[追補2017]Japanese Guidelines for the Management of Stroke 2015 脳卒中治療ガイドライン...

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編集:日本脳卒中学会 脳卒中ガイドライン[追補2017]委員会 [追補 2017] ここに公開する『脳卒中治療ガイドライン2015[追補2017]』の25項目を、 『脳卒中治療ガイドライン2015』第 1 版の該当項目と差し換えます。 2017年 9 月26日 一般社団法人日本脳卒中学会 理事長     宮本 享 脳卒中ガイドライン[追補2017]委員会 委員長 森 悦朗 【[追補2017]作成のための文献検索】 2015年版(〜2013年12月末)以降の2014年1月〜2015年12月末の文献を検索した。 言語は日本語と英語に限定した(Cochraneデータベースは多言語も含む)。 2016年 1 月以降に発表された論文でも、特に重要と認めた論文はハンドサーチ文献として引用した。 【[追補 2017 ]作成の原則】 レベル 1 のエビデンスを追補した。 レベル 3 以下だったエビデンスがレベル 2 となっていて、特に重要と考えられるものを追補した。 【[追補2017]引用文献の表示の原則】 追補に当たり追加した引用文献の番号は「追●)」と表示した。 追補作成に当たり削除した引用文献の番号は欠番とした。 【COI申告】 日本脳卒中学会 脳卒中ガイドライン[追補2017]委員会の構成員は、日本医学会が定める診療ガイド ライン策定参加資格基準ガイダンスに則り、conflict of interest (COI)に関する自己申告を行っていま す。 COI自己申告は、日本脳卒中学会ホームページ(http://www.jsts.gr.jp/)の〈脳卒中治療ガイドライ ン〉で公開しています。 【転載許諾、二次利用】 『脳卒中治療ガイドライン2015[追補2017]』の内容を無断で複製・転載することを禁じます。転載許 諾、二次利用などの申請については、日本脳卒中学会ホームページ〈http://www.jsts.gr.jp/〉を参照 してください。 1

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編集:日本脳卒中学会 脳卒中ガイドライン[追補2017]委員会

[追補2017]

 ここに公開する『脳卒中治療ガイドライン2015[追補2017]』の25項目を、『脳卒中治療ガイドライン2015』第 1版の該当項目と差し換えます。

  2017年 9 月26日

一般社団法人日本脳卒中学会 理事長     宮本 享 

脳卒中ガイドライン[追補2017]委員会 委員長 森 悦朗 

【[追補2017]作成のための文献検索】◆2015年版(〜2013年12月末)以降の2014年 1 月〜2015年12月末の文献を検索した。◆言語は日本語と英語に限定した(Cochraneデータベースは多言語も含む)。◆ 2016年 1 月以降に発表された論文でも、特に重要と認めた論文はハンドサーチ文献として引用した。

【[追補2017]作成の原則】◆レベル 1 のエビデンスを追補した。◆レベル 3 以下だったエビデンスがレベル 2 となっていて、特に重要と考えられるものを追補した。

【[追補2017]引用文献の表示の原則】◆追補に当たり追加した引用文献の番号は「追●)」と表示した。◆追補作成に当たり削除した引用文献の番号は欠番とした。

【COI申告】日本脳卒中学会 脳卒中ガイドライン[追補2017]委員会の構成員は、日本医学会が定める診療ガイドライン策定参加資格基準ガイダンスに則り、conflict of interest(COI)に関する自己申告を行っています。COI自己申告は、日本脳卒中学会ホームページ(http://www.jsts.gr.jp/)の〈脳卒中治療ガイドライン〉で公開しています。

【転載許諾、二次利用】『脳卒中治療ガイドライン2015[追補2017]』の内容を無断で複製・転載することを禁じます。転載許諾、二次利用などの申請については、日本脳卒中学会ホームページ〈http://www.jsts.gr.jp/〉を参照してください。

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脳卒中の evidence levelに関する本委員会の分類(2015)Oxford Centre for Evidence-Based Medicine 2011 Levels of Evidence―和訳

質問 ステップ 1(レベル 1*)

ステップ 2(レベル 2*)

ステップ 3(レベル 3*)

ステップ 4(レベル 4*)

ステップ 5(レベル 5)

その問題はどの程度よくあるのか?

特定の地域かつ最新のランダム化サンプル調査

(または全数調査)

特定の地域での照合が担保された調査のシステマティックレビュー**

特定の地域での非ランダム化サンプル**

症例集積** 該当なし

この診断検査またはモニタリング検査は正確か?

(診断)

一貫した参照基準と盲検化を適用した横断研究のシステマティックレビュー

一貫した参照基準と盲検化を適用した個別の横断的研究

非連続的研究、または一貫した参照基準を適用していない研究**

症例対照研究、または質の低いあるいは非独立的な参照基準**

メカニズムに基づく推論

治療を追加しなければどうなるのか?

(予後)

発端コホート研究のシステマティックレビュー

発端コホート研究 コホート研究またはランダム化試験の比較対照群*

症例集積研究または症例対照研究、または質の低い予後コホート研究**

該当なし

この介入は役に立つのか?

(治療利益)

ランダム化試験またはn-of-1試 験のシステマティックレビュー

ランダム化試験または劇的な効果のある観察研究

非ランダム化比較コホート/追跡研究**

症例集積研究、症例対照研究、またはヒストリカルコントロール研究**

メカニズムに基づく推論

よくある被害はどのようなものか?

(治療被害)

ランダム化試験のシステマティックレビュー、ネスティッド・ケース・コントロール研究のシステマティックレビュー、問題が提起されている患者でのn-of-1試験、または劇的な効果のある観察研究

個別のランダム化試験または(例外的に)劇的な効果のある観察研究

一般にみられる被害を特定するのに十分な症例数がある場合、非ランダム化比較コホート/追跡研究(市販後調査)(長期的被害については、追跡期間が十分でなければならない)**

症例集積研究、症例対照研究、またはヒス

トリカルコントロール研究**

メカニズムに基づく推論

まれにある被害はどのようなものか?

(治療被害)

ランダム化試験またはn-of-1試 験のシステマティックレビュー

ランダム化試験または(例外的に)劇的な効果のある観察研究

この(早期発見)試験は価値があるか?

(スクリーニング)

ランダム化試験のシステマティックレビュー

ランダム化試験 非ランダム化比較コホート/追跡研究**

症例集積研究、症例対照研究、またはヒストリカルコントロール研究**

メカニズムに基づく推論

 * 試験間での不一致、または絶対的な効果量が極めて小さいと、レベルは試験の質、不正確さ、間接性(試験のPICOが質問のPICOに合致していない)に基づいて下がることがある。効果量が大きいか、または極めて大きい場合には、レベルは上がることがある。

** 従来通り、一般にシステマティックレビューのほうが個別試験よりも好ましい。

http://www.cebm.net/wp-content/uploads/2014/06/12LPM0488_CEBM-LofE-2-1_和訳.pdfhttp://www.cebm.net/explanation-2011-ocebm-levels-evidence/

引用文献1)http://www.cebm.net/wp-content/uploads/2014/06/CEBM-Levels-of-Evidence-Introduction-2.1.pdf2)http://www.cebm.net/wp-content/uploads/2014/06/CEBM-Levels-of-Evidence-Background-Document-2.1.pdf

『脳卒中治療ガイドライン 2015』の evidence level と recommendation grade

脳卒中のrecommendation gradeに関する本委員会の分類(2015)推奨のグレード

Grades of recommendations内 容

Type of recommendations

A 行うよう強く勧められる( 1 つ以上のレベル1の結果)

B 行うよう勧められる( 1 つ以上のレベル2の結果)

C1 行うことを考慮しても良いが、十分な科学的根拠がない

C2 科学的根拠がないので、勧められない

D 行わないよう勧められる

なお、エビデンスのレベル、推奨のグレードの決定にあたって人種差、民族差の存在は考慮していない。

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委員長 森  悦朗 (東北大学名誉教授、日生病院特任顧問)

副委員長 黒田  敏 (富山大学医学部脳神経外科/教授)

峰松 一夫 (国立循環器病研究センター/病院長)

臨床疫学担当 森  悦朗 (東北大学名誉教授、日生病院特任顧問)

事務局 小笠原邦昭 (岩手医科大学医学部脳神経外科/教授)

………………………………………………………………………………………………………………………………………………●脳卒中一般委員 卜部 貴夫 (順天堂大学医学部附属浦安病院脳神経内科/教授)

小笠原邦昭 (岩手医科大学医学部脳神経外科/教授)

松本 昌泰 (独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO)星ケ丘医療センター/院長)

実務担当者 南波 孝昌 (岩手医科大学医学部脳神経外科/助教)

細見 直永 (広島大学大学院医歯薬保健学研究科脳神経内科学/准教授)

………………………………………………………………………………………………………………………………………………●脳梗塞・TIA委員 坂井 信幸 (神戸市立医療センター中央市民病院脳神経外科/部長)

豊田 一則 (国立循環器病研究センター脳血管部門/部門長)

峰松 一夫 (国立循環器病研究センター/病院長)

実務担当者 井上  学 (国立循環器病研究センター脳血管内科/医長)

猪原 匡史 (国立循環器病研究センター脳神経内科/部長)

今村 博敏 (神戸市立医療センター中央市民病院脳神経外科/医長)

岡﨑 周平 (国立循環器病研究センター脳神経内科/医長)

梶本 勝文 (国立循環器病研究センター脳神経内科)

古賀 政利 (国立循環器病研究センター脳卒中集中治療科/医長)

斎藤こずえ (国立循環器病研究センター脳神経内科)

坂井 千秋 (兵庫医科大学脳神経外科/臨床准教授)

佐藤祥一郎 (国立循環器病研究センター脳血管内科/医長)

園田 和隆 (国立循環器病研究センター脳卒中集中治療科)

田中 智貴 (国立循環器病研究センター脳神経内科)

藤堂 謙一 (大阪大学医学部附属病院神経内科・脳卒中科/助教)

早川 幹人 (筑波大学医学医療系脳卒中予防治療学/講師)

宮下光太郎 (宮下医院/院長)

山上  宏 (国立循環器病研究センター脳卒中集中治療科/医長)

山口 佳剛 (山形県立中央病院神経内科/医長)

横田 千晶 (国立循環器病研究センター脳血管リハビリテーション科/医長)

吉村 壮平 (国立循環器病研究センター脳血管内科)

日本脳卒中学会 脳卒中ガイドライン[追補2017]委員会─委員・実務担当者一覧

(所属は2017年 8月現在のものです)

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………………………………………………………………………………………………………………………………………………●脳出血委員 北園 孝成 (九州大学大学院病態機能内科学/教授)

黒田  敏 (富山大学医学部脳神経外科/教授)

実務担当者 吾郷 哲朗 (九州大学病院腎・高血圧・脳血管内科/講師)

秋岡 直樹 (富山大学医学部脳神経外科/助教)

黒田 淳哉 (九州大学大学院病態機能内科学/講師)

脇坂 義信 (九州大学大学院病態機能内科学/講師)

………………………………………………………………………………………………………………………………………………●くも膜下出血委員 大熊 洋揮 (弘前大学医学部脳神経外科/教授)

木内 博之 (山梨大学医学部脳神経外科/教授)

実務担当者 吉岡 秀幸 (山梨大学医学部脳神経外科/講師)

………………………………………………………………………………………………………………………………………………●無症候性脳血管障害委員 寺山 靖夫 (岩手医科大学医学部神経内科・老年科/教授)

実務担当者 石橋 靖宏 (岩手医科大学医学部神経内科・老年科/講師)

………………………………………………………………………………………………………………………………………………●その他の脳血管障害委員 小笠原邦昭 (岩手医科大学医学部脳神経外科/教授)

実務担当者 千田 光平 (岩手医科大学医学部脳神経外科/助教)

………………………………………………………………………………………………………………………………………………●リハビリテーション委員 園田  茂 (藤田保健衛生大学医学部リハビリテーション医学Ⅱ講座/教授)

実務担当者 川上 途行 (慶應義塾大学医学部リハビリテーション医学教室/専任講師)

児玉 三彦 (東海大学医学部専門診療学系リハビリテーション科学/准教授)

下堂薗 恵 (鹿児島大学大学院医歯学総合研究科リハビリテーション医学/教授)

藤原 俊之 (順天堂大学大学院医学研究科リハビリテーション医学/教授)

(五十音順に掲載)

編集協力 一般財団法人国際医学情報センター

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Japanese Guidelines for the Management of Stroke 2015

脳卒中治療ガイドライン 2015[追補2017]C O N T E N T S

Ⅰ 脳卒中一般1  管理

1- 3  対症療法( 2 )嚥下障害 ……………………………………………………… p.16-17 ───  6

3  発症予防3- 1  危険因子の管理

( 1 )高血圧 ………………………………………………………… p.24-26 ───  8( 2 )糖尿病 ………………………………………………………… p.27-28 ─── 11( 4 )心房細動 ……………………………………………………… p.32-35 ─── 13

3- 2  ハイリスク群の管理( 3 )慢性腎臓病(CKD) ………………………………………… p.44-45 ─── 17

Ⅱ 脳梗塞・TIA1  脳梗塞急性期

1- 3  血栓溶解療法 ……………………………………………………… p.61-63 ─── 191- 4  急性期抗血小板療法 …………………………………………… p.64-65 ─── 231- 8  脳動脈:血管内再開通療法   (機械的血栓回収療法、局所線溶療法、その他) ……… p.69-70 ─── 251-10 脳保護療法 ………………………………………………………… p.72-73 ─── 281-11 血液希釈療法 …………………………………………………… p.74 ──── 301-14 低体温療法 ………………………………………………………… p.77 ──── 311-15 高圧酸素療法 …………………………………………………… p.78 ──── 32

2  TIAの急性期治療と再発予防 ………………………………………… p.81-87 ─── 333  脳梗塞慢性期

3- 1  脳梗塞再発予防ほか(抗血小板療法、無症候性脳梗塞は除く)( 1 )高血圧症 ……………………………………………………… p.88-90 ─── 40

3- 2  再発予防のための抗血小板療法( 1 )非心原性脳梗塞(アテローム血栓性脳梗塞、ラクナ梗塞など)   ………………………………………………………………… p.101-112 ── 43

3- 3  再発予防のための抗凝固療法 ……………………………… p.115-122 ── 55

Ⅲ 脳出血1  脳出血の予防 ……………………………………………………………… p.140-141 ── 632  高血圧性脳出血の急性期治療

2- 2  血圧の管理 ………………………………………………………… p.143-144 ── 655  高血圧性脳出血の手術適応

   開頭手術、神経内視鏡手術 …………………………………… p.155-159 ── 676  高血圧以外の原因による脳出血の治療

6- 1  脳動静脈奇形 ……………………………………………………… p.160-164 ── 726- 6  抗血栓療法に伴う脳出血 ……………………………………… p.173-176 ── 776- 7  CKD患者における脳出血 ……………………………………… p.177-178 ── 82

Ⅳ くも膜下出血6  脳動脈瘤-保存的治療法

6- 2  遅発性脳血管攣縮の治療 ……………………………………… p.205-208 ── 84

Ⅴ 無症候性脳血管障害3  無症候性頚部・脳内血管狭窄・閉塞

3- 2  無症候性頚部動脈狭窄・閉塞 ……………………………… p.223-224 ── 88

Ⅶ リハビリテーション1  脳卒中リハビリテーションの進め方

1- 4   急性期リハビリテーション ………………………………… p.277-278 ── 90

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Ⅰ 脳卒中一般

推 奨

〔 6 〕

1

1.患者が飲食や経口的服薬を開始する前に嚥下評価することが推奨される。ベッドサイドでの簡便なスクリーニング検査として、水飲みテストが有用であるが、さらに精密な検査が必要な場合には嚥下造影検査(VF検査)や内視鏡検査(FE検査)を実施するよう勧められる(グレードB)。

2.検査の結果、誤嚥リスクが高いと判断されれば、嚥下機能回復のためのリハビリテーションを実施する一方で、経鼻胃管(NGチューブ)や経皮内視鏡的胃瘻造設術(PEG)チューブによる栄養補給をするよう勧められる(グレードB)。

3.脳卒中後嚥下障害を有する患者に対する、誤嚥性肺炎の予防を目的とした抗菌薬投与は十分な科学的根拠がないので、勧められない(グレードC2)。

1-3 対症療法 (2)嚥下障害

管理

◉エビデンス脳幹梗塞、多発性梗塞、巨大半球病変やうつ状態は誤

嚥の大きなリスクである1)。嚥下障害は肺炎の高リスクと関連し2)、また、転帰不良と死亡のリスクを増加させるため1、3)、経口摂取開始に際しては適切な評価が必要である(レベル3)。嚥下反射異常、自発的咳嗽の障害、発声障害、口唇閉鎖不全、National Institutes of Health Stroke Scale(NIHSS)高値や脳神経麻痺は嚥下障害の警告要因である4)(レベル4)。

ベッドサイドで実施する水飲みテストは簡便で有益なスクリーニング検査である5、6)(レベル3)。より精密な嚥下機能評価が必要な場合には、嚥下造影検査(videofluor-oscopic evaluation of swallow:VF検査)7)や内視鏡検査

(fiberoptic endoscopic evaluation of swallow:FE検査)8)

を適宜実施する(レベル4)。なお、嚥下障害の評価においては、医師、看護師のほかに言語療法士、管理栄養士を含めた多職種からなるチームとしての介入が適当である9)(レベル4)。

検査の結果、誤嚥リスクが高いと評価されれば、適切な食物形態もしくは摂取方法を考慮することが必要である。一般に脳卒中では経中心静脈性高カロリー輸液が必要となることは稀であり、重度の嚥下障害患者に対しては、栄養補給と内服薬処方の目的で経鼻胃管(nasogastric tube:NGチューブ)が挿入され10)、長期間のNGチューブ留置が必要であれば経皮内視鏡的胃瘻造設術(percutane-ous endoscopic gastrostomy:PEG)によるチューブ栄養

が試みられる11)(レベル4)。急性期脳梗塞におけるシロスタゾール内服が嚥下機能の改善と誤嚥性肺炎を予防する効果が本邦での小規模な臨床試験12)で示されている

(レベル4)。また、海外における脳卒中後嚥下障害患者1,217人を対

象に、予防的抗菌薬投与の肺炎予防効果をクラスター無作為化試験で検証を行ったUKにおけるProphylactic an-tibiotics after acute stroke for reducing pneumonia in pa-tients with dysphagia(STROKE-INF)試験では、抗菌薬+通常ケア群と通常ケア単独群で、脳卒中後肺炎の発症率に差はなかった追1)(レベル2)。

Feed or Ordinary Diet(FOOD)試験によると、嚥下可能な脳卒中患者の栄養補助食品摂取は転帰に影響せず必要無かったこと、脳卒中後早期(発症7日以内)のNGチューブ栄養開始はそれ以降での開始と比較し軽度ながら死亡リスクを低下させること、および早期NGチューブ栄養はPEGチューブ栄養より機能転帰が良かったことが示された13、14)が、栄養補給手段としてNGチューブ患者を長期的に受け入れる介護設備は十分に整っていない現状にある(レベル4)。

[引用文献]

1)Jauch EC, Saver JL, Adams HP, Bruno A, Connors JJ, Demaerschalk BM, et al. Guidelines for early management of patients with acute ischemic stroke. A guideline for healthcare prfessionals from the American Heart Assosciation/American Stroke Association. Stroke 2013;44:870-947.

2)Martino R, Foley N, Bhogal S, Diamant N, Speechley M,

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17脳卒中治療ガイドライン 2015[追補 2017]

脳卒中一般

〔 7 〕

intervention and comprehensive dysphagia care. Nestle Nutr Inst Workshop Ser 2012;72:19-31.

10)O’Mahony D, McIntyre AS. Artificial feeding for elderly patients after stroke. Age Ageing 1995;24:533-535.

11)Wijdicks EF, McMahon MM. Percutaneous endoscopic gastros-tomy after acute stroke:complications and outcome. Cerebrov-asc Dis 1999;9:109-111.

12)Osawa A, Maeshima S, Tanahashi N. Efficacy of cilostazol in preventing aspiration in acute pneumonia in acute cerebral infarction. J Stroke Cerebrovasc Dis 2013;22:857-861.

追1)Kalra L, Irshad S, Hodsoll J, Simpson M, Gulliford M, Smithard D, et al. Prophylactic antibiotics after acute stroke for reducing pneumonia in patients with dysphagia (STROKE-INF):a prospective, cluster-randomised, open-label, masked endpoint, controlled clinical trial. Lancet 2015;386:1835-1844.

13)Dennis M, Lewis S, Cranswick G, Forbes J; FOOD Trial Collaboration. FOOD:a multicentre randomised trial evaluating feeding policies in patients admitted to hospital with a recent stroke. Health Technol Assess 2006;10:ⅲ-ⅳ, ⅸ-ⅹ, 1-120.

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Teasell R. Dysphagia after stroke:incidence, diagnosis, and pulmonary complications. Stroke 2005;36:2756-2763.

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Ⅰ 脳卒中一般

推 奨

〔 8 〕

3

1.高血圧患者では降圧療法を行うよう強く勧められる(グレードA)。

2.降圧目標として、140/90mmHg未満が強く勧められる(グレードA)。糖尿病や蛋白尿合併例には130/80mmHg未満、後期高齢者には150/90mmHg未満を目標とすることを考慮しても良い(グレードC1)。

3.降圧薬の選択としては、カルシウム拮抗薬、利尿薬、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)などが強く勧められる(グレードA)。特に、糖尿病、慢性腎臓病、および発作性心房細動や心不全合併症例、左室肥大や左房拡大が明らかな症例などでは、ACE阻害薬、ARBが勧められる(グレードB)。血圧変動性の点からはカルシウム拮抗薬が勧められる(グレードB)。

3-1 危険因子の管理 (1)高血圧

発症予防

◉エビデンス高血圧は脳出血と脳梗塞に共通の最大の危険因子であ

る1、2)(レベル2)。血圧値と脳卒中発症率との関係は直線的な正の相関関係にあり、血圧が高いほど脳卒中の発症率は高くなる3)(レベル4)。したがって、高血圧治療は脳卒中の予防にきわめて有効である3、4)(レベル1~4)。14件の降圧薬の介入試験をメタアナリシスにより解析した成績によれば、3 ~ 5 年間の 5 ~ 6 mmHgの拡張期血圧の下降により脳卒中の発症率は42%減少する5)(レベル1)。同様に、高血圧患者を含む、すべての降圧治療に関する68件のrandomized controlled trial(RCT)のメタアナリシスでは、冠動脈イベント、心血管イベントよりも脳卒中の発症率は減少する(-36%)追1)(レベル1)。また、高齢者の収縮期高血圧の治療により脳卒中の発症率は30%減少する6)(レベル1)。

また、降圧薬に関して、世界保健機関(WHO)/国際高血圧学会(ISH)によるメタアナリシス7)では利尿薬あるいはβ遮断薬とカルシウム拮抗薬およびACE阻害薬の心血管イベント抑制効果が比較されたが、利尿薬あるいはβ遮断薬に比してカルシウム拮抗薬は脳卒中発症リスクの低減効果が有意に13%優れていた。しかし、ACE阻害薬は有意差がなかった(レベル1)。さらに、The Antihy-pertensive and Lipid-Lowering Treatment to Prevent Heart Attack Trial(ALLHAT)8)では利尿薬(クロルタリドン)とカルシウム拮抗薬(アムロジピン)およびACE阻害薬(リシノプリル)の心血管系イベント抑制の効果が比

較されたが、アムロジピン群では脳卒中発症率がクロルタリドン群に比して有意差はなかったものの7%低く、リシノプリル群はクロルタリドン群に比して有意に15%高かった(レベル2)。また、Losartan Intervention For Endpoint reduction in hypertention study(LIFE)9)ではβ遮断薬(アテノロール)とARB(ロサルタン)が比較されたが、ロサルタン群はアテノロール群に比して脳卒中発症率が有意に25%低かった(レベル2)。

一般的な降圧目標としては、これまでの介入試験の成績より140/90mmHg未満を目標とする10-13)。糖尿病合併例にはより厳格な130/80mmHg未満を目標とし11、14)、降圧薬としてはインスリン抵抗性の改善が報告されているACE阻害薬、ARBが推奨される15-18)。慢性腎臓病合併例では140/90mmHg未満を目標とするが、糖尿病あるいは蛋白尿を有する場合は130/80mmHg未満を目標とする。降圧薬としては腎保護効果が報告されているACE阻害薬、ARBが推奨される14、19)。また、発作性心房細胞や心不全合併例に、左室肥大や左房拡大が明らかな症例など、心房細動発症リスクが高い症例において、ACE阻害薬、ARBの投与により新規心房細動の発症を有意に抑制するという報告がある20-22)。血圧変動性という点からみれば、カルシウム拮抗薬と降圧利尿薬が、他のクラスの降圧薬よりも血圧変動性が少なく、脳卒中予防効果に優れる23)

(レベル1)。降圧薬の併用療法に関しては、冠動脈疾患の危険因子

を有する高血圧患者を対象としたAnglo-Scandinavian

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25脳卒中治療ガイドライン 2015[追補 2017]

脳卒中一般

〔 9 〕

は、高齢高血圧患者(65~85歳)4,418例を、SBP(systolic blood pressure)140mmHg未満を目標とする厳密な治療群とSBP140mmHg以上160mmHg未満を目標とする穏やかな治療群に無作為化し、長時間作用型カルシウム拮抗薬

(エホニジピン)を基礎薬とした降圧治療を 2 年間行った。その結果、厳密治療群と穏やかな治療群との間に脳卒中を含めイベントの発生に差は認められなかった。

[引用文献]

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Cardiac Outcomes Trial- Blood Pressure Lowering Arm(ASCOT -BPLA)24)が発表され、β遮断薬(アテノロール)とサイアザイド系利尿薬の併用群と、カルシウム拮抗薬(アムロジピン)とACE阻害薬(ペリンドプリル)の併用群の間で効果を比較したところ、後者では脳卒中発症が23%有意に少なかった(レベル2)。

高リスク高血圧患者を対象としたCandesartan Antihy-pertensive Survival Evaluation in Japan(CASE-J)25)では、ARB(カンデサルタン)内服群とカルシウム拮抗薬(アムロジピン)内服群とで心血管イベント抑制効果を比較したが、両群間で脳卒中発症率に差を認めなかった(レベル2)。また、心血管疾患あるいは糖尿病を有する高リスク患者を対象としたOngoing Telmisartan Alone and in combination with Ramipril Global Endopint Trial

(ONTARGET)17)では、ACE阻害薬(ラミプリル)単独群とARB(テルミサルタン)単独群との非劣性、両者併用群とACE阻害薬(ラミプリル)単独群との優越性を検討した。その結果、ACE阻害薬(ラミプリル)単独群とARB(テルミサルタン)単独群では脳卒中発症率に差を認めず、併用群とACE阻害薬(ラミプリル)単独群においても同様の結果であった(レベル2)。しかし、このONTARGETを含むACE阻害薬とARBに関するrandomized controlled trial(RCT)のメタアナリシスによれば26)、脳卒中の発症はARB内服群でACE阻害薬内服群と比べ 8 %有意に低下した(p=0.036)(レベル1)。日本人高血圧患者を対象に、カルシウム拮抗薬(ベニジピン)を基礎薬として、併用薬ごとの心血管イベント発生率を検討したCombina-tion Therapy of Hypertension to Prevent Cardiovascular Events trial(COPE試験)では、β遮断薬に比し、利尿薬で脳卒中の、ARBで糖尿病新規発症のリスク抑制効果が示されている27)(レベル2)。高齢者においても降圧療法により脳卒中発症の抑制が期待できるが、150/90mmHg未満と一般の降圧目標に比し緩やかなものが望ましい。80歳以上の高齢者で収縮期血圧が160mmHg以上であるものを対象に150/80mmHg未満を降圧目標とする介入試験で、脳卒中の年間発症率が30%減少している28)(レベル2)。ただし、その降圧目標は慎重に考慮する必要がある。Framingham研究では、高齢者においては加齢に伴い心血管病のリスクの右方シフトが認められており29)、National Integrated Project for Prospective Observation of Non-communicable Disease And its Trends in the Aged 80

(NIPPON DATA 80)でも61歳以上の高齢者では、収縮期血圧140~160mmHg群の心血管病死亡率が最低であることがわかっている30)。また、わが国で行われたThe Japanese Trial to Assess Optimal Systolic Blood Pres-sure in Elderly Hypertensive Patients(JATOS)研究31)で

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26 〔 10 〕

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27脳卒中治療ガイドライン 2015[追補 2017]

Ⅰ 脳卒中一般

推 奨 Ⅰ

脳卒中一般

〔 11 〕

3

1.糖尿病患者では血糖のコントロールが勧められるが、脳卒中予防効果に関する十分な科学的根拠がない(グレードC1)。

2.2型糖尿病患者では血圧の厳格なコントロールが強く勧められる(グレードA)。

3.2型糖尿病患者ではHMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン)の投与による脂質管理が強く勧められる(グレードA)。

3-1 危険因子の管理 (2)糖尿病

発症予防

◉エビデンス糖尿病は脳梗塞の確立された危険因子である1-4)(レベ

ル2)。最近のメタアナリシスでは、糖尿病は虚血性脳卒中の発症リスクを2.27倍高めるのみならず、出血性脳卒中のリスクも1.56倍に高めることが示された5)(レベル1)。2 型糖尿病では血糖のコントロールにより細小血管症(網膜症、腎症、末梢神経障害)は減少する6)。一方、Action to Control Cardiovascular Risk in Diabetes

(ACCORD)試験ではHbA1cを6.0%以下にコントロールすることを目標とした厳格な治療は脳卒中発症を抑制せず、死亡率を有意に上昇させた7)(レベル2)。これには低血糖発作の増加が関連していたと考えられる。脳梗塞の発症予防には、糖尿病を含む危険因子(高血圧、脂質異常症、肥満、喫煙)を包括的にコントロールすることが必要である8)。また、糖尿病と脳卒中発症リスクに関連する64件のコホート研究のメタアナリシスにおいて、他の主要な心血管リスク因子における性差とは無関係に、糖尿病を有する患者の脳卒中発症の相対危険度は、男性と比較して女性のほうが27%増加するという結果が示された追1)(レベル2)。

大血管症である脳梗塞は、血圧の厳格な管理により糖尿病患者の脳梗塞発症率を減少させることができる9)(レベル2)。United Kingdom Prospective Diabetes Study

(UKPDS)38では、血糖のコントロールに加えて、血圧を厳格にコントロールした群(平均144/82mmHg)は、緩やかなコントロール群(平均154/87mmHg)に比べて、致死的・非致死的脳卒中が44%減少した9)。さらにHyperten-sion Optimal Treatment(HOT)研究10)などから糖尿病患者においては、より厳格な降圧目標が望ましく、130/80 mmHg未満が推奨される。

なお、高血圧を合併する 2 型糖尿病患者を対象とした10件のrandomized controlled trial (RCT)のメタアナリシスでは、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬もしくはアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)にて治療を行った場合と、その他の降圧薬を用いて治療を行った場合の比較において、前者のほうが有意に心血管イベントの発症を抑えたが、脳卒中については発症率に差はなかった追2)(レベル1)。

Medical Research Council(MRC)/British Heart Foundation(BHF)Heart Protection Study(HPS)11)のサブ解析では、糖尿病患者においてシンバスタチン40mg投与群で全脳卒中発症の相対危険度が24%低下、虚血性脳卒中では28%の低下を認めた(レベル2)。冠動脈疾患の既往を有さない 2 型糖尿病患者を対象としたCollaborative Atorvastatin Diabetic Study(CARDS)12)では、アトルバスタチン10mg投与群でLDL-コレステロールの低下に伴い、脳卒中発症相対危険度は48%減少した(レベル2)。Cholesterol Treatment Trialists(CTT研究)13)によると、14件の試験データによる18,686例の糖尿病患者におけるメタアナリシスでは、血管病変の有無や試験開始時のLDLコレステロールの値に関係なく、スタチンは脳卒中を含む血管イベントの発生を低下させた(レベル1)。これらの結果から、糖尿病患者における脳卒中発症予防には、スタチンによる脂質管理が有効である。

PROspective pioglitAzone Clinical Trial In macro Vascular Events(PRO active)Study14)では、心血管疾患の既往を有する 2 型糖尿病患者を対象とし、インスリン抵抗性改善薬ピオグリダゾンの心血管イベント発症予防効果を検討した。全死亡、非致死的心筋梗塞(無症候性心筋梗塞を除く)、脳卒中を含む主要二次エンドポイント

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28 〔 12 〕

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の発生リスクは、ピオグリダゾン内服群で16%と有意に低下した(レベル2)。PRO active Studyの脳卒中発症サブ解析15)では、脳卒中の既往のある患者のみでピオグリダゾンによる脳卒中発症抑制効果が明らかとなった。脳卒中の既往のない患者における脳卒中発症予防効果は認められなかった。

