庁舎におけるペリメータレス化手法の 計画と測定- 1 -R 0 5 01 [m]...

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-1 - 50 100[m ] 実測対象建物 庁舎におけるペリメータレス化手法の 計画と測定 ダイダン(株) 技術研究所 山口太朗 はじめに さいたま新都心合同庁舎は,21世紀の開かれた官庁街 を目指して,主に関東・甲信越を所管する国の地方支分部 局 ( 国土交通省関東地方整備局 を含む ) などが集中入 居する,行政施設である.また,同施設は,ヘリポートや防 災無線,通信ネットワークを併設した広域防災拠点でもある ( 写真-1,図-1 参照 ) 同施設は,下記などで詳しく紹介されている. ・さいたま新都心合同庁舎, 建築設備士 2000. 7 pp.30 -39 ・建設省関東地方建設局 営繕部移転機関設計課, 日建設 計 山中哲 他, さいたま新都心合同庁舎の概要, 空衛 2000.7 pp.56 -62 ・http://www.tv -saitama.co.jp/shintoshin/goudou.htm 本報では,同施設に導入されたペリメータレス空調手法 の一つであるエアフローウインドウシステム [1] ,[2],[3] の環境測 定(シミュレーションを含む)実施の報告を行う. 写真-1 建物外観 ( 合同庁舎2号館) 図-1 建物配置図

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- 1 -

0 50 100[m]

実測対象建物

庁舎におけるペリメータレス化手法の

計画と測定 ダイダン(株) 技術研究所 山口太朗

はじめに

さいたま新都心合同庁舎は,21世紀の開かれた官庁街

を目指して,主に関東・甲信越を所管する国の地方支分部

局 ( 国土交通省関東地方整備局 を含む ) などが集中入

居する,行政施設である.また,同施設は,ヘリポートや防

災無線,通信ネットワークを併設した広域防災拠点でもある

( 写真-1, 図-1 参照 ) .

同施設は,下記などで詳しく紹介されている.

・さいたま新都心合同庁舎, 建築設備士 2000.7 pp.30-39

・建設省関東地方建設局 営繕部移転機関設計課, 日建設

計 山中哲 他, さいたま新都心合同庁舎の概要, 空衛

2000.7 pp.56-62

・http://www.tv-saitama.co.jp/shintoshin/goudou.htm

本報では,同施設に導入されたペリメータレス空調手法

の一つであるエアフローウインドウシステム文[1] ,[2],[3]の環境測

定(シミュレーションを含む)実施の報告を行う.

写真-1 建物外観 (合同庁舎2号館)

図-1 建物配置図

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1.工事概要と環境測定のいきさつ

工事概要を表-1 に示す.また,本物件では,負荷の抑制

や自然エネルギの利用など環境負荷低減の取り組み文[4]

( 図-2 ) がいくつかなされている.空調設備に関連する代

表的なものは,表-1 にも示したように,アトリウムを利用した

自然換気システムとエアフローウインドウシステム (以降,

AFW とする.) である.特にこういったペリメータレス空調シ

ステムの開発・研究及び,施工実施例の報告が学会活動等

で近年増加傾向がみられ,当社研究所でも,省エネルギー

技術開発の一貫として,ペリメータレス空調システムに取り

組みつつある.

また本物件では,施工確認 ( 環境測定 ) の一貫として,

温度・気流分布・日射などの詳細な測定,及び可視化測定

やシミュレーションも行うように,特記仕様書にて記載され義

務づけられている.

図-2 官庁施設で環境配慮技術を導入する指針が策定され

た記事 ( 日刊建設通信新聞 平成 13 年 2 月 9 日(金) ).

