許容濃度を指標とした 作業環境測定と評価 -...

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1.はじめに

○厚生労働省から、平成 11年4月 30日付厚

生労働省告示第 53 号で「労働安全衛生マネ

ジメントシステムに関する指針」が公表された。

○この 指針は、事業者が労働者の協力のもと

に、「計画―実施―評価―改善」という一連の

過程を定 めて、連続的かつ継続的な安全衛生

管理を自主的に行うことにより、事業場の労働

災害の潜在的危険性を低減するとともに、労

働者の健康の増進および快適な職場環境の

形成の促進を図り、事業場における安全衛生

水準の向上に資することを目的としている。

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○こうした新しい安全衛生管理に関する仕組み

は、国際的にも新たな潮流を形成しつつあり、

ILO (国際労働機関)においても日本の積極的

な関与の下で、 2001年 6 月の理事会で ILO ガ

イドラインが承認された。

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○ 労働安全衛生マネジメントシステム

(OSHMS )の考え方の中に不可欠の 要素として

組み込まれている概念として「リスクアセスメン

ト」があり、化学物質や物理的有害要因、労働

態様に係わる有害因子、安全に係わる危険因

子等すべてのリスク要因によるリスクの程度を

それぞれ個別的に、客観的に、できるだけ科学

的に評価し、その結果に基づいて優先順位を

決めてリスク削減を実施し、計画的、継続的に

リスク管理(リスクマネジメント)を進めなければ

ならない。

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○平成 12年 3月には、事業者による化学物質

の自主的管理を促進し、労働者の健康障害の

予防対策及び快適な職場環境の形成を促進

することを目的として、「化学 物質等による健康

障害を防止するために必要な措置に関する指

針」(以下化学物質管理指針と略)が 公表され

た。

○リスクアセスメントやリスクマネジメントを実施

するためには、使用されている化学物質の有害

性について 認識 するとともに、作業環境測定を

実施して当該作業環境の実態を的確に把握し

評価する必要がある。

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○現在我が国で取り扱われている化学物質は

約 55000種類と言 われている 。

○これらの物質について は、化学物質管理指

針にも示されているように、リスクアセスメントや

リスクマネジメントを実施する必要がある。

○このような多種類の化学物質のうち、 労働安

全衛生法第 57 条の 2 では、労働安全衛生法

第 56 条第1項に規定する製造許可物質7物

質と労働安全衛生法施行令の別表9に掲げら

れている 631 物質の合計 666333888 物物物 質質質 について、

労働者に健康障害を生ずる恐れがあるために、

有害性等の情報の提供を義務付けている。

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○これらすべての化学 物質について、 リスクアセ

スメントやリスクマネジメントを実施するためには、

作業環境測定の実施が 不可欠である 。

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2.作業環境測定の位置付け

○労働安全衛生法の第2条第4号で、作業環

境測定とは、 「「「作作作 業業業 環環環 境境境 ののの実実実 態態態 ををを把把把 握握握 すすするるるたたためめめ

ののの空空空 気気気 環環環 境境境 そそそののの他他他 ののの作作作 業業業 環環環 境境境 にににつつついいいててて行行行 うううデデデ

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いいいううう」」」と定義されている。

○この定義に沿った作業環境測定として、労働

安全衛生法第 65条では、労働安全衛生法施

行令第 21 条で定める 10 の作業場について、

作業環境測定基準に従って定期的に作業環

境測定を実施し、労働安全衛生法第 65 条の

2 で作業環境評価基準に従って評価を行い、

必要に応じて適切な措置を講じることとしており、

対象となる物質は 粉粉粉 じじじんんんととと 999222 物物物 質質質 である。

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有害化学物質 : 55,000種類

労働安全衛生マネジメントシステム 【化学物質管理指針】

【安衛法第57条の2】 ・有害性の通知:638物質 → MSDS 【安衛法第2条第4号】

・作業環境測定:『作業環境の実態を把握するため

空気環境その他の作業環境について行うデザイン、

サンプリング及び分析(解析を含む)をいう。』

【安衛法第65条】 ・安衛法施行令第21条

(作業環境測定を行うべき作業場) ①粉じん ②暑熱・寒冷、多湿 ③騒音 ④坑内作業

⑤事務所 ⑥放射線 ⑦特定化学物質 ⑧鉛 ⑨酸欠

⑩有機溶剤

・作業環境測定基準 ( ①、②、③、④、⑤、⑥、⑦、⑧、⑨、⑩ )

・指定作業場(作業環境測定士が実施) ( ①、⑥、⑦、⑧、⑩ )

・測定対象物質(粉じん、92物質)

【安衛法第65条の2】 ・作業環境評価基準による評価:管理区分の決定 (①、⑦、⑧、⑩)

・判断基準:管理濃度(粉じん、81物質)

・事後措置の実施:施設又は設備の設置又は整備、健康診断の実施

その他の適切な措置を講じなければならない。

(作業環境管理のための測定と位置付けられている)

