急性腎不全に伴いたこつぼ型心筋症を発症した1例 -...

6
82 宮崎医会誌 2014 ; 38 : 82-7. 症  例 はじめに たこつぼ型心筋症は,急性に左室心尖部の広範な 無収縮と心基部の過収縮をきたす疾患で,左室が「た こつぼ」様の形態をとる 1) 。精神的・身体的ストレ スが誘因となることが多いが,身体的ストレスとし て急性腎不全による報告は少ない。 今回我々は,急性腎不全に伴いたこつぼ型心筋症 を発症した症例を経験したので、文献的考察を加え て報告する。 患者:80歳,女性。主訴:立位困難。家族歴: 特記すべき事項なし。既住歴:右鎖骨折。現病歴: 2002年頃より,A医院で高血圧,腰痛,便秘症で 外来通院していた。腰痛でロキソプロフェンナトリ ウム 180mg/ 日,ジクロフェナクナトリウム 75mg/ 日,便秘症で酸化マグネシウム1,980mg/日を内服 していた。また,夫がパーキンソン病で介護につか れていた。2012年6月下旬より,嘔吐,下痢を認 めていた。7月2日よりめまい,ふらつきを認め, 同院を受診した。その際,血圧低値であり,降圧薬 は中止となった。その後,歩行困難,四肢脱力,閉 眼などの症状があり,7月7日に B 脳神経外科を受 診した。頭部 CT 検査等を受けたが,脳血管障害は 急性腎不全に伴いたこつぼ型心筋症を発症した1例 岩坪 修司 1) 竹田 幸子 1) 熊部 智章 1) 須加原一昭 1) 中村 憲一 1) 松本 充峰 1) 外山 孝典 1) 山口 哲朗 1) 黒木 一公 2) 山本 展誉 2) 藤元 昭一 3) 要約:症例は80歳女性。高血圧,腰痛,便秘症で近医に通院していた。腰痛でロキソプロフェンナトリ ウムおよびジクロフェナクナトリウム,便秘症で酸化マグネシウムを内服していた。嘔吐・下痢症を契 機に2012年6月下旬より全身状態が不良となり,7月8日に当院へ救急搬送された。急性腎不全,高マ グネシウム血症(以下,高Mg血症)を認め,補液,投薬変更により臨床症状,検査所見は改善した。 入院時,胸痛を認めていたが、心電図,心エコーで急性冠症候群を疑わせる所見は指摘されなかった。 以後,胸痛は消失していた。経過観察目的で第5病日目に心電図を再検したところ,前胸部誘導に陰性 T波を認め,心エコーで心尖部に重度の壁運動低下を認めた。心臓カテーテル検査では有意狭窄病変は なく,左室造影で心尖部の壁運動低下と心基部の過収縮を認め,たこつぼ型心筋症と診断された。心不 全徴候はなく,経過観察となり,軽快退院した。たこつぼ型心筋症は、精神的・身体的ストレスが誘因 となることが多い。本症例では,急性腎不全,高Mg血症による身体的ストレスによりたこつぼ型心筋 症が発症したと考えた。症例の集積は必要であるが,本症例のように急性腎不全および,その合併症が たこつぼ型心筋症の誘因となる可能性がある。急性腎不全の経過中に胸部症状,心電図異常,心エコー 異常を認めた場合には,虚血性心疾患を念頭に置きながら,たこつぼ型心筋症にも注意する必要がある。 〔平成26年1月31日入稿,平成26年4月14日受理〕 1)宮崎県立延岡病院内科 2) 同 循環器内科 3)宮崎大学医学部医学科血液・血管先端医療学講座

Transcript of 急性腎不全に伴いたこつぼ型心筋症を発症した1例 -...

− 82 −

宮崎医会誌 2014 ; 38 : 82-7.

