復興リハビリ事業 写真集 - JICA8/8 復興リハビリ事業 写真集 Road Conditions...

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7/8 復興リハビリ事業 写真集 Road Conditions after Rehabilitation Plaza Area Overview of Hospital Road Overview of Parking Lots and Bus Stop of Hospital Road Median Strip with Planting of Hospital Road Lighting Test of Street Lights on Hospital Road Transformer & Low Tension Panel for Street Lighting System Type-A (without cover) Side Ditch

Transcript of 復興リハビリ事業 写真集 - JICA8/8 復興リハビリ事業 写真集 Road Conditions...

  • 7/8

    復興リハビリ事業 写真集

    Road Conditions after Rehabilitation

    Plaza Area Overview of Hospital Road

    Overview of Parking Lots and Bus Stop of Hospital Road

    Median Strip with Planting of Hospital Road

    Lighting Test of Street Lights on Hospital Road

    Transformer & Low Tension Panel for Street Lighting System

    Type-A (without cover) Side Ditch

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    復興リハビリ事業 写真集

    Road Conditions after Rehabilitation

    Median with Stone Masonry Plantation Pot

    on Hospital Road

    Median with Stone Masonry Plantation Pot

    on Hospital Road

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    目次

    序文 伝達状 調査対象地域図 復興リハビリ事業位置図 復興リハビリ事業写真集

    Page

    第1章: 序論 ............................................................................................................................... 1

    1.1 調査の背景.................................................................................................................... 1 1.2 調査の目的.................................................................................................................... 1 1.3 短期復興プログラム.................................................................................................... 1 1.4 復興リハビリ事業........................................................................................................ 3

    第2章: 復興リハビリ事業の実施 ........................................................................................... 4

    2.1 教育分野........................................................................................................................ 4 2.2 道路分野........................................................................................................................ 13

    第3章: 事業実施上の制約とその対処策および教訓 ........................................................... 21

    3.1 共通課題........................................................................................................................ 21 3.2 教育分野........................................................................................................................ 22 3.3 道路分野........................................................................................................................ 24

    第4章: 学校による教育環境改善プロジェクト(ソフトコンポーネント)................... 27

    4.1 プロジェクトの背景.................................................................................................... 27 4.2 プロジェクトの範囲.................................................................................................... 27 4.3 プロジェクトの実施.................................................................................................... 28 4.4 プロジェクトの成果・実施中の制約要因................................................................ 32 4.5 プロジェクトの評価.................................................................................................... 32

    第5章: 復興リハビリ事業の総合評価 ................................................................................... 37

    5.1 教育分野........................................................................................................................ 37 5.2 道路分野........................................................................................................................ 40

  • マザリシャリフ市復興支援調査 (URSP-MZR)

    1

    第1章 序論

    1.1 調査の背景

    アフガニスタン国では、2001 年 12 月に長期にわたる紛争に終止符が打たれ、暫定統治機構が発

    足した後、和平・復興へのプロセスが進展している。我が国政府も、緊急人道支援の見地より資

    金援助を行うことを表明し、2002 年 4 月以降、国際協力機構1(JICA)はカブール及びカンダハ

    ールにおいて緊急復興支援調査(URSP: Urgent Rehabilitation Support Programme)を実施してきた。

    そして 2003 年 11 月、JICA はさらなる緊急復興支援調査を実施する可能性を探るため、地方展開

    総合調査をマザリシャリフ市で行った。

    マザリシャリフ市はバルフ州の州都であり、アフガニスタン国北部の拠点都市の一つでもあるが、

    長年の紛争の影響により都市インフラの老朽化と損傷が著しく、それに対する復興支援はまだ充

    分とは言えない。そのような状況の下、上記調査で市内道路及び初中等学校整備の緊急性が高い

    ことが確認されたことを受けて 2004 年 1 月に地方展開総合調査(その2)が実施され、緊急復興

    支援調査(URSP-MZR)をマザリシャリフ市で実施することが、JICA 側とアフガニスタン国側との

    間で確認された。

    1.2 調査の目的

    本調査の目的は、アフガニスタン国北部地域における社会経済面の復興及び発展を支援すること

    であり、具体的には、マザリシャリフ市において市内道路整備と学校教育改善のため、「短期復興

    プログラム(2005~2009 年)」の策定と「復興リハビリ事業」を実施する。

    1.3 短期復興プログラム

    短期復興プログラムは、2005 年から 2009 年までの 5 年間を想定したマザリシャリフ市の道路整

    備と学校教育改善のための具体的施策を提案するものである。短期復興プログラムの全体目標、

    目的、および提案プロジェクトは下記のとおりである。その詳細については、2005 年 5 月に提出

    した最終報告書 I を参照されたい。

    (1) 教育分野

    プログラムの最終目標

    • 初等教育の完全普及

    • 全ての児童・生徒への、質の高い初中等教育の提供

    • 持続可能な学校運営の達成

    1 当時は国際協力事業団。2003 年 10 月より独立行政法人国際協力機構へ移行。

  • 最終報告書 II 和文要約

    2

    プログラムの目的

    • 学齢児の就学促進(=量的拡大)と児童・生徒の学習への興味を持続させるための、学校施設の整備

    • 教育活動の質向上のための、教師の教授能力の強化

    • 学校の運営能力の強化

    • バルフ州教育局の行政能力の強化

    提案プロジェクト

    E01: 既存校(小、中、高校)の施設の増設

    E02: 市内の無小学校地区への小学校新設

    E03: バルフ大学教育学部の施設整備

    E04: 現職教員研修と国内研修の導入

    E05: 学校運営改善のための研修

    E06: 周辺コミュニティと学校の協力による教育環境改善計画(多目的ルームの活用)

    E07: バルフ州教育局の情報管理能力強化

    E08: 学校維持管理システムの確立のためのバルフ州教育局のキャパシティ・ビルディング

    (2) 道路分野

    プログラムの最終目標

    • 地域経済活動の活性化

    • 住環境の改善

    プログラムによる改善対象

    • 損壊を受けている既設舗装道路のリハビリテーション

    • 未舗装道路の舗装化

    • 主要交差点での交通渋滞解消

    • 本来具備されている道路有効幅の確保

    • 雨期(冬季)における道路・歩道のぬかるみ状況の解消

    • 交通の安全性向上

    • 乾期(夏季)に顕著な、砂塵を主要因とする大気汚染の解消

    • 公共の場での植栽の拡充

  • マザリシャリフ市復興支援調査 (URSP-MZR)

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    • 例年発生する洪水への防御対策整備

    提案プロジェクト

    R01: 現道のリハビリテーション事業

    R02: マザリシャリフ市役所道路・函渠課キャパシティ・ビルディング

    R03: 交通警察キャパシティ・ビルディング

    R04: ガス供給網開発調査

    R05: 道路側溝排水網開発調査

    R06: マザリシャリフ市役所清掃・緑化課キャパシティ・ビルディング

    1.4 復興リハビリ事業

    調査団は、アフガニスタン国側カウンターパートとの協議及び詳細な現地調査を経て、道路 2 路

    線と学校 7 校を復興リハビリ事業サイトとして選定し、同事業の設計(建設・調達計画と事業費

    積算を含む)と入札図書の準備を 2004 年 12 月までに終了した。引き続き 2005 年 1 月にローカル

    入札(LCB)にて施工業者を選定し、JICA の承認を経て、調査団による施工監理のもと 2005 年 2 月

    に工事が開始された。工事は大きな問題も遅れもなく順調に進み、2005 年 12 月には道路、2006

    年 3 月には学校の工事が完了した。

    事業サイトは以下の通りである。

    (1) 教育分野

    • ボクティ女子中学校

    • シュルタクザール中学校2

    • マウラナ・ジャラルディン高校

    • メルヴァリ高校

    • コラソン女子高校

    • セタラ女子高校

    • ダキキ・バルヒ男子高校

    (2) 道路分野

    • マスゥード道路

    延長:1.8km、対向6車線、道路用地幅 60m(歩道・中央分離帯を含む)

    • ホスピタル道路

    延長:0.7km、対向 4 車線、道路用地幅 60m(歩道・中央分離帯を含む)

    2 シュルタクザール中学校は、本調査開始時は小学校だったが、復興リハビリ事業による学校整備に対応して中学校に格上げされた。

  • 最終報告書 II 和文要約

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    第2章 復興リハビリ事業の実施

    2.1 教育分野

    2.1.1 対象校の選定と現状確認

    復興リハビリ事業の対象候補校は、2004 年 1 月の JICA 地方展開総合調査団がマザリシャリフ市

    を訪れた際に、バルフ州教育局側より示された。その後、URSP-MZR 調査団が 2004 年 6 月に現

    地入りし、マザリシャリフ市における初中等学校教育全体(小・中・高校計 59 校)の現状調査、

    対象候補校(7 校)の現状確認、バルフ州教育局との協議を行った。その結果、教育局が選定し

    た 7 校は、復興リハビリ事業の対象として妥当であると判断された。

    バルフ州教育局による候補校の選定は、以下の基準により行われていた。

    • 自前の学校施設を持っていない学校を優先する。

    • 教育におけるジェンダー平等の視点から、女子校を優先する。

    • 今までにメインの教室棟の建設への支援を受けたことがない学校を優先する。

    • 新しい施設を建設するのに充分な敷地を持った学校を優先する。

    なお、調査団はさらに詳細な候補校の現状把握に努め、復興リハビリ事業の対象としての妥当性

    を確認した。7つの対象校(学校名は第 1 章参照)の現状とニーズは下記のとおりである。

    • いずれの学校も教室が絶対的に不足しており、教室の増設が不可欠である。

    • マザリシャリフ市全体の傾向として、初等教育レベルに比べ、中等教育レベルでは就学者数、とくに女子学生の数が激減する。これは、女子校の整備が不十分であることが一因と考えら