名 称 発 注 者 設 計 監 理 施 工

建 築 空 調 衛 生 電 気 通 信

工 期 建物用途 建築概要

建築面積 延床面積 構造 階数

( 環境負荷低 減 へ の取り組み) 設備概要

熱源 ( 環境負荷低 減 へ の取り組み)

さいたま新都心合同庁舎2号館 建設省関東地方建設局 (当時) (現 国土交通省関東地方整備局) 建設省関東地方建設局営繕部 日建・東畑・アールティーケーエル JV 建設省関東地方建設局営繕部 東京第一営繕工事事務局 日建・東畑・アールティーケーエル JV 竹中・日本国土・鉄建 JV ダイダン・朝日・五建JV 西原・ダイセツJV 電設工・六興・東邦 JV きんでん・浅海 JV 平成 8 年 3 月~ 平成 12 年 1 月 事務所 5,691.99m2 99,436.19 m2

S 造,一部 SRC 造・SR 造 地上 26 階 地下 3 階 棟屋 2 階 外部庇, 屋上緑化 etc. 地域冷暖房 アトリウムを利用した自然換気システム エアフローウインドウシステム(本報の実測対象) 排水利用, 太陽光利用 etc.

表-1 工事概要

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- 3 -

AFW

② ④

⑥ ⑤

① ③

2.空調方式とAFW の計画

2.1 空気調和方式

平面計画は分散コア型で,中央にアトリウム空間を設け

ている.空調方式は, ペリメータ ( 東西面 ) にAFW を用

いた単一ダクト方式としている ( 図-3,5 ) .空調ゾーンは,

将来の間仕切変更に対して柔軟に対応する事が出来るよう

にゾーニングされており( 図-4 ①~⑦ ),各ゾーンは VAV

によりさらに細分化されている.それらVAV を制御すること

で,ゾーン毎で事務室内の要求に対応している.また,各

空調機は全外気運転を可能とし,中間期による外気冷房を

行えるようにしている.

2.2 AFW システムの概要と計画

AFW では,通常のガラス面に対して,さらに内ガラスを

設けガラス間に中空層を形成している ( 図-6 ) .屋外から

侵入する熱 負荷はこの中空層を通過して室内に侵入する.

一方で,この中空層内を室内排気の通り道とすることで,侵

入負荷のほとんどが室内空気と混合する前に排気される仕

組みとなっている ( 図-5 ) .

既往の研究や採用事例からペリメータ長さに対する窓通

気量はAFW の性能と深く関係し,建物規模やシステムを採

用する居室の奥行き(法定 OA 外気量)によって異なるが,

50~100 CMH/m (CMH=m3/h)程度をとるのが一般とみら

れる.

本物件では,廊下や便所などへの排気風量との兼ね合

いから,100 CMH/m以下であれば過剰なOA外気を必要

としない.また,シミュレーションによる予備検討から,50~

120 CMH/m の間では,窓通気量が増す毎に除去熱量が

増え,50 CMH/m 以下では冬季暖房負荷ピーク時に外ガ

ラス面でのコールドドラフトにより,AFW 内部の気流が剥離

する恐れがあることを確認した.結果,排気風量は 100

CMH/m と決定した.文[5]

2.3 AFW 設置の有効性

AFW の主な特徴を以下に示す.

・配管レスによる水損防止対策の不要

・ペリメータ空調機の設置・更新不要

・ペリメータ負荷の混合損失減少

・収納スペースの確保

図-4 基準階空調ゾーニング

表-2 空調機のエアバランス

空調機 外気量(OA) [m3/h]

排気量(EA) [m3/h]

AFW窓通気量(EA) [m3/(m・h)]

①系統 3,600 1,350 100 ②系統 3,600 1,250 104 ③系統 4,960 2,290 119 ④系統 3,740 1,090 118

事 務 室エアフローウイント ゙ ウ

E A

ファン R A天 井 チャンバ ー

O A

S A S A

V A V V A V

E A

E A

吸 込 スリ ット

空気調和機

W C ・ 湯 沸 室倉 庫 な ど

E A

図-3 基準階空調システム概念図

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内ガラス 厚さ8mm 中空層

外ガラス 厚さ15mm

排気口

吸込スリット5mm

収納キャビネット

チャンバーボックス

電動ブラインド

排気用ファンへ接続

図-6 AFW 廻り断面図

図-5 AFW 廻り概念図

日射負荷は,気流による除去効果は期待出来ないので,ブラインドなどの併用を考慮

する.

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3.実測内容と測定機器設置の様子

室内の実測項目は,以下とした.