また、メトフォルミンで治療中の 2 型糖尿病患者において、スルホニル尿素薬であるグリメピリドもしくはジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP-4)阻害薬であるリナグリプチンを追加することによるHbA1c改善効果を検討した研究において、脳卒中を含む心血管イベント発生率についても検討されている16)(レベル2)。リナグリプチンを追加した群ではグリメピリドを追加した群に比し、HbA1c値低下効果は非劣性であり、低血糖発作、心血管イベント発生率は有意に低いことが示されている。特に非致死性脳卒中発症の相対危険度は27%と有意に低かった。

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32

Ⅰ 脳卒中一般

推 奨

〔 13 〕

3

1.非弁膜症性心房細動(NVAF)患者における脳卒中発症を予防するためには、CHADS2スコア2点以上の場合、非ビタミンK阻害経口抗凝固薬(Non-vitamin K antagonist oral anticoagulant:NOAC)もしくはワルファリンによる抗凝固療法の実施が強く勧められる(グレードA)。CHADS2

スコア1点の場合、NOACによる抗凝固療法が勧められる(グレードB)。CHADS2スコア0点で心筋症、年齢65歳以上、血管疾患の合併の場合、抗凝固療法を考慮しても良い(グレードC1)。危険因子のない60歳未満のNVAF患者に対する抗血栓療法を考慮しても良い(グレードC1)。

2.ワルファリン療法の強度は、一般的にはPT-INR(prothrombin time-international normalized ratio、以下INR)2.0~3.0が強く勧められる(グレードA)が、高齢(70歳以上)のNVAF患者では、1.6~2.6にとどめることが勧められる(グレードB)。

3-1 危険因子の管理 (4)心房細動

発症予防

◉エビデンスNVAFは脳梗塞の危険因子である。NVAF患者の脳梗

塞発症率は平均 5 %/年であり、心房細動のない人々の 2~ 7 倍高い1-3)(レベル4)。平成12年度厚生科学研究費による脳梗塞急性期医療の実態に関する研究(J-MUSIC)によれば、発症後 7 日以内に入院した脳梗塞患者の20.8%に心房細動を合併していた4)(レベル4)。これまでにNVAF患者を対象に脳卒中の予防を目的として行われた抗血栓療法の29の大規模臨床試験をメタアナリシスした成績によれば、用量調節法によるワルファリン療法はきわめて有効であり、プラセボに対して64%の脳卒中予防効果がある5)(レベル1)。NVAFでは脳卒中リスクの層別化にCHADS2スコアの使用が推奨される6)(レベル2)。CHADS2とは、うっ血性心不全、高血圧、75歳以上、糖尿病、脳卒中または一過性脳虚血発作(TIA)の既往の頭文字である。うっ血性心不全、高血圧、75歳以上、糖尿病はそれぞれ 1 点、脳梗塞またはTIAは 2 点とされ、その合計点がCHADS2スコアとなる6)。CHADS2スコアの妥当性は大規模な前向きの臨床試験で確認されている7、8)。スコア 0 の脳卒中発症率は 1 %/年、スコア 1 の脳卒中発症率は1.5%/年、スコア 2 の脳卒中発症率は2.5%/年、スコア 3 以上の脳卒中発症率は≧ 5 %/年であった7)。NVAF患者における脳卒中の危険因子は、脳卒中またはTIAの既往、高血圧、うっ血性心不全、加齢、糖尿病、冠動脈疾患の合併であり、これらのうち、いずれかの危険因子を有するNVAF患者ではワルファリンを投与するべ

きであるとされている9-11)(レベル1)。ただしCHADS2スコア 1 点の症例においては、ワルファリン療法の脳梗塞発症予防効果が出血性合併症の発症リスクを上回ることが明らかになっていない。

2011年、経口の直接トロンビン阻害薬であるダビガトランの登場以降、第Ⅹa因子阻害薬であるリバーロキサバン、アピキサバン、エドキサバンといったNOACが相次いで認可された。これらのNVAFを対象とした第Ⅲ相試験では、ワルファリンに比較して、脳卒中発症予防効果は同等かそれ以上、重大な出血発症率は同等かそれ以下、頭蓋内出血は大幅に低下することが示されている12-15)

(レベル2)。NVAFに対するダビガトランとワルファリンの塞栓症

予防効果を検証したRandomized Evaluation of Long-term Anticoagulant Therapy(RE-LY)試験では、ダビガトラン150mg× 2 回/日と110mg× 2 回/日の 2 用量が設定されている。脳卒中および全身性塞栓症の発症はワルファリン群で1.69%/年に対して、ダビガトラン150mg× 2 回/日では1.11%/年と有意に低く、110mg× 2 回/日では1.53%/年と同等であった。大出血についてはワルファリン群で3.36%/年に対して、ダビガトラン150mg× 2 回/日では3.11%/年と有意差なく、110mg× 2 回/日では2.71%/年と有意に低かった。出血性脳卒中はワルファリン群で0.38%/年であったのに対して、ダビガトラン群では両用量とも有意に低かった12)(レベル2)。本試験においてはCHADS2スコア 0 、1 の5,775例において0.93%/年

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33脳卒中治療ガイドライン 2015[追補 2017]

脳卒中一般

〔 14 〕

血はワルファリン群1.6%/年に対して、リバーロキサバン群0.8%/年であった。

Apixaban for Reduct ion in Stroke and Other Thromboembol ic Events in Atr ia l Fibr i l la t ion

(ARISTOTLE)試験ではアピキサバン 5 mg× 2 回/日とワルファリンが比較検討された14)。対象はCHADS2スコア 1 点以上のNVAF患者18,201例である。脳卒中および全身性塞栓症の発症はワルファリン群1.60%/年に対して、アピキサバン群1.27%/年、大出血はワルファリン群3.09%/年に対して、アピキサバン群2.13%/年、出血性脳卒中はワルファリン群0.47%/年に対して、アピキサバン群0.24%/年といずれも有意に低減されていた14)(レベル2)。本試験においてCHADS2スコア別に層別解析を行ったサブ解析では、CHADS2スコア 1 点の群における結果が示されている。脳卒中および全身性塞栓症発症率はワルファリン群0.87%/年に対して、アピキサバン群0.74%/年と同等であった。大出血はワルファリン群2.34%/年、アピキサバン群1.38%/年、頭蓋内出血はワルファリン群0.60%/年、アピキサバン群0.27%/年とともにアピキサバン群で有意に低かった19)(レベル3)。この結果よりアピキサバンはCHADS2スコア 1 点の症例に対しても推奨される。

Effective Anticoagulation with Factor Xa Next Generation in Atrial Fibrillation-Thrombolysis in Myocardial Infarction 48(ENGAGE AF-TIMI 48)試験では、エドキサバン60mg(用量調整基準に該当する場合は30mg)× 1 回/日、30mg(用量調整基準に該当する場合は15mg)× 1 回/日の 2 用量とワルファリンが比較検討された15)。対象は、CHADS2スコア 2 点以上のNVAF患者21,105例である。脳卒中および全身性塞栓症の発症はワルファリン群1.50%/年に対して、エドキサバン60mg群は1.18%/年と有意に低減されたが、30mg群では1.61%/年と同等であった。脳梗塞発症率はワルファリン群1.25%/年に対して、エドキサバン60mg群は1.25%/年と同等であったが30mg群は1.77%/年と有意に多いという結果であった。大出血はワルファリン群3.43%/年に対して、エドキサバン60mg群2.75%/年、30mg群1.61%/年とともに有意に低減されていた。頭蓋内出血発症率はワルファリン群0.85%/年に対して、エドキサバン60mg群0.39%/年、30mg群0.26%/年とともに有意に低減されていた。

以上の結果からCHADS2スコア 1 点の症例については、NOACであるトロンビン阻害薬やⅩa因子阻害薬が推奨される。またCHADS2スコア 0 点であっても65歳以上や血管疾患の合併は他の危険因子と同等なリスクがあると報告されている20)。また、心筋症を有する症例でも抗

の脳卒中および全身性塞栓症の発症が認められた。CHADS2スコアにより層別解析を行ったサブ解析では、CHADS2スコア 0 、1 の対象群において脳卒中および全身性塞栓症の発症はワルファリン群で1.08%/年に対して、ダビガトラン150mg× 2 回/日では0.65%/年と有意に低く、110mg× 2 回/日では1.06%/年と同等であった。また、頭蓋内出血発症率は両用量ともワルファリン群よりも有意に低かった16)(レベル3)。この結果よりダビガトランはCHADS2スコア 1 点の症例に対しても推奨される。本試験のサブ解析では、アジア人においてもダビガトランの有効性は同様に示された。また、消化管出血を増加させないことも示された17)(レベル3)。

また、NVAF患者における塞栓症発症予防に対する長期間の抗凝固療法の有効性と安全性に関して、ダビガトランとワルファリンを比較検討する目的で行われたコクランデータベースにおける計40試験のシステマティックレビューによると、虚血性脳卒中の発症抑制効果については、ダビガトランはワルファリンと同等であったが、特にダビガトラン150mg× 2 回/日投与では、ワルファリンより有意差をもって有効であった(オッズ比0.86、95%信頼区間0.75~0.99)。また、出血性脳卒中を含む致死性および非致死性大出血の合併は、ダビガトランで有意に低かった(オッズ比0.87、95%信頼区間0.78~0.97)追1)(レベル1)。

リバーロキサバン20mg× 1 回/日のワルファリンに対する非劣性を検証したRivaroxaban Once Daily Oral Direct Factor Xa Inhibition Compared with Vitamin K Antagonism for Prevention of Stroke and Embolism Trial in Atrial Fibrillation(ROCKET-AF)試験では、CHADS2

スコア 2 点以上のNVAF症例が対象となった。脳卒中および全身性塞栓症の発症は、per-protocol解析ではワルファリン群2.2%/年に対して、リバーロキサバン群1.7%/年で有意に低かったが、ITT解析では各々2.4%/年、2.1%/年と有意差はつかなかった。出血性合併症はワルファリン群14.5%/年に対して、リバーロキサバン群14.9%/年で同等であった。頭蓋内出血はワルファリン群0.7%/年に対して、リバーロキサバン群0.5%/年で33%の低減効果が示された13)(レベル2)。

日本人を対象として日本での用量であるリバーロキサバン15mg× 1 回/日のワルファリンに対する非劣性を検証したJ-ROCKET-AFでは日本人NVAF患者1,280例が対象となった18)(レベル2)。脳卒中および全身性塞栓症の発症は、ワルファリン群2.61%/年に対して、リバーロキサバン群1.26%/年で低い傾向(p=0.050)が示された。出血性合併症はワルファリン群16.42%/年に対して、リバーロキサバン群18.04%/年で同等であった。頭蓋内出

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34 〔 15 〕

31)(レベル1)。しかし、高齢者(70歳以上)ではワルファリンによる重篤な出血合併症(頭蓋内出血と頭蓋外の大出血)のリスクが大きいので、ワルファリンの強度をINR 1.6~2.6に下げたほうが良いと考えられる10、11、32、33)(レベル1~3)。NOACのうち、ダビガトランは機械弁に対する有用性を示すことができず34)(レベル2)、Xa因子阻害薬は臨床試験が実施されていない。このためNOACは機械弁を有する心房細動に対しては推奨されず、PT-INR 2.0~3.0のワルファリン療法が推奨される。

発作性心房細動患者を対象として、洞調律維持治療(ナトリウムチャンネル遮断薬が中心)と心拍数調節治療(β遮断薬、カルシウム拮抗薬、ジギタリス)を比較したJapanese Rhythm Management Tria l for Atr ia l Fibrillation(J-RHYTHM)study35)では、脳梗塞の発症は両群間で差がなかった(ワルファリンは両群ともに約60%服用)。しかし、イベント(死亡、症候性脳梗塞、全身性塞栓症、大出血、心不全による入院、被験者の基本的治療に対する忍容性)非発症率は、洞調律維持治療群で有意に高かった(p=0.0128)が、症候性脳梗塞のみでは差がなかった。

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凝固療法を考慮して良い21-23)。アスピリンはワルファリンよりも劣るが、22%の脳卒

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(AVERROES)研究では、アピキサバンは出血性合併症を増加させることなく脳卒中および全身性塞栓症を有意に減少させることが示された29)(レベル2)。主要エンドポイントである脳卒中および全身性塞栓症の発症はアピキサバン群で1.6%/年であったのに対して、アスピリン群では3.7%/年で55%の有意な減少であった。主要出血合併症はアピキサバン群1.4%/年、アスピリン群1.2%/年、頭蓋内出血はアピキサバン群0.4%/年、アスピリン群0.4%/年であり、ともに有意差なしであった。以上よりワルファリン療法を行うことのできないNVAF患者に対して、代替としてアスピリンを投与することは推奨されない。

NVAFに対するワルファリン療法は脳卒中の予防効果があり、なおかつ重篤な出血合併症を最小限にしうる強度を目標値として設定すべきであるが、虚血性脳卒中と出血性脳卒中を合計した全脳卒中発症を最小限にしうるワルファリンの強度はINR 2.0~3.0の範囲なので、一般的にはこの範囲の強度のワルファリン療法が推奨される30、

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35脳卒中治療ガイドライン 2015[追補 2017]

脳卒中一般

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44

Ⅰ 脳卒中一般

推 奨

〔 17 〕

3

1.慢性腎臓病(CKD)は脳卒中の予知因子の一つであり、生活習慣(禁煙、減塩、肥満の改善、節酒)の改善と血圧の管理が強く勧められる(グレードA)。

2.血圧の管理目標は140/90mmHg未満とし、糖尿病あるいは蛋白尿を認める場合は130/80mmHg未満とすることを考慮しても良い(グレードC1)。

3.2型糖尿病を有する場合は、CKDの進行抑制に厳格な血糖コントロールが強く勧められ(グレードA)、低血糖リスクを回避しつつ個々の症例に応じて血糖コントロール目標を設定することを考慮しても良い(グレードC1)。

4.降圧薬としては糖尿病あるいは蛋白尿を認める場合はアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬やアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)が勧められる(グレードB)。

5.CKDに非弁膜症性心房細動が合併した場合でもクレアチニンクリアランスが30mL/min以上であれば非ビタミンK阻害経口抗凝固薬(Non-vitamin K antagonist oral anticoagulants:NOAC)を含む抗凝固療法が勧められる(グレードB)。

3-2 ハイリスク群の管理 (3)慢性腎臓病(CKD)

発症予防

◉エビデンスCKDは、腎臓に何らかの異常所見が見出される、もし

くは糸球体濾過量(GFR)が<60mL/分/1.73m2未満の腎機能が 3 か月以上持続するものと定義される1、2、3)。CKD患者は、心血管疾患の死亡率が高いことが明らかにされた3)。米国のデータでは、心筋梗塞後の患者14,527例を追跡調査したところ、CKDが合併していると心血管イベント、心不全、脳梗塞の発症率が高くなり、腎機能が低下するほど発症率は高くなった4)(レベル2)。CKDは脳卒中を含む心血管疾患の独立した危険因子である2)(レベル2)。本邦では、大迫住民1,977名(平均年齢62.9歳、男性731人、女性1,246人)を平均7.76年追跡調査したところ、CKDは脳卒中の独立した危険因子となることが明らかにされ、クレアチニンクリアランス(Ccr)>70mL/minの場合と比較するとCcr 40~70mL/分では脳卒中のハザード比が1.9(95%信頼区間1.06~3.75)、Ccr<40mL/分では3.1(95%信頼区間1.24~7.84)となった5)(レベル3)。また、日本人の健診者91,414例以上を10年間観察したコホート研究によればGFR 60mL/分/1.73m2未満の心血管疾患のリスクは以上と比較して、冠動脈疾患で男性1.08倍、女性1.13倍、脳卒中で男性1.98倍、女性1.85倍と報告されている6)。脳卒中病型別にCKDの寄与を検討したわ

が国の報告としては、Circulatory Risk in Communities Study(CIRCS研究)で一般住民12,222例を17年追跡した検討で、CKDは男性で1.63倍、女性で1.51倍脳卒中リスクを高め、特に男性では脳出血、女性では脳梗塞の有意なリスク因子であった7)(レベル3)。

CKDの予防ならびに腎機能障害の進行の阻止には、①生活習慣の改善(禁煙、減塩、肥満の改善、節酒)2、8)、②血圧の管理目標は140/90mmHg未満とするが、糖尿病あるいは蛋白尿を有する場合は130/80mmHg未満を目標に、腎保護作用がある降圧薬ACE阻害薬あるいはARBを用い緩徐に降圧2、9-11)、③糖尿病腎症を発症している場合は、HbA1c 6.9%(NGSP)未満に管理2、12、13)、また厳格な血糖管理により糖尿病腎症の発症を抑制2、13、14)、④高コレステロール血症がある場合はLDLコレステロールを120mg/dL未満に管理2、15)する。ただし、CKD患者に対するスタチンの脳心血管イベント抑制効果を検証した28件のrandomized controlled trial(RCT)のメタアナリシスでは、スタチン治療はプラセボと比較して脳卒中発症抑制に関して有意差は認められず、脳卒中発症の抑制効果は確認できなかった追1)(レベル1)。

CKD患者で脳卒中予防のためには生活習慣改善、危険因子管理、特に血圧管理が重要である。CKDでは抗血栓

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45脳卒中治療ガイドライン 2015[追補 2017]

脳卒中一般

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療法実施時の出血合併症が多いと報告されているが、ワルファリン不適応の非弁膜症性心房細動患者を対象としたアスピリンとアピキサバンの試験結果のサブ解析では、CKDは脳卒中および全身塞栓症とともに出血合併症を各々1.6倍、2.2倍有意に高めており、CKD群においてアスピリンに比しアピキサバンは68%有意に脳卒中、全身塞栓症を低下し、出血合併症の頻度はアスピリンと同等であることが報告されている。Ccrが30mL/分以上のCKD患者で非弁膜症性心房細動を合併した場合にはNOAC、特にアピキサバンの投与が推奨される16)(レベル2)。しかし、血液透析患者では抗凝固療法の有用性は示されていないので出血合併症に注意して適応を慎重に判断する17)。CKDではしばしば貧血が合併するが、貧血の補正を目標とし 2 型糖尿病を有するCKD患者4,038例を対象としてDarbepoetin αまたはプラセボを用いたTrial to Reduce Cardiovascular Events with Aranesp Therapy

(TREAT)試験では、プラセボに比し実薬群で1.9倍(95%信頼区間1.4~2.7)脳卒中発症リスクが高かった18)(レベル3)。CKD患者で貧血を補正する際には、脳卒中予防に留意する必要があると考えられる。

[引用文献]

1)日本腎臓学会.CKD診療ガイド2012.東京:東京医学社;2012.2)日本腎臓学会.エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン

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表 推定GFR1、2)

  eGFR(mL/min/1.73m2)=194×Cr−1.094×Age−0.287

(女性は×0.739)

参考:日本腎臓学会編.CKD診療ガイド2012.東京:東京医学社;2012.p18.

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61脳卒中治療ガイドライン 2015[追補 2017]

Ⅱ  脳梗塞 ・ TIA

推 奨

脳梗塞・TIA

〔 19 〕

1-3 血栓溶解療法

脳梗塞急性期1

1.遺伝子組み換え組織プラスミノゲン・アクティベータ(rt-PA、アルテプラーゼ)の静脈内投与は、発症から4.5時間以内に治療可能な虚血性脳血管障害で慎重に適応判断された患者に対して強く勧められる(グレードA)。わが国ではアルテプラーゼ0.6mg/kgの静注療法が保険適用されており、治療決定のための除外項目、慎重投与項目が「rt-PA(アルテプラーゼ)静注療法適正治療指針第二版」に定められている。また、日本脳卒中学会によりrt-PA静注療法実施施設要件が提案、推奨されている。

2.発症後4.5時間以内であっても、治療開始が早いほど良好な転帰が期待できる。このため、患者が来院した後、少しでも早く(遅くとも1時間以内に)アルテプラーゼ静注療法を始めることが強く勧められる(グレードA)。

3.前方循環の主幹脳動脈(内頚動脈または中大脳動脈M1部)閉塞と診断され、画像診断などに基づく治療適応判定がなされた急性期脳梗塞に対し、アルテプラーゼ静注療法を含む内科治療に追加して、発症6時間以内に主にステントリトリーバーを用いた血管内治療(機械的血栓回収療法)を開始することが強く勧められる(グレードA)。わが国では、脳血栓回収用機器(Merci、Penumbra、Solitaire、Trevo、Revive)による血管内治療が保険適用されており、「経皮経管的脳血栓回収用機器 適正使用指針 第2版」に従って、定められた実施医療機関において、適切な症例選択と手技によって行わねばならない。

4.現時点において、アルテプラーゼ以外のt-PA、desmoteplase(本邦未承認)、tenecteplase(本邦未承認)の静脈内投与は十分な科学的根拠がないので、勧められない(グレードC2)。

◉エビデンス発症 3 時間以内の脳梗塞患者に対するrt-PA(アルテ

プラーゼ)0.9mg/kgの静脈内全身投与法の臨床治験では、症候性頭蓋内出血の頻度を有意に増加させたものの、3か月後の死亡数に有意差はなく、転帰良好群を有意に増加させた1)(レベル2)。1 年後の有効性も同様に良好であった。発症 3 ~4.5時間の患者を対象とした臨床試験

(European Cooperative Acute Stroke Study:ECASS Ⅲ)でも、症候性頭蓋内出血の頻度を有意に増加させたものの、3 か月後の死亡数に差はなく、転帰良好群を有意に増加させた2)(レベル2)。発症 3 ~ 6 時間の患者を対象として頭部MRIで拡散強調画像と脳灌流画像を撮影後にアルテプラーゼ静脈内投与の効果を評価した臨床試験

(Echoplanar Imaging Thrombolysis Evaluation Trial:EPITHET)では、有意ではなかったもののアルテプラーゼが梗塞巣拡大抑制と再灌流増加に関連していた。このなかの再灌流した患者では有意に梗塞巣拡大が抑えら

れ、転帰良好が多かった3)(レベル2)。2010年のランダム化試験の統合解析では、発症から治療開始までの時間が短いほど 3 か月後の転帰良好の割合が有意に増加し、アルテプラーゼによる転帰良好を増加させる効果は4.5時間を超えると消失し、巨大な頭蓋内出血の発生は発症から治療開始までの時間に関連なく、死亡は4.5時間を超えると増加した4)(レベル1)。オープンラベル・エンドポイント盲検化評価で行われた80歳を超える高齢者を半数以上含む発症 6 時間以内の患者を対象とした臨床試験

(Third International Stroke Trial:IST3)では、アルテプラーゼ静脈内投与によって発症 7 日以内の症候性頭蓋内出血と死亡の頻度が有意に増加したものの、7 日から 6か月後の死亡は有意に少なく、6 か月以内で死亡率に差がなかった。6 か月後の日常生活自立の割合に差はなかったが、転帰評価スコアの順序解析では転帰良好な方向に有意にシフトしていた5)(レベル2)。この効果は18か月後にも確認された6)。2012年のランダム化試験のシ

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62 〔 20 〕

ment for Acute Ischemic Stroke in the Netherlands)追2)、ESCAPE(Endovascular Treatment for Small Core and Anterior Circulation Proximal Occlusion with Emphasis on Minimizing CT to Recanalization Times)追3)、EXTEND-IA(Extending the time for Thrombolysis in Emergency Neurological Deficits-Intra-Arterial)追4)、SWIFT-PRIME

(Solitaire with the Intention for Thrombectomy as Prima-ry Endovascular Treatment)追5)、REVASCAT(Rand-omized Trial of Revascularization with Solitaire FR De-vice versus Best Medical Therapy in the Treatment of Acute Stroke Due to Anterior Circulation Large Vessel Occlusion Presenting within Eight Hours of Symptom On-set)追6)およびこれらのランダム化試験の統合解析追7-追10)

により、発症 6 時間以内の主幹脳動脈閉塞による急性期脳梗塞に対し、アルテプラーゼ静注療法を含む内科治療に本療法を追加することが、患者転帰を改善するという科学的根拠が示された。しかしこれらの結果は、前方循環の主幹脳動脈(内頚動脈または中大脳動脈M1部)閉塞と診断され、画像診断に基づく治療適応判定がなされた症例を対象とし、主にステントリトリーバーを用いた血管内治療を迅速に行うことで達成されたものである。後方循環系の主幹脳動脈閉塞や、発症 6 ~12時間以降あるいは発症時間不明の脳梗塞などに関しては、未だ血管内治療の有効性を確立するまでの知見が集積されていないことに十分に留意すべきである。本療法の実施者は、「経皮経管的脳血栓回収用機器 適正使用指針 第 2 版(2015年4 月)」の内容に従って、定められた実施医療機関において、適切な症例選択と手技によって行わねばならない追11)

(レベル1)。発症 3 ~ 9 時間の患者を対象に行われたdesmoteplase

(本邦未承認)の用量増加試験(Desmoteplase in Acute Ischemic Stroke:DIAS-2)では有効性は示されなかったが、対象患者選択が不適切であった可能性が指摘された21)(レベル2)。患者選択基準を変更してDIAS-3とDIAS-4が行われたが有効性は示されなかった追12)(レベル2)。tenecteplase(本邦未承認)は第Ⅱb相臨床試験でアルテプラーゼと比較して有効性が示されている22)(レベル2)。低用量アルテプラーゼ(0.6mg/kg)とeptifibatide(本邦未承認)75mg急速投与と90mg/kgの 2 時間持続静注は、アルテプラーゼ(0.9mg/kg)単独に比べて安全で有効性が示され第Ⅲ相試験が期待される23)(レベル2)。アルテプラーゼ静脈内投与後早期のアスピリン投与は、3 か月後の転帰を改善させず症候性頭蓋内出血を増加させた24)

(レベル2)。アルテプラーゼ静脈内投与に経頭蓋ドプラ(もしくはカラードプラ)を併用する超音波血栓溶解療法では閉塞血管の早期再開通率の改善が示され、臨床転帰

ステマティックレビューおよびメタアナリシスでは、発症 6 時間以内の患者全員を対象とするとアルテプラーゼにより最終フォローアップ時の日常生活自立の割合は有意に増加し、その中でも発症から 3 時間以内に治療を開始した患者で日常生活自立の割合が最も多かった。アルテプラーゼで症候性頭蓋内出血と 7 日以内の死亡が有意に増加していたが、最終フォローアップ時には死亡に差はなかった。80歳を超える高齢者でも同様の効果があった7)(レベル1)。2014年にはランダム化試験のメタアナリシスで、高齢者や、神経学的重症度が軽度もしくは重度の患者でもそれ以外の患者と同様にアルテプラーゼによる日常生活自立を有意に増やす効果があることが示された。また、発症から治療開始までの時間、年齢や、神経学的重症度に関係なくアルテプラーゼによる発症 7 日以内の致死的症候性頭蓋内出血の発生が増加していたが、アルテプラーゼ投与群とコントロール群で90日後の死亡に差はなかった8)(レベル1)。2014年に更新された血栓溶解療法のシステマティックレビューでも、年齢(80歳未満もしくは以上)にかかわらず発症後より早期(特に 3時間以内)の治療開始で死亡もしくは要介護が減少することが示された追1)(レベル1)。

わが国では、2002年より2003年にかけて、発症 3 時間以内の虚血性脳血管障害に対するアルテプラーゼ静注療法のオープン試験(第Ⅲ相治験、Japan Alteplase Clinical Trial:J-ACT)が行われ、海外での臨床治験と同等の有効性と安全性が得られたこともあり9)、2005年10月に厚生労働省の適応拡大承認を得た。J-ACTにおいては海外で承認されている0.9mg/kgよりも少ない0.6mg/kgでの臨床試験であったため、わが国での承認投与量は0.6mg/kgとなっている。

国内外におけるアルテプラーゼ静脈内投与の市販後調査ではこれまでの臨床治験と同等の有効性と安全性が確認されているが10-14)、プロトコール違反が多いと症候性頭蓋内出血を含めた合併症の頻度が増加するという報告もある15)(レベル3)。特に治療前に広汎な早期虚血性変化を伴う場合に症候性頭蓋内出血や転帰不良例が多いことが、MRI拡散強調画像を用いた市販後研究でも確認された16、17)(レベル3)。またランダム化試験の統合解析結果と同様に、治療開始が早いほど良好な転帰が期待できることが示されている18)(レベル3)。

アルテプラーゼ静脈内投与により血流再開が得られなかった発症から 8 時間以内の虚血性脳血管障害に、脳血栓回収用機器(Merci、Penumbra、Solitaire、Trevo、Revive)による血管内治療が保険適用されている。2014年から2015年にかけて報告されたMR CLEAN(Multi-center Randomized Clinical Trial of Endovascular Treat-

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脳卒中治療ガイドライン 2015[追補 2017]

脳梗塞・TIA

63-1〔 21 〕

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の改善が示唆されており(レベル2)、第Ⅲ相治験(Combined Lysis of Thrombus in Brain Ischemia Using Transcranial Ultrasound and Systemic t-PA phase Ⅱ trial:CLOTBUST-ER)が進行中である25)。

低用量(60,000単位/日)ウロキナーゼの 7 日間点滴投与は、急性期( 5 日以内)脳血栓症26)患者の臨床症候(全般改善度)の改善に有効であった(レベル2)。しかし、客観的評価尺度を用いた多数例での検討はなされていない。

ストレプトキナーゼの静脈内全身投与の臨床治験は、治療群で転帰不良例や死亡例が有意に多かったため、中断された27-30)。急性期脳梗塞に対するストレプトキナーゼ静脈内投与はむしろ有害である(レベル2)。

わが国で使用しているアルテプラーゼ0.6mg/kgと0.9 mg/kgの安全性や有効性を比較した国際共同試験Enhanced Control of Hypertension and Thrombolysis Stroke Study(ENCHANTED)(ClinicalTrials.gov Identifier:NCT 01422616)では、主要評価項目である発症90日後の転帰不良(modified Rankin Scale 2~6)の割合では0.6mg/kgの0.9mg/kgに対する非劣性は示されなかった。しかし発症90日後のmodified Rankin Scaleでの比較では、0.6mg/kgの非劣性が示され、症候性の脳内出血や発症 7 日以内の致死的イベント発生が0.6mg/kgで有意に少なかった追13)。

わが国でアルテプラーゼ静注療法を実施するに当たっては、「rt-PA(アルテプラーゼ)静注療法適正治療指針第二版(2016年 9 月一部改訂)」31、32)の推奨に従うことが望ましい。

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脳卒中治療ガイドライン 2015[追補 2017]

脳梗塞・TIA

〔 22 〕 63-2

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64

Ⅱ  脳梗塞 ・ TIA

推 奨

〔 23 〕

1-4 急性期抗血小板療法

脳梗塞急性期1

1.アスピリン160~300mg/日の経口投与は、発症早期(48時間以内に開始)の脳梗塞患者の治療法として強く勧められる(グレードA)。

2.抗血小板薬2剤併用(例えばアスピリンとクロピドグレル)は、発症早期の心原性脳塞栓症を除く脳梗塞もしくは一過性脳虚血発作(TIA)患者の、亜急性期までの治療法として勧められる(グレードB)。

3.オザグレルナトリウム160mg/日の点滴投与は、急性期(発症5日以内に開始)の脳血栓症(心原性脳塞栓症を除く脳梗塞)患者の治療法として勧められる(グレードB)。

◉エビデンスアスピリン160~300mg/日の経口投与は、発症早期(48

時間以内)に開始した場合の脳梗塞患者の転帰改善に有効である1-4)(レベル1)。アスピリンの重篤な血管事故再発予防効果のnumber needed to treat(NNT)注)は平均約 3週間の投与で111(文献 4 より計算)であり、症候性頭蓋内出血の頻度をわずかながら増加させる。シロスタゾールは、発症早期の脳梗塞患者に単独で経口投与した場合、アスピリンと同等の有効性と安全性が示されている5)(レベル2)。

発症24時間以内の軽症脳梗塞もしくはTIA患者で、クロピドグレル(初回300mgで以後75mg/日)とアスピリン

(初回75~300mg、以後75mg/日)の21日間の併用(22日目以降はクロピドグレルのみ服用)は、アスピリン単剤(初回75~300mgで以後75mg/日)に比べて 3 か月後の脳卒中再発を有意に抑制し、中等症もしくは重篤な出血事故を増加させなかった6)(Clopidogrel in High-Risk Patients with Acute Nondisabling Cerebrovascular Events:CHANCE試験)(レベル2)。この試験を加えて発症 3 日以内の非心原性脳梗塞もしくはTIA患者で抗血小板薬 2剤併用と単剤の有効性と安全性を評価した14試験のシステマティックレビューおよびメタアナリシスでも、抗血小板薬 2 剤併用は単剤に比べ脳卒中再発を有意に抑制し、重篤な出血事故が増加することはなかった7)(レベル1)。メタアナリシスに用いられた各臨床試験の使用薬剤、治療開始時期、継続期間は多様であるが、対象患者

の半数以上がCHANCE試験からの患者であるため、薬剤としてはアスピリンとクロピドグレルの併用をアスピリンと比べたもの、治療開始時期は発症24時間以内、継続期間は21日までが最も多かった。2015年に報告されたアスピリンとクロピドグレルの併用をアスピリンもしくはクロピドグレルの単剤と比較した試験のシステマティックレビューおよびメタアナリシスでも、3 か月以内の短期間の併用が脳出血や大出血を増加させることなく再発予防に有効であった追1)。現在進行中のPlatelet-Oriented Inhibition in New TIA and minor ischemic stroke

(POINT)8)の結果が加わることで脳梗塞急性期における抗血小板薬 2 剤併用の臨床的意義が更に明確になるであろう。なお、クロピドグレルの初回300mg投与は、保険適用外である。

2014年に更新された急性期脳梗塞に対するglycoprotein Ⅱb-Ⅲaの効果と安全性を評価した介入試験のシステマティックレビューでは、発症 6 時間以内の脳梗塞に対してabciximaやtirofibanの静脈内投与は長期転帰や予後を改善させず、abciximabは症候性頭蓋内出血を増やした追2)。

わが国では、シロスタゾール200mg/日のアスピリンなどの通常治療への追加が発症早期の非心原性脳梗塞患者の神経症候増悪を抑制し転帰を改善する可能性が示されている9、10)(レベル2)。オザグレルナトリウムを含めた抗血小板薬 2 剤投与に関する有効性や安全性は確かめられていない。アルガトロバンやヘパリンなどの注射抗凝固薬と抗血小板薬 2 剤服用の併用に関する有効性や安全

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65脳卒中治療ガイドライン 2015[追補 2017]

脳梗塞・TIA

〔 24 〕

Trial):a randomized double- blind non-inferiority trial. Cerebrovasc Dis 2011;32:65-71.

