個体機能制御学部門 - 九州大学(KYUSHU ... · 102:2948-2950,...

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― 51 ― Department of Immunobiology and Neuroscience

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個 体 機 能 制 御 学 部 門

D e p a r t m e n t o f I m m u n o b i o l o g y a n d N e u r o s c i e n c e

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免疫遺伝学分野 Division of Immunogenetics

教 授:福井 宣規

Professor:Yoshinori Fukui, M.D., Ph.D

免疫系は「自己」と「非自己」を識別し,非自己成分(微生物,変異タンパク質)をす

みやかに生体より排除し,その恒常性を維持するために構築されたシステムである.免疫

系が真に生体にとって有益な監視システムとして機能するには,免疫系独自に進化した細

胞高次機能の存在が不可欠である.例えば,外来異物やアポトーシス細胞の貪食,リンパ

球やマクロファージの遊走,抗原認識といった細胞高次機能は免疫監視機構の根幹をなす

ものであり,それらはいずれも細胞骨格の再構築により巧妙に制御されている.私達はこ

れまでに免疫系特異的に発現するCDMファミリー分子としてDOCK2を同定し,この分子が

リンパ球や好中球の遊走や活性化において極めて重要な役割を演じることを明らかにした.

本分野では,DOCK2 及びその関連分子を中心に,各種受容体刺激から細胞骨格再構築に至

るシグナル伝達を解明し,免疫系の発生,分化,構築や機能発現における各シグナル伝達

系の意義を明らかにすると共に,その理解に立脚して,自己免疫疾患,移植片拒絶など現

代医学が抱える難治性疾患の新しい治療法,予防法を開発することを目標とし,研究を進

めている.

今年度から,柳原豊史が大学院博士課程学生として,塩川萌が卒研生として,新たに研

究室に参加した.また,主幹教授制度に伴う先導的学術研究拠点として,「免疫機構研究セ

ンター」を設置したのに伴い,全学教育として基礎免疫学を開講した.

A.CDMファミリー分子を介したシグナル伝達機構の解明とその機能解析

突然変異体を用いた遺伝学的解析より,Caenorhabditis elegans(線虫)において生殖巣

の形成に重要な遠端細胞(distal tip cell)の移動に関与するいくつかの分子が同定され

ている.CED-5もその1つであり,ヒトにおけるDOCK180およびDrosophila melanogaster

(ショウジョウバエ)におけるMyoblast City(MBC)と相同性を示すことより,これらの

分子は現在その頭文字をとってCDMファミリー分子とよばれている.これらCDMファミリ

ー分子はいずれもRacの上流で機能することで細胞骨格の再構築に関与すると考えられて

おり,細胞運動以外にも CED-5 はアポトーシス細胞の貪食,MBC は筋芽細胞の融合といっ

た種々の細胞機能制御に関与することが知られている.私達は,マウス胸腺cDNAライブラ

リーよりこのCDMファミリーに属する新しい遺伝子としてDOCK2を単離し,ノックアウト

マウスを作製することで,この分子がRac活性化を介してリンパ球の遊走および免疫シナ

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プス形成を制御することを明らかにすると同時に (Nature 412:826-831, 2001; Immunity

19:119-129, 2003; Immunity 21: 429-441, 2004),その欠損によりアロ移植心臓の長期生

着が可能になることを実証した(J. Exp. Med. 22:1121-1130, 2005).また,DOCK2 が好

中球の遊走や活性酸素産生においても重要な役割を演じることを実証すると共に(J. Cell

Biol. 174:647-652, 2006),アレルギー反応の制御に重要な役割を演じていることを明ら

かにした(Nature Immunology 8:1067-1075, 2007).さらに最近では,DOCK2— GFP 融合タ

ンパク質を発現するノックインマウスを作製し,好中球遊走におけるDOCK2の細胞内動態

が2種類の異なるリン脂質により連続的に制御されていることを実証した(Science

324:384-387, 2009).このような知見をふまえ,本年度は以下のような研究を行った.

a.DOCK2と ELMO1複合体の構造解析とその機能的意義の解明

DOCK2は,DOCKファミリータンパク質に特有のDHR-2ドメイン(DOCK homology region 2

domain)を持ち,このドメインを介して GTP-GDP 交換反応を触媒し,Rac を活性化する.

DOCK2 は試験管内では DHR-2 ドメインだけで Rac を活性化できるが,実際の細胞内では

DOCK2 結合タンパク質である ELMO1 がないとその機能を発揮できない(Blood

102:2948-2950, 2003).しかし,なぜELMO1がないとDOCK2が細胞の中で働くことができ

ないかは不明であった.そこで,理研生命分子システム基盤研究領域と共同して,DOCK2

と ELMO1の複合体の構造解析に取り組んだ.まず,無細胞タンパク質合成系を用いて迅速

なスクリーニングを行い,DOCK2 の N 末端と ELMO1 の C 末端とが結合することで安定な複

合体を形成することを見いだし,その領域を用いてX線結晶構造解析に適した試料を調製,

結晶化し,放射光科学研究施設PF(Photon Factory)および大型放射光施設SPring-8で X

線回折を行った結果,複合体の立体構造を2.1 Å(オングストローム、1 Å=0.1nm)の分解

能で決定することに成功した.

ELMO1の C末端にはアミノ酸の1つであるプロリンが連なった領域(PxxP)があり,DOCK2

の N末端にはこのプロリンと結合することができるSH3ドメインがあるため,これまでこ

の領域が2つのタンパク質を結合させていると考えられていた.しかし,実際の構造はそ

のような単純なものではなく,ELMO1の C末端はDOCK2の SH3 ドメインを取り囲むように

結合していた.さらに,DOCK2 と ELMO1 のアルファへリックス同士が結合し合い,計 5 本

のアルファへリックスから作られるヘリックスバンドルを形成し,全体として DOCK2 と

ELMO1の複合体は強固な構造体を形成していることを見いだした.

構造情報に基づきDOCK2の機能解析を行った結果,単体のDOCK2は,折り畳まれた形で

存在し機能を自己抑制していることが示唆された.単体のELMO1も同様に,折り畳まれた

形で存在し自己抑制していることが知られている.DOCK2 の折り畳まれた形の形成には,

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32番目のグリシンが重要であることが推測されていたが,DOCK2と ELMO1の複合体では,

32番目のグリシンがELMO1と直接結合していた.またELMO1の折り畳まれた形の形成には,

692 番目のメチオニンと 693 番目のグルタミン酸が重要であることが知られていたが,複

合体ではこれらはヘリックスバンドルの中央に存在し,それぞれのアミノ酸がDOCK2と結

合していた.つまり,DOCK2 と ELMO1 が結合し複合体を形成すると,それぞれの折り畳ま

れた形の形成を担っていた部位が複合体結合部位となり,折り畳みを解くことが示唆され

た.この結果からDOCK2と ELMO1は,単体ではそれぞれ折り畳まれた状態で機能を自己抑

制しているが,複合体を形成することで折り畳み状態を解いて互いの自己抑制を解除し,

それぞれ,DOCK2 と ELMO1 複合体の細胞膜への移行を促進し,さらに DOCK2 の Rac 活性化

によりシグナルが伝達され,免疫系細胞の遊走や活性化が起きるという分子メカニズムが

明らかとなった.

b.DOCK2を標的とした創薬研究

DOCK2 は,ケモカイン受容体及び抗原受容体の下流で機能する Rac 活性化のマスター分

子であり,リンパ球の遊走・活性化に重要な役割を演じている.また,DOCK2 の発現は免

疫細胞特異的であり,その欠損によりアロ移植心臓の長期生着が可能になり,自己免疫性

モデルマウスの疾患発症を完全にブロックできる.このことから,DOCK2 は免疫難病を治

療あるいは予防するための分子標的になると期待される.

DOCK2 シグナルをブロックする上で,DHR-2 と Rac,N 末端領域と ELMO の相互作用は,

最も重要なターゲットであると考えられる.前者に関して,DOCK2 による Rac 活性化や免

疫学的機能を,細胞レベルあるいは個体レベルでブロックできる化合物を同定することに

成功した.そこで,この化合物の特性に関して解析を進め,DHR-2ドメインのlobe Bおよ

び C の領域に特異的且つ可逆的に結合すること,in vitro GEF 活性における IC50値が 20

〜25 μM であることを明らかにし,その抑制活性に重要な構造を同定した.一方,後者に

関しては,相互作用依存的に蛍光を発する分割型蛍光タンパクであるmKG-Nと mKG-Cを用

いて,DOCK2と ELMO1の相互作用を可視化するシステムを作製し,in silicoスクリーニン

グであがってきた約 1000 種類の化合物も含め,細胞レベルでのスクリーニングを実施し

10数種類の候補化合物を同定した.

c.DOCK2シグナル伝達機構の解明

DOCK2シグナル伝達の全貌を明らかにする目的でyeast two hybrid,プロテオミクスを用

いたスクリーニングを行い,未知及び既知の分子を含め数種類のDOCK2会合分子を同定し

た.また,DOCK2 欠損 T 細胞に種々の DOCK2 変異体を発現できる実験系を構築し,DOCK2

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ダイマー形成やリン酸化修飾の機能的意義について解析を行った.

d.新規DOCKファミリー分子の同定と機能解析

Rac 以外にも多くの低分子量 G 蛋白質が細胞骨格の再構築に関与し,細胞機能を制御して

いる.今回,免疫系に発現し,Rac 以外の低分子量 G 蛋白質の活性化を制御すると考えら

れる新規DOCKファミリー分子を数種類クローニングし,その生理的機能をノックアウトマ

ウスを用いて解析している.

