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大成建設技術センター報 45 (2012) 59-1 億首ダム本体建設工事における ダムICT施工総合管理システムの適用 江田 正敏 *1 ・武本 隆太郎 *2 ・松本 三千緒 *1 ・片山 三郎 *1 Keywords : Okukubi dam, trapezoid CSG dam, ICT construction, 4D-DIS, traceability 億首ダム,台形CSGダム,ICT施工,4D-DIS,トレーサビリティー 1. はじめに 沖縄県において施工した世界初の本格的台形CSG ダムである億首ダム(2013.3完成)では,ダムICT 施工総合管理システムを開発し運用した。このシステ ムでは4D-DIS(4 DimensionsDam Information Service)と呼ぶデータベースを中心に,GPSを搭載 したブルドーザや振動ローラ,バックホウ,ダンプな どの建設機械により3次元位置や時間情報を把握し,施 工データをエレメント(一辺500㎜の立方体など)単位 で,4 次元(X,Y,Z,T)管理することで,施工の効率 化と品質保証を可能としている。 本システムは,図-1に示すように4D-DISコア部 (データベース)を中心に転圧管理システムやCSG 材料トレースシステムなどの各サブシステムで構成さ れる。 1-1 システム全体概要 1Fig.1 Summary of the whole system 2. 4D-DISデータベース(コア部) 4D-DISコア部にはリレーショナルデータベース マネージメントシステム(RDBMS:MySQL)を 採用した。本コア部の特徴は,蓄積データを座標と時 間(X,Y,Z,T)の4次元で管理する点にあり,図-2に示 すように構造物の中を一定の領域(エレメント単位) で扱うようになっている。 -2 データ管理の考え方 Fig.2 Data concept エレメント(またはエレメント範囲)を指定すると その部分の材料配合や製造日時,施工方法,施工結果 などの関連する一連の情報が検索・抽出されるように なっている。図-3に示すように指定する項目としては, ・検索対象範囲(サブシステムやデータを指定, すべてを対象とする事も可能) ・場所・範囲の指定(X1X2Y1Y2Z1Z2・日時・範囲の指定(T1T2などがあり,必要に応じて検索条件を追加する機能も 持たせている。 *1 技術センター 土木技術開発部 土木技術開発プロジェクト室 *2 土木本部 土木技術部 検索 ワンデー レスポンス ・データ変換 ・セキュリティ 発注者 JV 発注者 JV 情報共有 X,Y,Z,T による データ検索 D-DIS データ 3次元座標(X,Y,Z+時間 データ収集・蓄積 ※その他の対象と考えられるサブシステム:気象、グラウト、濁水処理、マシンガイダンス、図面類など CSG材料トレースシステム CSG材料投下 堤体での荷降ろし 1レーン転圧 2レーン敷均し 荷降ろし情報位置送信 現場監視室 リアルタイム情報 CSG積込 (DGPS・無線LAN) 材料情報送信 (プラント→ダンプ ) (RTKGPS・無線LAN) ダンプ搬送 端部法面締固め管理システム 場所毎に締固め 累積時間を管理 移動しながら 締固める GPS×2 傾斜計 起振器指示 D-DIS コア部 両輪転圧管理システム 転圧管理画面 転圧回数色分表示 車載端末 GPS 無線LAN サブシステム サブシステム

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大成建設技術センター報 第 45 号(2012)

59-1

億首ダム本体建設工事における

ダムICT施工総合管理システムの適用

江田 正敏*1・武本 隆太郎*2・松本 三千緒*1・片山 三郎*1

Keywords : Okukubi dam, trapezoid CSG dam, ICT construction, 4D-DIS, traceability

億首ダム,台形CSGダム,ICT施工,4D-DIS,トレーサビリティー

1. はじめに 沖縄県において施工した世界初の本格的台形CSG

ダムである億首ダム(2013.3完成)では,ダムICT

施工総合管理システムを開発し運用した。このシステ

ムでは4D-DIS(4 Dimensions-Dam Information

Service)と呼ぶデータベースを中心に,GPSを搭載

したブルドーザや振動ローラ,バックホウ,ダンプな

どの建設機械により3次元位置や時間情報を把握し,施

工データをエレメント(一辺500㎜の立方体など)単位

で,4 次元(X,Y,Z,T)管理することで,施工の効率

化と品質保証を可能としている。 本システムは,図-1に示すように4D-DISコア部

(データベース)を中心に転圧管理システムやCSG

材料トレースシステムなどの各サブシステムで構成さ

れる。1)