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12)Bath PM. Prostacyclin and analogues for acute ischaemic stroke. Cochrane Database Syst Rev 2004;(3):CD000177.

性も確かめられていない。オザグレルナトリウム160mg/日の点滴は、発症 5 日以

内の脳血栓症患者の転帰改善に有効である11)(レベル2)。プロスタサイクリン(保険適用外)は、脳梗塞急性期の治療法としての有効性が十分に検討されていない12)(レベル1)。

注: 1 人の患者に治療効果を認めるために、その治療を何人の患者に、どの位の期間、行う必要があるかを表した治療効果の指標。

[引用文献]

1)Chen ZM, Sandercock P, Pan HC, Counsell C, Collins R, Liu LS, et al. Indications for early aspirin use in acute ischemic stroke:A combined analysis of 40000 randomized patients from the chinese acute stroke trial and the international stroke trial. On behalf of the CAST and IST collaborative groups. Stroke 2000;31:1240-1249.

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69脳卒中治療ガイドライン 2015[追補 2017]

Ⅱ  脳梗塞 ・ TIA

推 奨

脳梗塞・TIA

〔 25 〕

1-8 脳動脈:血管内再開通療法 (機械的血栓回収療法、局所線溶療法、その他)

脳梗塞急性期1

1.前方循環系の主幹脳動脈(内頚動脈または中大脳動脈M1部)閉塞と診断され、画像診断などに基づく治療適応判定がなされた急性期脳梗塞に対し、遺伝子組み換え組織プラスミノゲン・アクティベータ(rt-PA、アルテプラーゼ)静注療法を含む内科治療に追加して、発症6時間以内に主にステントリトリーバーを用いた血管内治療(機械的血栓回収療法)を開始することが強く勧められる(グレードA)。わが国では、脳血栓回収用機器(Merci、Penumbra、Solitaire、Trevo、Revive)による血管内治療が保険適用されおり、「経皮経管的脳血栓回収用機器 適正使用指針 第2版」に従って、定められた実施医療機関において、適切な症例選択と手技によって行わねばならない。

2.発症後6時間以内であっても、治療開始および再開通までの時間が早いほど良好な転帰が期待できる。このため、患者が来院した後、少しでも早く血管内治療(機械的血栓回収療法)を行うことが勧められる(グレードA)。

3.神経脱落症候を有する中大脳動脈塞栓性閉塞においては、来院時の症候が中等症以下で、CT上梗塞巣を認めないか軽微な梗塞にとどまり、発症から6時間以内に治療開始が可能な症例に対しては、経動脈的な選択的局所血栓溶解療法が勧められる(グレードB)。ただし、発症後4.5時間以内に薬剤投与が可能な患者に対しては、アルテプラーゼ静注療法が第一選択となっていることに留意する。

4.アルテプラーゼ静注療法が無効または非適応の場合、原則として発症から8時間以内の主幹脳動脈閉塞による急性脳梗塞に対し、画像診断などに基づいた適切な症例選択の上で、脳血栓回収用機器による血管内治療(機械的血栓回収療法)を行うことを考慮しても良い(グレードC1)。

◉エビデンス1.血管内治療(機械的血栓回収療法)

まずMerciリトリーバーを用いて発症8時間以内に治療を開始した経皮経管的脳血栓回収療法の治療成績が報告され、再開通が得られた場合の転帰は、得られなかった場合より有意に良好であった1)。Penumbraシステムは、発症8時間以内に治療を開始し再開通を獲得した症例の転帰が非再開通例に比べ良好な傾向がみられた2)。ステント型脳血栓回収機器(ステントリトリーバー)は発症 8時間以内にSolitaire 、Trevoを用いた治療成績が報告され、いずれもMerciリトリーバーとの比較が行われ、再開通率および臨床転帰においてステントリトリーバーの有効性が示された3、4)(レベル2)。

次に、rt-PA静注療法単独群と脳血栓回収療法を含む血管内治療追加群との比較研究5)、rt-PA静注を含む標準治療と本療法との比較研究6)、rt-PA静注療法と本療法の

比較研究7)が行われたが、本療法の有効性は示されなかった(レベル2)。

2014年から2015年にかけて報告された 5 つのランダム化比較試験(Multicenter Randomized Clinical Trial of Endovascular Treatment for Acute Ischemic Stroke in the Netherlands:MR CLEAN追1)、Endovascular Treatment for Small Core and Anterior Circulation Proximal Occlu-sion with Emphasis on Minimizing CT to Recanalization Times:ESCAPE追2)、Extending the time for Thromboly-sis in Emergency Neurological Deficits-Intra-Arterial:EXTEND-IA追3)、Solitaire with the Intention for Thrombectomy as Primary Endovascular Treatment:SWIFT PRIME追4)、Randomized Trial of Revasculariza-tion with Solitaire FR Device versus Best Medical Ther-apy in the Treatment of Acute Stroke Due to Anterior Circulation Large Vessel Occlusion Presenting within

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〔 26 〕70-1

得の調整オッズ比は3.68(95%信頼区間1.95~6.92)であり、80歳未満2.44(95%信頼区間1.70~3.50)と同様に血管内治療の効果が期待できる追9)。[NIHSS] NIHSSスコアの登録基準は研究により異

なるが、下限は 0 ~ 8 点に設定され、上限は 1 研究で29点と設定されていたのみで、他は制限を設けていなかった。5 研究の統合解析における層別解析では、NIHSSスコア10点以下の177症例における治療効果は示されなかったものの、11~15、16~20、21点以上ではいずれも血管内治療の有効性が示された追9)。軽症例に対する本治療の実施については、症例ごとに適応を検討する必要がある。

このように、これらの結果は前方循環の主幹脳動脈(内頚動脈または中大脳動脈M1部)閉塞と診断され、画像診断などに基づく治療適応判定がなされた症例を対象とし、主にステントリトリーバーを用いた血管内治療を迅速に行うことで達成されたものである。後方循環系の主幹脳動脈閉塞や、吸引のみの再開通療法、発症 6 ~12時間以降あるいは発症時間不明の脳梗塞などに関しては、未だ血管内治療の有効性を確立するまでの知見が集積されていないことに十分留意すべきである。本療法の実施者は、「経皮経管的脳血栓回収用機器 適正使用指針 第 2版(2015年 4 月)」の内容を十分に理解した上で、適切な症例選択と手技によって行わねばならない追11)(レベル1)。2.経動脈的局所血栓溶解療法

遺伝子組み換えprourokinase(r-proUK)を用いた経動脈的局所血栓溶解療法は、来院時のNIHSSスコアが 4 ~29で、CT上梗塞巣がなく、発症 6 時間以内に治療開始可能な中大脳動脈塞栓性閉塞において有効であると報告された8、9)(レベル2)。さらにわが国で行われたウロキナーゼを用いた経動脈的局所血栓溶解療法の研究でも、脳梗塞の画像診断の標準化や局所血栓溶解療法の治療手技の標準化がなされたが、来院時のNIHSSスコアが 4 ~22と中等症以下、CT上梗塞巣がないまたは軽微な所見に留まり、発症 6 時間以内に治療開始可能な中大脳動脈塞栓性閉塞において社会復帰率10)に優れると報告された(レベル2)。これらの 3 つの研究の統合解析結果も示され、一定条件を満たした中大脳動脈塞栓性閉塞例に対する急性期経動脈的局所血栓溶解療法は、3 か月後転帰は良好、死亡は対照群と同等との結果であったが、24時間以内の症候性頭蓋内出血は治療群に多く見られた11)(レベル1)。ただし、これらの治療法はアルテプラーゼ静注療法との併用は行えず、かつ発症後4.5時間以内に薬剤投与が可能な患者に対しては、アルテプラーゼ静注療法が第一選択となっていることに留意する。また、機械的血栓回収療

Eight Hours of Symptom Onset:REVASCAT追5))およびこれらのランダム化比較試験の統合解析追6-追9)により、主に発症 6 時間以内の主幹脳動脈閉塞による急性期脳梗塞に対し、アルテプラーゼ静注療法を含む内科治療に本療法を追加することが、患者転帰を改善するという科学的根拠が示された(レベル1)。この 5 研究の登録患者1,278例の背景と、統合解析およびその層別解析の結果を以下に示す。[アルテプラーゼ静注療法] いずれの研究も、アルテ

プラーゼ静注療法の適応症例にはまず静注を開始した上で直ちに治療室へ移動し、血管内治療を実施した。5 研究の登録症例のうち85.3%にアルテプラーゼ静注療法が実施されていた追9)。アルテプラーゼ静注療法適応症例に対し、それを投与せず血管内治療を行うことの有効性を検証した報告はない。そのため、適応症例にはまずアルテプラーゼ静注療法を開始してから血管内治療に移行するべきである。一方、アルテプラーゼ静注療法の非適応例においては、内科治療に加えて血管内治療を行うことが、患者転帰を改善することが示されている追9)(レベル2)。[閉塞部位診断] 5 研究いずれもCTA(一部MRA)で

前方循環の主幹脳動脈閉塞が確認された症例のみを対象としており、登録症例のうち90.8%が内頚動脈または中大脳動脈M1部の閉塞で、M2閉塞7.4%、前大脳動脈閉塞1.8%であった追9)。内頚動脈および中大脳動脈M1閉塞以外の血管閉塞に対する本治療の有効性は十分には示されていないため、症例ごとに適応を検討する必要がある。[CT虚血所見] 5 研究のうち 2 研究では、単純CTで

の早期虚血変化の有無を組み入れ基準に含まなかった。全登録症例の90.5%はAlberta Stroke Program Early CT Score(ASPECTS)6 点以上で、5 点以下の層別解析では転帰改善効果はみられなかった追9)。ASPECTSが 5 点以下の本治療の有効性は十分には示されていないため、症例ごとに適応を検討する必要がある。[時間] 5 研究のうち 3 研究で発症から治療開始まで

の時間が 6 時間以内、REVASCAT追5)では 8 時間以内、ESCAPE追2)では12時間以内の症例を対象とし、血管内治療に割り付けられた634例の発症から再開通獲得までの時間は、中央値 4 時間46分であった。再開通までの時間が早いほど転帰良好( 3 か月後 modified Rankin Scaleスコア 0 ~ 2 )を獲得する可能性が高く、1 時間の遅延によりその可能性が5.2%減少した追10)(レベル1)。アルテプラーゼ静注療法と同様、少しでも早く治療を開始することが勧められる。[年齢] 80歳以上の転帰は80歳未満に比べて不良で

はあるが、80歳以上の血管内治療群における転帰良好獲

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〔 27 〕70-2

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法とは異なり症候性頭蓋内出血の発症率が高いことも留意する必要がある。その他の部位(内頚動脈、椎骨脳底動脈)、条件における、多くの局所急性血栓溶解療法の報告は症例集積研究のエビデンスレベルにとどまっており12)、勧告を行うための十分な資料がない(レベル4)。3.経皮的血管形成術/ステント留置術

急性期の経皮的血管形成術/ステント留置術についての報告は、患者対照研究、症例集積研究のエビデンスレベルにとどまっており13、14)、勧告を行うための十分な資料がない(レベル4)。

[引用文献]

  1)Flint AC, Duckwiler GR, Budzik RF, Liebeskind DS, Smith WS. Mechanical thrombectomy of intracranial internal carotid occlusion:pooled results of the MERCI and Multi MERCI Part I trials. Stroke 2007;38:1274-1280.

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72

Ⅱ  脳梗塞 ・ TIA

推 奨

〔 28 〕

1-10 脳保護療法

脳梗塞急性期1

脳保護作用が期待されるエダラボンは脳梗塞(血栓症・塞栓症)患者の治療法として勧められる(グレードB)。

◉エビデンス脳保護作用が期待される薬剤について、脳梗塞急性期

の治療として用いることを正当化するに足る臨床的根拠は、現在のところエダラボンに関する報告1-4)のみである。

エダラボン(抗酸化薬)の静脈内投与は、国内第Ⅲ相試験において、脳梗塞急性期(発症72時間以内)患者の転帰改善に有効性が示され、層別解析でより有効性が高かった発症24時間以内の脳梗塞患者の治療法として、本邦での使用が認可された1)(レベル2)。欧州でも既に第Ⅱ相試験までが施行されている5)。本邦での市販後調査にて、感染症の合併、高度な意識障害(Japan Coma Scale 100以上)の存在、脱水状態では、致命的な転帰を辿ったり、腎機能障害や肝機能障害・血液障害など複数の臓器障害が同時に発現したりする症例が報告されており、投与中の腎機能、肝機能、血液検査の頻回な実施が必要とされている。

遺伝子組み換え組織プラスミノゲン・アクティベータ(rt-PA)静注による血栓溶解療法にエダラボンを併用した場合、早期血流再開通が得られやすい6、7)(レベル4)とする報告もあるが、さらなる臨床研究での検討が必要である。

以下にこれまでに検討がなされた、あるいは検討中の代表的な薬剤(すべて本邦未承認)を記載する。

抗酸化薬では、NXY-059が第Ⅲ相国際多施設共同試験で有効性が報告され期待されたが8)、症例数を増やして実施された再試験で有効性が確認されず9、10)、開発中止となった(レベル1)。Tirilazadは、脳梗塞急性期患者の転帰を悪化させた11)(レベル1)。Nicaravenは、脳梗塞急性期の治療薬としての有効性が十分に証明されず、申請が取り下げられた12、13)(レベル2)。Ebselenは、発症48時間以内の症例で施行された第Ⅲ相試験で、発症24時間以内の症例での副解析でのみ有用である可能性が示されたため14)、24時間以内の症例を対象に再度第Ⅲ相試験が施行されたが、有用性は示されなかった。

カルシウム拮抗薬(主としてnimodipineによる検討)15)、monosialoganglioside GM116)、piracetam17)は、脳梗塞急性期の治療薬としての有効性が証明されていない(レベル2)。

Selfotelやgavestinelを含むグルタミン酸受容体拮抗薬は、脳梗塞急性期の治療薬としての有効性が証明されていない18)(selfotelでは死亡の増加)(レベル2)。マグネシウムは、発症から12時間以内の脳梗塞患者では有効性が示されず19)(レベル2)、発症から 2 時間以内の患者を対象に第Ⅲ相試験が進行中である20)。その他、GABA作動薬であるclomethiozoleやdiazepam21)、ナトリウムチャネル拮抗薬であるlubeluzole22)(レベル2)、オピオイド拮抗薬であるnalmefene23)(レベル2)、血管拡張作用のあるメチルキサンチン誘導体pentoxifylline24)(レベル2)は、すべて脳梗塞急性期の治療薬としての有効性が証明されていない。細胞膜保護薬であるシチコリンは無効とする報告が多いが25)、pooled analysisでは有効である傾向が見られたことから26)、第Ⅲ相試験まで行われたが有効性は見出せなかった。アルブミンは多様な機序で急性期脳梗塞の脳保護効果があるとされ27、28)、第Ⅲ相試験まで行われたが有効性は証明されなかった29)(レベル2)。アストロサイトの活性を抑制するarundic acid(ONO-2506)も第Ⅲ相試験が行われたが有効性は示されなかった。神経保護効果が期待された遺伝子組み換え型ヒトエリスロポエチンでも第Ⅲ相試験が行われた結果、rt-PA非併用群での副解析でのみ有効性がある可能性が示されたが、rt-PA併用群では死亡率が増加するなど安全性の問題が指摘されている30)(レベル2)。

[引用文献]

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73脳卒中治療ガイドライン 2015[追補 2017]

脳梗塞・TIA

〔 29 〕

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74

Ⅱ  脳梗塞 ・ TIA

推 奨

〔 30 〕

1-11 血液希釈療法

脳梗塞急性期1

1.血漿増量薬を用いた血液希釈療法は、脳梗塞急性期の治療として行うことを考慮しても良い(グレードC1)。

2.体外循環を用いた血液希釈療法は、脳梗塞急性期の治療として行うことを考慮しても良い(グレードC1)。

◉エビデンス血漿増量薬[デキストラン40、ヒドロキシエチルデン

プン200/0.5・250/0.5(本邦未承認)、ヒドロキシエチルデンプン130/0.4、アルブミン(保険適用外)]、ならびに瀉血を用いた血液希釈療法の有効性を検討したrandomized controlled trial(RCT)がこれまでに行われているが、脳梗塞急性期の治療法としての有効性が証明されていない1-3)(レベル1)。2014年のシステマティックレビューでは4,174例を含む21の無作為割付試験の結果がまとめられ、血液希釈療法は発症 4 週間以内死亡(相対リスク1.10;95%信頼区間0.90 to 1.34)、発症後 3 ~ 6 か月以内死亡(相対リスク1.05、95%信頼区間0.93~1.20)、死亡もしくは要介護や施設入所(相対リスク0.96、95%信頼区間0.85~1.07)を減少させなかった追1)。体外循環(heparin-induced extracorporeal LDL precipitation、rheopheresis)を用いた血液希釈療法は、脳梗塞急性期の治療法としての有効性が、十分に検討されていない4、5)(レベル2)。

[引用文献]

1)Asplund K. Haemodilution for acute ischaemic stroke. Cochrane Database Syst Rev 2002;(4):CD000103.

2)Aichner FT, Fazekas F, Brainin M, Polz W, Mamoli B, Zeiler K. Hypervolemic hemodilution in acute ischemic stroke:the Multicenter Austrian Hemodilution Stroke Trial(MAHST). Stroke 1998;29:743-749.

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追1)Chang TS, Jensen MB. Haemodilution for acute ischaemic stroke. Cochrane Database Syst Rev 2014:CD000103.

4)Berrouschot J, Barthel H, Koster J, Hesse S, Rossler A, Knapp WH, et al. Extracorporeal rheopheresis in the treatment of acute ischemic stroke:A randomized pilot study. Stroke 1999;30:787-792.

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77脳卒中治療ガイドライン 2015[追補 2017]

Ⅱ  脳梗塞 ・ TIA

推 奨

脳梗塞・TIA

〔 31 〕

1-14 低体温療法

脳梗塞急性期1

1.低体温療法は、脳梗塞急性期の治療法として行うことを考慮しても良い(グレードC1)。

2.解熱薬を用いた平温療法は、脳梗塞急性期の治療法として行うことを考慮しても良い(グレードC1)。

◉エビデンス低体温療法は、脳梗塞急性期の治療法として、有効性

の検討が十分になされていない追1、1-5)(レベル2)。発症 6時間以内の急性期脳梗塞患者に対する遺伝子組み換え組織プラスミノゲン・アクティベータ(rt-PA)静注による血栓溶解療法に併用した場合も、有効性は示されていない6)

(レベル3)。解熱薬を用いた平温療法は、脳梗塞急性期の治療法として、有効性の検討が十分になされていない7)

(レベル2)。

[引用文献]

追1)Wan YH, Nie C, Wang HL, Huang CY. Therapeutic hypother-mia(different depths, durations, and rewarming speeds)for acute ischemic stroke:a meta-analysis. J Stroke Cerebrovasc Dis 2014;23:2736-2747.

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2)Krieger DW, De Georgia MA, Abou-Chebl A, Andrefsky JC,

Sila CA, Katzan IL, et al. Cooling for acute ischemic brain damage(cool aid):an open pilot study of induced hypothermia in acute ischemic stroke. Stroke 2001;32:1847-1854.

3)Schwab S, Schwarz S, Spranger M, Keller E, Bertram M, Hacke W. Moderate hypothermia in the treatment of patients with severe middle cerebral artery infarction. Stroke 1998;29:2461-2466.

4)Kammersgaard LP, Rasmussen BH, Jorgensen HS, Reith J, Weber U, Olsen TS. Feasibility and safety of inducing modest hypothermia in awake patients with acute stroke through sur-face cooling:A case-control study:the Copenhagen Stroke Study. Stroke 2000;31:2251-2256.

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78

Ⅱ  脳梗塞 ・ TIA

推 奨

〔 32 〕

1-15 高圧酸素療法

脳梗塞急性期1

脳梗塞急性期患者に対する高圧酸素療法の効果には、十分な科学的根拠はない(グレードC1)。

◉エビデンス脳梗塞急性期患者に対して高圧酸素療法の有効性を検

討したrandomized controlled trial(RCT)は少なく、本療法に関しては十分な検討がなされていない1、2、追1)(レベル2)。

[引用文献]

1)Anderson DC, Bottini AG, Jagiella WM, Westphal B, Ford S, Rockswold GL, et al. A pilot study of hyperbaric oxygen in the treatment of human stroke. Stroke 1991;22:1137-1142.

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81脳卒中治療ガイドライン 2015[追補 2017]

Ⅱ  脳梗塞 ・ TIA

推 奨

脳梗塞・TIA

〔 33 〕

TIAの急性期治療と再発予防

TIAの急性期治療と再発予防2

1.一過性脳虚血発作(TIA)と診断すれば、可及的速やかに発症機序を評価し、脳梗塞発症予防のための治療を直ちに開始するよう強く勧められる(グレードA)。TIA後の脳梗塞発症の危険度予測と治療方針の決定には、ABCD2スコアをはじめとした予測スコアの使用が勧められる(グレードB)。脳画像上の多発性虚血病変、主幹脳動脈病変合併例、ABCD2スコア6~7点は1年以内の脳卒中再発リスクが高い(グレードB)。

2.TIAの急性期(発症48時間以内)の再発防止には、アスピリン160~300mg/日の投与が強く勧められる(グレードA)。急性期に限定した抗血小板薬2剤併用療法(アスピリン+クロピドグレル)も勧められる(グレードB)。

3.急性期以後のTIAに対する治療は、脳梗塞の再発予防に準じて行う。

◉エビデンスTIA発症後90日以内の脳梗塞発症例のうち約半数は、

TIA発症後48時間以内に発症した1、2)。また、TIA発症後30日以内での検討では、脳梗塞を発症した症例は約半数が24時間以内に発症していた3)。メタアナリシスによると、TIA発症後90日以内に脳卒中を発症する危険度は15~20%であった4)。TIA発症平均 1 日後に治療を受けた場合、90日以内の大きな脳卒中発症率が2.1%となり、平均20日後に治療を受けた場合に比べて90日以内の大きな脳卒中発症率が80%軽減され、入院期間の短縮や入院経費、さらに 6 か月後の後遺症が軽減した(The Early use of existing PREventive Strategies for Stroke study:EXPRESS)5、6)。また 1 日24時間対応型TIA専門病院において、発症24時間以内にTIAあるいは軽症脳卒中と診断され直ちに治療が開始された場合、90日以内の大きな脳卒中発症率が1.24%となり、治療しなかった場合の予測値に比べて79.2%軽減した7)。

TIA後の脳梗塞発症の危険度予測には、ABCDスコア8)、ABCD2スコア(ABCDスコアに糖尿病を追加)9)(レベル3)、ABCD3スコア(ABCD2に、1 週間以内の複数回のTIA発作を追加)10、11)(レベル3)、ABCD3-Iスコア(ABCD3に、50%以上の頚動脈狭窄および拡散強調画像(DWI)での新鮮病変を追加)10、12)(レベル3)らが有用であり、ABCD3スコア、頭蓋内狭窄病変を含むABCD3-Iスコアがより長期の危険度まで予測しうるとのわが国の報告もある13)(レベル3)(表)。脳梗塞発症予防には、TIAの発症機序を明

らかにする必要があり、塞栓源となる心疾患の検索(長時間モニター心電図、経胸壁心エコー図検査、経食道心エコー図検査)や頚動脈エコー図検査、経頭蓋超音波ドップラー法(transcranial doppler:TCD)による微小塞栓信号(microembolic signal:MES)の検出などが重要である14-17)

(レベル3)。America Heart Association(AHA)の声明書では、発症後24時間以内に頭部MRI拡散強調画像(DWI)をはじめ、頚動脈を含めた脳血管の評価を行うことが推奨されている。また、ABCD2スコアを取り上げ、3 点以上かつ発症72時間以内のTIAは緊急入院が妥当とされている18)(レベル4)。一方で、ABCD2スコアが低値(スコアが 4 点未満)の症例であっても、DWI病変陽性症例、心房細動合併症例、頚動脈および頭蓋内動脈の50%以上狭窄病変合併症例では、90日後の脳卒中再発のリスクは、ABCD2スコア高値(スコアが 4 点以上)の症例と変わらないとの報告もある19-21)(レベル3)。2016年に発表された21か国、4,789例のTIAまたは軽症脳卒中を対象とした大規模臨床試験より、1 年以内の脳卒中を含めた心血管疾患発症または心血管疾患での死亡率は6.2%であり、脳画像上の多発性虚血病変、主幹脳動脈病変合併例、ABCD2スコア 6 ~ 7 点が 1 年以内の脳卒中再発高リスクと関連した追1)(レベル2)。本邦で行われた57施設の1,365例のTIAを対象とした多施設研究では、1 年以内の脳卒中再発率は 8 %であり、ABCD2スコア高値例での再発リスクが高く、再発病型は小血管病が最も多かった追2)

(レベル2)。

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82 〔 34 〕

ル2)。脳梗塞またはTIA発症後24時間以内のアスピリンとジピリダモール早期併用療法は、7 日目以降の後期併用療法と比較した場合、同様に有効かつ安全であった

(EARLY)26)(レベル2)。発症72時間以内の非心原性脳梗塞またはTIA患者3,766症例を対象としたrandomized controlled trial(RCT)12試験のメタアナリシスによると、抗血小板薬 2 剤併用療法(アスピリン+ジピリダモール、アスピリン+クロピドグレル)は、単剤療法(アスピリン、クロピドグレル、ジピリダモール)に比して、脳卒中の再発リスクを有意に抑制した( 2 剤併用療法(3.3%)vs.単剤療法(5.0%)、相対リスク0.67、95%信頼区間0.49~0.93)27)

(レベル1)。また、RCT 14試験のメタアナリシス(9,012症例)においても、2 剤併用療法が急性期の再発予防に有効であり(相対リスク0.69、95%信頼区間0.60~0.80)、大出血は増加しない(相対リスク1.35、95%信頼区間0.70~2.59)結果であった28)(レベル1)。

急性期以後の治療は、脳梗塞の再発予防に準じて行う。慢性期再発防止にはアスピリン75~150mg/日23)あるいは75~325mg/日29)が有効であった(レベル1)。TIA後の脳梗塞発症予防に関しては、アスピリンよりもチクロピジンがやや優っている30、31)(レベル1)。但し、チクロピジンはクロピドグレルと同等の脳梗塞発症予防効果があったが安全性では劣っていた32、33)(レベル1)。シロスタゾールは、プラセボに比較し脳梗塞再発を41.7%抑制した(Cilostazol Stroke Prevention Study:CSPS)34)(レベル2)。発症 3 か月以内の脳梗塞またはTIA症例における、クロピドグレル単独とクロピドグレルとアスピリン併用療法との比較試験では、両群間で脳梗塞再発に有意

TIAは、急性期脳梗塞と同様に緊急で対応する急性脳血管症候群(acute cerebrovascular syndrome:ACVS)としてとらえられるべきであり、本邦のTIA研究班では、発症48時間以内、ABCD2スコア 4 点以上、短期間に繰り返すTIAを基準に、迅速な病態評価で検出されたMRI拡散強調画像病変、有意な頚動脈・頭蓋内血管病変、心房細動の合併例は、緊急入院の検討を行うべきとされている22)

(レベル5)。脳梗塞もしくはTIAの急性期再発防止には、アスピリ

ン160~300mg/日が有効であった23)(レベル1)。主幹動脈病変を伴う急性期脳梗塞またはTIA症例に対し、アスピリンとクロピドグレルの併用群は、アスピリン単独群に比して、MES出現頻度が明らかに低下した(Clopidogrel plus aspirin versus aspirin alone for reducing embolisation in patients with acute symptomatic cerebral or carotid artery stenosis:CLAIR)24)(レベル2)。発症24時間以内でありNIHSSスコアが 3 点以下の軽症脳梗塞か、ABCD2

スコアが 4 点以上のハイリスクTIA症例において、急性期21日間にアスピリンとクロピドグレルを併用した群2,584症例と、アスピリン単独群2,586症例の検討では、90日間の脳卒中発症は、併用群で8.2%、単独群で11.7%、ハザード比で0.68(0.57~0.81)と有意に併用群で少なかった。虚血性脳卒中発症は、併用群で7.9%、単独群で11.4%、ハザード比0.67(0.56~0.81)であった。また、出血性脳卒中は、併用群で0.3%、単独群で0.3%、ハザード比1.01(0.38~2.70)であり、両群間で有意差を認めなかった(Clopidogrel in High-Risk Patients with Acute Nondisabling Cerebrovascular Events:CHANCE)25)(レベ

表 ABCD2、ABCD3、ABCD3-I スコアによる脳梗塞リスクの評価

ABCD2 ABCD3 ABCD3-I

年齢(Age) 60 歳以上= 1点 ○ ○ ○

血圧(Blood pressure)

収縮期血圧 140mmHg 以上または拡張期血圧 90mmHg 以上= 1点 ○ ○ ○

臨床症状(Clinical features)

片側の運動麻痺= 2点麻痺を伴わない言語障害= 1点 ○ ○ ○

持続時間(Duration) 60 分以上= 2点10~59分= 1点 ○ ○ ○

糖尿病(Diabetes) 糖尿病= 1点 ○ ○ ○

再発性 TIA(Dual TIA) 7 日以内の TIA 既往= 2点 ○ ○

画像所見(Imaging)同側内頚動脈の 50%以上狭窄= 2点 ○

DWI での急性期病変= 2点 ○

合計スコア 7 9 13

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83脳卒中治療ガイドライン 2015[追補 2017]

脳梗塞・TIA

〔 35 〕

Effectively Avoiding Second Strokes:PRoFESS)41)(レベル2)。さらに、PRoFESS試験対象者のうち、発症後72時間以内にランダム化された1,366症例を対象とし、急性の軽症虚血性脳卒中患者の機能転帰、再発、死亡について検討を行ったが、両群間に有意差は認められなかった42)

(レベル2)。TIA発症後急性期の血圧管理、降圧療法についてのエ

ビデンスはない。 AHA/American Stroke Association(ASA)の声明書では、発症後24時間を経て降圧療法を検討してもよいとの記述はあるが、目標血圧は明確でなく、個々の症例での対応が求められる43)。 慢性期降圧療法に関しては、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬と偽薬群との二重盲検比較試験の結果、高血圧の有無にかかわりなく、実薬群で脳卒中再発が有意に低かった

(Perindopril Protection against Recurrent Stroke Study:PROGRESS)44)(レベル2)。アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)とカルシウム拮抗薬のランダム化試験において、ARB投与群ではカルシウム拮抗薬投与群と比較し、複合エンドポイント(脳卒中、心筋梗塞、その他の死亡)が有意に減少した(Morbidity and Mortality after Stroke, Eprosartan Compared with Nitrendipine for Secondary Prevention:MOSES)45)(レベル2)。脳卒中を含むハイリスク患者を対象に、脳卒中を含む血管事故による死亡および心不全による入院を検討した研究では、ACE阻害薬に対するARBの非劣性が示された(Ongoing telmisartan alone and in combination with ramipril global endpoint trial:ONTARGET)46)(レベル2)。しかしながら、ARB群とプラセボ群による平均観察期間2.5年の研究(PRoFESS)では、ARB投与群における有意な脳卒中再発抑制を認めなかった47)(レベル2)。TIA既往の患者において、医療機関受診時の収縮期血圧の変動幅が、脳卒中発症の危険因子であるとの報告があり、変動幅最大群は、最小群の約10倍の危険度であった48)(レベル3)。

スタチン療法に関しては、過去 6 か月以内に脳卒中もしくはTIAを発症した、冠動脈疾患歴のない患者を対象として、極めて高用量(80mg/日)のアトルバスタチン群とプラセボ群とを比較した結果、アトルバスタチンは脳卒中再発リスクを有意に抑制した(The Stroke Prevention by Aggressive Reduction in Cholesterol Levels:SPARCL)49)