    れるため、女子校への支援は妥当である。

    • コラソン女子高校とボクティ女子中学校は、全く校舎を持たないため、男子校に間借りしている。バルフ州教育局は、この 2 校の建設用地を確保済みである。

    • メルヴァリ高校(共学)については、州教育局が既存施設の隣に建設用地を確保済みであり、同地に新しい学校施設が建設された場合、既存校は男子校に、新学校は女子校とする予定で

    ある3。

    • シュルタクザール中学校は、個人の家を借りて授業を行っており、施設整備の必要性・緊急性が最も高い。建設用地は確保済みである。

    • セタラ女子高校とダキキ・バルヒ男子高校は、それぞれ固有の施設を所有しつつも同じ敷地

    3 復興リハビリ事業終了時点で、この予定は延期されたことが判明した。同校は当面、現状通り 1つの共学高校として運営され、州教育局が新しい校長の任命や教職員の配置などの準備を完了した時点で男子校と女子校に分

    離される。

  • マザリシャリフ市復興支援調査 (URSP-MZR)

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    に同居しており、アフガニスタンの慣習上この状況はあまり好ましいとはいえない。敷地面

    積は充分にあるので、施設を新設すると同時に男子校と女子校をあいだに塀を建て、女子学

    生が男子の目を気にしなくてよいようにすることが必要である。

    • マウラナ・ジャラルディン高校では、国際移住機関(IOM)が塀、校門、既存教室棟のリハビリ、トイレ棟の建設を支援している。しかし、新たな教室棟の建設については、必要性が高

    いにもかかわらず支援は受けていない。同校の敷地面積は、新たな施設建設に十分な広さが

    ある。

    なお、妥当性確認後、復興リハビリ事業の準備中に新たに配慮が必要な事情が明らかになった。

    • ボクティ女子中学校の建設予定地は事実上公共地として周辺住民が自由に活用しており、一部の住民が学校建設に反対している。この問題の解決には時間を要すると考えられる。

    • ボクティ女子中学校の建設予定地が当初より縮小された。理由は、隣接する道路が都市計画道路として幅 12 メートル確保する必要があるとのマザリシャリフ市役所からの要請による。

    これにともない、同校の新しい教室棟の形状は、当初のU字型からI字型に変更する。

    • コラソン女子高校の建設予定地の一角に不法占拠者がおり、直ちに立ち退くとは考えにくい。しかし、不法占拠の一角を除いても施設建設には充分な敷地面積があるので、不法占拠問題

    には触れないこととする。

    2.1.2 設計方針・設計概要

    (1) 設計方針

    以下の設計方針は、教育省の設計基準、現地の資材と労働者の活用、その他現地の事情に配慮し

    たものである。

    • 建物のレイアウト:教育省の基準に則り中庭を配置し、様々な戸外活動に対応できるレイアウトとした。

    • 多目的ルーム:調査団は、対象校の教員、児童・生徒、保護者、および州教育局より意見聴取を行う機会を持ったが、いずれの関係者からも、普通教室ですら不足している状況にもか

    かわらず、図書室や理科実験室、会議室といった授業の質・内容を充実させる施設の必要性

    を訴えられた。しかし、各々の学校の希望やニーズは必ずしも同じではないので、調査団は

    新設する教室棟に普通教室より広い教室を1室設け、各校が自由に使用法を考えることので

    きる多目的ルームとした。

    • 勾配屋根の採用:屋根についても教育省の基準により勾配屋根を採用した。これにより夏の自然換気や雨水防水の容易さを確保した。

    • 建設材料の選択:復興リハビリ事業において、現地の建設資材と労働力を出来る限り活用することは、地元経済の活性化という意味でも重要である。調査団は、現地の建設材料や労働

  • 最終報告書 II 和文要約

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    者の質および調達可能性を精査し、現地工法・技術にあったシンプルな設計とした。

    • 気候への配慮:マザリシャリフ市の気候は夏が厳しく、カブールなどと比べて冬は穏やかである。従って、夏の猛暑により注意をはらった設計とした。

    (2) 施設設計

    教育省の設計基準にも配慮し、各学校には以下の施設を整備することとした。

    • 耐震性能を満足する鉄筋コンクリート造

    • 標準サイズの普通教室:教育省標準の 6 メートル × 8 メートルとする。

    • 黒板:各教室に 1.5 メートル × 3 メートルの黒板を設置する。

    • 木製のボックス棚:全ての教室に生徒用の棚を設置。特に、女子生徒がブルカ入れとして活用することが想定される。

    • 多目的ルーム:普通教室より広め(10 メートル × 7 メートル)の教室を 1 室設置。教員研修、保護者会などを行う会議室として、あるいは図書室、理科室としてなど、様々な使い方

    が想定される。

    • 教員室:一般教員用の部屋と校長室を設置する。

    • 保健室

    • 二重天井:多目的ルーム・教員室には断熱性能を高める為、二重天井を採用する。

    • 家具:各部屋に、その用途に適合する家具を設置する。

    • 中庭:3方を教室に取り囲まれた中庭を採用し、フラッグポールと外部照明を設置する。

    • スロープ:身体障害者に配慮して、教室棟およびトイレ棟の階段部分にスロープを併設する。

    • トイレ棟(水洗および浄化槽付き):現状の1シフトの児童・生徒数、教員数に応じた数の個室を備えたトイレ棟を建設する。

    • 水供給設備:蛇口付きの水場とトイレへ充分な水を供給するため、深井戸と給水塔を設置する。

    • 室名札:学校の入口や教室に設置する。

    • 守衛小屋と塀:学校敷地内の安全の確保および外部の目からの遮断(特に女子校)のため、周囲に 1.8 メートル高の塀を建てる。また、校門の内側に守衛小屋を設置する。

    2.1.3 施設規模の算定

    各学校の建設教室数を決めるにあたり、調査団は、以下の判断基準を設定した。

    • 定められた完成・引渡し予定時期(2006 年 3 月)の遵守

  • マザリシャリフ市復興支援調査 (URSP-MZR)

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    • 建設予定地の広さ・形状

    • 現状の児童・生徒、教員の数

    本来、児童・生徒数は建設する教室の数を決める上で最も重要な要素であるが、本復興リハビリ

    事業においては最も優先度の低い判断基準となった。その理由は以下のとおりである。

    • 市外からの人口流入によってマザリシャリフ市の人口は増え続けており、正確な数字は把握されていない(30 万人とも 50 万人以上とも言われている)。従って、将来の児童・生徒数

    を推計するのは不可能であり、教室数の設定には現在の児童・生徒数を参考にするより方法

    がない。

    • このように生徒数が極めて流動的な状況で、対象校の教室数をいたずらに増やすと児童・生徒がこれらの学校に集中する恐れがあり、良好な教育環境が確保できない恐れがある。また、

    市内の他の学校とのバランス上も、好ましくない。

    最終的に、整備される施設の規模は、以下のように設定された。

    表 2.1 復興リハビリ事業により整備される施設の規模

    学校名 建設教室数総床面積

    (平方メートル)

    トイレ棟*

    (カッコ内は総ブース数)

    塀の長さ**

    新設 / 既存

    (メートル)

    ボクティ女子中学校 12 954 2

    (18) 326/0

    シュルタクザール中学校 10 826 2

    (12) 118/99

    マウラナ・ジャラルディン高校 16 1,210 3

    (18) 0/126

    メルヴァリ高校 16 1,210 3

    (18) 170/257

    コラソン女子高校 16 1,210 4

    (24) 362/126

    セタラ女子高校 14 1,082 3

    (18) 258/74

    ダキキ・バルヒ男子高校 12 946 2

    (12) 258/75

    合計 96 7,438 19

    (120 Booths) 1,492/757

    出典: URSP-MZR 調査団

    記: * ボクティ女子中学校以外は、1トイレ棟あたり 6ブース設置(ボクティ校は 9ブース)

    - 必要ブース数は、1.2 教室あたり 1 ブースで算出(カンダハールの URSP を参考)し、各学校の既

    存のブースを差し引いた数が新設するブース数となる

    ** 各校の塀の総延長は、新設と既存の数値を足したものである

    2.1.4 業者選定

    調査団は、2005 年初頭より工事を開始するために、ローカル入札(LCB)の準備を行った。調査団

    は設計・入札図書を作成し、ショートリストされた 10 社に配布した。ショートリストされたのは

  • 最終報告書 II 和文要約

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    カブール、又はマザリシャリフで営業しているアフガニスタンの建設業者、及びアフガニスタン