業績目録

原著論文

1. S.K. Ippagunta, R.K. Subbarao Malireddi, P.J. Shaw, G.A. Neal, L.V. Walle, D.R. Green, Y. Fukui, M.

Lamkanfi, T-D Kanneganti. 2011.

The inflammasome adaptor ASC regulates the function of adaptive immune cells by controlling

Dock2-mediated Rac activation and actin polymerization.

Nature Immunol., 12 : 1010-1018.

2. K. Hanawa-Suetsugu, M. Kukimoto-Niino, C. Mishima-Tsumagari, R. Akasaka, N. Ohsawa, S. Sekine, T.

Ito, N. Tochio, S. Koshiba, T. Kigawa, T. Terada, M. Shirouzu, A. Nishikimi, T. Uruno, T. Katakai, T.

Kinashi, D. Kohda, Y. Fukui, S. Yokoyama. 2012

Structural basis for mutual relief of the Rac guanine nucleotide exchange factor DOCK2 and its partner

ELMO1 from their autoinhibited forms.

Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 109 : 3305-3310.

3. A. Nishikimi, T. Uruno, X. Duan, Q. Cao, Y. Okamura, T. Saitoh, N. Saito, S. Sakaoka, Y. Du, A. Suenaga,

M. Kukimoto-Niino, K. Miyano, K. Gotoh, T. Okabe, F. Sanematsu, Y. Tanaka, H. Sumimoto, T. Honma,

S. Yokoyama, T. Nagano, D. Kohda, M. Kanai, Y. Fukui. 2012

Blockade of inflammatory responses by a small-molecule inhibitor of the Rac activator DOCK2.

Chem. Biol., in press.

4. Y. Harada, Y. Tanaka, M. Terasawa, M. Pieczyk, K. Habiro, T. Katakai, K. Hanawa-Suetsugu, M.

Kukimoto-Niino, T. Nishizaki, M. Shirouzu, X. Duan, T. Uruno, A. Nishikimi, F. Sanematsu, S.

Yokoyama, J.V. Stein, T. Kinashi, Y. Fukui. 2012

DOCK8 is a Cdc42 activator critical for interstitial dendritic cell migration during immune responses.

Blood, in press.

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学会発表

1. 福井宣規 (2012, 3/12).

免疫系細胞高次機能を司る CDM ファミリー分子 DOCK2-その分子基盤と創薬への応用-

平成 23 年度ターゲットタンパク研究プログラム公開シンポジウム,東京.

2. Harada Y, Tanaka Y, Terasawa M, Fukui Y (2012, 1/21-1/23).

Identification of a signaling molecule critical for dendritic cell migration in three-dimensional

environments.

The 21st Hot Spring Harbor Symposium jointly with 9th Global COE International Symposium and 8th

Young Investigators Forum, Fukuoka.

3. Sakai Y, Tanaka Y, Fukui Y (2011,12/22-12/23).

Regulation of NK cell-mediated cytotoxicity by the atypical Rac activators.

The 10th Global COE International Symposium and 7th Young Investigation Forum, Singapore.

4. Yanagihara T, Terasawa M, Uruno T, Mori S, Nishikimi A, Fukui Y (2011, 12/22-23)

Functional significance of DOCK2 dimerization in lymphocyte migration.

The 10th Global COE International Symposium and 7th Young Investigation Forum, Singapore.

5. Harada Y, Tanaka Y, Terasawa M, Fukui Y (2011, 12/22-12/23).

Identification of a signaling molecule critical for dendritic cell migration in three-dimensional

environments.

The 10th Global COE International Symposium and 7th Young Investigation Forum, Singapore.

6. Ogawa K, Tanaka Y, Fukui Y (2011, 12/22-12/23).

Regulation of FcεRI-mediated mast cell degranulation by the atypical GEF.

The 10th Global COE International Symposium and 7th Young Investigation Forum, Singapore.

7. Watanabe M, Nishikimi A, Uruno T, Kukimoto-Niino M, Yokoyama S, Fukui Y (2011, 12/22-12/23).

Structural basis of functional complex formation between DOCK2 and ELMO1.

The 10th Global COE International Symposium and 7th Young Investigation Forum, Singapore.

8. 福井宣規 (2011, 12/9-12/10).

樹状細胞の遊走・活性化における DOCK ファミリー分子の役割とその制御

第 32 回和漢医薬学総合研究所特別セミナー「和漢薬治療のターゲットとしての粘膜免疫機構」,

富山.

9. 寺澤公男,福井宣規 (2011, 11/27-11/29).

リンパ球遊走における DOCK2 ダイマー形成の機能的意義.

第 40 回日本免疫学会学術集会,千葉.

10. 錦見昭彦、田中芳彦、福井宣規 (2011, 11/27-11/29).

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学会発表

1. 福井宣規 (2012, 3/12).

免疫系細胞高次機能を司る CDM ファミリー分子 DOCK2-その分子基盤と創薬への応用-

平成 23 年度ターゲットタンパク研究プログラム公開シンポジウム,東京.

2. Harada Y, Tanaka Y, Terasawa M, Fukui Y (2012, 1/21-1/23).

Identification of a signaling molecule critical for dendritic cell migration in three-dimensional

environments.

The 21st Hot Spring Harbor Symposium jointly with 9th Global COE International Symposium and 8th

Young Investigators Forum, Fukuoka.

3. Sakai Y, Tanaka Y, Fukui Y (2011,12/22-12/23).

Regulation of NK cell-mediated cytotoxicity by the atypical Rac activators.

The 10th Global COE International Symposium and 7th Young Investigation Forum, Singapore.

4. Yanagihara T, Terasawa M, Uruno T, Mori S, Nishikimi A, Fukui Y (2011, 12/22-23)

Functional significance of DOCK2 dimerization in lymphocyte migration.

The 10th Global COE International Symposium and 7th Young Investigation Forum, Singapore.

5. Harada Y, Tanaka Y, Terasawa M, Fukui Y (2011, 12/22-12/23).

Identification of a signaling molecule critical for dendritic cell migration in three-dimensional

environments.

The 10th Global COE International Symposium and 7th Young Investigation Forum, Singapore.

6. Ogawa K, Tanaka Y, Fukui Y (2011, 12/22-12/23).

Regulation of FcεRI-mediated mast cell degranulation by the atypical GEF.

The 10th Global COE International Symposium and 7th Young Investigation Forum, Singapore.

7. Watanabe M, Nishikimi A, Uruno T, Kukimoto-Niino M, Yokoyama S, Fukui Y (2011, 12/22-12/23).

Structural basis of functional complex formation between DOCK2 and ELMO1.

The 10th Global COE International Symposium and 7th Young Investigation Forum, Singapore.

8. 福井宣規 (2011, 12/9-12/10).

樹状細胞の遊走・活性化における DOCK ファミリー分子の役割とその制御

第 32 回和漢医薬学総合研究所特別セミナー「和漢薬治療のターゲットとしての粘膜免疫機構」,

富山.

9. 寺澤公男,福井宣規 (2011, 11/27-11/29).

リンパ球遊走における DOCK2 ダイマー形成の機能的意義.

第 40 回日本免疫学会学術集会,千葉.

10. 錦見昭彦、田中芳彦、福井宣規 (2011, 11/27-11/29).

免疫特異的な Rac 活性化因子 DOCK2 を標的とした免疫抑制剤の開発.

第 40 回日本免疫学会学術集会,千葉.

11. Fukui Y, Sanematsu F, Nishikimi A (2011,11/15-11/16).

Role of phospholipid in DOCK family protein-mediated cellular functions.

第 10 回日本生化学会 JBS バイオフロンティアシンポジウム,福岡.

12. 寺澤公男,宇留野武人,森沙也子,福井宣規 (2011, 6/10-6-11).

リンパ球遊走における DOCK2 ダイマー形成の機能的意義.

第 21 回 Kyoto T Cell Conference,京都.

13. Sanenatsu F, Fukui Y (2011, 6/9-6/10).

Control of cardiovascular development by the atypical Rac activator DOCK180.

The 6th International symposium of Institute Network, Tokyo.

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脳機能制御学分野

Division of Neurofunctional Genomics

教 授:中別府 雄作

Professor:Yusaku Nakabeppu, D.V.M., D. Sc.

