟

新規高級ホテル整備 1棟

ヘルスケア施設 1棟

2)勝浦地域

ホテル・リノベーション 2棟

新規高級ホテル整備 1棟

テーマ案C 南房総 ホテル・リノベーション 2棟

新規高級ホテル整備 1棟

メガヨット寄港対応(飲食・物販) 1棟

テーマ案D 成田 病院(参考・着工済み) 1棟

ヘルスケア施設 1棟

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②各テーマ案の収支概算(詳細は参考資料③を参照)

今回行った各テーマ案の試算の目的と、試算方法の概要は以下の通りである。

各テーマ案の規模や収益性を大まかに把握し、行政としてのサポートやインセンティブを考え

ることを目的としているので、詳細な施設内容や、運営体制等は検討していない。※

各施設の詳細な試算方法は参考資料に譲るが、概ね以下の例に示すレベルでの積み上げを行っ

ている。

【例(ホテルの試算)】

1)高級ホテルを想定し、以下の施設構成として面積を設定。

→9,967㎡

○新設高級ホテルの規模設定

 ①客室

1室あたりの広さ 45 ㎡

室数 100 室

客室計 4,500 ㎡ A

 ②レストラン

1人あたりの広さ 2.5 ㎡

1軒あたり人数 60 人

1ホテルの軒数 3 軒

レストラン計 450 ㎡ B

 ③物販施設 300 ㎡ C

 ④挙式場・バンケット・厨房(100人利用)

550 ㎡ D

 ④レンタブル比 0.6 E

 ⑤全体面積 (A+B+C+D)/E

9,667 ㎡ F

目的:各テーマ案を実施した場合に必要な投資額と収支を大まかに見積もる

その結果として、行政としてどのようなサポートやインセンティブの付与ができるか

検討する。

○整備費用:各テーマ案の整備予定施設について、一般的な当該施設の規模(面積)や、実

際に対象地において考えられる規模(面積)を想定し、事例を元に設定した平

均的な面積あたり費用を乗じることで算出。

○収入 :整備する施設のグレードに応じて想定される単価や稼働状況を設定して、概算

で見込む。

○利益率 :各事業で一般的に見込まれる利益率や、整備する施設と同等レベルの施設の数

値を採用し、売上高に乗じることで利益を算出。従って、費用は個別に積み上

げていない。

※詳細な事業計画の策定の必要性について

・上記の通り、各テーマ案の収支の概算を行っているので、施設の内容や運営体制等

は十分に詰めていない。

・当然のことながら、実際に観光地域としての開発を行う際には、施設の整備地を特

定した上で、マーケット調査を行いつつ詳細な施設規模と仕様を設定し、運営体制

等の検討を行った上で事業収支を詳細に試算する必要がある。

Page 36: 新たな観光地域づくりに係る調査 報告書 · 民間事業者にとって望ましい観光地域づくりの基礎のあり方を明らかにする。 ... 人観光

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2)整備費用単価は、最近整備された高級ホテルの事例を参考に設定。

→1,000千円/㎡

3)「収入=実質客室単価(ADR)×客室数×客室稼働率×365 日」として計算。ADRと客

室稼働率は上位 50社の平均を採用。

ADR:32,166円

客室稼働率:73.7%

→864,281千円/年

この他、飲食、物販、結婚式・宴会収入も見込む。

→ホテルの総売上:2,633,204 千円/年

4)利益率は日本ホテル協会の全国主要ホテル経営実態調査より、1~99 室のホテルの平均

(3.74%)を採用。

経常利益=2,633,204千円×3.74%=98,482千円/年

5)償却年数を設定し、償却費と経常利益の合計で整備費を除して改修期間を概算。

→27.9年

各テーマ案における収支は以下の通りである。

銚子

売上(千円) 利益率経常利益

(千円)

整備費

(千円)

償却期間

(年)

減価償却費

(千円)回収期間(年)

A B C=A×B D E F=D/E D/(C+F)

1)犬吠埼地域

ホテル

(新設1)2,633,204 3.74% 98,482 9,666,667 39 247,863 27.9

ホテル

(リノベ2)5,612,121 3.74% 209,893 16,240,000 39 416,410 25.9

灯台前

(土産物店)781,574 1.10% 8,597 2,600,000 41 63,415 36.1

灯台前

(水族館)1,020,000 1.35% 13,770 3,600,000 41 87,805 35.4

2)市街地・卸売市場地域

第一市場前飲

食・物販135,273 1.10% 1,488 300,000 41 7,317 34.1

メガヨット寄

港対応131,400 2.80% 3,679 1,000,000 41 24,390 35.6

3)マリーナ・屏風ヶ浦地域 0

マリーナ 533,000 14.34% 76,439 3,200,000 30 106,667 17.5

マリーナ・ク

ラブハウス131,400 2.80% 3,679 500,000 41 12,195 31.5

ホテル 2,633,204 3.74% 98,482 9,666,667 39 247,863 27.9

施設

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鴨川・勝浦

売上(千円) 利益率経常利益

(千円)

整備費

(千円)

償却期間

(年)

減価償却費

(千円)回収期間(年)

A B C=A×B D E F=D/E D/(C+F)

1)鴨川地域

ホテル

(新設1)2,633,204 3.74% 98,482 9,666,667 39 247,863 27.9

ホテル

(リノベ2)5,612,121 3.74% 209,893 16,240,000 39 416,410 25.9

ヘルスケア施

設548,856 27.12% 148,850 1,400,000 31 45,161 7.2

2)勝浦地域

ホテル

(新設1)2,633,204 3.74% 98,482 9,666,667 39 247,863 27.9

ホテル

(リノベ1)2,806,061 3.74% 104,947 8,120,000 39 208,205 25.9

南房総

売上(千円) 利益率経常利益

(千円)

整備費

(千円)

償却期間

(年)

減価償却費

(千円)回収期間(年)

A B C=A×B D E F=D/E D/(C+F)

ホテル

(新設1)2,633,204 3.74% 98,482 9,666,667 39 247,863 27.9

ホテル

(リノベ2)5,612,121 3.74% 209,893 16,240,000 39 416,410 25.9

メガヨット寄

港対応131,400 2.80% 3,679 1,000,000 41 24,390 35.6

成田

売上(千円) 利益率経常利益

(千円)

整備費

(千円)

償却期間

(年)

減価償却費

(千円)回収期間(年)

A B C=A×B D E F=D/E D/(C+F)

ヘルスケア施

設548,856 27.12% 148,850 1,400,000 31 45,161 7.2

(参考)病院 省略

施設

施設

施設

○一般的に整備費の回収期間の目安とされる 30年間を超えるか、それに近い年数の事業が多い。

各地域において中核となることが想定されるホテルについて見込んでいる利益率 3.74%は、

参考としうる数値の中で最大のもの。楽観的な推計値でも回収に約28年間を要する。

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(2)各テーマ案の採算性を確保するために必要な施策

試算結果で見たように、整備費用の回収期間は比較的長いという結果になったが、その大きな

要因として、観光関連事業の利益率が低いことを挙げることができる。

類似する他事業について経常利益率を調べたところ、「不動産賃貸業・管理業」は下記の通り

13.7%である。

これに対し、観光地域における中核的な事業であるホテル事業の利益率は 3.74%である。

投資家の主たる関心事は、その投資からどれだけ多くのリターンが得られるかである。一般的

な事業の利益率が上記の通りであるとすると、投資先としての観光関連事業は、相対的に魅力が

乏しいということを意味する。「地方の観光地域のホテル事業に投資するよりも、都心の賃貸オ

フィスビルに投資した方が、高いリターンが期待できる」ということである。

⇒この利益率の差を縮めないことには、地方の観光地へ多額の投資を呼び込むこと

は困難である

(参考)不動産賃貸業における利益率との比較

~平成 28年中小企業実態基本調査(平成 27年度決算実績)より

不動産賃貸業・管理業 不動産取引業

売上高(百万円) 8,309,367 6,832,325

経常利益(百万円) 1,134,455 338,786

経常利益率 13.7% 5.0%

→投資先としての魅力度を収益性の観点から見ると、貸しビル業を中心とする不動産賃貸業

で 10%以上の利益率が見込めるということなので、投資家に対して観光地域への投資を促

すためには、利益率を高めることが必要。

投資家の関心の向き方

⇒リターンにのみ着目すると、観光地域に投資するより、都心で貸しビル業に投資する方が魅

力的である。

投資家の関心

=より高い利益を得ること

観光地域のホテル業

3.74%

○○○○業

○.○%

都心の貸しビル業

13.7%

より利益率の高い貸しビル業を選定

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こうした状況への対応として、政策的なインセンティブを付与することと、事業者自らの工夫