図-1 システム全体概要 1) Fig.1 Summary of the whole system

2. 4D-DISデータベース(コア部) 4D-DISコア部にはリレーショナルデータベース

マネージメントシステム(RDBMS:MySQL)を

採用した。本コア部の特徴は,蓄積データを座標と時

間(X,Y,Z,T)の4次元で管理する点にあり,図-2に示

すように構造物の中を一定の領域(エレメント単位)

で扱うようになっている。

図-2 データ管理の考え方

Fig.2 Data concept

エレメント(またはエレメント範囲)を指定すると

その部分の材料配合や製造日時,施工方法,施工結果

などの関連する一連の情報が検索・抽出されるように

なっている。図-3に示すように指定する項目としては,

・検索対象範囲(サブシステムやデータを指定,

すべてを対象とする事も可能)

・場所・範囲の指定(X1~X2,Y1~Y2,Z1~Z2)

・日時・範囲の指定(T1~T2)

などがあり,必要に応じて検索条件を追加する機能も

持たせている。 *1 技術センター 土木技術開発部 土木技術開発プロジェクト室 *2 土木本部 土木技術部

情報検索マトリクス

情報検索マトリクス

検索

情報提供

情報検索入力

検索情報の出力

ワンデーレスポンス・データ変換・セキュリティ

発注者

JV

情報要求

発注者

JV

情報共有

X,Y,Z,T によるデータ検索

4D-DIS データ3次元座標(X,Y,Z)+時間

データ収集・蓄積

※その他の対象と考えられるサブシステム:気象、グラウト、濁水処理、マシンガイダンス、図面類など

CSG材料トレースシステム

CSG材料投下

堤体での荷降ろし

1レーン転圧

2レーン敷均し

荷降ろし情報位置送信

現場監視室

リアルタイム情報

CSG積込

(DGPS・無線LAN)

材料情報送信(プラント→ダンプ )

(RTKGPS・無線LAN)

ダンプ搬送

端部法面締固め管理システム

場所毎に締固め累積時間を管理

移動しながら締固め

傾斜計

GPS2基

起振器位置指示

場所毎に締固め

累積時間を管理

移動しながら

締固める

GPS×2

傾斜計

起振器指示

4D-DIS コア部

両輪転圧管理システム

GPS無線LAN

車載端末

転圧管理画面

転圧回数色分表示

車載端末 GPS

無線LAN

サブシステム サブシステム

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図-3 データ検索画面

Fig.3 Search Data Screen

3. 億首ダムに適用したサブシステム

本システムを適用した億首ダムは,

・型 式:台形CSGダム

・ダム高:39.0m

・堤頂長:400m

・堤体積:339,000 m3

・総貯水容量:8,560,000m3

・湛水面積:0.61㎞2

・集水面積:14.6㎞2

であり,その概要を写真-1,表-1 に示す。

表-1 億首ダムの用途

Table 1 The use of Okukubi dam

洪水調節

・億首ダムの建設される地点(ダム地

点)において計画高水流量 300 m3/s

のうち,190m3/s の洪水調節を行う。

流水の正

常な機能

の維持

・ダム地点下流の億首川沿川の既得用

水の安定化と河川環境の保全等のため

の流量の確保(流水の正常な機能の維

持)を図る。

水道用水

・沖縄県に対し,ダム地点で新たに 10

,300m3/日の水道用水の供給を行う。

※約 2 万 8 千人分に相当。

かんがい

用水

・億首川沿川の約 70ha の農地に対し,

新たにかんがい用水の供給を行う。

写真-1 億首ダム施工状況

Photo.1 Construction condition of the Okukubi dam CSGの施工管理にあたっては,段階確認などの立

会検査,目視による施工状況の把握によるほか,以下

の項目についてICTによる定量的確認を実施している。

・敷均し厚(1層25cm×3層)

