機能画像による脳血流定量化の手法機能画像による脳血流定量化の手法...
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核医学
核医学検査
In vitro
In vivo
SPECT
PET
体内に投与した放射性医薬品を画像化する
血液や尿などを体外で放射性医薬品を用いて検査する
目的臓器へのRIの分布を画像化核種[99mTc,201Tl,123I etc.]
目的臓器へのRIの分布を画像化核種[18F etc.]
放射性医薬品(トレーサ)
放射性医薬品の特性〇目的臓器(病巣)へ特異的に集積する
〇薬理作用がない
〇有効半減期が短い
99mTc-ECD「放射性」 「医薬品」
+放射性核種の半減期やエネルギーなどの物理特性
化学的特性や体内での生体学的特性
例)
放射性医薬品(トレーサ)
放射性医薬品の体内分布は,それぞれの医薬品が臓器に集まるメカニズムや効率に依存.
集積機序
〇受動輸送(単純拡散)物質の濃度勾配に比例して移動
〇能動輸送エネルギーを使って濃度勾配に逆らって移動
〇エネルギー代謝
〇受容体(レセプタ)との特異的な結合 etc.
各種シンチグラフィ
骨シンチグラフィ[99mTc-MDP]
脳血流シンチグラフィ[99mTc-ECD]
心筋シンチグラフィ[99mTc-TF]
腎臓シンチグラフィ[99mTc-MAG3]
肺血流シンチグラフィ[99mTc-MAA]
甲状腺シンチグラフィ[99mTcO4
-]
臨床的有用性
・ CT,MRIでは描出困難な微細な変化を発症直後から描出可能
・ 血流低下部位の描出や統計学的な解析を行うことで,認知症疾患の鑑別
・ 薬剤負荷SPECTで,脳組織の血流量を算出することで,脳循環予備能を評価し,血行再建術の適応や効果判定が可能
脳血流シンチで使用する製剤
123I-IMP 99mTc-HMPAO 99mTc-ECD
標識核種 123I 99mTc 99mTc
投与量 111~222[MBq] 370~740[MBq] 370~740[MBq]
脳血流に対する直線性
高い 低い やや低い
虚血部と健常部のコントラスト
高い やや低い 中間
123I-IMP :静注後肺に取り込まれ,動脈血中に放出.脳内には初回循環にて容易に血液脳関門を通過し,脳内のアミン結合部へ集積.
99mTc製剤:静注後,血液脳関門を通過し,脳内で速やかに脂溶性成分から水溶性成分に変化し脳組織にとどまる.
定性画像
脳内のRI分布を画像化したもの
最大カウントを100%とする相対スケール
〇アルツハイマー型認知症では早期から側頭葉内側部や頭頂・側頭葉の連合野皮質に血流低下が生じるとされ,その早期診断に役立つ.
ex.アルツハイマー型認知症
統計解析(eZIS)
SPECT画像(白黒反転)
SPECT+CT
定量画像
画像化したRI分布を脳血流量に変換したもの
脳血流値による絶対スケール
〇血流を絶対値で評価することで,経過観察や治療効果の判定に有用.〇びまん性の脳全体の血流低下も評価可能.
定量画像 解析結果
脳循環動態(脳虚血における代謝機転)
CPPの低下に伴い,CBVを上げてCBFを維持する代謝機転
CMRO2を維持するためにOEFが上昇する代謝機転
脳循環予備能(自動調整能)
脳代謝予備能
脳灌流圧[CPP]
脳血流量[CBF]
脳血液量[CBV]
脳酸素代謝量[CMRO2]
酸素摂取率[OEF]
Stage 0正常
Stage Ⅰ脳血管床拡張
Stage Ⅱ貧困灌流
梗塞
脳循環予備能
脳代謝予備能
CBF=CPP ×CBV
CMRO2=k×CBF ×OEF
Powersの分類
定量検査(薬剤負荷SPECT)
脳血流SPECT検査に際して,脳血管拡張作用を持つアセタゾラミドを静脈内に投与して循環予備能を調べる.
アセタゾラミド投与前後の脳血流量を比較すれば,循環予備能の低下した領域を同定できる.
正常部位 局所脳血流量が大幅に増加
脳灌流圧が低下した領域
局所脳血流量の増加率が低い.局所脳血流量の減少.
※アセタゾラミドを用いた脳循環予備能の検査の意義は国内外のガイドラインに記載されているが,添付文書上は「適応外使用」に相当.