による対応とが考えられる。主な対応策は以下の通りである。ここでは頭出しとしての整理に留

めるが、次項以降で、外国で行われている観光業に対するインセンティブを整理し、千葉県で必

要と思われるインセンティブの提案を行うこととする。

1)政策的なインセンティブの付与

ⅰ.投資を呼び込むためのインセンティブ

例)税制上の優遇措置

・千葉県:立地企業補助金制度

・経済産業省:地域中核企業に対する支援

ⅱ.地元経済の活性化につながるインセンティブ

例)補助金の支給

・北秋田市:おもてなし宿泊支援事業

~地場産品を盛り込んだ宿泊プランに対し 1人あたり最大 2,000円補助

アイデア例)

・地元産品の仕入に対する消費税の減免

~地場産品の利用促進とコストダウンを実現

2)事業者の取り組み

ⅰ.事業内容を変更しない範囲での対応

イ)高価格路線の客単価設定

・設備レベルやサービスメニューを高級化

ロ) サービス質に直結しない部分のコスト削減

・管理体制の効率化による対人サービスの充実、

外部ソースの活用、原材料費の抜本的見直し等

ハ) 施設効率の向上

・施設面積あたりの売上アップにつながるサービス、飲食部門の回転率の引き上げ等

ⅱ.事業内容(規模)の変更を伴う対応

イ) 関連サービスへの取り組み

・宴会、リラクゼーションサービス等、周辺サービスへの取り組み

ロ) 事業規模の拡大

・物販等、収益事業の面積の拡大

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5.観光地域づくりを進める上で必要なインセンティブ・施策

(1)国際的観光地の観光地域づくりに関連するインセンティブの体系

①分野別のインセンティブ

観光地域づくりを進めていく上で、それを促進するための様々なインセンティブを付与する

ことが効果的であると思われる。その対象は、観光施設に対する投資を誘致したり、観光客の

来訪を促したり、観光地域で従事する人材の雇用や育成を支援したりと、様々である。

観光地域づくりを促進するためのインセンティブは、世界の各国で取り入れられている。整

理すると下表のようになる。各国のインセンティブは、観光業の置かれた環境・課題や、目指

している方向性・戦略によってその内容とウェイトが異なっている。

世界各国の観光業に対するインセンティブの体系

内容 例

①資本政策

・外資による会社の設立を認める。グレードによって差を

設ける場合。

②投資に対する税制優遇

・ホテルや観光プロジェクトに対する投資について、法人

税等の控除を行う。

・投資に伴って発生する繰越欠損金を認める。

・観光用車両等の購入時の輸入関税、消費税等の免除。

・プロモーション費用等に関する税の控除。

・特定の観光事業の投資に対する税制優遇。

③ファンドによる出資(要件を満たすプロジェクトに、国が

出資するファンドが投資)

④補助金の支給(要件を満たすプロジェクトに対する供与)

⑤特区の設定(上記のような施策を行う場所を特定して実

施)

マレーシア、インドネシア、モルディブ

マレーシア、ハンガリー、トルコ、ドミ

ニカ、トリニダード・トバゴ、ハワ

イ、フィリピン、

トンガ、フランス

マレーシア、フランス

スペイン、ハンガリー

フィリピン、マレーシア、インドネシア

①許可申請等

・ワンストップサービス、許可申請の規制緩和 等

②土地取引の支援(交渉のサポート等)

③人材教育

・留学生の受入、データベース化、人材への英語教育 等

④ビザの発給

・ビザ無しでの入国を認める、ビザ取得の簡易化、長期滞

在ビザの発行 等

⑤二次交通の整備

・周遊電子チケットの発行

⑥国外居住者雇用の手続きの簡素化

オーストラリア、インドネシア

インドネシア

インドネシア、台湾

各国

台湾

マレーシア

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②発展段階別のインセンティブ

観光地域としての産業の発展段階により、必要な、又は有効なインセンティブの内容や実施

規模は異なってくる。以下では、今回調べた各国のインセンティブについて、一般論的に観光

地域としての発展段階に応じたインセンティブを整理した。

観光地域としての発展段階別のインセンティブ

状況 該当国・地域 主な施策

・未開発又は開発の初期段

階にあたり、インフラ整

備や資本の積極的な誘致

が重要。

・開発内容によっては法整

備や世論形成も必要(I

Rや医療等)

マレーシア東部、

トンガ

・インフラの整備(空港、道路、

ライフライン等)

・投資に対する規制緩和(外資

規制の緩和)

・投資に対する支援策(優遇税

制、補助金の支給等)

・開発特区の設定(特にIRや

医療等の場合)

・開発を軌道に乗せるこ

と、秩序だった開発を実

現すること、 周辺地域

や産業との調和を図るこ

と等が重要。

マレーシア、イン

ドネシア、

フィリピン

・観光地域のプロモーションに

対する各種支援

・投資に対する支援策(税制優

遇、補助金の支給等)

・人材の育成に関する諸施策

・渡航のしやすさの整備(ビザの

簡素化、ガイドの充実等)

・二次交通の整備

・観光地域としての魅力を

維持することが重要。

・必要に応じて、活性化の

ための方針の再設定や、

リニューアルの 推進を

図ることも重要。

台湾、フランス、

スペイン、グア

ム、ハワイ

・観光地域のプロモーションに係

る各種支援

・観光地域の再開発を促す施策

(優遇税制、補助金、開発許可の

ための特区指定など)

・ターゲットの再設定と、それに

向けた各種施策(例えば、高級

化路線への誘導策)

・(住民生活や環境保全との調和の

ため)開発計画の管理

・渡航・来訪のしやすさの整備

(ビザの簡素化、ガイドの充実

等)

・二次交通の整備

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(2)千葉県の観光地域づくりに必要なインセンティブ

①発展段階別のインセンティブ

②で整理した各発展段階に、千葉県内の観光地域をあてはめて整理を試みた。

千葉県内の観光地域は、何も着手されていない観光資源は多くなく、かつての高度成長期に

盛んに開発が進んだものの、その後成熟又は衰退している地域が多いものと思われる。こうし

た地域の再開発の促進が重要である。もちろん、発展期にあったり、これから開発を促進して

いく(開発機)地域もある。

千葉県内観光地域の発展段階区分と必要なインセンティブ

千葉県内の地域の例 インセンティブ

(候補は多数考えられる)

・海岸沿いの高級リゾート

・地域文化・産業を核にした観光地域

・農業、ヘルスケア等を核にした観光

地域(成田、鴨川等) 等

・インフラの整備(空港、道路、ライフライ

ン等)

