農作物の気象リスクに素早く対応できる 農業モデル …...1...

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1 農作物の気象リスクに素早く対応できる 農業モデル普及システム 岩手県立大学 ソフトウェア情報学部 講師 南野 謙一 平成3082

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農作物の気象リスクに素早く対応できる農業モデル普及システム

岩手県立大学 ソフトウェア情報学部講師 南野 謙一

平成30年8月2日

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目 次

• はじめに

• 従来技術とその問題点

• 新技術の特徴

• 従来技術との比較

• 想定される用途

• 実用化に向けた課題

• 企業への期待

• 本技術に関する知的財産権

• お問い合わせ先

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はじめに

異常気象による農作物の収量や品質への影響

2017年

• 日本太平洋側での日照不足,低温

• 岩手,宮城で水稲の収量が減少

2010年

• 全国各地で異常高温

• 水稲の1等米比率の低下

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異常気象リスクと栽培管理支援

農業試験研究機関による農業支援技術

はじめに

農業モデル

生育予測

冷害・高温障害予測

病虫害発生予測

収穫適期予測

その他

都道府県によって

品種・栽培方法等によりモデル、警戒基準に差異がある

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農業モデルの普及の現状

• 山田錦最適作期決定支援システム、山田錦高温障害警戒システム(兵庫県立農林水産技術総合センター) など

アプリケーションソフト

• Google Mapによる気象予測データを利用した農作業警戒情報(東北農業研究センター、岩手県立大学)

• 栽培管理支援システム MAgIS(気象-農業情報システム開発コンソーシアム) など

Webサービス

• 農業モデル用フレームワーク JAMF(農研機構) など

開発ツール

はじめに

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従来技術とその問題点

• 他の地域で利用するには気象データの追加やプログラムの修正等が必要である。

アプリケーションソフト

• 地域は限定されないものもあるが、農業モデルの追加には開発が必要である。

Webサービス

• システム開発の知識・技能が必要であり、利用者は限定される。

開発ツール

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新技術の特徴

気象データに基づいて農業モデルの計算、リスク評価、警戒情報の通知を可能にする農業モデル普及システムである。

システム開発をせずに、モデル式、リスク評価ルール、警戒情報通知ルールを登録するだけである。

登録済みのものを再利用、カスタマイズすることもできる。

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農業モデル

リスク評価ルール

警戒情報生成ルール

モデル式計算

リスク評価

メッシュ化

ユーザ定義DB農業気象メッシュDB

気象メッシュデータ

農業モデル計算結果

リスク評価データ 警戒情報生成可視化

警戒情報

メッシュ・グラフ

気象観測装置

観測データ農業モデル計算結果

外部サーバ

登録

気象メッシュデータ

インポート

インポート

参照

システム構成新技術の特徴

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種類 項目名 設定内容

識別子 農業モデルID ID自動割当

農業モデル名 ユーザ定義文字列

作成日 年月日時間(自動設定)

作成者 ユーザID(自動設定)

説明 概要・技術資料 ユーザ定義文字列

使用法・用途・制限事項 ユーザ定義文字列

計算データ 気象要素 気温,日射量等(複数選択可能)

他の農業モデルの計算結果 登録済みの農業モデルID

(複数選択可能)

モデル式 数式 定数・変数(上記の計算データを含む),演算子により構成される数式

初期値 定数(上記の計算データを含む)

出力値 データ形式

実行条件 開始日 開始日の条件

終了日 終了日の条件

実行時間 毎日の実行時間の条件

農業モデル設定項目新技術の特徴

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種類 項目名 設定内容

識別子 リスク評価ルールID ID自動割当

リスク評価ルール名 ユーザ定義文字列

作成日 年月日時間(自動設定)

作成者 ユーザID(自動設定)

説明 概要・技術資料 ユーザ定義文字列

使用法・用途・制限事項 ユーザ定義文字列

評価データ 農業モデルの計算結果 登録済みの農業モデルID

(複数選択可能)

リスク評価 リスクレベル リスクレベルの数とラベル

リスク基準 リスクレベルに振り分ける基準

実行条件 開始日 開始日の条件

終了日 終了日の条件

実行時間 毎日の実行時間の条件

表示 メッシュ 凡例の表示,色分け

グラフ タイトル,データ軸の範囲

リスク評価ルール設定項目

新技術の特徴

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種類 項目名 設定内容

識別子 警戒情報生成ルールID ID自動割当

警戒情報生成ルール名 ユーザ定義文字列

作成日 年月日時間(自動設定)

作成者 ユーザID(自動設定)

説明 概要・技術資料 ユーザ定義文字列

使用法・用途・制限事項 ユーザ定義文字列

評価データ リスク評価ルールの適用結果 登録済みのリスク評価ルールID

(複数選択可能)