定量検査(薬剤負荷SPECT)
脳梗塞に対して
中大脳動脈領域の安静時脳血流量が正常の80%未満かつ脳循環予備能10%未満では,脳梗塞再発率の低下には外科的血行再建術が有用.( JET Study より)
頸動脈狭窄症に対して
頸動脈内膜剥離術(CEA),頸動脈ステント術(CAS)を行う場合,循環予備能が低下している例では,重篤な合併症である術後過灌流現象のリスクが高いことから,術前予備能測定が有用.
血流量を求めるためには
トレーサ量Q(t)
動脈血濃度Ca(t)[Bq/ml] 静脈血濃度Cv(t)[Bq/ml]
血流量F[ml/g/min] 血流量F[ml/g/min]
トレーサが血流により臓器に流入,流出するとき,単位時間dtにおける変化量dQは以下の式で求まる.
𝑑𝑄(𝑡)
𝑑𝑡= 𝐹𝐶𝑎 𝑡 − 𝐹𝐶𝑣 𝑡
= 𝐹(𝐶𝑎 𝑡 − 𝐶𝑣 𝑡 )
血流量 : F動脈血濃度(流入) : Ca(t)静脈血濃度(流入) : Cv(t)臓器内に存在するトレーサ量: Q(t)
Fickの原理
Q(t), Ca(t), Cv(t)がわかれば血流量Fがわかる!!
血流量を求めるためには
入力関数(動脈血濃度)の推定:Ca(t)①動脈採血
・持続動脈採血
・標準入力関数を用いた1回動脈採血
②頭部,胸部のDynamic撮像
出力関数(静脈血濃度)の推定:Cv(t)①マイクロスフィアモデルとして無視する
②Vd値を固定の値として求める
脳組織へのトレーサ集積量の推定:Q(t)①脳SPECT
②脳planar + 脳SPECT
脳血流定量測定法
採血法
・マイクロスフィア法
・Autoradiography(ARG)法
123I-IMP
非採血法
・Graph plot法
・Patlak plot法
99mTc-ECD 99mTc-HMPAOor
123I-IMP
マイクロスフィアモデル
投与後早期にはIMPは初回循環でほとんど脳に取り込まれ,洗い出しも無視できるとすると,Microsphere(微小塞栓)モデル[1コンパートメントモデル]が成立する.
(N:オクタール抽出率,A:動脈血全放射能量,R:持続採血速度)
𝑄 𝑡 =F×0𝑡𝐶𝑎 𝑡 𝑑𝑡
N×A=R× 0𝑡𝐶𝑎 𝑡 𝑑𝑡
F = 𝑅×𝑄(𝑡)
𝑁×𝐴
トレーサ量Q(t)
動脈血濃度Ca(t)[Bq/ml]
血流量F[ml/g/min]
〇脳内放射能濃度と動脈血中放射能濃度の関係(Fickの原理より)
〇持続採血したシリンジ内放射能濃度と動脈血中放射能濃度の関係
123I-IMP
マイクロスフィア法
Autoradiography(ARG)法
𝑑𝑄(𝑡)
𝑑𝑡=FCa(t)-k2Q(t)
Ca(t)血液
Q(t)脳組織
K1
k2
K1[ml/g/min]:血管から脳への速度定数
k2[min-1] :逆拡散(脳から血管への速度定数)
K1はrCBFと初回循環抽出率Eとの積だが,E=1と仮定してK1=rCBF(=F)とする
分布容積Vd値[ml/ml]=K1/k2と定義
𝑄 𝑡 = 𝐹 × න0
𝑡
𝐶𝑎 𝑡 𝑑𝑡 ⊗ 𝑒−
𝐹
𝑉𝑑× 𝑡
123I-IMP
2コンパートメントモデル
Autoradiography(ARG)法
𝑑𝑄(𝑡)
𝑑𝑡=FCa(t)-k2Q(t)
Ca(t)血液
Q(t)脳組織
K1
k2
K1[ml/g/min]:血管から脳への速度定数
k2[min-1] :逆拡散(脳から血管への速度定数)
K1はrCBFと初回循環抽出率Eとの積だが,E=1と仮定してK1=rCBF(=F)とする
分布容積Vd値[ml/ml]=K1/k2と定義
𝑄 𝑡 = 𝐹 × න0
𝑡
𝐶𝑎 𝑡 𝑑𝑡 ⊗ 𝑒−
𝐹
𝑉𝑑× 𝑡
123I-IMP
2コンパートメントモデル
マイクロスフィアモデルではk2=0として無視する
Vdがわかれば,定量値Fを求めることができる
Autoradiography(ARG)法
Ca(t)
Q(t) SPECT
10分0 t30
𝑄 𝑡 = 𝐹 ×න0
𝑡
𝐶𝑎 𝑡 𝑑𝑡 ⊗ 𝑒−
𝐹
𝑉𝑑× 𝑡
①持続採血不要標準入力関数(秋田脳研のデータ)を用い,1点動脈採血(8~10分が最適)の放射能で補正.オクタール抽出不要.