・投資に対する支援策(税制優遇、補助金の

支給等)

・開発特区の設定

リゾート:開発規制の緩和等

医療:外国人医師の活用、病床数の増大

・地域未来牽引企業が運営する各観光

地域(ドッグリゾート、鴨川シーワ

ールド、銚子スポーツタウン、The

Farm 等)

・地元による観光地域づくりに取り組

んでいる地域(香取市佐原、流山

市、一宮町等)

・商業施設(アウトレット)

・観光地域のプロモーションに対する各種支

・投資に対する支援策(税制優遇、補助金の

支給等)

・人材の育成に関する諸施策

・二次交通の整備

・団体旅行向けの大型宿泊施設が多い

観光地域(銚子、勝浦・鴨川、南房

総等)

・神社仏閣(成田山、香取神宮等)

・ゴルフ場

・東京ディズニーリゾート

・観光地域のプロモーションに対する各種支

・観光地域の再開発投資を促す施策(優遇税

制、補助金)

・開発特区の指定(開発規制の緩和等)

・メガヨットの寄港に関する各種規制の緩和

(カボタージュ規制、入出国に関するCI

Q手続きの簡素化等)

・人材の育成に関する諸施策(観光学部の誘

致・新設、観光人材バンクの創設等)

・二次交通の整備

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②整備/運営段階別のインセンティブ

観光地域づくりを促進するために、今後、国や地方自治体が具体的にどのようなインセンテ

ィブを付与することが有効かを考えるために、観光地域の整備又は再整備を行う際に有効と思

われるインセンティブと、実際に観光地域として運営を行っていく段階で有効と思われるイン

センティブの整理を試みた。各地域のこれまでの経緯や現状・課題に照らして、有効と思われ

るインセンティブを適切に組み合わせて実施することが重要である。

このうち、赤字部分のインセンティブについては、具体的な提案事項に整理した。

観光地域の(再)整備に関するインセンティ

観光地域の運営に関するインセンティブ

1)開発・整備に関する規制の緩和

例)自然公園法による容積率、高さ制限の

緩和(A)

外国人の雇用の緩和、PFIの活用に

よるプライベートビーチの実現(B)

2)入国・移動に関する規制の緩和(C)

例)カボタージュ規制:個人所有船に関し

て緩和し、外国からのメガヨット

による国内クルーズ業務を認める

入出国・移動手続きの簡素化

3)事業者に対する開発費用に関する経済的支

例)所得税の控除

地元からの調達に対する税の優遇・免

補助金の支給 等

4)インフラの整備(D)

~ 交通網(空港・港湾・道路・鉄道

等)、ライフライン

5)人材の確保

例)雇用に対する補助金の支給

1)地元産品、伝統工芸品の販売に関する優遇

例)補助金の支給

税制の免除(消費税等)(E) 等

2)二次交通網の整備

例)地域周遊パスの設定

バス路線整備に関する条件の緩和、補

助(F) 等

3)観光プロモーションの支援(D)

例)観光地域全体や、地方自治体としての

プロモーション活動の展開

4)人材の育成・紹介(G)

例)学校(大学、観光関連の専門学校等)

の整備・誘致

人材バンクの創設・運営

赤字のインセンティブは、次頁以降の(5)の中

で提案事項として取り上げたもの。

A~Gは、次頁以降の項目に対応。

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③千葉県におけるインセンティブの提案

A.開発規制の緩和

○千葉県内の観光地域の多くは自然公園内

・水郷筑波国定公園、南房総国定公園をはじめ、千葉県内の海岸線の多くは自然公園(国定

公園、県立自然公園)に指定されている。

・自然公園内では地域、地区ごとに規制を受ける行為が定められている。

地域について(愛知県HPより)

特別保護地区 公園の中で最も中心となる景観地であり、現状維持を原則とする

地域(県立指定公園には指定制度がない)

第 1種特別地域 特別保護地区に準ずる地域で、現在の景観を極力維持する必要の

ある地域

第 2種特別地域 良好な自然状態を保持している地域で、農林漁業との調和を図り

ながら自然景観の保護に努めることが必要な地域

第 3種特別地域 特別地域の中では風致を維持する必要が比較的低い地域であり通

常の農林漁業活動については風致の維持に影響を及ぼすおそれが

少ない地域

普通地域 特別地域と一体的に風景の保護を図ることが必要な地域

許可の基準(愛知県HPより抜粋)

行為の

名称 許可の基準(一部抜粋・要点)

建築物の

新・改・

増築

○特別保護地区、第 1 種特別地域内等で行われるものでないこと(既存の建

築物の改築又は学術研究その他公益上必要と認められる建築物等は除く)

○色彩及び形態が周囲の風致景観と著しく不調和でないこと。

○高さ 13m(分譲地内の建築物については 10m)以下であること。

○建ぺい率、容積率がそれぞれ次に示す割合以下であること

地種区分と敷地面積の区分 建ぺい率 容積率

第 2種特別地域:敷地面積 500m2 未満 10% 20%

第 2種特別地域:敷地面積 500m2 以上 1,000m2 未満 15% 30%

第 2種特別地域:敷地面積 1,000m2 以 20% 40%

第 3種特別地域 20% 60%

※その他山稜線を分断しないなど自然景観を保全するための制限がある。

○この規制により(再)整備が進まない

・銚子では、ホテルを採算が確保できるような規模で建て替えが困難。犬吠埼周辺でホテル

等の再整備や遊休地の開発が行われない現状がある。

⇒自然公園法による建築物の規模・高さの制限等、観光地域内で行う事業の採算性

を高める上で支障となる規制について、制限を緩和し(再)整備を促進する。

実現の手段として、特区の活用が考えられる。

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B.PFIの活用によるプライベートビーチの実現

・海外では、高級ホテルの宿泊者や利用者に限定してビーチが利用できるプライベートビー

チが確立している地域がある。高級リゾートを整備する上で、プライベートビーチの実現

は重要な要素であると思われる。

・日本国内では、海岸法の規定によりプライベートは認められていない。一部、沖縄県では

過去の経緯から海岸に立地するホテルが美化清掃等を担いつつ、事実上当該ホテルの利用

者のみが利用可能な状態がある。

・PFI法の規定では、海浜地等の行政財産を民間に貸し出すことが可能とされており、こ

の手法の活用により、プライベートビーチの整備が期待される。

1.用語の説明

プライベートビーチとは

・所有者または管理者あるいはこれらの者が認めた関係者のみが利用できるビーチ。対義語は

パブリックビーチ。

・多くの場合、有名な海岸リゾートに立地する高級ホテルが一定区間のビーチを所有し、その

宿泊者等に限定して利用を認める形態。認めた者しか利用できなくすることで、そのビーチ

は特別な場所になり、混雑と無縁な高級感のある滞在を楽しむことが可能になる。

・特定の利用者から対価を得て(徴収方法は様々に考えられる)管理されるので、清掃等の管

理が行き届き、安全、快適な利用が可能となるメリットがある。

PFIとは

・「PFI(Private Finance Initiative:プライベート・ファイナンス・イニシアティブ)」とは、

公共施設等の建設、維持管理、運営等を民間の資金、経営能力及び技術的能力を活用して行

う新しい手法。

・民間の資金、経営能力、技術的能力を活用することにより、国や地方公共団体等が直接実施

するよりも効率的かつ効果的に公共サービスを提供できる事業について、PFI 手法で実施す

る。

2.海外の事例(インタビュー結果より)