生物にとって,その遺伝情報を担うゲノム DNA を細胞から細胞へ,親から子へと正確に

伝え維持することは最も基本的な生物学的機能であるが,ゲノム DNA やその前駆体であ

るヌクレオチドは,酸素呼吸の過程で必然的に発生する活性酸素や生体防御のために生

体が能動的に産生する活性酸素によって酸化される危険に常に曝されている.活性酸素

に曝された DNA やヌクレオチドは様々な酸化的化学修飾を受けるが,このような酸化損

傷は修復,除去されないと突然変異を引き起こすことで細胞のがん化の原因となり,あ

るいは細胞死を引き起こすことで多くの変性疾患の原因となる.本分野では,活性酸素

による非増殖性細胞の障害として「脳・神経細胞死」に,また増殖性細胞の障害として

「突然変異と発がん」に注目して「活性酸素によるゲノム障害とその防御機構」の解明

を目指している.神経細胞はその個体の生涯を通して生存し機能する必要があるが,分

裂能を欠くため加齢に伴う活性酸素等による障害により変性脱落する運命にある.その

ため成体においても神経幹細胞からの新たな神経細胞の供給など神経回路網を保持す

る機構が幾重にも用意されていると考えられる.成体脳における神経新生は脳虚血や神

経興奮毒性などに伴い脳障害が引き起こされた際に著しく亢進する.本分野では,これ

までに脳における酸化ストレス応答遺伝子として前初期遺伝子群の jun,fos ファミリ

ー遺伝子とその下流で発現が制御される遺伝子群を同定しており,「成体脳における

脳・神経細胞の運命決定機構」の制御機構の解明を進めている.

平成23年度の人事異動は次の通りであった.4月には,長寿科学振興財団リサー

チ・レジデントの Nona Abolhassani が退職の上米国へ留学した.米嶋康臣(医学系学

府博士課程大学院2年生)が当分野で研究を開始した.瀧口友香と Erika Katherine

Castillo Carrión が医科学専攻(修士課程)に入学した.秋本頼子が学術研究員とし

て,太田詠子がテクニカルタッフとして赴任した.4月に先導的学術研究拠点としてヌ

クレオチドプール研究センターが発足し,恒常性維持機構研究部門を中別府雄作,作見

邦彦,土本大介,岡素雅子が兼任し,5月には盛子敬が外国人研究者(助教)として採

用された.10月には学術研究員の猪山輝昭が退職の上,米国へ留学した.平成24年

3月に大学院生の外間政朗が単位修得の上退学し,関鴻斌が研究生を修了した.平成2

4年4月から理化学研究所への採用が決定したテクニカルスタッフの湯通堂紀子が退

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脳機能制御学分野

Division of Neurofunctional Genomics

教 授:中別府 雄作

Professor:Yusaku Nakabeppu, D.V.M., D. Sc.

生物にとって,その遺伝情報を担うゲノム DNA を細胞から細胞へ,親から子へと正確に

伝え維持することは最も基本的な生物学的機能であるが,ゲノム DNA やその前駆体であ

るヌクレオチドは,酸素呼吸の過程で必然的に発生する活性酸素や生体防御のために生

体が能動的に産生する活性酸素によって酸化される危険に常に曝されている.活性酸素

に曝された DNA やヌクレオチドは様々な酸化的化学修飾を受けるが,このような酸化損

傷は修復,除去されないと突然変異を引き起こすことで細胞のがん化の原因となり,あ

るいは細胞死を引き起こすことで多くの変性疾患の原因となる.本分野では,活性酸素

による非増殖性細胞の障害として「脳・神経細胞死」に,また増殖性細胞の障害として

「突然変異と発がん」に注目して「活性酸素によるゲノム障害とその防御機構」の解明

を目指している.神経細胞はその個体の生涯を通して生存し機能する必要があるが,分

裂能を欠くため加齢に伴う活性酸素等による障害により変性脱落する運命にある.その

ため成体においても神経幹細胞からの新たな神経細胞の供給など神経回路網を保持す

る機構が幾重にも用意されていると考えられる.成体脳における神経新生は脳虚血や神

経興奮毒性などに伴い脳障害が引き起こされた際に著しく亢進する.本分野では,これ

までに脳における酸化ストレス応答遺伝子として前初期遺伝子群の jun,fos ファミリ

ー遺伝子とその下流で発現が制御される遺伝子群を同定しており,「成体脳における

脳・神経細胞の運命決定機構」の制御機構の解明を進めている.

平成23年度の人事異動は次の通りであった.4月には,長寿科学振興財団リサー

チ・レジデントの Nona Abolhassani が退職の上米国へ留学した.米嶋康臣(医学系学

府博士課程大学院2年生)が当分野で研究を開始した.瀧口友香と Erika Katherine

Castillo Carrión が医科学専攻(修士課程)に入学した.秋本頼子が学術研究員とし

て,太田詠子がテクニカルタッフとして赴任した.4月に先導的学術研究拠点としてヌ

クレオチドプール研究センターが発足し,恒常性維持機構研究部門を中別府雄作,作見

邦彦,土本大介,岡素雅子が兼任し,5月には盛子敬が外国人研究者(助教)として採

用された.10月には学術研究員の猪山輝昭が退職の上,米国へ留学した.平成24年

3月に大学院生の外間政朗が単位修得の上退学し,関鴻斌が研究生を修了した.平成2

4年4月から理化学研究所への採用が決定したテクニカルスタッフの湯通堂紀子が退

職した.

A.酸化ストレスはDNA修復酵素MUTYHに依存して神経変性を引き起こ

酸化ストレスが脳神経変性疾患の原因の一つとして注目されているが,酸化ストレスが

どのような分子メカニズムで神経細胞脱落を引き起こすかは未解明である.我々は, 代

表的な酸化塩基である 8-オキソグアニン(8-oxoG)のゲノム蓄積を抑制する遺伝子群

(Mth1, Ogg1, Mutyh)を欠損するマウスを用いて,ミトコンドリア毒である 3-ニトロ

プロピオン酸(3-NP)投与により誘発される運動機能障害および線条体変性の発生メカ

ニズムに注目して解析を行った.

3つの遺伝子を単独欠損するマウスと Ogg1/Mth1 二重欠損マウス,そして野生型マウ

スに 3-NP を投与したところ,Ogg1/Mth1 二重欠損マウスが最も重篤な運動機能障害を

呈し,線条体に高度な 8-oxoG の蓄積を伴う神経細胞脱落を呈することが明らかになっ

た.3-NP による 8-oxoG の蓄積は線条体変性の早期に主に中型有棘神経細胞のミトコン

ドリア DNA に認められ,ミトコンドリア機能障害を介してカルパイン活性化を伴う神経

細胞死を引き起こす.一方,線条体変性の後期には神経細胞脱落部に増生したミクログ

リアの核DNAへの8-oxoG蓄積が認められ,PARPの活性化とAIFの核移行が認められた.

3-NP による線条体神経細胞脱落,ミクログリオーシス,そして運動機能障害は,いず

れもカルパイン阻害剤,あるいは PARP 阻害剤の投与により有意に軽減することが確認

された.

以前,我々は細胞レベルでの解析から,核 DNA あるいはミトコンドリア DNA に 8-oxoG

が蓄積すると MUTYH に依存した DNA 一本鎖切断の蓄積によりプログラム細胞死が誘導

される事を報告している(岡ら,EMBO J, 2008).Ogg1 単独欠損マウスと Ogg1/Mutyh

二重欠損マウスの 3-NP 投与に対する応答を比較したところ,Ogg1/Mutyh 二重欠損マウ

スにおいては運動機能障害が顕著に軽減し,線条体における神経細胞脱落およびミクロ

グリオーシスもほとんど認められなかった.Ogg1 欠損マウス線条体の中型有棘神経細

胞のミトコンドリア DNA とミクログリアの核 DNA に認められた一本鎖切断の蓄積も

Ogg1/Mutyh 二重欠損マウスにおいては全く認められなかった.

3-NP はミトコンドリア呼吸鎖(Complex II)のクエン酸脱水素酵素活性を阻害する

ことでミトコンドリアにおける活性酸素の生成を亢進させるため,さまざまな機能分子

の酸化を引き起こすことで細胞機能障害を引き起こす.我々は既に,ヒト MTH を高発現

Page 10: 個体機能制御学部門 - 九州大学(KYUSHU ... · 102:2948-2950, 2003).しかし,なぜelmo1がないとdock2が細胞の中で働くことができ ないかは不明であった.そこで,理研生命分子システム基盤研究領域と共同して,dock2

― 60 ―

するトランスジェニックマウスが3-NPによる8-oxoGの線条体蓄積と線条体変性に対し

て顕著な抵抗性を示すことを報告している.Ogg1/Mth1 二重欠損マウスが最も 3-NP の

神経毒性に対して感受性が高いことをあわせて考えると,ヌクレオチドプール中のdGTP

の酸化で生じた8-oxo-dGTPがミトコンドリアDNA中に蓄積した8-oxoGの起源であると

結論できる.細胞分裂しない神経細胞では核 DNA は複製されないが,ミトコンドリアは

神経細胞の機能維持に不可欠なエネルギーを供給するためにその DNA を常に複製し、新

しいミトコンドリアをシナプス等に供給している.ヌクレオチドプール中に生成された

8-oxo-dGTP が DNA 中に取り込まれるには DNA 複製が不可欠である.3-NP を投与した

Ogg1/Mth1 二重欠損マウスの神経細胞では複製するミトコンドリア DNA のみに 8-oxoG

が高度に蓄積し,さらにその後の複製に際して DNA 中に存在する 8-oxoG に対して取り

込まれたアデニンを MUTYH が除去することで開始される塩基除去修復の中間産物であ

る一本鎖切断の生成が過剰となり,ミトコンドリア DNA が分解枯渇したと考えられる.