    での建設工事経験のある本邦業者である。

    最終的には、10 社のうち 7 社が入札し、北野建設が工事を受注した。

    2.1.5 復興リハビリ事業の実施

    建設工事の主要工事項目は以下の通り。

    • 準備・仮設工事

    • 整地工事

    • 本体工事

    • 新築した施設周辺の舗装・造園工事

    • 取付道路の建設 (シュルタクザール中学校)

    • 雨水排水設備の建設

    • トイレ棟と守衛小屋の建設

    復興リハビリ事業の実施にあたり、調査団は、常駐の日本人技術者 1 名と現地技術者 3 名から成

    る施工監理チームをつくった。各技術者の役割と、チーム構成は以下のとおりである。

    日本人技術者 1. JICA アフガニスタン事務所との連絡 2. 施工請負業者との定例会議の開催 3. 主な建設材料試験の監督

    現地技術者 1. 全体工程監理 2. 建築専任1名 3. 設備専任1名

    図 2.1 施工管理チームの構成

    なお、下に列記された項目が、チームが施工監理として実際に行った作業である。

    • 工事スケジュールの検証

    URSP-MZR 施工管理チーム(教育分野)

    常駐技術者(日本人)

    現地技術者(1) 現地主任技術者 現地技術者(2)

  • マザリシャリフ市復興支援調査 (URSP-MZR)

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    • 建設資材の選択、試験および承認

    • 一括調達と Mock-up Room(実物完成教室)の設置

    • 生コンクリート製造プラントの建設支援

    • 施工請負業者との定例会議と、州教育局への定例報告

    • 日々の工事現場での監理

    • 技術移転と OJT

    • 工事中の周辺住民の協力醸成

    • 季節・気候への配慮

    これらのうち、本復興リハビリ事業において特徴的だった作業について、以下に説明する。

    • 一括調達と Mock-up Room の建設

    事業実施にあたっては、複数の国から建材を調達する必要があった。例えば、鉄筋はウクライナから、セメントはウズベキスタン、アルミサッシと家具は中国、ペンキはパキスタン、設備機器はイランからなどである。施工管理チームは、これらの全てを、施工業者に7校分一括調達させて建設予定地に運び込ませるよう手配した。これにより、建材の質と値段の管理、工程管理が可能となり、結果として調達はスムーズに行われた。

    また施工管理チームは、施工業者に Mock-up Room を作るよう要求し、セタラ女子高校に家具と内装まで完成させた Mock-up Room が作られた。これは、7 校で工事を実際に行っている地元業者にとって非常によい見本となったと同時に、7 校の教職員や州教育局職員に対して完成イメージを提供するものともなった。

    写真 2.1 セタラ女子高校に作られた Mock-up Room

    • 季節・気候への配慮

    日本の会計年度との関係で、多くの日本の ODA プロジェクトは 2 月もしくは 3 月までに終了する必要がある。このことは、現場の建設条件との兼ね合いにおいて事業実施上の課題であった。

    アフガニスタン北部地域では、冬季は非常に湿度が高い。従って、塗装工事を始める前の下地が完全に乾くまでに思いのほか時間を要し、3 月の工事完成が厳しい面があった。一方、初春(2~3 月)は降雨が多く暖かくなり始めるため、植栽には最も適した時期であった。

  • 最終報告書 II 和文要約

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    工事の完成

    1) 落成式

    事業の完了に先立ち、2006 年 1 月にセタラ女子高校において最初の落成式が行われた。主要な出席者は、バルフ州知事、州教育局長、マザリシャリフ市長、日本大使館一等書記官、JICA アフガニスタン事務所長などである。

    写真 2.2 落成式

    2) 最終検査

    施工監理チームは、2006 年 2 月 13 日から 15 日にかけて、ボクティ女子中学校以外の6校の最終検査を実施した(ボクティ校については同月 28 日実施)。検査で見つかった駄目工事リストを作成し、引渡までに完成させるよう施工業者に指示した。

    3) 引渡し式

    完成した施設の引渡し式は、JICA マザリシャリフ事務所代表の出席のもと、ボクティ女子中学校以外の6校については 2006 年 2 月 21 日から 25 日にかけて、ボクティ校については 3 月 5 日に、1 校ずつ執り行われた。

    工事実施中に行った軽微な設計変更

    復興リハビリ事業の実施中に行った軽微な変更は以下の通り。

    • 建設予定地のゾーニング:施設の建設位置については特に、テント教室のためのスペースの確保、校庭の広さや形状、将来的な施設拡張の可能性などを慎重に考慮して決定した。

    • 水場の位置:水場の位置は、各学校の深井戸の場所、学校敷地内の他の施設配置、生徒の動線などを考慮したうえで、最終的に決定された。

    • トイレ棟の位置:トイレは教室棟の近くにあったほうが便利であるが、臭いや景観を考えると、必ずしも近くが良いとは限らない。利便性、美観、既存のトイレ棟との位置関係などを

    総合的に考えて、学校側とも相談の上、各学校のトイレ棟の位置を最終決定した。

    • 中庭の舗装:中庭は、様々な戸外活動が可能となるよう、施工業者の協力を得てコンクリー

  • マザリシャリフ市復興支援調査 (URSP-MZR)

    11

    ト舗装することとした。幾つかの学校では、復興リハビリ事業後もテントを教室代わりにし

    なければならないところがあるため、土の校庭のかわりにコンクリートの中庭にテントを建

    てることも想定した。

    • 教室の壁:Mock-up Room に二種類の塗装を施し、明るさや統一感を勘案して色を決定した。

    • 外照明:学校での活動と安全上の目的から、照明を設置することとした。

    • 排水設備:冬季の雨による校庭の泥濘を極力防ぐ為に、雨水排水設備を建設した。

    2.1.6 施設の維持管理

    (1) 維持管理の基本方針

    適切な施設・設備の維持管理は学校環境を良好に保つだけでなく、修理・修繕の費用低減にも寄

    与する。また良好な学校環境を維持することは、教員の指導効率および児童・生徒の学習効率を

    高める上でも必須である。

    維持管理活動は、以下の 3 タイプに分類される。

    • 日常管理:施設・備品の適切なとりあつかいと日常的な手入れ。掃除、部品の調整・交換などを含む。

    • 事前対策:施設・備品の損壊を予防するための対策。例としては、家具、ドア、窓などの釘やちょうつがいがなくなっていないかのチェック、壁の傷や落書きの速やかな補修。

    • 緊急補修:より深刻な損壊を予防するための緊急対処。例えば、屋根の雨漏りが発生した場合、一時的な修理でしのぐ一方で、根本的解決のための補修を行うなど。

    維持管理の種類や程度、必要なリソースの数量は、以下の側面に左右される。

    運営面

    • 学校の運営全体から見た、維持管理の優先度

    • 維持管理担当者の技術力・管理能力

    • 維持管理作業を実際に行う上で必要な手続き

    財政面

    • 予算配分

    • 政府やドナー、NGO からの支援の有無

    • 維持管理・補修作業発生時の必要現金の有無

    • 維持管理に必要な資機材、労働力にかかるコスト

  • 最終報告書 II 和文要約

    12

    技術面

    • 材料・設備の経年変化による適正維持管理技術

    • 過去に行われた維持管理作業の内容と質

    • 信頼のおける職工と適切な材料の入手可能性

    (2) 施設引渡し後の施設の維持管理

    マザリシャリフ市内の学校の現状

    市内の学校の多くは基本的な施設備品(トイレ、水、電気、電話、机・椅子など家具類)に事欠

    いているため、本格的な維持管理や補修は行われていないのが実状である。

    教育省の維持管理システム

    学校レベルで日常的な施設備品の維持管理や小規模修理が行われていない原因の一つには、教育

    省における学校維持管理に必要な予算・資機材の欠如がある。調査団が復興リハビリ事業の施設

    設計をするにあたって、出来る限り維持管理が簡単かつ最小限ですむよう配慮した理由もここに

    起因する。

    しかし、厳しい予算等の制約の中で、バルフ州教育局は各学校に掃除夫と守衛を配属し、職員に

    よる定期的なモニタリングを行っている。

    復興リハビリ事業対象校の維持管理

    施工管理チームおよび調査団は、7 校の校長を中心とした教員達と、完成後の施設の維持管理に

    ついて何度かミーティングを行った。施設の完成時には電気・給排水設備の日常的な運転・点検

    方法について訓練を行った。

    施設の維持管理に関しての調査団から学校への提言は、以下のとおりである。

    • 児童・生徒が学校の設備や備品は大切に使い、後輩達に引き継がなければいけないという意識を持つように、各学校で教育する。

    • もし学校の設備・備品(窓ガラス、家具など)を壊した場合、その壊した人間が修理・取替えを負担することとする。

    • 施設の修理コストはバルフ州教育局が予算措置を講ずる。ペンキ塗りなどは、教員の監督の下、生徒が行う。

    • 各学校は、学校運営や施設の維持管理を支援するための組織(保護者会やコミュニティの学校支援組織)をつくる。

  • マザリシャリフ市復興支援調査 (URSP-MZR)

