非ステロイド抗炎症薬 - St. Marianna University...

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Ⅰ.はじめに 非ステロイド抗炎症薬(nonsteroidal anti-inflammatory drugs, NSAIDs)とは,ステロイド作用を持たない抗 炎症薬の総称で,わが国では既に 50 種類以上が処方 薬として使われている。これらは便利な薬物群であ り,臨床的にも広く使われている。しかし,それら は全て同じ薬物群として考えて良いか否かも含め,必 ずしも臨床医にとって充分に情報が整理されていると は言えない。今回,聖マリアンナ医科大学雑誌に総説 を書く機会を与えて頂いた。そこで,主に臨床的な視 点から NSAIDs についてまとめてみたい。 Ⅱ.歴  史 NSAIDs の歴史は古く,紀元前にさかのぼる 12すなわち,古代アッシリアやエジプトではヤナギの葉 や樹皮,またはヒメツルニチソウなどの煎じ薬をリウ マチなどの鎮痛に使ったという記録が残っている。ピ ポクラテスも,ヤナギなどの樹皮を鎮痛・解熱に使っ たとされている。一方,古代インドでも柳の小枝をく わえることで歯痛をやわらげでいたようで,それが日 本に渡って楊子になったという説もある 3。さて,そ の後は 19 世紀初頭までこうした生薬としての歴史が 続き,発熱や関節炎の治療にヤナギの樹皮などの粉末, またはそれらの抽出物であるサリチンが炎症症状の緩 和に使われていた。 1838 年,Piria はサリチンよりサリチル酸を抽出・ 同定し,さらに 1860 年には Kolbe によってサリチル 酸が合成された。また,1876 年にイギリスの MacLagan は,サリチンが急性リウマチ(リウマチ熱と思われる) の治療に有効であると Lancet 誌上に発表した。この 報告が,NSAIDs をリウマチ性疾患の治療に用いたこ とを記載した最初の医学的記録と考えられている。す なわち,この時代は生薬と合成薬とが渾然として使わ れていた。 サリチンやサリチル酸には一定の有効性が認められ たが,胃腸障害などのために大量投与ができないこと が多かった。そのため,いくつかのサリチル酸の誘導 体の合成が試みられており,1853 年には Gerhardt よってアセチルサリチル酸が合成された。しかし,純 度や安定性が不十分であり,広く使われてはいなかっ た。1897 年になって,Hoffman は純度が高く安定な アセチルサリチル酸の合成に成功した。これは,当時 としては,サリチンやサリチル酸に比べると胃障害が 少なく有効性が高かった。そこで 1899 年になって, ドイツの Bayer 社はこれにアスピリンという商標を付 けて登録し,世界に向けて販売を開始した。アスピリ ンという名称は,このように本来は商品名だが,第一 次世界大戦でのドイツの敗戦のためその独占権を放棄 させられ,自由に使うことができるようになったとい う。その後もアスピリンは世界的に使用量が増え続 け,近年になって血栓予防という新たな適応を得て 益々使用量が増加している珍しい薬である。 1946 年になって,フェニルブタゾンが合成された。 この薬物は確かに強力ではあったが,骨髄障害を含む 副作用が強く,他の NSAIDs の開発の進展とともに次 659 1 聖マリアンナ医科大学 難病治療研究センター 総  説 聖マリアンナ医科大学雑誌 Vol. 29, pp.659 ~ 671, 2001 非ステロイド抗炎症薬 かわ 眞一 しんいち (受付:平成 13 12 20 日)

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Page 1: 非ステロイド抗炎症薬 - St. Marianna University …igakukai.marianna-u.ac.jp/idaishi/www/296/01kawai.pdfⅠ.はじめに 非ステロイド抗炎症薬(nonsteroidal anti-inflammatory

