胃がシクシクしたり、もたれたり、

胸がムカムカしたりしていません

か？その症状、もしかしたら胃潰瘍か

もしれません。胃潰瘍は胃の壁がただ

れて傷ついた状態を言い、全年代にわ

たりよくみられる症状です。

今回は、胃潰瘍の症状や治療、予防

等について解説します。

胃潰瘍い か い よ う

はこんな病気

胃潰瘍とは、何らかの理由で胃の粘膜に傷がついた後、胃酸などの攻撃によって穴

が開き、傷が粘膜の下にある粘膜下層や筋層などの深いところまで達して、胃の壁の

内側にくぼみ状の病変を生じた状態を言います【図 1】。潰瘍をきたす原因としては、

幼少時から胃の中に住みつき、持続的に胃の粘膜を障害するピロリ菌や、NSAID と言

われる鎮痛解熱薬などによるものがあります。その他、ストレス、刺激物の過剰摂取

や暴飲暴食、胃腸炎などに伴う細菌・ウイルス感染、過労などが挙げられます【図 2】。

バックナンバーはホームページでご覧になれます h t tp :/ /www.sa ise i ka i - ka ra tsu.com ご自由にお持ち 帰りください

胃潰瘍特集 ・・・・・２０１9・・・・・

５月号 No.161（令和元年）

済生会唐津病院 情報誌

光学診療部長・医学博士

遠藤 広貴 えんどう ひろよし

佐賀県胃癌大腸癌検診医会理事

佐賀県市町対策型胃内視鏡検診

運営委員

日本消化器病学会指導医

日本消化器内視鏡学会指導医

日本消化管学会指導医

日本内科学会総合内科専門医 他

ストレス 過 労

暴飲暴食 ウイルス感染

ピロリ菌 NSAID (鎮痛解熱薬)