症  例

は じ め に

 たこつぼ型心筋症は,急性に左室心尖部の広範な無収縮と心基部の過収縮をきたす疾患で,左室が「たこつぼ」様の形態をとる1)。精神的・身体的ストレスが誘因となることが多いが,身体的ストレスとして急性腎不全による報告は少ない。 今回我々は,急性腎不全に伴いたこつぼ型心筋症を発症した症例を経験したので、文献的考察を加えて報告する。

症 例

 患者:80歳,女性。主訴:立位困難。家族歴:特記すべき事項なし。既住歴:右鎖骨折。現病歴:2002年頃より,A医院で高血圧,腰痛,便秘症で外来通院していた。腰痛でロキソプロフェンナトリウム180mg/日,ジクロフェナクナトリウム75mg/日,便秘症で酸化マグネシウム1,980mg/日を内服していた。また,夫がパーキンソン病で介護につかれていた。2012年6月下旬より,嘔吐,下痢を認めていた。7月2日よりめまい,ふらつきを認め,同院を受診した。その際,血圧低値であり,降圧薬は中止となった。その後,歩行困難,四肢脱力,閉眼などの症状があり,7月7日にB脳神経外科を受診した。頭部CT検査等を受けたが,脳血管障害は

急性腎不全に伴いたこつぼ型心筋症を発症した1例

岩坪 修司1) 竹田 幸子1) 熊部 智章1)

須加原一昭1) 中村 憲一1) 松本 充峰1)

外山 孝典1) 山口 哲朗1) 黒木 一公2)

山本 展誉2) 藤元 昭一3)

要約:症例は80歳女性。高血圧,腰痛,便秘症で近医に通院していた。腰痛でロキソプロフェンナトリウムおよびジクロフェナクナトリウム,便秘症で酸化マグネシウムを内服していた。嘔吐・下痢症を契機に2012年6月下旬より全身状態が不良となり,7月8日に当院へ救急搬送された。急性腎不全,高マグネシウム血症(以下,高Mg血症)を認め,補液,投薬変更により臨床症状,検査所見は改善した。入院時,胸痛を認めていたが、心電図,心エコーで急性冠症候群を疑わせる所見は指摘されなかった。以後,胸痛は消失していた。経過観察目的で第5病日目に心電図を再検したところ,前胸部誘導に陰性T波を認め,心エコーで心尖部に重度の壁運動低下を認めた。心臓カテーテル検査では有意狭窄病変はなく,左室造影で心尖部の壁運動低下と心基部の過収縮を認め,たこつぼ型心筋症と診断された。心不全徴候はなく,経過観察となり,軽快退院した。たこつぼ型心筋症は、精神的・身体的ストレスが誘因となることが多い。本症例では,急性腎不全,高Mg血症による身体的ストレスによりたこつぼ型心筋症が発症したと考えた。症例の集積は必要であるが,本症例のように急性腎不全および,その合併症がたこつぼ型心筋症の誘因となる可能性がある。急性腎不全の経過中に胸部症状,心電図異常,心エコー異常を認めた場合には,虚血性心疾患を念頭に置きながら,たこつぼ型心筋症にも注意する必要がある。

〔平成26年1月31日入稿,平成26年4月14日受理〕

1)宮崎県立延岡病院内科2) 同 循環器内科3)宮崎大学医学部医学科血液・血管先端医療学講座

− 83 −

岩坪 修司 他:たこつぼ型心筋症の1例

否定的とされた。その際の血液検査でBUN103.4mg/dL,Cre 3.19mg/dLと腎機能障害を認めた。その後,立位困難,胸痛を認めるようになり,7月8日に当院へ救急搬送された。入院時現症:JCS 10,身長145cm,体重38kg,体温36.3℃,血圧96/55mmHg,脈拍53回/分・整,閉眼状態,眼瞼結膜は軽度貧血,眼球結膜に黄疸なし,舌は乾燥,右鎖骨部に手術痕あり,心雑音なし,正常肺胞呼吸音,腹部平坦・軟,圧痛なし,四肢麻痺なし、四肢浮腫なし。入院時検査所見(表1):RBC323×104