Ⅰ.はじめに

非ステロイド抗炎症薬(nonsteroidal anti-inflammatory

drugs, NSAIDs)とは,ステロイド作用を持たない抗

炎症薬の総称で,わが国では既に 50種類以上が処方

薬として使われている。これらは便利な薬物群であ

り,臨床的にも広く使われている。しかし,それら

は全て同じ薬物群として考えて良いか否かも含め,必

ずしも臨床医にとって充分に情報が整理されていると

は言えない。今回,聖マリアンナ医科大学雑誌に総説

を書く機会を与えて頂いた。そこで,主に臨床的な視

点から NSAIDsについてまとめてみたい。

Ⅱ.歴  史

NSAIDsの歴史は古く,紀元前にさかのぼる 1)2)。

すなわち,古代アッシリアやエジプトではヤナギの葉

や樹皮,またはヒメツルニチソウなどの煎じ薬をリウ

マチなどの鎮痛に使ったという記録が残っている。ピ

ポクラテスも,ヤナギなどの樹皮を鎮痛・解熱に使っ

たとされている。一方,古代インドでも柳の小枝をく

わえることで歯痛をやわらげでいたようで,それが日

本に渡って楊子になったという説もある 3)。さて,そ

の後は 19世紀初頭までこうした生薬としての歴史が

続き,発熱や関節炎の治療にヤナギの樹皮などの粉末,

またはそれらの抽出物であるサリチンが炎症症状の緩

和に使われていた。

1838年,Piriaはサリチンよりサリチル酸を抽出・

同定し,さらに 1860年には Kolbeによってサリチル

酸が合成された。また,1876年にイギリスのMacLagan

は,サリチンが急性リウマチ(リウマチ熱と思われる)

の治療に有効であると Lancet誌上に発表した。この

報告が,NSAIDsをリウマチ性疾患の治療に用いたこ

とを記載した最初の医学的記録と考えられている。す

なわち,この時代は生薬と合成薬とが渾然として使わ

れていた。

サリチンやサリチル酸には一定の有効性が認められ

たが,胃腸障害などのために大量投与ができないこと

が多かった。そのため,いくつかのサリチル酸の誘導

体の合成が試みられており,1853年には Gerhardtに

よってアセチルサリチル酸が合成された。しかし,純

度や安定性が不十分であり,広く使われてはいなかっ

た。1897年になって,Hoffmanは純度が高く安定な

アセチルサリチル酸の合成に成功した。これは,当時

としては,サリチンやサリチル酸に比べると胃障害が

少なく有効性が高かった。そこで 1899年になって,

ドイツの Bayer社はこれにアスピリンという商標を付

けて登録し,世界に向けて販売を開始した。アスピリ

ンという名称は,このように本来は商品名だが,第一

次世界大戦でのドイツの敗戦のためその独占権を放棄

させられ,自由に使うことができるようになったとい

う。その後もアスピリンは世界的に使用量が増え続

け,近年になって血栓予防という新たな適応を得て

益々使用量が増加している珍しい薬である。

1946年になって,フェニルブタゾンが合成された。

この薬物は確かに強力ではあったが,骨髄障害を含む

副作用が強く,他の NSAIDsの開発の進展とともに次

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1

聖マリアンナ医科大学 難病治療研究センター

総  説 聖マリアンナ医科大学雑誌Vol. 29, pp.659 ~ 671, 2001

非ステロイド抗炎症薬

川かわ

合い

眞一しんいち

(受付:平成 13年 12月 20日)

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第に使われなくなった。その後は,インドメタシン,

メフェナム酸,ジクロフェナクなど次々と新しい

NSAIDsが開発されていった。

詳細は後述するが,1971年に NSAIDsの作用機序

としてシクロオキシゲナーゼ(cyclooxygenase, COX)

