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浮体の運動応答と内力応答 Realization of Integrated Ocean Development and Utilization systems

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浮体の運動応答と内力応答

Realization of Integrated Ocean Development and Utilization systems

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剛に結合された2浮体の連結力

波の進行方向に並んだ2浮体連結モデル

• 波が作用して運動する浮体の構造応答について単純モデルで説明する (波の進行方向に距離をおく同じ大きさ・形状の2浮体が連結されている。水平方向挙動のみを考える。)

規則波 浮体① 浮体②連結部材

2質点・ばねモデル

見かけ質量M M

ばね係数K

外力 𝐹0 cos𝜔𝑡 𝐹0 cos 𝜔𝑡 + 𝛿

• δは波による外力の位相差

• 浮体①の変位、速度、加速度をX1、X1、X1とする

• 浮体②の変位、速度、加速度をX2、X2、X2とする

..

..

.

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浮体①に作用する力の平衡

見かけ質量M M

ばね係数K

外力 𝐹0 cos𝜔𝑡 𝐹0 cos 𝜔𝑡 + 𝛿

浮体① 浮体②

−𝑀 𝑋1 − 𝐾 𝑋1 − 𝑋2 + 𝐹0 cos𝜔𝑡 = 0

浮体②に作用する力の平衡

−𝑀 𝑋2 − 𝐾 𝑋2 − 𝑋1 + 𝐹0 cos 𝜔𝑡 + 𝛿 = 0

連結力

𝐹𝑐 = 𝐾 𝑋2 − 𝑋1

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周波数ωで定常運動している時の変位と加速度の関係

見かけ質量M M

ばね係数K

外力 𝐹0 cos𝜔𝑡 𝐹0 cos 𝜔𝑡 + 𝛿

浮体① 浮体②

上式を使うと、変位については次の連立方程式で求まる

𝑋1 = −𝜔2𝑋1 𝑋2 = −𝜔2𝑋2

𝐾 − 𝜔2𝑀 𝑋1 − 𝐾𝑋2 = 𝐹0 cos𝜔𝑡

−𝐾𝑋1 + 𝐾 −𝜔2𝑀 𝑋2 = 𝐹0 cos 𝜔𝑡 + 𝛿

𝑋1 =𝐹0

−𝜔2𝑀 2𝐾 − 𝜔2𝑀𝐾 1 + cos 𝛿 − 𝜔2𝑀 cos𝜔𝑡 − 𝐾 sin 𝛿 sin𝜔𝑡

𝑋2 =𝐹0

−𝜔2𝑀 2𝐾 − 𝜔2𝑀𝐾 1 + cos 𝛿 − 𝜔2𝑀cos 𝛿 cos𝜔𝑡 − 𝑘 − 𝜔2𝑀 sin 𝛿 sin𝜔𝑡

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連結力は X1とX2を代入して求まる

𝐹𝑐 =−𝐾𝐹0

2𝐾 − 𝜔2𝑀1 − cos 𝛿 cos𝜔𝑡 + sin 𝛿 sin𝜔𝑡

Q.何故、固有周波数は 2𝐾 𝑀 になるのか?

A.Mひとつに対してバネの長さの半分(剛性が2K)が効く振動の固有周波数と等価であるから。

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結合部材が十分に剛な場合

• 𝐾 ≫ 𝜔2𝑀 として応答解を簡素化

𝑋1 ≅ 𝑋2 ≅𝐹0

−2𝜔2𝑀1 + cos 𝛿 cos𝜔𝑡 − sin 𝛿 sin𝜔𝑡

=𝐹0𝜔2𝑀

cos𝛿

2cos 𝜔𝑡 + 휀1

휀1 は新たな位相差(数式省略)

X1とX2は同振幅・同位相(剛体)

𝐹𝑐 ≅ −𝐹02

1 − cos 𝛿 cos𝜔𝑡 + sin 𝛿 sin𝜔𝑡

= 𝐹0 sin𝛿

2cos 𝜔𝑡 + 휀2

휀2 は新たな位相差(数式省略)

注目点;変位、結合力の振幅に cos 𝛿 2 、sin 𝛿 2 が入っている

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見かけ質量M M

ばね係数K

外力 𝐹0 cos𝜔𝑡 𝐹0 cos 𝜔𝑡 + 𝛿

浮体① 浮体②

• δは、浮体①と浮体②の外力の位相差として導入したもの• 浮体間の距離と波長の関係で決まる

δ = 2πL/λ (L;浮体間距離、λ:波長)