/μL,Hb 10.3mg/dLと 貧 血 を 認 め た。BUN101.7mg/dL,血清Cre 2.6mg/dLと上昇していた。Na 132mEq/L,K 3.2mEq/L,Cl 85mEq/L,Ca7.0mg/dL(補正Ca 7.28mg/dL)といずれも低下して い た。Mg 8.6mg/dLと 上 昇 し て い た。UA11.6mg/dLと上昇していた。CPK 207IU/Lと上昇,トロポニンTは陰性であった。入院時の心電図(図1左)は,心拍数50/分で洞性徐脈,V1で陰性T波を認めた。経過(図2):救急外来で,意識障害(JCS10),血圧低値,洞性除脈を認めた。細胞外液による補液を開始し,低カルシウム血症に対して8.5%グルコン酸カルシウム2.5ml静注,徐脈に対して硫

酸アトロピン0.5mg静注を行った。酸化マグネシウム内服,腎機能障害より高マグネシウム血症(以下,高Mg血症)の可能性を考えた。当院では,院内で血清Mgの測定は出来ないことより,院外の検査機関へ測定を依頼した。入院後,酸化マグネシウムは

[検尿] [生化学]比重 1.015 TP 6.9 g/dL尿蛋白 (−) Alb 3.72 g/dL尿潜血 (−) T-Bil 0.21 mg/dL尿糖 (−) AST 16 IU/L

ALT 9 IU/LALP 323 IU/L

[末梢血] LDH 254 IU/LWBC 7,000 mm3 γ-GTP 18 IU/LRBC 323×104 /mm3 CPK 207 IU/LHb 10.3 g/dL BUN 101.7 mg/dLHct 31.7 % Cre 2.6 mg/dLPLT 28.4×104 /mm3 Na 132 mEq/L

K 3.2 mEq/LCl 85 mEq/L

[凝固系] UA 11.6 mg/dLPT 11.5 s Ca 7.0 mg/dLPT 120.3 % Mg 8.6 mg/dLPT-INR 0.93 CRP 0.12 mg/dLAPTT 25.4 s Glu 113 mg/dL

HbA1c(NGSP) 6.1 %トロポニンT (−)

表1.入院時検査所見.

図1.心電図の経過.

入院時(7月8日) 11 ヵ月後第5病日(7月13日)

 入院時(左)は,心拍数 50/分,洞性徐脈,V1で陰性T波を認める.第5病日目(中)に前胸部誘導で陰性T波を認めており,QT/QTc 488/490msとQT/QTc延長していた.11 ヵ月後(右)には,前胸部誘導のT波は陽性化していた.

− 84 −

宮崎医会誌 第38巻 第2号 2014年9月

中止とした。後日,Mg 8.6mg/dLと高Mg血症が判明した。腎機能障害に関しては,腹部エコー検査,腹部CT検査で腎臓の萎縮や水腎症はなかった。食欲不振,嘔吐,下痢症状による細胞外液量減少に加えて,ロキソプロフェンナトリウム,ジクロフェナクナトリウム内服により腎障害が増悪したことが推測された。補液を行い,ロキソプロフェンナトリウム,ジクロフェナクナトリウムの両薬剤を中止とした。以後,意識障害や食欲不振は改善し,7月13日には腎機能障害,電解質異常も改善した。7月8日の救急外来で,胸痛を認めていたが,心電図でST変化はなく,血液検査でトロポニンT陰性,CPK 207IU/Lと軽度上昇していた。心エコー検査でも壁運動異常はなかった。入院後は,胸痛は消失していた。第5病日目の7月13日に心電図(図1中)を再検査したところ,前胸部誘導で陰性T波を認めた。トロポニンTは陽性であったが,胸痛やCPKの上昇はなかった。心エコーでは,心尖部に重度の壁運動低下,中隔から前壁中隔にかけて軽度〜中等度の壁運動低下を認めた。同日に心臓カテーテル検査を施行したが,冠動脈の有意狭窄はなかった(図3下)。左室造影検査では,心尖部の壁運動低下と心基部の過収縮を認めた(図3上)。腹部CT検査では,副腎腫瘍は指摘されなかった。また,発熱や

炎症反応上昇はなく,心筋炎を示唆する所見もなかった。以上の経過より,たこつぼ型心筋症と診断した。心不全徴候はなく,経過観察とした。7月25日の心エコーでは壁運動低下は改善しており,軽快退院した。11 ヵ月後の心電図では,前胸部誘導の陰性T波は陽性化していた(図1右)。

図2.経過.