の阻害理論が Vane4)により提唱され,後に彼はその

発見によりノーベル医学生理学賞を受賞した。その後

も新規の NSAIDsの開発が次々と続いた。その方向性

の 1つとして,慢性疾患の服薬コンプライアンス向上

のためにピロキシカムなどの半減期の長い薬物の開発

があった。次に,胃障害軽減のための各種剤型・

DDS(drug delivery system)技術の開発へと進んだが,

NSAIDsでは特にスリンダク,ナブメトン,ロキソプ

ロフェンナトリウムなどのプロドラッグが発達した。

その後,近年の選択的 COX-2阻害薬の開発の時代と

なる訳である。また,NSAIDsの中でも歴史的なアス

ピリンは近年になって血栓予防という新たな適応を獲

得した。加えて最近では,NSAIDsには新たに癌やア

ルツハイマー病などへの適応拡大も模索されつつあ

る。

Ⅲ.作用機序

1. COX阻害作用

1) アラキドン酸代謝経路

前述したように,Vane4)はアスピリンなどの

NSAIDsの作用機序がプロスタグランディン(prosta-

glandin, PG)産生を抑制することにより抗炎症効果を

発揮することを明らかにした。さらに彼ら 5)は,そ

れが COXの阻害によることを証明した。現在,この

機序が NSAIDsの主たる作用機序と考えられている。

COXは,ホスホリパーゼ(phospholipase, PL)A2

により細胞膜のリン脂質より遊離した不飽和脂肪酸の

アラキドン酸を,PGなどの種々の生理活性物質に代

謝する際に働く律速段階の酵素である(図 1)。細胞

膜のリン脂質から PLA2を介して遊離したアラキドン

酸は,COXにより PGG2に,さらに同じ酵素の持つ

ペルオキシダーゼ活性により PGH2に代謝される。な

お,この代謝経路に関しては,後述する COX-1も

COX-2も同様と考えられている。NSAIDsは COXを

阻害し,結果として炎症の化学メディエータと考えら

れている PGE2と PGI2の産生を抑制して抗炎症に働

くことになる。

近年 PGH2以降の代謝酵素についても cDNAがク

川合 眞一660

2

図 1 プロスタグランディン合成経路.

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ローニングされ,蛋白の一次構造も同定された。各々,

PGE合成酵素(PGES),PGFS ,PGDS,PGIS,トロ

ンボキサン(thromboxane, TX)合成酵素と呼ばれて

いる。アラキドン酸代謝に関わる PLA2,COX,各種

PGまたは TX合成酵素には,各々にアイソザイムの

存在が証明されている。それらは,特異的に且つ密接

にリンクしていることが明らかにされてきている 6)。

将来的には,COXの上流または下流の様々な酵素の

特異的阻害薬や特異的アゴニストによる様々な治療薬

も想定されるが,本稿で述べる NSAIDsは一般に

COX阻害薬に限定されている。

2) COX-1と COX-2の特徴

Vaneの NSAIDsの作用機序発見から 20年経った

1991年に,2つのグループ 7)8)によりマイトゲンな

どの刺激で発現する COXとして COX-2が発見され

た。翌年,Hla と Neilson9)によりヒト COX-2の

cDNAがクローニングされた。COX-2は,炎症性サ

イトカインなどの刺激により単球や滑膜細胞などの炎

症関連細胞を中心に発現する。ただし,腎では一部の

細胞が COX-2を常時発現している(構成的)ことが

報告されている 10)。これに対して COX-1は,一般に

多くの細胞に構成的に発現している。例えば血小板で

は COX-1により TXA2が産生され,出血時には血小

板凝集を引き起こして止血に働く。また,胃粘膜では

COX-1により産生された PGI2や PGE2は血流を維持

し,粘液の分泌を増加させることにより胃粘膜保護に

働く。すなわち,COX-1は生体防御に働いている PG

類を産生する。一方,COX-2は炎症形成に働く PG類

を産生するため,COX-2阻害薬は理論的に副作用の

少ない NSAIDsと考えられるに至った。これら,従来

の研究で明らかにされた COX-1と COX-2の特徴を

表 1にまとめた。

COX-1と COX-2の立体構造の特徴を,Hawkey11)

の文献から改変して図 2に示した。COX-1も COX-2

も共に 385番目のチロシンが COXの活性中心であ

る。COX阻害薬,すなわち NSAIDsは 120番目のア

ルギニンに非特異的に結合することにより作用を発揮

する。しかし,COX-1では 523番目のイソロイシン

が COX-2ではバリンに置き換わっている。それによ

り COX-2にはサイドポケットが生じること,またア

ラキドン酸を受け入れる構造が COX-2の方が柔軟で

間口が広いことなどから,選択的 COX-2阻害薬の特

異性が生ずるという。

3) COX-1および COX-2ノックアウトマウス

1995年になって,COX-112)および COX-213)14)の

遺伝子ノックアウトマウスに関する研究が相次いで発

表された(表 2)。これらの結果を見ると,前述の仮

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3

表 1 COX-1と COX-2の特徴

図 2 COX-1と COX-2の立体構造の比較.