・乾球温度,湿球温度 ( 写真-2, 3, 5 )

・AFW 排気末端温湿度

・グローブ球温度 ( 写真-3 )

・ガラス貫流熱量 ( 写真-4 )

・AFW 中空層・窓近傍の風速分布

・PMV値 ( 写真-4 )

・ガラス透過日射量 ( 写真-5 )

・ガラス面の熱画像

写真-3 グローブ球と湿球温度測定の様子

( 左側 ) グローブ球により周囲の輻射熱を計測している.

( 右側 ) ガーゼ表面で水分蒸発させ,湿球温度を測定し

ている.

写真-5 ガラス透過日射量 測定の様子

AFW 内中空層内 ( 中央やや左側 ) とAFW 室内側 ( 右

側 ) に日射計を配置している.

測定時の上下階の空調条件や,測定室に対応する空調

機の供給風量(SA),還風量(RA),とその温度などは,中央監

視にてモニタリングされデータ管理されているので,それを

用いた.

写真-2 垂直温度分布測定の様子

ポールを床に対して垂直に立て,床面より500mm ピッチに

熱伝対の先端 ( 温度測定ポイント) を設けている.

写真-4 環境測定器のセンサーの設置状況

PMV 値算出に必要な,平均輻射温度や風速を測定して

いる.右側の熱流素子により貫流熱量を測定している.

グローブ球

湿 球 温 度

PMV測定器

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屋外の実測項目は,以下とした.

・乾球温度,湿球温度 ( 写真-6 )

・日射量 [ 水平面 ] ( 写真-7 )

・日射量 [ 西面 ] ( 写真-8 )

・日射量 [ 南面 ]( 写真-8 )

・放射収支量 ( 写真-9,10 )

外界条件の測定は,特に周囲建物・屋外設置機器・排気

空気による影響を考慮し,室内測定内容に適した情報を収

集することを心掛けた.

写真- 7 屋外水平面日射量測定の様子

写真-9 放射収支計量測定の様子

屋上,床面からの照返し分を測定している.

写真-6 屋外温度測定の様子

直達日射・照返しや屋外設置機器の影響を受け難いと思

われるところに設置した.

写真- 8 屋外垂直面日射量測定の様子

写真-10 放射収支計量測定の様子

夜間放射も測定し,考慮する.

下向き放射収支

乾球温度

湿 球 温 度

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- 7 -

35302520温

度[℃

]

0200400600800

日射

量[W/m

2]

0:00 21:0018:0015:0012:009:006:003:00時刻

水平面日射量 垂直西面日射量

外気温度2000年9月3日

4.実測データ

AFW の実測によって得られたデータを示す.

・実測条件 ( 表-3 )

・実測日の屋外気象条件 ( 図-7 )

・室内温度変化 ( 図-8 )

・室内垂直温度分布 ( 図-9 )

・PMV値の変化 ( 図-10 )

・空調用監視ポイントの温度変化 ( 図-11 )

・内ガラスの表面温度 ( 図-12 )

・AFW 除去熱量 ( 図-13 )

実測の結果,AFW によるペリメータレス効果が顕著であ

ることが分かる.今後イニシャルコスト比較を含めた検討も

必要である.

表-3 実測条件

*設計設定温度は,26℃であるが室内機器発熱などが測

定時に発生しないため,24℃とした.

* 窓通気量は,窓面の長さ方向 ( ペリメータ長さ ) 1m 当

たりについての風量を意味する.

図-7 実測日の屋外気象条件

図-8 室内温度変化

OT は,作用温度 ( 輻射を考慮した温度指標 ) を示す.

図-9 室内垂直温度分布

FCU による従来空調では,ペリメータ側とインテリア側で 1

~2℃程度の温度差が見られる.ここでは,ペリメータ側と

インテリア側の温度差はほとんど現れなかった.