・締固め

一般部の転圧回数(無振動2回+有振動6回)

端部法面部の締固め時間(30秒)

・CSG材施工時間管理

材料製造から転圧開始までの制限時間(6時間以内)

適用したサブシステムとしてはローラー転圧管理シ

ステム,端部法面締固め管理システム,締固め完了時

間管理システムなどがあげられるが,データ蓄積の観

点からはバッチャープラント,ウェザーステーション

(気象情報)などもサブシステムの一つとして捉える

ことができる。ここでは主要なサブシステムとして,

・母材運搬および母材採取管理の情報化施工

・締固め管理(ローラー転圧,端部法面締固め)

・締固め完了時間管理(CSGトレースシステム)

・CSG材料敷均し厚さ管理

をとりあげ,現場での活用状況について報告する。

3.1 母材運搬および母材採取管理の情報化施工

母材の採取,運搬,仮置き管理にICタグを利用す

ることで,人為的ミスの防止や区分仮置きの確実化,

数量把握を行い(図-4),さらに調査ボーリングと地質

データから,母材と廃棄岩との境界の 3 次元地質モデ

ル作成する。これを現地測量データで修正し,母材採

取可能量の確認をおこなった(図-5)。 このシステムは,バックホウのオペレータが各ダン

プに母材を積む時に,その種類に応じた選択スイッチ

を押す事で,ダンプに搭載されたICタグに母材種別

の書き込みがおこなわれる。

検索対象の指定

場所・範囲の指定

日時・範囲の指定

帳票形式の指定

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そして,このダンプが積込み場所を出る時にICタ

グの情報を読取って,表示板に行先を表示する。ダン

プの運転手はこの表示を見て,搬送先(ストックヤー

ド)まで運転する。搬送先に到着すると,入口でダン

プに搭載したICタグの情報を読取り,母材の種類に

応じた荷降ろし場所(ストックパイル)が表示される。 ここでダンプの運転手は荷卸し場所を確認する事が

できるため,区分仮置きの確実化や人為的ミスの防止

が可能となる。

これらの母材運搬データは,4D-DISコア部に蓄

積され,積込み・荷卸し場所別の数量を集計している。

また,母材採取管理では調査ボーリングと地質デー

タから,母材と廃棄岩との境界の3次元地質モデルを

作成した。そして,現地測量データでこれを修正し,

最新の母材採取可能量を確認できるようにした(図-5)。

図-4 母材管理のイメージ

Fig.4 Image of base material management

図-5 情報化施工による母材採取管理 Fig.5 Management of base materials by execution of

informatization

3.2 締固め管理(ローラー転圧,端部法面締固め)2)

GPSや無線LAN,車載パソコンを転圧ローラー

に搭載することにより,施工場所のどこを何回転圧し

たかをエレメント単位でカウントし,記録するシステ

ム(写真-2)であり,発注者事務所・JV事務所にて

リアルタイムに情報共有をおこなった。 メッシュ毎の転圧回数は運転席のモニターに色別表

示されるため,オペレータはこの情報に基づいて全メ

ッシュが規定回数に達するまで走行操作をおこなう。

なお,転圧ローラーが複数台であっても各メッシュに

は累積転圧回数が示されるため無駄のない施工が実施

できる。図-6,7に転圧表示画面の例を示す。

GPS無線LAN

車載端末

写真-2 転圧ローラー Photo.2 Compaction roller

図-6 転圧表示情報共有画面例1

Fig.6 Example 1of the screen to share display information on rolling compaction

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図-7 転圧表示情報共有画面例2

Fig.7 Example 2 of the screen to share display information on rolling compaction

ローラーによる転圧回数の表示画面では転圧してい

ないエリアが緑色,1回転圧で茶,2回で薄茶,3回で黄

色,4回で朱色,5回で桃色,6回で紫色,7回で青色,8

回以上は紺色で表示している。オペレータはこの色を

見ながら所定回数の転圧をおこなう。

次に,端部法面部での締固めイメージを図-8,写真-

3に示す。端部法面部は起振器を装置した専用機械によ

り締固めをおこなっている。端部法面部では,ローラ

ーによる転圧とは異なり締固め位置と締固め時間によ

り管理しており,ある位置に対しての締固め累積時間

が所定の秒数(30秒等)になるまで締固めをおこなう。

その理由は,一ヶ所を連続的に締固めると端部法面

部に段差等が生じる恐れがあるため,場所を移動させ

ながら繰り返し締固めをおこなう方法をとっている。

チルトセンサー

GPS×2

図-8 端部法面締固めイメージ(横断方向)