警戒情報生成 警戒レベル 警戒レベルの数とラベル

警戒基準 警戒レベルに振り分ける基準

警戒・対策情報 警戒レベル毎の警戒・対策情報

実行条件 開始日 開始日の条件

終了日 終了日の条件

実行時間 毎日の実行時間の条件

通知 書式 警戒情報の整形方法

媒体 メール等の媒体

警戒情報生成ルール設定項目

新技術の特徴

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リスク評価ルール1

農業モデル1

農業モデル5

警戒情報生成

ルール1

リスク評価ルール4

農業モデル4

警戒情報生成

ルール4

リスク評価ルール6

農業モデル6

リスク評価ルール7

農業モデル7

警戒情報生成

ルール6

基本形

単体の農業モデルによるリスク評価をメッシュ・グラフで可視化する。警戒情報を生成する(任意) 。

複数の農業モデルの結果を統合したリスク評価を行い、メッシュ・グラフで可視化する.警戒情報も生成する(任意) 。

複数のリスク評価結果を統合し,警戒情報を生成する(リスク評価ルール6,7による

メッシュ・グラフの可視化は独立) 。

農業モデル3

リスク評価ルール2

農業モデル2

警戒情報生成

ルール2

他の農業モデルの計算結果をモデル式に取り込み,計算する.その結果に対してリスク評価を行い、メッシュ・グラフで可視化する.警戒情報も生成する(任意) 。

リスク評価ルール3

警戒情報生成

ルール3

リスク評価ルール5

警戒情報生成

ルール5

警戒情報生成

ルール7

複合的農業モデル 複合的リスク評価 複合的警戒情報生成

農業モデルの再利用、カスタマイズ新技術の特徴

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種類 項目名 設定値

識別子 農業モデルID m1234

農業モデル名 日平均飽差

作成日 2017/07/10 13:00:00

作成者 u2468

説明 概要・技術資料 空気1𝑚3当たりの水蒸気の空き容量(𝑔/𝑚3)

使用法・用途・制限事項 飽差による植物の水分状態の把握

計算データ 気象要素 日平均気温𝑡,日平均相対湿度ℎ

他の農業モデルの計算結果 なし

モデル式 数式 (1323 ∙ exp((17.269∙ 𝑇𝑀𝑃_𝑚𝑒𝑎𝑛)/(237.3+ 𝑇𝑀𝑃_𝑚𝑒𝑎𝑛))/(273.16+ 𝑇𝑀𝑃_𝑚𝑒𝑎𝑛) ∙ (1 − 𝑅𝐻/100)

初期値 なし

出力値 浮動小数点数

実行条件 開始日 8月1日

終了日 9月30日

実行時間 8:00 am

農業モデル設定サンプル新技術の特徴

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種類 項目名 設定内容

識別子 リスク評価ルールID r1357

リスク評価ルール名 飽差による水稲胴割れリスク評価

作成日 2017/07/10 13:30:00

作成者 u2468

説明 概要・技術資料 飽差(予測値を含む)から水稲胴割れのリスクを評価

使用法・用途・制限事項 飽差値と危険水準を超える日,地域を把握

評価データ 農業モデルの計算結果 m1234

リスク評価 リスクレベル 1:危険,0:なし

リスク基準 9.0 𝑔/𝑚3を超えると危険

実行条件 開始日 8月1日

終了日 9月30日

実行時間 m1234の計算後

表示 メッシュ 7段階で色分け(青から赤)

グラフ 縦軸:飽差値(𝑔/𝑚3)横軸:日付(実況10日,予測10日)

リスク評価ルール設定サンプル新技術の特徴

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種類 項目名 設定内容

識別子 警戒情報生成ルールID a1235

警戒情報生成ルール名 飽差による水稲胴割れ警戒情報

作成日 2017/07/10 14:00:00

作成者 u2468

説明 概要・技術資料 飽差(予測値を含む)から水稲胴割れの警戒情報を生成

使用法・用途・制限事項 飽差値が危険水準を超えた場合に警戒情報を伝達

評価データ リスク評価ルールの適用結果 r1357

警戒情報生成 警戒レベル 1:危険,0:なし

警戒基準 9.0 𝑔/𝑚3を超えると危険

警戒・対策情報 危険の場合には,早期収穫

実行条件 開始日 8月1日

終了日 9月30日

実行時間 r1357の計算後

通知 書式 日別に予測値,警戒・対策情報を整列

媒体 メール

警戒情報生成ルール設定サンプル

新技術の特徴

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プレビュー確認ができるモデル式の登録

気象要素(日平均気温、相対湿度など)の選択

管理画面(モデル式、リスク評価ルール、警戒情報通知ルールの登録)

モデル式の登録画面例新技術の特徴

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メッシュ・グラフによるリスク評価

登録圃場毎の警戒情報出力

リスク評価・警戒情報の画面例

新技術の特徴

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従来技術との比較

システム構築に必要な時間は、開発ツールを使用した場合でも数日かかるが、本技術の適用により数十分程度まで削減できる。

必要な農業モデルを容易に追加できることにより、気象リスクに素早く対応することができる。

用途が限定されない汎用的な気象データ利用基盤システムである。

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想定される用途

本技術の特徴を生かすためには、都道府県の農業普及事業で適用することで農産物の収量・品質への効果が大きいと考えられる。

上記以外に、農業ビジネス(生産、サービス業など)に参入する企業での活用も期待される。

また、農業分野以外でも気象データを用いたシミュレーションモデルを扱う分野に展開することも可能と思われる。

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実用化に向けた課題

現在、農業モデルを追加、運用が可能なところまで開発済み。しかし、農業モデルのライブラリや共有機能については未開発である。

今後、実証実験を行い、実用的な農業モデルを取得し、機能を実現していく。

実用化に向けて、システムの運用方法を検討していく必要もあり。

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企業への期待

本システムをクラウド環境で運用し、利用者にクラウドサービスとして提供することを希望。

農業ビジネスに参入する企業との共同研究を希望。

また、気象ビジネスへの展開を考えている企業には、本技術の導入が有効と思われる。

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本技術に関する知的財産権

• 発明の名称 :農業モデル普及システム、農業モデル普及方法及び農業モデル普及プログラム

• 出願番号 :特願2018-039318

• 出願人 :岩手県立大学

• 発明者 :南野謙一

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お問い合わせ先

岩手県立大学 研究・地域連携本部

研究・地域連携室産学公連携コーディネーター

上野山英克(うえのやまひでかつ)

E-mai:[email protected]

〒020-0611 岩手県滝沢市巣子152-89TEL 019-694-3330 FAX 019-694-3331