図 1 胃潰瘍とは

粘膜ねんまく

粘膜ねんまく

下層かそう

固有筋層こゆうきんそう

漿しょう

膜まく

下層かそう

漿しょう

膜まく

潰 瘍 びらん

図 2 胃潰瘍の原因

胃粘膜の傷が粘膜層までのものを「びらん」

粘膜下層以上の深さのものを「潰瘍」といいます

胃潰瘍の症状

症状としては、腹部が中心の不快感・違和感な

どがあります。具体的には、主に上腹部を中心と

した腹痛・背部痛・吐き気・もたれ感・腹部膨満

感などです。

潰瘍から出血をきたした場合は、吐血したり、

黒色の便やタール便(コールタールのように真っ

黒な便)が認められたりします。

胃潰瘍の検査

診断を確定するためには、直接潰瘍の病変を確認することが必要です。そのため、

症状などから胃潰瘍や上部消化管の疾患を疑うと、胃カメラや腹部レントゲン、CT 検

査、血液検査などを行います。

胃カメラ検査の流れ

検査前日 検査当日（朝） 検査当日（病院で）

夕食は消化のよい

ものをとりましょ

う。

21 時以降は食事や

飲酒は禁止です。

早めに就寝して翌

日の検査に備えま

しょう。

食事・タバコは禁止

です。水・お茶は少

しなら飲んでもか

まいません。

※常用薬がある方は

医師にお申し出く

ださい

胃がきれいに見えるように薬（消泡剤）を飲

み、胃の動きを弱める薬を注射します。

※希望者には安定剤を注射します

のどにスプレーで麻酔をした後、検査台に横

になり、口から内視鏡を挿入します。検査は

５～10 分程度で終了します。

上記は一般的な経口内視鏡検査の概要です。くわしくは検査前に説明いたします。

消泡剤

※安定剤を投与された

方は、当日の車等の

運転は控えて下さい

腹 痛

背部痛

腹部 膨満感

吐き気

もたれ

21 時以降は

飲食×

胃潰瘍の治療法

胃潰瘍は、症状に応じて主に下記のような治療や処置を行います。

内服治療

症状が軽い場合は「プロトンポンプ阻害剤(PPI)」や「カリウムイオン競合型アシッド

ブロッカー（P-CAB）」といった胃酸を抑える薬の内服や注射に加えて、粘膜を保護する

1～3 種類の胃薬を数週間内服します。

点滴治療

腹痛や貧血などの症状が強い場合や、潰瘍が大きい場合、出血を伴う場合などは、数

日間絶食して点滴治療を行います。症状や経過の観察が必要になるため、始めの 1～2

週間程度は入院が必要になります。

内視鏡による止血処置

最初の胃カメラ検査で胃潰瘍の部位から出血が認められたり、出血後の露出した血管

が認められたりした場合は、胃カメラで確認しながら出血部の血管を焼きつぶしたり、

出血部位をクリップと呼ばれる小さな金具で縛るなどの止血処置を行います【図 3】。輸

血や鉄剤など、貧血に対する治療が必要なこともあります。

また、胃潰瘍になる原因の多くを占めるピロリ菌がいる場合は、除菌治療も並行し

て行います。

胃潰瘍

健康な胃は粘膜がなめら

かできれいなピンク色を

しています。

左の写真は大きさが 12mm くらいの胃潰瘍です。右の写

真のように、出血していたり出血後の露出した血管が認め

られたりした場合はクリップで縛ったり、出血部の血管を

焼きつぶすなどの止血処置を行います。

図３ クリップによる止血 健康な胃

早期発見のポイント

胃潰瘍は放置すると、しばしば巨大な潰瘍になって胃に穴

が開き(胃潰瘍穿孔)、腹膜炎を起こします。そうなると、手

術が必要になる場合があるほか、潰瘍の部位に血管がある場

合は、多量に出血して吐血・下血します。その結果、出血多

量によって急激に貧血がすすみ、血圧が低下しふらついて意

識もうろうとなり、ショック状態で救急受診を余儀なくされ

ることもよくあるため、非常に危険です。

腹痛や腹部不快感、黒っぽい便が出るなどの症状が見られ

る場合は、早めに近くの病院(可能ならば消化器科・胃腸科)