Fig.8 Image of slope edge compaction (Transverse direction)

写真-3 端部法面締固め実施状況

Photo.3 Operational situation of slope edge compaction

そして,各位置の締固め累積時間が所定の時間(30

秒等)になった事が分るような表示をおこなっている。

この時間は,1~9秒で茶色,10~19秒で黄色,20~29

秒で桃色,30秒以上は紺色で表示する。この端部法面

締固めの状況は,ローラー転圧の画面(図-6,7)に一

緒に表示されるため,オペレータはこの表示と起振器

の位置誘導画面(図-9)を見ながら締固め作業をおこ

なう。

両施工機械のオペレータは,この表示を運転席モニ

ターで見ながら作業を行うため締固め不足を防止する

ことが出来る。また,これらの情報は蓄積・保存され

るため,過去に遡って連続再生表示することも可能に

なっており,発注者事務所・JV事務所の双方で活用

した。

図-9 端部法面締固め画面

Fig.9 Screen display image of slope edge compaction

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3.3 締固め完了時間管理(CSG トレースシステム)

TAISEI CORPORATION提体

運搬

現場試験室

(→JV事務所)

日報記録等

製造

時間管理

敷均し

※RTKGPSMCブルドーザー

情報収集(無線LAN)

CSG混合設備×2

運搬・打設に係わる一連の品質管理

・バッチNo.

・荷降ろし時間

・打設位置(グリッド)

ダンプ又はバケット

荷降ろし DGPS

GPSによるCSG締固め管理

・締固め開始時間、完了時間

・グリッド毎の点圧回数 締固め

開始・

完了締固め

開始

振動ローラ

・初回無振動での敷均し厚測定

端部法面締固め

(CSG)・バッチNo.

・配合種別

・混合時間

荷積み

情報伝送

情報記録

(CSG)・バッチNo.

・配合種別

・混合時間

図-10 CSG材料トレースシステム3)

Fig.10 Material tracing system プラントでのCSG製造から材料搬送,敷き均し,

ローラー等による転圧開始時間(CSG製造からの制

限時間6時間)および転圧完了時間を管理するシステ

ムであり,

・CSGプラントでのCSG製造情報の車両伝送

・車両での打設位置計測と情報伝送

・CSG締固め開始・完了時間の表示

で構成される(図-10)。これらも発注者事務所・JV

事務所間で情報共有をおこなった。

まず,CSG混合装置(プラント)で製造されたC

SG材料をダンプトラックに投入する時に,材料のバ

ッチ情報(バッチ番号,配合種別,製造時間など)も

ダンプに搭載したパソコンに伝送する。このダンプに

はDGPS(ディファレンシャルGPS:精度 50 ㎝)