その結果,ミトコンドリア膜電位が維持されなくなり,細胞質に放出された Ca イオン

によって活性化されたカルパインに依存した神経細胞死が誘導されると結論される.

一方,神経細胞死はミクログリアの活性化と増殖を誘発するが,活性化ミクログリア

はそれ自身が NOX 等により活性酸素を生成するために,ミクログリアのヌクレオチドプ

ールにも 8-oxo-dGTP が蓄積する.ミクログリアは分裂増殖に際して核 DNA を複製する

ことから,ヌクレオチドプールからその核 DNA 中に 8-oxoG が取り込まれて蓄積する.

核 DNA 中に多量に蓄積した 8-oxoG もその後の複製に際してアデニンと対合し,MUTYH

による塩基除去修復の標的となる.その結果,核 DNA の特に新生鎖に一本鎖切断が蓄積

するために PARP が活性化され,その下流でミトコンドリアに局在する AIF が切断され

核に移行してアポトーシスを誘導すると考えられる.このような状況はミクログリオー

シスをさらに増悪させ,線条体の変性を著しく促進すると考えられる.

以上より,酸化ストレスによりヌクレオチドプールに蓄積する 8-oxo-dGTP は神経細

胞のミトコンドリア DNA とミクログリアの核 DNA に取り込まれるが,MTH1 による

8-oxo-dGTP の分解・排除と OGG1 による DNA 中の 8-oxoG の除去修復でその蓄積が低い

レベルに維持されていることが明らかになった.また,多量の 8-oxoG がミトコンドリ

アDNAや核DNAに蓄積するとMUTYHによって開始される塩基除去修復に依存して2つの

異なる細胞死の経路が活性化され,神経細胞死とともにミクログリオーシスが増悪し,

重篤な神経変性を引き起こすことが明らかになった.

8-oxoG はパーキンソン病,アルツハイマー病,ハンチントン舞踏病など多くの神経

Page 11: 個体機能制御学部門 - 九州大学(KYUSHU ... · 102:2948-2950, 2003).しかし,なぜelmo1がないとdock2が細胞の中で働くことができ ないかは不明であった.そこで,理研生命分子システム基盤研究領域と共同して,dock2

― 61 ―

変性疾患で神経細胞のミトコンドリア DNA に蓄積することが報告されており,これらの

神経変性疾患に共通のメカニズムとして MUTYH に依存した細胞死制御の経路が関与し

ている可能性が強く示唆された.

B.遺伝性の網膜変性モデルマウスにおけるヒトMTH1の高発現は光受容体

細胞の酸化的DNA損傷の蓄積と細胞死を抑制する

網膜色素変性症は光受容体細胞死を伴う遺伝性の網膜変性疾患の1つで,遺伝的には多

様な遺伝子の関与が示唆されており,世界中で100万人以上の患者が存在するとされ

ている.網膜色素変性症の病因の1つとして酸化ストレスの関与が示唆されているが、

酸化ストレスから光受容体細胞死にいたるメカニズムは不明な点が多い。我々は,酸化

ストレスのマーカーとして 8-oxo-dG に注目し,網膜色素変性症患者の硝子体および網

膜色素変性症モデル動物の網膜サンプルを用いてその蓄積を検討した.ヒトの網膜色素

変性症患者から提供された硝子体では硝子体液中に排泄された 8-oxo-dG のレベルが,

非変性対照群に比べて4倍以上高いレベルであった.一方,PdeB 遺伝子に変異を持つ

rd10 マウスと Mertk 遺伝子に変異を持つ RCS ラットでは,野生型コントロールに比べ

て光受容体細胞で 8-oxo-dG のシグナルの増加が観察されたが、特に網膜の外顆粒層で

その増加は顕著であり,シグナルは主に核内に検出された.8-oxo-dGTP 分解酵素をコ

ードするヒト MTH1 (hMTH1)のトランスジーンを導入した rd10 マウスでは,8-oxo-dG

の光受容体細胞核への蓄積と TUNEL で検出される DNA 一本鎖切断が顕著に低下し、光受

容体細胞の脱落が有意に抑制された.また,ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼの活性

化に起因するポリ(ADP-リボシル)化タンパク質とアポトーシス誘導因子(AIF)の核内

移行も顕著に抑制されていた。以上より,遺伝性の網膜変性モデルでは,酸化ストレス

の亢進により光受容体細胞のヌクレオチドプール中に蓄積した 8-oxo-dGTP が DNA 複製

を経て核 DNA に取り込まれ,その修復過程で蓄積した DNA 一本鎖切断が PARP の活性化

と AIF の核移行を引き起こすことで,光受容体細胞死を引き起こすことが示された。ま

た,MTH1 の発現誘導は、網膜色素変性症における光受容体細胞死を抑制できる新規治

療アプローチとなる可能性が示唆された.本研究は,ヌクレオチドプール研究センタ

ー・病態研究部門・池田康博博士との共同研究である.

C.剖検脳マイクロアレイ解析による脳疾患遺伝子発現プロファイリング 我々は脳疾患に関連する遺伝子発現の変化を網羅的に解析するため,久山町研究の一環

として剖検脳から抽出した RNA を用いてマイクロアレイ解析を行っている.解析の対象

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となる RNA は非常に分解が早いので,死亡から剖検までの経過時間(PMI,Post Mortem

Interval)が長くなると組織変性が進むために RNA も分解され定量的な遺伝子発現解析

が不可能となる.そこで我々は剖検脳の各部位(前頭葉,側頭葉,後頭葉,海馬)から

抽出した RNA を Agilent Bioanalyzer で解析し,定量的な RIN (RNA integrity number)

値を用いてその品質を評価した.予備検討の結果,RIN 値が7以上のサンプルで安定し

た発現データが得られたことから,この条件をみたした剖検脳から調整した RNA を用い

てマイクロアレイ解析を行った.剖検脳83症例中,前頭葉43例,側頭葉36例,後

頭葉16例,海馬26例が解析対象となった.マイクロアレイシステムは Affymetrix

Human Gene 1.0 ST Array を用いた.

得られたデータを Agilent Genespring GX を用いて疾患情報(病歴,病理所見)と合

わせて解析を進めた.部位ごとにクラスター解析を行うと疾患の有無や性別によってク

ラスターが形成された.神経変性疾患の患者の脳では神経細胞脱落やグリオーシスが顕

著なことから,細胞集団の構成が大きく変化していることが予想される,そこで,脳を

構成する神経細胞,アストロサイト,オリゴデンドロサイト,ミクログリアのマーカー

遺伝子群の発現変化を詳細に解析したところ,脳の病理変化を反映する細胞集団の変化

の程度を推定することが可能となった.今後は,認知症の中でアルツハイマー病と脳血

管性認知症に注目して特異的な遺伝子発現プロファイルを明らかにすることで認知症

関連遺伝子発現ネットワークの発見が可能になると期待している.

D.fosB遺伝子の完全欠損マウスは成体海馬歯状回における神経新生の低

下をきたし,てんかんとうつ病を併発する

AP-1 (Activator Protein-1) コンプレックスを構成する転写因子ファミリー Jun/Fos

は,細胞の増殖や分化を制御する多様な細胞内・細胞外シグナルによって発現が誘導さ

れる.fosB 遺伝子は fos ファミリー遺伝子の中で唯一alternative splicingと

alternative translation initiation により複数のアイソフォーム (FosB,ΔFosB,

Δ2ΔFosB) を生じるユニークな遺伝子である.その発現は,コカインや様々なドパミ

ン作動薬の投与や一過性の前脳虚血後,または電気刺激やカイニン酸刺激によって引き

起こされるてんかん後に線条体や海馬において強く誘導される.これまでに,我々は脳

における fosB 遺伝子産物の機能解明を目的として,fosB 完全欠損アリル (fosBG)と

ΔFosB/Δ2ΔFosB は発現するが FosB は発現しない fosBd アリルをそれぞれヘテロ,

ホモに持つマウスを用いた解析から,FosBとΔFosB/Δ2ΔFosBがともにストレス応答性

の制御に関与する事を明らかにし,さらにFosBの存在下でΔFosB/Δ2ΔFosBの発現量が

Page 13: 個体機能制御学部門 - 九州大学(KYUSHU ... · 102:2948-2950, 2003).しかし,なぜelmo1がないとdock2が細胞の中で働くことができ ないかは不明であった.そこで,理研生命分子システム基盤研究領域と共同して,dock2

― 63 ―

増加することがストレス耐性の獲得に重要であることを報告してきた.特に,fosB 完

全欠損は治療抵抗性のうつ様行動を示す事から,その分子基盤を明らかにする目的で,

海馬におけるfosB遺伝子産物の発現と成体脳神経新生におけるfosB遺伝子産物の役割

について詳細な解析を計画した.