・太平洋諸島諸国:プライベートビーチについては、太平洋諸島の島国でも認められていない。

そのかわり、多くの無人島があるので、そこまで客を連れて行くことで、実質的なプライベ

ートビーチを実現している。

・ASEAN諸国:インドネシア(バリ島)、フィリピン(セブ島)、カンボジア、タイ(プー

ケット)等にある。

3.国内の状況

・国内のビーチはすべて国有地。海岸法の規定により、海岸の管理は都道府県、海岸の清掃は

⇒リゾートの開発においてプライベートビーチがあることは重要な要素。

PFIを活用することで、海岸の管理とホテルの整備・運営を一体化する(次頁

4.を参照)。

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市町村の負担。

・維持管理費は多額。公益財団法人かながわ海岸美化財団では、平成 26 年度で 1 億 9,000 万

円(同財団HPより)。

・沖縄県恩納村のビーチは、入場の対価ではなく、駐車場、トイレ、シャワーなどの利便施設

を使用する対価として料金を徴収することで、事実上プライベート・ビーチ的な運営が行わ

れている。

4.プライベートビーチ化に関する動き(上の写真を引用した論文より)

・1999年の海岸法改正で、「海岸の保護」に加えて「海岸環境の整備と保全」「公衆の海岸の適

正な利用」を目的に位置づけ。

・2001年の改正PFI法で、PFI事業であれば海浜地等の行政財産を国有財産法の規定に関

わらず、民間に貸し付けることが可能に。市町村主導の環境管理にPFIを導入して民間主

体の海岸管理を促すことが可能ではないかという意見も。

⇒PFIの活用により、法的に明確な形で民間事業者にビーチの管理を委ねることが可能にな

る。

当論文では、主に環境管理の主体に関するあり方の観点から論じられているが、受託者は管

理費用を営利事業で賄う必要があることから、PFIを活用するとすれば、自ずとプライベ

ートビーチ的な海岸の整備・管理という形態に行き着くのではないかと思われる。

-恩納村では各ホテル事業者に前面の海

浜地の美化清掃等を依頼する関係。

-口頭による管理依頼で、取り決めは交

わしていない

沖縄県恩納村サンマリーナビーチ(『わが国における新たな海岸環境管理制度の実現化方策に関する研究』山

崎正人・横内憲久・岡田智秀 日本都市計画学会 都市計画論文集№39-3 2004年 10月 p.153 より

【参考事例】奈良県 「コンベンション施設等整備運営事業」

・拠点施設(コンベンション施設、駐車場・バスターミナル等)の整備・維持管理・運営をP

FIで県が行い、民設民営で行うホテルとNHK放送会館との相乗効果を引き出すことを

意図。

→海岸・駐車場等の整備、維持管理運営(PFI)と、民間ホテル事業とを組み合わせた事

業が考えられないか。

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C.メガヨットの寄港に関するインセンティブ

(1)-1カボタージュ規制(外国人による輸送業的な行為の制限)の緩和、入国手続きの迅速化等

・沖縄県、石垣市を対象に、下記のような規制緩和の提案が出されている。海外からのメガ

ヨットで来訪する富裕層を誘致する上での重要な論点が整理された提案である。

・これを千葉県においても適用することで、有効なインセンティブになるものと思われる。

~国家戦略特区ワーキンググループ 平成27年度提案 株式会社COAST『「スーパーヨット特区」

を軸とした地域振興について』より

現状 根拠法令等 規制・制度改革のための提案

①日本では、メガヨットを

含む外国船籍による日

本国内で完結するクル

ーズ業務が法的に規制

されている。(カボター

ジュ規制:自国内の輸送

を自国の航空機または

船に限定)

船舶法第 3条 1-1. カボタージュ規制の部分的緩和

小型客船によるチャータークルーズ産業は日本

国内に現存していないため、カボタージュ規制で

保護すべき国内業者がいないこの分野に限定し

た規制緩和を提案。

現船舶法で、外国船籍船において「商用」と「個

人所有船(プライベート)」を区別する新たな措

置を取る。

※カボタージュ規制のある諸外国においても、商

用と個人所有の船舶を区別することは一般的

②沿岸輸送特許、上陸許可

証、不開港出入特許、上

陸許可等の手続きが、移

動の度に必要であり、申

請における時間的制約、

提出方法等の諸条件も

厳しい。

このことは自由な運航

を求めるスーパーヨッ

トおよびプレジャーボ

ートの行動特性に合わ

ず、訪日の障害壁となっ

ている。

船舶法第 3条

関税法第 15

出入国管理

及び難民認

定法第 57条

2-1.入国法規準拠の手続きを迅速且つワンストッ

プ化

外国籍のヨット等が日本国内において容易に入

国・運行することが出来るように、全ての必要入

国法規準拠の手続きを迅速・簡易にして、重複作

業の軽減とワンストップ化を検討するとともに、

それを周知する体制を整える。

2-2.クルージングパーミット制度の導入

個人所有船舶が入国後日本国内を一定期間、開

港、不開港を問わず自由に航行出来るクルージン

グパーミット制度の導入を検討するとともにそ

れを周知する体制を整える。

※クルージングパーミット制度は米国等でも導

入されている制度で、日本に導入することでス

ーパーヨットによる経済効果が島嶼地域にも

及び、離島振興対策が可能

⇒沖縄県、石垣市を対象にした規制緩和の提案が出されている。

千葉県においても同様のインセンティブが有効。

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(1)-2千葉県における入出国手続きの現状と緩和の提案((1)-1の提案 2-1.に関連する)

・千葉県内の港において、外国から外国籍に船で外国人が入国しようとする場合の手続

きを、関係機関に問い合わせた結果が下記の通り。関係機関の協力により、手続きを簡

素化する余地は大きいものと思われる。

⇒以下のような現行の手続きを前提にすると、検疫の対応が限られるため、開港

以外での入港は不可。

開港以外への出張や、検疫港以外での無線検疫の実施等が可能となれば、県内

各港への入港を実現できる。

【入出国手続きの現状】

~東京入国管理局、東京税関、東京検疫所等へのインタビュー結果に基づく

1)開港か不開港かで必要な手続きが異なる。国土交通省が管轄。

開港 →入港は可能。入国手続きが可能かどうかは個別判断。千葉県の開港は木更津

と千葉。

不開港 →国土交通大臣の特許を得れば入港可能。入国手続きの可否は個別判断。

2)入国管理/税関/検疫でそれぞれ手続きが分かれる。相互に連携することはない。通常、

これらの調整は代理店に依頼する。

入国管理:港により対応が異なる。担当者が港に出向くこともあれば、入国者に事務所

まで出向いてもらうこともある。手続きや出張に対して手数料を徴収するこ

とはない。

税関:特殊船舶(ヨット)の場合、開港・不開港いずれの場合も事前に税関に入港届を

提出する(通常は代理店が行う)。税関職員が出向くかどうかはケースによる(出

向かないこともある)。出港の場合も特殊船舶の場合は事前に出港届を提出して

もらうのみ。従って、税関の立場からは、当該港への特許と管理者の許可があれ

ば、きちんと届を出してもらえればどの港でも対応するということ。

検疫:検疫港(=開港。即ち木更津と千葉)以外での対応はできない。

直前の出発港で船舶衛生管理免除証明書を取得し、無線検疫を行えば、検疫官が

船に乗り込むことなく手続きを完了すことができるが、それが可能なのも検疫港

に限られる。

なお、検疫に関わる手数料は発生しない。

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D.TID、BIDの取り組み

・海外で先行している取り組みとして、観光地域の整備やプロモーション費用に充てる資金

を確保する仕組みであるTID、BIDがある。地域のニーズにあった資金の活用が可能

なので、観光地域づくりにおいても有効と思われる。

1)TID、BIDとは

TID:ツーリスト・インプルーブメント・ディストリクト

BID:ビジネス・インプルーブメント・ディストリクト

= 認定された特定エリア内において、民間のエリアマネジメント団体に資金的な裏付け

を与え、持続的な街づくり活動を支援する制度

2)大阪版BID

・2015年 4月より、日本初のBIDとして制度運用。うめきた先行開発区域7ha。

・「グランフロント大阪TMO」が、不動産所有者から大阪市が集めた分担金を補助金として受

け取り、運営。

・分担金で歩道空間の管理(点検、清掃等)を行う他、自主財源でオープンカフェやバナー広

告を実施。

⇒千葉県内の観光地域においても、下記のような、必要資金の徴収と観光地域の整

備やプロモーションの費用に充てられる仕組みをつくることで、地域のニーズに

合った観光地域づくりが可能となる。

(大阪市資料より)