    13

    維持管理費用

    年間に必要とみられる維持経費は、一校あたり以下の通り。

    • 年間維持費:200~300 US$

    • 揚水ポンプと発電機の定期検査と交換部品費:30 US$

    • 小規模修理費:150~300 US$

    (3) 将来の運営維持管理への課題

    維持管理のためのグループによる運営

    現在マザリシャリフ市には約 60 の学校があり、これらに対してバルフ州教育局の庶務課が施設維

    持管理にかかるサービスを行うことになっている。施設の維持管理を効果的・効率的におこなう

    ためには、学校側と行政側のあいだでの情報共有が必要である。

    調査団は、グループ支援システムを提案する。例えば、復興リハビリ事業の対象 7 校、或いは近

    隣の学校同士が 1 つのグループを形成し、毎年幹事校を 1 校決め、その幹事校が維持管理にかか

    る調整、情報提供、維持管理に必要な備品の一括購入・管理を行うのである。幹事校は、グルー

    プ校と行政側の橋渡しも務める。

    バルフ州教育局のキャパシティ・ビルディング

    学校施設の適切な維持管理のためには、バルフ州教育局の機能強化が不可欠である。したがって、

    調査団は URSP-MZR にて策定した短期復興プログラムの中で、学校施設維持管理システム確立の

    ための州教育局のキャパシティ・ビルディングを優先プロジェクトとして提案した。これを踏ま

    え、調査団は州教育局に対して、NGO やドナー機関に同提案プロジェクトへの支援を要請するこ

    とも提言した。

    2.2 道路分野

    2.2.1 復興リハビリ事業対象道路の選定

    (1) 短期復興プログラムにおける改修候補道路

    調査団は、短期復興プログラムで提案した既存道路改修事業で、改修候補道路を下記の4つの評

    価基準に基づき選定した。

    • 道路の重要性 :道路規格、交通量

    • 改修のインパクト :現況舗装破損状況、渋滞緩和効果

    • 改修の貢献度 :市中心部へのアクセス改善度、公共バス路線との一致

  • 最終報告書 II 和文要約

    14

    • 整合性 :土地利用との整合性、市役所からの提案との整合性

    上記に加えて、市役所、公共バス会社、ステークホルダー・ミーティングを通じた住民からの意見

    を参考に、短期復興プログラム(2005 年から 2009 年までの 5 ヵ年)の改修候補道路を提案した。

    0 1 2 km

    N

    Shrine

    凡例

    道路改修工事 -提案実施時期:1年次(2005):2年次(2006):3年次(2007):4年次(2008):5年次(2009)

    図 2.2 短期復興プログラムの改修候補道路

    (2) 復興リハビリ事業における対象道路の選定

    短期復興プログラムにおいて、初年度(2005 年)に改修工事を実施することを提案したのはマス

    ゥード道路とホスピタル道路である。この2つの道路は、市内で最も重要な道路であるにもかか

    わらず、長年の紛争のため、維持管理作業が行われていなかった。そのため、同道路の舗装には

    深刻な破損が生じている。調査団は、このマスゥード道路とホスピタル道路の改修工事を本復興

    リハビリ事業として 2005 年に実施した。

    2.2.2 設計方針

    市役所との協議および現地調査を通じ、調査団は下記の復興リハビリ事業の設計方針を設定した。

    • 日本の援助による道路改修事業として適切な設計基準であること。

    • 交通事故を減少させ、また、歩行者の安全性を改善すること。

    • 将来交通量に対してスムーズな交通を確保できること。

    また、交通安全施設の検討に際し下記施設の導入を検討した。

    • 路面表示 ✓

    • 道路標識 ✓

    • 交差点信号機

    • 駐車設備 ✓

  • マザリシャリフ市復興支援調査 (URSP-MZR)

    15

    • 道路照明 ✓

    • その他関連施設 ✓

    検討の結果、上記のうち✓記号を付した交通安全施設を復興リハビリ事業に採用した。なお路面

    表示は、高い視認性の確保ならびに耐久性を保持するためにガラスビーズ入り塗料を用い加熱溶

    融式ラインマーカーで施工する。道路照明に関しては電力事情が悪いこと(供給電圧が低い、停

    電が多い)を考慮して太陽電池利用による照明設備導入を検討したが、既存製品は高価であるこ

    と、照度が低く設計照度が得られないこと、市役所が商用電源利用の道路照明を希望し、市役所

    が課せられる電力料金を負担することに問題が無い事を確約したため、商用電源利用の照明設備

    導入とした。また本事業が短期復興プログラムの一環として実施されることに鑑み、交差点信号

    機の設置を本事業内に含める事は見送られた。

    2.2.3 設計概要

    (1) 設計の前提条件

    本復興リハビリ事業では下記の前提条件を踏まえて設計を行った。

    • 沿道の民家、建物、樹木の撤去は可能な限り行わない。

    • UNHABITAT(国連人間居住計画)による既施工の側溝と中央分離帯の撤去は可能な限り行わない。

    • 舗装工、側溝工、その他関連工の改修対象範囲は、既設道路幅の内側を対象とする。

    • 舗装設計は将来交通量を考慮に入れた設計とする。

    • 既設道路の平面線形と縦断線形を可能な限り維持する。

    (2) 標準幅員構成

    マスゥード道路とホスピタル道路の標準幅員構成は下記の通り。

    マスゥード道路

    • 車線数 :片側 3 車線の 6 車線道路

    • 車線幅 :3.50m

    • 路肩幅 :2.10m(既設側溝の位置に合わせて調整)

    • 中央帯幅 :10.30m(中央帯歩道、3.75m×2、を含む)

    • 側帯幅 :0.25m

    ホスピタル道路

    • 車線数 :片側 2 車線の 4 車線道路

  • 最終報告書 II 和文要約

    16

    • 車線幅 :3.50m

    • 路肩幅 :2.25m(既設側溝の位置に合わせて調整)

    • 中央帯幅 :17.00m

    • 側帯幅 :0.25m

    標準横断図を図 2.3、図 2.4 に示す。

    (3) 交通安全施設

    交通安全の改善のため、下記の交通安全施設を導入した。

    • 道路標識

    • 道路照明 (主要交差点部、ならびにホスピタル道路北西病院前)

    • 横断歩道 (主要交差点部)

    (4) 公共施設移設

    電力線、水道管、電話線、ガス管等の公共施設が対象道路に埋設されているため、改修工事の際

    にこれら公共施設の移設が必要となる。調査団は下記の管理機関との協議を通じて調査を行った。

    • 電線管 :バルフ州電力供給局

    • 水道管 :上水供給/水路局

    • 電話線 :電話局

    図 2.3 マスゥード道路標準横断

    図 2.4 ホスピタル道路標準横断図

  • マザリシャリフ市復興支援調査 (URSP-MZR)