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説とは矛盾する成績も少なくない。まず,COX-1

ノックアウトマウスには胃粘膜障害が予想されるが,

実際は全くみられなかった。また,炎症は COX-2を

介するはずだが,COX-2ノックアウトマウスでも少

なくとも 2つの炎症モデルは殆ど正常に作ることが

できた。一方,COX-2のノックアウトマウスには腎

形成不全がみられることから,少なくとも発生段階で

は COX-2は腎の形成や機能維持に必須の酵素であっ

た。安全だからといって妊婦に高用量の COX-2阻害

薬を投与すると,胎児への危険性が考えられる。た

だ,一般に遺伝子ノックアウトマウスは,生来より

その遺伝子が欠損して成長することもあり,通常のマ

ウスとはまったく異なったホメオスタシスを獲得して

いる。したがって,こうした実験の解釈は,慎重であ

るべきであろう。

2. COX阻害以外の作用機序

NSAIDsの主な作用機序は COX阻害であること述

べてきたが,それのみでは説明できない現象も少なく

ない。例えば,前述したようにサリチル酸は歴史的な

抗炎症薬で,アスピリンと同様に抗炎症作用を有して

いるが,COX-1も COX-2も殆ど阻害しない。また,

PGE2は局所に投与すると確かに炎症を惹起するが,

動物の炎症モデルなどで全身投与するとしばしば逆に

抗炎症に作用する。こうした現象もあり,COX阻害

以外の NSAIDsの作用機序が研究されている。

1) IκBキナーゼ β(IKK-β)阻害作用

Nuclear factor (NF)-κBは,炎症反応に関与するサイ

トカインなどの種々の遺伝子発現を調節する転写因子

である。この NF-κBは,IκBと結合することにより,

いつもは細胞質内に留まっている。この IκBは,IκB

kinase (IKK)-αまたは IKK-βという酵素によりリン酸

化されると NF-κBから離れる。フリーになった NF-

κBは核内に移行して転写因子として種々の炎症など

に関係した活性物質の遺伝子発現を誘導する。一方,

IKKは,例えば腫瘍壊死因子( tumor necrosis factor,

TNF)αが作用したり,一部の細胞内リン酸化酵素が

過剰発現することにより活性化する。すなわち,細胞

に炎症性刺激が加わると,IKK-αまたは IKK-βが活

性化する。Yinら 15)によると,アスピリンとサリチ

ル酸は IKK活性を阻害する機序により NF-κB活性化

を阻害した。一方,彼らはインドメタシンとデキサメ

タゾンには阻害活性がないことを示した。なお,アス

ピリンの IKK-β阻害作用の IC50は 80 µMであった。

一般に,COX阻害活性の IC50は 25~ 100 µMと報告

されており,彼らの提唱する作用機序でも十分な効果

を得ることができるとしている。

2) PPAR-γ(peroxisome proliferator-activated

receptor-γ)活性化作用

PPAR-γは,当初脂肪細胞の分化を促進する転写因

子として発見された。一方で,この転写因子の活性化

は,サイトカインなどの炎症起因分子の発現を抑制す

る。Jiangら 16)は,インドメタシン,イブプロフェ

ン,フェノプロフェンおよびフルフェナム酸などの

NSAIDsは PPAR-γのリガンドであることを示した。

すなわち,これらの NSAIDsが働くと,TNF-αなど

のサイトカイン産生が抑制されることになる。一方,

ピロキシカム,アセトアミノフェン,およびサリチル

酸などの NSAIDsにはその作用がなかったことから,

この PPAR-γのリガンドとしての作用は NSAIDsの種

類による違いが認められるという。

3) その他の作用機序

アセクロフェナクは,わが国では未承認だがヨー

ロッパでは既に市販されている NSAID である。

Yamazakiら 17)は,慢性関節リウマチ(rheumatoid

arthritis, RA)や変形性関節症の軟骨破壊に関係するマ

トリックスメタロプロテアーゼ(MMP)の前駆体の

遺伝子発現に及ぼすアセクロフェナクとその代謝産物

の影響を検討した。その結果,RA患者滑膜細胞にお

ける MMP-1と MMP-3の各々の前駆体の発現をアセ

クロフェナクの代謝産物である 4'-ヒドロキシアセク

ロフェナクが抑制することがわかった。一方,アセク

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表 2 COX-1および COX-2ノックアウトマウスの特徴