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3)その他のTID、BID

○米国の状況

・観光の促進にはプロモーションが重要で、そのために必要な費用を賄う方法として、国レ

ベルでは入国税、地方レベルでは宿泊税がある。

・TID、BIDでは、財源確保の不安定性を解消するために、一定のエリア内の宿泊事業

者から一定割合の賦課金を徴収する。現在では約 150のエリアで施行されている。

・カリフォルニアで実施されているものが有名。条例が制定されて実施される。資金の使わ

れ方は様々。第三セクターを設立して、プロモーションを実施したり、景観の整備や、ガ

ードマンの雇用などにも使われる。

【「ビジット・ナパ・バレー」:カリフォルニア州のDMO(観光地経営組織)】

-持続可能な財源を確保するためにTIDとして全宿泊者に対して室料収入の 2%を

課金。地域のマーケティングやセールスを担う。

-10年間で宿泊収入を大幅に増やすことに成功

○国内の状況

・「日本版DMO」は、2017年 11月に 41法人が登録。

・「せとうち観光推進機構」は、広島県をはじめ7県にわたる広域連携DMO。広島県は「日

本版TID」を提唱。

【日本版TID法:広島県が提案】

-宿泊事業者:賦課金納付・理事会参加

-行政・議会:TID団体認定・賦課金徴収交付・DMO監視

-DMO:事業計画策定・事業実施・行政への報告

-理事会:DMOの意思決定・DMO監視

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E.消費税の減免による地域経済への貢献

・地元産品を観光地域で活用を促進するため、地元産品の仕入れ・販売に係る消費税を減免す

るというアイデア。

・減免することで、観光地域全体での販売量の増加を図るとともに、地元産品の仕入れ増加に

よる地域経済の振興を期待する。

⇒地元産品の販売に限定した消費税の減免により、地域経済の振興に寄与

(消費税の減免の効果の試算)外国人向けの消費税免税効果からの推計

~百貨店における外国人観光客の免税売上動向を元に、消費税を半分の 4%にした場

合の地域経済への効果を灯台前の土産物店を対象に試算した。

2018年 1月 日本百貨店協会 外国人観光客の免税売上動向 対前年比 131.6%

2017年 1~12月 全国百貨店売上 対前年比 100.1%

差し引き、31.5%が免税による効果があったものと見なす。

8%の免税による効果が 31.5%なので、4%の場合は半分の 15.75%であるものとする。

灯台前(土産物店)売上 781,574千円(A)

消費税の減免効果(売上の 4%) 31,263千円(B)

地元産品の販売(即ち仕入)が 15.75%増えるものとする。仕入は売上の 75%

とする。

781,574千円(A)× 75% =586,181千円(C)

586,181千円(C)× 15.75% = 92,324千円(D)

減免によりこの程度の効果があれば、減免による消費税収の減少(B)より多くの地

域経済への波及効果(D)が見込めることになる。

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F.バス事業の認可条件の緩和

観光地域づくりに関して実現したいこと

=事業者の創意工夫により、必要な運送サービス(観光客及び地元住民にとって)が提供さ

れること

・観光地域への来訪者等を対象にしたバスのサービスは、乗合バス事業としてのサービス

と宿泊施設の付帯サービスとしての送迎があるが、いずれも厳しい条件があり、参入を

難しくしたり、十分な量のサービス提供ができない状況にある。

・これらの条件を緩和することで、観光客の交通手段を確保したり、地域の一般住民の利

便性の向上にも寄与すること考えられる。

⇒上記のために、現行のバス事業に関する厳しい認可の条件を緩和すれば観光客の

2次交通問題と地域の交通事情の改善ができる

改善が望まれる事柄

① 宿泊事業者の送迎バスを乗合バス化

・主目的は、宿泊施設の最寄り駅等からの

利用者の交通手段の提供。

・副次効果として、一般住民の利用を可能

とすることで、住民によっては移動の

便の確保、宿泊事業者にとっては、一部

ではあるがコストの回収が可能にな

る。

②宿泊事業者による送迎バスの複数台運行

・宿泊事業者による送迎バスの運行は、現

在、1事業者1台とされているため、送

迎距離・時間が長い場合は運送能力に

不足が生じる可能性がある。

実現へ向けた対応

①乗合バス許可条件の緩和

・乗合バス(一般旅客自動車運送事業)

の許可を受けるには、厳しい条件(=

営業所の設置、予備車両の配置等)が

ある。

⇒条件を緩和すれば、地域の運送サービ

スを容易に提供できる

②送迎バスの条件の緩和

⇒複数台保有・運行できるようにするこ

とで、利用者の利便性を高められる

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G.人材の育成

1)外国の観光地域における人材育成

・欧米ではコーネル大学等、観光を学ぶ質の高い大学が多数あり、高級ホテル等で活躍する人

材の供給源として機能している。こうした大学では卒業生の人脈が密で、それを活かして転

職を重ねることでキャリアアップを図ることがよく行われている。

・グアムにはGCCグアム短大、ハワイにはハワイ大学がありホスピタリティを教えている。

地元が観光地域として発展しているので、就職先(地元のホテルにとっては人材供給源)が

確保できる環境が整っている。

2)千葉県における人材育成のアイデア

・県内で観光を学ぶ大学・学部を誘致し、観光地域に対する人材供給を図る。

・その際、外国の著名な観光学部を有する大学と提携し、教育内容の質の向上を図るととも

に、卒業生のネットワークを広げることも考えられる。もちろん、既存の大学・学部がこの

ような形で対応を図ることも考えられる。

・その他、職業訓練校においてサービス業に関するカリキュラムを充実させるなど、観光業で

従事する人材教育の底辺を広げる努力も有効と思われる。

⇒「世界的観光地」において高級ホテル等で働く人材を確保するには、長期的な育成

システムが重要。人材供給源として、また就職先として、観光地域内の諸施設と教

育機関相互にとってメリットのある関係構築が期待できる。

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6.有識者の意見・先進事例の紹介

観光地域づくりを進めるにあたり、既に観光地域づくりに携わり、豊富な見識を持つ有識者の意

見を参考にしたり、先進的な観光地域づくりの事例に学んだりすることは、有意義である。

(1)有識者の意見

①デービッド・アトキンソン(『新・観光立国論』『世界一訪れたい日本のつくりかた』より)