    17

    • ガス管 :アフガン・ガス・マザリシャリフ支局

    2.2.4 施工業者の調達

    本改修工事を実施するため、施工業者を入札により調達した。入札参加資格は下記の条件とした。

    • マザリシャリフ市もしくはカブール市で建設業の登録を行っているアフガニスタン国籍の企業で道路工事を行う能力がある企業、もしくは、

    • アフガニスタンに事務所を持つ日本国籍の企業で、かつアフガニスタン国内で道路工事の経験を有する企業

    上記の入札参加の有資格者に対して入札の参加要請書を発行し、入札図書の配布を行った。提出

    された入札図書はまず技術審査を行い、合格した企業の入札図書に対して価格審査を行った後に、

    最低価格を提示した企業と契約交渉を行った。入札手続きのスケジュールは下記の通りである。

    • 入札への参加要請の発行 :2004 年 12 月 26 日

    • 入札図書の配布 :2004 年 12 月 27 日

    • 質問状締め切り :2005 年 1 月 6 日

    • 入札図書提出期限 :2005 年 1 月 9 日

    • 契約日 :2005 年 2 月 2 日

    • 着工命令 :2005 年 2 月 9 日

    2.2.5 復興リハビリ事業の実施

    (1) 復興リハビリ事業の内容

    本復興リハビリ事業は、延長 1.8km のマスゥード道路と 0.7km のホスピタル道路を改修するもの

    で、改修後はそれぞれ片側 3 車線の 6 車線道路、片側 2 車線の 4 車線道路となる。本改修工事に

    は材料調達、機械・プラントの搬入の他、下記を含む。

    • 既設側溝の清掃と新規の側溝工事

    • 歩道の拡充工事

    • 発生材の一部用いた舗装工事

    • 道路照明の設置

    • 公共施設の移設

    • 道路標識の設置

    • 路面表示の施工

    • 植栽工

  • 最終報告書 II 和文要約

    18

    (2) 復興リハビリ事業のスケジュール

    本改修工事は 2005 年 2 月 9 日に始まり 2005 年 12 月 25 日に完了した。本改修工事の主なスケジ

    ュールは下記の通りである。

    • 契約日 :2005 年 2 月 2 日

    • 着工日 :2005 年 2 月 9 日

    • 完工日(予定) :2005 年 11 月 5 日

    • 完工日(実績) :2005 年 12 月 25 日

    • 引渡し検査 :2005 年 12 月 28 日

    • 竣工式 :2006 年 1 月 19 日

    • 工期(予定) :270 日

    • 工期(実績) :320 日

    2005 年 12 月 25 日の完工を受けて、2005 年 12 月 28 日に引き渡し検査を市役所、調査団、施工業

    者の立会いのもとで行った。

    主要工事および引渡し検査において指摘された是正事項を終えた後、2006 年 1 月 19 日に竣工式

    が行われた。竣工式はバルフ州知事、マザリシャリフ市長、日本大使館代表、JICA カブール事務

    所代表の参加のもとに開催された。

    (3) 品質管理

    工事期間中、品質管理のために必要な品質検査の確認を行った。調査団は、仕様書に指示された

    品質と試験方法により施工業者が行う材料の室内試験と工事の現場試験の監理を行った。

    (4) 工事の完工

    工事契約書に従い、施工業者は完工した道路の引渡しを調査団へ要請した。

    • 引渡し検査:完工した工事の引渡し検査を市役所、調査団、施工業者の立会いのもと、2005年 12 月 28 日に行われた。

    • 引渡し証明:調査団は 2006 年 1 月 19 日に引渡し証明書を施工業者へ発行した。

    (5) 調査団の工事期間中の主な業務内容

    調査団は工事期間中に主に下記の業務を行った。

    • 施工業者の施工計画のレビュー

    • 日常の工事監理および検査

    • 品質管理の監督

  • マザリシャリフ市復興支援調査 (URSP-MZR)

    19

    • 定例会議と現場検査

    • 工事日程の確認と承認

    • 出来高検査

    • 支払い管理

    2.2.6 道路維持管理

    (1) 道路維持管理

    道路は地域の経済にとって最も重要な要素の一つであり、道路状態は地域の経済に影響を与える。

    道路の価値は多くの要素を含むために評価することは難しいが、洪水時やその他緊急時の道路の

    不便性による影響は容易に予測がつく。また、道路利用者は、道路が建設、改修されることによ

    り、さらに良い道路を望むことになる。そのため、道路の維持管理は十分に効果的に、かつ経済

    的な方法で行われる必要がある。

    (2) 道路維持管理計画

    本復興リハビリ事業により改修された道路をマザリシャリフ市が引き継いだ後には、マザリシャ

    リフ市は道路の状態を良好に保つために、継続的に道路維持管理を実施することが必要である。

    現況のマザリシャリフ市役所の状況を踏まえると、提案される維持管理計画は、マザリシャリフ

    市の現況の能力で実施可能なものと実施可能でないものが含まれる。

    必要な主な道路維持管理

    市役所に提案する道路維持管理計画の概要は下記の通り。

    • 道路検査 − 日常検査

    − 定期検査

    − 特殊検査

    • 道路維持管理作業 − 舗装面の補修

    − 路面表示の補修

    − 側溝の清掃および補修

    − 道路標識の補修および取替え

    • 道路維持管理記録

    道路台帳の整備を提案する。道路維持管理活動を詳細にかつ継続的に記録、更新された道路台帳は、道路維持管理計画を行う上で必須な要素である。

  • 最終報告書 II 和文要約

    20

    提案される道路維持管理

    • 日常維持管理 − 道路状態の検査

    − 道路清掃

    − 植栽への散水

    • 定期維持管理 − 側溝清掃

    − 草刈り

    • 特殊維持管理

    舗装面を長持ちさせるために下記の維持管理作業を行うことが必要である。もし、市役所が必要な人員と機械を持ち続けることが不可能であれば、現地の施工業者に外部発注することも提案される。

    − ポットホールのパッチング

    − ひび割れのシール材注入

    − 路面表示工

    • 緊急維持管理 − 予期されない災害や交通事故により道路が損傷を受けた場合は、損傷部分が拡大しない

    ように直ちに補修する。

  • マザリシャリフ市復興支援調査 (URSP-MZR)

    21

    第3章 事業実施上の制約とその対処策および教訓

    3.1 共通課題

    3.1.1 安全の確保

    カブール、カンダハール、ヘラートなどのアフガニスタンの他都市と比較して、マザリシャリフ

    市の治安は安定していたものの、事業実施中に時折地元の武装勢力間の抗争や反政府デモが起こ

    った。そのために何度か工事は中断を余儀なくされたが、これらはあくまでも起こりうる危険を

    回避するための策であり、幸いにも実際に危険にさらされたことはなかった。

    マザリシャリフ市では、UNAMA(国連アフガニスタン支援ミッション)がバルフ州に展開して

    いる国際援助機関や NGO の連絡網を確立しており、毎週のミーティングや E メールを通じてこ

    れらの団体にアフガニスタン北部の最新の治安情報が伝わるようになっていた。調査団もこの情

    報網に加わって必要な情報を得ていたが、本来二国間ドナーは UNAMA の支援の範囲外にあり、

    今回はあくまでも UNAMA の好意で支援をうけることが出来た。今後は、二国間ドナーも UNAMA

    の支援が公式に受けることが出来るよう、政策的配慮が望まれる。

    また調査団は、日本大使館および JICA アフガニスタン事務所の情報網、および JICA より供与さ

    れた携帯電話と無線機を、安全確保のために最大限活用した。更に、地元警察の協力を得た現場

    の見回り、施工業者による夜間の警備員の配置、周辺住民の協力などが、事業の安全な実施を可

    能にした。

    治安情報の収集、その信憑性の確認、および団員の安全確保のための対策を講じることは必須で

    ある。しかし、アフガニスタンにおいて日本人の存在が地元の人々の注意を集めることは避けら

    れない。したがって、警備員の配置や地元警察の協力も必要であるが、最も重要なのは市民と良

    好な関係を築くことであろう。市民に好意的・協力的に受け入れられることが、事業の円滑な実

    施と団員を危険から守る最も有効な手段と言っても過言ではない。

    3.1.2 援助調整

    マザリシャリフ市では、様々な援助機関や NGO による支援プロジェクトが実施されている。これ

    らについての情報を収集すると同時に本件調査についての情報を開示することは、互いの援助事

    業の重複を避け、効果的な協力と連携を図る上で必須であった。また、他ドナー機関や NGO との

    交流は、現地のあらゆる事情についての情報収集の上でも有効であった。よって調査団は、

    UNAMA のミーティング以外にもこれらドナー機関や NGO を個別訪問し、情報の共有と収集に

    努めた。

  • 最終報告書 II 和文要約

    22

    3.1.3 社会経済状況への配慮

    マザリシャリフ市では、ドナーの支援事業にのみならず政府及び民間主導の様々な建設プロジェ

    クトが進行している。特に、市内の人口増加にともなう住宅建設の増加は目を見張るものがあっ

    た。こういった建築ブームが、建築資材コストや労賃の高騰の一因であったと考えられる。

    こういった現象は一例であり、結果として事業の実施に大きな影響を及ぼすことはなかったもの

    の、社会経済状況の変化に注意を払うことは、事業の計画及び実施段階いずれにおいても必要不

    可欠である。そうすることによって、事業への影響を予測し、負の影響を軽減することが出来る。

    3.1.4 地元関係者・機関との関係構築

    地元関係者・機関と密接な関係を築くことは、様々な障害による事業への負の影響を最小限に抑

    え、事業実施の効率をあげるために必須である。本件では、事業対象校の周辺住民や教員、対象

    道路周辺にある商店のオーナーなどの理解と協力が、事業の円滑な実施の助けとなった。

    URSP-MZR の開始当初より、調査団は地元コミュニティの住民や関連政府機関と頻繁にコミュニ

    ケーションをとってきた。事業実施中も、調査団はバルフ州教育局とマザリシャリフ市役所に毎

    月施工監理報告書を提出するとともに、他の関係者・機関に必要な報告を行った。

    カウンターパート機関は言うまでもなく、他の関係政府機関、事業受益者などの関係者・機関と

    良好な関係を築くことは、事業の実施を成功させる上で重要な要素である。

    3.2 教育分野

    3.2.1 地元業者の限られた能力

    復興リハビリ事業の業者選定にあたり、幾つかの地元業者がショートリストされ、実際に入札に

    参加したが、1 業者を除き失格となった。失格の主な理由は入札図書の不備、特に見積書と工程

    計画の不備であるが、同リハビリ事業のような規模のプロジェクトの施工およびその管理を任せ

    られるような総合力は、地元業者にはまだ無いのが実情である。その結果、本件では地元業者は

    施工請負業者の下請けとして事業に従事することとなり、調査団は技術仕様書に準じた工事の品

    質の確保と工期遵守のため、施工請負業者を通じて同地元業者とその労働者に OJT を実施した。

    しかしながら、カブール、カンダハールでの URSP の頃と比較すれば、業務経験を積んだ地元業

    者の能力は確実に向上しているといえる。例えば、カブールの URSP で雇用した地元業者は、今

    ではかなりの建設機材や優秀な技術者をそろえており、今回ショートリストされた地元業者の中

    で、入札図書の審査にパスした唯一の業者となった。

    インフラ整備のプロジェクトでは、技術移転とキャパシティ・ビルディングの観点から OJT をと

    もなった地元の業者や労働者の活用が不可欠である。これまでの一連の URSP で、この手法はド

    ナー支援の効率を高めるのに有効であることが明らかであり、将来的には、被援助国の持続的発

  • マザリシャリフ市復興支援調査 (URSP-MZR)

