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[ 文献紹介 ] Trans-Atlantic Inter-Society Consensus-IIの CおよびDの大腿膝窩動脈病変を有する跛行患者における 血管内治療後とバイパス手術後の長期的転帰の比較 ReCANALISE- IC 相原 英明 先生 公益財団法人 筑波メディカルセンター病院 循環器内科 医長 Hideaki Aihara, et al., Comparison of Long-Term Outcome After Endovascular Therapy Versus Bypass Surgery in Claudication Patients With Trans-Atlantic Inter-Society Consensus-II C and D Femoropopliteal Disease. Circulation Journal. 2014; 78(2) : 457-64.

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  • [ 文 献 紹 介 ]

    Trans-Atlantic Inter-Society Consensus-IIのCおよびDの大腿膝窩動脈病変を有する跛行患者における血管内治療後とバイパス手術後の長期的転帰の比較

    ReCANALISE-

    ICwww.cordisjapan.jp上記サイトでは医療従事者を対象として様々な情報をご提供しています。

    相原 英明 先生公益財団法人 筑波メディカルセンター病院循環器内科 医長

    Hideaki Aihara, et al., Comparison of Long-Term Outcome After Endovascular Therapy Versus Bypass Surgery inClaudication Patients With Trans-Atlantic Inter-Society Consensus-II C and D Femoropopliteal Disease.Circulation Journal. 2014; 78(2): 457-64.

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     末梢動脈疾患(PAD)の管理方法として最善のものは依然として未解決である。間欠性跛行患者に対する主な治療は、監視下運動療法と最適な内科的管理である1-3。これらの治療が無効な場合、血管内療法(EVT)やバイパス手術のような血行再建術が必要な場合がある。バイパス手術の転帰は概ねバルーン血管形成術よりも良好である4。Trans-Atlantic Inter-Society Consensus(TASC)-Ⅱのガイドラインによると、間欠性跛行患者におけるバイパス手術の長期的開存はEVTより優れている。特にTASC-ⅡのCおよびDの動脈病変を有する跛行患者では、静脈グラフトを用いたバイパス手術が依然として鼠径下PADに対する最善の治療である5。最近の試験でも、跛行の一次治療のためのバイパス手術は、広範囲にわたる動脈病変が治療された場合であっても、結果的に高い非再狭窄率が得られることが見出されている6, 7。 その一方で、EVTはバイパスのための適切な静脈がなく、手術リスクが高い患者では、血行再建術において重要な役割を果たす可能性がある。EVTが進歩し、転帰は改善されている

    ものの、跛行患者においてEVTとバイパス手術を比較した報告はほとんどない8-10。さらに、間欠性跛行患者においてEVTの転帰を検討した報告はあるものの、TASC-ⅡのCおよびDの大腿膝窩動脈病変を有する跛行患者において、EVTとバイパス手術で転帰を比較した試験もほとんどない。本試験では日本の多施設共同レジストリのデータを使用し、跛行患者におけるTASC-ⅡのCおよびDの大腿膝窩動脈病変に対するEVTとバイパス手術の転帰の解析を試みた。

    データ源

     患者を順次登録している日本の大規模多施設共同レジストリであるRetrospective Comparative ANALysis of the Revascularization method for Infra-inguinal artery disease, Surgical reconstruction and Endovascular

    Trans-Atlantic Inter-Society Consensus-ⅡのCおよびDの大腿膝窩動脈病変を有する跛行患者における血管内治療後とバイパス手術後の長期的転帰の比較

    バイパス手術、血管内療法、間欠性跛行、長期的転帰キーワード

    [ 背 景 ]

    血管内治療(EVT)は進歩しているものの、大腿膝窩動脈病変を有する跛行患者においてEVTとバイパス手術を比較した報告はほとんどない。今回の試験では日本の多施設共同レジストリのデータを使用し、Trans-Atlantic Inter-Society Consensus(TASC)-ⅡのCおよびDの大腿膝窩動脈病変を有する跛行患者に対するEVTとバイパス手術の転帰の解析を試みた。

    [ 方 法と結 果 ]

    血行再建術を受けた患者1,156例中696例が間欠性跛行の治療を受けた。大腿膝窩動脈病変を有する患者計263例がTASC-IIのCとDに分類された。EVT群とバイパス手術群の一次および二次開存率を解析した。全体的な合併症発生率はバイパス手術群14.4%、EVT群3.5%であった(P<0.01)。1年と5年の一次開存率はバイパス手術群で82.1%と69.4%、EVT群で67.8%と45.2%であった。バイパス手術群はEVT群より一次開存率が高かったが(P<0.01、Log-rank検定)、二次開存率は2群間で有意差はなかった。