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ロフェナクやジクロフェナクにはその作用はみられな

かった。

最近筆者ら 18)は,NSAIDsはヒト RA患者滑膜細

胞のアポトーシスを誘導することを見出した。まず,

従来薬ではいくつかの NSAIDsにその作用が認められ

たが,その誘導の程度は種類によって異なっていた。

さらに種々の COX-2阻害薬を作用させたところ,セ

レコキシブのみにアポトーシスの誘導が認められた。

すなわち,COX-2阻害以外の何らかの作用機序によ

る訳で,さらに検討を進めている。

NSAIDsをモルヒネと併用すると,鎮痛作用におい

て相乗効果がみられることが知られている。

Williams 19)は,この相乗効果の機序を以下のように

説明している。モルヒネなどのオピオイドは,細胞内

の何らかの経路で PLA2を活性化する。当然,細胞膜

リン脂質からのアラキドン酸の遊離が増す。ここにア

スピリンを作用させると COXを阻害するため,アラ

キドン酸代謝経路が COX以外にエスケープする。そ

の 1つが 12-リポキシゲナーゼであり,その結果 12-

HPETEが増加する。それによりカリウムチャンネル

の感受性が増し,痛みを伝える神経末端での GABA

の遊離を抑制するという。この作用機序は,厳密には

COX阻害により得られているが,PG産生低下により

得られる鎮痛効果ではない点が興味深い。

白血球(好中球)は,蛋白分解酵素などを介して,

炎症の病態形成に関与している。G蛋白は白血球の活

性化には蛋白キナーゼ-Cを介して負の調節をしてい

る。AbramsonとWeissman20)によれば,NSAIDsは G

蛋白を介して白血球活性化を阻害する。

Ⅳ.分類と特徴

1. COX選択性による分類

COX-2理論の発見以後,新規の COX-2阻害薬の開

発が盛んだが,既に市販されている NSAIDsにもエト

ドラクやメロキシカムのような COX-2選択性が強い

NSAIDsがある。これら市販の COX-2阻害薬でも,

重症消化管障害の合併率が低いことが示唆されてい

る 21)。一方,COX-2選択性を目標に開発されたセレ

コキシブとロフェコキシブが米国などでは既に市販さ

れている。

COX-2選択性の測定法に関しては,報告によって

若干違いがある。臨床における有用性を考えれば,ヒ

トの細胞を用いた測定法が最適である。なお,従来の

COX選択性測定系は,筆者らの報告を含めて,COX-

1と COX-2を異なった細胞系で測定していたが 21~24),

薬物の作用条件などが細胞の種類によって異なるため

正確な評価ができないという問題点が指摘されてい

た。そこで,Katoら 25)は,ヒト単球のみを用いた

COX選択性の測定系を開発した。それにより, in

vitroで,より正確に COX選択性を測定できるように

なった。複数のヒト細胞系を用いた論文 21~25)を基に

作成した COX選択性の比較表を表 3に示した。

COX-2阻害薬に関しては,基礎の開発段階から

COX-2を標的として設計した所謂コキシブ系と呼ば

れる薬物と,それ以前に開発された非コキシブ系

NSAIDsがあり,これらを区別すべきという議論もあ

る。それに対して,Vaneら 26)は明確な回答を示し

ている。すなわち,大切なことは COX-2を選択的に

抑えるか否かという機能であり,当然のことながら,

COX-2選択性が認められれば選択的 COX-2阻害薬ま

たは COX-1非阻害性 NSAIDsと呼ぶべきとしている。

つまり,コキシブ系というのは化学構造の呼び名であ

り,例えばオキシカム系などといった呼び名と同じで

あるという主張である。

2. 化学構造による分類

従来は化学構造による分類が重視された。例えば,

プロピオン酸系の NSAIDsは,作用は若干弱いが副作

用も少なくバランスが良いなどとされていた。しかし,

この例をみても,単に用量が少ない結果であることも

考えられる表現である。別の例としては,オキシカム

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5

表 3 NSAIDsの COX-2選択性による分類