を搭載しているため,現場まで運搬し材料を荷降しし

た位置を知ることができる。

そこで,荷降ろし位置とバッチ情報の両方を無線L

ANにより現場の監視室へ伝送する。3)次に,ブルド

ーザによる敷均しがおこなわれ,ローラーによる転圧

(端部法面締固めを含む)がおこなわれる段階で,ど

の位置の材料が製造から何時間たっているか分るため,

ローラー(端部法面も同様)のオペレータは優先して

転圧する場所を知ることができる。

また,打設場や発注者事務所・JV事務所では,任

意点での作業状況を画面をクリックすることにより時

系列データで確認出来るものとした。この時の時間管

理画面を図-11 に示す。 材料が製造から何時間経過しているかは,画面上に

色別で表示される。この変化状況を図-12に示す。

図-11 締固め時間管理情報共有画面

Fig.11 Screen to control compaction time

図-12 締固め時間管理再生画面例

Fig.12 Example of a replayed screen image of compaction time control

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図-13 トレースシステムの運用サイクル

Fig.13 Operational cycle of the tracing system

敷均しがおこなわれていない場所は白色で示されて

おり,1層目の敷均し後は薄緑色,2層目は緑色,3層目

は濃緑食で表示される。また,材料が製造から2時間を

経過したものは黄色で表示され,4時間を経過すると赤

色に変化する。そこで,転圧や端部法面締固めのオペ

レータはこの表示を見ながら優先すべきエリアを転

圧・締固めする。転圧や締固めがおこなわれたエリア

は灰色に変わり,転圧・締固め完了時には紺色で表示

される。

なお,この締固め完了時間管理(CSG材料トレー

スシステム)もデータを蓄積・保存しているため,発

注者事務所やJV事務所などで過去に遡って再生表示

することが可能になっている。図-13にトレースシステ

ムの運用サイクルを示す。 3.4 CSG材料敷均し厚さ管理

当初,敷均し厚さの管理は回転レーザーレベルによ

る方法を予定していたが,施工性および走行軌跡の記

録を考慮し,マシンコントロール機能を搭載したブル

ドーザ(以下,MCブルドーザ)による施工方法を採

用する事とした。

MCブルドーザはGPSを利用しブルドーザの排土

板を自動制御をすることで,設計高さの敷均しを可能

にするものである(図-14)。図-15は,敷均し作業時

のMCブルドーザの排土板最下部の高さ軌跡を時系列

に出力したものであり,施工レーンの一層毎に約25㎝

で敷均されていることを示したものである。

この時,施工時のGPSデータは内部メモリーに記

憶されるため,施工後にその情報を電子データとして

利用することが可能である。

GPSアンテナ

XYZ座標を測定

施工高さを制御

設計横断勾配を制御設計データ

図-14 MCブルドーザ

Fig.14 MC bulldozer

図-15 ブルドーザ排土板高さ軌跡の出力例

Fig.15 Example of an output form of height traces of blade of the bulldozer

図-16 走行軌跡

Fig.16 Motion path

青線:ブルドーザ排土板下端高

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図-17 平均転圧回数への換算 Fig.17 Conversion to an average number of rolling compaction

図-18 走行軌跡出力帳票の例

Fig.18 Example of an output form of motion paths

このデータを利用してMCブルドーザの各層におけ

る走行軌跡を表示させた例を図-16に示す。これは,枠

内(レーン)での走行軌跡を表示したものであり,レ

ーン外に出た部分は対象外としてカウントしていない。

また,キャタピラの幅を60㎝(両側で1.2m)とし,

これにレーン内での各層での走行距離を掛ける事によ

りレーン内の平均転圧回数に換算する解析もおこなっ

ている(図-17)。これらの走行軌跡出力帳票の例を図

-18に示す。

4. おわりに

4D-DISデータベース(コア部),ICタグによる

母材運搬・仮置き管理,締固め管理(ローラー転圧,

端部法面締固め),締固め完了時間管理(CSG材料

トレースシステム),CSG材料敷均し厚さ管理の各

システムを億首ダムに適用し,品質保証や施工履歴の

蓄積,これらの情報の共有に活用することができた。

ダムICT施工総合管理システム「4D-DIS」は

CSG材料以外にも応用可能であるため,今後はこの

技術を応用・発展させ,道路や造成工事などを対象に

品質向上に役立てていく予定である。

謝辞

最後に,このシステムの適用にご協力頂いた内閣府沖縄総

合事務局北部ダム事務所に対し,心より感謝を申し上げます。

参考文献

1) 岡田敏,鬼塚真,小林伸幸,小西史和:高速 ORDBMS Lite

Object の設計と実装,情報処理学会第 56 回全国大会前期

(3),pp.274-275,1998.3.17 . 2) 中島修:嘉瀬川ダム副ダムのCSG工法,社団法人 九

州地方計画協会,九州技報 第 46 号,2010.01. 3) 阪田史郎,山田曉飯,塚宏之,伊藤哲也:無線LANメ

ッシュネットワークの技術動向,電子情報通信学会誌

Vol.92,No.10,pp.841-846,2009.10.