    [ 結 論 ]

    バイパス手術はTASC-ⅡのCおよびDの大腿膝窩動脈病変を有する跛行患者に有用であるが、全身状態が不良な患者においては、合併症発生率が低く二次開存率が良好なEVTも良好な選択肢である。

    方 法

    公益財団法人 筑波メディカルセンター病院 循環器内科 医長 相原 英明 先生

  • 2

    Treatment(ReCANALISE)レジストリの登録患者のデータを集積した。患者のプライバシーを保護するため、解析前に追跡可能な個人識別子をすべてデータセットから除去した。 被 験 者

    本試験は多施設共同後向き解析である。2004年1月から2009年12月にかけて計1,308例が鼠径下疾患に対する血行再建術を受けた。このうち152例が除外され、その理由はEVTとバイパス手術の併用

    (85例)、急性下肢動脈閉塞(45例)、または試験への参加拒否(22例)であった。さらに460例が重症下肢虚血のため除外された11。TASC-ⅡのAとBの患者が除外された後、大腿膝窩のde novo病変に対する血行再建術を受けた263例(313肢 ; 男性69% ; 平均追跡期間30±25か月)が後向きに追跡され、安全性と有効性のエンドポイントに関して解析された。この263例をEVT群(177例、202肢)とバイパス手術群(86例、111肢)群に分けた(図1)。 独立した調査員により、人口統計、血管造影および手技上のデータが各病院の記録またはデータベースから、事前に規定された定義に従って収集された。追跡データは病院記録から、または患者、家族、紹介医師に連絡を取って受領した。患者全員から書面によるインフォームド・コンセントを入手し、本試験に際してのデータ収集は参加医療機関6ヵ所すべての倫理審査委員会により承認された。試験はヘルシンキ宣言に従って実施され、University Hospital Medical Information Network-Clinical Trial Registry(UMIN-CTR)で登録され、医学雑誌編集者国際委員会(International Committee of Medical Journal Editors)に受理されている(UMIN000007363)。

    定 義

     手技成功はEVT患者ではsuboptimal resultを伴わない30%未満の残存狭窄、およびバイパス手術患者ではドプラーによる評価でグラフト開存と最適なグラフトの血流が認められた場合とした。合併症には全身性塞栓症またはblue toe、緊急手術、輸血、予定外の血液透析、仮性動脈瘤、創感染、心筋梗塞、心不全、脳卒中および虚血性大腸炎を含めた。 一次開存は治療された血管が再狭窄や血行再建術を伴わずに開存の状態を維持している場合とした。二次開存は治療された血管が後に完全閉塞し、再血行再建術により再度開かれた場合とした。再狭窄はデュプレクス超音波法で最大収縮期血流速度が2.4超、血管造影またはコンピュータ断層撮影で50%を超える狭窄、または安静時足関節上腕血圧比の0.2の減少とした。高血圧は収縮期血圧が140mmHg以上お

    よび/または拡張期血圧が90mmHg以上または高血圧治療を継続中の場合とした。脂質異常症は低比重リポタンパクコレステロールが140mg/dL以上または脂質異常症の治療が継続中の場合とした。糖尿病はHbAlcが6.5%超、随時血糖値が200mg/dL超、または経口血糖降下薬もしくはインスリン注射による治療とした。脳血管疾患は脳卒中が少なくとも24時間持続し、神経学的欠損の発生が示唆される場合とした。冠動脈疾患は安定狭心症で、心筋梗塞の既往の有無を問わず、経皮的冠動脈インターベンションや冠動脈バイパスグラフト手術などの既往を含め、冠動脈疾患が記録されている場合とした。心不全は現在心不全の治療を受けている場合とした。左室機能不全は心エコーで駆出分画が40%未満の場合とした。 エンドポイント

     主要エンドポイントは一次開存と二次開存とした。副次的エンドポイントは全死亡、主要有害心血管イベント(MACE : 全死亡、心筋梗塞、および脳卒中)、主要有害下肢イベント

    (MALE : 下肢に対する再度の再介入または修復および大切断[足関節より上の切断と定義])および主要有害心血管・下肢イベント(MACLE : MALEとMACEの複合)からの回避とした。

    統 計 解 析

     連続変数を平均値±標準偏差、カテゴリ変数をパーセンテー

    バイパス手術、血管内療法、間欠性跛行、長期的転帰

    図1 �本試験のフローチャート

    除外152例 EVTとバイパス手術併用85例 急性下肢動脈閉塞45例 試験への参加拒否22例

    除外534肢 膝下病変25肢 膝下病変を合併108肢 TASC-ⅡでAまたはB

    鼠径下血管形成術施行1,308例ReCANALISE

    間欠性跛行696例(847肢)ReCANALISE-IC

    間欠性跛行263例(313肢)ReCANALISE-IC/PP/CD

    重症下肢虚血患者460例(549肢)ReCANALISE-CLI

    バイパス手術群(86例、111肢)