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系の NSAIDsは血中半減期が長いという特徴が示され

てきたが,最近ロルノキシカムという半減期の極めて

短いオキシカムが登場した。元来,酸性 NSAIDsの主

な作用機序が COX阻害であることを考慮すると,そ

の構造のみからは作用や副作用に極端な相互の違いは

みられないはずである。前述したように,NSAIDsの

作用機序は COX阻害以外にもいくつか知られてい

る。また COX選択性や半減期のような薬理学的特性

や個々の製剤の特性もある訳で,それらによる総合的

な結果として,NSAIDs相互の特徴が形成されてくる

ものと思われる。なお,塩基性 NSAIDsの作用機序は

明らかでなく,また臨床的にも抗炎症効果は弱いた

め,例えば RAの治療などには不十分である。

3. 血中半減期による分類

薬物の種類による半減期の違いについては臨床的に

十分考慮する必要がある。表 4に血中半減期による

NSAIDsの分類を示した 27)。従来より,患者の服薬コ

ンプライアンス向上のために,1日 1回ないし 2回の

投与で十分なように半減期の長い薬物が開発された。

しかし,これらの薬物が肝または腎機能が障害された

患者や,代謝機能が低下している高齢者などに投与さ

れると,血中濃度が高くなり副作用が増加しやすい。

臨床的な利点も評価できなくはないが,こうした半減

期の長い薬物は,最近ではむしろ使用し難い薬物と考

えられるようになった。

4.DDS(drug delivery system)による分類

DDSとは,薬剤を必要なところに効率よく配送す

るシステムである。表 5に,DDSによる NSAIDsの

分類を示した 27)。この中で,NSAIDsとして最も特徴

的なのはプロドラッグであり,それ自体は不活性だが

体内で代謝されて初めて活性体となる薬物を呼ぶ。前

述したように,NSAIDsは胃粘膜局所では COX-1を

阻害するため,防御因子として PG産生を抑制して胃

障害を引き起こしやすい。したがって,腸溶剤,坐剤,

注射剤およびプロドラッグは,胃障害の減少を目標に

開発された。しかし,これらの工夫をしても,なお血

中を介して胃粘膜に到達した NSAIDsによる胃腸障害

は完全には阻止できないという指摘もあった。そこ

で,Yanagawaら 28)は,健常人にプロドラッグとし

てロキソプロフェンまたはプログルメタシン,従来薬

としてジクロフェナクを各々 2週間投与して,内視鏡

で胃十二指腸を調べた。その結果,プロドラッグは従

来薬に比べて有意に胃粘膜障害を減少させていた。

筆者らは,Yamazakiら 29)30)の成績を基に,NSAID

の細胞内ターゲットプロドラッグという新たな DDS

の概念を提唱している。アセクロフェナクについては

COX阻害以外の作用機序の項でも紹介したが,これ

自身には COX阻害活性はなく,ジクロフェナクへの

転換経路があるため,当初一般的なプロドラッグと考

えられた。しかし,健常人を対象とした薬物動態試験

でアセクロフェナクを服用した健常者の血中にはジク

ロフェナクは数 %しか検出されなかった。そこで

種々検討したところ,アセクロフェナクは炎症関連細

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表 4 NSAIDsの血中半減期による分類

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胞内で,各々 COX-2阻害活性の強いジクロフェナク

と 4'-ヒドロキシジクロフェナクに転換して作用する

ことを明らかにした(図 3)。

Ⅴ.適 応 症

NSAIDsの適応症は極めて広く(表 6)27),リウマ

チ性疾患,疼痛性疾患,発熱性疾患に対しては多くの

NSAIDsが有効と考えられている。もちろん,承認に

至る臨床試験をどの疾患で施行したかによって,

NSAIDs毎に添付文書の適応症の記載は微妙な違いが

ある。

その他の適応症としては,血小板凝集抑制を介した

非ステロイド抗炎症薬 665

7

表 5 NSAIDsの DDS

図 3 アセクロフェナクの細胞内ターゲットプロドラッグ作用機序.