意識障害 (+) (−)BUN(mg/dL) 101.7 13.3 21.3Cre(mg/dL) 2.6 0.9 1.0Ca(mg/dL) 7.0 8.2 8.5Mg(mg/dL) 8.6 2.1K(mEq/L) 3.2 4.2 3.7CPK(IU/L) 207 148 80トロポニンT (−) (+)壁運動異常心エコー

(−) (+) (−)

日付(2012年) 7月8日 7月13日 7月18日

8.5%グルコン酸カルシウム2.5ml硫酸アトロピン0.5mg

心電図(前胸部誘導で陰性T波)

冠動脈造影検査ロキソプロフェンナトリウム中止

ジクロフェナクナトリウム中止

酸化マグネシウム中止

補 液

図3.左室造影と冠動脈造影. 左室造影(上)で,心尖部の壁運動低下と心基部の過収縮を認める.冠動脈造影(下)では,冠動脈に有意狭窄を認めない.

− 85 −

岩坪 修司 他:たこつぼ型心筋症の1例

考 察

 たこつぼ型心筋症は,1990年に日本から佐藤らによってはじめて報告された疾患である2)。精神的・身体的ストレスを契機に,急性冠症候群によく似た胸痛や急性発症の呼吸困難を呈することが多い。典型例では,心臓超音波検査および左室造影検査にて発症直後から数日間は左室心尖部に冠動脈支配領域を超えて広範囲に無収縮領域が認められるが,冠動脈造影検査では異常を認めず,数週間の経過で正常な壁運動に改善することを特徴とする3)。 本症例では,急性腎不全,高Mg血症による身体的ストレス,パーキンソン病の夫の介護疲れによる精神的ストレスによりたこつぼ型心筋症を発症したものと考えられた。発症時期に関しては,救急外来で胸痛は認めていたが,心電図では,ST変化や前胸部誘導の陰性T波はなく,心エコーで壁運動異常がなかったことより入院後の発症と考えた。入院後に胸痛は消失していたが,経過観察の目的で検査した第5病日目の心電図では,前胸部誘導で陰性T波を認めた。同日に施行された左室造影検査では,心尖部の壁運動低下と心基部の過収縮を認めた。以上より入院から第5病日目までの間で発症したものと考えた。 また,本症例では腰痛に関して非ステロイド性抗炎症薬(以下,NSAIDs),便秘に関して酸化マグネシウムを内服していた。高齢者は,加齢に伴い腎機能が低下しており,本症例のようにNSAIDs内服下で嘔吐・下痢などの腎前性因子が加わると,腎障害を引き起こす可能性がある。また,このような状況下で酸化マグネシウム内服していると高Mg血症を引き起こすことがあり,酸化マグネシウム投薬の