    EVT群(177例、202肢)

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    ジとして表した。連続変数の群間比較にはStudent's t検定を用い、カテゴリ変数の群間比較にはカイ2乗検定を用いた。多変量コックス比例ハザードモデルを使用して一次開存率の群間比較を行った。単変量解析で同定された因子(P<0.10)について、多変量コックス比例ハザードモデルにおいて追跡期間中の一次開存との関連について検証した。追跡の終了は有害事象が生じた日、もしくは1年間は3ヵ月ごと、それ以降は6ヵ月ごとの来院の直近の来院日のいずれかとした。Kaplan-Meier法とLog-rank検定を用いて血管開存率を比較した。P<0.05を統計的有意差を示していると見なした。統計解析はすべてWindows版JMPバージョン10(SAS Institute[米ノースカロライナ州ケアリー])で行った。

     263例中177例がTASC-ⅡのCまたはDの大腿膝窩動脈病変に対してEVTを受け、86例がバイパス手術を受けた。患者背景を表1に記載した。EVT群はバイパス手術群に比べて有意に高齢で、血液透析を要する腎不全、冠動脈疾患や心不全の既往、左室駆出分画低値が多かった。その一方、バイパス手術群の方が喫煙者が多く、これらの患者は全員Rutherford分類3であった。投薬に関しては、抗血小板薬を2剤併用していた患者はEVT群の方が多く、ワーファリンはバイパス手術群で高頻度に処方されていた。シロスタゾールとスタチンの使用については両群間で有意差はなかった。

    表1 患者背景 症例数(%)または平均値±SD 表2 病変および手技 症例数(%)または平均値±SDバイパス手術

    (n=111; 86例)EVT

    (n=202; 107例) P値

    TASC-ⅡCD

    19(17.1)92(82.9)

    103(51.0)99(49.0)

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     病変別に見ると、バイパス手術を受けた患者の方が病変が長く、慢性完全閉塞の症例数が多かったのに対し、重度の石灰化病変はEVT群の方が多かった。このため、TASC-ⅡのDの患者の割合はバイパス群の方が有意に高かった。バイパス手術の70%以上がポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を用いて施行され、EVT症例の70%以上で大腿膝窩動脈病変に対してステント留置が行われた。薬剤溶出ステントとバルーンは今回の試験期間中、日本では利用できなかった。バイパス手術の手術時間はEVTの2倍以上であった(表2)。 手技は全症例で成功した。合併症の発生率はバイパス手術群14.4%、EVT群3.5%で、EVT群で有意に低かった(P<0.01)。輸血と創感染の発生率はバイパス手術群の方が高かったが、全身性塞栓症の症例数はEVT群の方が多かった

    (表3)。再狭窄と標的血管血行再建術の発生率はバイパス手術群に比べてEVT群の方が有意に高かった。一方で、バイパス手術群では外科的血行再建術を含む再手術が必要となる割合が高かった(表4)。 Kaplan-Meier法による解析では、1年および5年の一次開存率はそれぞれバイパス手術群82.1%および69.4%、EVT群67.8%および45.2%であった。さらに、1年および5年の二次開存率はそれぞれバイパス手術群93.2%および79.5%、EVT群90.1%および85.1%であった。一次開存率はバイパス手術群の方がEVT群より高かったが(P=0.001、Log-rank検定)、二次開存率はEVT群とバイパス手術群間で有意差はなかった(P=0.48、Log-rank検定)(図2、3)。 大腿膝窩動脈病変を有する跛行患者における多変量コック

    ス回帰分析では、一次開存の調整後ハザード比(AHR)は女性および血液透析と有意に関連していた(それぞれAHR1.47 ; 95%信頼区間[CI]1.00-2.41 ; P=0.05 ; およびAHR 1.58 ; 95%CI 1.01-2.41 ; P=0.05、表5)。さらに、多変量コックス回帰分析を用いて各群の一次開存の予測因子も検討した結果、興味深いことに、EVT群では年齢(AHR 0.96 ; 95%CI 0.92-0.98 ; P=0.01)と対照血管径(AHR 0.72 ; 95%CI 0.56-0.93 ; P=0.01)が一次開存の独立した予測因子であった。一方で、バイパス手術群では、女性(AHR 2.59 ; 95%CI 1.15-5.71 ; P=0.02)が閉塞の独立した予測因子であった(表5)。