表 6 非ステロイド抗炎症薬の適応症

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血栓予防薬としての使用が承認されているが,

NSAIDsの中でもアスピリンのみ,しかも低用量

(50~ 100 mg /日)の服用で有効である。この作用に

関しては欧米では多くの臨床試験で証明されており,

最近でもメタアナリシスの結果 31)が報告されてい

る。COX-1の阻害活性を利用しているためアスピリ

ン以外の COX-1阻害活性を有する NSAIDsにもこの

作用が想定されるが,アスピリンは COX-1をアセチ

ル化することにより不可逆的に COX-1を阻害する。

一方,他の NSAIDsの COX-1阻害は可逆的である。

すなわち,低用量且つ安定して有効なアスピリンの有

用性は極めて高い。また,新生児の動脈管開存症も

NSAIDsの COX-1阻害を利用して治療するが,現在

のところインドメタシンの注射剤のみが認められてい

る。

その他の作用に関しては,現在は添付文書上の適応

症としては認められていない。しかし,いずれも理論

的に有効性が提起され,一部臨床試験により試みられ

ている。これらの作用についても,基本的には COX

阻害すなわち PG産生抑制により効果を発揮すると考

えられているが,一部の効果については COX阻害以

外の作用機序の関与も示唆されている。

Ⅵ.COX-2阻害薬の臨床

前章までに,NSAIDsの作用機序および分類と特徴

をまとめ,それらの NSAIDsの従来の臨床試験の成績

から認められてきた適応症に関して示した。以下では

現在注目されている選択的 COX-2阻害薬(以下,

COX-2阻害薬)について,従来薬と比較しつつまと

めてみた。

1. 有効性

1) リウマチ性疾患

図 4に,米国で RAに対して行われたセレコキシ

ブの臨床試験 32)の成績を示した。セレコキシブ群は

いずれの用量でもプラセボ群に比べて勝り,ナプロ

キセン 1000 mg /日に比べても同等以上の効果が得ら

れている。しかし,例えばメトトレキサートのような

抗リウマチ薬にみられる有効性とは本質的に異なり,

COX-2阻害薬と言えども,有効性に関しては従来の

NSAIDsの域を出ないことも示している。ロフェコキ

シブに関しても RAでの効果は従来からの NSAIDsと

同様である 33)。また,変形性関節症(osteoarthritis,

OA)に対する COX-2阻害薬の臨床効果の報告も,お

おむね従来薬と同様である。

川合 眞一666

8

図 4 RAに対するセレコキシブの ACR 20%における有効率.

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2) 疼痛性疾患

疼痛の病態に COX-2がどの程度関与しているかに

ついては,不明の点が少なくない。一般には,中枢性

の痛みの感知には COX-2が関与するのに対し,末梢

の痛みには COX-1の関与が示唆されている。図 5に,

COX-2阻害薬のロフェコキシブ 50 mgとセレコキシ

ブ 200 mgの投与を,従来薬のイブプロフェン 400 mg

と比較した報告を引用した 34)。本研究で用いられた

各薬物の用量は,必ずしも等力値とは言い難いが,

COX-2のみを阻害しても COX-1と COX-2を阻害す

る従来薬と同等以上の鎮痛効果が得られるという事実

は明らかである。疼痛は COX-1に関係するという説

もあるが,必ずしもそう特定できない成績である。

3) その他の疾患

疫学調査で NSAIDs使用者に各種の悪性腫瘍発症率

が少ないという報告や,NSAIDsが種々の癌細胞に対

して増殖抑制作用があることを示した基礎研究より,

NSAIDs の抗腫瘍作用が知られていた。一般に,

非ステロイド抗炎症薬 667

9

図 5 歯科術後疼痛に対する各種 NSAIDsの疼痛緩和作用(pain relief, PR)における有効性の比較.

図 6 家族性大腸ポリポーシス患者に対するセレコキシブの大腸ポリープ数減少効果.