際には注意が必要である。 本邦における急性腎不全とたこつぼ型心筋症の報告を調べてみると,自験例を含めて5症例検索することができた(表2)4−7)。3症例は女性であり,自験例を除き4症例で血液浄化療法を行っていた。冠動脈造影検査は,4症例で施行されており,いずれも有意狭窄はなかった。急性腎不全以外の身体的ストレスは,敗血症,悪性症候群,横紋筋融解症,脱水症を認めていた。予後に関しては,全例で生存していた。急性腎不全単独の症例はなく,複数の合併症によりたこつぼ型心筋症を発症していることが推測された。また,入院してからたこつぼ型心筋症発症までの期間は,0〜5病日であり,自験例を除き3症例は急性腎不全または全身状態が改善の時期,透析離脱の時期に発症していた。急性期のみならず,急性腎不全改善の時期や透析離脱時期なども本疾患の発症に注意する必要があるかと思われた。 たこつぼ型心筋症の発症機序は十分に解明されていないが,現在提唱されている機序の中では,表在冠動脈の攣縮による気絶心筋8),心筋内微小血管攣縮9),高濃度カテコーラミンによる心筋障害8)などがある。急性腎障害による多臓器障害進展について,心臓に関しては,TNF-α,IL- 1などのサイトカイン,好中浸潤,アポトーシスを介した急性の心障害(cardio-renal syndrome typeⅢ)の関与が報告されている10)。また,高Mg血症の心血管症状としては,刺激伝導系の抑制による不整脈(徐脈や完全房室ブロック)や血管抵抗の減弱による血圧低下などがある11)。急性腎不全,高Mg血症のいずれも,心臓への作用を認めるが,たこつぼ型心筋症発症と関連は,明らかでなかった。 たこつぼ型心筋症の特異的な治療法はなく,一般

報告者 年齢 性別 発症までの期間1) 身体的ストレス2) 冠動脈造影検査 血液洗浄化療法 予後

1998年(笠畑) 53 男 第5病日目 アルコール多飲 有意狭窄なし   HD3) 生存2001年(浦濱) 48 女 第2病日目 白内障術後、脱水症 未施行   HD 生存2004年(杉本) 53 女 第0病日目 敗血症 有意狭窄なし CHDF4) 生存2008年(大田) 56 男 第5病日目 悪性症候群、横紋筋融解症 有意狭窄なし   CHDF 生存2012年(自験例) 80 女 第5病日目 高マグネシウム血症 有意狭窄なし   なし 生存

表2.急性腎不全に合併したたこつぼ型心筋症.

1)入院後たこつぼ型心筋症まで 2)急性腎不全を除く 3)HD:血液透析 4)CHDF:持続的血液濾過透析

− 86 −

宮崎医会誌 第38巻 第2号 2014年9月

的な心不全治療が中心となる。支持治療のみで速やかに心収縮力は回復し,1〜3ヵ月でほぼ以前と同様の状態に回復することがほとんどである3)。死亡率は,1〜2%で8,12),心原性ショックや致死的不整脈,心破裂などが原因となる3).予後は良好とされるが,上記のごとく心臓合併症をきたす可能性もあり注意が必要である。 今回,我々は急性腎不全の経過中にたこつぼ型心筋症を認めた1例を経験した。症例の集積は必要と考えるが,急性腎不全および,その合併症がたこつぼ型心筋症の誘因となる可能性がある。今後,急性腎不全の経過中に胸部症状,心電図異常,心エコー異常を認めた場合には,虚血性心疾患を念頭に置きながら,たこつぼ型心筋症にも注意する必要がある。

参 考 文 献

1)Kawai S, KitabatakeA,TomoikeH.TakotsuboCardiomyopathy StudyGroup : Guidelines fordiagnosis of takotubo(ampulla)cardiomyopathy.CircJ2007;71:990-2.

2)佐藤 光,立石博信,内田俊明,他.多枝spasmにより特異な左心室造影「ツボ型」を示したstunnedmyocardium.臨床からみた心筋細胞障害:虚血から心不全まで.児玉和久,土師一夫,掘 正二 編.科学評論社,東京,1990:56-64.

3)福井(下敷領)美保,増山 理.震災とたこつぼ心筋症.HeartView2012;16:41-7.

4)浦濱善倫,坂 洋祐,八尾村多佳朗,他.急性腎不全に対して緊急血液透析施工中,たこつぼ型心筋症を発症した一例.日透析医学会誌2001;34:946.

5)笠畑たけし,馬渡耕史,福崎雅彦,他.たこつぼ様の一過性左室壁運動低下を認めた急性腎不全の一例.JpnCircJ1998;62:764.