○観光立国になる条件は「気候」「自然」「文化」「食事」の4つ。日本はすべて満たす

・これだけ恵まれているのに、外国人観光客数、観光収入が世界で下位に甘んじているのは

日本の観光業が遅れているからである。

○観光にお金を使いたがる上客を狙うべき

・何を求めているかを国別にきちんとマーケティングし、それに合わせてインフラを整備す

る必要がある。

・裏を返すと、まだ成長の余地はある。

○欧州からのインバウンドを狙え

・滞在日数が長く、消費額の多い、伸び代のあるヨーロッパの客を狙うべき。

○高級ホテルを増やすべき

・お金をたくさん落とす富裕層にふさわしい宿泊施設が必要。5つ星ホテルが少なすぎる。

小西美術工藝社社長

元ゴールドマン・サックスアナリスト

2009年、創立 300年余りの国宝・重要文化財の補修を手掛ける小西美術工藝社に入社、取締

役に就任。2010 年に代表取締役会長、2011 年に同会長兼社長に就任し、日本の伝統文化を

守りつつ、旧習の縮図である伝統文化財をめぐる行政や業界の改革への提言を続けている。

(『世界一訪れたい日本のつくりかた』より)

⇒地域が持っている魅力的な観光資源を活かすこと、滞在日数が長く、消費金

額の多い外国人富裕層を狙うべきであること、そのためにも富裕層にふさわ

しい高級ホテルを整備することが重要

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②大前研一(『世界のリゾート&ツーリズム徹底研究』大前研一ビジネスジャーナル 2016年№9から)

○日本のリゾート地には富裕層の集客&滞在する仕掛けが不足しており、リゾート開発は全て

において散発的である

○スーパーラグジュアリーリゾート

・欧米の超一流ホテルやアジアの高級リゾートに代表される。

・二極化が進む世界のリゾートにあって、富裕層を対象に、「何もしない」「人がいない」贅

沢を提供するリゾーが安定した経営をしている。富裕層の獲得が日本の観光開発の鍵であ

る。

○日本のリゾート開発の課題

・散発的でコンセプトがない

・長期滞在の発想がない

「ボーダレス経済学と地域国家論」提唱者。 経営コンサルタントとしても各国で活躍しなが

ら、日本の疲弊した政治システムの改革と真の生活者主権国家実現のために、新しい提案・

コンセプトを提供し続けている。

㈱ビジネス・ブレークスルー代表取締役社長 他

⇒アトキンソン氏と同様に、富裕層をターゲットにした観光開発が重要であるこ

とを主張。特に重要なのは、高級ホテルであるという点も共通。

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(2)観光地域づくりの事例

観光地域づくりに成功している事例としては、外部から新たなに入った有力な事業者が中心

となって進める事例や、地元の事業者が組織立って観光地域づくりに取り組むものが多い。事

例を見ることにより、千葉県における観光地域づくりで参考になる視点を整理する。

①星野リゾート(インタビュー結果や、同社HPの情報等より)

1)竹富島

・2012年にオープン。島の自然や文化を活用した滞在型のリゾート。竹富島の集落は、国の

重要伝統的建造物群保存地区に登録されている。

・沖縄の自然、海の風景があることに加えて、島の文化に着目。例えば、島民が普段利用し

ている牛車を活かし、来訪者が島の生活を体験できるように工夫。

・単に自然があるだけでは難しい。生活・文化を活かし、それを活かせて、地域住民にもし

っかり還元できたことが成功要因。

星野リゾートの成功要因

2)長門市(インタビュー結果や、長門市HPの情報等より)

・市長の強力なリーダーシップで再開発計画に取り組み。星野リゾートが受託して構想をとり

まとめた。地域の有名旅館が破綻し、星野リゾートが運営を行うところからスタート。市長

の「温泉街として活性化して欲しい」という考えと、星野リゾートの「温泉街として面とし

て活性化した方が良い」という考えが一致した。

・星野リゾートが「長門湯本温泉マスタープラン」を作成。以下の3点が目標

-全国温泉ランキングTOP10を目標とする

-魅力的な温泉街の再生に取り組む

-魅力的な温泉街に必要な6つの要素を整備する

=外湯、食べあるき、文化体験、そぞろ歩き、絵になる場所、休む・佇む場所

・星野リゾートが、「界」の開業を通じて温泉地やその周辺を含む長門湯本温泉街全体の活性化

に寄与し、計画の具体化に向けた支援を実施。

自然

施設 文化 訴求できる「文化」があり、それを活か

せたことが成功要因

(インタビューを元にJMSで整理)

(長門市HPより)

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(参考)千葉県の観光地域づくりに関する視点

○「その地域ならでは」の要素があるか

・竹富島では島民の生活・文化が、長門温泉では古い温泉街そのものが、それぞれ観光

客に十分に訴求できる要素として取り上げられた。単に海が見える、きれいなビーチ

があるというだけではなく、そのエリアの中で何か楽しみを探せるような要素がある

と、十分に開発の可能性はある。

・千葉県内にも、歴史・文化・伝統産業等、外に向けて発信し、来訪者が楽しめる要素

を持った地域はあるはずで、それを核にした観光地域づくりは可能ではないか。

○地域の問題意識が高まっているか

・長門市では、有名旅館の破綻という危機に際して、市長がリーダーシップを発揮して

星野リゾートの協力を得て活性化に着手したことがきっかけであった。地域全体とし

ての取り組みにするには、当事者のうちの誰かが中心になって進めることが必要であ

る。地域の意見がまとまり、有力な事業者を巻き込んで観光地域づくりを行う動きが

できれば、観光地域づくりが効果的に動き出す可能性が高い。

②地元組織を中心にした観光地域づくり

地域をあげた観光地域づくりに取り組み、成果を上げている事例として以下の 2地域を挙げ

ることができる。

1)城崎温泉(兵庫県豊岡市)

・直近 5年間で外国人観光客が 36倍に増加。

・2015年に豊岡市の観光情報サイト「Visit Kinosaki」に宿泊予約機能を装備。フランス語

にも対応。

・2016 年 6 月には豊岡版DMO「豊岡観光イノベーション(一般社団法人)」設立。企業と

連携して組織し、マーケティング事業、現地ツアーの開発・販売、宿泊予約サイト「Visit

Kinosaki」の運営等。

2)岐阜県高山市

・海外において高い評価。

-平成 19年「MICHELIN Voyager Pratique Japon」で三つ星。

-平成 21年「ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン 2009」で三つ星。

・観光客は 400万人。外国人は 28万人。外国人は 10年前の約 5倍。

・平成 15年にできた「飛騨高山国際誘客協議会」が外国人観光客の誘致活動の中心組織。

・「外国人観光客が安心して一人歩きできるまちづくり」。誘導案内、散策マップの配布等。

・当初から民主導で実施。行政はその支援に徹している。

(参考)地域全体のマネジメントに関する視点

上記2事例の他、長門市の事例も、地元における観光地域づくりにおいて、中核となる組

織やリーダーがリーダーシップを発揮して、成果を上げているものである。

地域全体のマネジメントに期待されるのは、以下のような役割である。

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○地域全体のマネジメントに期待される主な役割

1)当該観光地域全体のコンセプトの設定

2)観光振興計画の策定

3)地域住民とデベロッパーとの融合や調整役

4)景観の統一(建物の高さ、色遣い、名称等)

5)地域全体としてのプロモーション活動 等々

○地域全体のマネジメントの役割の重要性は、今回行った有識者へのインタビューでも史

的する声が多く聞かれた。

東洋大学 古屋教授:

「地元の人が継続的に取り組めることが重要」「地元が主体になって成功」

「自治体がリーダー役を担った事例は少ない。民間事業者がいかに積極的に取り

組めるかがポイント」

例)別府温泉、長崎、熊野

関東経済産業局 北原参事官:

「うまくいっている観光地域(香取市佐原)では、商工会議所の顧問がリーダー

役を務めている」

日本大学 近藤名誉教授:

「うまくいっているカリスマ的なリーダーが存在する観光地域。全てを任せるこ

とが成功要因」

例)JR九州の豪華列車

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(3)インセンティブの事例

観光地域づくりを促進するために外国で行われているインセンティブについて、具体的な施策

とその効果について、政府観光局や観光を管轄する省庁に確認した。

(ここでは千葉県の観光地域づくりに活用できそうな事例を例示)