を受診し、診察や胃カメラなどの検査を受けてください。

ピロリ菌との関係

下記に当てはまる方は、胃の中にピロリ菌がいる可能性があります。

ピロリ菌がいる場合は、いない人に比べて胃・十二指腸潰瘍、胃がんなどがかなり

できやすいです。速やかにピロリ菌の除菌治療でピロリ菌を退治し、その後は、胃カ

メラや胃透視などの定期的な胃の検査をおすすめします。当院では、2001 年より延

べ 3,442 人に除菌治療を行い【左グラフ】、その結果、胃潰瘍・出血性胃潰瘍の患者さん

が減少しています【右グラフ】。

①健康診断などで「胃炎」「胃が荒れている」などと言われたことがある

②親兄弟など、血縁または同居の家族に胃潰瘍や胃がんといった胃の病気がある

腹 痛

腹部の不快感

黒っぽい便が出る

消化器科

胃腸科

3,442人

0

1000

2000

3000

4000

2001 2005 2010 2015 2018

469 411 389

236 202 201 150 134 121

73

74 45

49 66 55

51 44 38

0

100

200

300

400

500

600

2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018

出血性胃潰瘍

胃潰瘍

胃潰瘍・出血性胃潰瘍年別件数

当院でのピロリ除菌者数(一次＋二次)累計

人

年 年

人

予防の基礎知識

胃が荒れやすい方や脳血管障害・虚血性心疾患・不整脈といった治療のために血を

サラサラにする薬（抗血栓薬）などを飲まれている方は、予防的に PCAB、PPI や H2

ブロッカーなどの胃酸を抑える薬や粘膜保護剤などを定期的に服用することが望ま

れます。

また、衛生環境の改善などによりその比率は減ってきています

が、未だに胃潰瘍の主な原因はピロリ菌です。ピロリ菌に感染し

ている場合は、潰瘍や胃がんの予防のためにできるだけ若いうち

に PCAB と抗生剤の 2 剤を 1 週間朝と晩に内服する除菌治療を受

けておくことが効果的です。

また、過度の食塩摂取は、胃の表面を守っている粘液

を減らして胃によくないと言われているので、避けた方

がよいでしょう。そして、日頃から喫煙・飲酒・暴飲暴

食を避け、充分休養を取って胃腸にストレスをかけない

生活を心がけることが基本です。

当院の胃潰瘍治療について

当院では、胃潰瘍をはじめ、おなかの病気を専門に診療する消化器センターを開設

しています。胃潰瘍やおなかの病気が気になる方は、消化器センターまでご相談くだ

さい。

消化器センター外来担当医（受付時間：月～金曜 8：30～10：30）

月 火 水 木 金

担当医 宮みや

﨑ざき

充みつ

啓ひろ

白井しらい

慎しん

平ぺい

柳田やなぎた

公彦きみひこ

遠藤えんどう

広ひろ

貴よし

山懸やまがた

基維もとゆき

専門 消化器外科 消化器内科 肝臓病 消化器内科 消化器外科 肝胆膵外科

※消化器センターは月～金曜の午前診療のみとなります 令和元年 5 月 1 日現在

※他診療科と受付時間が異なりますのでご注意下さい

また、血液検査でピロリ菌感染の有無を調べる「胃がんリスク健診」を当院の健診

センターで行っています。ピロリ菌の感染が気になるけど、胃カメラや胃透視検査が

苦手という方におすすめの検査です。次ページに詳細を掲載していますのでご参照く

ださい。胃がんリスク検診のご予約・お問合せ等は健診センターまでご連絡ください。

胃腸にストレ

スをかけない

生活を心がけ

ましょう！

健康教室「シンゾウ！イキイキ！～心不全について～」 下記のとおり健康教室を開催します。どなたでも受講できますのでお気軽にお申込み下さい。

◆開催日：５月 25 日（土）10：00～11：00

◆テーマ：シンゾウ！イキイキ！ ～心不全について～

◆講 師：循環器科医長 矢沢みゆき 医師

◆内 容：心不全の治療や予防に関する話、ミニ検診、

健康相談 等

◆場 所：３階会議室

◆問合せ：総務課 井上 TEL 0955-73-3175(代)

心臓病教室

心臓の病気や日常生活の注意点などについて専門のスタッフがお話をします。

開催日 内 容 担 当

5 月 ９日(木) 心疾患の方の食事について 管理栄養士

5 月 16 日(木) 薬について 薬剤師

5 月 23 日(木) 心臓の検査について 臨床検査技師

5 月 30 日(木) 放射線科の検査について 診療放射線技師

◆開催日：毎週木曜日 14：30～15：00 ◆場所:ANNEX2 階リハビリテーションセンター

糖尿病教室 糖尿病について学びたい方ならどなたでも受講できますので、お気軽にご参加ください。

開催日 内 容 担 当

5 月 14 日(火) よくわかる糖尿病

－糖尿病になっても合併症を起こさないコツ－ 医師

5 月 15 日(水) バランスのとれた食事ってなあに？ 管理栄養士

5 月 16 日(木) あなたの足大丈夫？ 看護師

糖尿病の運動療法って？ 理学療法士

5 月 17 日(金) 自分の検査値を知っていますか？ 臨床検査技師

自分の薬の働きを知っていますか？ 薬剤師

◆開催時間：14：00～15：00 ◆場所：済生会唐津病院 3 階会議室

お知らせ

外来診療担当医表 ●内 科 令和元年 5 月 1 日現在

診療 時間

月 火 水 木 金 土

第 1 週 第 2 週 第 3 週 第 4 週 第 5 週

午前

藤松里 貞 永 井 本 小 島 矢 沢 田中公 矢 沢 田中公 糖尿病 膠原病 糖尿病 糖尿病 循環器 神経内科 循環器 神経内科

遠 藤 竹 山 矢 沢 武 富 白 井 徳 島 酒 井 徳 島 酒 井 一般・消化器 膠原病 循環器 消化器 循環器 循環器 循環器 循環器

藤松大 矢 沢 徳 島 酒 井 藤松大 一般・循環器 循環器 循環器 循環器 循環器

柳 田 千 布 千 布 千 布 柳 田 柳 田 千 布 柳 田 千 布 柳 田 一般・肝臓 一般・膠原病 一般・膠原病 一 般 一般・肝臓 一 般 一 般 冬 野 稲 富 酒 井 武 富 稲 富 九州大学 島 田 酒 井 腎 内 循環器 新 患 新 患 新 患 新 患