6)杉本俊郎,出路奈緒子,磯野元秀,他.たこつぼ型心筋障害を合併し集学的治療にて救命しえた急性腎不全の1例.日透析医学会誌2004;37:2093-8.

7)大田大樹,村井 映,田中潤一,他.逆たこつぼ型左室壁運動異常を来した悪性症候群の1例.福岡大医紀2008;35:47-51.

8)Roshanzamir S, Showkathali R. TakoTsuboCardiomyopathyA Short Review. Curr CardiolRev2013;9:191-6.

9)Kume T, Akasaka T , Kawamoto T , et a l .Assessment of coronarymicrocirculation inpatients with takotsubo-like left ventriculardysfunction.CircJ2005;69:934-9.

10)Scheel PJ, LiuM, RabbH. Uremic lung. Newinsights into a forgotten condition. Kidney Int2008;74:849-51.

11)宮崎正信,古巣 朗,河野 茂.Mg欠乏症と高Mg血症の病態生理と鑑別診断.medicina 2007;44:514-6.

12)GianniM,Dentali F, GrandiAM, et al.Apicalballooningsyndromeor takotubocardiomyopathy:asystematicreview.EurHeartJ2006;27:1523-9.

− 87 −

岩坪 修司 他:たこつぼ型心筋症の1例

Acaseoftakotsubocardiomyopathyassociatedwithacuterenalfailure

ShujiIwatsubo1,SachikoTakeda1,TomoakiKumabe1,KazuakiSugahara1,KenichiNakamura1,MichitakaMatsumoto1,TakanoriToyama1,TetsuroYamaguchi1,KazumasaKurogi2,NobuyasuYamamoto2andShouichiFujimoto3

1DepartmentofInternalMedicine,MiyazakiPrefecturalNobeokaHospital,2DepartmentofCardiovascularInternalMedicine,MiyazakiPrefecturalNobeokaHospitaland3DepartmentofHemovascularMedicineandArtificialOrgans,FacultyofMedicine,UniversityofMiyazaki

AbstractAn 80-year-oldwoman consulted a local physician on an out-patient basiswith hypertension, low back pain, andconstipation. She took loxoprofen sodium and diclofenac sodium for low back pain, andmagnesium oxide forconstipation. She began to develop a poor general status alongwith vomiting and diarrhea in late June 2012,andwas emergently transferred to our hospital on July 8. The patient presentedwith acute renal failure andhypermagnesemia, and fluidreplacementandswitching todifferentdrugsresulted in improvedclinical symptomsand laboratory findings. She had chest pain on admission, butwe did not identify any findings suggesting acutecoronarysyndromeonECGorechocardiography.Subsequently,herchestpaindisappeared.Onday5,weperformedECG and echocardiography again to observe the patient's clinical course,which revealed negativeTwaves inprecordial leadsandseverewall-motionreductionatthecardiacapex,respectively.Cardiaccatheterizationdidnotreveal significantly narrowed lesions, but left ventriculography showedwall-motion reduction at the cardiac apex,andhypercontraction of the cardiac base.On the basis of these finding, a diagnosis of takotsubo cardiomyopathywasmade. The patient underwent observationwhile exhibiting no signs of cardiac failure, andwas dischargedafter her symptomswere relieved. Takotsubo cardiomyopathy is often caused bymental and/or physical stress.Weconsideredthatthispatientdevelopedtakotsubocardiomyopathyduetophysicalstresscausedbyacuterenalfailureandhypermagnesemia.It isnecessarytoaccumulatemorecasesoftakotsubocardiomyopathy,but,asseeninthepresentpatient,suchcardiomyopathycanbecausedbyacuterenalfailureor itscomplications.Whenchestsymptoms or abnormal ECG/echocardiography is noted in patientswith acute renal failure, it is necessary to beawareofthepossibilityoftakotsubocardiomyopathyaswellasischemicheartdisease.

Key words :takotsubocardiomyopathy,acuterenalfailure,hypermagnesemia