δ 0 π 2π 3π 4π

λ/L ∞ 2 1 2/3 1/2

変位振幅

𝐹0𝜔2𝑀

0𝐹0𝜔2𝑀

0𝐹0𝜔2𝑀

連結力振幅

0 𝐹0 0 𝐹0 0

λ/L=2 λ/L=1

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セミサブの波浪応答

Sway 極小

Heave 極小

Roll 極大

水平ブレース軸力 極大

Sway 極大

Heave 極大

Roll 極小

水平ブレース軸力 極小

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波進行方向に長い浮体の波浪応答

上下方向荷重と波長の関係

Pitch 極大Heave 極小曲げモーメント極小

Pitch 極小Heave 極大曲げモーメント極大

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波進行方向に長い浮体の波浪応答

水平方向荷重と波長の関係

Surge 極小

Surge 極大

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海洋構造物の構造解析

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海洋構造物の構造解析

一般的な強度検討フロー

• 局部強度検討• 初期部材寸法設定

• 静水中全体構造解析

• 波浪中構造応答解析稼働状態サバイバル状態移動状態一部損傷状態

• 強度評価降伏応力座屈強度疲労強度

水圧・搭載機器重量・クレーン荷重など

構造解析モデル・骨組み(梁・トラス要素)モデル・平面格子(板要素)モデル

局部強度評価法・ズーミング(詳細三次元)解析

ソリッド要素など・応力集中係数、安全係数など

動的構造解析手法・二段階解析法・弾性構造応答解析法(モリソン式)・流力弾性応答解析法(ポテンシャル理論)

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①二段階解析法

②弾性構造応答解析法

③流力弾性応答解析法

動的構造解析手法

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①二段階解析法

• ステップ1:浮体を剛体と仮定して運動応答解析

• ステップ2:慣性力を分布荷重に置き換えて準静的構造解析

動的構造解析手法

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②弾性構造応答解析法

• 浮体を要素分割し、各要素の接合点(節点)の変位を変数とする。

• 節点の速度・加速度を用いて各要素に作用する局所流体力を算定(モリソン式)。重量・浮力・慣性力も各要素で評価。接合された要素間の構造内力を部材固定座標系の節点変位から算定。

• 要素数×6自由度変位の多次元運動方程式を解き、運動と変形と内力を同時に求める。

動的構造解析手法

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③流力弾性応答解析法

• メガフロートや超大型船舶のような弾性変形が無視できない大型構造物の流体力を、弾性変形モードまで含めたポテンシャル理論で解く。

動的構造解析手法

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海洋構造物の形式と構造解析

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ジャケット;構造様式

甲板構造

ブレース

主脚

複数層のデッキで構成される

ジャケットの本体は鋼管トラス構造大口径管の主脚と小口径管のブレースからなる

主脚内を通して海底下に打ち込まれる杭の頂部に甲板構造が取り付けられる

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ジャケット;構造解析

構造モデル• 三次元骨組み構造

杭の抵抗

• 横抵抗;地盤の非弾性的性質、進行性破壊現象、繰り返し載荷の影響などを考慮したP-y曲線

• 軸方向抵抗;土と杭の摩擦力をQ-u曲線で与える

構造解析• 静的解析• 波浪中解析• 耐震解析• 施工時解析

応力評価• 米国石油協会(API)、ノルウェー船級協会(DNV)、

米国溶接学会(AWS)などでルールが整備されている

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ジャッキアップ;構造様式

甲板構造

着底部

レグ

水密構造の箱型構造物

円筒型(浅水域向け)またはトラス型3~4脚式が一般的

• スパッド型:砂質、岩盤• フーティング型:砂質粘土• マット型:砂質粘土、軟弱地盤

ラック&ピニオン

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ジャッキアップ;構造解析

構造モデル• 三次元骨組み構造• レグ:1本の梁• 甲板:縦隔壁、横隔壁など主要部材を梁でモデル化

静的構造解析• 荷重:重量、浮力、風圧力、潮流力、海底支持力• 弾性骨組みFEM解析• 海底地盤の支持力解析• パンチスルー時の強度解析

動的構造解析• 稼働時

荷重:波浪外力、地震荷重解析法:準静的解析

• 曳航時荷重:揺れによる慣性力・流体力、風による渦加振力解析法:二段階解析法

軟い地層

硬い地層

応力評価• 降伏応力、座屈強度、疲労強度• 稼働時・曳航時ともにレグと甲板の結合部が厳しい

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半潜水式海洋構造物(セミサブ);構造様式

甲板構造

ロワーハル

コラム

ブレース

暴露甲板、中間デッキ、メインデッキ、縦隔壁、横隔壁などで構成• デッキガーダ式• 箱型構造式

外板+防撓材+トランスリング

円断面や四辺形断面外板+垂直防撓材+水平リング桁

防撓材ある・なしコラムとの結合部に各種補強

近年は• 大水深化のためのコラムの大径化・少数化• 甲板構造の水密区画化(沈没防止)• コラム・甲板構造の強化によるブレース省略の傾向

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半潜水式海洋構造物(セミサブ);構造解析

構造モデル• 三次元骨組み構造(旧世代)• 板要素構造(新世代)

静的構造解析• 荷重:重量、浮力、風圧力、潮流力、係留力• 弾性骨組みFEM解析

動的構造解析• 荷重:波浪外力、揺れによる慣性力・流体力• 解析法:二段階解析法

応力評価• 降伏応力、座屈強度、疲労強度

• ブレースとコラムの結合部の疲労強度が重要(ブレースの省略化傾向の理由)

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箱型浮体や船型;構造様式・構造解析

掘削船

ムーンプール

デリックFPSO

タレット

• 一般的な船の構造と類似

重量搭載機器配置に対する局所強度

縦強度の準静的解析

板要素解析

ズーミング解析

• ムーンプールやタレット周りの構造は強化対象