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NSAIDsの抗腫瘍効果には高濃度が必要なため,副作

用が少ない可能性のある COX-2阻害薬は高用量投与

が可能な NSAIDsとして注目されている 35)。図 6は,

家族性大腸ポリポーシス患者に対してセレコキシブの

2用量,あるいはプラセボを投与して 6ヵ月後の大腸

のポリープ数の変化をみた臨床試験の成績である 36)。

400 mg 1日 2回のセレコキシブの投与は,有意にポ

リープ数を減少させている。この作用機序について

は,COX-2を阻害した結果どの PGを抑制して効果を

発揮するのかなどの詳細が不明であった。また,仮に

PGE2を阻害することによりこの効果を発揮するとし

ても,EP1から EP4まである PGE2のどの受容体を介

するのであろうか。最近 Sonoshitaら 37)は,マウス

の実験で PGE2が EP2受容体を介して腸のポリポーシ

スの形成促進に働いていることを示し,COX-2阻害

薬の抗腫瘍効果の少なくとも一部の作用機序は,

PGE2の抑制であることを明らかにした。しかし,こ

の作用機序のみが COX-2阻害薬のポリープ増殖抑制

作用を説明するか否かについては,なおも検討が必要

である。

NSAIDs使用者に痴呆が少ないことや,アルツハイ

マー病の脳の病変部に COX-2の発現が増加している

という報告などから,COX-2阻害薬が期待されてい

るが,臨床試験の成績はいまだ明らかではない 38)。

2. 副作用

1) 消化管障害

エトドラクとメロキシカムは,確かに従来薬の

NSAIDsに比べて重症消化管障害合併率が低いことが

内外の臨床試験で示されてはいる。しかし,セレコキ

シブとロフェコキシブは開発当初から COX-2阻害薬

としての臨床研究が進んできたこともあり,より厳密

な副作用に注目した臨床試験が公表されている。セレ

コキシブ投与開始 12週後の内視鏡試験では,800 mg/

日の最高用量でもプラセボ群と変わらない胃潰瘍合併

率であった 32)。

同時期に報告されたロフェコキシブ 39)とセレコキ

シブ 40)の臨床試験は,各々 VIGOR試験と CLASS試

験と呼ばれ,共に 8,000例以上の症例を対象とした大

規模無作為化比較試験である(表 7)。VIGOR試験で

は,ロフェコキシブ群はナプロキセン群に比べて重症

消化管障害合併率を半分以下の約 40%まで有意に減

少させた。一方 CLASS試験では,セレコキシブ群は

対照の従来薬に比べて重症消化管障害は約半分に減ら

したが,有意差はなかった。なお CLASS試験では,

患者の 20%に心筋梗塞予防のために低用量アスピリ

ンが併用されていた。例え低用量でも,アスピリンの

併用が消化管障害の原因になったものと考えられてい

る。実際,アスピリン併用例のみを抽出すると両群間

に差がなく,非併用例では VIGOR試験と同等の約

60%の重症消化管障害低減効果が得られている。

Shigetaら 41)によると,ラットの実験的胃潰瘍部位

には COX-2が発現して創傷治癒に働いているため,

既に潰瘍があるときに COX-2阻害薬を服用させたと

ころ潰瘍の治癒が遷延したという。しかし,前述の

COX-2阻害薬の成績を総合すると,COX-2阻害薬が

消化管障害の合併を減らすことは明らかと言えよう。

川合 眞一668

10

表 7 COX-2阻害薬と消化管障害・心血管障害

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2) 腎障害

COX-2阻害薬は,果たして腎障害を回避できるの

であろうか。Simonら 32)によると,セレコキシブ群

ではナプロキセン群と同様の頻度で浮腫が観察され

た。一方,プラセボ群では 1例も認めなかったことよ

り,COX-2阻害薬も従来薬と同様,腎血流の障害作

用やナトリウムの体内蓄積作用がみられると解釈され

る。前述したように 10),腎の一部の細胞では COX-2

を構成的に発現しており,そのことが腎障害の原因で

ある可能性は否定できない。COX-2阻害薬による重

症腎障害の症例報告 42)も発表されており,今後も十

分に注意して大規模試験の成績などを検討すべきであ

ろう。

3) 心筋梗塞・血栓症

重症消化管障害を減らす効果を証明した VIGOR試

験と CLASS試験の成績は,一方で COX-2阻害薬の

新たな副作用に関する警告を呈する結果となった 43)。

VIGOR試験におけるロフェコキシブ群の心筋梗塞合

併率がナプロキセン群の約 4倍に有意に増加していた

のである(表 7)。一方 CLASS試験では,セレコキシ

ブ群と従来薬群との間に心筋梗塞合併率の差はなかっ

たが,20%の例で低用量アスピリンが併用されてい

たことは既に述べた通りである。動脈硬化を呈する患

者の PGI2産生は COX-1のみならず COX-2によるこ

とが示唆されている 44)。すなわち,COX-2阻害薬は

血小板の COX-1を阻害せずに血管内皮の COX-2によ

る PGI2産生を阻害することから,血栓形成は従来薬

の NSAIDsに比べて増強される可能性がある。また,

抗リン脂質抗体症候群はそれ自体で血栓形成傾向を認

めるが,4人の患者でセレコキシブ投与による血栓症

の合併が報告されている 45)。これらの事実を考慮す

ると,未だ確定的とは言えないものの,血栓形成の素

因のある患者では,COX-2阻害薬投与については十

分な注意が必要であろう。

Ⅶ.おわりに

アスピリンが発売されて 100年以上経過しているに

もかかわらず,最近でも NSAIDsの研究は様々な方面

に展開している。数年後には,再度最新の情報を本誌

に紹介できることを楽しみにして,本稿を終えたい。

謝  辞本総説に引用した筆者らの成績は,難病治療研究センターのスタッフの他,横浜市立大学整形外科,東京薬科大学,ヤクルト本社中央研究所などとの共同研究の成果である。この場をお借りして深謝したい。

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