①グアム

海洋リゾート地として有名なグアムだが、近年はより高級なホテルを整備する施策に取り組ん

でいる。長期的な観光業に関する計画である「ツーリズム 2020」を策定し、計画的・体系的に観

光開発に取り組んでいる。

インセンティブ

の例

その効果

(1)5つ星ホテ

ルを増やすこ

とを目指し、

リゾートホテ

ルを改修し、

レベルアップ

を図る。優遇

措置を通じて

再投資を促進

1)ホテルレート(GUAM VISITORS BUREAU 2016 ANNUAL REPORTより)

→リノベーション後の客室をメインに、レートが着実に上昇

2)5つ星ホテルの開業

・「デュシタニ グアム リゾート」(2015年)の他、もう 1軒建設中

(2)旅行者誘致

資金の設立

●旅行者誘致資金(Tourism Attraction Fund)の概要(The Guam

Daily Postの記事より)

財源:税率 11%のホテル税。41.5百万ドル

運用:22.4百万ドルがグアム政府観光局の運営や活動資金に。

うち、約 14.5百万ドルはマーケティング活動に使われる。

残りは、ランドマーク、公園、歴史的な場所の修繕等に使われる。

[その他のインセンティブ]

○タモン地区におけるビジネス改善特区

~契約条項、条件、規制、強制的な達成基準を設けている。

(グアム政府観光局、Guam Hotel & Restaurant Association への聞き取りによる)

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②マレーシア

マレーシアは海洋リゾートやクアラルンプールを中心に多くの観光地域を抱えている。「TOURISM AND TRAVEL RELATED SERVICES」を策定し、観

光開発に取り組んでいる。マレーシア観光文化省に対して確認を行った。

インセンティブの例 その効果

(1)ホテルに対するインセンティブ

ⅰ.資本規制緩和政策:4~5星クラスは外

資 100を認める。3星は 70%までの資本

構成。

・2017年 12月時点のクラス別ホテル軒数

5つ星 4つ星 3つ星

112軒 169軒 297軒

・本施策導入の結果、ホテル軒数は増加している。

ⅱ.新規投資のインセンティブ:

・5年間の所得税 70%※1控除

・5年間の資本支出に対する 60%※1の

税額控除、各年の法定売上 70%と相

殺が可能

(※1:サバ州/サラワク州の 4~5 星ホ

テルは 100%)

・各年に承認されたホテルと観光プロジェクトの件数は以下の通り。

年 件数 増加可能

雇用数(人)

国内からの

投資(百万RM)

外国からの

投資(百万RM)

投資合計

(百万RM)

2010 41 1,874 694.5 55.8 750.4

2011 57 2,090 1,280.1 68.1 1,348.1

2012 58 4,983 2,618.9 320.3 2,939.2

2013 109 6,304 4,240.5 817.0 5,057.5

2014 112 8,607 5,321.7 340.9 5,662.6

2015 116 7,169 4,882.8 480.0 5,362.8

2016 97 6,217 3,363.0 1,317.4 4,680.4

2017 70 5,107 8,933.7 355.0 9,288.7

RM:マレーシアリンギット。1RM=27.98円(2018年2月5日現在)。

ⅲ.再投資のインセンティブ

・5年間の所得税 70%※2控除

・5年間の資本支出に対する 60%※2の

税額控除、各年の法定売上 70%(サバ

州/サラワク州の 4~5 星ホテルは

100%)と相殺が可能

(※2:いずれも 4~5星ホテルは 100%)

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インセンティブの例 その効果

(2)ツアーオペレーター、旅行代理店に対す

るインセンティブ:ツアー参加者が一定人

数以上の場合、そのツアーにかかる所得税

を免除

・旅行代理店からの申請件数は以下の通り。

2015 2016 2017

国内 インバウンド 国内 インバウンド 国内 インバウンド

申請 18件 130件 31件 113件 16件 108件

[その他のインセンティブ]

○ホテル従業員の特別移民手続き:外国籍の駐在者を雇用する場合の手続きの簡素化

○観光運輸関連事業(バス、ハイヤー、レンタカー)の税制インセンティブ(国産車を購入した場合の消費税免除)

○観光インフラファンド:要件を満たす投資プロジェクトに対する貸出(500 万~1億リンギット。4~6%の金利、歳代 20年間)

○高級ヨット産業に関するインセンティブ:5年間所得税免除

○ヘルスケアトラベルのプロモーションに関するインセンティブ:新設、拡張等について 5年間の資本支出の 100%課税控除 等

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(4)医療ツーリズムに関する近況

世界的に検査・治療・療養等を目的に外国を訪れ、滞在しながら周辺地域の観光を楽しむ医

療ツーリズムの需要が高まりを見せている。医療ツーリズムに関する状況を概観し、国内で取

り組む場合の視点を整理した。

①概要

・2010年 6月閣議決定された「新成長戦略」の「七つの戦略分野」の1つに「健康」が取り

上げられ、医療観光がその方策の1つとして位置づけ。

・日本の市場は、2020 年に年間 43 万人。市場規模 5,500 億円、経済波及効果 2,800 億円と

試算。(『進む医療の国際化~医療ツーリズムの動向~』今月のトピック(日本政策投資銀

行 2010年 5 月 26日)

②世界での動向(『進む医療の国際化(2)~医療ツーリズムの動向~』今月のトピック(日本政

策投資銀行 2012年 3月 22日)

・JCI*の認証は、2011年 12月末で 50カ国 454機関。日本は 3機関。

*JCI:Joint Commission International。国際的な病院品質の認証機関。

・日本で推進するには、医療通訳者の育成、医療保険など訴訟への対応、勤務医不足との整

合性の確保など課題。積極的かつ戦略的なマーケティングも必要。

・タイやシンガポールなどアジア主要国は外貨獲得などを目的に 2000 年代前半から国策と

して取り組み。公告などの規制緩和、税控除、宿泊施設の容積率の緩和など進めている。

医療機関も、買収など動きを活発化させている。

・アジアの主要受入機関は、1)マーケティング専門チームの設置、2)外国人患者対応専門セ

クションの設置、3)国外に複数拠点開設など行っている。積極的に国外でのマーケティン

グを行っている。

日本政策投資銀行による試算

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③医療ツーリズムに関する国内影響への考え方(国際医療福祉大学大学院 准教授 岡村世里奈氏

の資料より)

○「日本人向けの医療資源をとられてしまう」という懸念について

⇒上記のように市場は幅広いので、どの分野に取り組むかによって影響は異なる。

○ウェルネスツーリズム

・外国人に対して売り物になりそうな領域は、ウェルネスツーリズム。2005年頃から拡大して

きた。中産階級が増えるにつれて食生活も変化し、生活習慣病が懸念されるようになってき

た。こうした予備軍に対して訴求するもので、トルコ、ハンガリー、マレーシア、フィリピ

ンなど多くの国で手がけている。

・日本は、健康に関する知識に関しては、アジア諸国に対して相当進んでいる。通常の観光と

うまく組み合わせられると面白い。

全身(holistic)

レクチャーとレクリエーション

メディカルウェルネス

医療(健康上の)

医療(外科的)

スピリチュアル スピリチュアル 健康上のレクリエーション

栄養とデトックスのプログラム

癒しと療養

手術

歯科治療

美容整形オキュペーショナルウェルネス

リハビリ(ライフスタイル「関連)

リハビリ(病気関連)