成体海馬において,fosB 遺伝子産物は成熟神経細胞で比較的高いレベルの発現がみ

られ,アストロサイトと休止期の神経幹細胞・前駆細胞と分化過程の幼若な神経細胞で

低いレベルではあるが発現が認められた.増殖中の神経前駆細胞ではその発現は認めら

れず,神経分化に伴い発現が上昇する事が明らかになった.このような fosB 遺伝子産

物の発現は興奮毒性を発揮するカイニン酸投与後数時間で顕著に増加し,FosB の発現

レベルは24時間後には定常レベルにまで低下したが,ΔFosB と Δ2ΔFosB の発現量

はピーク時のレベルを維持していた.fosB 完全欠損マウスの海馬歯状回では定常状態

での神経新生が野生型の80%レベルに低下していたが,fosBd/dマウスでは逆に増加す

る傾向が認められた.カイニン酸投与後のストレス誘発神経新生は fosB 完全欠損マウ

スでは野生型の50%以下であった.興味深い事に fosBd/d マウスでは野生型の70%

レベルの神経新生が観察された.以上より,fosB 遺伝子産物は成体マウス海馬におけ

る神経幹細胞・前駆細胞の増殖を促進的に制御し,少なくとも定常状態の神経新生はΔ

FosB/Δ2ΔFosB のみで十分維持できることが明らかになった.さらに我々は,fosB 完

全欠損マウスでは海馬歯状回の顆粒層下層で増殖分化した幼若神経細胞の顆粒層へ移

動する割合が野生型および fosBd/d マウスと比べて低下し,逆に海馬門への移動が亢進

する事を見出した.

fosB 完全欠損マウスでは,生後13週以降から海馬に焦点を持つ自然発症てんかん

が観察され,80週齢までに少なくとも80%のマウスにおいててんかん発作が認めら

れた.50−70週令の fosB 完全欠損マウスではてんかん患者で観察される海馬硬化に

相当する海馬の構造異常や萎縮が認められた.fosBd/dマウスではてんかんと海馬の構造

異常や萎縮いずれもが全く認められず,ΔFosB/Δ2ΔFosB のみでもてんかんや海馬の

構造異常を抑制できる事が明らかになった.

海馬 RNA のマイクロアレイ解析から,fosB 完全欠損マウスでは神経新生の促進,う

つとてんかんの抑制に関わる遺伝子(Gal,Trh, Vgf など)の発現が有意に減少して

いる事が明らかになった.これらの遺伝子はプロモーターに Activator protein -1

(AP-1)結合部位を有し,Jun/Fos 複合体によって発現が制御されることから,FosB,Δ

FosB/Δ2ΔFosB がその発現制御を介して神経新生を促進的に制御することで,てんか

んとうつ病の発症を抑制している可能性が示唆された.

Page 14: 個体機能制御学部門 - 九州大学(KYUSHU ... · 102:2948-2950, 2003).しかし,なぜelmo1がないとdock2が細胞の中で働くことができ ないかは不明であった.そこで,理研生命分子システム基盤研究領域と共同して,dock2

― 64 ―

てんかん患者においては30%から50%の割合でうつ病を併発する事が明らかに

なっており,その分子機序の解明が求められている.うつ病とてんかんはいずれも海馬

神経新生の異常と相関することが知られている.fosB 完全欠損マウスは,一遺伝子の

欠損が海馬神経新生の低下,うつ病とてんかん発症の原因となることを示した初めての

動物モデルであり,今後このモデルマウスを用いてうつ病とてんかんの発症機序の解明

が進むことが期待される.また,うつ病およびてんかんは特定の遺伝的背景で発症頻度

が上昇することが知られていることから,ヒトにおいてこれらの疾患感受性に関与する

FOSB 遺伝子の変異,あるいはその発現の変化をもたらす他の遺伝子の変異などをスク

リーニングすることで,これらの複雑な疾患の診断と治療への新しい分子標的が提供で

きると考えられる.

業績目録

原著論文 1. Kunisada, M., Yogianti, F., Sakumi, K., Ono, R., Nakabeppu, Y., and Nishigori, C. 2011.

Increased Expression of Versican in the Inflammatory Response to UVB- and Reactive Oxygen

Species-Induced Skin Tumorigenesis.

Am J Pathol 179: 3056-3065.

2. Nishimura, Y., Yoshioka, K., Takiguchi, S., Bereczky, B., Nakabeppu, Y., and Itoh, K. 2011.

A Role for SNX1 in the Regulation of EGF-Dependent Phosphorylated EGFR Endocytosis Via the

Early/Late Endocytic Pathway in a Gefitinib- Sensitive Human Lung Cancer Cells.

Curr Signal Transduct Ther 6: 383-395.

3. Ohnishi, Y.N., Ohnishi, Y.H., Hokama, M., Nomaru, H., Yamazaki, K., Tominaga, Y., Sakumi, K.,

Nestler, E.J., and Nakabeppu, Y. 2011.

FosB is essential for the enhancement of stress tolerance and antagonizes locomotor sensitization by

FosB.

Biol Psychiatry 70: 487-495.

4. Iwama, E., Tsuchimoto, D., Iyama, T., Sakumi, K., Nakagawara, A., Takayama, K., Nakanishi, Y.,

and Nakabeppu, Y. 2011.

Cancer-related PRUNE2 protein is associated with nucleotides and is highly expressed in mature

nerve tissues.

Page 15: 個体機能制御学部門 - 九州大学(KYUSHU ... · 102:2948-2950, 2003).しかし,なぜelmo1がないとdock2が細胞の中で働くことができ ないかは不明であった.そこで,理研生命分子システム基盤研究領域と共同して,dock2

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てんかん患者においては30%から50%の割合でうつ病を併発する事が明らかに

なっており,その分子機序の解明が求められている.うつ病とてんかんはいずれも海馬

神経新生の異常と相関することが知られている.fosB 完全欠損マウスは,一遺伝子の

欠損が海馬神経新生の低下,うつ病とてんかん発症の原因となることを示した初めての

動物モデルであり,今後このモデルマウスを用いてうつ病とてんかんの発症機序の解明

が進むことが期待される.また,うつ病およびてんかんは特定の遺伝的背景で発症頻度

が上昇することが知られていることから,ヒトにおいてこれらの疾患感受性に関与する

FOSB 遺伝子の変異,あるいはその発現の変化をもたらす他の遺伝子の変異などをスク

リーニングすることで,これらの複雑な疾患の診断と治療への新しい分子標的が提供で

きると考えられる.

業績目録

原著論文 1. Kunisada, M., Yogianti, F., Sakumi, K., Ono, R., Nakabeppu, Y., and Nishigori, C. 2011.

Increased Expression of Versican in the Inflammatory Response to UVB- and Reactive Oxygen

Species-Induced Skin Tumorigenesis.

Am J Pathol 179: 3056-3065.

2. Nishimura, Y., Yoshioka, K., Takiguchi, S., Bereczky, B., Nakabeppu, Y., and Itoh, K. 2011.

A Role for SNX1 in the Regulation of EGF-Dependent Phosphorylated EGFR Endocytosis Via the

Early/Late Endocytic Pathway in a Gefitinib- Sensitive Human Lung Cancer Cells.

Curr Signal Transduct Ther 6: 383-395.

3. Ohnishi, Y.N., Ohnishi, Y.H., Hokama, M., Nomaru, H., Yamazaki, K., Tominaga, Y., Sakumi, K.,

Nestler, E.J., and Nakabeppu, Y. 2011.

FosB is essential for the enhancement of stress tolerance and antagonizes locomotor sensitization by

FosB.

Biol Psychiatry 70: 487-495.

4. Iwama, E., Tsuchimoto, D., Iyama, T., Sakumi, K., Nakagawara, A., Takayama, K., Nakanishi, Y.,

and Nakabeppu, Y. 2011.

Cancer-related PRUNE2 protein is associated with nucleotides and is highly expressed in mature

nerve tissues.

J Mol Neurosci 44: 103-114.

5. Guikema, J.E., Gerstein, R.M., Linehan, E.K., Cloherty, E.K., Evan-Browning, E., Tsuchimoto, D.,

Nakabeppu, Y., and Schrader, C.E. 2011.