    表4 全アウトカム 症例数(%)または平均値±SDバイパス手術

    (n=111; 86例)EVT

    (n=202; 107例) P値

    全死亡 20(18.0) 29(14.4) 0.40

    主要有害心血管イベント(MACE;死亡、心筋虚血、心臓発作) 36(32.4) 39(19.3) 0.01

    主要有害下肢イベント(MALE;再インターベンションまたは再手術、下肢切断) 18(16.2) 69(34.2) 0.0005

    **

    主要有害心血管・下肢イベント(MACLE) 49(44.1) 92(45.5) 0.81

    再狭窄 28(25.2) 89(44.1) 0.001**

    再閉塞 17(15.3) 24(11.9) 0.39

    標的病変の再血行再建 18(16.2) 69(34.2) 0.0005**

    下肢切断 2(1.8) 0(0.0) 0.04*

    心筋梗塞 9(8.1) 6(3.0) 0.05

    心臓発作 16(14.4) 11(5.5) 0.01*

    再手術または外科的血行再建術移行 12(10.8) 13(6.4) 0.18

    ステントフラクチャ – 4(2.0) N/A

    * 0.01

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     PADに対する最も適切な治療戦略は依然として不明である。跛行に対しては監視下運動療法と最適な内科的管理が第一選択と考えられており、運動と内科的治療後も歩行能力とQOLに重大な制限がある患者は、明らかに血行再建術の適応となる。 これまでの前向き無作為化試験では、EVTとバイパス手術で類似した成功率が報告されている12,13。自家静脈グラフトを使用したバイパス手術の一次開存率は、EVTより有意に高かったのに対し、バイパス手術後には入院期間の延長と創感染が数例、報告されている14,15。膝上のバイパス手術において自家静脈を使用した場合は、合成材料に比べ一次開存の点で明らかなベネフィットがあった16。さらに、バイパス手術を受けた患者では、ステント留置を受けた患者以上に抗血小板薬の2剤併用を回避することが将来の出血を予防する点で有益である。 EVTは間欠性跛行の管理において、特に適切な静脈がない患者に対して、その役割を増している17,18。跛行患者におけるEVTの手術成功率と初期成績は概ね良好で、合併症発生率は低いと報告されている19。低侵襲のEVTはさまざまな長所があり、たとえば手術関連死と手術合併症がきわめて低い点が挙げられる。入院が短く、合併症発生率が低く、成功率が高いことから、患者はバイパス手術前にEVTを受ける傾向がはる

    かに強い6。また、開存の点では依然として限界はあるものの、再疎通率と中期開存の両方の改善において著しい進歩が達成されている9,20,21。今回の試験では、血液透析を受け、TASC-ⅡのCまたはDの動脈病変を有している患者が多かったにもかかわらず、EVTによる血管開存率はこれまでの試験のものと類似していた22。 これまでの試験においてバイパス手術とEVTが比較されており、Markoseらは静脈グラフトを用いたバイパス手術では2年開存が81%、PTFEグラフトでは67%、内膜下血管形成術ではせいぜい67%であると報告している23,24。これまでの試験と比較して、今回の試験ではPTFEが頻用されていたにもかかわらず、一次開存はパイパス手術群で依然として優れていた。これは、適切な静脈グラフトを得られない症例が多かったためである。今回の試験ではPTFEの使用がバイパス群の機能

    (performance)の低下につながった可能性はあったが、サブ解析では自家静脈グラフトとPTFEグラフト間で開存率に有意差は認められなかった。大腿膝窩動脈疾患の治療におけるバイパス手術とEVTを比較したメタ解析では、EVT-firstのアプローチは重大な併存症がある患者では妥当かもしれないが、長期生存が見込める患者の場合、ファーストラインのインターベンション治療としてバイパス手技を提案するべきであることが示された14,25。さらに、今回の試験における多変量解析では、対照血管径がEVT後の一次開存の独立した予測因子であることが分かった。したがって、病変の対照血管径が小さい場合はバ

    未調整ハザード比 調整ハザード比HR 95%CI P値 HR 95%CI P値

    全体EVT vs. バイパス手術 2.01 1.33–3.13 0.0007 1.63 0.96–2.76 0.07性別(女性 vs. 男性) 1.71 1.17–2.46 0.006 1.47 1.00–2.41 0.05*

    血液透析 1.93 1.25–2.91 0.004 1.58 1.01–2.41 0.05*

    石灰化病変 1.69 1.18–2.46 0.005 1.17 0.75–1.86 0.5シロスタゾール 0.78 0.53–1.14 0.2TASC-II D vs. C 0.67 0.47–0.97 0.35慢性完全閉塞病変 1.21 0.83–1.80 0.32EVT群