空調時間 設定 温度 ブラインド 窓通気量

9:00~17:00 24℃ 全閉使用 100 CMH/m

20 25 30 35

温度[℃]

高さ

[mm]

ペリメータインテリア

天井表面

2500

2000

1500

1000

500

床表面

20 25 30 35

温度[℃]

ペリメータインテリア

天井表面

2500

2000

1500

1000

500

床表面

20 25 30 35

温度[℃]

ペリメータインテリア

天井表面

2500

2000

1500

1000

500

床表面

7:00 非空調時間帯

10:00 空調開始 1h 後

14:00 空調時間帯

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- 8 -

9:00 11:00 13:00 15:00 17:00時刻

除去

熱量

[W/m

]

0

100

200

300

400

500

600

10

15

20

25

30

35

40

温度

[℃]

AFW排気温度 AFW吸込み温度

インテリア側室内温度

除去熱量

9:00 11:00 13:00 15:00 17:00時刻

15

20

25

30

温度

[℃]

窓通気あり

空調RA

インテリア側ペリメータ側

空調SA

-2

-1

0

1

2

0:00

2:00

4:00

6:00

8:00

10:0

0

12:0

0

14:0

0

16:0

0

18:0

0

20:0

0

22:0

0

時刻

PMV値

[-]

窓通気量 100m3/(m・h) ブラインド 0°

ペリメーター側

インテリア側

空調時間 9:00~17:00

clo:0.8 Met:1.2

2.0

1.0

0.0

-1.0

-2.09 12 6 3 15 18 21

図-10 PMV値の変化

空調時間帯では, インテリア側もペリメータ側もほぼ,

快適域である ±0.5 以内となっている.

( 従来空調では,両者の差が, 0.5~1.0 程度見られるが こ

では,ペリメータレス効果のため差はほとんどない )

図-11 空調用監視ポイントの温度変化

図-12 内ガラスの表面温度

ブラインドを併用することで,内ガラス表面温度は,ほぼ室

内温度に近くなり,貫流熱負荷量の低下はもとより,ガラス

面からの輻射量も下がる.

内ガラス 平均表面温度 26.2[℃]

窓通気量 100 CMH/m ブラインド 開 15:30

窓通気量 100 CMH/m ブラインド0° 15:30

内ガラス 平均表面温度 24.4[℃]

図-13 AFW 除去熱量

AFW では排気ファン動力のみで,通 常の FCU 等のペリメーター空調機能力に相当する熱負荷を除去することが確

認できた.また,除去熱量は負荷状況に応答するため,システムとしての制御も不要である.

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5.可視化実験

シミュレーションと可視化実験で流れの様子を示す.

図-14 夏季 ブラインド開 の気流の様子

図-15 夏季 ブラインド全閉 の気流の様子

ブラインドの手前で小さな渦が

確認できる.奥行き幅や内ガラス

との距離などによっては,ブライ

ンドを揺らす原因となることも懸

念される.

各図左側はシミュレーションの結果,右図は可視化実験の

結果である. 両者ともほぼ一致しており,窓面に沿う流れ

が形成されていることが伺える.

図-16 冬季 ブラインド開 の気流の様子

図-17 冬季 ブラインド全閉 の気流の様子

図-18 冬季 AFW ファン停止時 コールドドラフトの様子

内ガラス

スリット

吸込口 外ガラス

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6.シミュレーションの結果

AFW 廻りの温熱環境と気流性状の計算結果を図 19~22 に

示す.この時のAFW排気温度・AFW吸込み温度・除去熱量・

除去率・外ガラス面近くの風速(外ガラス面から法線方向

30mm,床レベルより高さ1,300mm のポイント)を表-4に示す.

ただし除去熱量は次式により求めた.文[3]

qp = cρV ×(θin - θout)・・・・・・(1)

ここに,

qp : 除去熱量 [W/m]

c : 空気比熱 [J/(kg・℃)]

ρ : 空気密度 [kg/m3]

V : AFW 窓通気量 [m3/(m・s)]

θin : AFW 吸込み温度 [℃]

θout : AFW 排気温度 [℃]

また,除去率は除去熱量を外ガラスからの侵入熱量(夏期は日

射も含む)で除した値である.

シミュレーションの結果をまとめると,

・夏期ブラインド全開の場合,ペリメータ近傍の床面は日射の

影響を受けるが,窓面からの熱負荷を抑え,全体として,上下

温度差の少ない環境が形成されている.

・夏期ブラインド゙全閉の場合,日射を遮断し,AFW 内で外部

からの熱負荷を,効果的に排気している.