Apurinic/apyrimidinic endonuclease 2 is necessary for normal B cell development and recovery of

lymphoid progenitors after chemotherapeutic challenge.

J Immunol 186: 1943-1950.

総説

1. Fujita, K., Nakabeppu, Y., and Noda, M. 2011.

Therapeutic effects of hydrogen in animal models of Parkinson's disease.

Parkinson's disease 2011: 307875.

2. Oka, S., and Nakabeppu, Y. 2011.

DNA glycosylase encoded by MUTYH functions as a molecular switch for programmed cell death

under oxidative stress to suppress tumorigenesis.

Cancer Sci 102: 677-682.

3. Ihara, H., Sawa, T., Nakabeppu, Y., and Akaike, T. 2011.

Nucleotides function as endogenous chemical sensors for oxidative stress signaling.

J Clin Biochem Nutr 48: 33-39.

4. 作見 邦彦, 土本 大介, 中別府 雄作. 2011

ニトロソ化ストレスによるイノシン三リン酸の生成と細胞応答

細胞工学 第 31 巻 175-180.

学会発表

1. Noriko Yutsudo, Takashi Kamada, Hiroko Nomaru, Yoko H. Ohnishi, Yoshinori N. Ohnishi,

Kosuke Kajitani, Kunihiko Sakumi, Hiroshi Shigeto, Yusaku Nakabeppu (2011/6/2).

ΔFosB and/or Δ2ΔFosB regulate proliferation of adult hippocampal neural progenitor cells and

suppress spontaneous epileptic seizures.

Neurogenesis 2011, Kobe.

2. Noriko Yutsudo, Takashi Kamada, Hiroko Nomaru, Yoko H. Ohnishi, Yoshinori N. Ohnishi,

Kosuke Kajitani, Kunihiko Sakumi, Hiroshi Shigeto, Yusaku Nakabeppu (2011/8/4).

Fosb products regulate proliferation of adult hippocampal neural progenitor cells and suppress

spontaneous epileptic seizures.

Page 16: 個体機能制御学部門 - 九州大学(KYUSHU ... · 102:2948-2950, 2003).しかし,なぜelmo1がないとdock2が細胞の中で働くことができ ないかは不明であった.そこで,理研生命分子システム基盤研究領域と共同して,dock2

― 66 ―

2011 International Summer Conference for Neurons and Brain Disease, Toyama.

3. Yusaku Nakabeppu (2011/9/2).

8-Oxoguanine, a spontaneously oxidized guanine base, promotes somatic and meiotic recombination,

thus contributing to carcinogenesis and genomic diversity.

The 5th Biennial Meeting of Society for Free Radical Research-Asia (SFRR-Asia), 8th Conference

of Asian Society for Mitochondrial Research and Medicine (ASMRM), and 11th Conference of

Japanese Society of Mitochondrial Research and Medicine (J-mit), Kagoshim.

4. 中別府雄作,猪山輝昭,岡素雅子,盛子敬,作見邦彦,土本大介(2011//9/4).

活性分子種による核酸の化学修飾と生体応答

第 2 回 Molecular Cardiovascular Conference Ⅱ,余市.

5. Mami Noda, Kyota Fujita, Mizuho A. Kido, Yusaku Nakabeppu (2011/9/12).

The molecular neurobiology of anti-oxidative stress induced by hydrogen.

7th Congress of the Federation of Asian and Oceanian Physiological Societyies (FAOPS), Taipei

Taiwan.

6. 能丸 寛子,大西 克典,外間 政朗,湯通堂 紀子,中別府 雄作 (2011/9/15).

脳内細胞における fosBによる遺伝子プロファイルの網羅的解析

第 34 回日本神経科学大会,横浜.

7. 盛 子敬,中別府 雄作 (2011/9/15).

マウス黒質における核酸の酸化損傷防御酵素群,MTH1, OGG1, MUTYH の領域特異的な発

第 34 回日本神経科学大会,横浜.

8. 湯通堂 紀子,鎌田 崇嗣,能丸 寛子,大西(本田) 陽子,大西 克典,梶谷 康介,作見 邦

彦,重藤 寛史,中別府 雄作 (2011/9/16).

ΔFosB/Δ2ΔFosB は成体海馬神経前駆細胞の増殖制御とてんかん自然発症の抑制に働く

第 34 回日本神経科学大会,横浜.

9. 中別府雄作 (2011/9/17).

活性分子種による核酸の化学修飾と生体応答

日本植物学会 第 75 回大会,東京.

10. 土本 大介,猪山 輝昭,アボルハッサニ ノナ,米嶋 康臣,作見 邦彦,中別府 雄作

(2011/9/20).

ほ乳動物細胞におけるデオキシイノシンヌクレオチドによるゲノム不安定化とその防御機

Page 17: 個体機能制御学部門 - 九州大学(KYUSHU ... · 102:2948-2950, 2003).しかし,なぜelmo1がないとdock2が細胞の中で働くことができ ないかは不明であった.そこで,理研生命分子システム基盤研究領域と共同して,dock2

― 67 ―

2011 International Summer Conference for Neurons and Brain Disease, Toyama.

3. Yusaku Nakabeppu (2011/9/2).

8-Oxoguanine, a spontaneously oxidized guanine base, promotes somatic and meiotic recombination,

thus contributing to carcinogenesis and genomic diversity.

The 5th Biennial Meeting of Society for Free Radical Research-Asia (SFRR-Asia), 8th Conference

of Asian Society for Mitochondrial Research and Medicine (ASMRM), and 11th Conference of

Japanese Society of Mitochondrial Research and Medicine (J-mit), Kagoshim.

4. 中別府雄作,猪山輝昭,岡素雅子,盛子敬,作見邦彦,土本大介(2011//9/4).

活性分子種による核酸の化学修飾と生体応答

第 2 回 Molecular Cardiovascular Conference Ⅱ,余市.

5. Mami Noda, Kyota Fujita, Mizuho A. Kido, Yusaku Nakabeppu (2011/9/12).

The molecular neurobiology of anti-oxidative stress induced by hydrogen.

7th Congress of the Federation of Asian and Oceanian Physiological Societyies (FAOPS), Taipei

Taiwan.

6. 能丸 寛子,大西 克典,外間 政朗,湯通堂 紀子,中別府 雄作 (2011/9/15).

脳内細胞における fosBによる遺伝子プロファイルの網羅的解析

第 34 回日本神経科学大会,横浜.

7. 盛 子敬,中別府 雄作 (2011/9/15).

マウス黒質における核酸の酸化損傷防御酵素群,MTH1, OGG1, MUTYH の領域特異的な発

第 34 回日本神経科学大会,横浜.

8. 湯通堂 紀子,鎌田 崇嗣,能丸 寛子,大西(本田) 陽子,大西 克典,梶谷 康介,作見 邦

彦,重藤 寛史,中別府 雄作 (2011/9/16).

ΔFosB/Δ2ΔFosB は成体海馬神経前駆細胞の増殖制御とてんかん自然発症の抑制に働く

第 34 回日本神経科学大会,横浜.

9. 中別府雄作 (2011/9/17).

活性分子種による核酸の化学修飾と生体応答

日本植物学会 第 75 回大会,東京.

10. 土本 大介,猪山 輝昭,アボルハッサニ ノナ,米嶋 康臣,作見 邦彦,中別府 雄作

(2011/9/20).

ほ乳動物細胞におけるデオキシイノシンヌクレオチドによるゲノム不安定化とその防御機

日本遺伝学会第 83 回大会,京都.

11. 大野 みずき,作見 邦彦,古市 正人,中西 恵美,續 輝久,中別府 雄作,8-Oxoguanine は

DNA 鎖切断を誘発することで減数分裂期の相同染色体組換え頻度を上昇させる,日本遺伝

学会第 83 回大会,京都,2100/9/20-9/22 (9/21).

12. 外間 政朗 岩城 徹, 清原 裕, 佐々木 富男,中別府 雄作, 剖検脳マイクロアレイ解析によ

る脳疾患遺伝子発現プロファイリング,脳神経外科学会第 70 回学術総会,横浜,

2011/10/12-10/14 (10/13).

13. K. Fujita, F. Inoue; M. Yamafuji, K. Beppu, M. A. Kido, Y. Tanaka, Y. Nakabeppu, M. Noda

(2011/11/12)

Hydrogen confers resistance to neuronal loss on dopaminergic neurons in mice model of Parkinson’s

disease

41st Annual meeting of Society for Neuroscience, Washington, DC, USA.

14. H. Nomaru, N. Yutsudo, M. Hokoma, Y. Nakabeppu (2011/11/15).

Comprehensive analysis of gene expression regulated by fosB gene in neuron and glia

41st Annual meeting of Society for Neuroscience, Washington, DC, USA.

15. M. Hokama, T. Iwaki, K. Sasaki, Y. Kiyohara, T. Sasaki, Y. Nakabeppu (2011/11/16).

Gene expression profiling of postmortem brains of patients with Alzheimer’s disease pathology: The

Hisayama Study

41st Annual meeting of Society for Neuroscience, Washington, DC, USA.