(レベル2)。同研究のサブ解析において、頚動脈狭窄患者に対して、スタチン治療群は偽薬群に比べて、脳卒中再発を33%減少させた50)(レベル2)。スタチン投与と脳卒中発症予防に関するメタアナリシスでは、スタチン治療による脳卒中二次予防効果は、リスク比0.88(95%信頼区間0.78~0.99)であった51)(レベル2)。スタチンによるLDLコレステロール低下と脳心血管予防効果について、

差はなく、併用療法群では重篤な出血性合併症発症のリスクが有意に高かった(Management of Atherothrombosis with Clopidogrel in High-Risk Patients:MATCH)35)(レベル2)。本邦で行われた脳および心血管疾患例に対する抗血栓療法に関する大規模観察研究においても、抗血栓薬の 2 剤併用は出血性合併症の発症が多いことが明らかにされた36)(レベル3)。TIAを含む脳梗塞ハイリスク患者を対象とした試験では、低用量アスピリン群と、低用量アスピリンとクロピドグレルの併用群において、心血管疾患発症率に有意差を認めなかった(Clopidogrel for High Atherothrombotic Risk and Ischemic Stabilization, Management, and Avoidance:CHARISMA)37)(レベル2)。非心原性脳梗塞またはTIA症例に対して、発症 3 か月以内のアスピリンとクロピドグレルの 2 剤併用療法と単剤療法(アスピリンまたはクロピドグレル)を比較したMATCHとCHARISMAを含む 8 つのランダム化比較試験(20,728例)のサブ解析の結果、単剤に比較して併用療法では、脳卒中再発率は有意に減少したが(相対リスク 0.69、95%信頼区間0.59~0.81)、出血性脳卒中(相対リスク 1.23、95%信頼区間0.50~3.04)や重篤な出血性合併症

(相対リスク2.17、95%信頼区間0.18~25.71)は増加しなかった追3)(レベル2)。発症 6 か月以内のTIAもしくは軽症脳梗塞を対象としたアスピリン単独と、アスピリンおよびジピリダモール併用とのランダム化比較試験において、併用群は一次エンドポイント(非致死性脳卒中・心筋梗塞血管死、重症出血性合併症)の発生率を有意に低減した(ハザード比0.80、95%信頼区間0.66~0.98)(European/Australasian Stroke Prevention in Reversible Ischaemia Trial:ESPRIT)38)(レベル2)。非心原性軽症脳梗塞およびTIA患者7,648症例のメタアナリシスにおいて、アスピリンとジピリダモール併用投与は、アスピリン単独投与に比し有効であった。 脳卒中再発リスクは徐放性ジピリダモールを主に投与した試験において顕著に有意であった(相対リスク0.77、95%信頼区間0.67~0.89)39)(レベル1)。 本邦においては、非心原性脳梗塞1,294症例で、ジピリダモールとアスピリンの合剤による、アスピリン単独に対する脳梗塞再発抑制の試験が行われたが、非劣性は認められなかった[Japanese Aggrenox(Extended-Release Dipyridamole plus Aspirin)Stroke Prevention versus Aspirin Programme:JASAP]40)(レベル2)。 アスピリンとジピリダモール併用群、クロピドグレル単独群に分け、さらに降圧薬テルミサルタン服用の有無を掛け合わせて脳卒中再発抑制効果を比べた結果、アスピリンとジピリダモール併用群のクロピドグレル単独群に対する非劣性は証明されず、テルミサルタン服用の有無でも脳卒中を含めた血管事故に差がなかった(Prevention Regimen for

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84 〔 36 〕

該当する場合は15mg)群は、ワルファリン群に対して非劣性を示し、大出血、致死的出血、頭蓋内出血は有意に少なかった65)(レベル3)。

ダビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバンに関す る 3 試 験(RE-LY、ROCKET AF、ARISTOTLE)14,527症例を対象とし、脳卒中やTIAの既往を有する症例をメタアナリシスした結果、ワルファリンと比較して非ビタミンK阻害経口抗凝固薬(Non-vitamin K antagonist oral anticoagulant:NOAC)は脳卒中と全身塞栓症、大出血、出血性脳卒中、および頭蓋内出血を有意に減少させた66)(レベル2)。

狭窄率70%以上の頚動脈狭窄病変を合併したTIA、軽症脳梗塞に対しては、内科的治療単独よりも内科的治療と頚動脈内膜剥離術(CEA)併用のほうが脳卒中再発防止効果に優れていた67-71)(レベル1、2)。狭窄率50~69%では、狭窄率70%以上に比べて内科的治療単独と、内科治療にCEA併用の再発防止効果の差が減じるため、年齢(<75歳)、性(男)、症候(半球症状)などを考慮に入れてCEA実施の可否を検討する67)(レベル2)72)(レベル3)。狭窄率50%未満の頚動脈狭窄病変を合併したTIA、軽症脳梗塞に対して、CEAを推奨する根拠は明らかでない67-71)(レベル1、2)。CEA適応例であっても、CEAの治療成績を不良にするハイリスク因子(心臓疾患、重篤な呼吸器疾患、対側頚動脈閉塞、対側喉頭神経麻痺、頚部直達手術または頚部放射線治療の既往、CEA再狭窄例)の合併例に対して、遠位塞栓症を予防する装置つきのカテーテルを使用した頚動脈ステント留置術(CAS)が、適切な術者により行われた場合、CEAに劣らない治療効果および安全性が認められた(Stenting and Angioplasty with Protection in Pat ien ts a t High Risk for Endarterec tomy:SAPPHIRE)73)(レベル2)。CEA適応の標準危険群(症候性および無症候性)に対しても、CEA群1,262例、CAS群1,240例で検討を行った結果、治療成績は同等であった

(Carotid Revascularization Endarterectomy vs. Stenting Trial:CREST)74)(レベル2)。発症30日以内の頭蓋内動脈狭窄(70~99%)による軽症脳梗塞もしくはTIA、451症例について、抗血小板薬 2 剤を含む最良の内科治療のみの群と、ステントを併用した群の比較が行われ、積極的内科治療群がステント治療群に比較して、脳卒中発症・死亡率が有意に低かった(内科治療5.8%、ステント治療14.7%、p=0.002)(Outcome of Patients in the SAMMPRIS Trial Who Had Failed Antithrombotic Therapy at Study Enrollment:SAMMPRIS)75)(レベル2)。SAMMPRIS試験の結果は、強化された抗血栓治療をはじめ、血圧管理、脂質管理を加えた積極的な内科加療の重要性を示した。Extracranial-intracranial(EC-IC)bypass術は、わが国で

21の大規模臨床試験のメタアナリシスでは、LDLコレステロールが1.0mmol/L(38.6mg/dL)低下すると、脳卒中の発症が16%低下するという結果であった52)(レベル2)。頚動脈狭窄のあるTIA発症患者387例の検討において、TIA発症前にスタチンを内服していた症例では、90日後の脳卒中発症の危険度が有意に低かった(オッズ比0.37、95%信頼区間0.17~0.82)53)(レベル3)。

非弁膜症性心房細動(NVAF)を合併した脳梗塞、TIA例に対する再発防止には、ワルファリンによる抗凝固療法[international normalized ratio(INR):2.0~3.0目標]が有効であり54-58)(レベル1)、アスピリンの再発防止効果は有意ではなかった55)(レベル1)。NVAF患者18,113症例において、ダビガトラン220mg/日の脳卒中および全身性塞栓症予防効果はワルファリンに対し非劣性を示し、大出血は少なかった。同300mg/日はワルファリンに比し、脳卒中および全身性塞栓症を有意に抑制し、大出血発生率は同等であった(Randomized Evaluation of Long-term Anticoagulant Therapy:RE-LY)59)( レ ベ ル3)。RE-LY試験対象患者のうち虚血性脳卒中またはTIA既往患者3,623症例を対象とした解析においても、ダビガトラン220mg/日、300mg/日の脳卒中または全身性塞栓症予防効果はワルファリンと同等であり、出血性合併症も増加させない結果であった60)(レベル3)。NVAFでCHADS2スコア 2 以上である14,264症例の検討で、脳卒中および非中枢神経系塞栓症予防に対して、リバーロキサバン20mg/日はワルファリンに対し非劣性を示した。重大な出血の発生率は同等であったが、頭蓋内出血および致死的出血はリバーロキサバン群で抑制された(Rivaroxaban Once Daily Oral Direct Factor Xa Inhibition Compared with Vitamin K Antagonism for Prevention of Stroke and Embolism Trial in Atrial Fibrillation:ROCKET AF)61)

(レベル3)。脳梗塞またはTIA既往症例について検討したサブ解析においても、リバーロキサバンはワルファリンに対して非劣性が証明された62)(レベル3)。脳卒中リスクを有する心房細動患者18,201症例で、アピキサバン10mg/日はワルファリンに対して、脳卒中および全身性塞栓症予防において優越性を示し、大出血および死亡は抑制した(Apixaban for Reduction in Stroke and Other Thromboembolic Events in Atrial Fibrillation:ARISTOTLE)63)(レベル3)。ARISTOTLE試験中、TIAまたは脳卒中既往3,436症例での検討においても、アピキサバン群はワルファリン群に比べて、脳卒中、出血性脳卒中、重篤な出血イベントが顕著に抑制された64)(レベル3)。CHADS2スコア 2 以上のNVAF患者21,105例の検討で、エドキサバン60mg/日(用量調整基準に該当する場合は30mg/日)群、エドキサバン30mg/日(用量調整基準に

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88

Ⅱ  脳梗塞 ・ TIA

推 奨

〔 40 〕

3-1 脳梗塞再発予防ほか(抗血小板療法、 無症候性脳梗塞は除く) (1)高血圧症

脳梗塞慢性期3

◉エビデンス高血圧は、脳梗塞の発症に対し最大の危険因子である

ことはよく知られている。欧米の研究では、収縮期血圧160mmHg以上が脳卒中の発症に最も関与している1)(レベル4)。本邦の研究では、収縮期血圧160mmHg以上の患者の脳梗塞の発症リスクは3.46倍、拡張期血圧 95mmHg以上では3.18倍であった2)(レベル4)。

脳卒中再発予防についても高血圧のコントロールは非常に重要である。脳卒中の再発予防に対する降圧療法の有効性に関しては、10試験のメタアナリシスでは降圧療法により脳卒中再発は29%減少したとしており3)、他の報告では約30%の相対危険度の減少がみられたとしている4)(レベル1)。アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬単独またはACE阻害薬と利尿薬併用群の効果を検討したPerindopril Protection against Recurrent Stroke Study

(PROGRESS試験)では、プラセボ群に比べて(他の降圧薬の併用は両群とも可)収縮期血圧で 9 mmHg、拡張期血圧は平均 4 mmHg低下し、脳卒中の再発が28%減少した5)

(レベル2)。他の報告でも利尿薬投与群では、収縮期血圧で 5 mmHg、拡張期血圧は 2 mmHg低下して脳卒中の再発が29%減少した6)(レベル2)。以上のように降圧治療は脳卒中再発を有意に抑制させる。それに対し、利尿薬、β遮断薬で再発予防効果に否定的な報告もある7、追1)(レベル2)。

脳梗塞慢性期における降圧目標値は多くのガイドラインで少なくとも140/90mmHg未満にすべきであるとされている(レベル5)。『日本高血圧学会ガイドライン(JSH 2014)』でも脳血管障害慢性期の降圧目標は、140/90 mmHg未満としており、両側頚動脈高度狭窄例や主幹動

脈閉塞例では下げすぎに留意する必要があるとしている。ラクナ梗塞や抗血栓薬内服例では忍容性があれば130/80mmHg未満を目指すという降圧目標が推奨されている8)。

JカーブまたはUカーブ現象、すなわち過度の降圧に伴い再発率が上昇するか否かは、報告により一定しておらず9)(レベル2)、再発予防に最適な降圧レベルは確定していない。一過性脳虚血発作(TIA)あるいは軽度の脳卒中において収縮期血圧130mmHgおよび拡張期血圧80mmHgまでは血圧が低いほど再発のリスクは低下し、Jカーブ現象はないとする報告がある10)(レベル4)。上述したPROGRESS試験のサブ解析でも明らかなJカーブ現象はみられなかった11)(レベル3)。ラクナ梗塞症例を対象にしたSecondary Prevention of Small Subcortical Stroke

(SPS3)試験では収縮期血圧130mmHg未満、130~149 mmHgにコントロールされた 2 群間で脳卒中再発率に差はなかった12)(レベル2)。一方、Jカーブ現象があるとする報告では、最も再発率が低い拡張期血圧はラクナ梗塞80~84mmHg、アテローム血栓性脳梗塞85~89 mmHgであったとしている(降圧薬の種類別の解析なし)13)(レベル4)。発症から120日以内の脳梗塞症例を120mmHg未満、120~130mmHg、130~140mmHg、140~150mmHg、150mmHg以上の 5 群に分け平均2.5年間降圧療法を行った試験では、130~140mmHgにコントロールした群と比較して120mmHg未満、140mmHg以上の群で脳卒中再発リスクが増加した14)(レベル2)。その他、非心原性脳梗塞症例を対象とし、120mmHg未満、120~140mmHg、140mm Hg以上の 3 群で再発率を比較した試験では、120~140 mmHg群の再発率が最も低かったとしている15)(レベル

1.脳梗塞の再発予防では、降圧療法が推奨される。目標とする血圧レベルは少なくとも140/90 mmHg未満とするよう強く勧められる(グレードA)。

2.両側内頚動脈狭窄、主幹動脈閉塞症例では降圧療法を考慮しても良いが過度の降圧に注意する(グレードC1)。

3.ラクナ梗塞、抗血栓薬内服中では、可能であればより低い血圧レベルが推奨され、血圧は130/80mmHg未満を目指すことを考慮しても良い(グレードC1)。

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89脳卒中治療ガイドライン 2015[追補 2017]

脳梗塞・TIA

〔 41 〕

央値56か月で、脳卒中を含む血管事故による死亡および心不全による入院を検討したOngoing Telmisartan Alone and in combination with Ramipril Global Endpoint Trial

(ONTARGET研究)21)では、ACE阻害薬に対するARBの非劣性が示され、さらに両者の併用によるデメリット(血管浮腫)はメリットを上回らなかったことが示された(レベル2)。一方、脳卒中患者20,322名による、脳卒中発症直後よりのARB(テルミサルタン)投与群とプラセボ投与群による平均観察期間2.5年のPrevention Regimen for Effectively Avoiding Second Stroke(PRoFESS)研究22)では、ARB投与群における有意な脳卒中再発抑制を認めなかった(レベル2)。したがって、脳卒中再発予防における特定のクラスの降圧薬の優位を示すエビデンスは十分ではない現状である。

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3)。ただし、これらの報告では必ずしも脳梗塞の病型を考慮しておらず、すべての病型において一律に適応できる結果ではない。特に、主幹動脈病変を有する症例では注意が必要とされる。両側内頚動脈に70%以上の高度狭窄を有する一過性脳虚血発作(TIA)または脳卒中症例では、収縮期血圧150mmHg未満の群で脳卒中再発リスクが有意に増加し、一側性の70%以上高度狭窄例では脳卒中再発リスクは増加しなかったという報告があり16)(レベル3)、また、頭蓋外内頚動脈閉塞、頭蓋内内頚動脈あるいは中大脳動脈閉塞、50%以上の狭窄を有するTIAまたは脳卒中症例で脳卒中再発を血圧とpositron emission tomography(PET)による灌流障害の有無によって比較した検討では、灌流障害を有する症例では収縮期血圧が低下するほど脳卒中再発が増加し、灌流障害がない症例では血圧高値と再発が関連するとしており、灌流障害の有無が血圧コントロールに重要であるとしている17)(レベル4)。一方、頭蓋内主幹動脈に50%以上の狭窄性病変があるTIAまたは脳梗塞例におけるワルファリンとアスピリ ン の 再 発 予 防 効 果 を 検 討 し たWarfarin Aspirin Symptomatic Intracranial Disease(WASID)研究のpost hoc解析では、狭窄性病変の灌流域の再発率は収縮期血圧、拡張期血圧ともに血圧の高い群において高率であった18)(レベル4)。この結果は、主幹動脈に狭窄性病変がある場合は降圧をすべきではないという従来の考え方に疑問を投げかける結果であるが、前述したように主幹動脈に閉塞や高度狭窄がある症例では、個々の病態に応じた降圧治療の検討が必要である。

脳梗塞再発予防の症例は抗血栓薬内服例がほとんどだが、Bleeding with Antithrombotic Therapy Study(BAT)研究では脳梗塞再発予防などの目的で抗血栓薬を内服している症例において脳血管障害既往例で特に脳出血発症が多く、抗血栓薬内服例では発症直近の血圧が低いほど脳出血発症率は低く、130/81mmHg未満に降圧することが妥当としている19)(レベル3)。

Morbidity and Mortality after Stroke, Eprosartan Compared with Nitrendipine for Secondary Prevention

(MOSES)研究20)は、発症 2 年以内の脳卒中既往のあるハイリスク患者1,405名をアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬〔ARB、eprosartan(本邦未承認)〕とカルシウム拮抗薬(ニトレンジピン)の 2 群に分けて平均2.5年間の観察期間で検討したrandomized controlled trial(RCT)であり、ARB投与群において複合エンドポイント(脳卒中、心筋梗塞、その他の死亡)の有意な抑制を示した(レベル2)。また、脳卒中を含むハイリスクの血管病患者25,620人におけるACE阻害薬(ラミプリル)投与群とARB(テルミサルタン)投与群、両者併用群において観察期間の中

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90 〔 42 〕

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101脳卒中治療ガイドライン 2015[追補 2017]

Ⅱ  脳梗塞 ・ TIA

推 奨

脳梗塞・TIA

〔 43 〕

3-2 再発予防のための抗血小板療法 (1)非心原性脳梗塞(アテローム血栓性

脳梗塞、ラクナ梗塞など)

脳梗塞慢性期3

1.非心原性脳梗塞の再発予防には、抗凝固薬よりも抗血小板薬の投与を行うよう強く勧められる(グレードA)。

2.現段階で非心原性脳梗塞の再発予防上、最も有効な抗血小板療法(本邦で使用可能なもの)はシロスタゾール200mg/日、クロピドグレル75mg/日、アスピリン75~150mg/日(以上、グレードA)、チクロピジン200mg/日(グレードB)である。

3.ラクナ梗塞の再発予防にも抗血小板薬の使用が勧められる(グレードB)。ただし十分な血圧のコントロールを行う必要がある。

4.アスピリン(50mg/日)とジピリダモール(400mg/日)の併用は、わが国では行わないよう勧められる(グレードD)。

5.1年間以上の抗血小板薬2剤の併用は、抗血小板薬単剤と比較して、有意な脳梗塞再発抑制効果は実証されておらず、むしろ出血性合併症を増加させるために、行わないよう勧められる(グレードD)。

6.抗血小板薬を使用中の頭蓋内出血を予防するために、収縮期血圧は130mmHg未満に管理することが根拠は不十分であるが、勧められる(グレードC1)。ただし、両側頚動脈高度狭窄例や主幹動脈閉塞例では降圧は慎重に行う。

7.出血時の対処が容易な処置・小手術(抜歯、白内障手術など)の施行時は、抗血小板薬の内服続行が勧められる。出血高危険度の消化管内視鏡治療の場合は、血栓塞栓症の発症リスクが高い症例では、アスピリンまたはシロスタゾールへの置換を考慮する(グレードC1)。

◉エビデンス1.抗血小板薬の有効性

抗血小板薬は脳梗塞の再発を有意に低減することが欧米人を中心とするデータベースにより示されている1、2)

(レベル1)。ただし、アスピリンおよびチクロピジンのnumber needed to treat(NNT:その治療をある期間続けることによって 1 人の患者が恩恵をこうむるために必要な投薬患者数)は約 3 年間の観察で26~28に過ぎない。一方、シロスタゾールは同じく 3 年の観察でNNTは18.73)と比較的低値であり、降圧薬とほぼ同程度のNNTであった。脳梗塞の再発予防には抗血小板薬の投与のみならず、高血圧症、脂質異常症や糖尿病など他の動脈硬化危険因子の治療と管理も併せて重要である4)(レベル2)。

2.アスピリン単独1998年のメタアナリシスでは、アスピリン(平均

273mg/日)により、脳梗塞再発の絶対リスクは 1 万人あたり39イベントまで低減し、再発は有意に減少した5)(レベル1)。同時に出血性脳卒中の絶対リスクは 1 万人あたり12イベントとなり有意に増加した。しかし、ほとんどの患者でアスピリンの有用性(再発予防効果)は、出血性脳卒中のリスクを上回るものと考えられた5)(レベル1)。米国では一次予防症例ではリスク/ベネフィットが同等、二次予防ではベネフィット>リスクと理解され、二次予防症例における使用が推奨されている5)。その際は、リスクについての十分なインフォームドコンセントのもとに適応が決定されることが望ましいとされた。

アスピリンの全脳卒中再発予防効果は50~1,500mg/日のいずれの用量であってもほぼ同等(15%リスク低減)

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102 〔 44 〕

は 7 倍有意に(p=0.038)高かった12)(レベル3)。さらに重要なことは、すべての頭蓋内出血の部位は、試験登録時に施行されたMRI T2*強調画像上で微小脳出血斑

(cerebral microbleeds)が認められた箇所であった12)。アジアの脳梗塞ないしTIA既往患者において、MRI T2*強調画像で微小出血斑が認められる場合は認められない場合に比し、脳出血のリスクが有意に高い(オッズ比 10.43、95%信頼区間 4.59~23.72、p<0.0001)ことがメタアナリシスの結果で明らかになっており、留意すべきである13)。

低用量アスピリン服用者における上部消化管合併症に関してわが国で施行された前向き登録研究(Management of Aspirin-induced Gastrointestinal Complications Study:MAGIC研究)14)によれば、アスピリン服用者(75~325 mg/日、年齢:平均68.1±9.5歳、服用期間:平均4.6±4.4年間)の29.2%に胃・十二指腸粘膜のびらん、6.5%に潰瘍病変があったことが明らかにされている。また、多変量解析の結果、低用量アスピリン服用者における消化管傷害の危険因子で統計的に有意であったのは、びらんについてはヘリコバクター・ピロリ感染であり、有意な抑制因子はプロトンポンプ阻害薬(PPI)とH2阻害薬の服用であった。一方、潰瘍について有意な危険因子は、喫煙とヘリコバクター・ピロリ感染であり、有意な抑制因子は年齢(65歳以上)とPPIの服用であった14)(レベル3)。潰瘍とびらんの有病率はPPI服用者で有意に少なかった

(それぞれオッズ比0.34、95%信頼区間0.15~0.68、p=0.0050、オッズ比0.32、95%信頼区間0.22~0.46、p<0.0001)14)(レベル3)。H2阻害薬服用はびらんを有意に抑制していたが、潰瘍には有意な効果は認められなかった。現在、一部のPPI(ランソプラゾール、エソメプラゾール)では「低用量アスピリン投与時における胃潰瘍または十二指腸潰瘍の再発抑制」が保険適用されている。また、アスピリン100mgとランソプラゾールの合剤が胃潰瘍や十二指腸潰瘍の既往がある脳梗塞患者に保険適用がある。なお、MAGIC研究では胃・十二指腸粘膜のびらんは、アスピリン腸溶錠服用者ではアスピリン緩衝錠服用者に比し有意に少なかった(レベル3)。3.チエノピリジン(クロピドグレル、チクロピジン)

1994年のATTの報告では、チクロピジンとクロピドグレルはアスピリンと比べて血管イベント低減効果がそれぞれ12%、10%優っているが、ともに有意な差ではなかった2)(レベル1)。ただし、チクロピジンとクロピドグレルを一括して解析すると、アスピリンとの差は有意となり

(オッズ比0.91、95%信頼区間0.84~0.98、p=0.01)、アスピリンよりも優れた結果となった15)(レベル1)。ただし、これらの検討では、脳梗塞の既往のみならず、心筋梗塞

であるが6)(レベル1)、1994年のAntithrombotic Trialists’ Collaboration(ATT)の報告では至適用量は75~325mg/日と考えられた2)(レベル1)。

一方、2002年のATTの報告では、アスピリンは脳卒中や一過性脳虚血発作(TIA)例における血管イベント(心筋梗塞、脳卒中、あるいは致死性血管障害)の発生を22%低減するとしているが、アスピリンの血管イベント低減効果にはJカーブ現象がみられ 1 日75~150mgに最も大きな効果(32%リスク低減)があり、75mg未満では有意な効果はないとされた1)(レベル1)。

上記のアスピリンに関するデータの大部分は欧米人を中心としたものであったが、日本人においてもアスピリンが脳梗塞再発を予防することが近年確認された7、8)(レベル2)。

2009年にATTから発表されたアスピリンのコントロールとのランダム化比較試験のメタアナリシス結果によると9)、アスピリンは脳梗塞再発を平均22%(95%信頼区間0.61~0.99、p=0.04)減少し、一方で出血性脳卒中を平均1.67倍増加する傾向を示し(95%信頼区間0.97~2.90、p=0.07)、全脳卒中に関しては、アスピリンはコントロールに比し、有意に19%(95%信頼区間0.71~0.92、p<0.01)減少した(レベル1)。しかし致死的脳卒中に関しては、アスピリンはコントロールに比しわずかに増加させる傾向にあった(ハザード比1.08、95%信頼区間0.73~1.62)。また、アスピリンはコントロールに比し頭蓋外出血を2.69倍有意に(95%信頼区間1.25~5.76、p=0.01)、増加した(レベル1)。アスピリンは血管死を減少させる傾向にあり(相対リスク0.91、95%信頼区間0.82~1.00、p=0.06)、他の原因による死亡を増加する有意な影響は示さなかったので、全死亡をコントロールに比し10%統計的に有意に減少させた(95%信頼区間0.82~0.99、p=0.02)(レベル1)。以上のように、出血合併症がアスピリンで明らかに増加するが、脳梗塞の再発予防に関しては、アスピリンの総合的利益は年齢や性別にかかわらず、頭蓋内外の出血合併症によるリスクを上回るであろうと論じられている。しかし、これらのデータは脳出血の少ない欧米で得られたものであり、アスピリン服用中の脳出血は、非服薬中の脳出血に比し重症化し転帰の悪い症例が多く10、11)(レベル4)、単なる発症数の比較のみでベネフィット/リスク比を評価することは出来ない。

2008年に発表されたアスピリンとシロスタゾールの二重盲検比較臨床試験(Cilostazol versus Aspirin for Secondary Ischaemic Stroke Prevention:CASISP)では、試験期間中の頭蓋内出血の発症はアスピリン服用群で359人中に 7 人、シロスタゾール服用群で360人中の 1 人のみであり、アスピリン服用者で頭蓋内出血発症リスク

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103脳卒中治療ガイドライン 2015[追補 2017]

脳梗塞・TIA

〔 45 〕

グレル群の虚血性脳卒中、心筋梗塞または血管死の発生の相対リスク低下率は7.3%(p=0.26)、脳卒中発生の相対リスク低下率は 8 %(p=0.28)であったが、それぞれ有意ではなかった17)。

CAPRIE試験の中でハイリスク例として、脂質異常症合併、糖尿病合併、冠状動脈バイパス術既往、虚血性疾患既往、または複数血管床の障害を有する症例のみのサブ解析では、虚血性脳卒中、心筋梗塞、血管死、または虚血性イベントや出血による再入院の複合エンドポイント発生率は、いずれの群でもクロピドグレルの効果はアスピリンよりも優れており、さらにCAPRIE試験全症例における効果をも上回った18)(レベル3)。また、症候性動脈硬化性疾患(虚血性脳卒中あるいは心筋梗塞)の既往を有するハイリスク例における虚血性脳卒中、心筋梗塞または血管死の発生率( 3 年間)は、クロピドグレル群20.4%、アスピリン群23.8%であり、クロピドグレル群の相対リスク低下率は14.9%であり、統計的に有意であった(95%信頼区間0.2~7.0%、p=0.045)(NNTは 3 年の観察で29)(レベル3)19)。ただし、この研究の対象には日本人が含まれていない。

CAPRIE試験での安全性に関しては、クロピドグレル群ではアスピリン群よりも消化管出血が少なく、逆に発疹と下痢は多いものの、両群の間に大きな差はなかった;

[発疹:クロピドグレル群6.0% vs. アスピリン群4.6%(p<0.001)]、[下痢:4.46% vs. 3.36%(p<0.001)]、[消化管出血:0.49% vs. 0.71%(p=0.05)]17、20)(レベル2)。

非心原性脳梗塞例を対象として、日本で行われたクロピドグレル(75mg/日)とチクロピジン(200mg/日)の有効性と安全性を検討した二つの臨床第Ⅲ相試験の統合解析の結果、脳梗塞既往者において、クロピドグレルはチクロピジンに比し、有意に有害事象が少なかった(ハザード比 0.610、95%信頼区間0.529~0.703、p<0.001)21)(レベル1)。チクロピジン群でほぼ 2 倍の肝障害が認められた(チクロピジン群;25.6%、クロピドグレル群;13.4%)。効果に関する複合エンドポイント(脳梗塞、心筋梗塞または血管死)は両群で有意差はなかった。クロピドグレルの忍容性はチクロピジンよりも明らかに良かった21)

(レベル1)。日本におけるクロピドグレルのチクロピジンとの非劣

性と安全性に関する臨床第Ⅲ相試験に参加したラクナ梗塞既往群677人と非ラクナ梗塞既往群264人に関する事後サブ解析の結果では、クロピドグレル服用によって、ラクナ梗塞既往群と非ラクナ梗塞既往群の間で、脳梗塞の再発率や全出血事象や頭蓋内出血の発生率に、有意な差は認められなかった22)。すなわち、クロピドグレルは、ラクナ梗塞に対してもそれ以外の脳梗塞患者に対する効

や末梢動脈疾患の既往も含めた患者で行われたランダム化臨床試験(Clopidogrel versus Aspirin in Patients at Risk of Ischaemic Events:CAPRIE)のデータが大きな比重を占めている。

一方、2009年に発表されたCochrane Reviewによるメタアナリシスの中で、脳梗塞ないしTIAの既往のあった患者での検討では、チエノピリジン(チクロピジンとクロピドグレル)はアスピリンと比較して、心血管イベントを 6 %のみ減少させ、統計的には有意で無かった(オッズ比0.94、95%信頼区間0.85~1.03、p=0.20)16)(レベル1)。また、全脳卒中については、チエノピリジンはアスピリンに比し、10%減少させたが、統計的には有意でなかった(オッズ比0.90、95%信頼区間0.80~1.00)16)(レベル1)。脳梗塞については、チエノピリジンはアスピリンに比し、15%減少させ、これは統計的に有意であった

(オッズ比0.85、95%信頼区間0.75~0.97、p=0.013)16)(レベル1)。出血性脳卒中については、チエノピリジンとアスピリンとの間には、有意差はなかった(オッズ比0.96、95%信頼区間0.60~1.55、p=0.88)16)(レベル1)。副作用について、チエノピリジンはアスピリンと比較して、消化管出血を有意に減少させた(オッズ比0.71、95%信頼区間0.59~0.86、p=0.00028)が、皮疹を有意に増加させた

(オッズ比1.47、95%信頼区間1.32~1.64、p<0.00001)16)

(レベル1)。チクロピジンはアスピリンに比し好中球減少を有意に増加させ(オッズ比2.72、95%信頼区間1.53~4.84、p=0.0066)、一方でクロピドグレルによる好中球減少はアスピリンよりもむしろ少ない傾向にあった(オッズ比0.63、95%信頼区間0.29~1.36、p=0.24)16)(レベル1)。すなわち、チエノピリジンはアスピリンと比べ、脳梗塞再発を有意に抑制し、皮疹が有意に多く、消化管出血は有意に少なかった16)(レベル1)。また、クロピドグレルはチクロピジンに比し好中球減少や皮疹の出現が少ないことが明らかにされた16)(レベル1)。

脳梗塞(発症後 1 週間以上、6 か月以内)、心筋梗塞、動脈硬化性末梢血管疾患を有する19,185例を対象としたランダム化比較試験であるCAPRIE試験において、脳梗塞、心筋梗塞、血管死の年間発症率は、クロピドグレル単独投与群(75mg/日、1 分服)で5.32%、アスピリン単独投与群(325mg/日、1 分服)で5.83%であり、クロピドグレル群の相対リスク低下率は8.7%(95%信頼区間0.3~16.5%)(p=0.043)であった17)(レベル2)。On-treatment解析による相対リスク低下率は9.4%、NNTは196人/年であった[実際の臨床例では絶対リスクがより高いことなどexternal validityを勘案すると、NNTは70人/年となる(CAPRIE Actual Practice Rates Analysis Study Group)]。脳梗塞既往例のみについてみると、クロピド