    23

    展にもつながると考えられる。

    3.2.2 市の土地利用計画との齟齬

    事業サイトの土地所有権と正確なサイト面積の確認は、ボクティ女子中学校以外では問題なく行

    われた。

    ボクティ女子中学校の建設予定地は、住宅地区の中にある空き地で、周辺住民によってアクセス

    道路、駐車場、子供の遊び場等として使われていた。マザリシャリフ市役所とバルフ州教育局は

    いずれもここを学校建設地とすることを認め、周辺住民のほとんどもそれを歓迎していた。しか

    し、空き地として自由に利用する権利を失いたくないと考える一部の人々が、1986 年に制定され

    たマザリシャリフ市都市計画マスタープランで建設予定地が公園に指定されていることを根拠に、

    土地の用途変更をするのであれば大統領府の承認が必要なはずであると主張した。

    これら反対者を説得するため、マザリシャリフ市役所とバルフ州教育局は土地の用途変更のため

    の正式な手続きをとった。その結果、ボクティ女子中学校は当初の予定地に建設することが 2005

    年 6 月に認められ、工事が 4 ヶ月遅れで開始された。

    土地の権利や利用については地元の様々な人間や組織の利害が絡んでいることが多く、それらを

    把握することは、外来の者にとっては非常に難しい。それが、土地問題においては現地政府関係

    機関の協力が不可欠であるゆえんだが、常に有効に機能するとは限らない。従って、予測不可能

    な問題が発生した場合は、関係者に充分配慮しつつ、状況に応じて柔軟に対処していくことが最

    善の策と考えられる。

    3.2.3 工事終了間際の立ち退き

    コラソン女子高校の建設地内には、その北東側の 3 分の 1 を占める部分に住居と店舗が建ってい

    た。これらが不法占拠であることは行政側も認めていたが、立退きの見通しは立っていなかった。

    幸い充分な広さの建設地であったことから、先方政府、日本側の了解のもと、不法占拠部分を避

    けるかたちで建物の配置を行い、工事は着工された。しかし、工事がまもなく終了という頃にな

    って占拠者が立ち退きに同意して別の所に移ったため、不法占拠住居・店舗は取り壊された。そ

    の結果、通りとの遮蔽物がなくなったため、学校の敷地内部が外にさらされてしまうこととなっ

    た。

    この事態に対し教育局は、新しい塀を追加で建設する予算の確保が難しかったため、JICA 本部へ

    追加支援を求めた。女子高に塀がないことは、アフガニスタンの文化的背景から女子生徒の就学

    を妨げ、学校としての機能を損なうことが懸念されたため、JICA はこの要請に応じた。これをう

    けて調査団は直ちに工事着手のため段取りをし、塀は学校施設の完成と同時期に完成した。

  • 最終報告書 II 和文要約

    24

    3.3 道路分野

    3.3.1 マザリシャリフ市の限られた財政状況

    マザリシャリフ市は市内道路の運営(道路建設や道路維持管理)に対して全責任を負っているも

    のと判断される。しかしながら、マザリシャリフ市は道路部門に必要な予算を確保できないのが

    実情である。

    マザリシャリフ市役所によると現況の予算確保は以下の手順で行われている。

    • 実績を基にマザリシャリフ市役所が次年度の歳入を見積もる。

    • マザリシャリフ市役所が予算案を策定し、中央政府に提出する。

    • 中央政府は、マザリシャリフ市役所の予算案を評価し、減額縮小した変更予算に承認を出す。

    改修工事完了道路がマザリシャリフ市に引き継がれた後は、マザリシャリフ市が継続的に道路の

    維持管理作業を行うことが必要である。しかしながら、マザリシャリフ市は道路セクターに関わ

    る部署ならびに予算を強化する意思がありながらも、実質的には必要な道路維持管理を実施する

    ことが出来ない事態が予見される。

    マザリシャリフ市が道路維持管理に必要な資金を確保することをこれまで以上に努力し、また中

    央政府が社会基盤の重要性を認識し社会基盤関連予算を重視するようになる事が期待される。

    3.3.2 各公共機関同士の情報不足

    復興リハビリ事業の対象であるマスゥード道路とホスピタル道路に沿って、電力線、水道管、電

    話線、ガス管などの公共施設が埋設されており、一部は移設が必要となった。

    円滑な工事の進行のためには、上記公共施設の管理機関との綿密な調整と協力が不可欠であった。

    アフガニスタン側の復興リハビリ事業の実施機関はマザリシャリフ市であり、公共施設の管理機

    関との間の調整を行うことが期待された。しかしながら、マザリシャリフ市の努力にもかかわら

    ず、公共施設管理機関がそれぞれ持つ計画等の情報が市へ的確に伝えられていなかったために、

    市は十分に調整を行えなかったように見受けられる。

    マザリシャリフ市内の公共施設の管理機関は、中央政府直属の出先機関であるため、マザリシャ

    リフ市へ情報の提供を行うことなしにそれぞれ独自の活動を行っている。中央政府が、地方政府

    やマザリシャリフ市に適切な権限と責任を認め、地方政府や市が中心となって地域の復興事業を

    行えるように体制を整える事が望まれる。

    3.3.3 未整備なアフガニスタン国内道路網

    アフガニスタン国内のほぼ全ての舗装道路が損傷を受けており、舗装表面にはひび割れ、ポット

    ホール、舗装の欠損が生じている。アフガニスタン国内の道路は全天候型の道路とは言えない現

  • マザリシャリフ市復興支援調査 (URSP-MZR)

    25

    状にある。この状況は物流に大きな悪影響を与えており、特に降雨と降雪がある冬季(雨季)に

    はその影響は大きい。紛争の終結の後、国際援助により幹線道路の改修が始まっているが、年間

    を通して安全にかつ迅速なアクセスを維持する道路状態にはまだ至っていない。

    マザリシャリフで復旧事業を行う場合、他の援助事業も同様であろうが、建設資材、建設機械を

    カブールやパキスタンから搬入する必要がある。本復興リハビリ事業では、2005 年 2 月初めに工

    事契約され、2 月半ばに着工命令が出された。しかしながら、サラン峠付近の降雪により、施工

    業者の資機材搬入は不能となり遅延した。

    復旧活動を実施するためには全天候型の幹線道路ネットワークが早々に整備されることが不可欠

    である。ADB や日本などの国際援助による幹線道路の改修や改良により、近い将来に全天候型の

    幹線道路ネットワークが整備されることが期待される。

    3.3.4 未整備な埋設公共施設の位置情報

    マスゥード道路とホスピタル道路の掘削工事の際には、事前調査時点では指摘されなかった予想

    外の公共埋設施設に多々遭遇し、追加掘削工事により余分な時間を費やすこととなった。また、

    殆ど全ての埋設物は適切に保護されておらず、十分な深さに埋設されていなかった。

    予想外の公共施設との遭遇は、これらの各公共施設の管理機関に埋設した際の作業記録や竣工図

    が欠けていることが原因である。不必要な追加工事や支出を避けるためにも、各管理機関は作業

    記録や竣工時を保管しておくことが強く望まれる。

    3.3.5 工事遅延をもたらす不測の事態

    工事の履行期間は、工事量と利用可能な建設資機材の組み合わせを計算し 270 日とされていた。

    しかしながら、工事は遅延し全ての工事を完了するまでに 50 日の追加期間が必要になった。主な

    遅延の原因は下記の通りである。

    • 冬季(雨季)の資機材輸送の困難性

    • 2005 年 9 月の議会議員選挙(治安が不安定な状況でのリスクを避けるため、2005 年 8 月から 2005 年 11 月まで、可能な限り要員の数を減らすことが決定された。その結果、工事の進

    捗が遅れた。)

    • 世銀援助による水道管埋設プロジェクト(2005 年 9 月半ばから 2005 年 10 月初めまでの水道管埋設工事によりホスピタル道路の工事が停止した。)