16. 岡 素雅子,フリオ レオン,作見 邦彦,土本 大介,中別府 雄作 (2011/11/21).

MUTYH は p53 による発がん抑制のメディエータである

第 40 回日本環境変異原学会シンポジウム,東京.

17. 盛 子敬,岡 素雅子,土本 大介,作見 邦彦,中別府 雄作 (2011/11/19).

酸化ストレスは DNA 修復酵素 MUTYH に依存して神経変性を引き起こす

第4回 Kyushu CVD Conference,福岡.

18. 中別府雄作 (2011/12/3).

アルツハイマー病の分子機構〜遺伝子発現機構からのアプローチ

Hisayama Study Conference 2011, 福岡.

19. Julio Leon, Masaaki Hokama, Sugako Oka, Erika Castillo, Kunihiko Sakumi, Daisuke Tsuchimoto,

Yusaku Nakabeppu (2011/12/13).

Roles of insulin in survival and proliferation of SH-SY5Y neuroblastoma cells under neuronal

differentiation

Page 18: 個体機能制御学部門 - 九州大学(KYUSHU ... · 102:2948-2950, 2003).しかし,なぜelmo1がないとdock2が細胞の中で働くことができ ないかは不明であった.そこで,理研生命分子システム基盤研究領域と共同して,dock2

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第 34 回日本分子生物学会年会,横浜.

20. 岡 素雅子,レオン フリオ,作見 邦彦,土本 大介,中別府 雄作 (2011/12/14).

MUTYH は p53 による発がん抑制のメディエータである,第 34 回日本分子生物学会年会,

横浜.

21. Yoshimichi Nakatsu, Jing Shu Piao, Takuro Isoda, Kunihiko Sakumi, Yusaku Nakabeppu, Teruhisa

Tsuzuki (2011/12/14).

Defects of DNA repair systems against oxidative mutagenesis: implication in oxidative-stress

induced carcinogenesis

第34回日本分子生物学会年会,横浜.

22. Daisuke Tsuchimoto,Teruaki Iyama,Nona Abolhassani,Yasuto Yoneshima,Kunihiko Sakumi,

Naoko Shiomi,Masahiko Mori,Tadahiro Shiomi,Yusaku Nakabeppu (2011/12/15).

Mechanism of genome instability triggered by deoxyinosine nucleotides and defense systems in

mammalian cells

第34回日本分子生物学会年会,横浜.

23. Kunihiko Sakumi, Eiko Ohta, Daisuke Tsuchimoto, Yusaku Nakabeppu (2011/12/16).

2-OH-ATP as a candidate molecule for the oxidative stress sensor in mammalian cells

第34回日本分子生物学会年会,横浜.

24. 太田 詠子,土本 大介,作見 邦彦,瀧口 友香,中別府 雄作 (2011/12/16).酸化ヌクレオチ

ド2-OH-ATP による細胞死の制御機構

第34回日本分子生物学会年会,横浜.

25. Noriko Yutsudo, Takashi Kamada, Hiroko Nomaru, Yoko H. Ohnishi, Yoshinori N. Ohnishi,

Kosuke Kajitani, Kunihiko Sakumi, Hiroshi Shigeto, Yusaku Nakabeppu,(2012/1/21).

Mice lacking fosB display impaired adult hippocampal neurogenesis and spontaneous epilepsy

The 21st Hot spring Harbor Symposium jointly with 8th Global COE International Symposium,

Young Investigators Presentation, Fukuoka.

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第 34 回日本分子生物学会年会,横浜.

20. 岡 素雅子,レオン フリオ,作見 邦彦,土本 大介,中別府 雄作 (2011/12/14).

MUTYH は p53 による発がん抑制のメディエータである,第 34 回日本分子生物学会年会,

横浜.

21. Yoshimichi Nakatsu, Jing Shu Piao, Takuro Isoda, Kunihiko Sakumi, Yusaku Nakabeppu, Teruhisa

Tsuzuki (2011/12/14).

Defects of DNA repair systems against oxidative mutagenesis: implication in oxidative-stress

induced carcinogenesis

第34回日本分子生物学会年会,横浜.

22. Daisuke Tsuchimoto,Teruaki Iyama,Nona Abolhassani,Yasuto Yoneshima,Kunihiko Sakumi,

Naoko Shiomi,Masahiko Mori,Tadahiro Shiomi,Yusaku Nakabeppu (2011/12/15).

Mechanism of genome instability triggered by deoxyinosine nucleotides and defense systems in

mammalian cells

第34回日本分子生物学会年会,横浜.

23. Kunihiko Sakumi, Eiko Ohta, Daisuke Tsuchimoto, Yusaku Nakabeppu (2011/12/16).

2-OH-ATP as a candidate molecule for the oxidative stress sensor in mammalian cells

第34回日本分子生物学会年会,横浜.

24. 太田 詠子,土本 大介,作見 邦彦,瀧口 友香,中別府 雄作 (2011/12/16).酸化ヌクレオチ

ド2-OH-ATP による細胞死の制御機構

第34回日本分子生物学会年会,横浜.

25. Noriko Yutsudo, Takashi Kamada, Hiroko Nomaru, Yoko H. Ohnishi, Yoshinori N. Ohnishi,

Kosuke Kajitani, Kunihiko Sakumi, Hiroshi Shigeto, Yusaku Nakabeppu,(2012/1/21).

Mice lacking fosB display impaired adult hippocampal neurogenesis and spontaneous epilepsy

The 21st Hot spring Harbor Symposium jointly with 8th Global COE International Symposium,

Young Investigators Presentation, Fukuoka.

細胞統御システム分野

Division of Cell Regulation Systems 准 教 授:石谷 太

Associate Professor:Tohru Ishitani, Ph.D.

細胞統御システム分野では、「多細胞生物体が如何に個として構築され、維持される

のか?」、そのメカニズムの解明を目指して研究を行っている。多細胞生物における細

胞は、お互いにシグナルを送受信し、自身のなすべき役割(形態変化、分化、増殖、生

死、移動など)を認識し、それを実行する。細胞間でやり取りされるシグナルの実体は、

サイトカインなどの細胞外分泌蛋白質や膜表面に存在するリガンド蛋白質分子群であ

る。これら細胞外シグナル分子は、受け手の細胞においてそれぞれに異なる細胞内シグ

ナル伝達経路を活性化し、それぞれに異なる細胞応答を誘導する。私たち人間のからだ

は 60 兆個もの細胞が集まり、それらがシグナルを送受信することで細胞社会を形成し、

個として成り立っている。言い方を変えれば、このようなシグナルの送受信(シグナル

伝達)の厳密な制御が、私たちのからだの構築と維持を担っている。実際、シグナル伝

達の制御が破綻すると、癌や二型糖尿病、精神疾患など、様々な疾病が引き起こされる

ことが知られている。このようなことから、シグナル伝達の制御機構を明らかにするこ

とは、多細胞生物のからだの構築と維持のメカニズムの解明、疾病発症のメカニズム解

明、将来的な組織再生医療や疾病治療技術開発につながると考えることができる。

当分野では「遺伝学的解析及び細胞生物学的解析に適した脊椎動物モデルであるゼブ

ラフィッシュを用いた細胞レベル個体レベルの研究」と「生化学的研究」そして「網羅

的研究手法」を組み合わせ、シグナル伝達(化学反応カスケード)のナノ/ミクロレベ

ルからマクロレベルまでの統合的理解を目指している。特に以下のテーマに注目して研

究を進めている。

(A) シグナル伝達経路の活性を制御するプロテインキナーゼ NLK の機能と制御の解明

(B) 幹細胞の増殖と細胞の癌化に関わるシグナル伝達経路である Wnt シグナル伝達経

路の機能と制御の解明

(C) 個体の形成と維持に関わるシグナル伝達経路の生個体における可視化

当分野のメンバーは、今夏よりテクニカルスタッフである甲斐草が出産のため退職し、

あらたにテクニカルスタッフとして宮内奈緒美が加わり、また、学術研究員の太田聡が

理化学研究所に移籍し、計 6名の体制となった。

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A.シグナル伝達経路の活性を制御するプロテインキナーゼ NLK の機能と制御