・冬期,窓面での冷却効果に対しても,AFW 内で窓面に沿う

流れが形成されている.

・冬期ブラインドを使用した際にも,AFW 内で窓面に沿う流れ

が形成され,外部負荷の除去がなされている.

表-4 シミュレーションのパターン

速度ベクトル 速度分布 (m/s) 温度分布 (℃)

図-19 夏期の温熱環境・気流性状 (ブラインド開)

ペリメータ近傍の床面は日射の影響を受ける.AFW 中空層は

外気温度より高くなり,結果的に貫流熱は非常に小さくなるか,

或いは負荷を除去する方向となる.

速度ベクトル 速度分布 (m/s) 温度分布 (℃)

図-20 夏期の温熱環境・気流性状 (ブラインド全閉)

日射負荷はAFW内にとどまり中空層の上部は非常に高温とな

るが,そのまま排気され室内空気との混合による熱ロスがほ

とんどみられない.

表-5 シミュレーションの結果

Case 条件 ブラインドの状態

1 開

2 夏期

スラット角 0°(全閉)

3 開

4 冬期

スラット角 0°(全閉)

Case 排気温度

θout 吸込温度

θin 除去熱量

qp 除去率

窓面風速(FL+1,300)

[℃] [℃] [W/m] [%] [m/s]

1 37.5 29.9 252 27.4 0.67

2 45.6 26.8 624 60.9 0.50

3 18.2 21.8 -118 49.7 0.68

4 19.1 23.5 -145 59.3 0.72

0.25

0.25

0.25

0.25

0.25

0.25

0.5

1.0 26.0

25.0 30.0

36.0

0.2

1.0

0.2

0.2

0.4

28.0

26.0

32.0

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図-21 冬期の温熱環境・気流性状 (ブラインド開)

AFW内の窓面に沿う流れは,内ガラス下部のスリットから上

部吸込口へいく間に,徐々に外部からの貫流熱負荷を拾っ

て冷やされていく.

図-22 冬期の温熱環境・気流性状 (ブラインド全閉)

ブラインドを使用することで窓面に沿う流れ,の窓ガラス面

での上昇効果を妨げることが懸念されたが,本件ではむし

ろ AFW の窓側中空層の奥行きが狭くなることにより,窓面

に沿う流れは速くなり,同時に中空層がブラインドにより隔

てられるので断熱効果が上昇している.

おわりに

シミュレーションの内容と,今回のように複雑な外部要因

に影響が見込まれる実測データを,単純に数値比較するこ

とは実際,非常に困難であった.しかし,実測データの示す

傾向はシミュレーション結果の示す傾向と一致する点が多く,

現象を理解する上で,非常に有意義であった.

謝辞

本物件の実測が無事終了致しましたのも,建設省関東地

方建設局 (現 国土交通省関東地方整備局 ) の方々,工

学院大学 大橋教授,及び 学生の皆さんのご協力・ご尽力

によるものと深く感謝し,この紙面を借りまして厚く御礼申し

上げます.

参考文献 1)井上宇市,石野久彌,郡公子,他:ペリメータレス空調の評価手法

に関する研究(第 1-5 報), 空気調和・衛生工学会学術講演会講演論文集, pp.217-225, 1991, pp.353-357, 1992

2)郡公子:ペリメータレス空調のための窓システムの評価に関する研究 第 1 報 窓側放射環境の評価法,日本建築学会計画系論文集,第 539 号, pp.7-13, 2001.1

3)大橋一正,関五郎,西川豊宏:空気流通のある窓面の熱的特性に関する実験的研究 その 2, 空気調和・衛生工学会論文集, No.68, 1998.1

4)H11 年度版 建設大臣官房長官庁営繕部監修 グリーン庁舎計画指針及び同解説, p.120

5) 山中,水谷,阿部,山口 他:庁舎における地球環境負荷削減手法の評価(第1~6 報), 空気調和・衛生工学会学術講演会講演論文集, 2000 年,2001 年

0.25

0.25

0.25

0.5

1.0

24.0

22.5

21.0

10.25

0.25

0.25

0.5

1.0

24.0

23.5

20.5

20.0 15.0