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104 〔 46 〕

群ではアスピリン群に比し、有意に心血管イベントが少なかった(相対リスク0.72、95%信頼区間0.57~0.91、p=0.0055)(レベル1)。全脳卒中もシロスタゾール群ではアスピリン群に比し有意に少なく(相対リスク0.67、95%信頼区間0.52~0.86、p=0.0015)、出血性脳卒中も有意に少なかった(相対リスク0.26、95%信頼区間 0.13~0.55、p=0.00036)26)(レベル1)。脳梗塞は、シロスタゾール群で少ない傾向にあったが、有意ではなかった(相対リスク0.80、95%信頼区間0.61~1.07、p=0.13)26)(レベル1)。軽度な副作用(頻脈、頭痛など)がシロスタゾール群でアスピリン群に比し多かった(相対リスク1.66、95%信頼区間1.51~1.83、p<0.00001)26)(レベル1)。消化管出血はシロスタゾール群で少ない傾向にあった(相対リスク0.57、95%信頼区間0.31~1.02、p=0.059)26)(レベル1)。なお、心不全や狭心症の発症率はシロスタゾールとアスピリンで同程度であった26)(レベル1)。2 つの新たなランダム化研究を加えた2014年のメタアナリシスでは、慢性期の再発予防に対して、シロスタゾールはプラセボに比較して、脳梗塞発症を有意に減少させたが(相対リスク 0.53、95%信頼区間0.34~0.81、p=0.003)、出血性脳卒中や全死亡には 2 群で有意差はなかった追1)(レベル2)。アスピリンとの比較では、出血性脳卒中を有意に減少させたが(相対リスク0.29、95%信頼区間0.15~0.56、p=0.0002)、脳梗塞や全死亡には 2 群で有意差はなかった追1)(レベル2)。5.抗血小板薬の併用(8.症候性頭蓋内主幹動脈狭窄性病変の項(p108~

109)も参照のこと)1)アスピリンとクロピドグレルの併用

アスピリンとクロピドグレルの併用に関しては欧米で行われたManagement of Atherothrombosis with Clopidog-rel in High-risk patients with recent TIA or ischemic stroke(MATCH)試験がある27)。MATCH試験は、3 か月以内にTIAまたは脳梗塞を発症した高リスク例[脳梗塞・心筋梗塞既往、狭心症症状のある末梢血管疾患または糖尿病(脳梗塞既往例の約半数はラクナ梗塞に相当)]を対象に、併用群(クロピドグレル75mg/日+アスピリン 75mg/日、3,800例)とクロピドグレル単独投与群(クロピドグレル75mg/日+プラセボ、3,800例)の効果を比較したRCTである。18か月間の経過観察で、一次エンドポイント(血管死、心筋梗塞、虚血性脳卒中初発、急性虚血性イベントによる再入院)に関して、両群に有意な差異は認められなかった27)(レベル2)。一方、出血性合併症については、軽微な出血のみならず生命を脅かす重大な出血も併用群で有意に多くみられた27)(レベル2)。

やはり欧米人を中心にアスピリンとクロピドグレルの併用の効果について検討したClopidogrel for High

果と同等の安全性と有効性を有していた(レベル3)。2006年から2008年にかけて日本で実施された、20歳以

上で75歳未満かつ体重50kg超の非心原性脳梗塞患者を対象に、クロピドグレル75mg/日と50mg/日の安全性を比較検討したランダム化二重盲検比較試験(Clopidogrel Two Doses Comparative 1-Year Assessment of Safety and Efficacy:COMPASS試験)の結果では、すべての出血性合併症の発症は50mg/日群で14.0%、75mg/日群で16.5%であり、両群間に有意差はなかった23)。また脳出血の発症率は両群ともに0.18%であり、特に75mg/日で脳出血が増加することはないことが示された23)(レベル2)。一方、血管性イベント(脳梗塞、心筋梗塞と血管死)の発現率は、50mg/日群で3.8%、75mg/日群で2.6%であり、50mg/日群でやや多い傾向にあった。クロピドグレルの添付文書では、通常は75mg/日を投与するが、年齢、体重、症状により、50mg/日を投与すると記載されている。COMPASS試験の結果からは、20歳以上で75歳未満かつ体重50kg超の患者には75mg/日投与が推奨される

(レベル2)。4.シロスタゾール

Cilostazol Stroke Prevention Study(CSPS)では、シロスタゾール(200mg/日、2 分服)はプラセボ群に比し41.7%の有意な脳卒中再発低減効果を有し24)(レベル2)、層別解析ではラクナ梗塞の再発予防に有効であった3、24)

(レベル3)。計算されたNNTは約 3 年で18.7であった3)。2008年に中国から報告されたCASISP試験では、シロスタゾール(200mg/日、2 分服)の脳卒中再発低減効果はアスピリン群(100mg/日、1 分服)と同等であったが(相対リスク0.62、95%信頼区間0.30~1.26、p=0.185)(レベル2)、脳出血発症率はアスピリン群がシロスタゾール群よりも有意に(相対リスク7.14、95%信頼区間0.87~58.33、p=0.038)高かった12)(レベル3)。2009年にわが国から報告された、日本人の非心原性脳梗塞患者を対象にシロスタゾール(200mg/日、2 分服)とアスピリン(81mg/日、1分服)の有効性と安全性を比較したランダム化比較試験

(CSPS2)の結果では、シロスタゾールはアスピリンに比し全脳卒中の発症リスクを有意に25.7%減少し(ハザード比0.743、95%信頼区間0.564~0.981、p=0.0357)(レベル2)、入院を要する主要な頭蓋内外出血は54.2%も有意に減少した(ハザード比 0.458、95%信頼区間 0.296~0.711、p=0.0004)25)(レベル3)。

脳梗塞再発予防におけるシロスタゾールの有用性と安全性をアスピリンと比較したランダム化比較試験に関するCochrane Reviewによるメタアナリシス(中国でのCASISP12)と日本で行われたCSPS225)の二つのRCTの統合解析;対象症例数3,477人)26)によれば、シロスタゾール

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105脳卒中治療ガイドライン 2015[追補 2017]

脳梗塞・TIA

〔 47 〕

以内のアスピリンとクロピドグレルの 2 剤併用療法と単剤療法(アスピリンまたはクロピドグレル)を比較したMATCHとCHRISMAを含む 8 つのランダム化比較試験

(20,728例)のサブ解析の結果が報告された。単剤に比較して併用療法では、脳卒中再発率は有意に減少したが(相対リスク0.69、95%信頼区間0.59~0.81)、出血性脳卒中

(相対リスク1.23、95%信頼区間0.50~3.04)や重篤な出血性合併症(相対リスク2.17、95%信頼区間0.18~25.71)は増加しなかった追2)(レベル2)。

一方、わが国から報告されたBleeding with Antithrom-botic Therapy(BAT)studyの結果では、アスピリンとチクロピジンの併用により重大な出血性合併症がアスピリン単独に比べて40%以上有意に増加することが示された32)

(レベル3)。発症 6 か月以内の症候性皮質下小梗塞でMRIにて病巣

が確認された患者を対象とした、アスピリン325mg単独群とアスピリン325mgとクロピドグレル75mg併用群のラン ダ ム 化 比 較 試 験(Secondary Prevention of Small Subcortical Strokes:SPS3)は、2011年10月米国食品医薬品局(FDA)より、アスピリンとクロピドグレル併用群でアスピリン単独群に比し有意に死亡が多いために試験中止命令が出された。その時までの解析では、併用群では単独群と比較して、全死亡がハザード比1.52(p=0.004)で有意に高く、すべての主要な出血のハザード比も1.97

(p<0.001)で有意に高く、消化管出血のハザード比も2.14(p<0.001)で有意に高かった33)(レベル2)。なお全脳卒中累積発症率はアスピリン単独群とアスピリン+クロピドグレル併用群の間で有意差はなかった33)(レベル2)。

アスピリンへのクロピドグレルの追加が死亡率に及ぼす影響に関して、無作為化試験のメタアナリシス(12件のランダム化試験の登録者は90,934例(平均年齢63歳;男性70%;追跡期間の中央値 1 年)によれば34)、6,849件の死亡が観察された。1 件の長期試験(SPS3試験)をデータの不均一性という理由から除外した後の解析によると、併用療法に伴う死亡率の有意な上昇は、4 件の短期試験

(14日~ 3 か月;ハザード比0.93、95%信頼区間0.87~0.99)または 7 件の長期試験(> 3 か月;ハザード比0.97、95%信頼区間0.91~1.04)のいずれにおいても認められなかった。しかし、3 か月以上のクロピドグレルの追加は致死的出血を増加させる傾向にあり(ハザード比1.35、95%信頼区間0.97~1.90)、一方で心筋梗塞の減少(ハザード比0.82、95%信頼区間0.74~0.91)と関連していた34)(レベル1)。2)アスピリンとシロスタゾールの併用

韓国人の脳梗塞発症 2 週間以内の中大脳動脈M1狭窄または脳底動脈狭窄患者を対象とした、アスピリンとシ

Atherothrombotic Risk and Ischemic Stabilization, Management, and Avoidance(CHARISMA)試験は、アテローム血栓症ハイリスク例(冠動脈疾患や過去 5 年以内の虚血性脳卒中・TIA、末梢動脈疾患の既往がある、あるいはアテローム血栓症のリスクを複数併せ持つが虚血性イベント未発症の例)を対象に、併用群(クロピドグレル75mg/日+アスピリン75~162mg/日)とアスピリン単独投与群(プラセボ+アスピリン75~162mg/日)の効果を比較したRCTである28)。一次有効性エンドポイント(心筋梗塞+脳卒中+血管死)の発生率に関して両群で有意差は認められなかったが、有症候例のみについてみると併用群6.9%、アスピリン単独投与群7.9%で、併用群の相対リスク低下率は12.5%(p=0.046)であり、統計的に有意であったと報告された28)(レベル2)。

しかし、CHARISMAの事前(prespecified)サブ解析では、試験期間中に脳卒中を発症した患者の発症 3 か月後のmodified Rankin Scaleで評価した機能転帰は、アスピリンとクロピドグレルの併用群とアスピリン単独群の間で有意差はなかった29)(レベル2)。さらに試験登録時に脳卒中ないしTIAの既往があった患者のみで検討しても、試験期間中に脳卒中を再発後 3 か月後の機能転帰は、アスピリンとクロピドグレルの併用群とアスピリン単独群の間で有意差はなかった29)(レベル2)。以上より、アスピリンにクロピドグレルを追加しても、発症した脳卒中の機能転帰についてはアスピリン単独と比較して、明らかな改善効果は認められなかった(レベル2)。

CHARISMAの事後サブ解析で、脳梗塞、心筋梗塞または症候性末梢動脈疾患の既往のある患者に対象を限定した解析では、心血管死、心筋梗塞または脳卒中の複合エンドポイント発生率は、アスピリンとクロピドグレルの併用群で7.3%、アスピリン単独群で8.8%であり、併用群で有意に(ハザード比0.83、95%信頼区間0.72~0.96、p=0.01)少なかった30)(レベル3)。一方、重篤な出血は併用群で1.7%、単独群で1.5%と、両群間で有意差はなかった30)

(レベル3)。さらに、もう一つのCHARISMAの事後解析で、脳梗塞ないしTIAの既往者に限って解析すると、脳卒中の再発はアスピリンとクロピドグレルの併用群で4.9%、アスピリン単独群で6.1%と、併用群でやや少なかったが有意でなかった(ハザード比0.80、95%信頼区間0.62~1.03)31)(レベル3)。重篤な出血に関しては両群間で有意差はなかったが、すべての出血に関しては併用群で37.4%、アスピリン単独群で20.5%であり、併用群のハザード比は2.08(95%信頼区間1.86~2.34)で有意に(p<0.001)、併用群で多かった31)。なお、これらの二つの報告は事後解析であり、解釈には慎重であるべきである。

非心原性脳梗塞またはTIA症例に対して、発症 3 か月

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106 〔 48 〕

中再発予防効果を比較したRCTである44)。併用群のクロピドグレル単独投与群に対する非劣性は証明されなかったが、その効果は両群で同様であった(レベル2)。一方、頭蓋内出血の発現頻度は、クロピドグレル単独投与群よりもアスピリンとジピリダモール徐放剤の併用群のほうが有意に多かった(ハザード比1.42、95%信頼区間1.11~1.83、p=0.006)44)(レベル2)。

脳梗塞既往のある患者において、アスピリン単独療法とアスピリンとジピリダモール併用療法の脳や全身の血管イベント予防に関する有効性をメタアナリシスした2008年の検討では、アスピリンとジピリダモール併用はアスピリン単独に比し、非致死性脳卒中(相対リスク 0.77、95%信頼区間0.67~0.99)や全身血管イベントの複合発症(相対リスク0.85、95%信頼区間0.76~0.94)を有意に減少させた45)(レベル1)。なお、併用薬として速放性ジピリダモールを用いた試験では、非致死性脳卒中(相対リスク0.83、95%信頼区間0.59~1.15)と全身血管イベントの複合発症(相対リスク0.95、95%信頼区間0.75~1.19)に対しては有意な減少は示さなかった45)(レベル1)。一方、徐放性ジピリダモールを用いた試験では、脳卒中(相対リスク0.76、95%信頼区間0.65~0.89)と全身血管イベントの複合発症(相対リスク0.82、95%信頼区間0.73~0.92)に対して、それぞれ有意な減少を認めた45)(レベル1)。これらの結果から、欧州脳卒中機構(ESO)やAmerican Heart Association(AHA)の脳卒中治療ガイドラインでは、非心原性脳梗塞再発予防にアスピリンと徐放性ジピリダモールの併用療法(Aggrenox®)の使用が推奨されている46、47)。

一方、わが国で施行された臨床試験(Japanese Ag-grenox Stroke prevention vs. Aspirin Programme:JASAP)では、アスピリン50mg/日とジピリダモール徐放剤(本邦未承認)400mg/日の併用療法は、アスピリン81mg/日単独に比し、脳梗塞再発予防効果の非劣性は証明されず、むしろ脳梗塞および脳出血のリスクが多い傾向にあった48)(レベル2)。この結果から、アスピリンとジピリダモールの合剤(Aggrenox®)は日本では承認されていない。4)1年間以上の抗血小板薬 2剤併用のエビデンス

2013年に、脳梗塞ないしTIAの既往のある患者を対象に、1 年間以上の長期間にわたる抗血小板薬 2 剤併用療法の有効性と安全性を、抗血小板薬単剤療法と比較検討した 7 つのランダム化比較試験(総患者数39,574人)のメタアナリシスが発表されている49)。その結果、併用群での脳梗塞再発のアスピリン単独群との相対リスク比は、0.89で有意差はなく(95%信頼区間0.78~1.01)、クロピドグレル単独群とも相対リスク比は1.01(95%信頼区間

ロスタゾールの併用療法とアスピリン単独療法の比較試験(Trial of Cilostazol in Symptomatic Intracranial Arterial Stenosis:TOSS)によると、6 か月後の頭蓋内動脈狭窄の進展は併用群で6.7%、単独群で28.8%に認められ、併用群で有意に(p=0.008)少なかったが、観察期間が短いことから脳梗塞の再発は両群ともにゼロであった35)

(レベル2)。同様な試験デザインで韓国を中心にアジアで実施された国際共同研究(TOSS2)では、アスピリンとシロスタゾールの併用療法とアスピリンとクロピドグレルの併用療法の比較検討が行われたが、観察期間が 7 か月と短いこともあり、両群間で頭蓋内動脈狭窄の進展や脳梗塞の再発および出血性合併症に関して、両群間で有意差は認められなかった36)(レベル2)。3)アスピリンとジピリダモールの併用

2002年のATTの報告では、ジピリダモールとアスピリンの血管イベント低減効果はほぼ同様であり、アスピリン単独とアスピリンとジピリダモールの併用との間にも有意差はなかった1)(レベル1)。

欧州で実施されたランダム化比較試験(European Stroke Prevention Study 2:ESPS-2)の結果によると、低用量のアスピリン(50mg/日、2 分服)とジピリダモール徐放薬(400mg/日、2 分服。保険適用外。本邦ではジピリダモールは150mg錠しかなく、400mg/日の投与は非現実的である)は、それぞれ単独でもプラセボ群に比し有意な脳卒中の再発低減効果を示したが(それぞれ18%、16%)、両者の併用により脳卒中の発症低減効果は37%まで高まった37、38)(レベル2)。この併用により脳卒中再発の時期は遅くなるが、その重症度の軽減効果はなかった39、40)(レベル2)。またサブ解析では、両者併用による脳卒中発症低減効果は、ハイリスク例で有意に高まった41)

(レベル2)。なお、ジピリダモールによる頭痛は、初期投与量を減量することで軽減することが示された42)(レベル2)。

1988年のメタアナリシスでは、アスピリン(990~1,500mg/日)は単独でもプラセボ群に比し脳卒中再発低減効果(15%、非有意)を示したが、アスピリン(800~990mg/日)とスルフィンピラゾン(800mg/日)またはジピリダモール(225mg/日)の併用により、プラセボ群に比し有意な脳卒中再発低減効果(39%)を示した43)(レベル1)。しかし、併用群では消化管出血または消化性潰瘍がプラセボ群に比し3.5倍に増加した43)。

The Prevention Regimen for Effectively Avoiding Second Strokes(PRoFESS)試験は、脳梗塞例(52%はラクナ梗塞、32%はアジア人種)を対象に、併用群[アスピリン50mg/日とジピリダモール徐放剤(本邦未承認)400mg/日]とクロピドグレル75mg/日単独投与群の脳卒

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107脳卒中治療ガイドライン 2015[追補 2017]

脳梗塞・TIA

〔 49 〕

リン群で18%であり、両群間に有意差はなかった52)(レベル2)。しかし、重篤な出血は、ワルファリン群で8.4%、アスピリン群で3.4%であり、ワルファリン群で有意に

(ハザード比2.56、95%信頼区間1.48~4.43)多かった52)

(レベル2)。2001年に結果が発表された非心原性脳梗塞を対象と

したランダム化比較試験(Warfarin-Aspirin Recurrent Stroke Study:WARSS)では、アスピリン群(325mg/日)とワルファリン群(INR 1.4~2.8)でエンドポイント(非心原性脳梗塞再発またはあらゆる原因による死亡)発生はそれぞれ16.0%と17.8%であり、両群間に有意差はなかった53)(レベル2)。しかし、重篤な出血性合併症の頻度は100 patient-years(人・年)についてアスピリン群では1.49、ワルファリン群では2.22であり、ワルファリンで多い傾向にあった(p=0.10)53)(レベル2)。以上のエビデンスから、非心原性脳梗塞の再発予防には、抗凝固薬(ワルファリン)よりは抗血小板薬の投与が推奨される。7.その他の抗血小板薬1)サルポグレラート(sarpogrelate)

セロトニン受容体拮抗作用を有するサルポグレラートには抗血小板作用があるが、通常の脳梗塞患者の再発予防効果はアスピリンのほうが優れていることが、日本人を対象とした研究で示された7、8)(レベル2)。2)プラスグレル(prasugrel)

クロピドグレルよりも迅速にadenosine diphosphate receptor(ADP)受容体阻害作用を示すプラスグレル

(prasugrel)(維持量10mg/日)については、クロピドグレル(維持量75mg/日)との間のランダム化比較試験(Trial to Assess Improvement in Therapeutic Outcomes by Optimizing Platelet Inhibition with Prasugrel - Thrombolysis in Myocardial Infarction 38:TRITON-TIMI38)が、急性冠症候群の患者を対象に行われた54)。その事前(prespecified)サブ解析で、試験登録時に脳卒中の既往がある患者では、プラスグレル群で有意にクロピドグレル群に比し、頭蓋内出血を含め出血合併症が多く、一次評価項目である心血管死や非致死性心筋梗塞ないし非致死性脳卒中の発症も多かった54)(レベル2)。その結果、一次評価項目のイベントと重篤な出血イベントを合算すると、プラスグレルはクロピドグレルに比し、有意にこれらイベントが多いことが明らかになった(ハザード比1.54、95%信頼区間1.02~2.32、p=0.04)54)(レベル2)。この結果は、脳卒中の既往のない群での結果と対照的だった。そのために、欧米では脳卒中やTIAの既往のある患者ではプラスグレルの使用は禁忌となっている。3)チカグレロール(ticagrelor)

直接に血小板ADP P2Y12受容体を阻害し、CYP2C19

0.93~1.08)で有意差はなかった49)(レベル1)。一方、併用群での脳出血発症のアスピリン単独群との相対リスク比は、0.99で有意差はなかったが(95%信頼区間0.70~1.42)、クロピドグレル単独群とは相対リスク比は1.46

(95%信頼区間1.17~1.82)で有意に高かった49)(レベル1)。脳梗塞またはTIA症例に対して少なくとも 1 年間以上の抗血小板療法を行った24件のランダム化比較試験

(総患者数85,667例)のネットワーク解析でも、長期間の抗血小板薬単剤療法は、2 剤併用療法に比べて脳梗塞再発予防効果に差がなく、出血性合併症は少なく、なかでもシロスタゾールはリスク・ベネフィットの点で最もすぐれていた追3)(レベル1)。以上より、抗血小板薬の 1 年間以上の長期併用は、抗血小板薬単剤と比較して、脳梗塞再発予防効果に有意差はなく、クロピドグレル単独群と比較して有意に脳出血を増加させることが明らかとなった(レベル1)。6.アスピリンとワルファリンの比較

1993年から開始された非心原性脳梗塞ないしTIA患者を対象としたランダム化比較試験(The Stroke Preven-tion in Reversible Ischemia Trial:SPIRIT)は、アスピリン(30mg/日)とワルファリン(INR 3.0~4.5)との間の比較であったが、1,316人の患者が登録された時点での中間解析で、安全性に大きな問題が認められ試験は中止となった。1997年に、中止になるまでの結果が発表され50)、1 次評価項目であるすべての血管死、非致死性脳卒中、非致死性心筋梗塞や非致死性の重篤な出血の複合エンドポイントがワルファリン群でアスピリン群に比し有意に多く(ハザード比2.3、95%信頼区間1.6~3.5)、その原因は主にワルファリン群での重篤な出血がアスピリン群に比し有意に(ハザード比9.3、95%信頼区間4.0~22)多かったことによる(レベル2)。また、ワルファリン群ではINRが0.5上昇するごとに、出血事象は1.43倍ずつ増加することが認められた50)。

SPIRIT試験は、ワルファリン群で重篤な出血が多く中断されたことから、ワルファリンの治療強度をINR=2.0~3.0にして、再度、非心原性脳梗塞ないしTIA患者を対象としワルファリン治療とアスピリン治療(30~325mg/日 )の 間 で ラ ン ダ ム 化 比 較 試 験(European/Australasian Stroke Prevention in Reversible Ischaemia Trial:ESPRIT)が1997年から実施された。しかし、この試験も、途中でアスピリン単独よりもアスピリンとジピリダモールの併用療法のほうが有効であるとの他試験の結果が出たことで51)、中断された。その時点までの平均4.6年間の試験期間での結果では、すべての血管死、非致死性脳卒中、非致死性心筋梗塞や非致死性の重篤な出血の複合エンドポイントは、ワルファリン群で19%、アスピ

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微小塞栓信号(microembolic signal:MES)を認める発症 3か月以内のTIAないし脳梗塞患者で、クロピドグレルとアスピリンの併用療法とアスピリンの単独療法を比較したClopidogrel and Aspirin for Reduction of Emboli in Symptomatic Carotid Stenosis(CARESS)試験では、7 日後のMES陽性例は、併用療法群で単独群に比し有意に少なかった60)(レベル2)。出血性合併症などの重篤な副作用には差はなかった。同様に、50%以上の頚動脈狭窄ないし中大脳動脈狭窄を伴い発症 7 日以内の脳梗塞ないしTIA患者を対象に行われたClopidogrel plus aspirin versus aspirin alone for reducing embolisation in patients with acute symptomatic cerebral or carotid artery stenosis

(CLAIR)試験では、試験 2 日目と 7 日目のMES陽性例はアスピリンとクロピドグレル併用群でアスピリン単独群に比し有意に少なかった61)(レベル2)。一方、頭蓋内出血など重篤な副作用には両群間で差はなかった。これら 2 試験のメタアナリシスで、アスピリンとクロピドグレル併用群はアスピリン単独群に比し、2 日目と 7 日目のMES陽性例は、それぞれ32%と46%有意に(p=0.004、p=0.0002)減少し、7 日以内の脳梗塞再発も 6 %有意に

(p=0.03)、少なかった61)(レベル1)。2008年から2011年に実施されたStenting and Aggressive

Medical Management for Preventing Recurrent stroke in Intracranial Stenosis(SAMMPRIS)試験は、451例の脳梗塞ないしTIA発症30日以内で、頭蓋内主幹動脈に70~99%の高度狭窄を有する患者を対象に、高度内科治療群とステント群(高度内科治療にWingspanによるステント治療を加えた)のランダム化比較試験であり、2014年に最終結果が報告された4)。本試験での高度内科治療の内容として、アスピリン(325mg/日)とクロピドグレル

(75mg/日)の最初の90日間の併用療法とそれ以降のアスピリン単独療法が含まれていた。血圧は、降圧薬で収縮期血圧は140mmHg未満(糖尿病合併例では130mmHg未満)に、LDLコレステロールはスタチンで70mg/dL未満に管理され、各種危険因子に対する生活指導もなされていた。その結果、登録30日以内の脳卒中ないし死亡あるいは30日以降の脳梗塞、ステント治療30日以内の脳卒中ないし死亡の主要評価項目のイベント発生が、中央値32.4か月の時点で、高度内科治療群では15%に、ステント群では23%に認められ、この差は両群間で有意(p=0.0252)だった4)(レベル2)。ただし、この差は主にステント治療開始後30日以内に生じたものであり、ステント術の周術期のリスクを示した結果であった。頭蓋内出血も含め主要な出血は、高度内科治療群で 4 %、ステント群で13%であり、後者で有意に(p=0.0009)多かった4)(レベル2)。なお、高度内科治療群では、脳卒中ないし死亡

の影響を受けない非チエノピリジン系のチカグレロール(ticagrelor)(維持量180mg/日)について、クロピドグレル(維持量75mg/日)との間のランダム化比較試験(Platelet Inhibition and Patient Outcomes:PLATO)が、急性冠症候群の患者を対象に行われた55)。試験全体としては、一次評価項目である心血管死、心筋梗塞と脳卒中の発症は、チカグレロール群でクロピドグレル群に比し有意に少なく、頭蓋内出血や重篤な出血は両群間で有意差がなかった55)(レベル2)。本試験の事前(prespecified)サブ解析によると、一次評価項目発症リスクは、試験登録時の脳卒中既往例(試験登録患者全体の6.2%)では既往のない例に比べて、いずれの治療群でも有意に高かった56)。なお、脳卒中既往のある患者の中で両治療群の成績を比較すると、試験全体の成績と同様に、脳卒中既往のある患者でも、チカグレロール群でクロピドグレル群に比し一次評価項目発症リスクは少なく、頭蓋内出血や重篤な出血は両群間で有意差がなかった56、57)(レベル2)。この結果から、脳卒中の既往があっても、チカグレロールの使用は安全面からは禁忌にする必要はないとされた。8.症候性頭蓋内主幹動脈狭窄性病変

発症 2 週間から 6 か月までの日本人の症候性頭蓋内動脈狭窄を対象に、アスピリンとシロスタゾールの併用療法とアスピリン単独療法を比較する全国多施設共同研究

(Cilostazol-Aspirin THerapy Against Recurrent Stroke with Intracranial artery Stenosis:CATHARSIS)では、頭蓋内動脈の進展や脳梗塞の再発に両群間で有意差は認められなかった58)(レベル2)。背景因子を補正した多重ロジスティック回帰分析では、脳卒中および新規無症候脳梗塞の複合エンドポイントは、アスピリンとシロスタゾールの併用群でアスピリン単独群よりも有意に少なかった

(オッズ比0.34、95%信頼区間0.12~0.96、p=0.04)58)(レベル3)。

1999年から2003年に患者登録をしたWarfarin Aspirin Symptomatic Intracranial Disease(WASID)試験は、発症90日以内の脳梗塞ないしTIA患者で50~99%の頭蓋内主幹動脈狭窄を有する患者を対象に行われた、ワルファリン投与群(INR 2.0~3.0)とアスピリン投与群(1,300mg/日)のランダム化比較試験である。その結果、平均1.8年の試験期間の間で、死亡や主要な出血などの副作用の発現率がワルファリン群でアスピリン群に比し 2 倍以上と有意に(p=0.01~0.02)高く、一方で脳梗塞の再発率には両群間で差がなかった59)。以上の結果から、50~99%の頭蓋内主幹動脈狭窄を有する患者にはワルファリンでなくアスピリンが投与されるべきと結論された59)(レベル2)。

50%以上の頚動脈狭窄を伴い、経頭蓋ドプラー検査で

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109脳卒中治療ガイドライン 2015[追補 2017]

脳梗塞・TIA

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ン服用中の頭蓋内出血は、欧米で実施された試験[CAPRIE(平均観察期間1.9年)、CHARISMA(平均観察期間2.3年)、ESPRIT(平均観察期間3.5年)、SPS3(平均観察期間3.4年)]では年間0.15~0.43%であったが、日本や中国で実施された試験(CSPS2(平均観察期間2.4年)、Sarpogrelate-Aspirin Comparative Clinical Study for Efficacy and Safety in Secondary Prevention of Cerebral Infarction(S-ACCESS)(平均観察期間1.6年)、JASAP(平均観察期間1.3年)、CASISP(平均観察期間1.0年)では、1.00~1.89%と明らかに高率であった。各試験の観察期間が一様でないことから、頭蓋内出血のリスクを年間発症率のみから判断することには慎重を要するが、アジア人種ではアスピリン服用時の頭蓋内出血が欧米人に比し多いことは留意すべきである67)(レベル2)。

一方、シロスタゾールを投与した臨床試験は中国と日本でしか行われていないが、これらの試験(CSPS、CSPS2、CASISP)での頭蓋内出血年間発症率は、0.27~0.42%と低率であった26)(レベル1)。また、クロピドグレルは、欧米での試験(CAPRIE)では頭蓋内出血の年間発症率は0.18%であったが、欧米と一部のアジアで実施された試験(MATCH)(観察期間1.5年のデザイン)、PRoFESS

(平均観察期間2.5年)では、0.41~0.47%と軽度上昇しており、日本での第Ⅲ相試験(平均観察期間1.3年)では0.70%とやや高値であった68)(レベル2)。また、クロピドグレルの日本における市販後調査(COSMO)では、脳出血がアテローム血栓性脳梗塞患者で0.37%、ラクナ梗塞患者で0.45%、TIA患者で0.32%に認められた69)(レベル4)。頭蓋内出血に関しては、ラクナ梗塞患者では、クロピドグレル単独群では0.42%であったのに対し、アスピリン併用群では1.51%と有意に(p=0.0366)増加していた69)(レベル4)。アテローム血栓性脳梗塞やTIA患者では、両群間でそのような有意差は認められなかった。以上より、ラクナ梗塞では、クロピドグレルとアスピリンの併用は控えるべきである(レベル4)。

なお、わが国で実施されたクロピドグレルの用量比較試験(COMPASS)で、対象を20歳以上75歳未満かつ体重が50kg以上に限った検討では、頭蓋内出血の年間発症率は75mg/日群も50mg/日群もともに0.20%と欧米並みに低かった70)(レベル2)。市販後調査の結果からはクロピドグレル服用時の頭蓋内出血は、欧米に比し実臨床では約2倍多い可能性があるが、処方する患者を75歳未満かつ体重50kg以上に限った場合には頭蓋内出血は増えない可能性がある。12.抗血小板薬服用中の血圧管理

脳卒中ないしTIAの既往患者における降圧療法の有効性と安全性を検証した国際的なプラセボ対照ランダム化

の発生率は、1 年後で17.5%、2 年後で19.8%であり、予想に反して大変低かった。これは、最初の90日間のアスピリンとクロピドグレルの併用療法とその後のアスピリン単独療法、および厳格な血圧管理とLDL-コレステロール管理などからなる高度内科治療が脳梗塞再発予防に優れていることを示している(レベル2)。9.抗血小板薬の中止・休薬

長期アスピリン服用中の虚血性脳卒中例あるいはTIA例を対象とした症例対照研究では、アスピリン中止・休薬に伴う虚血性脳卒中またはTIA発症のオッズ比は3.4

(95%信頼区間1.08~10.63、p<0.005)であり、特に冠動脈疾患を有する例におけるアスピリン中止・休薬のリスクが示された62)(レベル4)。

抗血小板薬中止・休薬に関連した脳卒中例は、対象としたすべての脳卒中例の4.49%を占めたに過ぎなかったが、これらの例は中止・休薬後6~10日以内に発症していた63)(レベル4)。

わが国の歯科三学会合同の「科学的根拠に基づく抗血栓療法患者の抜歯に関するガイドライン2010年版」64)や、2012年に改訂された日本消化器内視鏡学会の「脳血栓薬服用者に対する消化器内視鏡診療ガイドライン」65)などでは、出血時の対処が容易な処置・小手術(抜歯、白内障手術など)の施行時は、抗血小板薬の内服続行が勧められている(レベル4)。出血低危険度の消化器内視鏡では、アスピリン、アスピリン以外の抗血小板薬はいずれも休薬なく施行して良いとされている(レベル4)。出血高危険度の消化器内視鏡では、アスピリン以外の抗血小板薬単独内服の場合には休薬を原則として、休薬期間はチエノピリジン誘導体が 5 ~ 7 日間、チエノピリジン誘導体以外の抗血小板薬は 1 日間の休薬とし、血栓塞栓症の発症リスクが高い症例では、アスピリンまたはシロスタゾールへの置換を考慮するとされている(レベル4)。その他詳細は、上記ガイドラインを参照してほしい。それぞれの記述の科学的根拠のレベルは決して高くないが、抗血小板薬の不用意な中止による血栓塞栓症のリスクを回避することが臨床的に有用と判断されている。10.抗血小板薬服用と発症・再発時重症度