の解明

私たちは、「シグナル伝達と“多細胞集合体である組織”の構築と維持の関係」の本

質に迫るため、複数のシグナル伝達経路の活動を制御する能力をもつ分子である

“Nemo-like kinase (NLK)”に注目して研究を行っている。NLK は種を越えて保存され

ているMAPキナーゼに類似したリン酸化酵素である。 私たちはこれまでに、NLKが様々

なシグナル伝達経路の転写制御因子をリン酸化してその活性を変化させ、シグナル伝達

強度の加減調節を行うことを明らかにしている。例えば NLK は、(1)ヒト培養細胞株

HEK293 及び HeLaにおいて Lef1(Wntシグナルの転写因子)をリン酸化することによりそ

のDNA結合能を低下させてWntシグナル活性を減弱させたり(Nature 1999; MCB 2003)、

(2)転写因子 c-Myb をリン酸化することによりその安定性を低下させたり(G&D 2004 共

同研究)、(3)転写因子 STAT3 をリン酸化してその活性を促進したり(PNAS 2005 共同研

究)、(4)転写制御因子 Notch1 をリン酸化してその活性を抑制したりする(Nature Cell

Biology 2010)。今回私たちは、NLK による Lef1 リン酸化の生理学的意義の検討を行い、

後述するように NLK の新たな機能を見いだした。

B.幹細胞の増殖と細胞の癌化に関わるシグナル伝達経路である Wnt シグナル

伝達経路の機能と制御の解明

Wnt シグナル伝達系は、「体の形成」、「幹細胞の増殖」、「癌の発症」に関わる重要な

シグナル伝達経路である。Wnt シグナルの機能と制御の解明は、将来的な新たな医療技

術の開発や創薬につながると期待されており、世界的に最もホットな研究課題の一つで

ある。Wnt シグナル伝達系は、細胞が細胞間情報伝達分子 Wnt を受容することにより活

性化する。Wnt シグナルが活性化した細胞では、Wnt シグナルが活性化した細胞では、

細胞質内で β カテニンが安定化し、その結果として β カテニンが核内に移行して転写

因子 TCF/LEF が標的遺伝子の転写を誘導する。私たちはこれまで、「TCF/LEF の分子レ

ベルでの制御」に注目して研究を行い、「TCF/LEF がリン酸化されること」と「TCF/LEF

がユビキチン-プロテアソーム系によって破壊されること」を世界で初めて発見してい

る。更に最近、β カテニンの安定性の制御に関わる新たな分子を発見している。

a.Tcf/Lef のリン酸化

私たちは NLK が TCF/LEF をリン酸化することを 12 年前に同定したが、このリン酸化

の生理学的意義は未だに十分に解析されていない。今回私たちは、この課題に取り組ん

だ。その結果、「NLK による Lef1 リン酸化は、培養細胞株 HEK293 及び HeLa においては

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Lef1 の DNA 結合能を低下させる一方で、神経前駆細胞では Lef1 の DNA 結合能には影響

せずに Lef1 と転写抑制因子 HDAC1 の結合を低下させ、Lef1 の転写活性を高めること」、

「神経前駆細胞では Wnt 分子の刺激により NLKと Wnt シグナルメディエーターDvlが結

合し、つづいて NLK が活性化し、活性化した NLK が Lef1 をリン酸化すること」、「今回

新たに発見した Wnt-NLK-Lef1 経路が、中脳の神経前駆細胞において細胞増殖を正に制

御する遺伝子の発現を促進し、結果として神経前駆細胞の適切な増殖と適切なサイズの

中脳視蓋の形成に貢献すること」を見いだした(Ota et al., EMBO J., 2012)。この発

見は、Wnt/βカテニンシグナルにおける新しいシグナル伝達経路の発見であり、今後、

Wnt/βカテニンシグナルの関わる生命現象の理解の促進や、将来的な新たな医療技術の

開発や創薬への貢献が期待できる。

b.HIPK2 によるβカテニンの安定化

私たちはこれまでに、ショウジョウバエにおいてプロテインキナーゼ HIPK2 が β カ

テニンの安定性を促進し、Wnt シグナルを促進することを明らかにしている

(Development, 2009)。現在、「HIPK2 が大腸がん細胞における Wnt シグナルの過剰亢

進に関与しているか」、「脊椎動物個体における HIPK2-β カテニン経路の生理学的役割」、

そして「HIPK2 が β カテニンを安定化する詳細な分子メカニズム」の三点の解明を目

指して研究を進めている。

C.個体の形成と維持に関わるシグナル伝達経路の生個体における可視化

癌・感染防御・脳神経系形成に関わるシグナル伝達経路が脊椎動物の卵から幼体に至

る発生/成長過程において「いつ」「どこで」「どの程度の強さで」活性化して働いてい

るかを解明することは、私たちの体の形成と維持の分子メカニズムを理解する上で非常

に重要である。これを解明するためには、個体レベルにおけるシグナル伝達の可視化が

非常に有効な手段であると考えられる。当分野では、ゼブラフィッシュを用いて「生き

た脊椎動物個体におけるシグナル伝達経路の時空間的動態の可視化」に取り組んでいる。

ゼブラフィッシュは以下にあげるような優れた特性を持っており、脊椎動物におけるシ

グナル伝達の可視化に最も適したモデル動物である。ゼブラフィッシュの特性:(1)胚

体が透明/(2)体外で胚発生が起こること(ヒトやマウスなどの哺乳動物では、発生が

母体内でおこることから、発生初期での重要な生物学的現象を経時的に観察することは

技術的に困難)/(3)多産/(4)ヒトと同様に脳神経系や消化器系などの器官をもち、そ

れらがヒトのものと同様の発生機序を辿って形成され、そして維持されていること(シ

ョウジョウバエや線虫といった無脊椎動物モデルにおいて形成される器官やその発生

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機序は我々脊椎動物のそれとは大きく異なるため、シグナル伝達経路の個体レベルにお

ける機能はヒトと大きく異なる)。今後、本研究により、「シグナル伝達経路がどのよう

に機能することによって私たち脊椎動物の体が形成され、そして維持されるのか」を把

握したい。そして、将来的にはこれを「各シグナル伝達経路の新規因子の探索と機能解

析」や「病態とシグナル伝達の関連」を研究するための強力なツールとしたい。

現在、Wnt シグナル、Notch シグナル、NFκB シグナル、ヘッジホッグシグナルの可

視化を進めている。これらのシグナルは全て発生だけでなく疾病の発症に関わっており、

この可視化システムは「発生及び疾病の発症のメカニズムの解明」だけでなく「ドラッ

グスクリーニング」などの応用研究にも利用できる可能性がある。

業績目録

原著論文

1. Ota S, Ishitani S, Shimizu N, Matsumoto K, Itoh M, Ishitani T. NLK positively regulates

Wnt/β-catenin signalling by phosphorylating LEF1 in neural progenitor cells. EMBO Journal. 2012.

in press

2. Kulkeaw K, Ishitani T, Kanemaru T, Ivanovski O, Nakagawa M, Mizuochi C, Horio Y, and

Sugiyama D. Cold exposure down-regulates zebrafish pigmentation. 2011. Genes to Cells 16.

358-367

3. Yoshizawa A, Nakahara Y, Izawa T, Ishitani T, Tustumi M, Kuroiwa A, Itoh M, *Kikuchi Y.

Zebarfsih Dmrt2 regulates neurogenesis in the telencephalon. 2011. Genes to Cells. 16. 1097-1109

総説 1. 石谷太. 2012.

神経組織構築を担うタンパク質リン酸化酵素 NLK の機能と制御

ブレインサイエンス・レビュー2012, 59-82

学会発表

1. 清水 誠之、石谷 太

Homeodomain-interacting protein kinase 2 promotes Wnt signaling through stabilization of

Dishevelled in vertebrate posterior development

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第 34 回日本分子生物学会年会

2011 年 12 月 16 日

2. Shizuka Ishitani, Tohru Ishitani,

Analysis of the molecular mechanisms that regulate the activity of Nemo-like kinase,

第 34 回日本分子生物学会年会

2011 年 12 月 15 日

3. Satoshi Ota, Shizuka Ishitani, Nobuyuki Shimizu, Kunihiro Matsumoto, Motoyuki Itoh, Tohru

Ishitani

Lef1 phosphorylation by NLK is essential for the Lef1-mediated Wnt/β-catenin signaling in neural

progenitor cells

第 34 回日本分子生物学会年会

2011 年 12 月 16 日

4. Nobuyuki Shimizu, Tohru Ishitani

Analysis of the spatiotemporal dynamics and its regulatory mechanisms of Wnt/β-catenin and

Hedgehog signaling pathways using the transgenic zebrafish lines carrying the signaling reporters.

第 17 回小型魚類研究会

2011 年 9 月 8 日

5. 清水 誠之、太田 聡、石谷 太

シグナル可視化ゼブラフィッシュを用いたシグナル伝達の機能と制御の解析

「修飾シグナル病」領域推進会議

2011 年 7 月 1 日

6. Shizuka Ishitani, Kenji Inaba, Kunihiro Matsumoto, Tohru Ishitani

Homo-dimerization of Nemo-like kinase is essential for activation and nuclear localization.

第 63 回日本細胞生物学会大会

2011 年 6 月 28 日

7. Satoshi Ota, Shizuka Ishitani, Nobuyuki Shimizu, Kunihiro Matsumoto, Motoyuki Itoh, Tohru

Ishitani

Lef1 phosphorylation by NLK is essential for the Lef1-mediated Wnt/β-catenin signaling in neural

progenitor cells

第 44 回日本発生生物学会

2011 年 5 月 20 日

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