②洗い出しを考慮出力関数は洗い出しの影響を受けるが,Vd値(=K1/k2)を固定することで,定量値Fを求める.
各施設,各装置ごとにTable Look Up法により測定したVd値を用いる
123I-IMP
Autoradiography(ARG)法
〇入力関数:Ca(t) ⇒標準関数を用いた1点動脈採血
〇出力関数:Cv(t) ⇒ Vd値を固定
〇トレーサ集積量:Q(t) ⇒脳SPECT
要点
・ 標準入力関数を用いるため,個人差の影響を無視できない.(心肺疾患,喫煙の影響)・ Vd値を固定することによる誤差(高血流域で影響大)・ スキャン中心時刻や採血時刻によって測定精度が低下する.・ SPECTとウェルカウンタでのCCFの変動に注意.
123I-IMP
Dual Table ARG法
123I-IMPを用いて同日1日の検査で安静時およびAcetazolamide(ACZ)負荷時の局所脳血流量画像および血管反応性の評価を行う検査法
0 302010
0 302010 28 58
入力関数
[cp
s/g]
脳R
I[B
q/m
l]
IMP静注 1点動脈採血 ACZ投与 IMP静注(2回目)
RestACZ
Dynamic SPECT収集 Dynamic SPECT収集
123I-IMP
Dual Table ARG法
①安静時のCBFを計算②2回目投与直前の脳内放射能濃度分布(BG)を推定③ACZ負荷時のCBFを計算
0 302010 28 58
脳R
I[B
q/m
l]
RestACZ
Pixelvalue
CBF
Pixelvalue
CBFPixelvalue
CBF
1)ARG法によるCBF計算
𝑇1
𝑇2𝐶1 𝑡 𝑑𝑡 = 𝑓1 × 𝑇1
𝑇2𝐶𝑎 𝑡 ⊗ 𝑒− 𝑓1
𝑉𝑑× 𝑡dt
2)BGの推定3)オフセットありでのARG法によるCBF計算
න𝑇3
𝑇4𝐶2 𝑡 𝑑𝑡
= 𝑓2 × 𝑇3
𝑇4𝐶𝑎 𝑡 ⊗ 𝑒− 𝑓2
𝑉𝑑× 𝑡dt+C1(TBG)
𝑇3
𝑇4 𝑒− 𝑓2
𝑉𝑑× 𝑡dt
123I-IMP
Dual Table ARG法の特徴
• 1回の検査で安静時,ACZ負荷時の脳血流量を測定できる
• 1点動脈採血で検査を実施することが可能
• 安静時,ACZ負荷時のみでも検査可能
• 専用ソフトを用いることで,ほぼ自動で処理可能
123I-IMP
症例1:左頸部内頸動脈狭窄
臨床診断:左頚部内頚動脈狭窄術前:左前方循環はMCA領域を
主体に血流低下.CAS後:左MCA領域に血流増加が目立つ.
(過灌流の可能性)術前(上:安静時,下:ACZ負荷時)
CAS術後(安静時のみ)
症例2:もやもや病
術前(上:安静時,下:ACZ負荷時) バイパス術後1年(上:安静時,下:ACZ負荷時)
臨床診断:成人もやもや病(術後経過観察)術前後どちらも,左大脳半球は前方循環系のACA,MCA領域の軽度血流低下
まとめ
・ 脳血流シンチグラフィでは,機能画像を用いることで,局所脳血流のわずかな変化を捉える事ができる.
・ 脳血流量を定量化することで,術前の脳循環予備能を評価できる.また,経過観察や治療効果判定が可能.
・ 脳血流定量化では,手法により測定精度が異なるため,各々の特性を理解することで誤差変動の少ない安定した測定を行うことが重要である.
形態学的画像診断
脳虚血~各モダリティの役割を考える~
機能学的画像診断
治療・処置
・病変の検出・迅速な治療
・脳循環予備能・術前予測
外見(形態)だけでなく内面(機能)を見ることで未来(術後)を予測する!!