1,643例の急性期虚血性脳卒中例あるいはTIA例を対象とした横断調査では、発症前のいずれかの抗血小板薬服用と、入院時あるいは入院 1 週間後の重症度(NIH Stroke Scale:NIHSS)、入院後回復度との間に、何ら有意な関係は認められなかった66)(レベル4)。11.抗血小板薬服用中の頭蓋内出血

脳梗塞再発予防を目的として最近行われた抗血小板薬の大規模ランダム化比較試験で、各抗血小板薬を投与された患者の頭蓋内出血の年間発症率を見ると、アスピリ

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比 較 試 験(Perindopril Protection against Recurrent Stroke Study:PROGRESS)の中で、何らかの抗血栓薬を服用中の患者では、降圧薬を服用していた群はプラセボ群に比し、明らかに頭蓋内出血が少なかった(相対リスク 0.54、95%信頼区間 0.07~0.69)71)(レベル2)。収縮期血圧を<120mmHg、120~139mmHg、140~159mmHg、≧160mmHgの4分位で検討すると、120mmHg未満の群(中央値113mmHg)で他の群に比し有意に(p trend=0.007)頭蓋内出血が少なかった71)(レベル3)。なお、頭蓋外出血に関してはそのような関係は認められなかった。

2003年から2006年に日本で実施された、抗血栓薬服用中の患者を対象とした前向き多施設観察コホート研究

(BAT研究)によると、4,009人の登録患者のうち、47.2%が単一の抗血小板薬を、8.7%が 2 剤の抗血小板薬を服用し、32.4%がワルファリンを服用、11.7%がワルファリンと抗血小板薬を服用していた72)。抗血小板薬の中では、アスピリン単剤、チクロピジン単剤ないしアスピリンとチクロピジンの併用が大半を占めていた。中央値19か月間の観察期間中に頭蓋内出血を発症した患者では、それ以外の患者に比し、観察期間中の収縮期および拡張期血圧が登録時に比し上昇する傾向にあり、多変量解析で他の背景因子を補正すると、1 か月から 6 か月間、7 か月から12か月間の平均収縮期血圧と 7 か月から12か月間の平均拡張期血圧は、頭蓋内出血の独立した予測因子であった72)(レベル3)。ROC分析では、頭蓋内出血を予測するカットオフ値は130/81mmHgと計算された72)(レベル3)。

また、ラクナ梗塞既往患者を対象に2003年から2011年にかけて海外で施行されたSPS3試験において、平均3.7年の観察期間中の全脳卒中発症率は、目標収縮期血圧130mmHg未満の患者群では同130~149mmHgの患者群に比し、統計的に有意差はなかったものの(p=0.08)、全脳卒中発症は19%抑制され、特に脳出血は前者で後者に比し有意に(p=0.03)、63%も抑制されていた73)(レベル3)。両群間で降圧治療による合併症の発症に有意差はなく、収縮期血圧130mmHg未満を目標とする降圧治療は安全に施行可能であると結論されている73)。

なお、CSPS2のサブ解析として、脳出血の発症率は、どの収縮期血圧レベルにおいてもアスピリン群のほうがシロスタゾール群より高く、特に140mmHgより高いレベルでは有意に高かった74)(レベル3)。この事実は、アスピリンを処方する際は特に血圧の管理が重要であることを示唆している。

以上より、抗血小板薬を処方する際は、頭蓋内出血を予防するために血圧の管理がきわめて重要であり、目標として収縮期血圧を130mmHg未満に管理することが一般に推奨される。

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111脳卒中治療ガイドライン 2015[追補 2017]

脳梗塞・TIA

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115脳卒中治療ガイドライン 2015[追補 2017]

Ⅱ  脳梗塞 ・ TIA

推 奨

脳梗塞・TIA

〔 55 〕

3-3 再発予防のための抗凝固療法

脳梗塞慢性期3

1.非弁膜症性心房細動(NVAF)のある脳梗塞または一過性脳虚血発作(TIA)患者の再発予防には、ダビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバン、エドキサバンないしワルファリンによる抗凝固療法が勧められる(グレードB)。頭蓋内出血を含め重篤な出血合併症は、ワルファリンに比較して、ダビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバン、エドキサバンで明らかに少ないので、これらの薬剤の選択をまず考慮するよう勧められる(グレードB)。

2.ダビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバン、エドキサバンのいずれかによる抗凝固療法時は、腎機能、年齢、体重を考慮し、各薬剤の選択と用量調節を行うよう勧められる(グレードB)。

3.ワルファリン療法時は、international normalized ratio(INR)を2.0~3.0に維持するよう強く勧められる(グレードA)。70歳以上のNVAFのある脳梗塞またはTIA患者では、INR 1.6~2.6が勧められる(グレードB)。出血性合併症はINR 2.6を超えると急増する(グレードB)。

4.リウマチ性心臓病、拡張型心筋症などの器質的心疾患を有する症例にはワルファリンが第一選択薬であり、INR 2.0~3.0に維持するよう強く勧められる(グレードA)。

5.機械人工弁を持つ患者では、ワルファリンが第一選択薬であり、INR 2.0~3.0以下にならないようコントロールすることが強く勧められる(グレードA)。本患者ではダビガトランは効果がなく、他の非ビタミンK阻害経口抗凝固薬(Non-vitamin K antagonist oral anticoagulant:NOAC)はエビデンスがないため、NOACは使用しないよう、勧められる(グレードD)。

6.ワルファリン、NOACの治療開始の時期に関しては、脳梗塞発症後2週間以内が一つの目安となる。しかし大梗塞例や血圧コントロール不良例、出血傾向例など、投与開始を遅らせざるを得ない場合もある(グレードC1)。

7.出血時の対処が容易な処置・小手術(抜歯、白内障手術など)の施行時は、ダビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバン、エドキサバンあるいは至適治療域にINRをコントロールしたワルファリンの内服続行が望ましい。出血高危険度の消化管内視鏡治療や大手術の場合は、ワルファリン内服者では至適治療域にINRをコントロールしたワルファリン継続下あるいはNVAFの場合にはNOACへの一時的変更を考慮し、NOAC内服者では前日朝まで内服を継続し、処置当日の内服を中止、処置翌日朝より出血がないことを確認して再開する(グレードC1)。

◉エビデンス1.ワルファリン

European Atrial Fibrillation Trial(EAFT)試験では、NVAFを伴う脳梗塞またはTIA例について検討した結果、年間脳梗塞発症率は対照群12%に比べてワルファリン群(INR 2.5~4.0)4 %と有意に少なく、ワルファリンの再発予防効果が示された1)(レベル2)。この試験も含め、多数のrandomized controlled trial(RCT)のメタアナ

リシスでも同様な結果が示された2、3)(レベル1)。ただし、これら欧米での試験ではINRの設定レベルがわが国の2.0~3.0よりも高いところに設定されており、その治療成績をわが国にそのまま適用することには注意を要する。

出血性合併症は、対照群に比べてワルファリン群で有意に多い1)(レベル2)。ワルファリン服用中の頭蓋内出血リスクは、白人、黒人、ヒスパニックに比較して、アジア人で明らかに多いことに留意する必要がある4)(レベル

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116 〔 56 〕

の62%がINR<2.0であり、死亡または重症脳梗塞例の割合は高用量ワルファリン群(入院時INR≧2.0)で5%、低用量ワルファリン群(INR<2.0)で15%(INR<1.5の例とINR 1.5~1.9の例に有意差なし)、アスピリン群(用量の記載なし)で13%であった12)(レベル3)。したがってNVAF例にワルファリンを投与する場合、脳梗塞発症・再発予防および重症化軽減のために、INR≧2.0が望まれ、INR<2.0の場合、その効果はアスピリンと同等に留まると結論された。

血栓リスクの高い心房細動症例では重篤な出血性合併症のリスクも高くなるためワルファリン開始時に十分に説明をすることが極めて重要となる。脳血管あるいは心血管疾患のために経口抗血小板薬またはワルファリンの投与を受けている外来患者4,009例の日本人症例を対象とし、重篤な出血イベントの発症リスクを検討したBleeding with Antithrombotic Therapy(BAT)studyにおいても、一次エンドポイントである命に関わる出血または大出血の初発は抗血小板薬単独群の1.21%/年に対して、抗血小板薬併用群では2.00%/年、ワルファリン単独群では2.06%/年、ワルファリン+抗血小板薬併用群では3.56%/年であり、ワルァリン使用による重篤な出血性合併症の発症リスクの増加が示された13)(レベル2)。ワルファリンによる予防介入は出血リスクの増加を受け入れられる症例に十分なインフォームドコンセントのもとで施行すべきである。

本邦の研究では、NVAFのある脳梗塞およびTIA患者において低用量ワルファリン群(INR 1.5~2.1、目標1.9)と常用量群(INR 2.2~3.5、目標2.5)では脳梗塞の再発率に差がなかったが、常用量群の高齢者で出血の副作用を認めたため、高齢者においてはINR 1.5~2.1の低用量群のほうが常用量群より安全であるとされた14)(レベル2)。また、重篤な脳塞栓症および出血性合併症の予防のためには高齢者ではワルファリンの至適治療域はINR 1.6~2.6とし、2.6を超えないほうが良いと報告された15)(レベル3)。2013年に発表された本邦でのNVAF患者7,406人の 2 年間の前向き観察研究(J-RHYTHM Registry)の結果からは、日本人、特に70歳以上ではワルファリンの治療域はINR1.6~2.6が安全かつ血栓塞栓症の予防に有効であるとされた16)(レベル3)。機械人工弁のある患者は、INR 2.5~3.5を目標に抗凝固療法を実施する17-19)(レベル2)が、本邦では欧米に比べてINR 1.6~2.8と緩和な治療域で行われている施設もある20)(レベル3)。

ワルファリン治療開始の時期に関しては、高度のエビデンスはまだない。代表的なRCTであるEAFT試験では脳梗塞発症後 2 週間以内にワルファリン投与が開始されていた1)。

3)。同様に、ダビガトランのワルファリンとの非劣性を検討した国際的RCT(Randomized Evaluation of Long-term Anticoagulant Therapy:RE-LY試験)のサブ解析で、ワルファリン服用群の出血性脳卒中の発現率が日本人を含むアジア人集団では0.75%/年であり、非アジア人集団の0.32%/年に比し有意に高値であった(ハザード比 2.4、95%信頼区間 1.3~4.7、p=0.007)5)(レベル3)。アジア人集団は非アジア人集団に比し、平均年齢が若く、INRのレベルが低く、血圧レベルは同等であったにもかかわらず、上記の結果が得られており、わが国ではワルファリンによる頭蓋内出血リスクに特に留意する必要がある。

ワルファリン群とアスピリン群のRCTのメタアナリシスでは、NVAF患者の脳卒中発症のリスク低下率はアスピリン群22%に比べてワルファリン群62%、年間脳梗塞再発のリスク低下率はアスピリン群2.5%に比べてワルファリン群8.4%であり、ワルファリンの有効性が示されている6)(レベル1)。

Cochrane Reviewのメタアナリシスによると、非心原性塞栓性の脳梗塞またはTIAでは、抗凝固療法の有効性は明らかではなく、出血リスクを有意に高めた7)(レベル1)。

低用量ワルファリン群(INR 1.4~2.0)の検討では、NVAFのある脳梗塞の再発は3.9%であったが、常用量群

(INR 2.0~3.0)では再発がなかったとされる8)(レベル2)。Veterans Affairs Stroke Prevention in Nonrheumatic Atrial Fibrillation(VA-SPINAF)試験では、脳梗塞年間再発率は低用量ワルファリン群(INR 1.2~1.5)で0.9%、プラセボ群で4.3%、脳出血合併は低用量ワルファリン群の 1 例のみ、他の重大な出血性合併症の年間発生率は低用量ワルファリン群で1.3%、プラセボ群で0.9%であり、低用量ワルファリンの有効性が示された9)(レベル2)。

一 方、Stroke Prevention in Atrial Fibrillation Ⅲ(SPAF Ⅲ)試験では、NVAFのある脳梗塞の再発は投与量固定ワルファリン群(INR 1.2~1.5に調整後、投与量を固定し、アスピリン325mg/日を併用)では11.9%であったが、常用量群(INR 2.0~3.0)は3.4%と有意に低く、重篤な出血性合併症では差がなかった10)(レベル2)。NVAFのある脳梗塞患者でワルファリン療法中の再発群と非再発群のINRを比較した場合、INR 2.0未満では脳梗塞の再発率が有意に高く、INR 4.0~5.0では出血性イベントが多いので、脳梗塞再発予防のINRは2.0~3.0を目標にすべきとされた11)(レベル3)8、10)(レベル2)。

脳梗塞再発時の重症度軽減効果に関して、AnTicoagulation and risk factors in Atrial Fibrillation(ATRIA)試験のサブ解析では、ワルファリン服用中の脳梗塞発症・再発例

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117脳卒中治療ガイドライン 2015[追補 2017]

脳梗塞・TIA

〔 57 〕

歳未満では頭蓋内・外出血の発現率を有意に減少させた24)(レベル3)。75歳以上では頭蓋内出血については両用量とも有意に減少したが、頭蓋外出血については、ワルファリンと比べダビガトラン150mg× 2 回/日では有意に増加した。腎機能別の大出血の発現率は、ダビガトランの両用量、ワルファリンともに腎機能低下例(特にクレアチニンクリアランス50mL/分未満)で上昇が認められた24)(レベル3)。頭蓋内出血に関するRE-LY試験のサブ解析では、ダビガトランの両用量はワルファリンに比べ、頭蓋内出血、致死的頭蓋内出血、外傷性頭蓋内出血、脳出血の発現を有意に減少させた25)(レベル3)。頭蓋内出血の独立した予測因子としては、年齢、非白人、脳卒中・TIAの既往、ワルファリンの服用、アスピリンの併用が同定された25)(レベル3)。

抗血小板薬併用について検討したRE-LY試験のサブ解析では、抗血小板薬併用下での脳卒中および全身性塞栓症の発現率は、ワルファリンに比してダビガトラン150mg× 2 回/日では低下傾向、ダビガトラン110mg× 2回/日では同等であった26)。しかし、ダビガトラン、ワルファリンともに抗血小板薬併用により大出血発現率は増加し、抗血小板薬単剤よりも 2 剤併用例で、より高率であったが、ワルファリンに比べダビガトラン150mg× 2回/日では同等、ダビガトラン110mg× 2 回/日では減少していた(相対リスク0.82、95%信頼区間0.67~1.0)26)(レベル3)。なお、抗血小板薬併用下の頭蓋内出血の発現率は、ダビガトランの両用量ともにワルファリンと比べ有意に低下していた(ダビガトラン150mg× 2 回/日:相対リスク0.47、95%信頼区間0.28~0.8、ダビガトラン110mg× 2 回/日:相対リスク0.23、95%信頼区間0.12~0.47)26)

(レベル3)。周術期の出血リスクについてダビガトランとワルファ

リンを比較検討したRE-LY試験のサブ解析では、周術期大出血の発現はダビガトラン両用量、ワルファリンともに同等であった27)。これは緊急手術でも同等で、抗凝固薬の休薬期間はダビガトランで短縮された27)(レベル3)。

RE-LY試験終了後もダビガトラン服用を継続した症例を追跡したRE-LY ABLE試験では、RE-LY試験終了後2.3年間において、ダビガトラン150mg× 2 回/日は110mg× 2 回/日に比べ大出血の発現率が高く、脳卒中および死亡は同程度であった28)(レベル3)。現在、日本においても市販後追跡調査が行われており、実臨床下でのダビガトランの有効性および安全性が明らかになると思われる。

機械弁に対するダビガトランの有効性をワルファリンと比較検討したRandomized、PhaseⅡ Study to Evaluate the Safety and Pharmacokinetics of Oral Dabigatran

大腸内視鏡、歯科・眼科手術といった外来手技に際してワルファリンが休薬された1,293例(平均年齢72歳)の検討では、ワルファリン休薬が 5 日間以内の症例の血栓塞栓症発生率は0.4%であったが、7 日間以上の休薬では2.2%であった21)。また大出血合併例は 6 例(0.6%)あり、このうち 4 例は低分子ヘパリンによる橋渡し治療を受けた例であった。また大出血ではないが臨床的に問題となる出血を合併した17例(1.7%)のうち、10例が橋渡し治療を受けていた21)(レベル3)。2.ダビガトラン

CHADS2スコア 1 点以上のNVAFを対象に血栓塞栓症予防についてワルファリンに対するダビガトランの非劣性を検討したRE-LY試験の中で、登録時に脳梗塞またはTIAの既往があった症例について検討したサブ解析では、脳卒中および全身性塞栓症の発現率は、ワルファリンの2.78%/年に対し、ダビガトラン110mg× 2 回/日は2.32%/年、150mg× 2 回/日は2.07%/年でダビガトランの両用量ともにワルファリンと同等であった22)(レベル3)。また、脳梗塞の発現率についても両用量ともワルファリンと同等であった22)(レベル3)。一方、頭蓋内出血の発現率はダビガトランの両用量ともワルファリンより有意に低く、ダビガトラン110mg× 2 回/日は大出血の発現率もワルファリンに比べ有意に低かった22)(レベル3)。以上の結果から脳梗塞再発予防において、ダビガトランは、ワルファリンと効果は同等であり、かつ頭蓋内出血は有意に少なく、ワルファリンの代替薬になることが確認された。

日本人を含むアジア人と非アジア人に分けて検討したRE-LY試験のサブ解析では、アジア人における脳卒中および全身性塞栓症についてのダビガトランのワルファリンに対する有効性はRE-LY試験全体の結果と同様であった5)。アジア人における大出血の発現率は、ダビガトランの両用量ともワルファリンに比べ有意に少なかった5)。出血性脳卒中は、ワルファリン服用群でアジア人は非アジア人に比べ有意に多かったが、ダビガトラン服用群ではアジア人および非アジア人ともに明らかな減少が認められた。消化管出血については、アジア人ではワルファリンに比べダビガトランで増加は認められなかった5)(レベル3)。また、RE-LY試験に参加した日本326人を対象にした検討でも、ダビガトランの有効性および安全性はRE-LY試験全体の結果と同様であった23)(レベル3)。以上より欧米人に比べ脳出血が多い日本人には、安全性を考慮するとワルファリンよりもダビガトランが推奨される。

RE-LY試験における出血リスクを検討したサブ解析では、ダビガトランの両用量はワルファリンに比べ、75

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118 〔 58 〕

50kg以下では、重大なまたは重大ではないが臨床的に問題となる出血が、リバーロキサバンではワルファリンよりも多くなることがサブ解析で明らかにされている33)

(レベル3)。一方で、脳卒中や全身性塞栓症の発症に関しては、年齢にかかわらず、リバーロキサバンはワルファリンに比べ一貫して低かった33)。したがって、高齢者では抗凝固療法の本来の目的である脳梗塞予防と副作用である出血のベネフィット対リスクを考慮することが重要である。なお、有効性を検証するためには十分な例数を有していないが、脳卒中または全身性塞栓症の発現率は、ワルファリンの2.61%/年に対し、リバーロキサバンは1.26%/年(ハザード比0.49、95%信頼区間0.24~1.00、p=0.05)とリバーロキサバンで減少する傾向が認められた32)(レベル3)。なお、J-ROCKET AF試験において登録時に脳卒中、TIAないし中枢神経系以外の全身塞栓症の既往を有していた症例(二次予防群)と既往のなかった症例(一次予防群)について比較したサブ解析では、両群でリバ-ロキサバンの有効性と安全性は一貫していた34)。二次予防群での全脳卒中の発症は、リバーロキサバンで1.47%/年、ワルファリンで3.06%/年であり、リバーロキサバンで低い傾向(ハザード比0.48、95%信頼区間0.21~1.12)にあった34)(レベル3)。

ROCKET AF試験ではクレアチニンクリアランス30~49mL/分の中等度腎機能障害例に対しては、リバーロキサバンは通常量の20mg/日から15mg/日に減量されたため、腎機能障害別に検討したROCKET AF試験のサブ解析が検討された。中等度腎機能障害例は腎機能正常例に比べ脳卒中および出血合併症の発現率は高かった35)。しかしながら、中等度腎機能障害例においてもワルファリンに対するリバーロキサバンの有効性および安全性はROCKET AF試験全体の結果とほぼ同様であった35)(レベル3)。J-ROCKET AF試験では腎機能正常例はリバーロキサバンが15mg/日、中等度腎機能障害例(クレアチンクリアランス30~49mL/分)は10mg/日が投与されたが、本試験でも中等度腎機能障害例におけるリバーロキサバンの安全性および有効性が確認された36)(レベル2)。

ROCKET AF試験の事後解析によると、試験終了後のオープンラベルでのワルファリンによる標準的治療への移行期にリバーロキサバン群はワルファリン群に比べ脳卒中および全身性塞栓症の発現が増加した37)。これは、移行期において抗凝固作用が不十分になったことが要因と考えられ、NOACからワルファリンへ切り替える時は、ワルファリンによるINRが治療域に達するまではNOACを継続し、抗凝固状態に切れ間を作らないことの重要性が示された(レベル3)。

Etexilate in Patients after Heart Valve Replacement(RE-ALIGN)試験では、ダビガトラン(通常より高用量使用)はワルファリンに比べ血栓塞栓症および出血合併症を増加させ、機械弁置換術後のダビガトランの有効性は認められなかった29)(レベル2)。他のNOACについては、現在のところ機械弁に対するエビデンスがなく、機械弁置換術後の血栓塞栓症予防にはNOACは使用してはいけない。3.リバーロキサバン

CHADS2スコア 2 点以上のNVAF例を対象に血栓塞栓症予防についてワルファリンに対するリバーロキサバンの非劣性を検討したRivaroxaban Once Daily Oral Direct Factor Xa Inhibit ion Compared with Vitamin K Antagonism for Prevention of Stroke and Embolism Trial in Atrial Fibrillation(ROCKET AF)試験の中で、登録時に脳梗塞またはTIAの既往があった症例について検討したサブ解析では、脳卒中および全身性塞栓症の発現率は、ワルファリンの2.96%/年に対しリバーロキサバンは2.79%/年(ハザード比0.94、95%信頼区間0.77~1.16)、重大なまたは重大ではないが臨床的に問題となる出血の発現率は、ワルファリンの13.87%/年に対し、リバーロキサバンは13.31%/年(ハザード比0.96、95%信頼区間0.87~1.07)、頭蓋内出血の発現率は、ワルファリン0.80%/年に対してリバーロキサバン0.59%/年(ハザード比0.74、95%信頼区間0.47~1.15)とワルファリンと同等であった30)(レベル3)。以上の結果から脳梗塞再発予防において、リバーロキサバンはワルファリンと効果および頭蓋内出血は同等であり、ワルファリンの代替薬になることが確認された。

ROCKET AF試験における出血リスクを検討したサブ解析では、出血リスクはワルファリン、リバーロキサバンともに加齢とともに増加したが、両薬剤間で差はなかった31)。加齢、拡張期血圧90mmHg以上、慢性閉塞性呼吸器疾患の既往、消化管出血の既往、アスピリン服用、貧血が出血合併症の予測因子であった31)(レベル3)。

国際共同試験であるROCKET AF試験とは別に日本人にあわせたリバーロキサバンの用量(15mg/日)でJ-ROCKET AF試験が行われた。安全性に関しては、重大なまたは重大ではないが臨床的に問題となる出血の発現率は、ワルファリンの16.42%/年に対し、リバーロキサバンは18.04%/年(ハザード比1.11、95%信頼区間0.87~1.42)と同等であった32)(レベル2)。頭蓋内出血の発現率は、ワルファリンで1.6%/年、リバーロキサバンで0.8%/年であり、上部消化管出血の発現率は、ワルファリンで1.9%/年、リバーロキサバンで0.9%/年であり、リバーロキサバンで少なかった32)。しかし、75歳以上、あるいは体重

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119脳卒中治療ガイドライン 2015[追補 2017]

脳梗塞・TIA

〔 59 〕

アピキサバン2.5mg× 2 回/日が1.4%、アピキサバン 5 mg× 2 回/日が1.4%、ワルファリンが5.3%であり、日本人におけるアピキサバンの両用量の安全性が確認された43)

(レベル2)。ビタミンK拮抗薬不適応例において、アピキサバンの

有効性および安全性をアスピリンと比較検討したApixaban versus Acetylsalicylic Acid to Prevent Stroke in Atrial Fibrillation Patients who Have Failed or are Unsuitable for Vitamin K Antagonist Treatment

(AVERROES)試験では、アピキサバンはアスピリンに比べ重大なあるいは臨床的に問題となる出血(頭蓋内出血を含む)を増加させずに脳卒中または全身性塞栓症の発現を有意に減少させた44)(レベル2)。5.エドキサバン

CHADS2スコア 2 点以上のNVAFを対象に血栓塞栓症予防についてワルファリンに対するエドキサバン 2 用量

(30mgま た は60mg× 1 回/日 )の 非 劣 性 を 検 討 し たEffective Anticoagulation with Factor Xa Next Generation in Atrial Fibrillation-Thrombolysis in Myocardial Infarction 48(ENGAGE AF-TIMI48)試験では、主要評価項目である脳卒中および全身性塞栓症の発現率は、ワルファリンの1.50%/年に対し、エドキサバン60mg/日は1.18%/年(ハザード比0.79、95%信頼区間0.63~0.99)、エドキサバン30mg/日は1.61%/年(ハザード比1.07、95%信頼区間0.87~1.31)とエドキサバン両用量のワルファリンに対する非劣性が示された45、46)(レベル2)。本試験では、体重60kg以下、クレアチニンクリアランス30mL/分~50mL/分の中等度腎機能低下、およびP糖蛋白阻害作用を有する薬剤(ベラパミル、キニジン)併用例に対しては、エドキサバン60mg/日群は30mg/日へ、30mg/日群は15mg/日へ減量されていた。

このENGAGE AF-TIMI 48試験の事前(prespecified)サブ解析では、脳卒中やTIAの既往の有無、腎機能別(クレアチニンクリアランス80mL/分以上、50mL/分超~80mL/分未満、30mL/分以上~50mL/分以下、30mL/分未満)、体重別(60kg以下、60kg超)、年齢別(75歳未満、75歳以上)、および試験期間中のアスピリン併用の有無別について、解析した結果も、試験全体の結果とほぼ同様であった45、46)。

脳梗塞の発現率に関しては、ワルファリン1.25%/年に対し、エドキサバン60mg/日は1.25%/年(ハザード比1.00、95%信頼区間0.83~1.19)と同等であったが、エドキサバン30mg/日は1.77%/年(ハザード比1.41、95%信頼区間1.19~1.67)とワルファリンに比べ有意に増加した45、46)。安全性に関しては、大出血の発現率は、ワルファリンの3.43%/年に対し、エドキサバン60mg/日は2.75%/年(ハ

4.アピキサバンCHADS2スコア 1 点以上のNVAFを対象に血栓塞栓症

予防についてワルファリンに対するアピキサバンの非劣性を検討したApixaban for Reduction in Stroke and Other Thromboembolic Events in Atrial Fibrillation(ARISTOTLE)試験の中で、登録時に脳梗塞またはTIAの既往があった症例について検討したサブ解析では、脳卒中および全身性塞栓症の発現率は、ワルファリンの3.24%/年に対し、アピキサバンは2.46%/年(ハザード比0.76、95%信頼区間0.56~1.03)であり、ワルファリンと同等であった38)(レベル3)。また、脳梗塞の発現率についてもワルファリンと同等であった。一方、頭蓋内出血の発現率についてはワルファリンの1.49%/年に対し、アピキサバンは0.55%年(ハザード比0.37、95%信頼区間0.21~0.67)であり、アピキサバンで有意に抑制されていた38)(レベル3)。以上の結果から脳梗塞再発予防において、アピキサバンはワルファリンと効果は同等であり、かつ頭蓋内出血は有意に少なく、ワルファリンの代替薬になることが確認された。

腎機能の程度別に検討したARISTOTLE試験のサブ解析では、腎機能の程度にかかわらずアピキサバンはワルファリンに比べて脳卒中または全身性塞栓症の発症予防および死亡率、重大なあるいは臨床的に問題となる出血の発現を減少させた39)。また、アピキサバンの大出血の相対リスク減少はクレアチニンクリアランス50mL/分以下の群で最も大きかった39)(レベル3)。

また、年齢別(65歳未満、65歳~75歳、75歳以上)に検討したARISTOTLE試験のサブ解析では、各年齢層においてアピキサバンのワルファリンと比較した有効性や安全性は一貫していたが、特に65歳以上の高齢者でアピキサバンの有効性と安全性が明らかであった40)(レベル3)。

インドを除く東アジアと非アジア地域の成績を比較したARISTOTLE試験のサブ解析では、アピキサバンの有効性は両地域で一貫していたが、重大なあるいは臨床的に問題となる出血の発現率は東アジアで非アジア地域に比し、より明らかにアピキサバン群ではワルファリン群と比較して低かった41)(レベル3)。

アスピリンの併用の有無別について検討したARISTOTLE試験のサブ解析では、アピキサバンはアスピリンの併用の有無にかかわらず、ワルファリンに比べ脳卒中または全身性塞栓症や、重大なあるいは臨床的に問題となる出血の発現を減少させた42)(レベル3)。

日本人におけるアピキサバンの 2 つの用量(2.5mg× 2回/日、5 mg× 2 回/日)の安全性をワルファリンと比較検討したARISTOTLE-J試験(phaseⅡ試験)では、重大な大出血および重大ではないが臨床的に問題となる出血は

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120 〔 60 〕

研究で、脳梗塞またはTIA発症2週間以内にダビガトランまたはリバーロキサバンが開始された41例のなかで新たな出血性梗塞または出血性病変が拡大した症例は12例

(29%)あったが、症候性出血性病変はなかった49)(レベル4)。

現在、日本においてNVAF患者の脳梗塞急性期/TIAにおける発症早期からのリバーロキサバン開始の安全性と有効性を検討するRecurrent Embolism Lessened by rivaroxaban, an Anti-Xa against of Early Dosing for acute ischemic stroke and transient ischemic attack with atrial fibrillation Study(RELAXED)試験が進行中である。8.抗凝固療法の中止・休薬

わが国の歯科三学会合同の「科学的根拠に基づく抗血栓療法患者の抜歯に関するガイドライン 2010年版」50)

や、2012年に改訂された日本消化器内視鏡学会の「抗血栓薬服用者に対する消化器内視鏡診療ガイドライン」51)

によると、出血時の対処が容易な処置・小手術(抜歯、白内障手術など)の施行時は、ダビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバン、エドキサバンあるいは至適治療域にINRをコントロールしたワルファリンの内服続行が望ましい(レベル4)。出血低危険度の消化器内視鏡では、抗凝固薬は休薬なく施行して良いとされているが、ワルファリンの場合は、INRが通常の治療域であることを確認する必要がある(レベル4)。出血高危険度の消化器内視鏡治療の場合は、ワルファリン内服者では至適治療域にINRをコントロールしたワルファリン継続下あるいはNVAFの場合にはNOACへの一時的変更を考慮し、NOAC内服者では前日朝まで内服を継続し、処置当日の内服を中止する。処置はトラフ期に行い、内服は、出血がないことを確認して翌日朝から再開する(レベル4)。ワルファリン内服中のNVAF患者における、待機的手術または待機的な侵襲的処置に伴う、周術期のワルファリンから低分子ヘパリン皮下注射への置換と一時併用(橋渡し療法)は、虚血性脳卒中、全身性塞栓症の発症防止に有効とはいえず、非致死的な大出血が増加したとの報告があり注意を要する(レベル2)追2)。その他詳細は上記ガイドラインを参照してほしい。その記述の科学的根拠のレベルはかなり低いが、抗凝固薬の不用意な中止による血栓塞栓症のリスクを回避することが臨床的に有用と判断されている。

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なお上記RCTでは、登録時に脳卒中ないしTIAの既往症例が、各治療群で28.1~28.5%含まれていたが、この既往症例についての詳細なサブ解析は、2014年10月時点ではまだ発表されていない。6.非ビタミンK阻害経口抗凝固薬(NOAC)のメタアナ

リシスと各薬剤の比較RE-LY、ROCKET AF、ARISTOTLEの各試験の中で、

試験登録時に脳卒中またはTIAの既往があった症例を対象に検討したメタアナリシスでは、NOACはワルファリンに比べ、脳卒中または全身性塞栓症(オッズ比0.85、95%信頼区間0.74~0.99)、出血性脳卒中(オッズ比0.44、95%信頼区間0.32~0.62)を有意に減少させ、脳梗塞はワルファリンと同等であった(オッズ比1.03、95%信頼区間0.87~1.21)47)(レベル1)。安全性に関しては、大出血