田中公 田中公 白 井 柳 田 眞 﨑

神経内科 神経内科 消化器 一般・肝臓 神経内科 酒 井 武 富 泉 稲 富 島 田 新 患 新 患 新 患 新 患 新 患

午後

千 布 藤松大 貞 永 井 本 稲 富 一 般 循環器 膠原病 一 般 徳 島 泉 島 田 田中公 矢 沢

循環器 神経内科

竹 山 藤 本

膠原病 神経内科

上 原

てんかん※

●外 科

診療 時間

月 火 水 木 金 土

第 1 週 第 2 週 第 3 週 第 4 週 第 5 週

午前

吉 田 山 懸 青 栁 園 田

北 原 下 川 青 栁 吉 田 宮 﨑

新 患 血 管 福 田 下 川 福 田 吉 田 青 栁 血 管 新 患 血 管 新 患 茂 地 北 原 宮 﨑 北 原 下 川 乳 腺 呼吸器 新 患 新 患 消化器

●整形外科

診療

時間 月 火 水 木 金

土 第 1 週 第 2 週 第 3 週 第 4 週 第 5 週

午前

杉 野 杉 野 杉 野 杉 野 杉 野 米 倉

杉 野

米 倉

杉 野

米 倉

杉 野

米 倉

杉 野

米 倉

杉 野

新 患 新 患 米 倉 米 倉 米 倉 米 倉 米 倉

新 患 新 患

●脳神経外科

診療 時間

月 火 水 木 金 土

第 1 週 第 2 週 第 3 週 第 4 週 第 5 週

午前 勝 田 勝 田 勝 田 勝田(新患のみ)

勝 田 河 井 勝 田 河 井 河 井 河 井

●耳鼻咽喉科

診療時間 月 火 水 木 金

午後 倉富/柴宮

●消化器センター

診療時間 月 火 水 木 金

午前 宮 﨑 白 井 柳 田 遠 藤 山 懸

※耳鼻咽喉科と乳腺外科は予約制ですので事前にご予約をお取り

ください。また、診療内容によっては予約が必要な場合があります

ので、事前にお問合せください。

当院では、社会福祉法第２条第３項に基づき、生計困難者のうち医療費の負担が困難な方に対して、医療費の一部または全部

を減免することができます。詳しくは本館 2 階の医療福祉相談室へお尋ねください。

情報誌なでしこ通信 第 161 号 令和元年(2019 年)5 月 1 日発行 発行者：済生会唐津病院院長 園田孝志

〒847-0852 佐賀県唐津市元旗町 817 TEL 0955-73-3175（代） FAX 0955-73-5760

【URL】 http://www.saiseikai-karatsu.com 【E-mail】 info@saiseikai-karatsu.com

発行

（午前の部） 8：00～11：30

（午後の部） 11：30～15：00

（消化器ｾﾝﾀｰ） 8：30～10：30

（午前の部） 8：30～12：30

（午後の部） 14：00～17：00

土曜午後･日曜･祝日･12/29～1/3

※急患の場合はこの限りではありません

14：00～20：00

診療時間

受付時間

休診日

面会時間

※土曜は交替制です

※急遽変更になる場合がありますので、当院のホームページもしくは

各診療科に配置しています最新の担当医表でご確認ください。

※てんかん外来は毎月第 2 木曜午後、紹介患者のみの診療となり

ます。診察をご希望の方は紹介状をご持参下さい。