    国内状況が安定しているとは言えない状況での工期算定には、計算で求められた工期に加え、相

    当な余裕日数を加算する事が必要と判断される。

  • 最終報告書 II 和文要約

    26

    3.3.6 工事期間中の交通安全の必要性

    既設道路の改修工事では道路の閉鎖が必要になるため、工事期間中に適切な交通整理や交通安全

    の管理を実施することが重要である。

    本工事の施工業者は、交通安全設備を設置し、車両や歩行者の交通を管理するための案内役を主

    要地点に配置した。さらに、調査団や施工業者は、駐車車両の管理や子供が不用意に建設機械に

    接近して事故が起こることを避けるために、交通局に交通警察官を工事現場に配置することを要

    請した。これらはマザリシャリフ市の全面的な支援により効果的に実施されたものである。しか

    しながら、本事業に対する関連機関や市民の多大な協力を得たにもかかわらず、時折、協力の程

    度が十分でないことが生じた。それは下記の理由によると思われる。

    • マザリシャリフ市内では、本事業と同等規模の道路工事を過去数十年の間、経験したことがなかった。

    • 自動車の数の急激な増加は最近の現象であり、道路工事による交通への影響の大きさをアフガニスタン側が明確に予測できなかった。

    既設道路の改修事業を十分な交通安全のもとに実施するためには、関係機関に工事の規模や日程

    を的確に連絡し、彼らの理解を得ることが不可欠である。

  • マザリシャリフ市復興支援調査 (URSP-MZR)

    27

    第4章 学校による教育環境改善プロジェクト(ソフトコンポーネント)

    4.1 プロジェクトの背景

    URSP-MZR では、復興リハビリ事業の対象 7 校で新設する教室棟に、それぞれの学校が自らのニ

    ーズに応じて多様な使い方が出来るよう、普通教室より広い教室 (10m×7m、以下、多目的ルー

    ムと称す) を 1 室設置した。調査団は、この多目的ルームを各学校が教育環境改善の為にどのよ

    うに活用するかについて各学校が周辺コミュニティと協力しながら計画をたて、活動を開始する

    までのプロセスを支援するために、復興リハビリ事業のソフトコンポーネントとして「学校によ

    る教育環境改善プロジェクト」(以下、プロジェクトと称す)を実施した。

    初中等教育の質改善のために学校の運営能力の強化は必要不可欠であり、調査団は短期復興プロ

    グラムにおいて、これをプログラムの目的の1つに挙げた。本プロジェクトは、このプログラム

    の目的にも沿ったものである。

    4.2 プロジェクトの範囲

    4.2.1 プロジェクト目標

    本プロジェクトは、調査団が策定した短期復興プログラム(2005 – 2009 年)の中の提案プロジェク

    トの一つ(E06)に位置づけられており、そのプロジェクト目標は以下の 2 点である。

    • 復興リハビリ事業対象校の教員と周辺コミュニティの人々による、学校の教育環境改善のための自助努力を促進するために、彼(女)らの学校に対するオーナーシップ意識を高め、学

    校運営能力を強化する。

    • 復興リハビリ事業対象校の教育環境を、各学校のニーズと希望に応じて改善する

    4.2.2 実施方法

    調査団は、プロジェクト実施の全体的なマネージメントをマザリシャリフ市に拠点をおいて活動

    している国際 NGO、People in Need (PIN)に再委託した。調査団は、同 NGO に対しプロジェクト

    の方向性と方針を示し、プロジェクト実施中はその活動を監督、適宜助言および支援を行った。

    4.2.3 プロジェクトの内容

    対象7校は、学校の教育環境改善のための全体的な「行動計画」(Action Plan for School Improvement)

    と、その計画内容(の一部)を実現するための「多目的ルーム活用計画」(Multi-purpose Room Usage

    Plan)を策定した。そして、「多目的ルーム活用計画」の実施に必要な機材を購入するための資金援

    助を調査団(直接的には再委託先 NGO)より得るために、「提案書」(Proposal for Block Grant)を作

    成・提出した。これらの計画と提案書は、各学校のステークホルダー(教員、生徒、保護者、学

  • 最終報告書 II 和文要約

    28

    校周辺コミュニティの住民など)の話し合いと合意にもとづいて作成された。「提案書」が NGO

    /調査団によって承認された後、各学校は多目的ルームに設置する機材を実際に購入し、復興リ

    ハビリ事業により新しい施設の完成にあわせてそれら機材を備え付けた。プロジェクト終了時に

    は全体セミナーを開催し、各学校が自分達の「行動計画」と「多目的ルーム活用計画」を発表、

    情報共有と意見交換を行った。

    図 4.1 プロジェクト概念図

    4.3 プロジェクトの実施

    4.3.1 実施方針

    調査団は、プロジェクトの効果と持続性を考慮して、以下の3点をプロジェクトの実施方針とし

    た。

    (1) マイクロプランニングの実践機会の提供

    学校運営を効果的・効率的に行うためには、限られたリソースを念頭におきながら実現可能な計

    画をたて、その計画にそった活動を的確な時期に実行しなければならない。しかし、実際に計画

    をたててそれを実行することが、そういった経験のない者にとって容易でないことは明らかであ

    る。本プロジェクトのポイントは、計画立案からその実現までを各学校が実際に体験する機会を

    与えることにある。

    (2) 学校運営協議会の設置

    プロジェクトを開始する前に調査団が行った調査によると、学校運営は学校長と一部の教員によ

    ってのみ行われており、保護者や周辺住民からの支援がない/少ないといった意見が聞かれた。

    (How to use the Block grant &MR to realize the parts ofaction)

    - Description of usage- Necessary activities & inputs- Implementation plan- Procurement plan- Cost estimation

    GOAL

    PROBLEMS

    (2) ----------

    (4) ----------

    (5) ----------

    GAP

    (1) ----------

    (3) ----------

    ACTION (1)

    ACTION (3)

    Proposal for Block Grant (PfG)

    Action Plan for School Improvement (AP) MR Usage Plan (MRP)

    Approved Block Grantprovision

    Procurement&

    Implementation

    Completionof

    NewSchoolBuilding

    (including MR)

    ACTION (4)

    ACTION

  • マザリシャリフ市復興支援調査 (URSP-MZR)

    29

    本プロジェクトは、学校運営への教員以外の様々なステークホルダー(生徒、保護者、周辺コミ

    ュニティ住民など)の関与を促すことを意図しており、その手段として「学校運営協議会」シス

    テムの導入を試みる。学校運営協議会は、各学校の上記ステークホルダーの代表者で構成され、

    本プロジェクトの活動の主体となる。

    (3) 州教育局の関与

    バルフ州教育局にもプロジェクトへの参加を要請する。その目的は以下のとおりである。

    • アフガニスタンの教育行政に精通している行政官からアドバイスと支援を得る。

    • プロジェクトが提示する学校運営のひとつの方法を理解してもらい、彼(女)らにプロジェクト終了後も必要に応じてプロジェクトが導入した実践を続けてもらう。

    具体的には、対象 7 校を担当している州教育局の指導主事がオブザーバーとしてプロジェクトに

    参加し、各校での学校運営協議会ミーティングに可能な限り出席することとなった。

    4.3.2 プロジェクト活動

    (1) プロジェクトの準備

    プロジェクトを本格的に開始する前に、NGO/調査団は以下の準備活動を行った。

    1) 州教育局の指導主事にプロジェクトについて説明するための会議を行った。

    2) 対象7校の校長にプロジェクトについて説明するための会議を行った。

    3) 7校を個別に訪問して校長にプロジェクトの内容について追加説明を行い、実施に向けての打合せを行った。

    (2) 学校運営協議会の設立

    各学校において学校運営協議会を立ち上げるために、以下の活動が実施された。

    1) 各学校で、校長が中心となって選んだ学校運営協議会メンバーの候補者による準備会議が行われた。会議では NGO がプロジェクトの内容と学校運営協議会の役割について説明した後、学校運営協議会メンバーの仮リストが作成され、更なる参加希望者を募ることが決められた。

    2) 学校運営協議会への保護者と周辺コミュニティ住民の参加を促すため、NGO が各学校長との話し合いを踏まえ、学校が属する地区の区長やモスクを訪問してプロジェクトについて説明し、協力を要請した。

    3) 第1回学校運営協議会ミーティングを行い、評議会メンバーの確定と評議会の規則の策定を行った。

    4) NGO が、“プロジェクト”の概念、計画立案の仕方などについて、各学校の学校運営協議会メンバーに対しトレーニングを実施した(第2回学校運営協議会)

    (3) 「行動計画」と「多目的ルーム活用計画」の作成

    各学校運営協議会は、以下の手順で「行動計画」と「多目的ルーム活用計画」を作成した。

  • 最終報告書 II 和文要約

    30

    1) 各学校運営協議会の個々のメンバーが、彼(女)が代表しているステークホルダー達とミーティングを行い、「行動計画」と「多目的ルーム活用計画」についての意見・アイディアを聴取した。

    2) 各ステークホルダーの代表が 1)で話し合われた意見を学校運営協議会に持ち寄り、それらをもとに学校運営協議会が学校としての「行動計画」と「多目的ルーム活用計画」をとりまとめた(第3回学校運営協議会ミーティング)。

    3) NGO/調査団のファシリテーションによりワークショップ形式で各学校運営協議会が作成した「行動計画」と「多目的ルーム活用計画」をレビューし、不明点・矛盾点を修正しながら、その内容について評議会メンバー全員のコンセンサスを形成した(第4回学校運営協議会ミーティング)。