(オッズ比0.86、95%信頼区間0.75~0.99)を有意に減少させたが、これは主に頭蓋内出血の発現抑制によるものであった(オッズ比0.47、95%信頼区間0.36~0.62)47)(レベル1)。

NOACのRCTを頭蓋内出血に関して検討したメタアナリシスでは、NOACは対照薬(ワルファリンまたはアスピリン)に比べ、有意に頭蓋内出血を抑制し(オッズ比0.49、95%信頼区間0.36~0.65)、その効果はダビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバンの各薬剤間において有意差はなかった48)(レベル1)。7.抗凝固薬の開始時期

ワルファリン治療開始の時期に関しては、高度のエビデンスはまだない。代表的なRCTであるEAFT試験では脳梗塞発症後 2 週間以内にワルファリン投与が開始されていた1)。虚血性脳卒中患者における発症14日以内のへパリンまたはアルガトロバンなど、主に注射用抗凝固薬による早期抗凝固療法の有効性と安全性を検証した複数の無作為介入試験のメタアナリシスでは、これらによる早期凝固療法によって虚血性脳卒中の再発、深部静脈血栓症、肺塞栓症の発症率を減少させたが、出血リスクは上昇した。これらの結果からは、虚血性脳卒中患者における発症14日以内の早期抗凝固療法のルーティン使用は支持されない追1)。

NOACの開始時期に関して、日本人における後方視的

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121脳卒中治療ガイドライン 2015[追補 2017]

脳梗塞・TIA

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122 〔 62 〕

stroke prevention in patients with atrial fibrillation from East Asia:a subanalysis of the Apixaban for Reduction in Stroke and Other Thromboembolic Events in Atrial Fibrillation

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140

Ⅲ 脳出血 

推 奨

〔 63 〕

1

1.高血圧症に対して降圧療法が強く勧められる(グレードA)。

2.大量飲酒者への節酒および喫煙者への禁煙継続の指導が勧められる(グレードB)。

3.抗血栓療法において虚血性疾患リスク低下と相反する脳出血合併増加を考慮した管理が勧められる(グレードB)。

報告された各血圧水準における発症率まで復した4)(レベル2)。高血圧症に対して、脳出血予防に降圧療法が強く推奨される。 高コレステロール血症に対して脂質低下薬スタチンを選択することによる脳出血の発症増加の危惧はないと示されている5、6)(レベル2)。しかし、140万人による臨床研究のメタアナリシスによると、総コレステロール値および low-density lipoprotein(LDL)コレステロール値が低い群ほど脳出血の発症リスクが高まる7)(レベル2)。なるほど脂質値低下による虚血性心血管疾患予防の利点と比べ脳出血リスクは低いが、脳出血の頻度を欧米諸国とは異なり無視できないわが国では、血中コレステロール値が低くなる食生活・基盤疾患・治療に注意を払うことが推奨される。糖尿病は脳梗塞および脳出血の発症を増やすと欧米主体のメタアナリシスで示されている8)(レベル2)。しかし、血糖管理による循環器大血管病予防を調べた個々の臨床研究およびそのメタアナリシスでは、厳格な血糖管理自体が脳卒中発症リスクを有意に軽減できなかった9)(レベル2)。また、欧米人とアジア人とは体格・肥満の程度および脳出血の発症率も異なる。比較的肥満度の低い日本人では脳内出血の発症率はBMI値に相応して増加する10)(レベル2)。しかし、肥満是正により脳出血発症が減ずるかどうかは検討されていない。以上から糖尿病や肥満症への保健指導や是正勧告が、脳出血予防においては有効である科学的根拠は十分ではない。 飲酒は、人種およびその摂取量により脳卒中発症のリスクが異なるが、欧米およびアジアからのコホート研究のメタアナリシスによると、脳梗塞に関しては適量が発症抑制に働くが、脳出血はアルコール摂取量増加に伴い直線的にリスクが増す11)(レベル2)。過剰な飲酒は脳出血予防の面からも控えるよう勧告することが推奨され

脳出血の予防

脳出血の予防

◉エビデンス 全ての病型の脳卒中発症の危険因子のうち、脳出血発症への寄与があると思われる危険因子として、高血圧や高い塩分摂取量、血中コレステロール値異常や糖尿病、低い身体活動や肥満、喫煙や飲酒、緑茶や珈琲等の嗜好、食生活として果物や野菜摂取量や飽和・不飽和脂肪酸摂取量、抗血栓薬服用に対して検討した。コホート研究やランダム化介入研究、そのシステマティックレビューとメタアナリシスを渉猟し、統計学的に有意に脳出血発症予防が得られた修正可能な因子について記載した。脳卒中治療ガイドライン2009で記載された推奨項目のうち果物野菜摂取励行に関しては、選択したメタアナリシスにおいて具体的な摂取量が記載できず、今回推奨グレードがC1となり削除した。また、摂取塩分量適正化、糖尿病への血糖是正治療、運動推進や適正体重維持、禁煙およびその継続、脂肪酸摂取指導に関して行うことは虚血性疾患予防に関しては有用であるが、脳出血予防においては科学的根拠が十分ではないグレードC1となった。また、高血圧、脂質異常症、抗血栓薬療法における推奨根拠は、前回ガイドライン作成後報告された新しい研究を含んだシステマティックレビューとメタアナリシス研究へと変更した。 わが国での脳卒中および脳出血罹患において高血圧症の集団寄与割合はそれぞれ52%、76%に達し、高血圧は脳卒中とりわけ脳出血の最大の危険因子と言える1)(レベル2)。わが国のコホート研究からも血圧水準と脳卒中発症との間には段階的かつ連続的な正の相関があり、特に脳出血の発症や死亡率においてこの傾向は強い2、3)(レベル2)。高血圧治療のメタアナリシスによると収縮期血圧10mmHg拡張期血圧 5 mmHgの低下で脳卒中発症の相対リスクが41%低下し、その降圧達成度により疫学調査で

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141脳卒中治療ガイドライン 2015[追補 2017]

脳出血

〔 64 〕

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る。喫煙習慣は癌・心血管病発症の最大寄与因子であるが、わが国の大規模コホート研究によると喫煙者の脳卒中発症リスクは増加し、男性では脳出血発症の危険因子である。また、10年以上の禁煙継続は有意な脳卒中発症抑制を観察し得た12)(レベル2)。喫煙率が高いわが国での禁煙介入試験の報告はないが、禁煙推進と長期間の禁煙継続指導が脳出血発症数抑制に有効と判断したため推奨グレードBとして今回追記する。 虚血性心疾患・非心原性脳梗塞等一次予防のための抗血小板療法のメタアナリシスによると、抗血小板薬間での脳出血発症の有意な差は示されず、単剤療法と比較し2 剤併用療法は脳出血発症リスクが高い傾向があるが脳卒中全体の発症リスクの有意な低下が得られたと示されている13)(レベル2)。穿通枝脳梗塞既往患者における抗血小板薬単剤または 2 剤併用療法中の高血圧に関しては、収縮期血圧130mmHg以下をめざす厳格な降圧療法は、脳卒中発症リスクを有意に変えずに脳出血発症を軽減させる14)(レベル3)。抗血小板療法中において厳格な降圧療法の有用性を示す。また、心房細動における塞栓症予防のための抗凝固療法のメタアナリシスにおいて、ワルファリンと比較して非ビタミンK阻害経口抗凝固薬

(Non-vitamin K antagonist oral anticoagulant:NOAC)は脳出血の発症率が有意に減少する優位性を示している15、追1、追2)(レベル1)。適正血圧管理のもと、脳出血リスクと比較して得られる抗血栓塞栓症効果の総合的な有用性が得られる抗血栓療法が推奨される。

[引用文献]

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143脳卒中治療ガイドライン 2015[追補 2017]

Ⅲ 脳出血 

推 奨

脳出血

〔 65 〕

2

1.脳出血急性期の血圧は、できるだけ早期に収縮期血圧140mmHg未満に降下させ、7日間維持することを考慮しても良い(グレードC1)。

2.脳出血急性期に用いる降圧薬としては、カルシウム拮抗薬あるいは硝酸薬の微量点滴静注が勧められる(グレードB)。カルシウム拮抗薬のうち、ニカルジピンを適切に用いた降圧療法を考慮しても良い(グレードC1)。可能であれば、早期にカルシウム拮抗薬、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)、利尿薬を用いた経口治療へ切り替えることを考慮しても良い(グレードC1)。

2-2 血圧の管理

高血圧性脳出血の急性期治療

◉エビデンス 2013年に発表されたThe Second Intensive Blood Pressure Reduction in Acute Cerebral Hemorrhage Trial(INTERACT2試験)では、2,839例の脳出血急性期の患者を強化治療群

(割りつけ後 1 時間以内に目標収縮期血圧140mmHg未満に降下させ、7 日間維持する:n=1,399)と、標準治療群

(目標収縮期血圧180mmHg未満:n=1,430)とに無作為に割りつけたところ、主要評価項目である90日後の死亡+重大な機能障害に差はなかったものの、副次評価項目であるmodified Rankin Scale(mRS)の順序を考慮した機能転帰の解析は強化治療群で有意に良好であった。また、致死的でない重大事象の発生率に両群で差はなく、強化治療の安全性も示された1)(レベル2)。INTERACT2試験を含む 4 つの無作為化比較試験のシステマティックレビューでは、強化降圧群(収縮期血圧140mmHg未満または平均血圧110mmHg未満)は標準降圧群(収縮期血圧180mmHg未満または平均血圧130mmHg未満)と比較して、脳出血発症24時間後までの血腫増大は有意に抑制され、3 か月後の死亡+重大な機能障害も抑制される傾向を認めた追1)(レベル1)。 一方でAntihypertensive Treatment in Acute Cerebral HemorrhageⅡ(ATACH2)試験では、1,000例の脳出血急性期の患者を強化治療群(割り付け後24時間以内に収縮期血圧110〜139mmHgを達成し維持:n=500)と、標準治療群(割り付け後24時間以内に収縮期血圧140〜179 mmHgを達成し維持:n=500)とに無作為に割りつけて、ニカルジピン静注を第一選択薬として降圧したところ、主要評価項目である 3 か月後の死亡+重大な機能障害

(mRS 4〜6)に差はなく、副次評価項目である無作為化24時間後の血腫増大、24時間以内の神経機能の低下、72時間以内の重篤な有害事象、3 か月以内の死亡にも差を認めなかった追2)(レベル2)。 本邦からは、急性期脳出血のニカルジピン静注による収縮期血圧160mmHg以下への降圧療法に関する多施設共同前向き観察研究であるStroke Acute Management with Urgent Risk-Factor Assessment and Improvement-Intracerebral Hemorrhage(SAMURAI-ICH)研究が2012年に発表された。発症 3 時間以内のテント上脳出血患者211例を入院後24時間収縮期血圧120〜160mmHgにコントロールし、主要評価項目である発症72時間以内の神経症候増悪、24時間以内の重篤な有害事象および副次評価項目である24時間での血腫増大、3 か月後の機能転帰不良+死亡(mRS4以上)は、予測90%信頼区間の下限と同等もしくは未満で、この降圧療法の安全性が示された4)

(レベル3)。また2013年に発表されたサブ解析では、120〜160mmHgの降圧目標の中でも、最も厳格に血圧を低下させた群において、神経症候増悪、血腫増大、転帰不良の症例が少なかった5)(レベル3)。 降圧強化療法の安全性については前述の研究からも示されているが、Intracerebral Hemorrhage Acutely Decreasing Arterial Pressure Trial(ICH ADAPT試験)において、脳出血発症24時間未満の患者75人を降圧目標収縮期血圧150mmHg未満と180mmHg未満に無作為に割り付けCT還流画像を施行した結果、血腫周囲の脳血流量(CBF)に差はなかったとの報告もある6)(レベル2)。 高血圧治療のガイドライン2014(JSH2014)第 6 章にお

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いて、脳出血を合併する高血圧に関し、「発症24時間以内の超急性期、急性期、亜急性期では収縮期血圧180mmHgまたは平均血圧130mmHgを超える場合に降圧対象となる」とある。これは2010年版米国脳卒中協会のガイドライン7)に準じており、収縮期血圧140mmHg以下の降圧の有効性についてはさらなる検証を要するとしている。本ガイドラインにおいては、前述の最近発表された各試験において、140mmHg以下への降圧強化が死亡や重大な機能障害を増加させなかったこと、有害事象を増加させずに機能転帰は改善させたことから、収縮期血圧140mmHg以下への降圧を推奨する。 脳卒中急性期に投与する降圧薬としては、カルシウム拮抗薬であるニカルジピン、ジルチアゼムや、硝酸薬であるニトログリセリン、ニトロプルシドの微量点滴静注が推奨される8)(レベル2)。 カルシウム拮抗薬に関して、これまで本邦ではニカルジピンは「頭蓋内出血で止血が完成していないと推定される患者、脳卒中急性期で頭蓋内圧が亢進している患者」には使用禁忌とされていた。しかし日本脳卒中学会、日本脳神経外科学会、日本高血圧学会が共同で、全国アンケート調査の結果などを厚生労働省に提出し添付文書の改定を要望し9)、2011年 6 月の添付文書改定において禁忌項目からこの内容が削除された(慎重投与に変更および警告記載あり)。前述のSAMURAI-ICH研究やATACH試験においても、ニカルジピンの安全性が示されている

(レベル3)。 硝酸薬は脳血管を拡張し脳血流量を増加させることが知られており10)脳圧を亢進させると考えられるが、臨床的に転帰に影響したという報告はなく11)(レベル3)、脳血流に及ぼす影響はカルシウム拮抗薬と同等であった12)

(レベル3)と報告されている。 なお可能であれば、点滴治療から早期に経口治療に切り替えることを考慮する。その降圧薬としては、カルシウム拮抗薬、ACE阻害薬、ARB、利尿薬が推奨される8)(レベル2)。

[引用文献]

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155脳卒中治療ガイドライン 2015[追補 2017]

Ⅲ 脳出血 

 

 

推 奨

脳出血

〔 67 〕

高血圧性脳出血の手術適応5

1.脳出血の部位に関係なく、血腫量10mL未満の小出血または神経学的所見が軽度な症例は手術を行わないよう勧められる(グレードD)。また、意識レベルが深昏睡(Japan Coma Scale:JCSで300)の症例に対する血腫除去は科学的根拠がない(グレードC2)。

2.被殻出血:神経学的所見が中等症、血腫量が31mL以上でかつ血腫による圧迫所見が高度な被殻出血では手術の適応を考慮しても良い(グレードC1)。特に、JCSで20~30程度の意識障害を伴う場合は、定位的脳内血腫除去術が勧められ(グレードB)、開頭血腫除去術を考慮しても良い(グレードC1)。

3.視床出血:急性期の治療としての血腫除去術は、科学的根拠がないので勧められない(グレードC2)。血腫の脳室内穿破を伴う場合、脳室拡大の強いものには脳室ドレナージ術を考慮しても良い(グレードC1)。

4.皮質下出血:脳表からの深さが1cm以下のものでは、特に手術の適応を考慮しても良い(グレードC1)。

5.小脳出血:最大径が3cm以上の小脳出血で神経学的症候が増悪している場合、または小脳出血が脳幹を圧迫し脳室閉塞による水頭症を来たしている場合には、手術を考慮する(グレードC1)。

6.脳幹出血:急性期の脳幹出血例に血腫除去を勧めるだけの根拠はないので、勧められない(グレードC2)。脳幹出血のうち脳室内穿破が主体で、脳室拡大の強いものは、脳室ドレナージ術を考慮しても良い(グレードC1)。

7.成人の脳室内出血:脳血管の異常による可能性が高く、血管撮影などにて出血源を検索することが望ましい(グレードC1)。急性水頭症が疑われるものは脳室ドレナージを考慮する(グレードC1)。血腫除去を目的とする血栓溶解薬の投与を考慮しても良い(グレードC1)。

8.脳内出血あるいは脳室内出血の外科的治療に関しては、神経内視鏡手術あるいは定位的血腫除去術を考慮しても良い(グレードC1)。

開頭手術、神経内視鏡手術

◉エビデンス1.脳内出血に対する外科治療の適応

脳出血急性期の早期手術の有用性を検討した初めての大規模、国際多施設randomized controlled trial(RCT)

(Early Surgery versus Initial Conservative Treatment in Patients with Spontaneous Supratentorial Lobar Intracerebral Haematomas:STICH)1)では、テント上脳内出血(最小径≧ 2 cmかつGlasgow Coma Scale(GCS)≧ 5 )に対する早期手術治療と初期保存的治療では、その結果に差は認められなかった(レベル2)。2010年のAmerican Heart Association(AHA)/American Stroke Association

(ASA)のガイドライン2)では、推奨文として「脳内出血に対する手術の有用性は不明確である」と記載された。例外として小脳出血(神経学的増悪、脳幹を圧迫、水頭症の合併)、脳葉血腫(≧30mL、脳表から≦ 1 cm)があげられた。しかしながら、テント上脳内出血に関するコクランレビュー第 2 版3)は、外科治療は死亡あるいは介助が必要な状態を有意に減少させると報告した(レベル1)。2010年までに14のRCTが報告されているが、Gregsonらはこのうち8 trial1、4-10)からの個別データを用いたメタアナリシスを行った11)。発症から 8 時間以内の早期手術施行、血腫量20〜49mL、GCS≧ 9 、年齢が50〜69歳の患者

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156 〔 68 〕

慶応脳血管障害共同研究グループ(外科治療141例中96例が開頭血腫除去術)23)(レベル4)の報告があり、血腫が大きく(>31mL)、圧迫症状がみられる患者では手術の効果を示唆するものもある。

視床出血について慶応脳血管障害共同研究グループによる556例についての大規模な検討では、手術治療は重症例における救命効果しかなく機能転帰を改善しなかった。また、外科治療を行った29例のうち開頭血腫除去術は 1 例のみであった24)(レベル4)。この報告では脳室内に穿破した症例に対する脳室ドレナージの有効性についても検討されているが、脳室ドレナージは重症例の生命に関する転帰を改善したが機能転帰は改善しなかった。

小脳出血についてはvan Loonら25)(レベル4)、Da Pianら26)(レベル4)、Koziarskiら27)(レベル4)、Mathewら28)(レベル4)、横手ら29)(レベル4)、慶応脳血管障害共同研究グループ30)(レベル4)、Moriokaら31)(レベル4)、Kirollosら32)(レベル4)などの報告があり、血腫の大きいもの(最大径 3 cm以上)で進行性のもの、脳幹を圧迫し水頭症をきたしているものは、手術適応があるとする点で一致していた。前述のAHA/ASAのガイドライン2)では、神経学的増悪、あるいは水頭症の有無にかかわらず脳幹の圧迫がある場合は、可及的早期に手術による血腫除去を勧めている。

脳幹出血においては、手術治療の無効性が確認されている26、33)(レベル4)。3.神経内視鏡手術、他の低侵襲手術

今後の可能性が期待される低侵襲手術(minimally invasive surgery:MIS)であるが、これらには、定位的血腫除去18)(レベル2)、内視鏡下血腫除去術4)(レベル2)34、35)

(レベル4)、MRI-guided Stereotactic Aspiration36)(レベル4)、超音波誘導定位脳手術37、38)(レベル5)、頭蓋内圧モニタリングの併用39)(レベル5)、ナビゲーションの使用40、41)(レベル4)がある。

Auerらは皮質下出血、被殻出血、視床出血について内視鏡的な血腫除去術と内科的治療をRCT比較し、皮質下出血についてのみ手術治療による転帰の改善を認めている4)(レベル2)。その後も神経内視鏡手術に関しては、基底核出血42)(レベル4)、脳室内出血における脳室ドレナージに対する優位性43-45)(レベル4)が示された。日本においても、被殻出血35、46)(レベル4)、小脳出血35、47)(レベル4)、皮質下出血35)(レベル4)、脳室内出血48)(レベル4)における内視鏡手術の有効性が報告された。

10mL以上のテント上脳出血に対して、72時間以内の定位的脳内血腫除去と術後血腫腔内ウロキナーゼ投与を組み合わせた手術治療の有用性を評価した Stereotactic-treatment of ICH by Means of a Plasminogen Activator

グループでは、外科治療の効果に有意差を認めた(レベル2)。STICHにおいて良好な転帰をとる傾向にあった患者群[血腫が脳表から 1 cm以内、血腫量10〜100cc、発症48時間以内、GCS(best motor score≧5 or 6、best eye score≧ 2 )]を対象に行った、RCT(STICH Ⅱ)12)においては、早期手術群と初期保存的治療群の結果に差を認めなかった(レベル2)。STICHにおいては、初期保存的治療に振り分けられた530例中140例(26%)に対して、神経症候増悪や再出血などの理由で手術が行われており、STICH Ⅱでは初期保存的加療群に振り分けられた291例中62例(21%)に対して外科治療(21%)が行われた。いずれの試験においてもintention to treat(ITT)解析であることを考慮して解析結果を理解する必要がある。Prasadらはコクランレビューにおいて、「適応のある全ての患者に早期手術を行うという方針」と「神経学的に増悪した場合にのみ手術を行うという方針」には統計学的有意差がないということが、STICHに関する合理的な解釈であろうと述べている3)。STICH Ⅱとそれまでに報告された14RCT1、4-10、13-18)によるメタアナリシス12)では外科治療の有効性を認めたが、異なる患者グループや手術方法のための不均一性は否定できなかった。すでに報告された患者個別データを用いたメタアナリシス11)にSTICH Ⅱのデータを加えたサブ解析14)では、脳室内出血を合併しない脳葉出血における手術の有効性を認めなかった。これらのメタアナリシスの解釈として、脳内出血に対して外科治療の果たす役割はあるが、どの患者グループに有効であるかという点が不明確であるといえる12)。2.開頭手術

前述のSTICHにおける早期手術群の外科治療は75%が開頭手術であった。また、初期保存的治療群に対して行われた外科治療のうち85%が開頭手術であった1)。同様にSTICHⅡにおける外科的治療は早期手術群の99%、初期保存的加療群の95%が開頭手術であった12)。

被殻出血について、Pantazisら13)は、血腫量30mL以上の皮質下出血および被殻出血に対する発症 8 時間以内の急性期開頭血腫除手術の有用性について、内科的治療群とのRCTを行い、手術群において 1 年後の機能転帰の有意な改善を示した(レベル2)。Batjerら15)(レベル2)は被殻出血についてのみRCTを施行したが、手術による転帰の改善は認めなかった。本邦では、1990年に金谷を中心に全国的に施行された合計7,010例の集計19)(レベル4)があり、発症 3 か月後の死亡率、機能転帰が比較された。被殻出血の手術療法は、重症例の救命を目的とする時にのみ有用であることが示された。他にもWagaら20)(レベル4)、Fujitsuら21)(レベル4)、Niizumaら22)(レベル4)、

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157脳卒中治療ガイドライン 2015[追補 2017]

脳出血

〔 69 〕

を示していることを記載している。その後Zhouらは、テント上脳出血におけるMISが、内科治療や開頭術に対してより有効であることを検証するために、12RCT4、7、9、10、17、18、66-65)、1,995例を対象にメタアナリシスを行った66)。MISはフォローアップ終了時点の死亡あるいは要介護を減少させた

(レベル1)。MISの有効性が示唆されたが、20〜80歳、GCS ≥ 9、血腫量25〜40m、発症から72時間以内の治療開始といった患者グループが最も良い適応であった。神経内視鏡と定位的血腫吸引術の比較はされていない。

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2010年時点でのMISに対するAHA/ASAガイドラインの見解は、「脳内出血の外科治療の適応が不明確な現状では、その方法に関してはより確固たるものはない」であった。しかしながら、皮質下血腫に対する、血栓溶解を加えた血腫吸引法や7、10)(レベル2)、神経内視鏡を用いた血腫吸引法4、61)(レベル2)35)(レベル4)の報告があり、早期手術例においては血腫除去率の増加や死亡率の低下

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160

 

 

Ⅲ 脳出血 

推 奨

〔 72 〕

6

1.脳動静脈奇形に対して手術、定位放射線治療、塞栓術などの外科的治療を考慮しても良い(グレードC1)。

2.脳動静脈奇形からの脳出血例は再出血が多く、特に深部局在、深部静脈への流出、脳動脈瘤の合併例では再発の危険性が高いため、外科的治療を考慮しても良い(グレードC1)。

3.Spetzler-Martin分類(表)のgrade 1および2では外科的切除を考慮しても良い(グレードC1)。Spetzler-Martin分類 grade 3では外科的手術または塞栓術後外科的手術の併用を考慮しても良い(グレードC1)。Spetzler-Martin分類 grade 4および5では、出血例、動脈瘤合併例、症状が進行性に悪化する例以外は保存療法を考慮しても良い(グレードC1)。

4.病巣部位や流入血管の状況、合併症の有無などにより外科的手術の危険性が高く病巣が小さい場合(10mL以下または最大径3cm以下)は定位放射線治療を考慮しても良い(グレードC1)。

5.痙攣をともなった脳動静脈奇形では、てんかん発作を軽減するため外科的手術のみならず、定位放射線治療を含めた積極的治療を考慮しても良い(グレードC1)。

6-1 脳動静脈奇形

高血圧以外の原因による脳出血の治療

◉エビデンス1.自然歴

脳動静脈奇形の自然発生は12.4人/100万人/年で、うち70%は出血発症で58%は脳内出血発症であった1)(レベル3)。スコットランドでの成人(16歳以上)の調査では1.12人/10万人/年であった2)(レベル3)。脳動静脈奇形の

自然歴を報告した 9 論文(うち 3 論文は本邦からの報告)のメタアナリシスでは、脳動静脈奇形の未出血例の年間出血率は2.2%で、出血例では4.5%、全体では3.0%であった3)(レベル1)。米国 4 施設のメタアナリシスでは、未出血例の年間出血率は1.3%で、出血例では4.8%、全体では2.3%であった追1)(レベル1)。本邦における集計では脳動

表 脳動静脈奇形に関するSpetzler-Martin分類(1986)

特 徴 点 数

大きさ

小(< 3 cm) 1

中( 3〜 6 cm) 2

大(> 6 cm) 3

周囲脳の機能的重要性重要でない(non-eloquent) 0

重要である(eloquent) 1

導出静脈の型表在性のみ 0

深在性 1

大きさ、周囲脳の機能的重要性、導出静脈の型の点数の合計点数をgradeとする。重症度(grade)=(大きさ)+(機能的重要性)+(導出静脈の型)

=(1、2、3)+(0、1)+(0、1)Spetzler RF, Martin NA. A proposed grading system for arteriovenous malformations. J Neurosurg 1986;65:476-483.

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161脳卒中治療ガイドライン 2015[追補 2017]

脳出血

〔 73 〕

脈瘤のみ手術する9)(レベル4)。出血急性期の血腫除去および脳動静脈奇形の外科的切除術は手術成績が良好であり、画像上脳ヘルニアの危険の高い重症例でも出血急性期の積極的手術が勧められる24)(レベル4)。手術後のmodified Rankin Scale(mRS)は非出血群のほうが出血群に比し良好である(1.44 vs. 1.90)25)(レベル4)。術後脳動静脈奇形残存群と未治療群では、年間出血率に差はないとする報告26)(レベル4)と、部分的治療を行った場合は未治療に比べて成績不良という報告がある9、27)(レベル4)。脳幹部動静脈奇形(特に中脳背側、小脳橋角部の軟膜下、軟膜外)の出血例に対する外科的手術は有効である28)(レベル4)。5.定位放射線治療

定位放射線治療での完全閉塞率は、脳動静脈奇形のサイズあるいは容積と放射線量に依存する。容積が小さいほど完全閉塞率が高く、4 mL未満では76〜88%、4 〜10mLでは52〜74%とされている17、29、30)(レベル4)。ガンマナイフ単独による治療の限界は10cm3である30)(レベル4)。治療後閉塞するまでの潜伏期における年間出血率は1.8〜5.0%で治療前と有意差はない17、31、32)(レベル4)とする報告と、出血発症例では潜伏期でも出血のリスクは治療前と比較して65%減少するが、脳動静脈奇形が消失してもわずかながら出血の可能性は残る33)(レベル4)とする報告がある。定位放射線治療後の出血の危険因子として、出血の既往、脳動静脈奇形が未消失、高血圧の既往、脳動脈瘤の合併がある34)(レベル4)。定位放射線治療後の副作用として、遅発性放射線障害によるMRI変化が24〜38.2%に、神経症候が4.4%〜9.9%に認められ、そのうち永続性は0.9〜2.1%で29、35)(レベル4)、脳幹部や基底核周辺(中脳、視床、基底核、脳室周囲、脳梁)は合併症率が高いとされている36)(レベル4)。遅発性嚢胞形成は5年以上経過観察した例の23%に認められた37)(レベル4)。定位放射線治療後の良好な転帰(脳動静脈奇形消失、治療後出血なし、永続的な放射線関連症状なし)は、脳動静脈奇形の小容積、non-eloquent局在、出血の未既往などが有意に相関し、これらを要素としたグレーディングスケールは良好な転帰の達成率と相関した35)(レベル4)。6.塞栓術

塞栓術単独での完全消失率は6〜40%とされ38-40)(レベル4)41)(レベル3)、外科的手術または定位放射線治療前の栄養血管閉塞またはナイダスの体積減少を目的として行われている42、43)(レベル4)。Onyx(本邦では塞栓術単独では保険適用外)を用いるとより高い塞栓率が得られ、塞栓術単独での完全消失率が50%を超えたとする海外の報告がある44)(レベル4)。塞栓術に関連する合併症率は一過性を含めると患者あたり9.5〜14%で、そのうち永続

静脈奇形の破裂は全出血性脳卒中の 1 〜 2 %を占めていた4)(レベル2)。出血例での年間出血率の経時的推移は、出血後の最初の 1 年は 6 〜32.9%5-7)(レベル4)と高く、その後年々低下し、5 年以後は1.72〜2.2%であった6、8)(レベル4)。Spetzler-Martin分類 grade 4、5の年間出血率は1.1%と低いとされていたが9)(レベル3)、10.4%という高い報告もある10)(レベル4)。システマティックレビューの結果、脳動静脈奇形患者の年間死亡率は0.68%と報告されている11)(レベル1)。2.出血の危険因子

メタアナリシスの結果、出血の既往(ハザード比3.2)、脳深部局在(ハザード比2.4)、深部静脈のみへの流出(ハザード比2.4)、脳動脈瘤の合併(ハザード比1.8)が統計学的に有意な出血の危険因子として報告されている3)(レベル1)。別のメタアナリシスの結果では、出血の既往(ハザード比3.9)および高齢(ハザード比1.34/10歳)が出血の独立した危険因子であった追1)(レベル1)。女性3)(レベル2)、深部静脈への流出3)(レベル2)5)(レベル3)、穿通枝領域12、13)(レベル4)、流出静脈狭窄14)(レベル4)なども危険因子として指摘されている。出血の危険因子としては、小児、女性、深部局在で出血率が高い6)(レベル4)とする報告と、初回出血率は小児に高い傾向があるが、再出血の頻度は成人と小児で差がないとする報告がある(10年間の年間平均出血率:小児2.0%、成人2.2%)15)(レベル4)。出血の少ない因子としては二つ以上の主幹動脈境界部の局在がある16)(レベル4)。3.動脈瘤の合併例

脳動脈瘤を伴った脳動静脈奇形は出血発症が多い12、13)

(レベル4)。動脈瘤の存在は定位放射線治療後の出血の危険を 4 〜 8 倍高くするので、定位放射線治療前に処置すべきという報告17、18)(レベル4)と、ナイダス内動脈瘤は出血の危険因子となるが、流入動脈近位部動脈瘤は出血の危険が少なく、ナイダス閉塞により50%以上の自然退縮を30%に認めたとする報告19)(レベル4)がある。 4.外科的手術

外科的切除術による神経学的後遺症発生率はSpetzler- Martin分類のgrade 1は 0 〜8%、grade 2は 5 〜36%、grade 3は16〜32%、grade 4は21.9〜65%、grade 5は16.7〜33%、死亡率は 0 〜 3 %とする報告が多く、gradeの高いもの、機能的に重要な部位にあるもの、大きな脳動静脈奇形、深部静脈への流出などで術後の障害や合併症が多い20-22)(レベル4)。機能的に重要な部位や脳深部局在例、Spetzler-Martin分類 grade 4ないし5の症例でも、出血例や症状悪化例には手術が勧められると報告されている23)(レベル4)。

Spetzler-Martin分類 grade 4、5の動脈瘤合併例では動

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162 〔 74 〕

9.治療適応と治療法の選択脳動静脈奇形の完全消失率は、手術単独群82%、塞栓

術単独群 6 %、定位放射線治療単独群83%、塞栓術+手術群100%、塞栓術+定位放射線治療群90%であった。塞栓術は消失率を向上させるが、死亡率3%は塞栓術に関連していた38)(レベル4)。142のコホートを含む137の観察研究をシステマティックレビューした結果、治療による消失率は手術で96%、定位放射線治療で38%、塞栓術で13%であり、一方、永続的な神経脱落症状や死亡を招く合併症は手術で7.4%、定位放射線治療で5.1%、塞栓術で6.6%に生じており、いずれの治療法にも不完全な治療効果と重大なリスクが存在する11)(レベル1)。