スポーツとフィットネスヨガと瞑想

パンパリング(Pampering)ニューエイジ

タラソテラピー

医療度

ウェルネスツーリズム メディカルトラベル

低 高

・そもそもこの領域には明確な定義がなく、実際に提供され

るサービスには大きな幅がある。

・最近は医療行為を対象にするのではなく、健康増進を目的

にしたツーリズムが注目されている。(図の左側の部分)

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7.今後の取り組み(ロードマップ)

(1)観光地域づくりのロードマップ

~来年度以降の活動内容は大きく以下の 2点である。

①千葉県内に対する勉強会の開催

→今回の検討結果を共有し、各地域における観光地域づくりに対する気運を醸成するととも

に、各地域における推進体制を整備することに役立ててもらう。

同時に、観光地域づくりに対して必要と思われる、国や行政で取り組むべきインセンティ

ブに関する意見・要望を収集する。

②観光地域づくりに必要なインセンティブの整理と関係省庁への働きかけ

→インセンティブの実現に向けては、関係省庁へ説明の上、理解を得て、必要な法令の改正

や予算措置を行ってもらう必要がある。今回の検討結果から得られた視点や、今後各自治

体から出される要望をとりまとめて、関係省庁に働きかけを行い、インセンティブの実現

へ向けて働きかけを行っていく必要がある。

千葉県

各市町村

関係省庁

今回の検討結果の公表

検討結果に関する勉強会内容:観光地域づくりイメージの共有

インセンティブ、課題の共有出席:市町村の観光担当部課長

市町村の商工会議所その他関連事業者

※必要に応じて複数箇所・回の開催勉強会の開催依頼

検討着手の判断

観光地域づくりの検討

各観光地域における(再)開発

国・行政として対応が望まれるインセンティブの整理

関係省庁への働きかけ

インセンティブの実現・関連法令の改正・予算措置 等

平成30年度 平成31年度以降

インセンティブの活用要望・意見の反映

観光地域づくりに向けた気運の醸成・推進体制の整備

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(2)各観光地域の段階的な開発イメージ

~ここでは、個々の観光地域づくりの進め方について検討する。

①海外の観光地域づくりの事例

過去の外国における観光地域づくりの流れを見ると、富裕層向けの高級ホテルの整備がきっ

かけとなって観光地域として発展していく、というのが典型的である。既に整理した千葉県内

の観光地域づくりのテーマ案についても、多くの案で高級ホテルの整備を中心に据えているが、

一般的な観光地域の発展段階に照らすと整合的であると言える。

1)ビーチ・リゾートの展開モデル (「ビーチ・リゾートの時間・空間変容と観光地域政策の一考察-Russel

Smith:パタヤビーチの事例研究を中心に-」中﨑茂 桜美林大学産業研究所年報 2010より)

リゾート展開モデル

フェーズ モデル

フェーズA

開発以前の基本型

ツーリズムは出現していない。自然に発生した集落があり、他

の地域とを結ぶ道路がある。 フェーズB

探検的なツーリズム

ツーリストが探検的な意図でやってくる。集落は宿泊サービ

スを提供。マイナス面のインパクトはまだない。 フェーズC

元祖ホテルの立地段階

アクセスが改善され、多くの入り込み。高級な観光ホテルが出

現。これは大規模な観光旅行拠点を形成する先駆け。利用者は

ほとんどが高給取り。 フェーズ D

街路型開発パターン

最初のホテルを核に、街路型の開発パターンが創出。他の観光

施設(飲食、みやげ、レジャー等)も増設。 フェーズE

観光の中心地域の形成

地元住民は元の居住地から離れた場所に移転。観光ビジネス

の発展に伴い、多くの移住者が流入。雰囲気は徐々に劣化。 フェーズF

ビーチから離れた場所での

ホテル立地

開発余地が少なくなるにつれ、ホテルは内陸に立地。原風景は

消え去り、リゾート地域全体が観光旅行者のための空間にな

る。 フェーズG

第二の道路建設

新規のビジネスの展開を支えるためにビーチに並行して第二

の幹線道路が整備される。比較的グレードの低いホテルが分

散して立地。 フェーズH

商業地区

リゾート地域はさらに都市化。商業施設がかなりの土地利用

を占め、観光産業地区と商業地区とが明確に区分される。

⇒富裕層を対象にした高級ホテルの整備が、観光地域づくりのきっかけになる。

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2)ホノルルの観光開発 (「港まちホノルルの観光開発における史的経緯-富裕層向けリゾートから大衆観

光への転換-」内田真仁(関東学院大学大学院) 港湾経済研究 2015より)

ホノルルの観光開発の経緯

時期 内容

1900年代 1901年 モアナ・ホテル建設

1903年 ハワイ宣伝委員会設立

ハワイ王国消滅により、アメリカ本土に「ハワイブーム」を巻き起こし、も

とはタロイモの畑や養魚場だった湿地帯ワイキキの海岸周辺の土地が白人

の手に移り、観光ビーチとしての開発始まる。

1920年代 欧米の富豪による船旅が主流

ジョン・ロジャース空港の開港、ロイヤル・ハワイアン・ホテルの開業など、

ハワイ観光の幕開けの動き

1930年代 1935 年 太平洋横断路線による空の旅始まり。アメリカ本土からハワイへの

旅が一気に急成長。

戦争により多くの兵士が駐留。富裕層の高級リゾートであるハワイで過ごす

ことが士気を高めることに。同時に、一般大衆向けに楽園ハワイの強力な観

光宣伝に。

1950年代 1959年 ハワイが立州化

1961年 映画「ブルーハワイ」が公開。世界各地に「夢の島ハワイ」のイメー

ジを印象づける。

ハワイ旅行が一層大衆化。

1960年代~ 1967年 ハワイ州への総観光客数 100万人突破

1970年代 300万人

1980年代 600万人

2013年 800万人超

⇒富裕層を対象にした高級ホテルの整備がきっかけで、その後、兵士の需要を満たす

ために急拡大し、その後大衆化へ。

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②千葉県内の観光地域づくりのイメージ

・①で見たように、観光地域づくりにおいては核となる施設(とりわけ高級ホテル)の整備が重

要な位置を占める。観光地域としてのイメージを植え付け(又は刷新し)、大きな観光需要を起

こすことがその後の観光地域としての発展にとって重要。

・その後、十分に見込めるようになった需要に対応し、さらに高めていくために追加で新たな施

設整備を進めることが重要。こうして発展が軌道に乗ることにより、追随する投資が見込め、

それが地域経済にとっても好影響を与えることにつながっていく。

千葉県内の観光地域づくりの発展段階イメージ

イメージづけ、需要の喚起 需要への対応、規模の拡大 観光地域としての好循環の確立

核となる施設の(再)整備・高級ホテル・集客施設・病院 等インフラの整備・ライフライン・交通網エリアの魅力(文化・歴史)の発掘

ポイント○まず需要を起こす。成功することで消費者と投資家の関心を引く。

○必要なインセンティブを与えて開発を後押しする。

施設の追加整備・高級ホテル・飲食、物販施設 等観光地域としての基盤整備・プロモーションの推進・関連産業の育成・人材の育成 等

ポイント○観光地域としての拡大へ向けて、二の矢、三の矢を放つ。

○地域で観光を支える産業構造整える。

観光地域としての基盤整備・観光施設の適時・適切な追加・更新投資・景観、環境の整備・プロモーションの推進・関連産業の育成・人材の育成 等

ポイント○地域全体の魅力を高め(維持し)、追加・更新投資を促す。

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新たな観光地域づくりに係る調査検討事業委託 報告書【本編】

発行日 平成 30年 3月 23日

調査主体 千葉県商工労働部観光企画課

調査受託 日本経営システム株式会社(調査受託)