    (4) 提案書の作成

    以下の手順で提案書が作成され、NGO/調査団によって承認された。

    1) 各学校の学校運営協議会メンバー個々人が、提案書のドラフトを作成

    2) メンバーが学校運営協議会にドラフトした提案書を持ち寄り、それらをもとに学校運営協議会が学校として1つの提案書をとりまとめ(第4回学校運営協議会ミーティング)、NGO/調査団に提出。

    3) NGO/調査団が各校の提案書を精査し、調査団が各学校運営協議会の代表者と直接面談し、提案書の疑問点を質問、改善点を指摘。

    4) 面談の結果を受け、各学校運営協議会が NGO の手助けを受けながら提案書を修正

    5) 修正された提案書を、調査団が最終承認。

    写真 4.1 学校運営協議会の様子(ダキキ・バルヒ男子高校)

    (5) 機材の調達

    承認された提案書に基づき、NGO が各学校の代表と一緒に機材を調達した。調達された機材は、

    復興リハビリ事業の終了後、新しい多目的ルームに設置された。

  • マザリシャリフ市復興支援調査 (URSP-MZR)

    31

    表 4.1 多目的ルームの用途と調達機材

    学校名 多目的ルームの用途 調達した備品

    ボクティ女子中

    学校

    図書室兼会議室

    • プリンター • 電圧安定器 • コンピューター • コンピューター机 • クーラー • 椅子

    • 発電機 • 書籍 • 書棚 • 演台 • アンプ

    シュルタクザー

    ル中学校

    図書室 • コンピューター • 発電機 • プリンター

    • 書籍 • テーブル

    マウラナ・ジャラ

    ルディン高校

    理科室 • 顕微鏡 • 理科実験用機材 • テーブル

    • 人骨模型 • 棚 • 手洗い器

    メルヴァリ高校 図書室 • 書籍 • テーブル

    • 書棚

    コラソン女子高

    理科室兼図書室 • 理科実験用機材 • 実験用テーブル • 人体模型 • 顕微鏡

    • 手洗い器 • 書籍 • 書棚 • 小テーブル

    セタラ女子高校 理科室 • 顕微鏡 • 理科実験用機材 • 実験用テーブル • テレビ

    • ビデオデッキ • 電圧安定器 • 手洗い器

    ダキキ・バルヒ男

    子高校

    会議室 • マイク及びスピーカー• 演台 • テレビ • ビデオデッキ • 発電機

    • 電圧安定器 • 棚 • テーブル • 椅子

    写真 4.2 機材設置後の多目的ルーム(コラソン女子高校)

    (6) プロジェクト終了セミナーの開催

    各学校運営協議会の代表数名と、州教育局指導主事の参加のもと、終了セミナーがセタラ女子高

    校の新しい多目的ルームで開催された。各学校運営協議会が、自分の学校の「行動計画」と「多

  • 最終報告書 II 和文要約

    32

    目的ルーム活用計画」を発表した後、幾つかのグループに分かれ、今回導入した学校運営協議会

    システムをどう評価するかについて意見交換を行った。

    4.4 プロジェクトの成果・実施中の制約要因

    4.4.1 プロジェクトの成果

    本プロジェクトの実施は、以下の成果を収めた。

    • プロジェクトの参加者(学校運営協議会メンバー、州教育局など)がマイクロプランニングを実際に体験し、この試みは成功だったと評価した。

    • 学校運営協議会の設置により、学校と保護者、周辺コミュニティ住民とのコミュニケーションが活発化した。

    • 教員のなかでも特に校長と教頭が、学校運営でリーダーシップをとる上での自信をつけた。

    • 多目的ルームが、各学校のニーズと希望に応じて整備された。

    4.4.2 プロジェクト実施中の制約要因

    下記にあげたいくつかの要因がプロジェクトの円滑な実施を妨げたが、全体の計画に支障をきた

    すものではなかった。

    • プロジェクト開始当初、周辺コミュニティ住民と保護者からの参加が少なかったため、予想していたより学校運営協議会の立ち上げに時間を要した。

    • ラマダン期間中にあまり活発には活動できないことは予測していたが、学年末試験期間中に教員が予想以上に忙しく、学校運営協議会を開く部屋すら校内に確保することが出来なくな

    ったのは、想定外であった。

    • 短いプロジェクト実施期間の中で活動を集中して行ったため、学校運営協議会メンバーにはそれが時として負担となり、メンバーのやる気を持続させることが困難なことがあった。

    4.5 プロジェクトの評価

    2006 年 2 月に、調査団は評価 5 項目に沿ってプロジェクトの評価を実施した。評価結果は以下の

    とおりである。

    4.5.1 評価結果

    (1) 妥当性

    プロジェクト目標は、以下の理由により妥当であった。

    • プロジェクト目標は、アフガニスタン政府の教育セクターの方針に合致していた。

  • マザリシャリフ市復興支援調査 (URSP-MZR)

    33

    • プロジェクトの参加者(学校運営協議会のメンバー、州教育局指導主事等)が、プロジェクトは学校の教育環境改善のために有効だった、今後も同様の活動を続けるべきだ、と評価し

    ている。

    • ステークホルダー参加型の開発努力は、現在アフガニスタン全体で推進されている。

    (2) 有効性

    プロジェクト目標は以下の通り充分に達成され、プロジェクトの有効性が認められた。

    • プロジェクト活動を通じて、学校運営協議会のメンバーが自分達の力で学校の教育環境を改善することが出来ることに気付き、活動を継続する機運が生まれた。(自助努力の促進とオ

    ーナーシップ意識の向上)

    • 学校長と教頭が、自分の学校運営能力が向上したと感じた。(学校運営能力の強化)

    • 多目的ルームの整備を通じて、学校の教育環境が改善された。(学校のニーズと希望に応じた教育環境の改善)

    (3) 効率性

    プロジェクトは、十分効率的に実施されたと評価される。4.4.2 に述べた要因等によりプロジェク

    ト活動は遅れたこともあったが、この種のプロジェクトでのこのような遅れは想定内であり、実

    施方法やスケジュールを進捗に合わせて変更するなどの柔軟な対応をした結果、予定どおり終了

    した。

    プロジェクトの投入および実施方法も適切であった。特に、学校運営協議会のシステムの導入が、

    プロジェクト活動をよりスムーズにし、効率性を高めた。

    (4) インパクト

    プロジェクトによって生じた影響は、プロジェクトによって直接達成された事柄以外には特に見

    られない。これは、プロジェクトの実施期間そのものが短く、対象が復興リハビリ事業を行った

    7 校に限られていたことに主に起因するものと思われるが、評価がプロジェクト終了直後に行わ

    れたこともその一因である。もう少し時間が経過したら何らかの影響が観察される可能性はある。

    例えば、マザリシャリフ市の他校で学校運営協議会が設立される、似たようなプロジェクトが新

    たに実施される、などが考えられる。

    (5) 自立発展性

    今後も学校運営協議会の活動が継続すれば、プロジェクトの成果が今後も維持される可能性は大

    きく、プロジェクトの自立発展性は十分確保されると思われる。しかし、活動が継続するか否か

    は以下のような要因に左右される。

  • 最終報告書 II 和文要約

    34

    (活動の継続を促す主な要因)

    • 学校の周辺地域に居住している者が学校運営協議会のメンバーとなっており、プロジェクトで一定期間活動を共にしてきたこともあり、結束力がついている。

    • 学校運営協議会メンバー自身が、会が学校の教育環境改善に果たす役割の重要性を認識している。

    • プロジェクトに参加した州教育局の指導主事が、プロジェクトを通じて学校運営協議会の有効性を認識している。

    • 教育省によって各学校に新たに設立される 2 つの組織(教員会と教育支援協議会)は、本プロジェクトが設立した学校運営協議会と形式は違うが目的は同じであり、学校運営協議会が

    これら 2 つの組織に形を変え、活動を続けていく可能性がある。

    • アフガニスタンにはもともと合議によって問題解決・意思決定を行う伝統があり、学校運営協議会はアフガニスタンの人々にとって比較的なじみやすいシステムである。

    (活動の継続を困難にする要因)

    • プロジェクト期間中は活動を行うにあたっての動機付けとなるもの(学校施設の新設、備品整備のための資金、NGO/調査団の技術支援など)があったが、終了後はそれらが全てな

    くなる。

    • バルフ州教育局による、学校運営協議会の活動に対する予算的な支援が期待できない。

    4.5.2 結論および提言・教訓

    (1) 結論

    プロジェクトは、アフガニスタンの教育分野の開発政策やプロジェクト対象者のニーズに対し妥

    当性を持ったものであった。また、プロジェクト目標(学校のステークホルダーによる自助努力

    の促進とオーナーシップ意識の向上、学校運営能力の強化、学校のニーズと希望に応じた教育環

    境の改善)は十分達成されたと同時に、プロジェクト参加者は現状分析・目標設定・解決策の提

    案とその(一部の)実行といった一連のマイクロプランニングの実践をやり遂げたことにより、

    その重要性を実感し、自信を持った。従って、プロジェクトは有効であったと評価される。

    但し、終了直後の段階では、プロジェクトが与えた他の影響について特に観察されるものはない。

    なお、プロジェクトの自立発展性に