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(NBCA)を用いた塞栓術では 3 分の 2 以下の閉塞率で出血を抑制する効果はなく、塞栓術後出血の危険因子は出血発症と低閉塞率であった47)(レベル4)。NBCAによるPartial Targeted Embolization Treatment(PTET)は、治療前と比較して31%年間出血率を減少させ、治療開始 2年後には自然歴より出血率の減少を認めた48)(レベル4)。大きなあるいはSpetzler-Martin分類gradeの高い脳動静脈奇形において、塞栓術と外科的摘出術の組み合わせが完全摘出率を上昇させ42)(レベル4)、後の神経学的脱落症候を減少させた49)(レベル4)。外科的摘出術の術前塞栓物質としてNBCAとOnyxをランダム化して比較した結果、50%以上閉塞の達成率、摘出術中の出血量、手術時間、合併症率において同等であった50)(レベル2)。7.てんかん

天幕上の脳動静脈奇形の30%に痙攣が認められ、それらの18%は難治性であった。痙攣を伴いやすい危険因子としては出血の既往(レラティブリスク[RR]6.65)、男性(RR 2.07)、前頭側頭葉局在(RR 6.65)であった51)(レベル3)。痙攣を伴う脳動静脈奇形の外科手術後の痙攣コントロールは良好で、70〜80%で痙攣は消失した51)(レベル3)52)(レベル4)。特に、30歳以上および痙攣発症 1 年以内の手術施行例は成績良好であった52)(レベル4)。てんかん焦点を認める場合には焦点切除の追加が有効であった52)(レベル4)。痙攣発症例に対する定位放射線治療の報告では、51〜77%で発作消失を認め、転帰良好因子は小容積と治療前発作の低頻度、脳動静脈奇形の消失であった53、54)(レベル4)。Multimodality treatmentを行った痙攣発症141例の検討では転帰良好(free of disabling seizure)が66%で、転帰良好因子は短期病歴、出血に伴う痙攣、全般性痙攣発作、深部および後頭蓋窩病変、外科的摘出、脳動静脈奇形の完全消失であり、完全消失例においては治療法による有意差は認めなかった55)(レベル4)と報告されているが、新たに脳動静脈奇形が診断された成人229例を対象に、保存的治療群と何らかの治療が行われたmultimodality treatment群とでてんかん発作の出現を前向きに追跡したところ、5 年間の発作出現リスクは出血発症例、てんかん発症例ともに保存群と治療群で差がなく(26% vs. 35%、72% vs. 67%)、てんかん発症例における2年間の発作消失達成率にも差はみられなかった(57% vs. 52%)56)(レベル3)。8.小児例

小児例では出血発症の頻度が高く再発例も認められるが、外科的手術、塞栓術、定位放射線治療により成人例と同様な転帰が期待される57-59)(レベル4)。

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163脳卒中治療ガイドライン 2015[追補 2017]

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173脳卒中治療ガイドライン 2015[追補 2017]

Ⅲ 脳出血 

 

 

推 奨

脳出血

〔 77 〕

6

1.抗血栓療法中に合併した脳出血では、原則として抗血栓薬を中止する。ワルファリン内服中の場合は、血液製剤を用いて可能な限り速やかにprothrombin time-international normalized ratio(PT-INR)を1.35以下に正常化することが勧められるが(グレードB)、ビタミンKの併用については考慮しても良い(グレードC1)。血液製剤としては、新鮮凍結血漿(FFP)よりもプロトロンビン複合体(第Ⅸ因子複合体)(保険適用外)の使用を考慮しても良い(グレードC1)。非ビタミンK阻害経口抗凝固薬(Non-vitamin K antagonist oral anticoagulant:NOAC)に関しては、内服後早期の場合には経口活性炭による除去やプロトロンビン複合体(保険適用外)の使用を考慮しても良い(グレードC1)。ダビガトランについて特異的中和剤であるイダルシズマブの使用を考慮しても良い(グレードC1)。

2.血栓溶解療法に合併した脳出血に対しては、血栓溶解薬や抗血栓薬を速やかに中止し、フィブリノゲンなどの凝固因子の低下やPT-INR、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)の延長に対して血液製剤やプロタミンなどを用いてこれらを正常化することを考慮しても良い(グレードC1)。外科的な血腫除去については、出血傾向の補正後に、機能転帰を考慮して慎重に適応を検討する(グレードC1)。

3.抗血栓療法中に合併した脳出血症例において、血栓症および塞栓症発症の危険性が高い場合には、止血完了後に抗血栓療法の再開を考慮しても良いが、再開のタイミングについては十分な科学的根拠がない(グレードC1)。

6-6 抗血栓療法に伴う脳出血

高血圧以外の原因による脳出血の治療

◉エビデンス海外の研究を主な対象としたシステマティックレ

ビューにおいて、抗血栓療法中の頭蓋内出血の発症率は、抗血小板療法(アスピリン、チクロピジン、クロピドグレル)では0.2〜0.3%/年であり1)(レベル1)、抗凝固療法(ワルファリン)では0.3〜1.2%/年である2、3)(レベル1)。動脈硬化の危険因子を多く有する患者を対象とした研究において、アスピリン単独と比較してクロピドグレルの併用は脳出血発症を増加させなかったが4)(レベル2)、虚血性脳血管障害患者を対象とした研究では、クロピドグレル単剤と比較してアスピリンの併用は脳出血の発症を1.9倍増加させた5)(レベル2)。システマティックレビューにおいても、虚血性脳卒中患者における抗血小板薬 2 剤の長期併用はクロピドグレル単剤と比較して頭蓋内出血発症を1.46倍増加させた6)(レベル1)。また、アスピリンとワルファリンの併用は、ワルファリン単独に比較して脳出血の発症頻度を2.6〜3.0倍増加させた7)(レベル2)。わが国の多施設共同前向き登録研究(Bleeding with

Antithrombotic Therapy:BAT研究)の結果では、抗血栓薬内服中の頭蓋内出血の発症頻度は、抗血小板薬単剤、抗血小板薬 2 剤併用、ワルファリン単独、ワルファリンと抗血小板薬併用のそれぞれにおいて0.34%/年、0.60%/年、0.62/年、0.96%/年であった8)(レベル3)。

非弁膜症性心房細動患者を対象にしたNOACの各臨床試験において、NOACに関連した頭蓋内出血の発症率はワルファリンと比較して有意に低かった(ワルファリンに対し、ダビガトラン150mg× 2 回/日は60%、ダビガトラン110mg× 2 回/日は70%、リバーロキサバン20mgまたは15mg× 1 回/日は29%、アピキサバン 5 mg× 2 回/日は49%、エドキサバン60mg× 1 回/日は45%、エドキサバン30mg× 1 回/日は66%の相対リスク減少が示されている)9-13)(レベル2~4)。また、日本人を含めたアジア人を対象としたサブ解析においても、ダビガトランはワルファリンと比較して頭蓋内出血の発症頻度は有意に低く14)(レベル3)、日本人のみを対象としたリバーロキサバンの臨床試験でも同様の傾向を認めた15)(レベル3)。

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174 〔 78 〕

ワルファリン同様NOACに関連した脳出血に対しても新鮮凍結血漿投与は推奨されておらず、PCCの有用性が示唆されている29)(レベル4)。ただし12人の健常男性を用いたランダム化試験においてPT、APTTなどの血液凝固検査で評価する限り、PCC 50 IU/kg(Cofact®、Sanquin Blood Supply)の投与はリバーロキサバン(20mg 2 回/日、2 日半内服)の効果抑制には有効であったが、ダビガトラン(150mg 2 回/日、2 日半内服)に対しては無効であったとする報告がみられる31)(レベル3)。

血栓溶解療法に伴う脳出血の頻度は、心筋梗塞で0.5〜1.1%、肺塞栓で1.6〜1.9%32-35)(レベル4)であったが、脳梗塞での頻度は症候性脳出血が3.3〜13%、無症候性出血を含めると12〜58%と高率であった36-40)(レベル2~4)。また、血栓溶解療法に脳出血を合併した際の急性期死亡率は33〜60%と高率であった35、37、41)(レベル4)。

血栓溶解療法に伴う脳出血の危険因子は、高齢(65〜75歳以上)、高血圧、糖尿病、低体重、脳血管障害の既往、MRI(拡散強調像)での広範囲脳虚血、脳アミロイドアンギオパチーの存在32、34-36、38、42)(レベル2~4)、National Institute of Health Stroke Scale(NIHSS)高値、early CT signs、抗血小板薬の使用(特に 2 剤併用)が報告されている43)(レベル4)。MRIにおけるmicrobleedsの存在は、血栓溶解に伴う脳内出血を増加させる傾向にあったが有意差は認められていない44)(レベル4)。腎機能障害に関しては、血栓溶解後の脳出血の頻度を増加させるという報告45-47)(レベル1~3)と増加させないという報告48)(レベル4)の両者を認めている。血栓溶解療法後の脳出血は早期に血腫拡大を来たしやすく、血腫拡大には収縮期血圧が関与する可能性がある49)(レベル4)。脳梗塞発症前のワルファリン内服は、PT-INR<1.7であれば、頭蓋内出血の発症リスクは増加せず(オッズ比1.2、95%信頼区間 0.7〜2.2)、機能転帰不良となるリスクも有意に低い(オッズ比0.6、95%信頼区間0.3〜0.9)とする報告50)(レベル3)がある一方で、PT-INR≦1.7であっても血栓溶解療法に起因する症候性頭蓋内出血のリスクが 2 〜4.1倍増加するという報告もみられており51、52)(レベル2~4)、一定の見解は得られていない。

心筋梗塞への血栓溶解療法に合併した脳出血に対して外科的血腫除去を出血傾向の補正前に行うと、止血困難となる例が報告されているが53)(レベル4)、非手術例と比較して機能転帰の改善は有意ではないものの30日後の生存率が高いとの報告もある41)(レベル4)。

抗血栓療法再開の可否とタイミングに関しては、頭蓋内出血の再発および増悪と血栓症ならびに塞栓症発症のリスクベネフィットを考慮すべきであるが、現時点では一定の見解や基準はない。抗血小板療法は、冠動脈疾患

海外の研究を主な対象としたシステマティックレビューにおいて、抗凝固治療中の頭蓋内出血の発症リスクは、ワルファリンと比較してNOACで有意に低値であった追1)

(レベル1)。75歳以上の高齢者を対象としたシステマティックレビューでもダビガトラン150mg× 2 回/日、ダビガトラン110mg× 2 回/日、アピキサバン 5 mg× 2 回/日はワルファリンと比較して頭蓋内出血発症リスクの有意な低下を認めた追2)(レベル1)。

抗凝固療法中に脳出血を合併した場合の急性期死亡率は43〜54%と高率である16)(レベル4)。また、抗血小板療法中に発症した脳出血においても、急性期死亡や血腫拡大の頻度が増加すると報告されている17-20)(レベル2~4)。

PT-INRの迅速な正常化に必要な血液製剤としては新鮮凍結血漿よりもプロトロンビン複合体(乾燥ヒト血液凝固第Ⅸ因子複合体(prothrombin complex concentrate:PCC)(保険適用外)が有効であり21、22)(レベル3)、PT-INR 2.0以上の患者に対しては発症 7 時間後(中央値:1.0〜71.5時間後)のPCC 500〜1,500 IU(PPSB-HT®,ニチヤク)投与により、血腫拡大を有意に抑制し(p=0.017)、機能転帰を有意に改善した(p=0.045)、とする報告がある23)(レベル4)。活性化第Ⅶ因子製剤(保険適用外)に関しては、新鮮凍結血漿24、25)(レベル4)やPCC26)(レベル4)よりもPT-INRの正常化に有効であったとする報告がみられる一方で、十分な転帰改善のエビデンスがないことなどから使用に対して否定的な見解もあり27)(レベル4)、さらなる検討が必要である。PT-INRの正常化が不十分

(PT-INR>1.35)な場合には再出血を 3 日以内に起こしやすく、PT-INR正常化後のヘパリン治療が不十分

(APTT<1.5倍)な場合には脳塞栓を生じやすいと報告されている28)(レベル4)。

ダビガトランの抗凝固作用の阻害のためにダビガトランの特異的中和剤であるイダルシズマブが有効である追3、追4)

(レベル3)。イダルシズマブは海外の健常者47例を対象とした第Ⅰ相プラセボ対象無作為化二重盲検試験にて重篤な有害事象を認めなかった追3)(レベル4)。またダビガトラン内服中に重篤な出血を発症した症例や緊急手術のためにダビガトランの中和が必要とされた症例に対して、イダルシズマブを投与する国際共同第Ⅲ相症例集積試験の中間報告(n=90)において、イダルシズマブはダビガトランの抗凝固作用を投与数分以内に完全に中和することが報告されている追4)(レベル3)。一方で凝固系第Xa因子阻害薬(リバーロキサバン、アピキサバン、エドキサバン)の作用を特異的に阻害する薬剤は現時点で臨床応用には至っていないが、内服後数時間以内であれば経口活性炭による薬剤除去が有効と考えられる29)(レベル4)。

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175脳卒中治療ガイドライン 2015[追補 2017]

脳出血

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177脳卒中治療ガイドライン 2015[追補 2017]

Ⅲ 脳出血 

 

 

推 奨

脳出血

〔 82 〕

6

6-7 CKD患者における脳出血

1.脳出血を発症した腎不全患者に対する透析方法は、血液透析よりも腹膜透析または持続的血液濾過が望ましい。神経症候の安定をみながら持続的血液濾過から間歇的血液濾過または持続的血液透析濾過を経て、維持血液透析へと移行することを考慮する(グレードC1)。

2.血液透析中の腎不全患者に起こった脳出血では、中等量までの血腫量では保存的治療を考慮する(グレードC1)。

3.血腫量が30~50mLの被殻出血における定位的血腫除去術の適応は、非透析例と同様に考えても良い(グレードC1)。

高血圧以外の原因による脳出血の治療

◉エビデンスGFR低値(eGFR<60mL/min/1.73m2)で定義した慢

性腎臓病(CKD)は出血性脳卒中の危険因子であり、CKDを有しない者に比し約 3 倍の危険性があるという報告1)

(レベル3)や、女性のみでeGFRの低下に伴い発症リスクが増加するという報告2)(レベル3)がある。

慢性血液透析の患者では、年間0.6〜1.0%が脳出血を発症し、健常人に比し 5 〜10倍の危険性がある3-7)(レベル4)。心房細動を合併した慢性血液透析患者にワルファリン治療を行うと、未治療患者に比し出血性脳卒中の発症リスクが有意に2.3倍上昇することが示されている追1)

(レベル1)。好発部位は非透析患者の脳出血と変わらず大脳基底核であったが9)(レベル4)、通常の脳出血に比較して、血腫はより大きく、死亡率も 2 倍高い10、11)(レベル4)。

慢性血液透析患者におけるMRIのT2*画像では微小出血(microbleeds)と陳旧性脳出血との相関を認めたが、透析期間との相関は認めなかった12)(レベル4)。

腹膜透析や持続的血液濾過では不均衡症候群を来たしにくく、血液透析より血腫の増大や頭蓋内圧亢進への影響が少ない13、14)(レベル4)。持続的血液透析濾過も代替手段となりうる11、15、16)(レベル4)。

ナファモスタットは、ヘパリンに比較して半減期が短いため、全身の凝固時間に及ぼす影響が小さく、出血合併症が少ない17)(レベル4)。同薬を用いた血液透析濾過により合併症なく定位的血腫吸引術を行えたとする報告もあるが18)(レベル4)、手術例での術後出血の危険性も指摘されている19)(レベル4)。

開頭手術の成績は不良である19)(レベル4)。被殻出血に対する定位的血腫吸引術では、血腫量が50mL以上での救命は困難であるが、30〜50mLでは非透析例に対する外科手術と比較して死亡率や機能転帰に差はないとする報告もある15)(レベル4)。

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205脳卒中治療ガイドライン 2015[追補 2017]

Ⅳ くも膜下出血

推 奨

くも膜下出血

〔 84 〕

6

1.早期手術の際、脳槽ドレナージを留置して脳槽内血腫の早期除去を行うよう勧められる(グレードB)。

2.脳血管攣縮予防として、ファスジルやオザグレルナトリウムの静脈内投与が強く勧められる(グレードA)。また、シロスタゾールの経口投与を考慮しても良い(グレードC1)。

3.遅発性脳血管攣縮と診断された場合、triple H 療法を考慮しても良い(グレードC1)。代わりに循環血液量を正常に保ち、心機能を増強させるhyperdynamic療法を考慮しても良い(グレードC1)。

4.遅発性脳血管攣縮発症前のtriple H 療法や血管形成術は科学的根拠がないので、勧められない(グレードC2)。

5.血管内治療として、ファスジルの選択的動注療法や経皮的血管形成術(percutaneous transluminal angioplasty:PTA)などを考慮しても良い(グレードC1)。

6-2 遅発性脳血管攣縮の治療

脳動脈瘤−保存的治療法

◉エビデンス遅発性脳血管攣縮は、くも膜下出血後第 4 ~14病日に

発生する脳主幹動脈の可逆的狭窄である。確定診断は脳血管造影によって行われるが、非侵襲的補助検査として経頭蓋的ドプラー検査(TCD)も有用である1-4)(レベル3)。本法では発症早期から連日、中大脳動脈水平部(M1)の平均血流速度を測定し、平均血流速度が120~150cm/秒以上の場合、あるいは 1 日に50cm/秒以上の増加があった場合、脳血管攣縮の発生が示唆される。この際には血管造影などにて確定診断し、引き続いて、後述の血管内治療などを考慮する。その他、MR angiography

(MRA)5)(レベル4)、MRIによる拡散強調画像、3D-CT angiography(3D-CTA)6)(レベル4)、シングルフォトンエミッションCT(SPECT)7)(レベル4)などを補助診断に用いる試みがなされている。遅発性脳血管攣縮に関連する脳循環病態の把握には、ヘマトクリット値、電解質、血清脳ナトリウム利尿ペプチド(BNP値)、血圧、体温などの血液学的、理学的所見も有用といわれる8)(レベル5)。また、高い血中コルチゾールレベルは、遅発性虚血性脳障害と相関するとされる9)(レベル4)。

遅発性脳血管攣縮の重症度とくも膜下腔の血管周囲の血腫量との間には相関があるとされている8)(レベル5)。早期手術が行われる場合、脳槽内への組織プラスミノゲ

ン・アクチベータ(t-PA)の術中投与10-12)(レベル2)、手術時に設置した脳槽ドレナージを用いた術後ウロキナーゼ灌流療法の有用性が報告されている13)(レベル1)。

遅発性脳血管攣縮に対する全身的薬物療法として本邦では、Rhoキナーゼ阻害薬であるファスジルの静脈内投与が有効である14)(レベル1)15)(レベル3)。また、トロンボキサンA2合成酵素阻害薬であるオザグレルナトリウムの有効性も報告されている16)(レベル2)。

欧米では、カルシウム拮抗薬であるnimodipine(本邦未承認)が有効との報告があいついでなされ17、18)(レベル1~2)、経静脈内投与と経口投与とで有効性に差がなく19、20)

(レベル2)、メタアナリシスでは、転帰不良臨床アウトカムと遅発性虚血性脳障害のリスクを軽減することが示された21)(レベル1)。前述のファスジルとnimodipineとは有効性は同等であるとされる22)(レベル2)。他のカルシウム拮抗薬であるニカルジピン徐放製剤含有脳槽内インプラントが、脳血管攣縮発生を抑え、脳梗塞出現を抑えるとする報告もある23)(レベル2)。

さらに欧米からは、高用量のマグネシウム療法が、脳血管攣縮の発生を抑え、遅発性虚血性脳梗塞の出現を抑えたとする報告がなされ24)(レベル2)、複数のランダム化比較試験のメタアナリシスでは、症候性脳血管攣縮と遅発性虚血性脳障害発生を抑え、転帰良好臨床アウトカ

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206 〔 85 〕

せることによる脳循環障害改善法としてhyperdynamic療法も報告されている43)(レベル4)。

脳血管攣縮に対する血管内治療として、パパベリンの動注療法は、攣縮血管の拡張に有効であるが44)(レベル3)、効果時間が短いため、繰り返す必要があることが指摘されている45、46)(レベル4)。最近の知見としてミルリノンの動注や静注療法が、またファスジルの動注療法が有効であるとの報告がある47、48)(レベル4)。PTAは、機械的血管拡張作用により、脳血流および臨床症状を改善させるものであり49)(レベル4)、パパベリン動注療法と比較して、より効果的かつ持続的であるが、血管解離など合併症の危険性もあり、注意して行う必要がある50)(レベル3)。

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その他、くも膜下出血急性期にプラバスタチンを経口投与することにより、脳血管攣縮の発生頻度が低下し、臨床アウトカムが改善したとの報告27、28)(レベル2)と、同様にくも膜下出血急性期のシンバスタチン経口投与は、脳血管攣縮ならびに虚血性脳損傷の抑制効果はなかったとする報告があり29、30)(レベル2)、意見が分かれている。

エンドセリン受容体拮抗薬であるclazosentan(本邦未承認)の静脈内投与が、特に中等症から重症の脳血管攣縮の発生を抑え、関連する死亡率、合併症率を抑えたとする報告がなされた31)(レベル2)。複数のランダム化比較試験のメタアナリシスでは、脳血管攣縮出現と遅発性虚血性脳障害発生を抑え、関連した合併症率、死亡率を有意に抑えるとする報告32)(レベル1)と脳血管撮影上の脳血管攣縮と遅発性虚血性脳障害を抑えるが、臨床アウトカムを改善しないとする報告33)(レベル1)があり、コンセンサスは得られていない。

メタアナリシスでは、アスピリン、カタクロット、ジピリダモールやチクロピジンなどの抗血小板薬の遅発性虚血性脳障害のリスクや転帰に対する有効性が示されていなかったが34)(レベル1)、近年、シロスタゾールの急性期経口投与が脳血管攣縮の発生頻度を抑制することが報告された35)(レベル2)。さらに、この報告を含めたメタアナリシスでは、症例数が少ないものの(340例)、シロスタゾールが脳血管撮影上の脳血管攣縮、症候性脳血管攣縮や攣縮に起因する新規脳梗塞を減少させ、転帰を改善することが報告されている追1)(レベル1)。

くも膜下出血急性期における抗線溶療法の有効性36)

(レベル1)とnimodipine(本邦未承認)に加えてのtirilazad(本邦未承認)投与の有効性37)(レベル1)は示されていない。

その他に、エダラボンの脳血管攣縮抑制効果と遅発性虚血性神経障害の抑制効果38)(レベル2)、メチルプレドニゾロンの臨床アウトカム改善効果39)(レベル2)の報告がある。

遅発性脳血管攣縮による脳循環障害の改善には、循環血液量増加(hypervolemia)・血液希釈(hemodilution)・人為的高血圧(hypertension)を組み合わせた治療法(triple H療法)の有用性が報告されている40)(レベル4)。本法は脳循環改善には有用であるが41)(レベル2)、臨床アウトカムの改善、遅発性虚血性脳障害予防に有効であるとするエビデンスは得られていない42)(レベル1)。その他、循環血液量を正常に保ち(normovolemia)、心機能を増強さ

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くも膜下出血

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223脳卒中治療ガイドライン 2015[追補 2017]

Ⅴ 無症候性脳血管障害

無症候性脳血管障害

〔 88 〕

3

3-2 無症候性頚部動脈狭窄・閉塞

無症候性頚部・脳内血管狭窄・閉塞

◉エビデンス一般住民における無症候性頚動脈狭窄症の頻度は、

50%以上の中等度狭窄が 0 ~7.5%、70%以上の高度狭窄が 0 ~3.1%であり、高齢者および男性に多い1)。50%以上の無症候性頚動脈狭窄を有する例において、同側脳卒中の発症率は年間 1 ~ 3 %、同側脳卒中または一過性脳虚血発作の発症率は年間 3 ~ 5 %である2)。一方、現時点で無症候性頚動脈閉塞や椎骨動脈狭窄・閉塞の頻度ならびに脳卒中発生率を示したエビデンスはない。

無症候性頚部動脈狭窄・閉塞の症例の脳梗塞一次予防に有効な薬剤のエビデンスは示されていないが、一般的な脳梗塞一次予防の治療として動脈硬化リスクファクターの管理が勧められる2)(レベル2)。

中等度および高度の無症候性頚動脈狭窄例を対象とした観察研究では、抗血小板薬の服用は多変量解析で虚血性脳血管障害や心血管死などの発症率低下に関連していた3、4)(レベル3)。Intima-media thickness(IMT)についてのメタアナリシスおよび報告によると、降圧薬5)やスタ

チン6)、および経口血糖降下薬のピオグリタゾン7)および抗血小板薬のシロスタゾール8)はIMT肥厚の進展抑制や退縮効果があるといわれており(レベル3)、頚動脈狭窄病変の進行やそれに伴う脳梗塞予防に有効であるかもしれないが、それを示すエビデンスがない。

狭窄率60%以上の高度の無症候性頚動脈狭窄では、抗血小板療法、降圧療法や脂質低下療法を含む適切な内科的治療に加えて、CEAを行ったほうが脳卒中の発症率が低い9-11)(レベル1)。ただし、無症候性頚動脈狭窄例に対するCEAは、患者の生命予後、外科手術のリスク等を十分に考慮した上で適応を決定し、周術期の死亡または脳卒中発生率が3%未満の施設で行うことが勧められる10-13)

(レベル2)。虚血性心疾患合併例や頚部手術後・放射線治療後などの患者に対するCEAの有効性に関しては、十分な科学的根拠はない9-11)。

中等度ないし軽度の無症候性頚動脈狭窄に対して、CEAを推奨する根拠は明らかではない10、11)。

高度の無症候性頚動脈狭窄に対して、CASを行うこと

推 奨

1.無症候性頚動脈狭窄は脳梗塞発症の原因となるため、一次予防としての動脈硬化リスクファクターの管理が勧められる(グレードB)。

2.中等度以上の無症候性頚動脈狭窄に対しては、他の心血管疾患の併存や出血性合併症のリスクなどを総合的に評価した上で、必要に応じて抗血小板療法を考慮しても良い(グレードC1)。

3.軽度から中等度の無症候性頚動脈狭窄に対しては、頚動脈内膜剥離術(carotid endarterectomy:CEA)および頚動脈ステント留置術(carotid artery stenting:CAS)などの血行再建術は、勧められない(グレードC2)。

4.高度の無症候性頚動脈狭窄では、抗血小板療法、降圧療法、脂質低下療法を含む最良の内科的治療による効果を十分検討した上で、これに加えて、手術および周術期管理に熟達した術者と施設において頚動脈内膜剥離術(CEA)を考慮することが勧められる(グレードB)。

5.高度の無症候性頚動脈狭窄では、頚動脈内膜剥離術(CEA)の代替治療として、適切な手技トレーニングを受けた術者による頚動脈ステント留置術(CAS)を行うことを考慮しても良い(グレードC1)。

6.無症候性頚動脈閉塞に対する頚動脈内膜剥離術(CEA)や頚動脈ステント留置術(CAS)、ならびに無症候性椎骨動脈狭窄・閉塞に対する外科的血行再建術や経皮的血管形成術/ステント留置術については、勧められない(グレードC2)。

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による脳卒中の予防効果に関しては、内科的治療と比較したエビデンスは示されていない。しかし、CEAのハイリスク患者に対するrandomized controlled trial(RCT)のStenting and Angioplasty with Protection in Patients at High Risk for Endarterectomy(SAPPHIRE)studyおよび、CEAの通常リスク患者に対するRCTのCarotid Revascu-larization Endarterectomy vs. Stenting Trial(CREST)のサブ解析では、CASの周術期ならびに長期成績はCEAと差がなかった14-18)(レベル2)。ただし、CEAのハイリスク群に属する高度無症候性頚動脈狭窄に対する血行再建術の適応についてはコンセンサスが得られていない。

無症候性頚動脈閉塞に対するCEAやCAS、extracranial-intracranial(EC-IC)bypass術、無症候性椎骨動脈狭窄・閉塞に対するバイパス手術および経皮的血管形成術/ステント留置術については、現時点で推奨する科学的根拠はない。

冠動脈疾患を合併する無症候性頚動脈狭窄で、心臓バイパス手術との同時または前処置としての頚動脈血行再建術(CEA、CAS)については、現時点で推奨する科学的根拠はない19-22)。

無症候性頚部動脈狭窄に対する内科的治療の予後は改善してきており追1)、今後治療方法について新たな検証が必要になる可能性がある。

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277脳卒中治療ガイドライン 2015[追補 2017]

Ⅶ リハビリテーション

推 奨

リハビリテーション

〔 90 〕

1

1.不動・廃用症候群を予防し、早期の日常生活動作(ADL)向上と社会復帰を図るために、十分なリスク管理のもとにできるだけ発症後早期から積極的なリハビリテーションを行うことが強く勧められる(グレードA)。その内容には、早期座位・立位、装具を用いた早期歩行訓練、摂食・嚥下訓練、セルフケア訓練などが含まれる。

2.脳卒中ユニット、脳卒中リハビリテーションユニットなどの組織化された場で、リハビリテーションチームによる集中的なリハビリテーションを行い、早期の退院に向けた積極的な指導を行うことが強く勧められる(グレードA)。

3.急性期リハビリテーションにおいては、高血糖、低栄養、痙攣発作、中枢性高体温、深部静脈血栓症、血圧の変動、不整脈、心不全、誤嚥、麻痺側の無菌性関節炎、褥瘡、消化管出血、尿路感染症などの合併症に注意することが勧められる(グレードB)。

1-4 急性期リハビリテーション

脳卒中リハビリテーションの進め方

◉エビデンス不動により深部静脈血栓症や沈下性肺炎などが起こ

り、安静臥床により廃用性筋萎縮が進行するため、可能な限り早期からリハビリテーションを開始する必要がある。脳卒中患者の非麻痺側上下肢は発症からリハビリテーション開始までの期間が長くなるほど廃用性筋萎縮が著しく1)(レベル3)、歩行不能なものほど筋萎縮が進行した2)(レベル3)。早期離床により、深部静脈血栓症、褥瘡、関節拘縮、沈下性肺炎など不動・臥床で起こる合併症は予防可能と考えられている3)(レベル5)。

リハビリテーションの開始は患者の状態により決定され る。Agency for Health Care Policy and Research

(AHCPR) guidelineによると、医学的に可能なら発症から24~48時間以内に寝返り、座位、セルフケアなどの自動運動を開始する。昏睡、神経徴候の進行、くも膜下出血、脳内出血、重度の起立性低血圧、急性心筋梗塞がある場合にはリハビリテーションの開始を遅らせる4)(レベル5)。

早期にリハビリテーションを開始することにより、体幹機能を良好に保ち、機能転帰が良好で、再発リスクの増加もみられず5)(レベル3)、日常生活動作(ADL)の退院時到達レベルを犠牲にせずに入院期間が短縮された6)

(レベル2)。発症から52時間以内の脳梗塞例にリハビリテーションを開始しても脳血流量への影響はなく、重症合併症が有意に少なかった7)(レベル2)。24時間以内に

離床し訓練を開始した群において 3 か月後の転帰不良例の割合が高い傾向と対照群(24~48時間で離床)での有意な機能的改善を認めた報告がある9)(レベル2)。超早期

(24時間以内)からの積極的介入(座位、立位などのアプローチを頻回に、かつ訓練量を多く実施)の効果を明らかにする大規模多施設研究の結果、3 か月後の予後良好

(modified Rankin Scale 0~2)例の比率が通常のアプローチを実施した対照群で有意に高いという結果が報告された(レベル2)追1)。

訓練時間の長短により機能障害、ADLに差はないという報告10)(レベル2)と、改善させる11-13)(レベル1~2)という報告がある。また、脳卒中ユニット入院中のリハビリテーション実施日数が多いほど機能転帰が良好であるとの報告もみられる14)(レベル2)。脳卒中の機能、能力的回復と最適な離床のタイミング、訓練量および頻度の関連性については未だ議論のあるところである。

脳卒中ユニット、脳卒中リハビリテーションユニットなどの組織化された多面的リハビリテーションを行う専門病棟に入院した脳卒中患者は、従来型病棟入院患者より退院時の機能が良好で、約 1 年の経過で死亡率、介護依存度、施設入所率が低く、自宅復帰率が高かった15、16)

(レベル1)。10年の経過をみてもこの傾向は変わらなかった17、18)(レベル2)。この結果は患者の年齢、性、脳卒中の重症度とは関係がなく、また、脳卒中ユニット組織の相違とも関係がなかった19)(レベル1)。日本の報告で

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急性期には高血糖24)(レベル3)、低栄養25)(レベル2)、痙攣発作26)(レベル4)、中枢性体温上昇27)(レベル1)、深部静脈閉塞症28)(レベル2)、血圧の変動29)(レベル4)、肺炎30)(レベル4)、麻痺側の無菌性関節炎31)(レベル4)、消化管出血32)(レベル4)、褥瘡、尿路感染症33)(レベル4)などの合併症が起こりやすく、生命または機能転帰に影響を与えることがある。

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