作業環境測定の位置付け

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3.638物質を対象とした作業環境測 定

○638物質を対象として、空気環境その他の作

業環境について行うデザイン、サンプリング及び

分析(解析を含む)の システムに基づいた 作業

環境測定を実施する場合 のサンプリング及び

分析方法として、 どの程度の確立された手法が

あるか調べてみる と、

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638物質

分析用標準試薬が発売されていない物質 55物質

測定方法調査対象物質 583物質

化学分析手法により 検知管により 測定方法が 測定が可能な物質 測定が可能な物質 見つからない物質 414物質 224物質 129物質 作業環境測定ガイドブック:82物質 市販されているもの:185物質 米国のNIOSHの分析マニュアル:295物質 可能性のあるもの:39物質 米国のOSHAの分析マニュアル:292物質 米国のOSHAの CSI:165物質 米国のASTM::70物質 米国のEPA:146物質 英国のHSE:78物質 その他の文献:9物質

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○今回調査し た結果 、作業環境測定が可能であると考

えられる583物質のうち、測定手法の 確認できた物質数

は454物質 であり、残る129物質 については サンプリング

及び分析方法 を確立する必要がある。

○また、今回確認できた手法の大部分が個人サンプラー

を使用したばく露濃度測定手法であった。

○次に、 リスクアセスメントのための作業環境測定として実

施する場合には、測定結果の評価が不可欠であ る。

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○そこで、638 物質の 作業環境測定結果の 評価に使用

可能な 濃度基準の有無について調べると 、

● 作業環境評価基準で管理濃度が決められている物

質は 72 物質、

● 日本産業衛生学会の 2002 年 の許容濃度には 176

物質、

● 米国の ACGIH の 2002 年の TLV 表 には TWA とし

て426物質 、STEL として30物質の456物質

が記載されているが、 638物質中 残りの 182物質につい

ては示されていない。

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○このような現状から考えると、作業環境評価

基準で管理濃度が決められている 72物質につ

いては労働安全 衛生法第 65条の作業環境測

定を実施して作業環境の状態を評価すること

が可能であるが、

○そのほかの物質については、個人サンプラー

を使用し た作業環境測定即ち 個人ばく露 濃度

測定 を実施 して、日本産業衛生学会の許容

濃度や ACGIH の TLV などのばく露限界値を判

断基準として評価 せざるを得ないことに なる。

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3.作業環境測定の進め方

○有害物質を取り扱う作業場のリスクアセスメ

ントやリスクマネジメントを的確に実施するため

の作業環境中の有害物質に係る濃度の情報

収集のための作業環境測定は 重要である。

○作業環境測定を実施 する場合には、入手し

たい情報の種類によってその測定手法が 異な

る点を十分に理解しておく必要がある

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○管理濃度を判断基準として測定を実施した

場合は、その結果から得られる管理区分 は設

定した単位作業場所 内 の有害物質濃度の 作

業環境管理の 状況を示しており、その中にある

施設や 装置・ 設備に対して必要な措置を講ず

ることになる。

○管理濃度が示されてい ない物質 の場合は 、

日本産業衛生学会の許容濃度や ACGIH の

TLV などのばく露限界値を判断基準と して、個

人サンプラーによる 測定を実施 することになるが、

この場合は 当該作業場の労 働者個々人の状

況を把握することになり、 作業管理を主体とし

た事後 措置 が必要となる 。

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○管理濃度が示されてい る物質であっても、 単

位作業場所の範囲を決めることが困難な場合

や、固定点での測定が実施できない場合には

個人サンプラーによる 測定を実施 せざるを得な

いが、この場合も 当該作業場の労働者個々人

の状況を把握することになり、 作業管理を主体

とした事後 措置 が必要となる。

○このように、作業環境測定手法には その目

的 によって様々な形が存在しており、それらの

手 法 をいかに有効に連携させられるかが重要

である。

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4.許容濃度を作業環境測定に

有効に利用するための課題

○作業環境測定士や作業環境測定機関では

労働安全衛生法施行令第 21条に係る作業

環境測定については十分な知識や技術を有し

ており、作業環境測定基準や作業環境評価

基準に基づいた一連の システムに沿って作業

環境測定を実施しているが、 実際の 作業現場

では測定対象の粉じんや 92 物質以外の物質

に遭遇することも 多い 。

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○その場合には 、作業環境管理のための測定

を実施するのか、或いは作業管理を主体とした

測定を実施するのかを判断しなければならな

い。

○また、依頼者が労働者個々人の状況を把握

したいと考えていても 、安易に 作業環境測定基

準や作業環境評価基準に基づいた一連の流

れで実施してしまう傾向が強 い。

○その要因としては、許容濃度を判断基準とし

た場合の評価方法の 不明確さが考えられる。

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○ これらの点からも、サンプリング方法や分析方法

の充実もさる ことながら、米国の NIOSH や AIHA

等で示されているような、リス クアセスメントの手法

として、目的に応じて許容濃度が有効 に利用で

きるような広義の 作業環境測定システム の早期

導入 が必要であると考える。

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NIOSHの推奨する作業者のばく露濃度測定手順

(AL:アクションレベル、PEL:許容ばく露レベル)

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有害物の放出

回数を減らす

二次スクリーニング 一次スクリーニング

定期的一次スクリーニング

No

Yes

No

No

Yes

Yes

AL < Q < PEL

作業改善 終了

Q < AL

Q > PEL

日本産業衛生学会 作業環境測定検討委員会で検討中の

スクリーニングのフローチャート