    年齢 0.97 0.95–0.99 0.04 0.96 0.92–0.98 0.01**

    血液透析 1.7 1.05–2.67 0.03 1.36 0.81–2.21 0.24対照血管径 0.75 0.58–0.97 0.03 0.72 0.56–0.93 0.01**

    TASC-II D vs. C 1.41 0.93–2.13 0.10 1.22 0.78–1.92 0.39性別(女性 vs. 男性) 1.3 0.84–1.99 0.23シロスタゾール 0.77 0.49–1.18 0.24慢性完全閉塞病変 0.83 0.53–1.32 0.42バイパス手術群

    性別(女性 vs. 男性) 2.98 1.39–6.33 0.006 2.59 1.15–5.71 0.02*

    心房細動 2.74 1.00–6.39 0.05 1.85 0.65–4.61 0.23シロスタゾール 0.82 0.36–1.76 0.62TASC-II D vs. C 1.35 0.52–4.61 0.56血液透析 1.81 0.53–4.74 0.31

    表5 跛行患者の一次開存の予測因子

    考 察

    * 0.01

  • Trans-Atlantic Inter-Society Consensus-ⅡのCおよびDの大腿膝窩動脈病変を有する跛行患者における 血管内治療後とバイパス手術後の長期的転帰の比較

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    イパス手術を選択するのが妥当と考えられる。一方で、PAD患者は併存症が多く、このため状態が不良な症例はEVTを第一選択とするのアプローチが妥当であることも考えられた26。 今回の試験では、バイパス手術の対象患者は、EVTでは良好な予後が得られなかったと考えられる総大腿動脈と膝窩動脈病変が多かった可能性がある。さらに、バイパス群にはEVT適応外で、大腿膝窩動脈バイパスの手術時間が長く、手術関連死が通常より高いと考えられる、複雑な症例が含まれていた可能性がある。一方で、全身状態が不良な患者はEVTに割りつけられた可能性が高いと考えられた。前述の理由により本試験の解釈は慎重に行う必要があるが、TASC-ⅡのCまたはDの大腿膝窩動脈病変に対するEVTは安全かつ有効な治療と思われる。類似した二次開存率とバイパス群における高い合併症発生率から判断すると、本試験を根拠に、EVTは手術リスクが高い患者への第一選択とするべきであると言える。しかし、EVTの一次開存率がバイパス手術よりも低かったことから、患者選択は慎重である必要がある。実際、EVTは生活の質を早期に改善するとされるが、この効果は長く続かないとされている。これらの所見を裏付けるには、特に最新のバイパス手術やEVTの転帰改善に関して大規模前向き試験が必要である。 試 験 の 限 界

     今回の試験の限界として、症例数が比較的少ないこと、デザインが後向き非無作為化試験であることが挙げられる。本試験は盲検下の試験ではなかったことから、観察バイアスの可能性が含まれる。実際、外科的バイパス手術を受けた群には重度の病変を有する患者がEVT群より多く含まれ、EVTを受けた患者の方が併存症が多かった。治療戦略の選択は、術者のスキ

    ルやさまざまな試験実施地域により提供された内科的治療の種類や追跡をはじめとする他の条件が影響したことを考慮に入れなければならない。観察研究では、治療効果よりはむしろ転帰が、治療群における相互比較性の欠如を反映することがある。 データは調整されてはいるものの、治療方法が無作為化されず、すべての決定を治療担当医が行ったことから、いくつかの有力な因子を検討できなかった可能性は残る。過去の後向き試験と同様に、因果関係を裏付けできず、また排除もできないのが実情である。また未知/未測定の因子による交絡を完全に除外できない。今回の試験にはEVT群とバイパス手術群間でベースラインの患者背景に多少のバイアスがあった。これは、データ源が後向きレジストリであったためである。ReCANALISEレジストリのデータは無作為化されていないが、今回の試験では日本におけるリアルワールドの成績が報告されている。

     バイパス手術は良好な一次および二次開存率を根拠に、TASC-ⅡのCまたはDの大腿膝窩動脈病変を伴う跛行患者に対して有効な治療である。大腿膝窩動脈病変を有する跛行患者の多変量コックス回帰分析では、女性または血液透析がTASC-ⅡのCまたはDの大腿膝窩動脈病変における頻繁な再狭窄と関連があった。患者の状態が不良であれば、その良好な二次開存率と低い合併症発生率からEVTも良好な選択肢である。

    結 論

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